HRリスクマネジメント トピックス
職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。
職場における様々なトラブルを解決すべく、今、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが立ち上がりました!三匹(いえ、今回は6匹!)が、チャットにて解決の道を探ります。
みみずくさん(みみ):
SPNの森のお目付け役。愛らしいフォルムと裏腹に、猛禽類らしい鋭い目線で最新のリスクをチェック!さらに森の仲間たちの文章もチェック!夜行性?うーん、夜中に起き出して活動を始めるから、夜行性なのか早起きなのか…?
パンダさん(パンダ):
平和をこよなく愛する子持ちパンダ。平和を乱す無法者には白黒つけたい。中小企業診断士で、MBAも隠し持つ。
モモンガさん(モモ):
小さな皮膜で滑空する夜行性。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。SPNの森にも慣れて、そこそこ長い会社員経験をおなかの袋から取り出しながら実務の間を飛び回ります。
リスちゃん(リス):
森の中を駆け回り、皆さんのお困りごとに対応します。気が付けばこの森に来て4年が経っていました…。最近は巣穴での勤務も慣れてきました。変わらずご相談にお答えしていきますよ。
ペルシャ猫さん(ペルシャ):
SPNの森にやってきた、ゆったりと過ごすことが好きな新参猫。ゆったりと過ごしたいが、過ごせなかった過去を持つ。社会保険労務士のほか財務会計の資格もあり、人事労務と財務会計分野の実務経験が長い。
ネコさん(ネコ):
当相談室の留守番ネコ。猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー&キャリアコンサルタント。新人さんはかわいいニャー。猫仲間も増えてうれしいニャー。
今月のご相談は、こちら。
大変です!今年入社した新入社員のAさんが、出社して来なくなりました。一応連絡は取れているのですが、ずっと在宅勤務を主張するとのことで、配属先の上司から人事に対処を求められています。
今年の新入社員さんたちは、入社式からしばらくは出社してもらい、ビジネスマナーや会社の成り立ちの説明、工場見学など、集合研修を実施していました。しかし、それぞれの部署へ配属され、そこでのOJTが始まった途端に緊急事態宣言が出て、在宅勤務が推奨されました。
上司や先輩との顔合わせはできていましたが、例年通りのOJTは難しく、上司によると、Aさんは少し「放置され気味」だったとか。
配属先での研修内容としては、先輩社員のレクチャーが中心だった様子。1コマ90分くらいで、先輩社員たちが交代で、自部署の業務についてテーマごとにリモートでレクチャーし、レポートを提出させていたそうです。上司はAさんに、その日のレポートを翌日中までに出すことを指示していましたが、レポートの内容はAさん任せだったとのこと。
Aさんのレポートは、先輩のレクチャー内容をざっくりと箇条書きでまとめたもので、Aさんのために説明資料を作って熱弁していた先輩たちにとっては、「これだけ?」と、拍子抜けするような内容だったようです。一応期日通りには提出されていましたが、いつもギリギリ。「レポートの進捗はどう?」と聞くと、「予定通りに進めています」と返事は返ってきますが、正直、「この内容でこんなに時間がかかるのか?」と、上司も先輩たちも首をかしげずにはいられなかったそうです。内容がほとんどないため、レポートに対するフィードバックもしづらく、先輩社員たちのモチベーションも下がっていました。
さすがに「このままではマズイ」と思い、上司がAさんに、「来週からは出社して、実際の業務を始めてみないか?ただ、体調が悪い場合は、無理に出社しないように」と、リモート面談で伝えました。Aさんからは「わかりました」との返事だったので、上司は月曜日にAさんを待ち構えていたのですが、始業時間になってもAさんは出社しません。慌ててリモートで呼びかけると、Aさんは「体が少しだるかったので、今日は在宅勤務にしました」とのこと。上司が「それならば、その旨を連絡しなさい」と指導すると、Aさんは「わかりました」と応じ、翌日から毎日、始業時間になると「本日は少し頭痛がするので、在宅勤務します」とメールが来るようになったそうです。
在宅勤務といっても、Aさんに任せられる仕事がありません。仕方なく、「このマニュアルを読んでおくように」「この資料に目を通しなさい」等、何らかの課題を与えますが、毎日終業時間になると「マニュアルを読み終えましたので、終業します」と連絡が来るだけで、Aさんは一向に出社もしませんし、実務に興味も示しません。
そういえば、集合研修中から、Aさんは少し気がかりでした。他の新入社員たちが活発に質問したり、同期同士で情報を交換しあったりする中、Aさんだけはずっと一人だった気がします。ディスカッションをさせても特に自分の意見を言わず、促しても、ただニコニコするだけだったり、前の人と同じ意見を繰り返したりするばかり。不機嫌な様子もなく、居眠りもしませんが、何を考えているのかわからないというか、無反応というか…。
こんなケースは初めてで、人事でもどう扱ったらよいかわかりません。いったいどうしたら良いのでしょう?
さぁ、SPNの森の動物たち、この人事さんにアドバイスを!
〈Aさんのような人、どう?〉
ネコ:ニャー!ここまでではないにしても、こんなタイプの人、わかる気がします。ネコは毎年どこかで新入社員・若手社員向けの研修をしていますが、反応が薄くて、問いかけてもこれといった内容が返ってこず、何を考えているかよくわからない感じの人、時々いますよ。研修講師としては、反応が読めなくて、かなり緊張します。
態度があからさまに悪いわけではないのだけれど、「書いてみましょう」と言っても何も書かなかったり、ディスカッションを促しても一人で資料を眺め続けたりで、何かにつけてアクションやアウトプットが省力化されるんですよね。あまり同期の仲間にも関心がないのか、コミュニケーションもほとんど取ろうとしません。
ペルシャ:周りから積極的にアプローチしても難しいタイプということですかね…。
パンダ:採用時の評価はどうなのでしょうか。
ネコ:採用時は、「特別に悪い点はないから」で通っているのではないでしょうか。いくらでも応募者が集まる人気企業ならいざ知らず、若手の採用には苦戦している企業は多いと思います。ちょっと変わった人だな、と思っても、学校名を見て「地頭は良さそうだ」と採用するとか…あるあるですよね。
ペルシャ:私が前の森で新卒の新入社員だったときは幸運だったなと思いました。
私が配属された部は、人事の人から「一番忙しいよ」と言われていたところで、入社した4月はまさに部全体が繁忙期でした。当時私は、業務の基本知識がないまま実務に突入したのですが、先輩社員が面倒見のいい人で、入社初日からお昼ご飯に誘ってくれて、毎日若手社員数人でお昼を食べながら愚痴を言いあったり、お互いに相談しあったりすることができていました。もちろん、業務も親身になってアドバイスしてくれていました。また、その部は全体的に人数が多く、若手社員も多いので、部内の若手社員だけの飲み会も頻繁にあり、その先輩だけでなく他の数人の先輩も自ら幹事をやろうとしていました。
要するに何を言いたいかというと、上司からだけでなく横(先輩社員だと斜め上から?)の繋がり、特に日常的に業務外のことも含めてフランクに話ができる関係性も大事だと思います。
ネコ:うんうん、ペルシャさんみたいな感じが「普通」というか、「理想的」ね。
リス:先輩たちもAさんが何を考えているかわからないと思いますが、先輩たちが研修で熱弁した「伝えたいこと」も、Aさんに伝わり切っていないような気がします。お互いによくわからないなぁと思いあっているというか…。
みみ:先輩社員のモチベーションが下がっていたということですから、これ以上先輩社員のサポートは期待できず、上司が何とかリードしていかないといけない状況のようですね。
〈在宅「勤務」、働くって何だろう?〉
モモ:このケースでは、本人の問題と職場の問題の両方があると思いますが、本人に関して最初に思い浮かんだのは、テレワークと、休講(大卒)や自習(高卒)との区別がついていないのかな?という印象でした。働く意識が醸成されていないというか…。
みみ:ちょっと違う切り口になりますが…。
気になったのは、在宅勤務にするかどうかを、当日の体調で決めているということかな。さらにそれを上司が追認しているのも違和感がありますね。具合が悪いなら休むべき(休ませるべき)であり、体調が悪いから在宅勤務というのは認めちゃいけないと思います。
ネコ:そうですね。本当だ。今、コロナ禍中だから、枕詞みたいに「体調が悪い場合は無理をしないように」とか言ってしまうけれど。気を付けなきゃ!
みみ:無理させたらダメだけど、毎日どこか具合が悪いのに、それを何となく追認していたら、そりゃそうなるかと。
モモ:在宅勤務の意義を上司も理解できていない感がありますね。
みみ:要するに、きちんとした指導もしていないのだから、上司としてすべきことはしてから…だよね。
ペルシャ:レポートについて、内容が物足りないならそう思った時点で指摘すればよかったのに、と思いました。放任しすぎのような印象です。
リス:入社していきなりリモート研修を経験した後輩に聞いた話では、「働いている実感がわかなかった」とも言っていました。Aさんも、「勤務」とは何かよくわかっていないのかもしれません。
ネコ:「仕事をする」ということが、いまいちピンと来ていない人は結構いるかも。だって実際のところ、研修中の新入社員は、「業務」は行っていませんものね。「働くための準備中」だけれど、「働いている」という扱いでお給料をもらえるのが新入社員。
ペルシャ:学生時代にアルバイト経験をしているかどうかも関係しますかね?
ネコ:アルバイトの経験は、けっこう大事かも。以前いた森では、面接のときによく聴いて、「働くことをどう考えているか」を探っていました。
モモ:Aさんには、「働いた経験」や「働くとは?」という知識がないのかもしれませんね。
みみ:研修でそういうのは学ぶはずだよね?
モモ:研修で、受身で聞いているだけでは、実感として落とし込めていないのでは?と思います。
〈新入社員研修、覚えてる?〉
ペルシャ:私は研修なかったです(笑)
パンダ:研修ないの?
ペルシャ:なかったですよ。辞令交付⇒あいさつ回り⇒引継ぎ⇒業務でした。
ネコ:どこの会社もやっているとは限りませんよ。特に「働くとは」って、当り前だと思われ過ぎて、かえって抜けるのでは?
リス:相談者さんの会社の集合研修は、「ビジネスマナーや会社の成り立ちの説明、工場見学など」ということなので、あっさりと受身のものだったのかもしれませんね。
ネコ:うん。意外と多いかもしれませんよ、そういうところ。(だからSPリスク・ラーニングの若手社員・新入社員向け研修用動画に「社会人の基本」というコンテンツをねじ込みたかったんです!)
ペルシャ:「働くとは」はもう知っていて当然と会社側は思っているのかもしれないですね。
みみ:そうかあ。1カ月、泊まり込みの集合研修で、みっちり缶詰めだったので…。飛び込み営業の課題もあったし…。
パンダ:衝撃!
みみ:働くってこんな大変なんだと思い知らされました。
ネコ:大事な経験でしたね。
パンダ:私も飛び込み営業研修で、鼻っ柱を叩き折られました。
みみ:営業に配属が決まっていて、飛び込み営業で相手に怒られて、結構、落ち込みましたよ(笑)
パンダ:私も門前払いの嵐の洗礼を受け、公園で砂粒数えました。
みみ:衝撃!
ペルシャ:悪い面もあることは承知の上ですが、厳しい環境に放り込むと必要に迫られることはあるかもしれません。
パンダ:少なくとも今までより自分で考えるようになります。
みみ:厳しかったのは強烈に覚えています。座学はさっぱり。もちろん、業務知識はすごい量の詰め込みなので覚えていますが。
ペルシャ:それを糧にできる人とポッキリ折れてしまう人、どちらもいますよね。
ネコ:ポッキリ折れて「この仕事は自分に合わない」と早々に転職していただけるならまだマシですが…飛び降りてしまったりするのは絶対ダメ!厳しさの種類には気を付けなきゃいけません。「理不尽」と「厳しい」は違うので、そこは間違えないようにしないとね。「営業とはこういうもの」ということを教えるのは、「理不尽」ではありませんね。
〈能動的な研修にしたい!でも…〉
モモ:先ほどパンダさんから「自分で考えるようになった」という話が出ましたね。先日、eラーニングシステムを提供している会社の方のお話を聞いたのですが、特に若い世代は受身の研修では、効果があまりないようで、eラーニングの構成でも、一旦、課題・質問を出して、自分で考える時間をおいてから答えを教えるという形式が主流だそうです。このケースでも、最初から一方通行で教えるというのではなく、まずは本人に考えさせる研修をする必要があるのでは、と思います。
みみ:ホーホー。ビジネスマナーなんて覚えていない。電話のとり方、名刺交換の仕方、お辞儀の仕方、笑顔の作り方など、まったく覚えていないのですが、能動的な研修は、それはそれは鮮烈に覚えています。そういうことなんだろうね。大事なことは。
モモ:反応が薄いと感じてあきらめるのではなく、嫌でも反応せざるを得ない、能動的な研修で、仕事とかの意味をしっかり身体にしみこませるぐらいやらないとダメかもしれませんね。
ネコ:能動的に…自分で考える……うーん、うまく考えてもらえるかなぁ。
モモ:最近のeラーニングは、考えさせるような構成を工夫しているみたいですよ。
ネコ:最近、若い人と話していると、よく「自分が何をしたいかわからない」って言うんですよね。自分が何を考えているか、何を感じているかがわからないような。
モモ:自主性を期待することも大事ですが、「わからない」人を採用してしまったら、与える側もそれだけの努力が必要、ということかもしれません。
ネコ:うーん…自分の「気持ち」をモニタリングできない人、本当に多いですよ。
みみ:そこは感じるよりまずは動こうよってことかと。形から入っていくのもアリですよね。
ネコ:相手の要望が理解できて、上手に流されていく人は、普通に順応していきますよね。でも、相手の要望を読み取れない人は、こういう不思議な人になりそう。
ペルシャ:今回のAさんの場合、動く研修があれば変わりましたかね?
リス:本人に考えてもらう研修も、その場しのぎでなんとなくかわすこともありますよね(学生の頃の自分に、身に覚えがあります…)。当時はまさに、ネコさんのおっしゃるように「自分が何をしたいかわからない」というか、それすらも考えていませんでした。
みみ:そういう人って、その時その時に流されないの?
ネコ:上手に流されると、意外とかわいがられるような気がしますが。
リス:流されていました。流されていく中で、なんかこれは違うな、と思い直しましたが。
みみ:流されやすいなら、こちらから流してやろうかと…。流されることなく、「何も考えない」と開き直られると手の打ちようがないというか。
ネコ:「考えない」のか、「考えられない」のか…。最近ちょっと怖くなるんです。あまりにも「自分」のない人によく会うので。
モモ:今後の新入社員はより二極化が進むのかな、という気がしています。やりたいことが多くて、どんどん自分でやっていく人(転職・起業を含めたキャリアを作る人)と、「何もしたくなくて、どうしていいか分からないから、誰かに決めてほしい。できるだけラクに生きたい」と言う人と…。
流される人は、リアルかリモートかでかなり違いが出てしまいそうですね。Aさんは、リモートのラクさには流されているかもですが。
みみ:リモートのラクさ…。仕事してないよね。たぶん。
二極化ということは、採用の段階の見極めが大事になるのかな。入社したなら、指導方法をより個別化していく必要がありますね。
ペルシャ:「考えられない」のは、考える材料がないのか、それとも能力的に考えられないのかによっても変わってくる気がします。私自身ももう少し世の中の仕事の知識があれば選択する道は違ってきたのかもと思うことはあります。
今は昔より調べようと思えば調べられる時代なので、私のときとは違うかもしれませんが、個人的には絵を描く仕事って世の中に色々あると知っていれば…と思っています。
パンダ:ほう、意外ですね。確かに、世の中を知るのは、結構あとですよね。
ネコ:「素直でいい子」って、つまりは「自分の主張のない子」のような気がします。考えるタイミングがなかったのかな。親の期待、先生の期待に普通に応えられていれば、深く考えずに就職もできそう。
モモ:「考えること」を手放してしまう人もいるかもしれません。
研修とはズレますが、虐待や過保護で自分の考えを否定され続けたり、言われた通りにしていればやり過ごせるという経験を多く得たりすると、その傾向は強いかと…。親だけではなく、教師や友達にも従っておけばラクだな、ということもあるかと。
みみ:「自分」がない、受身の人をどう戦力化するか、ということですね。そういえば、まさにZ世代でしょ。結構、共感できれば能動的になるんじゃなかったっけ?
モモ:共感が大事、という傾向は出ているようですね。
パンダ:どこに共感するのか、管理職も勉強が必要かと。
リス:共感しないことには無関心、ということなんですかね?
みみ:Z世代の「ツボ」が分からん…。飽きっぽくてマルチタスクだともいうし。
パンダ:世代に加えて、個性もあるし。
モモ:何かの研修で、今時の新人は、「認めてほしい(任せてほしい)が、ほっておいてほしくない(放任は嫌)」と言っていました。
ペルシャ:Aさんの場合、放任されることに慣れていなかったのかもしれないですね。
みみ:新入社員を放任は会社としてはマズイよね。
「共感」の「ツボ」が狭いし、確かに管理職としては相当のスキルが必要になりますよね。
ペルシャ:そこまで来ると管理職側の努力に限界がある気が…。
リス:共感のツボをピンポイントで探るのはほぼ不可能ですよね。
みみ:何か、管理職が試される、求められるレベルが高くなっていて、それができないからミスマッチを助長する悪循環なんだな…。
〈受身にさせないための工夫〉
ネコ:一方的に教えるスタイルって、どんどん受身にさせませんか?
ペルシャ:この森の、今の新入社員研修スタイルって、Aさんのケースに近くないですか?
ネコ:うん!
みみ:ミーアさんの問題意識はそこにあったのか!
ネコ:昨年入社したミーアキャットさんもそんな意見を?
みみ:昨年、自分が味わった苦痛をふまえて、演習型の研修にしていましたよ。あくまで推測ですが(笑)
ペルシャ:苦痛…!
ネコ:問題意識を持って工夫したのなら、それは良いこと。
みみ:去年は受身かつ100%リモートだったので。
ネコ:前の森では、新入社員にちょっとクリエイティブな課題を与えて、協力して何かを作り出させる、みたいなことをさせていました。例えば…「社歌」を作ってもらったことがあったなぁ。数週間の間に、役員の話を聴いたり、各部署を回って実務を体験したりするようなスケジュールが組まれていて、そこで聴いた話や各部署の現実、目指したい未来など、いろいろ盛り込んで、「これぞうちの会社!」というような歌詞を考えてください、と。曲は「何かの替え歌でいいよー」と軽く言っていたのですが、彼らはそこにも結構こだわって、「どんな世代も知っていて、歌いやすい歌は何だろう?」とか、いっぱい考えてくれましたよ。新入社員同士、意見がぶつかることもありますので、そっと様子をうかがったり、フォローは随時していましたが…まぁ、手間はかかりますよね。でもそれが人事の仕事かな、と思っていたので。
みみ:この相談者さんも人事だよね。人事さん、しっかりしようよ。「どう扱ったらよいかわかりません」って…こういった議論をすればいいのに。
ペルシャ:あー、確かに。
ネコ:人事って、クリエイティブな仕事なんですよ。それに気付いてほしいな。
新入社員研修の課題は、「自分達で工夫させる、考えさせる、しかもそれを楽しく思わせる」ように、毎年めちゃくちゃ悩みながら設定していました。役員さんの話や、各部門での研修からも積極的に何かを学び取って欲しかったので、課題と関連付けるように誘導したり。仕掛けづくりって大事ですよ。
ペルシャ:人事ってディフェンスだと思われがちですよね。
ネコ:採ったらおしまい、みたいなのも良くないです。
リス:考えることを諦めないでほしいですね。
ペルシャ:でも…議論する余裕がないのかもしれません。前の森の人事は、すさまじく忙しかったので…。給与計算とか、支払う人数が多くて時間もなく、でも担当は少ない!さばききれないほどの業務に耐えられず、休職してしまう人もいるくらいで…。
ネコ:それは組織の構造的な問題ね。トラブルが多発して忙しいのならば、「予防」に力を入れればどうにかなりそうだけれど…。
〈Aさんのような人へのアプローチ〉
ネコ:さぁ、このAさんのケース、どうしましょう!
みみ:会社が求めているレベルに達していないと伝えていない、指導できていない管理職や先輩社員が悪いと思いますよ。このケースは。
ペルシャ:レポートの内容についても指摘していなかったし。その場で指導すべきでした。
パンダ:タイムリーに指導することも大事ですよね。あとで言われても…って。でも、管理職がプレーイングになっているから、優先できなくなる現実が問題ですね。リーダーとしての資質や、共感のツボを見つける能力?など、管理職にも向き不向きが…。
ペルシャ:向き不向きの話をしてしまうと元も子もない感じはしますが(苦笑)管理職個人の限界を認めて組織的な手立てが必要だとは思います。
みみ:管理職の方だけにアジャストを求めるのもちょっと違うな。
モモ:Aさんは、「言われたことはちゃんとやっている」し、「具合が悪ければ来なくていい」って言われているし、別にこのままの方が楽にお金がもらえるし…、と思っているかもしれませんね。ある意味、素直というか…。
会社側が、会社や上司の意向や仕事の雰囲気を読むことを期待しすぎているのかもしれません。「暗黙の了解だろ、分かれよ」が分からないから、Aさんは罪悪感も何もないのでは?と思います。
ペルシャ:出社していないから会社全体の空気を読めていない可能性もありますね。雑談的に教えてくれる人もいなそうですし。私には最初に申し上げた先輩がいましたが。
モモ:「そんなの分かるだろ」はかなり高度なコンテクストで、「きちんと伝える」ことの重要性を考えなければならないのかな、と思いました。
ネコ:「わかるだろ!」って、わからないよね。
モモ:経産省が、「『日本人社員も外国籍社員も 職場でのミスコミュニケーションを考える』動画教材及び学びの手引き」を出していて、それが、今時の新人を教育するには参考になるのでは?と思います。
ペルシャ:前の森で、上司のゴミを捨てたり掃除したりするのは新入社員がやるべきなのかで揉めたことがありました…。常識なんて時代と共に変わるのに、「それぐらい常識だろ!」という人多くないですか?
ネコ:多い!常識は会社によっても変わるよ。ネコが新卒で入社したところでは、新入社員が全員の机を拭いていました。あと、女性のみお茶当番があった!この森の常識も、ネコにはさっぱりわからない。
リス:そう考えるとやはり「常識とは…」という感じですね。仮に自分が考える常識とは?と言われても、うまく説明できる気がしません。
みみ:この森の常識…。もはやゆでガエルの私にはわかっていないです。知らず知らずのうちに押し付けてしまっているんですね。反省です。
ペルシャ:Aさんの場合、まずAさんが思う常識を率直に確認する必要がある気がします。
みみ:常識を確認するって具体的にはどうするの?自分とのギャップを埋める作業だから、質問攻めになりがちですよね?
ネコ:この人はよくわからないなーと思ったら、「あなたがこれをどう感じているかわからないわー」って伝えて、「教えて?」ってお願いしてしまうのも手ですよ。この間は、あまりにも反応が読めなくて、「今、私に問い詰められて困っている?」とか、「(答えが)思い浮かばない?それとも言いづらい?」とか聞きました。「あまり『こうしたい!』とか思わないタイプ?」と聞いたら、「そうなんですー、まさに!」と言われて、あぁ不機嫌なわけではないんだな、とほっとしました。
モモ:まずは、Aさんの話を聞くことが必要そうですね。自分の意見が分からない人には、応えやすい質問や、3択くらいから始めると良いかもしれませんね。
ペルシャ:「常識とは」といきなり聞くより雑談から始めるイメージですね。
モモ:研修を受けて、特に興味があった内容(や業務)は?とか、誰の話が分かりやすかった?とか、そういうあたりから探るのも話が進みやすいかな、と思います。
みみ:でも。このケースは、「常識」をすり合わせる前に、上司や先輩社員としてやるべきこと(指導)をやってからだと思うな。もちろん、ルールベース(問答無用!)ではなく、プリンシプルベース(なぜそうしなければならないのか)の指導で。その対話の中で「常識」をすり合わせていければよいのだろうね。ただ、質問して、きちんと反応してくれればの話ですが…。そこでのらりくらりかわされる(私的領域に踏み込むな!)と手の打ちようがない。
ネコ:「何をしたい?」とか「どう思う?」よりも、「これをやって」と言われた方が、第一歩は踏み出せるのかも、という気がしてきました。このAさん、言われたことはしていますよね。「在宅勤務にします」という連絡は来るようになっているわけですし。
リス:よくも悪くも「言葉通り」捉えるとすれば、明確に指示をすることも第一歩になりそうです。
みみ:そうですよね。「こうしてほしい」とか「何考えてんだろ」と悶々とするより、「こうしてください」と理由や背景事情を説明しながら指示して、「動いてもらう」のが第一歩ですかね。
ネコ:やる気に期待しすぎているのかな。だから、「これをやってください」の方がシンプルで伝わりやすいかも。
ペルシャ:Aさんからすると「言われたことはやっていますよ」という感じでしょうね…。
前の森でメモを取らない新入社員が増えていて、記憶出来ていればいいんですが、普通に忘れて聞いてきたので、複数名に注意したことが何度かありました。最初は吸収する意味でメモをとって自分で咀嚼してもらう必要があるかもしれません。
みみ:最近の指導は、自立・自律を促す方向で考えがちだけど、考えてみれば、新入社員にまだそれは無理。まずは必要なものをインプットして、行動に移せるだけ身体に染み込ませることの方が大事ですよね。
ペルシャ:インプットとアウトプットの細かいサイクルを繰り返してもらうことが必要かもしれません。
みみ:日本の伝統芸能は、きっちりとした「型」を徹底的に身体に染み込ませたうえで、心身の自由を得て、高い芸術性を獲得するんですよね。そういうことかもしれませんね。
ネコ:あ、華道はまさにそんな感じでした。
みみ:だから、「型」にはめるというのは、悪いことばかりじゃないんですよね。
モモ:そう思います。簡単な課題達成から、ステップアップしていくような仕組みを作って、インプットとアウトプットを回すと、こういうタイプの方は成長が期待できるような気がします。
話がズレますが、コミュニケーションについて、少し勉強した時に、そのメソッドでは人を3つのタイプに分けていて、他人指向型というタイプは、「人の役に立ちたい」とか「より工夫したものに改善したい」という人に関与することにやりがいを見出す傾向が強く、「自分がこれをやりたい」という自分主導の志向はあまりないということでした。実は、私もこのタイプなので、腑に落ちました。「これをやりたい!」ではなく、「やるべきこと(与えられた業務)をきちんとやりたい」という人もいるので、やるべきことを与えて、「型」を示すことは大事だな、と。
ネコ:誰かのためになってうれしい!がモチベーションになるなら、何も悪いことはないですね。働かせすぎはマズイけど。
いろいろなタイプの人がいるのだから、Aさんもまずは「型」を学べば、そこから指向性が見えてくるのかもしれませんね。
みみ:管理職世代は、「型」をしっかり指導していくことについて、新入社員の自主自立を阻害するのではないかと、臆病になっているんじゃないかな。
〈Aさん指導の「第一歩」〉
ネコ:そうすると、今からできる、Aさんへのアプローチは?「第一歩」を考えましょう。
「Aさん、明日はこれをやってもらうから、出社してね」と、まずは家から引っ張り出して、「やってほしいこと」を具体的に示すのはどうかな。緊急事態宣言下なのが悩みどころだけれど。
ペルシャ:緊急事態宣言下なので、言葉遣いには気を付けないといけない問題は残りますね。
ネコ:「出社しなさい!」ではなく、普通に「出社してね」なら、普通に「わかりましたー」になりそうな気が…。
ペルシャ:今回は上司が在宅でもいいような含みを持たせてしまったから、Aさんはその言葉を素直に受け取って出社しなかった可能性はありますね。出社が必要だと言うとAさんは出社するかもしれません。
もし在宅でなければ、本来どのようなOJTをしていたのかを上司や先輩たちが一旦整理してみる必要もありそうです。
リス:例年通りのOJTは難しかったとしても、こまめに連絡をとったり確認したりできる身近な先輩がいるだけで違う気がします。
ペルシャ:在宅でも…Aさんの場合、周りの人は「任せられるものはない」と思っていたようですが、本当にそうなんでしょうか?探せばいくらでもあるのでは?と思います。
みみ:任せられる部分をお互いに見つけて、少しずつ任せていくのが理想だけど、今は、人として、社会人として、組織人として必要なことを、きちんと指導するフェーズ。
ペルシャ:今までAさんはインプット中心だったので、レポート以外でアウトプットさせる機会を設けたり、何か作業をさせてみるなど、動かすことができないでしょうか?
モモ:在宅でもできる、お手本があるような仕事からがいいのでは、と思いました。
「これ」を「このお手本のようにまとめてみて」とかそういう類の…。
ペルシャ:在宅でお手本を見せられれば、それで仕事してもらいたいですね。
モモ:まずは、自分ができない部分に気づいてもらい、自ら質問してくるような流れが作れれば、改善するような気がします。
〈管理職だけで育てようとしないで!〉
ネコ:1日中もつような課題はダメな気がする。チャットでも電話でもメールでも、こまめにやりとりすることを前提とした業務をさせたい。
みみ:対面の場合と違って、上司は、例えば1時間ごとにコミュニケーションをとりながら進捗を確認して、こまかく指導していくとか、よりきめ細かな対応が必要かと。なんか、管理職が大変だな。
ネコ:管理職だけで背負うのをやめたら?
みみ:そうなんですよ。でも、目線をあわせてというのもなかなか…。実際には、「言ってることが違う!」とか起きそうですよね。
ネコ:管理職と先輩社員の基本的な目線があっていないなら、それこそ既に育成がうまくいっていない証拠では?人を育てるのって、管理職だけじゃないでしょ?みんなで育てたいのに、「こういうことをできるようになってほしいから、こう育てていこう!」みたいな基本方針が共有されず、管理職だけが独占するの、なんかイヤ。教える先輩たちだって、仕事の全体像や重要性、自分たちのミッションがどこまで共有できているかも知らず、ただ「作業手順だけ教えろ」っていわれたら、やる気も起きませんよ。
みみ:職場全員で育てようという雰囲気づくりと差配を管理職がすればいいんだね。育てるのは皆で。
ネコ:はい。管理職は、「こうしていこう!」と基本方針を示す。そして先輩社員たちは、懸念点があればそれを管理職に伝える。そうやって都度方向性を微調整しながら、一緒に新人さんを育てられたらいいと思う。
〈リモートならなおさら大事な「コミュニケーションの場」〉
ペルシャ:上司には「こんなこと聞いていいのか」となりますが、先輩にだったら聞けますし、逆に先輩から「ここだけの話」をしてもらうとか。
リス:リモートの場合は、特にいつ質問したらよいかのタイミングを図りにくいと聞きました。まずは身近な先輩社員から、タイミングを作るのもひとつだと思います。
ネコ:「質問タイム」を設定するのはどう?
みみ:それはいいですね。
ペルシャ:「雑談タイム」もほしいです。
ネコ:雑談タイム!大事!
みみ:それもいいね。自分がそうだけど、しゃべることでいろいろアイデアが湧いてくることも多いし。
ペルシャ:あと「愚痴外来」もほしいです。
みみ:雑談タイム、強制的に作るのは大賛成ですね。雑談専用チャットルームでもいいかと。
ネコ:集中している人には通知が鳴らないような、チャットルームがあればいいな。
ペルシャ:一緒にリモートでランチするとかはどうでしょう?前の森の話ばかりで恐縮ですが、ランチの雑談とか愚痴外来で結構重要な情報が手に入ります。裏事情なども。
ネコ:昔は喫煙室でいろいろあるっていう話をよく聞きましたね。
〈組織で見守る、組織で育てる〉
モモ:管理職から1時間おきに連絡が来るより、管理職は1日1回くらい、あとは、先輩から数時間おきくらいで連絡が来るくらいが本人の精神的負担が少ない気がします。そのうち、本人からコンタクトを取ってきてくれるようになるといいですよね。
リス:「監視されている」感が出ない程度の距離感が大事ですね。
モモ:それ、ほんとに大事だと思います。パワハラと言われかねない…。
ネコ:新入社員なら、監視というより、見守りされていたら安心かもね。
みみ:見守り。とてもよい言葉ですね。
リス:新入社員見守り隊…。
ペルシャ:メンバーの構成は様々なメンバー(他部署やパートさんなど)も入れると良いかもしれません。特定の部署内だと世界が狭くなるので、他部署の人とかがいると全体像が分かったりします。パートさんの情報網や過去の仕事の経験談も結構大事ですよ。
みみ:強制的に見守りの環境を用意することで、対面でもできなかったコラボや共有ができそうですね。イノベーションも。ワクワクしてきた。
ペルシャ:雑談の機会が顔つなぎの機会になって、思わぬアイデアが出るかもしれないですね。
ネコ:「おせっかいを焼く係です!」と最初に宣言してしまえば、「あぁそうなんだ」と受け入れてもらえるかな。
みみ:「新入社員見守り隊」「大阪のおばちゃん」
ネコ:飴ちゃんあげよか(笑)
ペルシャ:こんなご時世だからこそ「大阪のおばちゃん」くらいのノリが必要かもしれないですね。
みみ:お節介は、結構大事なことですよね。
モモ:確かサントリーさんにまさにその役割があったと思います。名前がそんな感じでした。あ、そうそう!「隣のおせっかいおじさん・おばさん」です。
ペルシャ:お節介すると逆ギレされるかもと心配される方もいるかもしれないですが、それを恐れていたら何も始まらない気がします。
ネコ:キレられたら「ごめーん」でいいんじゃない?
ペルシャ:私もそう思います。
みみ:「見守り」「おせっかい」を組織的に実現する!
ネコ:そうですね。そういうところをちゃんと評価もしてください!
みみ:孤立させない!誰ひとり取り残されない!
ネコ:そうしたいです。
モモ:SDGsですね!
みみ:職場は社会の縮図だものね。
ペルシャ:そういえば、前の森で、新人さんが上司に泣かされていたので、別の部署の若手が立ち上がったことがありました。組織横断的な取り組みも必要だと思います。
ネコ:部署の壁なんて壊しちゃえ!
みみ:「全社横断」はキーワードだね。そういった取組みも導入していきたいですね。
人事が忙しいのはわかる。現場も忙しい。でも、新入社員はそこにいる!皆で育てるという発想が大事。
ペルシャ:人事も含めて、特定の部署で抱え込まないことが大事と言えますね。
「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。
職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!
※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。