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【イベントレポート】株式会社エス・ピー・ネットーク・有限責任監査法人トーマツ・弁護士法人三宅法律事務所共催セミナー FATF第4次対日相互審査結果を読み解く~課題と今後の方向性
FATFの第4次対日相互審査で日本は辛くも「観察対象国」指定を免れたものの実質「不合格」という厳しい結果となりました。
特にメガバンク以外の金融機関や、不動産業者・弁護士などDNFBPs(指定非金融業者・職業専門家)の取組みの遅れが指摘されたほか、継続的顧客管理(取引モニタリング)や実質的支配者の確認実務の実効性の低さ、テロ資金供与対策の甘さ、NPO法人等が有する「犯罪インフラ性」への理解と対応の遅れ、国内法規制の不備などに厳しい目が向けられました。
事業者に、AML/CFTにかかる義務を深く理解し、実務の深化を図ることを強烈に促す内容だといえます。
本セミナーでは、FATFの指摘した課題を整理するとともに、今後の実務のあるべき姿、向かうべき方向性について各分野の専門家が解説しています。
セミナー概要
第1部
FATF第4次対日相互審査報告書の「法令等整備状況」に関する評価に見る今後の法令の改正の方向性
講師:弁護士法人三宅法律事務所/パートナー 渡邉 雅之
AML/CFTや個人情報保護に関する法的助言などについて専門とする。公認不正検査士(CFE)
第2部
FATF審査結果を踏まえた実務対応の方向性
講師:有限責任監査法人トーマツ/パートナー 白井 真人
大手銀行、コンサルティング会社・監査法人を経て2018年より現職。金融機関のコンプライアンス・規制対応に関するアドバイザリー業務を専門としており、特にAML/CFT(マネー・ローンダリング/テロ資金供与防止)に関しては、過去10年以上にわたりAML/CFT態勢整備全般、リスク評価・顧客リスク格付、取引モニタリングシステム等に関する豊富なプロジェクト実績を有する。公認不正検査士(CFE)、公認AMLスペシャリスト(CAMS)
第3部
FATF審査結果を踏まえた反社リスク対策の方向性
講師:株式会社エス・ピー・ネットワーク/取締役副社長 首席研究員 芳賀 恒人
企業のリスク抽出・リスク分析ならびにビジネスコンプライアンスを中心とする内部統制構築を専門分野とするリスクアナリストとして、反社会的勢力排除、組織犯罪対策の分野を中心に数多くの企業危機管理に関する事例を手がける。
講演
第1部 FATF第4次対日相互審査報告書の「法令等整備状況」に関する評価に見る今後の法令の改正の方向性
総論として、FATFは「日本は、金融機関および指定された非金融事業および職業専門家による監督および予防措置、法人および法的取極の誤用の防止、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与の調査および起訴を含む特定の分野での取組みを優先する必要がある」と指摘、「40の勧告」について、1のNC(不履行)と10のPC(一部不履行)、また、勧告5(テロ資金供与の犯罪化)においてPCがあるため、重点フォローアップ国に指定されました。
例えば、「非営利団体に対する評価」がNC、「テロ資金供与の犯罪化に対する評価」や「テロ資金供与の資産凍結に対する評価」「大量破壊兵器の拡散に関与する者への金融制裁に対する評価」「重要な公的地位を有する者(PEPs)」などがPCとされています。本セミナーでは、各勧告の評価の内容・詳細とこれに対応する法令を取りあげて事業者への影響や対策や、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画などポイントも解説し、法改正の方向性(代理権の確認、実質的支配者の本人特定事項の確認、PEPsの範囲等)を解説しました。各事業者は改めて、改正の方向性や改正内容・趣旨を正確に把握しておく必要があります。
第2部 FATF審査結果を踏まえた実務対応の方向性
第4次対日相互審査結果のうち、IO(有効性の審査項目)では、8項目がME(中程度)の評価であり、監視対象国の一歩手前の状況でもあったといえます。主な指摘事項としては、継続的顧客管理、取引モニタリング、実質的支配者の確認・検証等の導入変更された義務への理解が不十分である、その他金融機関のマネロン・テロ資金供与リスクの理解が限定的、リスクに基づいた提言措置を講じていない等、指摘対象や内容は多岐にわたります。これら項目の記載内容が、今後の当局の動向にも影響することが予測されます。
本セミナーでは、FATF審査の結果の概要や特定事業者にとって関連する指摘事項、特に金融機関に求められる具体的対応について、IO.4(「金融機関等の予防措置」)における指摘事項を中心に解説しました。また、相互審査報告書において、日本の金融機関等が特に優先すべき課題として挙げた5項目(①事業者ごとのリスク評価の導入・実施、②リスクベースでの継続的な顧客管理、③取引モニタリング、④資産凍結措置の実施、⑤実質的支配者情報の収集と保持)を踏まえ、それぞれの対応の方向性について整理しました。特に、取引モニタリングにおいてシステムの有効性が低い等の指摘を受けている点や、継続的顧客管理の場面で、顧客情報の更新だけではなく、顧客リスクの再評価、プロファイリング等の検知ロジックを用いた取引モニタリング等が金融機関に求められている点については、今後の金融機関等の実務で考慮していく必要があります。また、今後は関連法改正や新たなガイダンス等の公表も予想されており、金融機関等としては、指摘事項の趣旨を十分に理解したうえで、態勢高度化に取り組むことが必要となります。
第3部 FATF審査結果を踏まえた反社リスク対策の方向性
当社が実施した反社リスク対策に関する実態調査結果をふまえ、企業の反社リスク対策の実態を紹介しました。実態調査結果をみると、反社チェックの対象範囲を現任役員すべてまで拡げている事業者は5割、主要株主や主要取引先まで拡大している事業者は3割程度であり、存在の不透明化が進む反社会的勢力の実態と反社チェックの対象にミスマッチが生じています。これは、FATF審査結果の指摘事項と共通する部分が多く、企業のリスク対策が対峙すべき相手の実態に追い付いていない状況といえます。したがって、改めて、各事業者は反社会的勢力による手口の巧妙化や存在の不透明化の実態を認識・理解し、自社事情・業務に適合したリスク評価を行うこと、表面的な対策を刷新し、実効的な反社リスク対策をとる必要があります。すなわち、危機感を持ちながら顧客管理手法を進化・深化させる必要があり、正確な実態の把握に加え、KYCCの視点、サプライチェーン・リスクマネジメントの視点からの反社リスク対策を講じていく必要もあり、社会の目・社会的要請の厳格化を踏まえた対応が求められていると指摘しました。
お客様の声から
- FATF第4次相互審査をどのように評価し、企業として今後どのような姿勢で法令を解釈し、FSAからの指示に従うべきなのか頭の整理ができた。
- 反社対応に関しては、どのような基準で取引謝絶するか・取引謝絶しないでもどのようにモニタリングをしていくかという社内の決定プロセスについても少し見直しを図りたいと考えていたので、大変参考になった。
- 非常に厚みのある内容で、特にFATF審査結果の金融実務への影響や法改正予想に関するあたりは詳しく知りたいことがまとまっていた。
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