HRリスクマネジメント トピックス
職場におけるトラブルは複合的。社内の様々な関係者の協力を得て、複数の視点で捉えなければ、解決が難しい問題も多々あります。でもやっぱり最後は「人」!HRリスクマネジメントが重要です。
職場における様々なトラブルを解決すべく、今、エス・ピー・ネットワークに生息する動物たちが立ち上がりました!三匹(いいえ、いつもの7匹)が、チャットにて解決の道を探ります。
みみずくさん(みみ):
SPNの森のお目付け役。愛らしいフォルムと裏腹に、猛禽類らしい鋭い目線で最新のリスクをチェック!さらに森の仲間たちの文章もチェック!夜行性?うーん、夜中に起き出して活動を始めるから、夜行性なのか早起きなのか…?
黒豹さん(ヒョウ):
黒いのは、ゴルフや釣りなどアウトドアライフのせい?しなやかな筋肉で機敏に動く…いや、単にせっかちなだけかも?SPNの森で19年前に内部通報窓口の受託運営サービス「リスクホットライン®」を立ち上げたのは実は…。
モモンガさん(モモ):
小さな皮膜で滑空する夜行性。社会保険労務士、産業カウンセラー、ファイナンシャルプランナー。そこそこ長い会社員経験をおなかの袋から取り出しながらSPNと会員企業様の森を飛び回ります。
リスちゃん(リス):
森の中を駆け回り、皆さんのお困りごとに対応します。気が付けばこの森に来て5年が経ちました…。最近は巣穴での勤務も慣れてきました。変わらずご相談にお答えしていきますよ。
ペルシャ猫さん(ペルシャ):
ゆったりと過ごすことが好きな猫。ゆったりと過ごしたいが、過ごせなかった過去を持つ。社会保険労務士のほか財務会計の資格もあり、人事労務と財務会計分野の実務経験が長い。SPNの森では内部通報制度との縁が深くなりつつあります。
ネコさん(ネコ):
当相談室の留守番ネコ。猫なで声と鋭い爪をあわせ持ち、企業内での人事実務経験が豊富。社会保険労務士で、産業カウンセラー&キャリアコンサルタント。内部通報窓口の担当者さんは大変そうだニャー。
今月のご相談は、こちら。
30代で起業して、今年で我が社も25周年。創業当時はいろいろありましたが、徐々に事業も軌道に乗り、今は従業員も300名ほどと、ようやくここまで育った!という感じです。しかし、まだまだ大きくしていきますよ!
会社が大きくなると、いろいろ面倒も増えますね。社員から、コンプライアンスだなんだとうるさく言われ、一昨年、「内部通報窓口」とやらを開設しました。
社外に受付窓口を設置し、最初の年は、数件通報が入ったようです。ただ内容は、パワハラだの、社風がどうしたこうしただのと、些細なことばかりでお恥ずかしいくらい。2年目からは1件も入っていないようです。
外部窓口の運営先からは、「制度の利用を促進すべきだ」と言われましたが、正直、その必要性がわかりません。当社は何でもオープンに話し合う社風だから、内部通報なんてしなくても、問題は解決できるはずですから。上司に言いづらいことなら、直接私に相談すればいいんですよ。社長とはいっても、普通に社員の皆と同じように、社内をうろうろしています。休憩室では社員と雑談もしますよ。気軽に冗談を言い合える距離感なのだから、言いたいことがあるなら言えばいい。どうして誰も使わない「内部通報窓口」に、お金をかけなければならないのでしょうね?
おやおや、社長さんがこれでは、内部通報の担当者さんはお困りでしょう…。SPNの森の動物たちが、この社長さんに内部通報制度の必要性や、適正に活用するためのポイントをお伝えするニャー!
〈社長さん、「現実」が見えていますか?〉
ペルシャ:社内で社長さんだけが「気軽に冗談を言い合える距離感」と認識している可能性は…?
ネコ:あると思うよ。社長さんだけが、そう思い込んでいるのでは?いそうだよね、こういう社長さん。
ペルシャ:そうですよね…。雑談する社員さんたちは、顔は笑って心は泣いているかもしれないですよね…。
ネコ:「何でも俺に相談すればいいんだよ。俺がガツンと言ってやるから!」みたいなノリ?頼もしいかもしれないけれど、社長自身のことなら言えるわけないよね。
ペルシャ:むしろガツンとやられるでしょうね…。
ネコ:そうそう。
みみ:冗談を言い合うことと、問題があった場合に報告することはそもそも違う。相手は社長。冗談だって処世術の一つに過ぎないかもしれないし。危険ですね。この社長の考え方は。
ペルシャ:(この社長さんがどういう方か分からないので仮定の話ですが)相手に威圧的な人には耳ざわりのいい情報しか集まらないでしょうし…。
ネコ:社長自身は、きっとまっすぐに「風通しがいい」「何でも話せる」と思い込んでいるのでしょうね。社長が目を向けていないところに、たくさん問題が溜まっていそう。
ペルシャ:パワハラ的指導の上司や体罰をする熱血教師の是非論に近い気もしますね。本人は指導や教育のつもりでも、受け手はそうは思っていなくて、ただひたすら心を閉ざすか、憎悪を抱くことになると思います。結局、パワハラ的指導の上司や体罰をする熱血教師のもとには、その人にとって耳ざわりのいい情報しか集まらなくなって、ただ情報を得られなくなっていく…。この社長さんがどういう方か分かりませんが、もしそうだとすると、社長さんに都合の良い景色しか見えなくなっている(周りにそう演出されている)裸の王様なのかもしれないです…。
みみ:それはありそうですね。「社長はフランクだから、みんな話しやすいって言ってますよ」的な、取り巻きの発言とか。
ネコ:そう、裸の王様!本当の姿が見えなくなるんだろうな。周りが隠すようになって。
ペルシャ:経営者などの組織のトップって、自然と孤独にされてしまうのかなと思うことがあります。トップ本人の人間性に問題がなくても、権力を持てば持つほど周りが勝手に忖度して、裸の王様や軽い神輿にされてしまうこともあるかと…。それはトップならではの悲劇なのかもしれません。
みみ:「風通しのよさ」とか「心理的安全性」の意味を取り違えている。仲がいいこと、冗談が言えること、とは違う。
〈通報は「些細なこと」じゃない!〉
ネコ:そうですね。あと、社風に関することやパワハラ相談を「些細なこと」と考えられるのも困る。結局、社長が大事だと思っていることしか、きちんと対応してもらえないということでしょう?社長が思う「大事なこと」に、コンプライアンスが含まれているかどうかも不安。「法律なんてテキトーに対応しておけ」とか、担当者からうるさく言われて「法律なら、仕方ないからやるか」的な発想もありそうだし。
リス:通報内容を「些細なこと」と思っているだけではなく、それを管理職層の方が社内で発言してしまっている…という状況を聞いたことがあります。それを従業員も聞いていれば、「これでは通報なんてできるわけない!」となるのは当然ですね。
ネコ:そうそう、幹部クラスの人が「些細なこと」「こんな相談ばかりでお恥ずかしい」なんていう発言を社員さんの前でしているの、私も聞いたことがあります!
リス:「こんなことで通報するやつがうちの会社にいるのか?」ということを社長や管理職が言っていると、内部通報も職制での相談も何もできなくなります。
みみ:残念ながら、ハラスメントに対して軽く考えている経営者は意外に多いからね。
モモ:相談しても悪気なく頭から否定してしまう方もいますよね。特にグイグイ推進してきたタイプの方には。「〇〇さんが、~ということがありまして、これは対応しないといけないと思います」「いやー、そんなことないだろう。彼はそんなことする奴じゃないよ」で終わっちゃうような。
みみ:残念ながら、それもよく聞くね。
モモ:で、「また相談があったら、何でも言ってくれ!」で終わっちゃう。「結局、何もしないじゃん。言っても無駄じゃん!」という相談者の心の声が聞こえそうです。ご本人は、「自分は従業員の相談に気軽に乗っている良い経営者だ」という思いばかりが膨らんで…。すれ違いが加速するという構図が見えそうです。
みみ:なんかだんだん耳が痛くなってきたな。
ネコ:ハラスメントの裏には不正があるものです。ハラスメントを軽視したらいけない。でも、それがなかなか伝わらない。
モモ:管理職層に、内部通報をしたら、「オレ、あいつに、リンリンライン通報されちゃったらしいんだよねー」とか、武勇伝のように語る方がいたり…。
ネコ:うわぁ、それはヒドイ!ちょっとムカつくー。
モモ:守秘義務も全く守られていないということですから、コワいですよね。
ペルシャ:そういう人って通報した方がおかしいと思っているんでしょうか?
ネコ:ね。カッコいい要素はないのに、なんで自慢してしまうのかな。飲食店で横柄な態度を取るのがカッコいいと思い込んでいるのと同じ感じ?根っからの悪い人?
モモ:カッコいいと思っている可能性はありそうですよね。パワハラやセクハラで通報されるくらいが、「できる男?」「チョイ悪?」と、完全に間違った認識をしている人もいるようです。「ちょっとはみ出してるくらいじゃないと、攻めの仕事ができない!」みたいな勘違いさんは、まだいるようですね。数は減っていると思いますが。
ペルシャ:攻める方向、間違ってますね(笑)
ネコ:どうにかしたいですね。
モモ:そういうのって、令和の時代では「恥ずかしいこと」「情報が更新されていなくて、むしろ、仕事ができない証拠」という認識が持てるようなできごとがあればいいのかもしれませんね。
〈法律で求められている対応〉
ネコ:法律的な面から、内部通報制度の必要性について語れる人は?
ひとまず、パワハラを含めたハラスメント相談体制の整備は、この4月から中小企業でも完全に義務化されます。セクハラ・マタハラなどの対策はとっくに義務化されているので、既に、ある程度の相談体制はあるはずだけどね。
ただ、セクハラやマタハラは「ダメなものはダメ!」である意味わかりやすいけれど、パワハラは「指導」との境目が難しいので、改めてトップからのメッセージや教育が必要になります。
また、相談を受け付けた後は、相談者や関係者を適切に保護しながら、きちんと調査を行い、ハラスメント行為が認められれば懲戒や再発防止が必要。そのためには、懲戒の規程も見直しておくべきでしょうね。それから、たとえ調査の結果「ハラスメント」というほどでなく、「コミュニケーションの問題ですね」となったとしても、やはり再発防止は必要です。
これ全部がセットです!「ハラスメント防止体制の整備」って、ただ相談窓口を作ればよい、というわけではないところがポイントね。
ペルシャ:公益通報と内部通報は厳密には一致しませんが、公益通報者保護法でも、従業員数301名以上であれば、2022年6月からは体制整備が「義務」となります。
簡単に言えば、「国民の生命、身体、財産その他の利益」が脅かされるような行為が組織内であったときには、それを安心して通報できる仕組みを、組織内部でも整えましょう、ということですね。
ポイントは、「安心して通報できること」と「高い実効性」を求められる点でしょうか。
誰が通報したかが知れ渡ってしまったり、通報した人や調査に協力した人が不利益取扱いを受けたりするのは絶対にダメ!
そして経営幹部が制度にしっかりコミットして、リスクの早期発見や企業価値の向上に活かすことを求める一方で、経営幹部自身が問題に関わっている場合や組織ぐるみの不正が疑われる場合にも通報できるような「経営幹部から独立したルート」が求められています。
モモ:300人以下はまだ努力義務ですが、段階的に義務化する猶予期間のようなものですし、是正勧告の対象にはなりますから、「うちはまだ大丈夫だし…」などと思わずに、今から準備や対応をする必要がありますね。
ネコ:窓口の設置や、プライバシーに配慮した調査、経営者のコミットメントなど、共通する部分は多いですね。内部公益通報の窓口はまだ義務化されていない会社でも、この機にもう少し幅を広げて「内部通報制度」として整えて、ハラスメントの相談も含めて内部通報窓口で受け付けることもできます。通報件数が多いと、担当者さんが大変かもしれませんが…そこは会社の規模に応じて、ということでしょう。
ペルシャ:6月の改正公益通報者保護法施行で、通報に対応する「従事者」を定めなければならなくなります。その従事者が、正当な理由もないのに、「誰が通報したか」を特定できるような情報を漏らした場合、罰金刑まで科せられることになっており、担当者さんはピリピリしている感じです。
ネコ:窓口を設置すること自体より、通報を受けた後の対応の方が大変!
リス:形式的に「窓口を設置」しただけで終わってはいけませんね。
ペルシャ:窓口を設置しただけで、いざ通報したら握りつぶされる、周りに通報内容が広まるようでは意味がありません。「まだ内部公益通報の方は努力義務だから…」と油断して良いわけがないですね。他の法律でも努力義務だったものが義務化されていますから、努力義務は将来の義務化の布石であって、「今から少しずつ準備をしておくように」との国からのメッセージが込められていると考えておいた方が良いでしょうね。
ネコ:目指すべきことは「コンプライアンス経営」「労働者が力を発揮しやすい、働きやすい職場づくり」のはず。ただ…「義務」や「罰金」のインパクトが強すぎて、かえって「義務化に対応すること」「罰則を避けること」ばかりに目が行くような気がするなぁ。「手段の目的化」はいけません。
モモ:実効性を伴ってこそ、ですから。
「うちの内部通報制度なんて、どうせ言っても無駄だ」と従業員が思えば、いきなり内部告発やマスコミへのリークということにもなりかねません。正しく運用し、会社に問題があれば、それを早期発見して、適切に是正してこそ、内部通報の制度が活きます。
〈「形だけの制度」の限界と、悪用による負のスパイラル〉
ペルシャ:せっかく制度を整えても、そもそも窓口の存在を知らない人や勘違いする人が出てくる可能性もありますね…。
リス:当社で実施しているアンケートの結果を見ると、窓口について同じ内容で周知していても、誤解する人や都合よく解釈する人がいる場合があります。「正しく知ってもらう」ことの難しさを感じるところです。
モモ:窓口を知らない人がいることも問題ですし、悪用する人がいるのもまた一つの事実かと。気に入らない上司を何度も何度も通報する人などもいますね。
みみ:いますね。
ネコ:ニャー、窓口の(社内)政治的利用はご遠慮ください…。
モモ:内部公益通報制度もハラスメント相談窓口も、その目的と運用を「正しく知って」「正しく使って」こそ、意味のあるものになると思います。正論で当たり前のことですが…。
ペルシャ:通報がむしろハラスメントの手段に使われるのは悲しいですね。
みみ:通報だから一応ちゃんと取り扱わないといけない、っていうことを分かったうえで、虚偽の通報や誹謗中傷の通報がまかりとおるのはどうかと思うけど。
モモ:中には、不当要求のような方もいますからね。会社はそこに毅然と対応する必要もあると思います。通報者保護を誤解して、「通報者は何でもかんでも手厚くもてなさなければ。」というような誤った対応をしてしまう会社さんもありますね。そういう悪用する人を懲罰規程などに則って、正しく処分することも大事だと思います。そのためにも、公平誠実な調査は必要ですね。
ペルシャ:不正利用して解雇になったケースということで、裁判例(ボッシュ事件)がありますね。執拗に内部告発メールを繰り返したということでの解雇は「有効」となりました。
みみ:悪意ある通報って匿名ですよ、大概。絶対に自分が特定されない形で、じわじわやってくる。不正利用の実行者(通報者)が特定できれば処分までいけますが、他人を貶める目的であれば、身バレしないように、でも匿名の通報として確実に本人に届く形をとってくる。
モモ:そうですね。悪質なものはたいてい匿名ですよね。そういう虚偽の通報をされた方(被通報者)へのケアも必要だと思います。見えない第三者から、悪質に攻撃される不安やストレスは、大変なものだと思います。
ネコ:陰湿…。「小田急レストランシステム事件」を思い出しました。部下に事実無根の「中傷ビラ」をまかれて、お客様から問題視されて。会社からも事情聴取を受け、長年従事してきた仕事からも外されて、ついには自殺に至ってしまったという…。
ペルシャ:最悪の結果ですね…。
公益通報者保護法の改正で従事者が守秘義務違反をすると従事者個人に罰金刑が課されますが、通報者がそれを従事者への脅しの材料に使ってくるおそれもありますね。「情報を漏らしたと警察に言うぞ!」とか。
みみ:十分考えられますね。
ネコ:「通報したことを理由に不利益は受けない」と、「通報者は必ず保護される」は違うよね。そこを勘違いして、自分の要求が通るまで何度も何度も騒ぎ立てる人が出るのは問題。
みみ:内部通報としてどこまで対応すべきか、難しいですよね。
ペルシャ:そうですね。「対応しない」と決めた案件の裏に、実は物凄いリスク情報が隠れていることもないとはいえず…。
みみ:「対応しない」と決めるにしても、当事者(被通報者)に事実関係の確認が必要ですから、被通報者には自分が通報されたという事実はわかる。「通報された事実」だけでも相当なインパクトですからね。
ネコ:明らかな不正通報ではなくて、通報者は「その人が悪い」と思い込んでいることもありそう。
モモ:通報者の本人の思い込みや、本人視点での正義感による場合など、「信念」があると難しいですよね。
みみ:正義感を装って、さらっと虚偽の内容を通報してきたりね。
ネコ:(みみずくさん、よほど酷い目に遭ったのかしら…?)
〈制度が正しく活用されるかどうかは…社長さんの本気度次第!〉
モモ:そういう悪質なケースには、会社はどのように対応していけば良いのでしょうね。
ネコ:正しく使われてナンボの制度ですよね。法制化されたことで、「正しく」使われるかどうか危ういような要素を持った会社でも、とりあえず対応しなきゃいけなくなるし、とりあえず法対応を急ぐ。そしてまんまと悪用されて、かえって組織がぐらぐらする。おかしいな、こんなはずじゃない!
みみ:本当にそのとおりです。武器は正しく使える者だけに渡すべき。
ペルシャ:不正利用に関しては断固として対応できるよう、懲戒の対象としておくことや社員教育でしょうか。あとは、通報者に寄りすぎず、被通報者にも寄りすぎないフラットな姿勢での調査が必要ですね。
みみ:でも、調査をすればするほど、無実な被通報者は傷ついていくんじゃないかな。
ペルシャ:ただ、調査をしないと、そもそも無実なのかも分からないですよね…。被通報者が悪だと決めつけて、長時間拘束したり、調査のやり方に問題があったら元も子もないですが。
みみ:事実は出てこないのに、「通報された事実」によって反論・反証を求められたり、意に沿わない処遇をされるって本当に大変だと思います。
モモ:匿名かつ悪意のある通報の場合は、通報者の処分も難しいですよね。みみずくさんが仰るように、被通報者が傷つけられるばかりになってしまうこともあります。いじめと一緒で、なぜいじめられる側が対応しなければならないんだ、ということですよね。「ないことを証明する」なんて、悪魔の証明ですもの。さらに、疑わしくもないのに、話が出ただけで一方的に罰せられたら、本当に救いがないですよね。
みみ:内部通報制度に期待し過ぎではないかなって思うことがあります。できもしない、不完全なものに、大きな役割を与えてしまっているんじゃないかと。法律で義務化されたことによって、内部通報制度のことを真剣に考えていない事業者が安易に導入したら、悪用されるに決まっています。問題は絶対多発するし、会社は振り回されるはずですよ。
リス:「通報した者勝ち」という表現は各社さんでよく耳にしますね。公正に対応するはずが、誤った運用をしてしまい、かえって「通報した者勝ち」に繋がってしまっているというか…。
ネコ:こんなだから、この社長さんも内部通報を重要だと認識しなくなるんだよ!!
モモ:どうにかしたいですよねぇ…。
ペルシャ:内部通報とは別の手立てを考えておいて、複数の制度を並行して運用していくことが必要ということでしょうか。
みみ:その通りだと思います。SPクラブ会員向けサイト「SP Club PREMIUM」のトップメッセージに書きましたが、内部通報制度が真に機能するためには、内部通報制度だけでは足りないってこと。
匿名アンケート調査の実施や1on1ミーティングの継続的な実施、ミドル・マネジメントの質的な底上げに向けた戦略的な育成、そして何より経営トップの健全性に対する強い意志を伝え続けること、といったコンプライアンス・リスク管理の持続的かつ多角的な取組みが必要であり、内部通報制度もその一つと捉えるべきじゃないかな。
ペルシャ:この社長さんの「どうして誰も使わない「内部通報窓口」に、お金をかけなければならないのでしょうね?」は順番が逆だと思います。最初にお金をかけてでも内部通報窓口をしっかり構築して、運用もしっかりやらないと。
ネコ:やるならきちんと!
みみ:お金をかけるのだから、制度設計や周知徹底を真剣にやる。だから機能するものになる。
モモ:従事者や担当する方は、調査スキルも必要ですし、公平冷静な判断力も必要ですね。あらゆる可能性を考えられる想像力も必要になります。とても難しい仕事です。社内以外の客観的な目も必要になりそうですね。
みみ:社外の第三者が通報を受け付けるメリットは十分に大きいけれど、その中に悪意が紛れ込んでくることまでは阻止できないよね。だからこそ、通報者だけでなく、被通報者の人権にも十分配慮しないといけないし、そもそも内部通報制度は、通報者が善、被通報者が悪になりがちな構図になっている。
ペルシャ:一種のアンコンシャスバイアス(無意識下の偏見)ですね。脳の機能(膨大な情報処理の効率化機能)としてアンコンシャスバイアスが誰にでもあると肝に銘じておかないと…。
モモ:「中立・公正」と言葉にするのは簡単ですが、本質的な意味とそれを実行することはとても難しいですね。
みみ:「中立・公正」は、誰の目線か、ということです。
〈社長さんへのアプローチ方法を考えよう〉
ペルシャ:内部通報にしろ、ハラスメント防止にしろ、相手が人である以上、どういう風に受け止めるか、どう考えるか分からないのですから、一つの方法に固執せず、複数の方法を考えて、並行して運用すべきですね。この社長さんにもそのようにお考えいただければ…。
ヒョウ:終盤からの参加でスミマセン!
今日も1件ありましたが、最近とても多い依頼が、「内部通報に関する研修でトップと役員の意識を変えて欲しい!」というもの。「社内の声では聞く耳を持ってもらえないので、お願いします!!!」と…。これって重い任務で、相当なプレッシャーがあります。頑張るしかないですよね!
ペルシャ:重いですね…。
ネコ:「内部通報制度が重要なものだ」ということを、トップにどう伝えるか…どうしたらいいでしょう?
ペルシャ:その会社に似た「よその会社でもこんなこと起きてますよ」と生々しい話をするとかですかね…。
みみ:機能した事例を並べるより、機能しなかったがために会社が窮地に追い込まれた事例なんかの方が響くかも。
ヒョウ:う~ん。会社が窮地に追い込まれた事例は、「そんなの当社では起こり得ないよ」と捉える方もわりといらっしゃるように思うな。聞く耳を持たない経営幹部の方々に響くのは…例えば「優良企業がどんなに真剣に取り組んでいるか」進んでいる意識の高い企業の好事例を示すのも効き目あるかも…。「憧れ心」をあおってみる!
みみ:そうかなあ。例えば、この社長だと「大きい会社だからできるんだよ。俺がちゃんとアンテナ張ってるから、そこまでやらなくても大丈夫」って思考回路だと思うよ。
ヒョウ:…ですね。確かに…、人によりますね。
ペルシャ:「うちの会社は関係ない」と思われないような、あるあるの事例の方が良いかもしれないですね。
みみ:そのとおりですね。事例は、現実感がともなわなければ効果はないし。
ネコ:「どこにでもあること」の裏側に、酷い現実があることをはっきり見ていただきたいですね。リアルマイニング®をご提案したいです。かなりショッキングな結果が、明確に出ることも結構ありますし…。
リス:それだけ従業員の皆さんが本音を書いてくれているということですが、結構生々しい回答が出ますものね。
ペルシャ:この社長さんの認識が間違っているかもしれないですから。
モモ:リアルマイニング®の結果報告で、「このままじゃ、役員には見せられないな…」などと言っている担当者の方がいると、「そういうとこだぞ!」と思ったり…。
ネコ:うん!
みみ:そのとおり。従業員の本音に迫るには、リアルマイニング®は内部通報制度と両輪だと思うけど。あ、ヒアリングもね。
ペルシャ:デプスインタビュー(1対1で行う面談式のインタビュー)をしてみても良いかもしれません。
ネコ:本当にマズイ会社は、インタビューでもいいことしか言わないんだよなぁ…。
匿名アンケートで、「良い会社です!」的な意見が多い中に、「酷いこと」ばかりを書いてくる人がいると、どっちかな?と迷います。その人が歪んだ眼で見ているのか、「酷い現実には目を向けないこと」がその会社のスタンダードなのか。
ペルシャ:匿名アンケートとは言え、結局上層部に伝わると思われているのかもしれないですね…。内部通報制度の信頼性にも似た話ですが。
リス:リアルマイニング®や内部通報窓口利用者アンケートでも、そのように思っているような回答は実際に見かけますね。
ネコ:そう。でも、アンケートに答えたのが自分だということが「伝わる、伝わらない」の次元ではなく、「見ない、見えない!」の発想になっていることもあるような気がするの。「問題はない!」と思い込まないとやっていられない、「だから見ない!見えていても見えない!」って…不作為がはびこりだしたら、自浄作用どころではなくなってしまう。
だから、リアルマイニング®のレポートには、複数の可能性を挙げることがあります。「多くの人が『問題ない』と思っている組織なのかもしれないし、本当は問題があるけれど、それを口に出せない、見ないフリをしてしまうような組織なのかもしれない」と。リアルマイニング®だけで全てがわかるわけではないからね。
みみ:現場のリアルを知るには、多面的な手法を使って、多角的に。
モモ:そうですね。そして、どんな結果であっても、素直に受け入れ、誠実に是正対応をする謙虚な姿勢が、経営層の方々には必要になりますね。
ヒョウ:最近話題の(通称)パワハラ防止法と改正公益通報者保護法は両方とも、「トップの本気度」が求められていますよね。トップがご自身の言葉で、パワハラの撲滅とか内部通報制度の重要性を謳っている企業は、社員の方々の雰囲気を見ていても「いい会社だなぁ~」と感じます。当たり前だけど、トップのコミットメントってやっぱり大事だな~と改めて思わされた今回のテーマでした。
「HRリスク」とは、職場における、「人」に関連するリスク全般のこと。組織の健全な運営や成長を阻害する全ての要因をさします。
職場トラブル解決とHRリスクの低減に向けて、エス・ピー・ネットワークの動物たちは今日も行く!
※このコーナーで扱って欲しい「お悩み」を、随時募集しております。