天災は、忘れぬうちにやってくる!これから始めるBCP

BCP担当者必見!訓練や防災教育で使える動画10選

2022.12.19
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総合研究部 専門研究員 大越 聡

動画と会社員

BCP担当者にとって、訓練や防災教育にどのような教材を使用するかはいつも悩みの種だろう。最近ではメディアや行政からYouTubeなどに防災に関する様々な動画がアップされており、十分に社内啓発に使えるものもある。年末最後のコラムとして、BCP訓練や防災教育で使用できる動画を10本ピックアップしてみた。気軽に見れるものも多いので、年末年始の時間のある時に視聴してもよいかもしれない。

1.帰宅困難者対策

出典:【本編】帰ったらあかん!~大阪府からのお願い!「STOP!!災害時の一斉帰宅」~
(テロップあり版)(OSAKA STOP!!一斉帰宅)

大阪府が作成した帰宅困難者対策についての公式動画。なぜ災害が発生した時に帰宅してはいけないのか、大阪らしいユーモラスな語り口とドラマ仕立てで解説していることが特長。8分弱の動画なので、気軽に見ることができるだろう。東京都は2023年3月にテレビの人気キャラクターであるガチャピンとムックの解説動画に更新。「首都直下地震における東京都の帰宅困難者推定数は約453万人」など、最新のデータを分かりやすく紹介している。

出典:STAY for SAFETY 『帰らない』選択が、あなたを守る(都民のみなさん向け詳細版)(東京都総務局総合防災部チャンネル)

※編集部注:2023年7月6日、東京都総務局総合防災部チャンネルの動画を差し替えました。

2.災害時のトイレ対策

出典:災害時のトイレ、どうする?(MLIT channel(国土交通省))

国土交通省作成の「災害時のトイレ問題」に関する動画。特にマンションなどでは災害時にトイレが使えなくなる可能性が高い。また、災害直後は屋上のタンクなどを活用して使える可能性もあるが、使ってしまうと階下の住人に迷惑をかけてしまうこともある。東日本大震災では避難所でトイレが使えず、健康被害など深刻な事態も発生している。実はこの事態は、オフィスビルなどでも同様に発生する可能性が高い。災害時のトイレ問題に詳しい日本トイレ研究所では、以下の動画で携帯トイレの使い方などについても紹介している。

出典:災害時、水洗トイレは使えない(日本トイレ研究所)

3.南海トラフ地震対策

出典:「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応」説明動画(内閣府防災)

南海トラフ地震発生の基本的なメカニズムから、これまで日本で発生した南海トラフの歴史に加え、政府の対応として本稿でもたびたび説明している南海トラフ地震が発生した時の「南海トラフ地震臨時情報」の「巨大地震警戒」、「巨大地震注意」などについて分かりやすく解説している動画。「南海トラフ地震臨時情報」については文章にすると非常に分かりにくいので、動画で見ることをお勧めしたい。

出典:南海トラフ地震対策編【全体版】

こちらは主に南海トラフ地震発生時の津波や火災などの被害想定の啓発に重きをおいた動画。特に津波の被害想定では、東日本大震災では最も早くて25分かかった津波が、南海トラフ地震では数分で到達する可能性もあることなど、違いを分かりやすく説明している。その他にも津波と高潮の違いや高層ビルにおける長周期地震動など、海溝地震が発生した場合の被害を網羅的に解説している。

4.津波の恐ろしさを知る

東日本大震災における津波の動画はYouTube上にたくさん上がっているので、興味のある方は検索していただきたい。ただし防災講座などで活用する場合には気分が悪くなってしまう人や、現在でも津波のトラウマを抱えて暮らしている方もいるので注意が必要だ。本稿では直接的な津波動画ではなく、津波の威力を知るための実験動画を紹介する。

出典:電中研 巨大津波の威力再現する実験施設公開(SankeiNews)

電力各社でつくる電力中央研究所(電中研)が運営する、東日本大震災時に地上で氾濫した津波を3分の1の縮尺で再現できる世界初の大型実験施設の実験動画。本動画では水路に高さ1.5メートルの防潮堤を設置し、津波を衝突させる実験を公開している。「津波1.5m」というとそれほど高くないと思われる方も多いかもしれないが、膨大な水のエネルギーがまたたく間に防潮堤を超えてしまう様子がよくわかる。

出典:“たった10cm”でも…威力はケタ違い 津波の恐ろしさをアナウンサーが体感
(CBCニュース【CBCテレビ公式】)

こちらはアナウンサーの女性が津波の威力を体当たりで検証している動画。10cmの津波でも足を取られ、30~40㎝の津波では立っていられないほどの力がアナウンサーを襲う。都内でも、1m以内の津波予想がされている地域は多いがそれほど深刻視されてはいないように感じる。30~40㎝の津波がどれほど恐ろしいものが、ぜひ見ていただきたい。

5.水害対策

出典:東京マイ・タイムライン作成ナビ(東京都総務局総合防災部チャンネル)

水害は、昨今においては天気予報などの精度が上がっていることから、発生前からある程度の予測がつく災害だ。現在では自治体や公共交通機関なども災害発生前からの「タイムライン」を作成し、事前防災に役立てている。「マイ・タイムライン」は、それを個人で作るもので、東京都のほか様々な自治体で推奨されている。普段からハザードマップなどで周囲の状況を確認し、台風や長雨が予想されるときには、災害が発生する前に事前に避難する行動計画を個人個人が作るというものだ。紹介している動画は50分弱と少し長めのものだが、短いバージョンや子供向けのバージョンもある。家庭内のリスクコミュニケーションツールとしても、ぜひ活用していただきたい。

出典:(土砂災害編)警戒レベルに関する映像(内閣府防災)

こちらは、水害と同時に発生する土砂災害の警戒レベルについての解説動画。特筆すべきは2014年に広島で発生した土砂災害などの被災者の生々しい声を取材していることだ。「崖から泥水が流れ出す」「土の臭いがする」「山から音が聞こえる」など、被災した方にしか分からない体験談を聞くことができる。本動画のなかでも、「暗い時に避難してしまった。本当だったら明るいうちに避難するべきだった」と、被災者自らが事前防災の大切さを訴えている。

以上、5つのカテゴリで10本の動画を紹介した。現在は動画で様々な防災に関する知識を得ることができるが、正直なところ玉石混交の感もある。今回動画を選ぶにあたってはいたずらに不安をあおるものではなく、「自分が防災講演をするときに使えるもの」という基準で選んだ。防災担当者、BCP担当者の方が従業員の防災教育などに活用していただければ幸いである。

(了)

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