ロスマイニング トピックス
総合研究部 上席研究員(部長) 伊藤岳洋
パワハラ発言が生むヒューマンリソースのロス
皆さま、こんにちは。
本コラムは、消費者向けビジネス、とりわけ小売や飲食を中心とした業種にフォーカスした経営リスクに注目して隔月でお届けしております。
前回は万引きによるロス、前々回は内部不正によるロスと商品や金銭のロスについて取り上げてきましたが、今回はヒューマンリソースに関するロスについて考察していきたいと思います。ヒューマンリソースに関するロスは、棚卸し減耗にも商品評価損にも表れない目に見えにくいロスであるため、経営上のロスとして認知すらされないことが少なくありません。しかしながら、ヒューマンリソースに関するロスは組織の規律や活力を蝕み、確実に企業の競争力を低下させます。そのなかで、もっとも代表的なものは、労務やコンプライアンスに関連するものです。わずかにでも顕在化している問題を放置するとその問題は規模を大きくしたり、同種など横への広がりをみせたり、質的な深刻さを増したりします。さらに組織的に放置されると、いわゆる不祥事として社外に知れ渡ることになります。その場合、企業は信用失墜、売上利益の低下など経済的損失、株価の下落など深刻なダメージを被り、信頼回復まで多くの時間と労力を要することになり、その道のりは険しいものとなります。
特にヒューマンリソースに関するロスは、企業風土が影響している場合が少なくありません。通常では達成できないような高い目標を課して法令やコンプライアンスに違反する事例や目標や業績さえクリアすれば、人格やリーダー資質に関係なく評価される人事評価基準を採用している事例など、現時点では最良の選択ではないにもかかわらず、組織が過去の選択した決断によって制約を受け、なかなか変えることができない風土が問題の原因として挙げられます。そして、その風土は脈々と人を介して引き継がれていくことが通常です。
そこで、小売業に関わるコンプライアンスに問題のある典型的なケース事例を考えてみました。このケースについて、やや盛りだくさんですがコンプライアンス上問題のある点を指摘してみましょう。さらに、このような事態に至った直接的な原因や間接的な遠因についても挙げてみましょう。最後に、本来Aが配慮しなければならなかったマネジメントについても考えてみましょう。以下のケースを読んで指摘してみてください。
コンビニエンスストア本部で加盟店を担当するスーパーバイザーのAは、都内の繁盛店が多い地区の8店舗を担当しています。新卒で入社して、直営店で店長を経験した後、スーパーバイザーに昇格して6年目です。同期のなかでも早く店長やスーパーバイザーに昇格しました。バイタリティや行動力が非常にあり、それが営業成績につながっていることを評価されての抜擢でした。とにかく、自分がこうしようと決めたことは、相手を説き伏せ、時にはやや強引にでも押し進める強さが人より際立っています。売上のアップのため自作のPOPの作成や商品を大量陳列した売り場作りができているか1店舗ずつ担当店を確認するフットワークのよさも特徴です。上司からの厳しい指導も経験してきており、そのような加盟店の売り場の確認のためなら、早朝・深夜を厭わず働くこともあたりまえと思ってそのとおり行動しています。Aはプライドが高く、上司から罵倒されることがもっとも嫌いです。
Aは抜群の成績を認められて、地区の80店舗、スーパーバイザー10名を統括するディストリクトマネージャー(DM)に昇格しました。同期では一番早くDMに昇格し、若手や年上のスーパーバイザーの上司となり、自分への会社の期待を感じつつ、これまで以上に成績を上げようと張り切っています。
Aより2歳年下のスーパーバイザー3年目のBは、目立たないものの真面目に仕事に取り組むタイプです。ひとのよさは誰もが認めますが、気が弱い面もあります。担当店のひとつ、荻窪タワー店のオーナーは、少し気難しいことは本部内でも有名で、Bはこのオーナーを苦手に感じています。
秋冬の新商品として、メーカーと本部がタイアップした両者のロゴ入りのダブルブランドのビールが発売されることになりました。本部は全店導入することを前提に発売1週間の値引き導入条件を交渉し、条件を勝ち取っています。商品幹部会議でも商品部から運営部に全店導入の要請が強くなされました。新商品の導入率は、運営部の加盟店への徹底力として会議ではよく問題になる指標です。ただ、今回は100%導入が目標なので、多くのDMが緊張感をもって受け止めています。
DMに昇格して間もないAは、100%導入に自信がありました。自身はスーパーバイザーのときも新商品導入を徹底してきていたからです。それほど、難しい仕事とは感じていませんでした。部下のスーパーバイザーとの会議でも、全店導入を徹底するよう強い調子で命令しました。「全店導入は絶対だ。うちのエリアで売っていない店舗を出すわけにはいかない。もしもそんなことになったら、そんなスーパーバイザーはうちには要らない。店長からやり直してもらう」とAは言いました。会議の翌日からスーパーバイザーは新商品の推奨などのため、店舗をラウンドしています。
Bの担当する荻窪タワー店が気になったAは、Bに電話して、「荻窪タワー店、大丈夫か。入らなかったら、ただでは済まないからな」と念押ししました。「はい、ただ、あのオーナーは少し気難しくて・・・。『北海道ビール』と入れ替えするから在庫がなくなったら発注すると言っています」。「導入条件もあるし、売れる商品なんだから初回から入れてもらえ。3年もやってて、そんなことも説得できねえのかよ。そんなんじゃ、店長と入れ替えだぞ」。Bは、少し思いつめたように「はい、・・・絶対入れます」と答えました。
そして、発注確定の日、データ確認をしたAは担当店全店の発注が入っていることを確認し、安堵しました。ところが納品当日、カンカンに怒った荻窪タワー店のオーナーからAの社用携帯に電話が入りました。「おまえんとこのスーパーバイザーが勝手にビールを発注しやがったぞ。どうしてくれんだ」と怒り心頭です。Bはオーナーが不在の時間に訪店して、発注端末を操作して新商品を発注していたのです。発注権限はオーナーにあります。Aは店舗に訪問し、平身低頭謝罪するはめになりました。Aだけでは済まず、後日上司のゾーンマネジャーも謝罪のため訪問し、荻窪タワー店の担当スーパーバイザーをベテランに変更して事を収めました。
Aの怒りは、Bに向かいました。その後、会議でもAの発言がBに対して厳しくなりました。「なんで自分が怒られているのか分かっていない」、「反省しているふりをしているだけ」、「毎回同じことを言う身にもなれ」、「申し訳ない気持ちがあれば変わっているはず」、「相手するだけ時間の無駄」、「今日使った無駄な時間返してくれ」「もうお引取りいただいて結構です」などと発言。このような叱責は、会議だけにとどまらず、スーパーバイザーのメーリングリスト宛の連絡メールでも同様に行われました。また、会議終了後の飲み会にもBが誘われないことが多くなりました。さらに、Bが担当している店舗への提案・指導は、Bを飛び越えてAが直接行うようになりました。ついに、Bは睡眠に支障をきたすようになり、適量より多くの睡眠導入剤を服用して救急車が出動する事態に・・・・。
さて、いかがでしょうか。明らかにコンプライアンスに反する言動が多く記載されていると思います。
メーカーと本部がタイアップした両者のロゴ入りのダブルブランドのビールの新商品を全店に導入するという目標自体は、チェーン本部としては健全な目標といえます。特に新商品は、追加的な売上向上の原動力のひとつであり、顧客満足の向上にも直結します。フランチャイジングの役割分担として、本部は競争力のある商品を開発して加盟店に提供し、加盟店は顧客ニーズに対応した品揃えをして顧客に実際に販売するものです。Aの全店導入の命令の際に、本来はこのような動機付けをすべきであり、すでに共通認識が図れていたとしても理念として繰り返し説くべきでしょう。そのような前提があり、追加的な売上向上として販売目標をたて、そのための売り方という戦術を話し合うことが重要です。小売業に携わるものとして売ること(顧客に買ってもらうこと)はなによりのモチベーションとなります。
その部分が欠落しているにもかかわらず、降格を示唆するなどの恫喝的な発言のみによって組織を動かそうとする姿勢は問題です。そのようなプレッシャーによるマネジメントは、一定レベルまでの徹底力は発揮できますが、メンバーの自発的な取り組みを阻害する要因にもなり、個人の成長や組織の飛躍的な成果の発揮にはつながりません。
なぜAはこのようなパワハラ的な指導をしてしまったのでしょうか。最大の要因は、Aのマネジメントの未熟さにあります。「バイタリティや行動力が非常にあり、それが営業成績につながっていることを評価されての抜擢でした」との記述からわかるように人事評価の基準が営業成績に偏重している可能性が窺えます。リーダー資質を満たしていないにもかかわらず、管理職に登用した場合、会社側には管理職としての育成が不可欠です。もうひとつの大きな要因としては、Aのこれまでの上司もプレッシャー型のマネジメントをしていた可能性が挙げられます。「Aはプライドが高く、上司から罵倒されることがもっとも嫌いです」という記述から、古くから指導現場において「罵倒」があることが窺えます。このような乱暴なパワハラ的指導を受けてきた人は、自身ではそれを嫌って否定してきたにもかかわらず、自分がマネージャーになったときに、同じようにパワハラ的な指導をしてしまうことが少なくありません。つまり、パワハラは再生産されるとうことです。特に閉鎖的な組織では、外部からの影響を受けにくいため、誤った規範が固定化するなかで、その組織の規範が社会の規範から乖離してしまうことがあります。さらに、その乖離が大きくなるほど、誤った規範への同調が起きます。組織の規範には沿うが、社会からの規範から逸脱してしまうことから、このようなパワハラの再生産が起こってしまうのです。Bの不適切行為発覚後もAのパワハラが続きますが、周りのメンバーがそれを黙認していることからも不作為が蔓延する閉鎖的な風土であることを裏付けています。
その他の不適切行為を以下のとおり挙げておきます。
- Bの不正発注行為
- 部下の失態への報復的仕打ち
- メンバー皆のまえでの執拗な叱責
- メーリングリストでの叱責
- スーパーバイザー担当者への尊重を踏みにじった加盟店への直接指導
特にAのパワハラ発言は、指導の範囲を超えて執拗に人格を否定するものです。
「なんで自分が怒られているのか分かっていない」、「反省しているふりをしているだけ」、「毎回同じことを言う身にもなれ」、「申し訳ない気持ちがあれば変わっているはず」、「相手するだけ時間の無駄」、「今日使った無駄な時間返してくれ」「もうお引取りいただいて結構です」。
厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」からパワハラの定義を以下に引用します。
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
Aの発言は、指導というよりもBに対して精神的・身体的苦痛を与えることが主目的になっています。さらに、ディストリクトという組織の職場環境を悪化させていることも明白です。特にプレッシャー型のマネジメントしかできない管理職は、攻める相手を一定期間で変える傾向があります。そして絶えず誰かがそのターゲットになって組織を萎縮させます。自分はターゲットになりたくないという恐怖によって組織を支配します。そのような、マネジメントが黙認、または、許容される組織では先述したパワハラが再生産される土壌が受け継がれていくのです。
Aが配慮しなければならなかったマネジメントとしては、「できない者(部下)への理解」でしょう。プレーヤーとして優秀といわれていたAは、自分では当たり前に進められる仕事でも、同じレベルでは進められない者が存在することへの認識不足や見下し嫌悪する潜在意識が心の中にあったかも知れません。同僚でいるうちは大きなダメージにはつながりませんが、上司としては直接的な実害につながります。さらにいえば、A自身マネージャーに登用され、マネージャーとして成果を挙げる術を身につけていない実力不足を強いプレッシャーを部下に与えることで、その不安に対する精神的均衡を保っていたのかもしれません。ただし、それでは部下は堪ったものではありません。
本来、Aはプレーヤーであったときのマネジメントからマネージャーとしてのマネジメントへとやり方を変えなくてはなりません。部下の能力によって適正な配置(難易度によって担当店舗を差配することも含まれる)すること、いわゆるPDCAを回すことなどが求められるようになります。ダブルブランドビールの100%導入という目標を掲げることとその目標に対する正しい動機付け、そしてその進捗状況を確認して、必要があればフォローしたり軌道修正したりすることで目標を完遂することが必要です。したがって、荻窪タワー店のオーナーが導入に難色を示していたというBの報告を聞いた時点で、AはBと同行訪問するなどのフォローをすべきでしょうし、そのアクションを通じてBへの指導をすべきできでしょう。その前提として、ネガティブ情報をいち早く聞く姿勢をとると共に、それをいち早く報告する体制をメンバーに周知しておかなければなりません。
ヒューマンリソースに関するロスは、最悪の場合は人材を失うことに発展しかねません。さらに、上司や組織、会社への不満を誘発させ、その不満が不正の動機にもなり得るのです。たとえば、自身の待遇に不満を持った従業員が冷凍食品の製造ラインで農薬を混入したアグリフーズ(現マルハニチロ)の事件はその典型です。不正の個人的・経済的動機には際限がなく、コントロールし難いものですが、業務における日常的な不満は上司と部下というラインの風通しをよくすることである程度対処が可能です。対処の過程で上司はコンフリクトを恐れずにその部下と向き合うことが不可欠です。上司は健全なコンフリクトがヒューマンリソースに関するロスを撲滅させると信じて、そこにパワーを注がなければなりません。さらに、マネージャーとしてのマネジメントスキルや常識・良識といった人格を磨き続けることがその役割として求められます。ハラスメントの根絶だけでなく、一人ひとりの能力に合わせた差配によって、組織の成果を出すことがマネージャーにしかできない仕事となります。ヒューマンリソースに関するロスは、マネージャー自身の仕事の最大の妨げになり、冒頭に触れたように組織の規律や活力を蝕み、確実に企業の競争力を低下させます。つまり、ヒューマンリソースに関するロスは、ハラスメントによる人材へのダメージだけでなく、いわゆる内部不正とも密接な関係にあります。内部不正は別の角度からみれば、ヒューマンリソースに関するロスと同源ともいえます。放置するとやがては企業不祥事にまで発展すると認識すべきです。
したがって、ヒューマンリソースに関するリスクは、世間のコンプライアンス意識が成熟するにつれて益々大きくなる一方で、その認識への怠慢や感性の鈍磨から世間の常識から取り残される組織は大きなダメージを被るなどのペナルティを負うことになりかねません。最新の情報や専門知識を組織に浸透させる継続的な教育が重要といえます。
注目トピックス
◆アマゾンジャパン、模造品対策強化
BtoC取引市場では、AI(人工知能)などで模造品を自動的にはじくあらたな模造品対策が日本でも始まります。アマゾンジャパンは、任天堂やパナソニックなど25社と製品情報を共有した模造品対策を導入します。米国で2019年2月から、独仏英など欧州5カ国で8月から導入した模造品対策「プロジェクトゼロ」を日本でも導入します。メーカーなどと製品やロゴの情報を共有し、AIの画像認識などで模造品の疑いがある商品を検出する精度を上げるといいます。これまでは、ブランドメーカーが製品に関する仕様を秘匿してきましたが、この取り組みではメーカーがサイト上で偽ブランド品を発見した場合、直接削除できることから、このプロジェクトに参加する理由のひとつであると考えられます。その意味では、このプロジェクトはブランドメーカーに信頼を置くものである一方で、ブランドメーカーがその権限を濫用する恐れもあります。そもそもブランドメーカーは、偽者にも敏感であると同時に価格を維持・コントロールしようとする性質があります。したがって、限定感やプレミアム感を保持したいことからアマゾンで販売して欲しくないという理由で、サイトから商品を削除する可能性も否定できません。そのリスクは、アマゾンも認識しており、プロジェクトに参加するブランドメーカーの利用状況をモニタリングし、濫用を防止していくといいます。さらに、出品者はこれらの決定に意義を申し立てる仕組みも採用するようです。
日本ではまず、パナソニックや任天堂、アイリスオーヤマなど25社と連携します。現在は、アマゾンが参加するブランドメーカーを招待する仕組みですが、将来的には一定の条件を満たしたうえで、幅広く参加できるようにする方針といいます。
アマゾン以外のECプラットフォーマーでも模造品対策を強化しています。楽天ではスタッフによる監視に力を入れており、模造品と疑われる商品を楽天が購入し、提携するメーカーなどと連携して真贋の判定をしています。ヤフーでは近年、AIによる模造品の監視に力を入れてきましたが、同社のフリマアプリ「PayPayフリマ」でもAIを活用した模造品検知の仕組みの導入を検討しているようです。
背景にはアマゾンや楽天などのECサイト(Electronic Commerce)の台頭が挙げられ、小売業にとって環境変化と認識すべきその影響は年々大きくなっています。さらに、意図的な内部不正や万引きに関連して小売業が認識しておくべき環境の変化としては、なかでも中古品市場の成長が挙げられます。ネットオークションが「盗品の処分先」として定着してしまったことも、内部不正や万引きなどの窃盗を助長している側面は見逃せません。経済産業省の調査(平成29年度電子商取引に関する市場調査)によると中古品市場規模は約2兆1,000億円(自動車、バイク、原付バイクを除く)であり、そのうちネットオークションの市場規模は1兆1,200億円(前年対比103.2%)と推計されています。ただし、ネットオークションでの取引は個人間取引だけでなく、実際にはBtoB、BtoC取引も多く行われています。そこで、CtoCのみに焦点をあてたネットオークションの市場規模を推定すると3,569億円(前年比103.2%)になるとのことです。さらに、フリマアプリの市場規模は4,835億円と推計され、2012年のフリマアプリ登場からわずか5年で5,000億円弱の巨大な市場が形成されたことになります。ネットオークションとフリマアプリはともにネットリユースであり、今のところ各々独立した市場を形成しているものと推測されます。ただし、フリマアプリは2018年以降も市場規模はさらに拡大するものと予測され、リユースのあらたな市場を開拓していると捉えられています。尚、日本最多ユーザー数のフリマアプリ「メルカリ」の国内ダウンロード数は7,000万を超え、毎月の流通総額は100億円以上、1日の出品数は100万品にのぼります。
フリマアプリの市場が活況を呈するようになるに伴い、リユース目的ではなく利益目的で出品する個人の利用が増えてきていることが指摘されています。海外から個人で商品を仕入れ、それをフリマアプリによって販売するようなケースです。このように「個人向け小売の総合プラットフォーム」としてリユース市場の拡大と定着を促進している一方で、近年はフリマアプリへの不適切な出品が課題に挙げられています。一般にフリマアプリでは、提供者についてレビューする機能や提供者と利用者を相互にレビューする機能を提供することによって、評価の低い提供者や不正な提供者が排除されるメカニズムが作用しています。ただし、このような評価メカニズムがうまく機能していたとしても、偽造ブランド品や盗難品が市場に出回ることを未然に防ぐ必要性が強く指摘されています。フリマアプリ事業者は、そのような不適切品の出品を常時監視する必要がありますが、人による監視は体制面での限界も想定されます。
特にブランド品では、どのような特徴があるものを偽ブランド品として捉えるかという基準やガイドラインの策定が非常に困難で、一定量の取り扱い経験など事業者にそのノウハウが必要になってきます。それは、先述のとおりブランドメーカーが仕様に関する情報を当然ながら秘匿していることによります。それでも、そのような不適切品を取り扱っているとの風評が蔓延すれば事業者としての信用は大きく毀損されますので、独自にその基準やガイドラインを策定する必要があるのです。リユースのリアル店舗であれば、まだ人による鑑定は機能しやすいと思われますが、ECサイトやフリマアプリのように膨大な出品に対応するには今後の市場拡大も考え合わせると、もはやAIの活用は避けられない流れであり、今回のアマゾンの模造品対策もその流れに沿うものといえます。
◆「フードロスに関する調査」結果を発表、楽天インサイト
楽天インサイトは、同社に登録しているモニター(約220万人)の中から、全国の20代から60代の男女1,000人を対象に「フードロスに関する調査」を行いました。
調査結果によると、賞味期限が近い商品でも値引きがあれば「買いたいと思う」と「わりと買いたいと思う」と回答した人の割合は87.2%にのぼりました。その理由は、「お得だから」との回答が最も多く76.6%、「品質や安全に問題がないから」が65.4%、「フードロス削減につながるから」が43.7%と続きました。また、食品を残すことに抵抗があるかを聞いたところ、「抵抗がある」と「少し抵抗がある」と回答した人の合計の割合は93.2%でした。さらに、フードロスをどう思うかを聞いたところ、問題視している人の割合は86.0%にのぼりました。
また、コンビニを中心に始まっているフードロス削減の取り組みについて、値引きがあるならば、賞味期限が近い食品を買いたいと思うかを聞いたところ、全体では「買いたい(「とても買いたいと思う」、「わりと買いたいと思う」の合計値)」が87.2%と回答した人が9割弱にのぼりました。性年代別でみると、女性20代と30代は、「とても買いたいと思う」(それぞれ51.3%、51.1%)と回答した人が全体に比べ多く、「値引き」が、賞味期限の近い食品の購入への後押しになる結果となりました。さらに「買いたい」と回答した人(872名)に理由を聞いたところ、「お得だから」(76.6%)と回答した人が最も多く、「品質や安全には問題ないから」(65.4%)、「フードロス削減につながるから」(43.7%)が続きました。
調査結果からは、フードロス問題への関心の高さが浮き彫りになりました。食品のサプライチェーンは、消費者へ倫理的な消費をうまく訴求することやフードテックなど特殊な技術で鮮度を維持することなど意識変化と技術進歩を融合した対応が求められるといえます。
次世代型食品開発の動きでは、中国において植物由来の材料で作る人工肉を手がける企業が台頭しています。ハンバーガーや中華料理で使う本物の肉の代替肉として注目され、新興企業の設立が相次いでいるといいます。
中国では、幅広い料理に人工肉が広がっており、ハンバーガーにとどまらず、小龍包や坦々麺などさまざまな調理方法が念頭に置かれています。人工肉は火を通すと本物の肉のような弾力で、知らずに食べれば区別は難しいといいます。中国で人工肉が広がる背景には消費の急激な増加があります。中国の一人当たりの肉(豚、鶏、牛)の年間消費は過去15年間で3割増え、食肉の一大輸入国にもなりました。
現状では人工肉の価格は本物の肉に比べおよそ1.5倍前後ですが、今後値下げが進むことが見込まれ、コストダウンの競争に発展しそうです。
少し脱線しますが、日本では2019年10月1日よりゲノム編集した食品の販売が解禁されました。遺伝子組み換え食品は、「遺伝子を入れる」ことで、たとえば害虫に強い農産物などを開発します。一方のゲノム編集食品は、「遺伝子を切る」ことでその性質を変えるといいます。たとえば、鯖は攻撃性が強く養殖しても共食いしてしまい、1割程度しか育たないそうです。その攻撃性の「遺伝子を切る」ことで養殖に適した鯖にかえることができます。ただし、遺伝子組み換え食品は安全性の審査が厳格に義務化されていますが、ゲノム編集食品は安全性の審査が不要です。もともと存在していた遺伝子を切るだけという理由のようですが、ターゲットオフというリスクが指摘されています。ターゲットオフは、狙った遺伝子を切る際に他の遺伝子も切ってしまうことにより、毒性やアレルギー成分が増えてしまう懸念があるということです。ゲノム編集食品は食品表示の義務もないため、消費者にその事実をつたえるかどうかは販売する企業に委ねられているのが現状です。未知のリスクを否定できないことは諸外国の規制をみても想像できますので、このあたりの研究と法整備が今後も求められます。
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