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第2弾では、よりディープに、過去事例や健全度分析の活用、分析官の思いについてお届けします。
健全度分析座談会 第1弾はこちら
司会:取引を開始した後に、反社会的勢力と関係があることが分かってしまった場合にはどのように対処したら良いのでしょうか?
B分析官:取引が始まる前に分かれば、「総合的に判断して…」などと言ってお断りするわけですが、取引を始めてしまった場合は、実務的だと、徐々に取引量を減らしていくとか、契約更新のタイミングで「総合的に判断して、今回は他社に…」と契約を終了させるというのが現実的だとは思います。
A課長:当社にご相談があるタイミングでは、契約することがほぼ決まっていて、最終確認として調査を行ったところ、リスクが見つかるということはよくあります。営業部門と法務部門の力関係によっては、リスクがあるにも関わらず営業が押し切ってしまうこともあります。我々としては、そのまま見過ごすことはできないので、十分にリスクをご説明し、分かっていただく努力をします。しかしながら、契約をするかどうかの最終判断をされるのはお客様なので、残念に思うことはあります。
C分析官:以前の話ではありますが、ある企業様が、古くから取引している相手先が、悪い噂があったため、取引を中止しようと交渉しました。その際に相手から凄まれて、役員の方々が恐怖を感じ、取引を中止できずにズルズルと継続し続けてしまいました。その後、当社に調査のご依頼があり、はっきり「黒」という結果が出ました。具体的には、不動産登記から、反社会的勢力の大物にお金を貸している情報が出たので、その情報を調査対象先に示して、契約終了を申出たところ、今度はスッと引いたということがありました。暴排の動きが浸透しているので、きっちりした証拠を持って、適切に話を進めれば相手もそれ以上にごり押しできないという好例だったと思います。ただこの話には、前段があって、依頼企業様に調査結果を報告した際に、役員さんたちは前回自分たちが凄まれたことと、その対象者が、過去に事業に絡む暴力事件を起こしたという事実があることを知って、相当の恐怖を感じておられ、「聞かなかったことにしたい…」というご様子が見られました。暗に「何とか(調査結果を)なかったことにできないか」という意図のことを仰ったのですが、当社としては、反社との関係があることが分かった以上、取引を終了する以外の選択肢はない事を説明し、「ここはきっちり話をつけましょう。」と言って、交渉の場に当社のリスクマネージャーを同行させる提案をしました。その後については先ほどお話した通りですが、この企業様は役員の方々が強い恐怖を覚えていらっしゃることから、その後も当社から施設警備や身辺警護を派遣させていただいています。
司会:契約を終了した後も警備や警護が必要なのですか?
C分析官:この対象会社の場合は、依頼者様との契約がなくなったら、倒産する可能性がありました。そのため、恨まれて何をされるか分からないという強い恐怖を役員の方々が感じておられたので、念のために長期に渡って警備や警護をつけているという状況です。
A課長:ここが当社の強みでもあると思います。調査して結果を報告したら「はい終わり」ではなくて、リスクのある相手との契約をどうやって終了させるのかをアドバイスしたり、万が一に備えて契約終了交渉にリスクマネージャーを同行させたり、ご自宅や会社の警備や身辺警護を派遣するなど、一気通貫でサポートできることは、調査のみを行う会社との大きな差別化ポイントです。調査のみを行う会社ですと、結果を報告して、「あとは警察に相談してください。」で終わってしまうことが多いようです。
B分析官:対象者に問題があることを報告した場合、大抵は「今後どうしましょう…」という話になります。
C分析官:企業のご担当者様も、調べた相手が黒やグレーだと急に告げられるとあたふたしてしまう、というのが実際のところです。なかには、「こんな結果を渡されたってどうしようもないだろう!」と憤慨される方もいらっしゃいます。ですので、我々分析官は、調査結果をもって、どういう行動をすることがその企業様にとって得策なのかということを考え、「こういう結果が出たけれど、クライアント様の目的を達成するためには、こういうことをしていったら良いのではないでしょうか」という提案をします。
A課長:我々は、客観的な調査結果と、様々な角度から検討した提案をお持ちします。その上でクライアント企業様が最終的に判断をされるということになります。
司会:最終的には企業様のご判断になるということですが、問題を承知の上で契約を結んだり、継続し続けたりすることのリスクを教えてください。
A課長:結果の内容にはよると思います。反社会的勢力とはっきりすれば契約することはないと思いますが、グレーな部分がある場合は関係性によりますが、まず風評リスク(レピュテーションリスク)があります。悪い噂が立ったり、業界団体に「あの会社はこんな会社と付き合っているがいいのか?」とリークされたり…。会社の信頼性に関わることになります。
付き合うなら付き合うで、きちんとした体制を整えるということが重要です。
C分析官:外部から指摘されたり、騒がれたりした場合に、どういった理由を用意できるのか、ということがポイントです。例えば、分かりやすい例を1つ出すと、歴史のある港湾関係の会社で、会長が暴力団組織の幹部と懇意にしていたという噂がありました。確かに、調べると情報は出てきたのですが、戦後の混乱期の時代の話で、今は全く関係していませんでした。戦後の当時の状況を今の価値観で計れるかというとそうではないですよね。そういった時代背景や当時の暴力団の捉えられ方、価値観を考えながら、状況に応じた提案をしています。
B分析官:ケースバイケースなんです。確かに、「暴力団と交流した」という事実があっても、何十年も前の話で、今は全く関係していないということであれば、取引を開始しても問題がないのではないか、という判断になることもあります。
要は、「その理由で周りが納得するかどうか」ということだと思います。
A課長:当然、警察には報告の上、確認は取っておいた方が安全です。
司会:なるほど。社会通念上の合理的な説明ができるかどうかということが、判断のポイントなのですね。
司会:ほかにもうまく解決したり、逆に残念だった事例、健全度分析にまつわるストーリーなどはありますか?
A課長:黒を「白にした報告書を書いてくれ」と言われたことがあります。資金調達にあたって、調べても何も出ないだろうと想定して、当社に調査を依頼された企業様でした。その企業様の想定外に風評が出てしまい、資金調達ができないと倒産の危機にあるという局面で、そのようなお申し出になったようです。当然、当社としては、あるものをないとは書けません。実際に風評はあるわけですから…。資金調達の調査で風評が見つかると、財務局に提出しないといけないので、先方も必死だったのだと思います。結局、当社の調査結果は採用されず、別の会社に白の報告書を書いてもらったようです。最終的には、その会社は解散していました。
B分析官: 資金調達の時に、関東財務局の場合は事前相談に行かなければならないのですが、その際に、調査を行った会社名称を届け出て、調査報告書も提出する必要があります。さらに、資金調達後のリリース文には調査会社名と社長名が載るので、当社の信頼性に関わりますから、いい加減な対応はできません。
C分析官:それに、今はそういう情報は、いわゆるブラックジャーナリストと呼ばれる人たちがいち早く掴みます。それから、ネット探偵の情報収集力もものすごいものがあり、すぐにネットで叩かれます。たとえ、一時的に凌いで資金調達ができたとしても、不審なことは書かれるし、怪しい動きは明るみになってしまいます。
B分析官:実際に、調査会社が黒と出した報告書を、自社で白に改ざんして提出し、上場取消になった会社もありますよ。
A課長:変に取り繕っても隠せない時代なので、正直に対応した方が良いです。
B分析官:財務局のチェックも厳しくなっていて、調査会社の報告書に引っ掛かりがある場合は、「このことをどうやって確認したのですか?」と具体的に聴かれます。そこで、きちんとした回答ができないと、指摘事項として再確認を求められ、その要求に回答できないと認められない、ということになります。
A課長:確かに、お金を出せば要望通りに書いてくれる調査会社は存在します。それで通ってしまう場合もあります。ただ、そういう会社の報告書は裏付けのあるエビデンスは出せないです。当社の報告書は、すべて客観的事実に基づくエビデンスが出せるものですので、これだけの会員企業様が支持してくださっていると自負しています。
C分析官:私たちの出す報告書には、すべて情報ソースがついています。当社では、公知情報に基づく事実のみを記載します。興信所や小規模の探偵事務所などに頼むと「ある筋の情報によると」や「警察筋の情報によると」といった証拠にならない内容を書く会社もあります。当社のお客様の中にも、そういう「ここだけの話」を求められる方もいらっしゃいますが、そういう情報は何かあった時に使えません。何らかのトラブルで訴訟になった時は「ある筋の情報」では戦えませんから。裁判の判断材料として有効になるのは、ソースが明確な客観的事実だけです。これは当社の強みだと思います。
B分析官:当社の場合、風評についても裏付ける情報があるかを確認します。裏付けがなくて風評だけであれば、「新聞報道等は見受けられませんでした。」と明記します。新聞報道が出てくれば、「風評と同内容の逮捕報道(裁判報道など)の新聞報道が見受けられました。」と記載します。
E分析官:情報源についていうと、企業様によっては「警察OBが自社にいるから反社チェックは大丈夫」、「現役の警察官とのパイプがあって情報が聴けるから安心」と考えている場合がありますが、反社チェック機能や反社排除という点では安心とは言い難いと思います。
A課長:情報を調べる業務と、警察との窓口を担える立場は、機能として別のものです。非公式に聴いた話というのは、情報ソースとしては客観性が認められず、裁判等では証拠として採用される情報とは言えません。その担当者様に、客観的情報を収集、分析するスキルがあれば別ですが、そうでないなら、反社チェックは別途実施する必要があると考えるべきです。
B分析官:当社の報告書は、実際に裁判で採用され、その企業様が勝訴したという実績がありますよ。
司会:最後に、会員企業様やこの記事をご覧下さった皆様に、企業情報部や健全度分析についてお伝えすることがありましたら、お願いします。
A課長:当社には長い間、積み上げた情報とノウハウがあり、経験豊かな分析官がいます。反社の最新の動向や流行、スキームはどこよりも把握しているつもりです。ですから、何か心配事や少しでも気になることがあればご相談頂きたいと思います。
B分析官:反社チェックと言っても、通り一辺倒のやり方しか知らないという方も多いので、「こういう風に調べると、こういう情報が出てくるんだ」ということを体感していただくためにも、一度ご利用いただくのも良いのではないかと思います。セミナーでは「リスクセンスを磨いてください。」とお話ししていますが、その磨き方はなかなか分からないと思います。磨き方の一例として、健全度分析のやり方をご説明させて頂くことで、ご担当者様や企業様が成長していかれることがあります。そういった成長の一助となり、お手伝いさせていただくというのが、健全度分析チームの目指すべき方向性だと思っています。