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【イベントレポート】<大阪支社企画> BCP策定入門編+担当者お悩み相談会 ~BCP未策定の企業担当者向け。「予測」「予防」「対応」で社員を守る~

2024.10.17
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SPN大阪支社では、今後30年以内の発生確率が70%~80%といわれる南海トラフ巨大地震に備え、BCP担当者に向けた「BCP策定入門編+担当者お悩み相談会」を2024年7月24日に開催した。元旦に発生した能登半島地震から導き出された教訓も踏まえ、「予測」「予防」「対応」の3ステップでBCP策定の基本を学んだほか、BCP策定経験豊富な講師陣による「担当者お悩み相談会」を実施。本稿では、イベントレポートとして当日の様子をお届けする。

プログラム

【午前の部】10:00~12:30

  • 講義:最新の防災情報とBCP策定の基本(10:00~11:00)
    石川県能登半島地震の事例も交えながら、BCPの基本について解説いたします。
  • 講義/ワーク:<予測>自社のハザードマップを分析してみよう(11:00~12:30)
    PC等を用いて自組織が地震や風水害でどの程度被害を受けるのかを実際に分析します。

【午後の部】13:30~17:30

  • 講義/ワーク:<予防>オフィス防災と「帰宅困難者対策」の基本から、優先業務の選定と対策(13:30~15:00)
    帰宅困難者対策の基本や優先業務の選定とその事前対策まで解説します。
  • 講義/ワーク:<対応>「対策本部」立ち上げと演習・訓練の手法(15:00~16:30)
    災害対策本部運営時の留意点や、訓練を通じて見えてきた対策本部運営上の課題について解説します。
  • お悩み相談会 (16:30~17:30)
    事前に受講者の皆さまから頂戴したご質問に経験豊富な講師陣がお答えします。

「予測」「予防」「対応」でBCP策定の基礎を学ぶ

冒頭の講義では「最新の防災情報とBCP策定の基本」と題し、総合研究部専門研究員大越聡から石川県能登半島地震の現地調査を踏まえ、BCPの基本について解説。「地震が発生して最も役に立ったのは『安否確認』、『備蓄』、『訓練』だった」など、被災した企業へのインタビューを基に事例を紹介するとともに、東日本大震災に起因する2つの裁判の判例を通じて、「災害時における企業の安全配慮義務」について解説した。

2限目の「<予測>自社のハザードマップを分析してみよう」では、同部研究員小田野々花から、15年に発生した常総市水害や16年に発生した熊本地震の教訓を踏まえ、ハザードマップ分析の重要性を解説するとともに、実際に地域の自治体が発行しているハザードマップの確認方法をレクチャーした後、防災科学技術研究所が運営する「J-SHIS」、国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」などを使い、受講者自ら、自社の本社や重要拠点のハザードを分析した。南海トラフ地震のほかにも、大阪市はその中心を「上町断層帯」という主要活断層の1つが走っているため、このワークを通じて、多くの参加企業が自社の災害リスクについて再認識する機会となった。

3限目は大越専門研究員から、「予防」について講義を行った。オフィスの耐震基準や食料・トイレなどの必要な備蓄について解説した後、簡易的な「HUG訓練」を行った。「HUG」訓練とは「避難所運営ゲーム」の略で、自社の拠点を避難所とみなし、男女別に寝る場所を確保したり、負傷者をケアする介護所を設置したりするなど、実際に帰宅困難者対策をどのように行うかについて体験してもらった。

4限目は「対応」について、執行役員で同部主席研究員の西尾晋より、主に災害対策本部の役割と運営のポイントについて解説した。災害時には稼働できるインフラや従業員が限られるなか、対策本部を運営していかなければならない。まず「対策本部でやるべきこと~最低限の10個を理解しておく」として、「1,従業員の安全・安心に関する事項」「2.本部の安定運用に関する事項」「3.情報の収集・集約」「4.方針決定」「5.取引先・顧客対応」に分類し、留意すべき事項を挙げた。また、「対策本部における災害対応の難しさ~経験者の手記などから学ぶ」として東日本大震災で実際にリーダーとして活躍していた方々の示唆を基に、情報集約の難しさ、トリアージの重要性を解説した。

担当者の悩みに経験豊富な メンバーが回答

最後のセッションでは、事前に寄せられた参加者のBCPに対する悩みに対し、総合研究部のメンバーから回答を行った。回答メンバーには講義した研究員のほかに、当社BCP顧問で、株式会社リコーでリスクマネジメント部長などを務めた荻原毅氏、外資系損保会社で長年BCPやERM(全社的リスクマネジメント)を研究し、当社に入社した総合研究部永橋洋典上級研究員も加わった。

Q「BCPの基本を理解したい」

荻原顧問から「初動対応(防災計画)」と「BCP(事業継続計画)」の違いを明確化したうえで「初動対応を含めた広義のBCP」と「事業継続計画のみを言う狭義のBCP」を適切に使い分けること、BCPにも「原因事象型BCP」と「結果事象型BCP」が存在し、それぞれの利点を取り入れながら策定することの必要性などを解説した。また、西尾主席研究員からは防災とBCPの違いについてその「目的」「対象」「目標」「範囲」から解説を行った。防災の目的は身体・財産の安全確保や物的被害の軽減がその主な目的であり、対象は人や設備に限られ、範囲も拠点ごとと限定的だ。一方でBCPでは防災を行ったうえで、重要業務の継続や早期復旧が主な目的となり、その対象は全社横断的であり、サプライチェーンも含んだものであることが説明された。また、永橋上級研究員からはBCPによって「企業価値向上を目指す」こと、そのためには利害関係者の要求事項を満たすリスクマネジメント活動が重要であることが述べられた。

「BCP演習の方法について詳しく知りたい(シミュレーション演習)」

荻原顧問から、まず「演習」と「訓練」の違いについて解説があった。訓練とは、避難訓練や安否確認訓練など、主に手順の理解や習熟度の向上を目的とし、あらかじめ決められた手順を、決められた順番で、時間内にこなすことでいざという時の対応力を身につけるもの。それに対して演習とは、机上訓練などを通じて計画やマニュアルなど様々な準備に関する不足事項や課題を確認し、改善すべき点を明らかにし、計画や対応手順の妥当性や準備状況を検証するものであることなどが説明された。また、永橋上級研究員からは演習の目的と養うべきスキルとして①危機管理における事態の「想定力の強化」②各現場における「危機対応力の検証」③災害対応体制の「課題」の明確化とアクション-の3つを挙げた。

Q「拠点が多い企業のBCPはどのように策定・浸透させればよいか」

西尾主席研究員から、サービス業など多拠点を構える企業のBCP策定の注意事項について解説した。まず「各拠点を巻き込むこと」。拠点は往々にして、災害対策について本部に任せがちな傾向がある。各拠点の責任者やスタッフに、普段から「自分ごと」として問題意識を持たせることが重要であるとした。次に「連携を前提とすること」。部門最適、部分最適はBCP策定上の弊害にもなる。事業継続には「選択と集中」が必要なため、基幹となる拠点を予め絞り込み、そこから徐々に復旧・回復させていくことも有効であるとした。また、各拠点のハザードマップ分析も非常に有効で、各拠点のハザードマップ分析を徹底することで、被災リスクの少ない拠点をベースとした復旧戦略もありうると述べた。

お客様の声

事後のアンケートでは9割以上の企業が内容に「満足した」と回答したうえで、「ハザードマップ分析の重要性が分かった」「やるべきことが明確になった」「これからのBCP策定について道筋が見えた」などのご感想をいただきました。

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