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【イベントレポート】SPクラブ危機管理セミナー「不祥事等発生後の再発防止・信頼回復に向けた対応について」を開催しました

2022.05.26
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2022年4月21日に開催された本セミナーでは、当社の豊富な緊急事態対応支援の実績に基づき、緊急事態対応の再発防止策について、うまくいかない要因や、取り組みのポイントを解説しました。

SPクラブ危機管理セミナー「緊急事態対応の勘所~行政等のステークホルダーへの対応」

セミナー概要

講師:総合研究部  主席研究員 西尾 晋

1.再発防止を巡る状況
2.なぜ、再発防止対策が推進されにくいのか
3.再発防止策策定に向けた留意点
4.まとめ

講演

1. 再発防止を巡る状況

企業不祥事発生後の再発防止策について、なかなか機能しない再発防止策の特徴とその実態について解説しました。再発防止策がうまくいかない企業にみられる傾向としては、以下が挙げられます。

  • 第三者委員会の調査結果について自社における検証を十分行わないままに公表してしまう
  • 再発防止策の項目が多岐に渡り、現実的な実施が難しい
  • 「…の見直し」「…の強化」等の抽象的な項目ばかりで、具体性がない
  • 監査役や外部委員会などの外部からのチェック、監督が不十分である
  • 新たな部署が立ち上がるも、人材や予算が不足している

2. なぜ、再発防止対策が推進されにくいのか

再発防止の取り組みがうまく進まない要因について「戦略的な要因」「組織的要因」「実質的な要因」の切り口から解説しました。

【再発防止の取り組みがうまく進まない要因】

戦略的な要因

  • 危機管理に対する誤解:再発防止策の策定・公表を急ぐ傾向
    原因究明を軽視し、「とりあえず」であっても再発防止策を出してしまう

組織的要因

  • 日本的な組織体質①:「人的関係」重視の組織特性
    インフォーマルな人的ネットワークなどが要因で改革の取り組みが現状追認型に修正・妥協されてしまう
  • 日本的な組織体質②:「失敗」の敬遠と精神主義的体質
    失敗の検証がリーダーの責任追及に繋がるため回避されやすいほか、過去の実績や努力等を重視する評価がされるため「失敗」が教訓化されにくい
  • 心理学的要因:脳の特性・心理的なバイアス
    「正常性バイアス」や「現状維持バイアス」等の働きが改善への抵抗につながる

実質的な要因

  • 負担が著しく増えることへの抵抗感
    新たな取り組みの開始は労力がかかり、特に組織内の調整や合意形成の負荷が大きい
  • 専門部署設置の弊害
    専門部署立ち上げは有効な手段の一つだが、各部門が他人任せになってしまう弊害も
  • 効果測定の問題
    目に見える部分の改善や測定は形を整えて終わりとなるおそれがあるほか、意識改革等については効果測定がしにくい

なぜ再発防止対策が推進されにくいのかを分析し、その結果を踏まえたうえでどのような切り口で再発防止策を進めていけばよいかを考えれば、より実効性のある再発防止策を策定することができます。

3. 再発防止策策定に向けた留意点

これまでの分析を踏まえ、企業不祥事の再発防止策のために何が必要かを解説しました。
※全てが当社の公式見解ではなく、講師の業務経験に基づく私見も含まれます。

組織の問題として考えて対処する

再発防止策の策定・推進は、いかに組織の問題として経営陣や経営幹部が問題意識を持って検討・実施・検証できるかが極めて重要です。企業不祥事を個人の問題にすり替えることなく会社としての課題を検討するなどの組織的な対応が不可欠です。

実態把握・確認をしっかりと行う

再発防止策はすぐに公表できるものではなく、原因を突き止めなければ策定することすらできません。「仕組み」「ルール」「運用」「意識」「システム・ツール」の5つの観点から不祥事の発生要因を検証したうえで、原因をしっかりと突き止めることが重要です。

効果が出るまでには時間がかかることを認識し、段階を踏んで進める

再発防止策は、そう簡単に効果が出るものではありません。また、再発防止策のメニューが数多くある中で、一気に取り組むことは現場の負荷も大きく現実的ではありません。重要なのは習慣化による定着であり、段階的に一歩ずつ・繰り返し進めることが重要です。

執行責任を明確化し、第三者視点的なチェック機能を作る

再発防止策を打ち出し、実施していかなければいけない状況は、それ自体が企業にとっての「危機事態」です。危機感を共有し、全社を挙げて取り組むための組織体制(環境)を構築・整備することが必要です。再発防止策については専門部署が主導するよりも、全部門を巻き込んだ委員会形式とするほか、取り組みや進捗を監視する部門・組織を作ることも有効です。

コンプライアンス研修及び有言実行の環境整備

教育研修については、あるべき姿を役員はじめ全社員で見つめなおすことが大切です。「コンプライアンス」がお題目にならないように、「自社におけるコンプライアンスとは何か」について自社の企業理念や行動指針を確認し、その上で、有言実行の環境を整えることが必要です。

4. まとめ

再発防止策とは、不祥事発生後に「信頼回復」のために行うものであり、謙虚な反省に基づきしっかりと発生原因・真因と突き止め効果的な対策を行うことがその本質です。そのポイントは①企業としての「自律」性、②自社の「自律」性のアピールと有言実行の形式、③再発防止策の定着・習慣化です。

ありきたりで一般的な「再発防止策」をメニューとして載せても意味がありません。反省に基づく検証により組織の問題点と課題を洗い出し、改善に向けた対策を再発防止策として打ち出すことが必要です。そして再発防止策の取り組みはこまめに実施することで習慣化し、定着を図るため根気強く取り組むことが必要なのです。

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