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【イベントレポート】「改正公益通報者保護法の施行から1年企画 進んでいますか? 改正法が求める『必要な体制の整備』!」を開催しました
2023年6月22日(木)に、当社リスクホットライン会員企業4社の内部通報ご担当者に覆面パネラーとしてご登壇いただき、また、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士中野真先生を解説者としてお迎えして、パネルディスカッションを実施しました。
このセミナーは、当社が2023年2月2日から2月19日に掛けて実施したWebアンケート調査において寄せられた「課題」や「お悩み」を議題とし、企業の内部通報担当者の方々と、改正法に詳しい弁護士、当社の研究員を交えたディスカッションを通じて、皆さまが抱えている通報対応のお悩みを解消・軽減することを目的としたものです。覆面座談会ならではの「ぶっちゃけ話」もありつつ、実務担当者のお悩みや各社の取組みなどをご紹介いただきました。
実施概要
日時
2023年6月22日(木)
プログラム
1.開会挨拶とスピーカー紹介 15:00~15:05
【パネラー】企業ご担当者4名(覆面参加)
【解説】中野 真 弁護士(渥美坂井法律事務所)
【司会進行】森越 敦・久富 直子(株式会社エス・ピー・ネットワーク)
2.ディスカッション 15:05~16:20
【主なテーマ】
- 範囲外共有の禁止が厳格になったぶん事実確認や再発防止が難しくなった
- 社内外への通報実績の開示ってどこまで行えばいいのか
- 些細なレベルの通報の調査等に時間を取られている
- 従業員や従事者への継続的、定期的な教育・研修ができていない
3.質疑応答 16:20~16:30
※チャットで受け付けた質問にお答えします。
登壇者
中野 真 先生 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士
久富 直子 株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究部 上席研究員(部長)
森越 敦 株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究部 上級研究員
覆面パネラー
項目 ①業種、②本社所在地、③内部通報担当歴/以前の経歴
Aさん
①外食チェーン本部
②北海道
③4年10カ月 (2018年09月~) / それ以前は、 店舗運営本部 (現場で26年)
Bさん
①総合エンタテインメント企業グループの持株会社
②東京都
③計4年程度(2020年9月~)/それ以前は法務、営業部門の管理部門
Cさん
①飲食料品の製造、加工および販売
②東京都
③6年目 (2018年1月~) / それ以前は、 HR
Dさん
①電機、自動車部品の製造、販売
②福岡県
③計10年ほど 現会社:2019年より4年、前会社:約6年 ※通報制度の新規立ち上げを経験/それ以前は、営業管理・法務・知財
ディスカッション内容
4つのテーマについて、当社がパネラーの皆様に質問し、時には、当社が実施したアンケートを示ししながら、各社の取組み状況やご担当者のお悩み、疑問点などを伺いました。その後、中野弁護士から各社の取り組み状況へのコメントや、お悩み、疑問にお答えいただき、当社研究員が実務上の対応や他社事例などをご紹介しました。
本イベントレポートでは、その一部をご紹介いたします。
テーマ
①範囲外共有防止措置の厳格化
範囲外共有の禁止が厳格になったぶん、事実確認や再発防止が難しくなった?
②通報実績の開示
社内外への通報実績の開示って、どこまで行えばいいの?
③内部公益通報とその他
些細なレベルの通報の調査等に、時間を取られている
④教育・研修
従業員や従事者への継続的、定期的な教育・研修ができていない
ディスカッション③をご紹介します。
Aさん :通報内容が自分には些細なことと思えても、本人は思いつめているので、その気持ちを汲んで丁寧に対応することを心掛けていますが、圧倒的に公益通報にあたらない案件多いです。相談者の感情をクールダウンするために、少し時間を空けてメールでの返信をするなどの工夫をしています。
Bさん :パワハラなどが大半で、職制で解決できるものも数多く入っています。当社は敷居を下げて、「幅広に通報してください」と周知しているので、公益通報と差異をつけずに対応しています。
Cさん :当社もBさんと同じです。広く受け付けて、すべてに対応しています。内容による差異はつけていません。どれが些細かを判断することが難しいので、同じように対応してはいますが、同時期に複数の通報が入った時には優先順位はつけています。調査の深さ、広さで調整したりして、トータル時間で収めるようにしています。些細と思ってしまうと力を抜いてしまうので、そういう差をつけず、誠意をもってクローズまで丁寧に対応しています。
Dさん :皆さん、些細なレベルまで対応されていてすごいな、と思ったのが正直なところです。当社もハードルを下げて、基本的には些細な通報も対応するというのが基本的な考えです。「何でも通報していいですよ」と広報しているのですが、すればするほど、「AさんとBさんが仲が悪いから何とかしてください」とか、「あの人がサボってますよ」などの通報も増えてきて、そこにどう対応するかというのが非常に悩みです。現状は、「職場で解決できることは職場で解決してください。それが基本ですよ。それができない時が内部通報ですよ」という言い方を最近はしています。そう言うと、「使いたいときに、使えないじゃないか」という反発もありますが、それは誤解で、「自分たちで解決できないときは、どんどん使ってください」ということも合わせて言っています。職場で解決すべき案件と、通報窓口が対応すべき案件との切り口が非常に難しいと思います。ただ、できるだけ、職場に戻せるものは戻すことで、内部通報は重要度が高いものに対応できるようにしていきたいと思っています。
久富 :Dさんの会社のように、職制で解決できる内容がたくさん通報されてしまう会社もあります。当社リスクホットライン(以下、RHL)の受付窓口では、まずは相談者に対して、「上司に相談したことはありますか?」と必ずお伺いするようにしています。相談していない場合は、その理由を聞いて、「相談できない理由はない」という場合には、お話の流れの中で、ご本人が「上司に相談したほうが早いですかね?」と気づくことも多く、「できるならば、まずは上司にご相談いただいた方が良いかもしれませんね」という流れをつくって、職制に戻すという対応をしています。(※RHLでは、事案内容に応じてケースバイケースで最適と思われる対応をいたします)
Dさん :相談者も、自分の言っていることがどれだけ正しいのかよくわからないと思って連絡をしているので、RHLから「あなたが言っていることは正しいですよ(上司に相談をしてよい内容ですよ)」というアドバイスをもらうと、安心して上司に相談できるということが結構な割合であるので、職制に戻せるところは戻した方が良いと考えています。
森越 :些細なレベルとは違う切り口ですが、メンタル不調が疑われるパターンは、内部通報機能で何かできるというよりは、社内の別の窓口や医療との連携が必要になったりすると思います。最近そういう案件が増えてきているように思うのですが、お悩みや事例などありますか?
Cさん :多いです。増えてきています。仰る通り、大変ですね。誠意をもって対応はするのですが、メンタル、医療系の窓口を案内したり、本人の承諾が得られれば、人事と面談を設定したり、適切な処置や治療に繋げるように試みているところです。ただ、正直、大変なのも事実です。
森越 :「メンタルの窓口があるよ」というと、「私は病気じゃない」と揉めることもあると聞いたことがあるので、内部通報窓口ご担当者は大変だと思います。
Cさん :補足しますと、メンタルの窓口というより、「働き方や仕事の悩みの窓口」の建付けですので、「メンタルに行きなさい」と伝えるわけではなく、「お悩みはこちらの窓口にもご相談できますよ」と紹介しています。
Bさん :メンタル不調の事案はそれほど多くはないのですが、あるにはあります。そういう時は、「メンタルが」という話をするのではなく、ご本人が訴えている体調不良などの切口から「病院に行かれていますか?」とか、「しんどいようなら、産業医と面談できますよ」などの対応をお話したり、もしくは、「ご自身の体調を一番大事にしてください。つらいようなら、お休みをいただいた方がいいかもしれませんね」などとお話をして進めることが多いです。
久富 :産業医には一番つなぎやすいと思うのですが、産業医の先生もメンタルに詳しい方と、そうではない方がいて、そうではない場合に、火に油を注いで、悪化させてしまうケースもあるので、産業医の先生もメンタルヘルスの知見を深めていただくことが必要だと思っています。
中野先生にお話をお伺いする前に、資料を一つお示しします。当社によくあるご質問で「パワハラは公益通報になるのでしょうか?」というものがあります。身体的な攻撃は、暴行罪や傷害罪、精神的に追い詰めてしまった場合も傷害罪になることもあり、「パワハラも公益通報になり得る」というのが、今は共通の認識になっているかと思います。
もう一つ、「公益通報かどうかの見極め方を教えてほしい」というものですが、当社も苦肉の策ではありますが、このように分類しました。悩むのは赤枠の辺りかと思います。この辺りをパワハラの3要件やセクハラの要件や、会社のこれまでの対応に照らして判断するということになろうかと思います。ただし、公益通報に該当するか否かというよりは、どんなケースでも問題に応じた丁寧な対応をする必要があるということを常々お伝えしています。この辺りについて、先生から総括してコメントを頂ければと思います。
中野先生:パワハラが公益通報に当たるのかは、今のご指摘のとおりでして、傷害、暴行、侮辱、名誉毀損等にあたる場合には、刑法犯として公益通報にあたるということになります。それ以外では、どのようなものに対応するかは、基本的に労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法等で、各種ハラスメントについて、就業規則で禁止措置をとるように求めており、それに沿って各社で、「どういうものがハラスメントにあたって」、「これが禁止されています」と定めているのが通常です。ですので、まずはそれに該当するのかどうかを判断するということになります。それに該当するのであれば、是正措置などの対応をする必要がありますが、問題はそれに該当しない場合です。該当しない場合であっても、民事上違法な場合もありますので、その場合も対応します。問題は、民事上も違法ではない場合ですが、例えば人格権を侵害するとまでは言えなくても、ストレス耐性などは個人差があるので、普通の人であればパワハラや苦痛だと思うようなことでなくても、とても苦痛を感じてしまって、精神疾患に陥ったり、自殺に至ったりすることもあります。実際にパワハラの裁判例になっているケースはたくさんあって、因果関係が検討されるので、慎重に対応する必要はあります。
Dさん :質問してもよいでしょうか。社員同士のトラブルで、暴力というほどのものではなく、軽く叩いたなどで、暴行や傷害と言われても、告訴されるレベルじゃないというものは、公益通報の対象になるのでしょうか?
中野先生:理論的なことを申し上げれば、公益通報者保護法の対象事実となる公益通報に当たるかどうかは、現実に立件されるかどうかは加味しません。構成要件に形式的に該当するかということなので、不法な有形力の行使と評価できるような暴行であれば、仮に立件される恐れがなかったとしても、公益通報に当たり得るということにはなります。
Dさん :例えば、カルテルなどは、初回は告訴されるものではなく、繰り返すと告訴される可能性があると思いますが、初回のカルテルも公益通報に当たるのでしょうか?
中野先生:立件されるかどうか、行政処分に科せられるかどうかは、通報対象事実の判断に考慮しませんので、形式的に独占禁止法の構成要件を満たしていれば、(公益通報に)当たるということになります。
Dさん :わかりました。ありがとうございました。
セミナーご参加者の声(事後アンケートより一部抜粋)
- とても為になる内容だったので、他の社員とも共有したい。
- パネラーの方からいろいろお話をしていただき大変参考になりました。
- 情報開示での例の公開のお話がとても参考になりました。
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