HRリスクマネジメント トピックス

「女性の活躍推進」三匹(?)が語る!HRリスクマネジメント相談室(15)

2020.01.28
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女性活躍のイメージ画像

職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。

職場における様々なトラブルを解決すべく、今、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが立ち上がりました!初動対応や法的な責任、再発防止など、三匹それぞれの観点から熱く語ります。

【今月の三匹・プロフィール】

みみずくさんのイラスト

みみずくさん:
SPNの森のお目付け役。愛らしいフォルムと裏腹に、猛禽類らしい鋭い目線で最新のリスクをチェック!さらに森の仲間たちの文章もチェック!夜行性?いえいえ、暗いうちから活動を始める早起きさんです。

かわうそさんのイラスト

かわうそ:
ちょうど約1年前に、東京に来ましたはんなり系の京都人。そろそろ関西弁が抜けて標準語を使ってしまっているよ。いっちょまえに相談にお答えしていきたいと思う。

モモンガさんのイラスト

モモンガさん:
小さな皮膜で滑空する夜行性。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、運転免許など…すべてペーパーですが、そこそこ長い会社員経験をおなかの袋から取り出しながら実務の間を飛び回ります。今月は木の上から乱入!

ネコさんのイラスト

ネコさん:
当相談室の留守番ネコ。猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー、実はキャリアコンサルタントでもある。ネコは寝るのが仕事のはずニャ?

今月のご相談は、こちら。

中堅サービス業の代表をしています。女性の活躍を推進したいのですが、どうもうまくいっていません。

当社では、男性も女性も分け隔てなく扱い、チャンスも平等に与えています。だから女性でも責任ある仕事をどんどん任せますし、転勤や長期の出張もあります。今は女性管理職の比率を上げようと、積極的に登用を進めているところです。

しかし、せっかく会社として、もっと女性の活躍の場を増やしてあげようとしても、肝心の女性社員がなかなかその気になってくれません。出張を嫌がったり、管理職になることを拒否したり、「転勤させられるなら辞める!」とまで宣言したり。先日は、さらなる活躍を願って激励したばかりの女性社員が、急に辞めてしまいました。

確かに仕事はハードですし、残業も多く、時間も不規則になりがちです。しかし仕事の「おもしろさ」と「やりがい」はどこの会社にも負けない自信があります。能力のある人にはそれなりのポジションも用意し、社会的な地位も賃金も上がるように優遇しているのですが…どうも響かないようです。

女性はやっぱり、仕事よりも家庭を優先したいものなのでしょうか。本音を言えば、何でも言うことをきく男性社員の方が扱いやすいです。頑張っている男性社員を差し置いてまで、女性社員を管理職に引き上げてやる理由も、なんだかわからなくなってきました。

【ネコさん】

ネコさんのイラストネコも働くメスです。この代表さんには、言いたいことがけっこうあるニャー。

〈男性だから?女性だから?〉

まず、「女性は」とか「男性は」と、一括りにされるのは、ちょっと嫌な気がします。男性もいろいろ、女性もいろいろですから。

ただその一方で、まだまだ世の中には「女性だから」「男性だから」という見方が根強く残っています。たとえこの会社の中では「男女分け隔てなく」扱われていたとしても、従業員一人一人が、自分の家庭の中でも「男女分け隔てなく」過ごせているとは限りません。会社で「男女分け隔てなく」ハードワークに従事した後、自宅で家事の大半をこなさざるを得ない女性は、やっぱりいると思います。

親世代の価値観にも、影響を受けがちですよね。例えば、義理の両親が「家事は女性がするものだ」と信じ込んでいたら、「嫁」として求められることは、おそらく会社でバリバリ働くことではないでしょう。出張で長期に家を空けたり、ましてや転勤で単身赴任したりなど、思いもよらないのではないでしょうか。

理解のない家族とは縁を切れ!離婚しろ!とまで、会社が言えますか?会社にそんなことを言う権利はありません。「男女分け隔てなく」といっても、それは自社だけで実現できることではないのです。

〈女性が働きづらい職場は、男性も働きづらいのでは?〉

女性の方が家庭に縛られがちな慣習が根強く残っているとはいっても、やはり全ての家庭がそうではありません。父子家庭のお父さんの苦労は相当なものだという話も聞きますし、家事を夫婦で平等に分担している家庭もあるでしょう。

女性が離職したり、活躍に消極的になったりするような職場は、実は男性にとっても「働きにくい職場」なのではないでしょうか。

この代表さんは、自社の仕事の「おもしろさ」と「やりがい」には自信をお持ちのようですが…これはあくまでも、代表さんの価値観における「おもしろさ」や「やりがい」ですよね。誰にでも共通するものではありません。

家庭のことは配偶者に任せ、仕事に没頭して「おもしろさ」や「やりがい」をたくさん手に入れられた人には思い浮かばない考えかもしれませんが、男性・女性を問わず、ハードで残業が多い仕事で得られる「おもしろさ」や「やりがい」よりも、「もっと家族と過ごす時間がほしい」と考える人はいるはずです。

代表さんに、仕事の「おもしろさ」や「やりがい」と、家庭での生活を「両立させる」という発想を持ってもらえたら、もっと魅力的な会社になれると思うのですが、いかがでしょう?

「働き方改革」で、残業時間の削減も求められています。男女問わず「原則として転勤なし」を、採用活動における「売り」にする会社だってありますしね。

男性も女性も、「労働時間」以外は完全な「自由時間」だというわけではなく、それぞれに、家庭や社会の中で生きていく上で必要なこと、やらざるを得ないことはたくさんあるはずです。例えば出張で家に帰れないならば、たとえ賃金が発生しない「労働時間以外の時間」が出張先でたくさんあったとしても、家庭内でやらなければいけないことはできません。個々の事情を考慮せず、「仕事なんだから、会社の命令に従うのが当然」と扱われると、仕事と生活との両立が物理的に不可能になってしまう人もいます。「働きやすさ」を決めるのは、「労働時間」の間だけではないのです。

〈女性の活躍推進が裏目に出ることも…〉

女性活躍推進法によって、一定の規模以上の企業は、女性の活躍に関する課題を解決するための「行動計画」を策定・届出・周知・公表することになっています。その内容は各企業に任せられているものの、この代表さんの会社のように、「管理職比率を〇%まで上げる」等の数値目標を設定し、管理職登用を進めている企業も多々あるでしょう。

しかしこういった施策が、かえって女性の活躍を阻害してしまうケースもあるように思います。努力して管理職になった女性が、「女性活躍推進法の恩恵を受けて昇進した」と思われたり、そう陰口を言われたりすれば、あまり良い気分ではありませんよね。

この代表さんも、「女性の活躍の場を増やしてあげよう」とか、「管理職に引き上げてやる」という言葉を使っています。ネコはこんなことを言われたら、「もう、放っておいてください!実力だけで評価していただいて結構です!」と、引っ掻きたくなりますよ!シャーッ!

【かわうそさん】

かわうそさんのイラストネコさんはするどい指摘をしはりますわ。かわうそは勉強になりました。これはものすごく難しい問題です。いっちょまえに考えてみます。

〈女性管理職の比率を上げることが女性活躍の推進なのか?〉

代表者さんは「女性管理職の比率を上げようと、積極的に登用を進めているところです。」といわはりますが、この発言にかわうそはひっかかりました。なぜならば、女性管理職の比率の向上(ないし同じにすること)が決して女性の活躍を推進するとは限らないためです。この点について、説明していきたいと思います。

もともと、女性の活躍の推進は積極的差別是正措置(アファーマティブアクション(ないしポジティブアクション)の一環として、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」との考え方や歴史的に形成された性差別を解消するために主張されてきました。積極的差別是正措置はアメリカなどを中心とする欧米で理論化されてきたもので、最近では国連や欧州連合などの指針のもとで、世界各国で多くの場面で活用されています。

差別状態の是正・解消という目的を達成しようとするならば、女性を優遇することにより、女性管理職の比率を向上させることで足ります。しかしながら、このような単純な差別是正措置は弊害を生む可能性があります。生じうる弊害としては、2つ挙げられます。1つ目はネコさんが指摘する通り「努力して管理職になった女性が、積極的差別是正措置の恩恵を受けて昇進した」と思われてしまうことです。2つ目は本来であれば実績、業績、能力等に鑑みても管理職に登用されないであろう女性が管理職となってしまい、他方で能力等のある男性が管理職になる機会を奪われてしまうことです。これら弊害を考えると、女性の活躍を推進するために単純に女性管理職の比率を向上させて、男女の管理職比率を同じにするという「平等」だけを求めてはならないのです。特に2つ目の弊害についていうと、代表者はんの言う「男性も女性も分け隔てなく扱い、チャンスも平等に与える」という趣旨に反することとなります。

〈積極的差別是正措置を行うときの視点〉

単純に女性管理職の比率を向上させるだけでは、女性の活躍を推進、男女平等な取扱いをすることは難しいということはおわかりいただけたかと思います。それでは、どのような視点で差別是正措置を行っていくべきかについて説明したいと思います。

そもそも、女性の活躍を推進するというのは(夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである)という考え方を是正、脱却することを出発点としています。従来、この考え方をベースとして、女性は家事をするから仕事をすべきではないと評価され管理職に登用されませんでした。すなわち、管理職の男女比率等の数的不均衡を生じさせている要因ないし女性の企業における活躍を阻害する要因は、女性が個人の能力や業績に基づいて評価されないということになります。そうすると、性別ではなく当該労働者の能力を適切に評価するという視点が必要となります。

〈他の取りうる手段とは?〉

さぁさぁ、何をしたらええねんいう話です。これは最も早くからアファーマティブアクションを取り入れているアメリカにおける取り組みが参考になるかもしれません。列挙すると、女性のキャリアアップ育成のためのプログラム、女性リーダー育成プログラム、リーダーシップトレーニング等ですね。いずれの取り組みにも共通しているのは「育成」という点でしょう。

このように職務能力の向上をはかるために教育・訓練を行い、女性の活躍の幅を広げ、女性活躍の推進を達成することが一つの策です。

【そこへモモンガさんが乱入!】

モモンガさんのイラスト突然の乱入、失礼します。今回は登場回ではないのですが、餌を探してさまよっていたら、ネコさん、かわうそさんのお話が聞こえてきました。このお話、私もちょっと参加したいです。

モモンガが昔住んでいた森は、オスの比率がメスの何倍も多いところでした。でも、女性活躍推進法と厚労省のお役人さんから直接指導があったとかで、比率的に無理があるにも関わらず「女性管理職をXX年で4割に近づける」と大きく目標を掲げ、全社を挙げて取り組んでいました。そんな中で、会社にとっても、女性にとっても、男性にとっても不幸なできごとがいくつも起きてしまいました・・・。その様子を見ながら思ったことをちょっとお話させていただきたいです。

 森から会社に場所を変えます。
人の出入りが多くない会社では、会社の公式な研修や教育とは別に、男性は若手の頃から将来を見据えて、上司や先輩に、リーダーや管理職になるための心得や会社の文化・社内政治的なことを教えられたり、自然に共有されたりしています。一方、女性の多くは若い頃にそういった非公式教育を受ける機会を得ないまま、それなりの年齢になっていきます。そのような環境で、女性活躍推進の取組みにより、まだ仕事の実力もマネジメント教育も十分でない女性が、突然、高下駄どころか、竹馬に乗せられて数段飛びで出世し、失敗しないためのサポート役として自分よりずっと有能な男性で周りを固められ、その女性管理職は権限を持て余して会社から離脱してしまう。という例をいくつか見ました。管理職に登用された女性は、周りから「なんであの人が?」「やっぱり、全然だめらしいよ」と言われ、サポート役にさせられた男性は、その上の上司から「彼女に無理なのは分かってるだろ?君がうまくやってくれよ」と言われて、ポジションも権限もないまま、女性管理職以上の仕事を求めらる・・・。そういう状況で女性管理職が辞めれば、男性は「だから女は・・・」「あの男性を差し置いて、出世させてもらったのに、結局辞めるのか」と言って、「女性の管理職」への偏見を強め、それを周りで見ている女性は、益々出世を避けるようになり、サポート役にさせられた有能な男性たちはやる気を失い、中には転職をした人もいます。会社にとっても、非常に大きな人材ロスです。中堅層のロスは会社の将来にまで影響が出る話です。

 なぜこんなことになってしまうのでしょうか?
一つは、経営層が「女性管理職の『数』を増やすこと」だけに注力して、本来の目的である「女性活躍」や「働き方改革」の意義を見ていないからだと思います。今までの組織体制、働き方のまま、表面的な数字を付け替えることに注力しても上記のような不幸を呼ぶことになります。「女性活躍」を謳いながら、女性も男性もどちらも不幸にする働き方改革を行っているのです。また労働『時間』のみに注力するやり方にも同じことが言えると考えます。このような「働き方改革」では、会社を衰退させかねません。
経営、組織、働き方などにおいて「今(まで)のやり方」を前提として、「女性活躍」や「働き方改革」を考えるのではなく、「これからのやり方」を全社を挙げて模索し、新たな体制を創るよう導くことが、現在の経営陣に求められている重要な仕事であり、責任なのではないでしょうか。

【みみずくさん】

みみずくさんのイラスト

ネコさん、かわうそさん、モモンガさんの指摘はそのとおりだと思います。

そのうえで、やはり、女性が活躍できるためには、会社の制度や社風を変えていくだけでは難しく、社会全体で「変わろう」という機運が高まることが絶対的に必要です。「働き方改革」という言葉がここ数年で社会に浸透しつつありますが、その言葉の浸透具合にもかかわらず、その真のゴールはまだまだ遠いと言えます。以下、企業として「働き方改革」をどう位置付け、取り組むべきか、さらには、社会全体が女性活躍にどう取り組むべきなのかを先進国の取り組みから学ぶことを通じて、「変わる」ために必要なことを考えてみたいと思います。

〈2つの誤解を解く〉

企業の「働き方改革」の浸透を阻むひとつが、「働き方改革は、育児中の女性など特別な事情を持つ人のためのものだ」という誤解です。「もっと女性や育児中の社員が活躍しやすい企業にしよう」というかけ声は間違いではありませんが、「特別な事情を持つ特別な人のためにやっていること」と受け取られるリスク、それ以外の立場の社員から「自分とは関係ない」という受け取られ方をされかねないリスクを内在しています。本来、「働き方改革」が目指すものは、組織全体の取り組みによって「生産性の改善」を実現することであるはずです。「自分とは関係ない」「直接自分が得をしない」と認識された時点で、それは組織全体の取り組みではなくなり、強力な推進力を欠いてしまうことになります。

もうひとつが、「働き方改革は社員の流出を食い止めるためのコストだ」という誤解です。コストと結びつけられた時点で「企業として仕方なくやっていること」「できればやりたくないこと」と受け取られ、社員の協力も得られにくくなってしまいます。残念ながら、「会社がやってくれて当然」「まわりがやってくれて当然」「人事や総務が考えること」という意識をもっている社員も多いのも事実です。組織全体の取り組みとなるためには、ケネディの言葉を借りれば「会社が何をしてくれるかではなく、自分が会社や社会のために何ができるかを考えてほしい」、つまり社員一人ひとりが「自分ごと」として捉えられるよう、会社としては、工夫していくことが求められているのです。

「働き方改革」は特別な事情を持つ一部の人たちを特別扱いするものではなく、全員で取り組むことで、組織全体の生産性、社員一人ひとりの仕事と生活の満足度を向上させるための「投資」だと言えます。それにより業務上の「成果」を引き出すことで、投資を「回収」できる立派な「経済活動」です。「働き方改革」を、スローガン的に位置づけるのではなく、「研究」や「開発」と同様のものと捉え、全社を挙げて明確に取り組むべきであり、経営者や幹部、現場マネージャーはこのようなマインドセットを持ち、「経営」的視点から取り組むことが、すべての社員の「自律的な」行動を引き出すことにつながり、それによって「働き方改革」による投資効果を最大のものに引き上げることが可能となります。そして、「成果」が目に見えることで、職場にさらに良い効果がもたらされ、「ポジティブ・スパイラル」が回り始めるのです。

〈北欧諸国に学ぶ〉

次に、「働き方改革」先進国である北欧諸国では、どのような取り組みが行われているか、とりわけ「女性活躍」や「育児」のあり方を中心に見てみます(以下、Fledge社のサイトを参照しています)。

例えば、アイスランドでは、従業員50人以上の企業では女性管理職比率を4割にすることが義務化されており、国会議員も約半数が女性議員など、「男女問わず」優秀な人材であれば活躍できる素地ができているようです。国の制度としては、「育児休暇を取得する前の給与の80%が育児休暇中に支給されるが、育児休暇を取得しないとそれを受け取る権利がなくなってしまう」といい、約9割の男性が育児休暇を取得していることにつながっています。

世界で初めて女性に選挙権と被選挙権が与えられたフィンランドでは、約8割の女性がフルタイムで働いており、1日7.5時間労働、朝は子どもを保育園に預けて8時に出社し、16時退社でお迎えにいくのが一般的といいます。制度的なものとしては、全ての子どもたちに保育施設を用意することが自治体の義務となる法律「保育園法」があり、誰でも保育園に入れる権利が子どもに与えられているといいます。他にも親としての有給休暇「親休業」や父親としての有給休暇「父親休業」というものまであるようです。男性が子育てに参加するのは当たり前なため、子育てを「手伝う」という意識はないとも言われており、制度的な手当てが人々の「男女平等」のマインドを強固に支えていることがうかがえます。

また、ノルウェーの人たちは、働き方に非常にこだわっており、約8割の企業がリモートワークやフレックスタイムを導入しているといいます。「個人」の生活に合わせて仕事の場所・時間を選べるといった完全裁量で仕事を行うことができるため、家族を大切にするノルウェー人の多くは、仕事を早く切り上げ家族との時間を確保している実態があります。また、国の制度としては、およそ25年前から、育児休暇をパパ・ママ合わせて最大54週、うち10週間はパパが取得しなければならないというパパ・クオータ制が導入されていることや、法律で育休を理由とした職務の降格や減給処分は禁じられているため、育休を取得する前と同じ職場・同じポジションに戻ることができるといったものまであります。

さらに、スウェーデンでは、共働きが当たり前となっているため、専業主婦の割合はわずか2%、結婚・出産後もほとんどの女性が仕事をしているといいます。さらに、一日6時間労働を導入している企業もあり、短時間で仕事をしながら育児にも積極的に取り組むことができる環境が整っています。国の制度としては、例えば、パパ・ママ合わせて480日の有給育児休暇を取得することができ、休暇中の390日間は休暇前の80%の給与が支払われることや、パパは最低3ヶ月の育児休暇を取得しなければならないといったものがあります。スウェーデン政府が主体となって、「仕事より家族」、「男女平等よりファミリーフレンドリー」を優先しており、学費は高校まで無料、医療費は18歳以下まで無料と子どもを育てる人たちへのサポートが充実しているのも特徴です。

北欧諸国の状況を見ると、国民性と国の制度が「幸せな結婚」をしていることにまず気づきます。「男女平等」や「ファミリーフレンドリー」など国民に対して明確な「国民像」が示され、それに基づいた各種施策が講じられ、その環境で育まれた国民が世代を受け継ぎながら、あるべき「国民性」をより強固にしていくという「ポジティブ・スパイラル」が上手く形成されていることが分かります。

日本では、「女性活躍」を掲げる一方で「待機児童問題」は深刻で、相変わらず「出産・育児」の壁・M字カーブの解消には程遠いばかりか、「家事や育児・仕事は男性も女性も行うもの」という新たな価値観への転換もうまくいっていません。枝葉末節の制度を変えたところで、それが社会の大きなうねりとならないのは、そもそも日本人にとっての「何が幸福か」が明確でない(さらには、それが「国民像」として共通の価値観にまでなっていない)からということになりそうです。

企業としてできることは、全社一丸となって「働き方改革」に取り組み「成果」を引き出すことであり、それにより社員の幸福、家族の幸福、社会の幸福につながることは間違いありません。しかしながら、一企業の努力だけでは真の「女性活躍」の実現は難しいのも事実です。「何が幸福か」を日本人が探しあぐねている混沌の転換期だからこそ、国が明確なビジョンと「変える」という強い意志を国民に伝え、それを支える制度等の整備が求められていると言えます。とはいえ、主役はあくまで「国民」一人ひとりです。国や社会を「変える」ために、「国民」一人ひとりが意識を変えること、まずは自分の周囲や企業の中で影響を与えて「小さなポジティブ・スパイラルから形成していくこと」を目指すところからはじめてみてはいかがでしょうか。


ネコさんのイラスト

ネコさん:日本で、男女とも「普通に」働きやすくなるのは、まだまだ先みたいね。でも、こんな現実の中でも、何か「少しはマシ」にできる策ってないかしら?


モモンガさんのイラスト モモンガさん:そうねー。昔住んでいた森の話で言うなら、もう少し「協力したくなる」体制が整っていたら、ここまで女性管理職を追い詰めることはなかったかもしれないわ。優秀な男性社員には、たとえ管理職ではなかったとしても、「誇りを感じられるようなポジション」や「待遇」があってもよかったのではないかしら。足を引っ張り合うのではなくて、「互いに支え合う」ような、互いに協力することでwin-winになれるような「仕組み」を作るべきだったと思います。


ネコさんのイラスト

ネコさん:それは良いニャ。評価制度にうまく反映させるとかね。ネコは、せめて経営者さんに、「仕事をしていないときにも、用事はいっぱいあるんだ!」ということを、きちんと認識してほしいニャ。そうしたら、「この日に出張入れられる?」とか、「この期間忙しくなりそうだから、準備しておいて」とか、事前の声掛けが当たり前になるでしょ?「命令には黙って従うのが当然」と、「命令には従うけれど、調整の余地がある」の差は大きいと思うの!どれほど仕事に「やりがい」を感じていたとしても、「仕事だけに専念できる人」なんて、今の時代には男女とも本当はそうそういないはずよ。みんなが少しずつ「気遣い」をできるようになれば、「働きやすさ」も「やりがい」もアップするのではないかしら。


かわうそさんのイラスト かわうそさん:経営者が国の施策に従って、数字を追いたくなる気持ちはわかんねんけども、本質を見失うのはあかんのちゃうか。男女ともに活躍する社会を目指すのだから、そこからずれていくなら、会社の中で誰かが警鐘を鳴らさなあかん。

「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。

職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!

※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。

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