ロスマイニング トピックス
総合研究部 上席研究員(部長) 伊藤岳洋
【もくじ】
(1) 店舗運営における廃棄ロスと機会ロス
(2) 食品ロスの現状と取り組み
(1) 日本マクドナルドがFC募集再開
(2) 廃棄カツ横流し ダイコー会長有罪
1.店舗運営における廃棄ロスと機会ロス
皆さま、こんにちは。
本コラムは、消費者向けビジネス、とりわけ小売や飲食を中心とした業種にフォーカスした経営リスクに注目して隔月でお届けしております。
本年はロスマイニング・トピックスをお読み頂きまして、誠にありがとうございました。本年最後となる第5回目は、小売業における廃棄ロスとその多くを占める食品ロスについて考えてみたいと思います。来年も引き続き宜しくお願い申し上げます。
(1) 店舗運営における廃棄ロスと機会ロス
これまでのトピックスのおさらいとなりますが、小売業におけるロスの多くは、実地棚卸における実在庫と理論値である帳簿在庫との差で直接的には示されます。直接的に損益計算上に表れないロスとしては、非効率なオペレーションによるロスや労務管理上のロス、従業員のモチベーション維持・向上や意欲など組織を動かす上での教育・訓練にかかわるロスなどを挙げることができます。ここでは直接的に表されるロス(棚卸減耗費)をみていきますが、その発生は、外部要因によるものと内部要因によるものとに分けられます。主な外部要因としては、万引きなどの窃盗が挙げられます。一方の内部要因の主たるものは、不適切な在庫管理や内部不正が挙げられます。以前にも述べましたが、日本の小売業におけるロス額は、1兆円を超えるという調査があります(センター・フォー・リテイル・リサーチ社 邦題「世界の小売業におけるロスと犯罪により発生するコストについての調査」)。この金額は概ね、本稿でいう棚卸減耗費と捉えることができます。この調査を再確認すると、日本における小売業の売上高ロス率は1.04%です。小売業の売上高営業利益率が2.1%(経済産業省「商工業実態基本調査」)であることを踏まえると決して少ないとはいえず、営業利益の約半分に相当する金額がロスとして消えていることになります。
棚卸減耗費以外の経費項目で損益計算書に計上されるロスでは廃棄ロスがあります。販売のタイミングを失った季節品や流行遅れ、経年劣化で古くなり、価値が低下した商品を廃棄処分する際には、原価性を有しているもの(正常な営業活動のもとで毎期経常的に発生する程度のものは原価性を有するものとしている)の場合、販売費および一般管理費(販管費)で計上するのが一般的です。閉店など通常の営業の範囲を超えた廃棄処分の場合は、営業外費用、または、特別損失に計上するのが一般的です。
販管費で計上される廃棄ロスには、大きく2つに分けることができます。ひとつは、前述の商品価値が低下したものの廃棄であり、雑貨などの非食品を含むドライグロッサリー(生鮮以外の食品である調味・乾物や飲料、菓子などが該当)から主に発生します。もうひとつは、米飯やパン・生鮮食品(日配品)など発注量と販売量との差によって、納品から販売期限まで比較的短期間のうちに発生する廃棄です。前者の発生要因は、発注量と販売量との差というよりもむしろ、商品選定や売り方などのプロモーションにその原因がある場合が多いという特徴があります。そもそも商品のライフサイクルが短くなっているため、新商品の発売直後が販売のピークとなりその後販売が急減し、衰退期になるという右下がりの販売曲線を描きます。商品のライフサイクルが短くなると漫然と販売実績に基づいたリピート発注は、それまでのように販売は見込めないことが多いため、廃棄につながる可能性が高くなってしまいます。そのように最早、販売が見込めない商品のことを死に筋商品と言います。
一方で、定番品と呼ばれる商品は販売量自体少ないものの長期間に渡って販売が継続し、そのような定番品の占める売上の構成が大きくなるというロングテールの法則が成り立っています。売り場面積が限られる店舗においては、死に筋商品を売り場から撤去して売れ筋商品や新商品への入れ替えを行なっていくことが、廃棄ロスと機会ロスを最小限にし、最終的には利益を最大化することになります。死に筋商品と定番品の見極めも重要です。定番品の販売実績は、売れ筋商品と比べると低い水準ですので、単に実績だけではなく、機能と用途をみて代替品があるかどうか、定番ブランドとして顧客に浸透しているかなど総合的に判断しなければなりません。単に販売実績だけで判断して売り場から撤去すると本来揃えておくべき(代替の利かない)商品が売り場から消えてしまいます。顧客にとっては、そこに店舗が無いことと同じで、品揃えのある店舗へ足を運ぶことになります。
定番品を外すことなく品揃えをして、新商品は、導入と素早い売り切りを繰り返すことが売上を最大化します。そのサイクルを回すことで、品揃えに対する顧客の期待を継続的に高め、もう一品購入するという客単価の向上だけではなく、店舗に足を運ぶという来店頻度の向上につながります。そのような購買の実態を踏まえると、販売ピークすら作れない新商品を選定することは、すなわち、廃棄につながる可能性を高めてしまいます。たとえ販売ピークがある商品を選定したとしても、短期間に売り切るためには顧客に新商品を訴求するPOPの展開やフェイシングなどのプロモーションが重要になります。
後者の米飯や日配品などで発生する廃棄の主な要因は、販売量以上の発注がされることによりますが、このような商品は十数時間から数日という短い販売期限であるためドライグロッサリーの商品よりも発注と販売の関係がシビアになります。したがって、販売予測の精度を高めることが廃棄のコントロールでは重要になります。高い精度で販売を予測するには、さまざまな情報を収集する必要があります。前年同曜日の販売など過去の販売実績や天候・気温・風の強さなどの予報は、販売予想をするうえで基礎的データとなります。加えて、近隣の祭事や企業・学校などの人の動き、CMの影響などを把握して発注を決定することになります。ここで重要なのは、過去実績や条件をいくら分析してもそこに発注者の意思と意図を発注に反映させないことには、縮小均衡の発注に陥りやすい点を理解することです。
縮小均衡の発注(販売実績そのものを発注のベースとするような発注)は、じわじわと売上を下げてしまいます。一方で、廃棄が発生しないので、目先の経営としては、いわゆる「ゆでがえる」の状態になってしまいます。そのような状態では、廃棄という販管費を抑えられたとしても小売業としては顧客の支持を失い衰退していくことになります。機会ロスは現在の売上を逸するだけでなく、将来の売上まで逸するところにその怖さがあります。
店舗の営業上の数値管理では、日別の売上(客数・客単価・買上げ点数・買上げ単価)については前年同曜日、累計については前年同週対比、前年同月比というような売上に関係する数値と人件費や廃棄などの販管費とを中心にエリアマネジャーや統括責任者が管理しているのが一般的です。ただし、小売業においてKPI(重要業績評価指標)は、伝統的に売上偏重の傾向が強く、人件費や廃棄などの販管費のシビアな管理は不十分な場合が多いと感じます。人件費や廃棄の管理はファミリーレストランなどの外食産業の方が、シビアに管理しており、たとえば、パート・アルバイトのシフトも繁閑に応じて当日に変更するなど柔軟に対応している傾向があります。小売業の売上偏重の傾向は、「欲しいものを」「欲しいときに」「欲しい分だけ」というような消費自体が成長していたときの「顧客指向」の運営スローガンに表れています。事実、顧客が選べる「アイテムの幅」と「商品の量」を実現した売り場は、売上を伸ばすコツでもあります。最終的に「いつもの」商品を選んだとしても、選択肢のあるなかで購入したということが顧客の満足度を高めるからです。「売れ残り」という印象の売り場で「いつもの」商品を購入せざるを得ない状況と比較すると満足度は一目瞭然です。品揃えを重視さえすれば売上が伸張して廃棄などの経費は、その伸張がもたらす利益で十分に吸収でき、成長サイクルに乗り遅れないことこそが結果として「運営力」と理解されていました。少子高齢化の人口減少によって消費もシュリンクしていく現代では、物量があるかないかのような一律の品揃えだけでは到底、経営は成り立ちません。したがって、小売業では、商品選定とその売り方であるプロモーションや、廃棄ロスも機会ロスも両方を最小限にしながら顧客のニーズに応えるための実行・検証による学習を自律的に取り組んで行くことが経営的な宿命とも言えると思います。つまり、商品選定とその売り方などプロモーションの強化をしつつ、日々の廃棄の多くを占める米飯や日配品はデータを活用した意思のある発注を行ない、販売の結果発生した廃棄を総額の管理だけではなく、単品レベルで検証を実施していくことが必要です。意思のある発注とは、仮説を立てるということですので、検証を行なうという事後的な反省を積み重ねることによって仮説の精度が向上していくものなのです。また、ABC分析の上位単品と下位単品では同じ廃棄率で管理することは非合理的です。検証における評価の基礎データとしてマネジメントKPIを業種・業態に応じて設定する必要があります。
(2) 食品ロスの現状と取り組み
ここまで廃棄ロスや機会ロスを中心に店舗運営的視点でみてきました。廃棄ロスの大半を占める食品ロスという視点では社会的な問題となっており、削減やリサイクルの推進を農林水産省、消費者庁、経済産業省、環境省、文部科学省など省庁横断的に取り組みが始まっています。
日本における廃棄物処理法における食品廃棄物は2,797万トンでそのうち、可食部分と考えられる「食品ロス」の量は、約632万トン(事業系330万トン、家庭系302万トン)です。これは、世界全体の食料支援量の約2倍に相当します。日本国民1人1日あたりの食品ロス量は、おおよそ茶碗1杯分のご飯の量に相当します。そこで、食品廃棄物等の発生抑制と再生利用の推進の強化として、食品リサイクル法に基づく新たな基本方針が策定されています。
(1)食品循環資源の再生利用等の促進の基本方針
- 食品廃棄物等の発生抑制を優先的に取り組んだ上で、再生利用等を実施
- 食品循環資源の再生利用手法の優先順位は、飼料化、肥料化、その他の順
(2)食品循環資源の再生利用等を実施すべき量に関する目標
(旧目標:24年度まで/新目標:31年度まで)
- 食品製造業 85% / 95%
- 食品卸売業 70% / 70%
- 食品小売業 45% / 55%
- 外食産業 40% / 50%
(3)食品循環資源の再生利用等の促進のための措置に関する事項
1)再生利用等
- 食品廃棄物等を年間100トン以上排出する事業者からの定期報告について、再生利用等の実施状況を都道府県にも報告(平成27年度実績(平成28年度報告)から実施
- 地域の再生利用事業者の把握と育成。地方公共団体を含めた関係主体の連携を促進
- 食品廃棄物等の再生処理を行なう登録再生利用事業者について、これまでの再生利用製品の製造・販売の実績を考慮するよう、登録の基準を追加
- 食品リサイクルグループの形成を促進
- 先進的に食品循環資源の再生利用等に取り組む優良な食品関連事業者を表彰(もったいない大賞)
2)発生抑制
- 食品関連事業者は、食品廃棄物等の発生原単位が基準発生原単位以下になるよう努力
- 国は、食品ロスの発生状況をより実態に即して把握し、取り組みの効果を数値化
- 様々な関係者が連携して、フードチェーン全体で食品ロス削減国民運動を展開
農林水産省の「食品ロスの削減とリサイクルの推進 ~食べものに、もったいないを、もういちど~」では、食品製造業、卸売業、小売業の食品に関するサプライチェーン(フードチェーン)における商習慣がロス発生のひとつの要因と指摘しています。いわゆる3分の1ルールです。
小売店などが設定するメーカーからの納品期限、および、店頭での販売期限は、製造日から賞味期限までの期間を概ね3等分して設定された商習慣です。賞味期限は6ヶ月の場合、メーカーから卸を通じて小売店に納品される際の期限が2ヶ月、店頭での販売期限が2ヶ月、販売期限から賞味期限までが2ヶ月となります。
納品期限により卸・小売店からメーカーに返品される額は年間821億円、販売期限により小売店から卸に返品される額は年間432億円に上ると推計されています。過剰在庫や返品等によって発生するロスは、フードチェーン全体で解決する必要があるため、製造業、卸売業、小売業の話し合いの場である「食品ロス削減のための商習慣検討ワーキングチーム」を設置して、その取り組みを支援しています。
その取り組みのなかで、飲料・菓子の一部品目の納品期限を2分の1にして検証を行なっています。賞味期限が6ヶ月の場合、小売店への納品期限を3ヶ月に延ばし、販売期限については各小売店が設定するものです。この結果、食品製造業では未出荷廃棄の削減、物流センターでは納品期限切れ発生数量の減少やメーカーへの返品の削減、小売店では店頭廃棄増等の問題はほぼないということが確認されました。この結果から飲料、菓子の納品期限緩和を推奨し、イトーヨーカ堂、東急ストア、ユニー、セブンイレブン・ジャパン、サークルKサンクス(当時)、イオンリテール、ファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキ、スリーエフ、ポプラ、ミニストップ(28年度予定)などの小売業が納品期限を見直しています。
食品ロスに対する関心は、世界的に高まっています。
世界の食品廃棄は国際連合食糧農業機関(FAO)の2011年の調査(*1)によると世界全体で人の消費向けに生産された食料は約40億トンであり、その3分の1にあたる約13億トンが毎年失われ、あるいは捨てられています。そのうち、本来食べることができるにもかかわらず、廃棄されているものは17%にあたる2億2,000万トンでサハラ以南アフリカの食料純総生産量に匹敵するといわれています。食料廃棄を地域別に、消費および消費前の各段階においてどの段階で発生したかの調査では、先進工業国の特徴としては、損失・廃棄全体の約40%強は、小売店や消費段階で発生しているとしています。それに対して開発途上国では、損失・廃棄の約40%は生産から加工に至る段階で発生しており、小売店や消費段階ではごく少ない量です。
開発途上国、とりわけ低所得国における食料ロスの原因は、主として、収穫技術や貯蔵と冷却施設が不十分であることや包装、マーケティングにおける財政的、経営的および技術的制約に関連しているとしています。
一方の中・高所得国における食料ロス・廃棄の原因は、主としてサプライチェーンにおける各アクター間の協調の欠如と消費者の習慣にあるとしています。農家は、予期し得ない天候不良や病害虫の発生を心配する一方で、合意した量の出荷を確保するために計画以上の量を生産してしまいます。
余剰生産物は加工業者や飼料として販売されますが、財政的には割に合いません。生産が需要を上回ると食料のロスにつながりやすくなります。また、スーパーマーケットの生鮮品に対する高い「外観品質基準」が食料の廃棄につながると指摘しています。一部の生産物は、重さ、サイズ、形および外見に関する厳格な基準のせいで、スーパーマーケットによって農家の庭先で拒否され、大部分が人の食料として出荷されずに飼料に回されたり、廃棄されたりすることになります。このようなスーパーマーケットが定める「外観品質基準」は、消費者が外見で劣る商品は買わないものとスーパーマーケットが考えているためです。しかし、消費者は味に影響がない限り、不揃いの生産物でも買いたいと思っていることを調査が示しているとしています。消費者はむしろ、鮮度や安心・安全を求めており、外見を最優先に生鮮品を選んでいるのではないことを理解すべきです。もっとも、汚染された水や農薬の危険な使用、薬品の残留成分、あるいは、非衛生的な貯蔵など安全性を脅かすような食料品は真っ先に廃棄されなければなりません。
世界、日本の食品ロスに対する関心の高まりによって、食品ロスは社会的に取り組むべき問題であるという認識が広がりつつあります。小売業もフードチェーンのなかで食品ロスの削減やリサイクルに取り組んでいくことが求められています。それは、単に個別の企業の経費削減という次元ではなく、社会の要請と認識すべきです。行政や業界の取り組みの推進も当然に無視できませんが、消費者の意識の変化も認識しなければなりません。
消費者庁が「倫理的消費調査研究会」で中間報告を取りまとめるなど、倫理的消費(エシカル消費)をめぐる動向にも注視が必要です。エシカル消費とは、地球環境や社会貢献などに配慮したモノやサービスを積極的に消費する行動です。消費者それぞれが、各自にとっての社会的課題を解決したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行ないます。そのような消費行動に対応している事例としては、スターバックスの「フェアトレード」があります。搾取せず発展途上国の商品を適正に購入するということですが、具体的には児童労働によって収穫などされた「豆」を使わないことを顧客に訴求しています。資生堂の研究では動物実験をしないという宣言も事例として挙げられます。逆に環境や人権に配慮しない企業行動は、社会から非難され、商品やサービスの不買運動、ボイコットにつながる恐れがあります。そこまででなくとも、そのような姿勢の企業は長い目で見れば、消費者からの支持をえられず社会的な評価も得られないと考えるべきでしょう。
これまで述べてきたように、フードチェーンを担う小売業として食品ロスの削減やリサイクルに取り組むことは社会の要請でもあり、その要請に応えていくことが小売企業の責任でもあるわけです。しかもそれは、単独の取り組みでは不十分であり、フードチェーンが連携と協力をするという、川上から川下まで流通過程のマネジメントが求められています。納品期限の見直しや食品廃棄物のリサイクルもそうですが、他にも小売業と製造業が協力して賞味期限そのものを延長することで、廃棄を抑制できます。特に付加価値を訴求するPB(プライベート・ブランド)商品では、商品の企画・開発段階で製造工程の見直しや容器包装の高機能化に取り組むことで食品ロスを抑制・削減できます。たとえば、カットレタスのように劣化の早い商品であっても、酸素バリア効果や結露防止効果のある高機能包装袋を使用することで4日程度は褐色や萎えを抑えることができるという事例があります(第3回食品産業もったいない大賞 農林水産大臣賞受賞)。取り組みやその成果を正しく消費者に訴求していくことが継続力につながり、また、マーケティングのうえでも必要なことではないかと思います。
2.注目トピックス
(1) 日本マクドナルドがFC募集再開
日本マクドナルドホールディングスは来年からフランチャイズチェーン(FC)オーナーの募集を再開します(日本経済新聞12月10日付朝刊)。2014年7月に発覚した使用期限切れ鶏肉問題で業績が悪化してからは募集を停止していました。鶏肉問題が収束し、売上水準が回復してきたため再開するものと思われます。募集再開の環境が整ってきた背景には、積極的な新商品の投入や既存店の改装によって業績回復ペースをあげてきたことがあります。新商品は4月に発売した期間限定商品「グランドビックマック」や「クラブハウスバーガー」(マクドナルドHPより)などの高価格帯の商品の販売が客単価を引き上げることに寄与しました。
また、同社によると、平成30年までに店舗の90%を「モダン化」するという計画であり、店舗の改装は上半期で211店舗、今期中に500~600店舗を実施する予定ということです。
FCオーナーの募集再開の背景にはフランチャイズビジネスに共通する問題が潜んでいます。FCオーナーの高齢化問題です。同社のFCオーナーの平均年齢は58歳です。モスバーガーを運営するモスフードサービスもFCオーナーの平均年齢は60歳に迫っています。ファーストフードチェーンに限らず、コンビニエンス・ストアチェーン(コンビニチェーン)も同様にFCオーナーの高齢化が進んでおり、FCオーナーの確保にというあらたな競争に各チェーンは募集条件の緩和を打ち出しています。それは、大手コンビニチェーンが大量出店戦略を続けており、オーナー不足が足かせになってきているからです。ファミリーマートは、今まで原則夫婦2人が専業で働けることが条件でしたが、単身者でも契約できるように条件を緩和しています。さらに、新規契約をする際の年齢制限を55歳から70歳に引き上げています。ローソンも年齢制限を55歳から65歳に引き上げたほか、意欲あるオーナーには多店舗経営を推奨しています。しかも、多店舗経営するオーナーのなかで優秀であると本部が認めたオーナーは、本部のスーパーバイザーが集う会議に出席して本部機能の一部を担い、さらに帰属意識を持たせる仕組みを導入しています。
フランチャイズチェーンはオーナーの育成にも力を入れています。オーナー候補を契約社員として採用し、一定の期間を研修と位置づけ、ある程度のレベルでオーナーとして独立させる仕組みを導入しているチェーン本部が多いです。コンビニチェーンでは3ヶ月から6ヶ月が契約社員としての研修期間の平均です。一方で、マクドナルドでの研修期間は数年としている模様です。それは、オペレーションの複雑さや多額になる出店の投資などの理由だけでなく、正社員の独立も推奨していることから、いわゆるチェーンのDNAをより仕込んだ人材をオーナーとしたいという意図があるのかも知れません。そのような情報まではHPではわかりませんので、起業精神がチェーン本部の方針とマッチするかの見極めが重要になります。
(2) 廃棄カツ横流し ダイコー会長、みのりフーズ元実質経営者ともに有罪
カレーチェーン店CoCo壱屋を展開する壱番屋が廃棄した冷凍ビーフカツの横流し事件で、産業廃棄物処理業者のダイコー会長に懲役3年執行猶予4年罰金100万円の判決(12月16日、名古屋地裁)が言い渡されました。法人としてのダイコーにも罰金50万円の判決が下されています。また、みのりフーズ元実質経営者に懲役2年6ヶ月、執行猶予3年、罰金50万円の判決(12月20日、名古屋地裁)が言い渡されています。判決で裁判官は「安全性や衛生面に問題のある大量のカツを世間に出回らせた。食品に対する消費者の信頼をないがしろにするかのような犯行で、社会に与えた影響も大きい」(12月16日、名古屋地裁)、「利欲的な動機に酌むべきものはなく、転売の際に廃棄物と露見しないよう工作もするなど犯行は相当悪質」(12月20日、名古屋地裁)と述べています。食品廃棄物不正転売事件の社会に与えた影響の大きさや悪質性が司法の場でもあらためて明らかにされました。
不正転売事件は、壱番屋から廃棄委託された冷凍カツ約6万枚を廃棄処分したと虚偽の報告をして壱番屋からの処分委託料を不正に詐取したうえ、卸売業者である、みのりフーズに不正流通(約5万枚を販売)させたものです。みのりフーズから複数の卸業者を通じてスーパーマーケットや弁当店などに転売され消費者に渡りました。
事件は詐欺のほかにも、廃棄物処理法(マニフェストの虚偽方報告等)や食品衛生法(無許可営業)にも違反する疑いがあります。廃棄物処理法では、廃棄の委託を受けた産業廃棄物処理業者は、廃棄を委託した食品製造・販売業者などの排出事業者に対して処理を終了したというマニフェストを報告する義務があります。そのようなことを含めてこの事件は、以下の問題が浮かび上がりました。
1)廃棄物の取り扱いに関して
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に抵触するおそれ(マニフェストの虚偽報告)
- 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律の登録要件を満たさないおそれ(国が把握できていなかった点)
2)食品の取り扱いに関して
- 食品衛生法に抵触するおそれ(無許可営業)
- 食品表示法に抵触するおそれ(表示がない商品が小売りされた点)
このような問題点を受け、国による監視体制の強化が打ち出されています。廃棄物処理業者への抜き打ち検査を都道府県に対して行なうように通知しています。特に、食品廃棄物の不正転売に係る立ち入り検査の強化を図るものです。一方、排出処理業者へも対策を講じるように求めています。食品廃棄物をそのまま商品として販売することが困難となるような適切な措置を講じることやそもそも食品ロスを削減することなどを求めています。
このような監視体制の強化は、これまで食品廃棄物を食品として不正転売することを想定していないという監視体制(検査の量や方法、電子マニフェストのバックチェックなど)が、許認可業務における性善説に基づいていたことを示しています。単に監視強化をするだけでは課題の解決には不十分であり、廃棄物処理に関わる人材の育成などの仕組みの強化も行ない、監視と育成の両面から取り組む必要があります。
3.ロスマイニング®・サービスについて
当社では店舗にかかわるロスに関して、その要因を抽出して明確化するサービスを提供しております。ロスの発生要因を見える化し、効果的な対策を打つことで店舗の収益構造の改善につなげるものです。
ロス対策のノウハウを有する危機管理専門会社が店舗の実態を第三者の目で客観的に分析して総合的なソリューションを提案いたします。店舗のロスに悩まされてお困りの際には是非ご相談ください。
【お問い合わせ】
株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究室
Mail:souken@sp-network.co.jp
TEL:03-6891-5556
———-【参考資料】————
(*1)「世界の食糧ロスと食料廃棄~その規模、原因および防止策~」
この調査研究は、フードチェーン(食料の生産から貯蔵、流通、加工、販売、消費に至る一連のプロセス)全体を通して発生するロスの焦点を当て、その規模の大きさを評価している。さらに、食品ロスの原因を特定し、それを防ぐために採りうる方策を明らかにしている。