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危機管理トピックス

FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書(金融庁)/ディスクロージャーワーキング・グループ(金融審議会)/これからの労働時間制度に関する検討会(厚労省)/9月・10月は「DX推進指標」の集中実施期間(経産省)

2021.09.06
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更新日:2021年9月6日 新着24記事

金融 取引のイメージ
【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

金融庁
  • FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について
  • 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第1回) 議事次第
  • 企業アンケート調査の結果
  • 「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」の公表について
内閣官房
  • 気候変動対策推進のための有識者会議(第6回)議事次第
  • 成長戦略会議(第13回)配付資料
内閣府
  • 令和3年第12回経済財政諮問会議
  • 満足度・生活の質を表す指標群(ダッシュボード)
国民生活センター
  • 2020年度にみる60歳以上の消費者トラブル-コロナ禍で、通信販売の相談件数は過去最高に-
  • 保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!-申請サポートを受ける前に、損害保険会社に連絡を 保険金の請求は、加入者ご自身で!!-
  • PIO-NETにみる2020年度の危害・危険情報の概要
  • 新型コロナワクチン接種の予約を案内する怪しいメールに注意!-国がコロナワクチン接種に関連して金銭やクレジットカード番号を求めることはありません-
厚生労働省
  • これからの労働時間制度に関する検討会 第2回資料
  • 第50回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日)
経済産業省
  • 第6次エネルギー基本計画策定に向けて御意見を募集します
  • デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』を取りまとめました
  • 9月・10月は「DX推進指標」の集中実施期間です
  • 「健康経営銘柄2022」及び「健康経営優良法人2022」の申請受付を開始しました
総務省
  • 労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)7月分結果
  • 多文化共生事例集(令和3年度版)の公表
国土交通省
  • 株式会社ソラシドエアに対する厳重注意について
  • カーボンニュートラルポート(CNP)形成に向けた施策の方向性をまとめました~「CNP の形成に向けた検討会」中間とりまとめ等を公表~

~NEW~
警察庁 令和3年7月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 令和3年1月~7月の特殊詐欺全体の認知件数は8,031件(前年同期7,948件、前年同期比+1.0%)、被害総額は152.2億円(156.4億円、▲2.7%)、検挙件数は3,487件(4,089件、▲14.7%)、検挙人員は1,274人(1,373人、▲7.2%)
  • オレオレ詐欺の認知件数は1,663件(1,214件、+37.0%)、被害総額は461.2億円(360.0憶円、+28.1%)、検挙件数は738件(1,157件、▲36.1%)、検挙人員は395人(337人、+17.2%)
  • 預貯金詐欺の認知件数は1,520件(2,518件、▲40.0%)、被害総額は19.0億円(33.3憶円、▲42.9%)、検挙件数は1,272件(641件、+98.4%)、検挙人員は418人(454人、▲7.9%)
  • 架空料金請求詐欺の認知件数は1,174件(1,088件、+7.9%)、被害総額は38.7億円(39.5憶円、▲2.00%)、検挙件数は147件(352件、▲58.2%)、検挙人員は75人(84人、▲10.7%)
  • 還付金詐欺の認知件数は2,116件(876件、+141.5%)、被害総額は23.8億円(12.5憶円、+90.4%)、検挙件数は284件(262件、+8.4%)、検挙人員は55人(25人、+120.0%)
  • 融資保証金詐欺の認知件数は96件(207件、▲53.6%)、被害総額は1.7億円(2.3憶円、▲26.1%)、検挙件数は12件(96件、▲87.5%)、検挙人員は8人(34人、▲75.0%)
  • 金融商品詐欺の認知件数は18件(40件、▲55.0%)、被害総額は1.1億円(2.4憶円、53.3%)、検挙件数は7件(18件、▲61.1%)、検挙人員は11人(19人、▲42.1%)
  • ギャンブル詐欺の認知件数は38件(63件、▲39.7%)、被害総額は1.2億円(1.1憶円、+8.8%)、検挙件数は3件(23件、▲87.0%)、検挙人員は3人(6人、▲50.0%)
  • キャッシュカード詐欺盗の認知件数は1,384件(1,922件、▲28.0%)、被害総額は20.2億円(28.6憶円、▲29.4%)、検挙件数は1,012件(1,528件、▲33.8%)、検挙人員は303人(409人、▲25.9%)
  • 口座開設詐欺の検挙件数は391件(376件、+4.0%)、検挙人員は223人(251人、▲11.2%)、盗品等譲受け等の検挙件数は1件(2件、▲50.0%)、検挙人員は0人(1人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,263件(1,469件、▲14.0%)、検挙人員は1,008人(1,205人、16.3%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は102件(126件、19.0%)、検挙人員は83人(110人、▲24.5%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は13件(18件、▲27.8%)、検挙人員は7人(16人、▲56.3%)、組織的犯罪処罰法違反の検挙件数は90件(57件、+57.9%)、検挙人員は31人(13人、+138.5%)
  • 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では60歳以上91.7%、70歳以上74.7%、男性26.2%:女性73.8%、オレオレ詐欺では60歳以上97.3%、70歳以上94.4%、男性19.1%:女性80.9%、融資保証金詐欺では60歳以上26.2%、70歳以上14.3%、男性76.2%:女性23.8%、特殊詐欺被害者全体に占める高齢被害者(65歳以上)の割合は、特殊詐欺全体では88.3%(男性23.1%:女性76.9%)、オレオレ詐欺96.6%(18.7%:81.3%)、預貯金詐欺98.6%(17.2%:82.8%)、架空料金請求詐欺47.9%(53.0%:47.0%)、還付金詐欺94.8%(24.8%:75.2%)、融資保証金詐欺17.9%(80.0%:20.0%)、金融商品詐欺55.6%(30.0%:70.0%)、ギャンブル詐欺31.6%(66.7%:33.3%)、キャッシュカード詐欺盗98.0%(18.9%:81.1%)

~NEW~
消費者庁 消費生活相談のデジタル化に係る中間的とりまとめの公表について
▼消費生活相談のデジタル化に係る中間的とりまとめ(国民生活センター)
  • 2040年の未来像
    1. 人口、社会保障、地方行政
      • 人口規模が小さい地方公共団体ほど人口減少率が高くなり、4割が単身世帯となる可能性がある。
      • 地方で先行して更なる高齢化が進み、大都市圏でも当面、高齢者人口数が大きく増加する。
      • 社会保障の担い手が減少し、社会保障の維持や財政健全化に対し影響が及ぶ。
      • 地方行政では、更に少ない職員での行政運営が必要になる可能性がある。
      • 社会保障に係る経費や老朽化した公共施設等の更新に要する費用の増大が想定される。
    2. 社会、技術、国際
      • 人間らしさを再考し、多様性を認め共生する社会が目指される。
      • リアルとバーチャルの調和が進んだ社会が目指される。
      • 人間機能の維持とデジタルアシスタントとの融合による「個性」が拡張した社会が目指される。
      • カスタマイズと全体最適化が共存し、人間らしく生き続けられる社会が目指される。
      • 新型コロナウイルスの感染拡大により、人の移動も停滞する中で、国境を越えた交流による付加価値の追求は、デジタル分野に重心を移動していくことが想定される。
    3. 消費生活相談
      • 社会経済が一層高度化・複雑化、デジタル化し、既存の概念を超えた商品・サービスが増加する可能性がある。
      • グローバル化が進み、国境を越えた消費が増加する可能性がある。
      • 高齢化が更に進み、また消費者自身による解決が難しい問題が増加し、相談需要が高まる可能性がある。
      • 消費生活相談業務に投入する人・もの・金が一層限られるおそれがある。
  • これまでの現状分析
    1. 相談員
      • 消費者トラブルとは関係のない相談が寄せられる
      • 相談対応に参考となる資料がバラバラで探しにくい
      • あらゆる相談に対応しなければならず、自己研鑽が欠かせない
      • 相談情報の入力負担が大きい
      • 専用端末がインターネットに接続できない
      • 専用端末、固定電話でしか相談対応できないので職場に行かないといけない
      • 相談情報の入力に、きめ細かいルールがあり、負担感がある
    2. 消費者
      • 相談で、どのようなサービスが受けられるのか、わかりにくい
      • 相談受付時間中に相談する時間が確保できない
      • 特に都市部は電話がつながりにくい
      • メール、SNSなどのデジタルチャネルに対応していない
      • 解決方法をwebで調べたが見つからない
    3. 消費者センター職員
      • 相談員の担い手、成り手がおらず、困っている
      • 相談員が入力した相談情報を確認し、決裁するのが大変
      • 個人情報の取扱いを慎重にしないといけない
      • 予算を確保しないといけない
      • 併任・兼務で、職員の体制が不十分なところもある
    4. 国民生活センター
      • 消費生活センターごとに業務方法にばらつきがあり、全ての要望を聞くのは難しい
      • 消費者庁や報道機関などから正確なデータの提供を求められる
      • 入力された相談情報のデータ補正に負担感がある
      • データ利活用などの教育・訓練に時間を割けない
    5. 消費者庁
      • 相談の最近の傾向を迅速に把握できない
      • 政策の裏付けとなる相談情報の正確なデータがほしい
      • 法執行の裏付けとなる相談内容の詳細な情報がほしい
      • 検索・集計がわかりにくく、使いこなせない
      • 習熟機会もない
  • 検討の方向性
    • 機械でもできることは機械にやってもらい、人の業務の負担軽減や高度化(人がやるべきことにより注力)を図る
    • 現状を前提としてスタートせずに、あるべき姿からサービス・業務を再構築する
  • DXに際しての主な検討のポイント
    • FAQ、ウェブサイトの充実など、相談に至る前の消費者自らの解決支援を強化
    • 電話や対面の相談に加え、メール、ウェブフォーム、SNS、テレビ会議システムの活用など、消費者のニーズや属性、相談内容に合わせ、相談手法を多様化
    • それぞれの手法の特性に応じた棲み分け、両立、効率化が図られるよう検討
    • 電話相談時の音声テキスト化、相談履歴やマニュアル類の画面自動表示など、相談業務を支援するシステムを導入
    • あわせて、業務プロセスの効率化、システムへの入力項目の削減・入力サポート等、業務を効率化
    • データ検索の使い勝手の改善や、新たなデータ分析手法による事案の早期発見、FAQの作成補助など、データ活用機能を強化
    • PIO-NETの専用回線、専用端末、独自開発等の自前主義から、インターネットと市販のクラウドサービスを活用するシステムへの移行
  • 期待される主な効果
    • 消費者(相談者)にとっては、トラブル解決のための選択肢が広がり、情報や相談窓口へのアクセスが改善することで、不満の解消につながり、利便性が高まる。
    • 相談現場では、消費者自らの解決の促進による相談対応の業務を軽減する。
    • 政策推進や分析の現場では、分析機能の充実や幅広いデータの利活用の促進により、相談対応の質の向上や消費者への迅速な注意喚起、法執行、制度改正等を通じた、被害の未然防止、再発防止機能が強化される。
    • データ入力の負担軽減のサポート、参考資料や相談員向けFAQの充実、画面上での容易な参照、相談者との資料やりとりのデジタル化等、業務を支援する様々な仕組みの導入、業務プロセスの効率化を図り、相談業務の負担の軽減や、相談員が応対に集中し十分に能力を発揮できる環境を提供する。
    • 場所に捉われない汎用的なシステム環境を導入することで、多様な働き方ができる環境が醸成される。
    • 業務負担が軽減されることで、人が行うべき業務へ集中することができる。これまで電話がつながらなかった相談者から相談を受け付けられ、デジタルが得意でない相談者や、より助けが必要な相談者に対し、手厚い対応ができるようになるほか、消費者教育の推進や見守りの強化にもつながる

~NEW~
金融庁 FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について
▼概要部分(仮訳)
  • 日本は、これまで実施してきた多くの分析に基づいてマネー・ローンダリング(以下、マネロン)とテロ資金供与の主要なリスクをよく理解している。一方、国のリスク評価やその他の評価について、多くの面でさらに改善させることができる余地がある。テロ資金供与リスクの評価と理解は、テロ対策の専門家からはよく示されているが、テロ資金供与対策を担う他の日本の行政当局の職員には及んでいない。AML/CFTのための国の政策と戦略において日本は、暗号資産に関するリスクを含め、リスクの高いいくつかの分野に対処しようとしている。しかしながら、それらの政策と戦略はAML/CFTの活動に的を絞ったものではない。AML/CFTの実施面では、ほとんどの法執行機関の間で概ね良好な協力が行われているが、AML/CFT政策の策定のため、より一層の連携が求められる。
  • 大規模銀行(より高いリスクを有する金融機関として認識されているグローバルなシステム上重要な銀行(GSIB)等)を含む一定数の金融機関及び資金移動業者は、マネロン・テロ資金供与リスクについて適切な理解を有している。その他の金融機関においては、自らのマネロン・テロ資金供与リスクの理解が限定的である。金融機関がマネロン・テロ資金供与リスクについて限定的な理解しか有していない場合、金融機関のリスクベース・アプローチ(以下、RBA)の適用に直接的な影響を及ぼす。このような金融機関は、最近導入・変更されたAML/CFTに係る義務について十分な理解を有しておらず、これらの新しい義務を履行するための明確な期限を設定していない。指定非金融業者及び職業専門家(以下、DNFBPs)は、マネロン・テロ資金供与リスクやAML/CFTに係る義務
  • について低いレベルの理解しか有していない。暗号資産交換業者は、暗号資産取引に関連する犯罪リスクについて一般的な知識を有し、基本的なAML/CFTに係る義務を実施している。疑わしい取引の届出の総件数(年ベース)は増加傾向にあるところ、疑わしい取引の届出の大部分は金融分野からのものであり、暗号資産交換業者の届出の実績も良いが、全体的にみて、疑わしい取引の届出は、基本的な類型や疑わしい取引の参考事例を参照して提出されている傾向がある。また、特定のマネロン・テロ資金供与リスクに直面している一部のDNFBPsを含め、全てのDNFBPsが、疑わしい取引の届出義務の対象になっているわけではない。
  • 金融監督当局間でリスクの理解に差はあるものの、主要なリスクに関する理解は適切である。金融庁は、金融セクターの規制・監督の主たる当局であるが、2018年以降、リスク理解に資する関連施策を実施し、リスク理解を改善させている。RBAの適用は、金融庁も含め依然として初期段階にあるものの、AML/CFTに係る監督の深度は徐々に改善しつつある。金融庁は、特定の金融機関との間で対話を行った場合、その後、緊密なフォローアップの取組を実施していることを示した。金融庁を含む金融監督当局は、金融機関に対する効果的かつ抑止力のある一連の制裁措置を活用していない。日本は、暗号資産交換業者セクターに対し、対象を絞り適時な法令及び監督対応を実施した。不備の認められる暗号資産交換業者に対して迅速かつ強固な対応を行ってきたことは認められるものの、マネロン・テロ資金供与リスクに基づく監督上の措置は改善する必要がある。DNFBPsの監督当局は、マネロン・テロ資金供与リスクの理解が限定的であり、リスクベースによるAML/CFTに係る監督を実施していない。
  • 日本は、全ての金融機関とDNFBPsが実質的支配者情報を保持することを義務付けられ、当局が実質的支配者情報を入手可能とするシステムを実施することに向けて重要なステップを踏み出した。しかしながら、法人について、正確かつ最新の実質的支配者情報はまだ一様に得られていない。国内外の信託、特に信託会社によって設立されていない、あるいは管理されていない信託の透明性に関しては、課題がある。法執行機関は、より複雑な法的構造を有する実質的支配者情報を備えるために必要な手段を有していないようであり、法人や法的取極めに関連するリスクは十分に理解されていない。
  • 金融インテリジェンス情報や関連情報は、マネロン、関連する前提犯罪、及び潜在的なテロ資金供与事案を捜査するために、広く作成され、アクセスされ、定期的に活用されている。これは、日本の法執行機関が自ら作成するインテリジェンス情報と、資金情報機関(FIU:警察庁犯罪収益移転防止対策室(以下、JAFIC))が作成する広範囲で質の高いインテリジェンス情報に基づいている。JAFICは、複雑な金融捜査に付加価値を与えている。法執行機関は、被疑者を特定し、被疑者間のつながりを理解するために金融情報を活用する傾向にあるが、資産の追跡のための活用については更なる強化が求められる。
  • 日本の法執行機関が追求するマネロンの捜査は、いくつかの重要なリスク分野に沿ったものである。日本の法執行機関は、それほど複雑ではないマネロン事案の捜査に豊富な経験を有するとともに、特定の組織犯罪を対象とした複雑な事案や外国の前提犯罪が絡むマネロンにおける複雑な事案の捜査を行った経験も少なからずある。国境を越えた又は国内での薬物の違法取引の大規模なマネロン事案の捜査には特に課題がある。マネロン罪で起訴された事案は全て有罪判決を得ているが、総合的なリスクプロファイルに沿ってマネロン罪を起訴しているのは、ある程度にしか過ぎない。マネロン罪に適用される法定刑は、日本で最も頻繁に犯罪収益を生み出している前提犯罪に適用される法定刑よりも低い水準にある。実際には、マネロン罪で有罪判決を受けた自然人に適用される制裁は、概して言えば、適用できる刑の範囲の下限にとどまっている。執行猶予判決と罰金が頻繁に科されている。
  • 資産の拘束と没収については、詐欺事案に関してはよく示されているが、その他のいくつかの高リスクのマネロン前提犯罪に関しては示されていない。日本は、大量の金地金の押収を除き、犯罪に用いられた道具の没収には概ね成功的なアプローチで行っている。前提犯罪とマネロンに係る起訴猶予の全体的なレベルから見て、犯罪収益や犯罪に用いられた道具、相当価値のある財産の没収に関して課題がある。国境を越えた現金密輸のリスクがあるにもかかわらず、日本は、虚偽又は無申告での現金の国境を越えた移動についての効果的な検知と没収を行っていることを示していない。
  • 日本は適時かつ建設的な国際協力を行っている。刑事共助要請に応えるための国内プロセスはうまく機能している。日本は、他国・地域から資産の送還を受けた経験は少ないものの、同等の価値を持つ財産を国内で没収するための支援を他国に行っている。日本の犯罪人引渡しのための司法上の枠組みは強化されるべきであるが、日本は、他国からの犯罪人引渡し要請を実行できる能力があることを示している。日本は、監督や、マネロン及び前提犯罪の捜査を含むAML/CFTに関する情報交換のために、日常的に他の形態の国際協力を適時に活用している。
  • 日本の法執行機関は、幅広い情報源からの情報や金融インテリジェンス情報を活用して、潜在的なテロ資金供与を効果的に捜査・阻止している。しかしながら、テロ資金提供処罰法の不備と、起訴に対する保守的なアプローチ(7参照)が、日本が潜在的なテロ資金供与を起訴し、そのような行為を抑止力ある形で処罰する能力を制約している。日本は、リスクのある非営利団体(以下、NPO等)についての理解が十分ではなく、そのため、NPO等のテロ資金供与対策のための予防的措置を強化するために、当局がターゲットを絞ったアウトリーチを行うことができない。このため、日本のNPO等は、知らず知らずのうちに、テロ資金供与の活動に巻き込まれる危険性がある。
  • 日本は、金融制裁の対象者の指定・履行手続に遅れがあるものの、最近行われた、対象を指定するための行政手続の見直しにより、その遅れは大幅に短縮された。包括的な輸出入規制や日本による制裁対象の国内指定(独自指定)を含む、北朝鮮による大量破壊兵器の拡散を対象とした複数の他の措置は、対象を特定した金融制裁の実施における遅れをある程度緩和している。これは、日本の文脈から見て特に重要である。もっとも、対象を特定した金融制裁を遅滞なく実施するために金融機関や暗号資産交換業者、DNFBPsに対してスクリーニングを行う義務が課せられているものの、金融機関や暗号資産交換業者、DNFBPsによる対象を特定した金融制裁の実施は不十分である。当局は、大量破壊兵器との闘いに関連するインテリジェンス及び法執行機関の活動において良好な省庁間の協力と連携を示しており、意図せず制裁回避を助長する特定のリスクを有する個別の民間セクターに対し、効果的かつ積極的な働きかけを行っている。
  • 国内及び国境を跨ぐ薬物の違法取引を除き、日本の法執行機関が追求するマネロン捜査は、国のリスク評価やその他のリスク評価で特定された、いくつかの重要なリスク分野に沿ったものである。追求されているマネロン事案の大半は、第三者によるマネロン(サードパーティー・マネー・ローンダリング)はなく、自己によるマネロン(セルフ・ローンダリング)である。法執行機関は、国際協力による支援を受けて、外国の前提犯罪に関する捜査を少なからず行った経験を示した。法執行機関は、それほど複雑ではないマネロン事案の捜査に豊富な経験を持っている。法執行機関は、対象を特定して、特に組織犯罪に対象を特定して強力に捜査の焦点を当てて対応していることを示した。しかしながら、複雑な詐欺、大規模な外国の前提犯罪に関する利益獲得段階を含む資金の移動及び薬物関連犯罪の収益の流れには、十分な焦点が当てられていないように見える。検察庁が、非常に軽微な犯罪であることを理由に、マネロン事案の多数を起訴猶予処分としていることは、この懸念を強める。
  • マネロン罪で起訴された事案は全て有罪判決を得ているが、総合的なリスクプロファイルに沿ってマネロン罪を起訴しているのは、ある程度にしか過ぎない。起訴に至ったマネロン事案の割合(30%)は、日本のマネロンリスクを考慮すると完全には正当化されないと考えられるが、しかしながら、他の経済犯罪の起訴率と同程度の割合である。かなり大多数の事案における執行猶予付きの判決を含め、マネロン罪に対しては低い刑罰が適用されているが、これは日本の状況と司法制度に沿ったものである。
  • 没収が行われていることは、詐欺事件に関しては十分に示されているが、その他の高リスクのマネロンの前提犯罪に関しては示されていない。法執行機関や検察官は、犯罪収益の剥奪に相応の力点を置いているようであり、日本は、資産を回復するための、概ね包括的な有罪判決に基づく没収制度を有している。起訴猶予となった前提犯罪、マネロン罪の全体的なレベルから、犯罪収益や犯罪に用いられた道具、相当価値のある財産の没収にいくつかの課題がある。日本は、差し押さえられた大量の金地金に関するものではないが、犯罪に用いられた道具の没収については、概ね成功的なアプローチを追求している。国境を越えた現金密輸のリスクがあるにもかかわらず、日本は、虚偽又は無申告の国境を跨いだ現金又は持参人払い式の譲渡可能支払手段の移動に対し、没収が効果的に行われていることを示していない
  • 日本では、テロ資金供与リスクが低いとはいえ存在するものの、テロ資金供与事案の起訴事例がない。特定の攻撃とのリンクがなければテロリスト又はテロ組織への資金提供は犯罪ではないというテロ資金提供処罰法の不備は、テロ資金供与罪の起訴が行われる可能性を狭めている。これらの不備や、起訴についての日本の保守的なアプローチ(マネロン捜査と起訴に関する7 を参照)に照らせば、特定のテロ攻撃に直接資金を提供したことが明確な事案の場合を除き、日本が抑止力のある制裁を伴った有罪判決を得ることはできないように思われる。
  • 日本は、関連する国連安保理決議に沿って資産を凍結するために、指定された個人又は団体との支払いを禁止する法令の組み合わせを通じて、国連安保理決議1267/1373号に基づいて、対象を特定した金融制裁を実施している。対象の指定は、必要な手続のために遅れを伴っており、実施までに約1~3週間を要している。金融機関や暗号資産交換業者に制裁対象リストを基にスクリーニングする義務が課せられているとともに、日本で指定の効力が発生する前に対象の指定について金融機関等に対して連絡する仕組みがあることは、指定が発効するまでの遅れを僅かながら抑制している。指定の実施は大幅に遅れていたが、最近行われた手続の変更により、その後に行われる対象者の指定は2~5日に短縮された。
  • 日本では、NPO等セクターに関するテロ資金供与リスクについての理解が十分ではなく、テロ資金供与に悪用されるリスクがある一部のNPO等に対し、リスクに基づいた具体的措置を講じていない。複数の日本のNPO等がリスクの高い地域で重要な活動を行っており、日本の当局によるNPO等セクターへの効果的なアウトリーチやガイダンスを早急に強化する必要がある。会計報告を含む、NPO等の運営における説明責任、健全性、国民の信頼を促進するための包括的な仕組みは、日本におけるテロ資金供与対策の具体的措置の欠如を緩和するのに役立っている。
  • 年間の疑わしい取引の届出の総件数は増加傾向にある。届出の大部分は金融分野によるもので、三分の一は大規模銀行によるものであるが、FIU(JAFIC)のガイダンスに基づく基本的な類型や疑わしい取引の参考事例を参照したものである
  • DNFBPsは、マネロン・テロ資金供与リスクについて、低いレベルの理解しか有していないが、北朝鮮に関連する業務のリスクや、最近の事案から金の密輸に係るリスクについては、一般的に認識している。DNFBPsは、主に顧客の本人確認及び顧客が暴力団の構成員・関係者でない旨の確認といった、基本的なAML/CFTに係る予防的措置の適用に留まっている。また、全てのDNFBPsが、実質的支配者の概念に関する明確な理解があるわけではない。制裁者リストとの照合や高リスク国リストとの照合は、主に顧客が通常の取引形態や属性から逸脱した場合のみ実施されている
  • 金融庁によるAML/CFTに係るリスクベースの監督は、まだ初期段階にあるが、徐々に改善しつつある。金融機関に対する初歩的な(initial)リスク評価は実施されているが、現段階ではRBAは主に固有リスクに主眼を置かれて実施されている。他の金融監督当局によるリスクベースによる監督の導入及びリスクの理解は、金融庁と比して、更に初期段階にある。
  • 日本は、法人が悪用される可能性についてある程度理解しているが、この理解は深度を欠いており、様々な種類の法人に関連する脆弱性についての十分な理解が示されていない。法的取極めの悪用に関連するリスクについての理解はない。法執行機関の間では、捜査に役立つ基本情報や実質的支配者情報の情報源について、ある程度の理解が不足しているようである。
  • 日本は、金融機関、暗号資産交換業者、及び大半のDNFBPsに実質的支配者情報の収集と検証を求め、公証人が新しく設立される会社の実質的支配者情報をチェックするようにする等、実質的支配者情報を確実に利用可能にするためにいくつかの重要な措置を講じている。しかし、これらの措置はまだ完全には実施されておらず、金融機関、暗号資産交換業者、DNFBPsによる監督や予防的措置の適用に不備があるため(上記の「監督」及び「予防的措置」を参照)、全ての事案で適切かつ正確な実質的支配者情報が利用できるわけではない。日本が金融捜査の一環として実質的支配者情報を利用したケースは非常に少なく、ほとんど全ての事案が、前提犯罪の捜査の一環として引き起こされた、単一の法人または法的取極めに関わるものである。これが、法人が悪用されている方法についての日本の限られた理解によるものなのか、利用可能な実質的支配者情報の不足によるものなのか、あるいはトレーニング不足等の他の理由によるものなのかは明らかではない。
  • 会社についての基本情報は、株主に関する詳細な情報を含めて、会社自身から入手可能であり、法人登記からも基本的な情報が得られる。しかし、会社が保有する情報を適時に入手できるかどうかは明らかではない。基本情報の提供を怠った場合の罰則は、一貫して適用されていない。
  • 優先して取り組むべき行動 日本は、以下に取り組むべきである。
    • 金融機関、暗号資産交換業者、DNFBPsがAML/CFTに係る義務を理解し、適時かつ効果的な方法でこれらの義務を導入・実施するようにする。これらにおいては、事業者ごとのリスク評価の導入・実施、リスクベースでの継続的な顧客管理、取引のモニタリング、資産凍結措置の実施、実質的支配者情報の収集と保持を優先する。
    • 前提犯罪の捜査の早い段階でマネロンについて検討することや、より広範な犯罪、特にハイエンドな犯罪収益の入手につながる高リスクの犯罪類型についての第三者によるマネロン(サードパーティー・マネー・ローンダリング)を優先することを含め、より重大な前提犯罪を対象としたマネロン罪の適用を増やす。
    • 警察庁、法務省、検察庁の間で、検察庁の訴追裁量の適用を再検討することを含め、重大なマネロン事案の捜査・訴追の優先度を高めることに合意し、マネロン事案の起訴率を改善するための措置を探求し、マネロン事案の訴追を優先させる政策を実施する。
    • マネロン罪の法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げる。
    • 優先リスク分野について、資産の追跡捜査、保全措置及び没収をより優先的に行う。また、犯罪に用いられた道具及び密輸された現金又は持参人払い式の譲渡可能支払手段をより一貫して没収する。
    • リスクベースでのAML/CFT監督を強化する。これには、特定事業者において実施されている予防的措置の評価のためのオフサイト・モニタリングとオンサイト検査の組み合わせについて、その頻度及び包括性を強化することや、金融機関、DNFBPs、暗号資産交換業者による義務履行における肯定的な効果を確保するために、抑止力のある行政処分と是正措置が適用されることを含む。
    • テロ行為との関連性がない場合に、個々のテロリスト又はテロ組織の資金供与が犯罪化されることを確実にし、勧告5の分析で明らかになった日本のテロ資金供与の犯罪化に関するその他の技術的欠陥を是正することを確実にするために、拘束力があり強制力のある方法を採用するか、テロ資金提供処罰法を改正する。
    • 対象者を指定した金融制裁を遅滞なく実施するために必要な更なる改善がなされ、対象者を指定した金融制裁を実施するための全ての自然人及び法人に係る義務が明確でありFATF基準に沿ったものであることを確保する。
    • テロ資金供与に悪用されるリスクがあるNPO等、特にリスクの高い地域で活動しているNPO等についての完全な理解を確保するとともに、リスクに見合ったアウトリーチ、ガイダンス提供、モニタリング又は監督を行う。
    • リスク評価の方法を引き続き改善し、マネロン・テロ資金供与リスクのより包括的な理解を促進する。これには、クロスボーダー・リスクや、法人・法的取極めに関連するリスクに特に焦点を当てることを含む。
    • 法人及び法的取極めに関する基本情報や実質的支配者情報が、日本の規制・監督・捜査の枠組みの一部として確立されるようにすることを確保する。

~NEW~
金融庁 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第1回) 議事次第
▼資料3 事務局説明資料
  • サステナビリティ(特に、環境、社会)に関する近年の主な動向
    • 2015年9月 国連総会における「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)の採択(環境、ジェンダー平等、働きがい等に関し、17のゴール・169のターゲットを設定)
    • 2015年12月 第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)におけるパリ協定の採択(温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み)
    • 2017年6月 金融安定理事会(FSB)により2015年12月に設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が、企業による自主的な開示を促すための提言(TCFD提言)を公表
    • 2018年12月 国際標準化機構(ISO)が、人的資本の情報開示のためのガイドライン(ISO30414)を公表
    • 2019年5月 「TCFDコンソーシアム」の設置(TCFDに沿った開示を進めていく上での疑問点や望ましい開示内容について、投資家と企業が双方向の議論を実施)
    • 2020年9月 世界経済フォーラム(WEF)は、ESGに関する定量的指標と推奨される開示に関する報告書を公表(SDGsと整合的な4つの柱(ガバナンス原則、地球、人類、繁栄)について、21のコア指標を提示)
    • 2020年9月 国際会計基準(IFRS)の設定主体であるIFRS財団が、サステナビリティに関する国際的な報告基準を策定すべく、新たな基準設定主体を設置する旨の市中協議文書を公表(→2021年4月、新たな基準設定主体(ISSB)の設置のため、メンバー構成等を含めた定款改訂案の市中協議を開始)
    • 2020年10月 総理大臣所信表明演説(「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言)
    • 2020年12月 金融庁において、サステナブルファイナンス有識者会議を設置(→2021年6月に報告書を公表(次頁))
    • 2021年6月 コーポレートガバナンス・コードの改訂 (管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定、 プライム市場上場企業「TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実」)
    • 2021年6月 証券監督者国際機構(IOSCO)が「企業のサステナビリティ開示に関する報告書」を公表
  • サステナブルファイナンス有識者会議報告書の提言(2021年6月18日):持続可能な社会を支えるシステムの構築に向け、各主体に以下の役割を期待
    1. 機関投資家
      • ESG投資の積極的な推進やエンゲージメントに向けたコミットメントを強化することが重要
    2. 個人投資家
      • 投資信託の運用会社・販売会社:顧客保護の観点から、ESG関連投資信託の組成や販売に当たって商品特性を顧客に丁寧に説明するとともに、その後の選定銘柄の状況を継続的に説明すべき
    3. 企業
      • サステナビリティ情報に関する適切な企業開示のあり方について幅広く検討を行うことが適当
      • コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえTCFD等に基づく気候変動開示の質と量の充実
    4. ESG評価・データ機関
      • 企業と投資家をつなぐESG評価・データ提供機関に関し、金融庁において、期待される行動規範等について議論を進めることを期待
    5. ESG関連プラットフォーム
      • グリーンボンド等に関する実務上有益な情報が得られる環境整備や、ESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組みの構築を期待
  • 気候変動開示を巡る国際的な動き:国内外で気候変動等に関する開示の充実に向けた取組みが進められている
    • 2021年3月、米証券取引委員会(SEC)は、気候変動開示に関する現行ルールを見直すための意見募集を実施(コメント期限:6月13日)
      1. 日本
        • 2021年6月、プライム市場の上場企業に対し、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実を求めるコーポレートガバナンス・コードの改訂を実施
      2. 米国
        • 2021年3月、米証券取引委員会(SEC)は、気候変動開示に関する現行ルールを見直すための意見募集を実施(コメント期限:6月13日)
        • 2021年3月、上場企業及び大企業に対し、気候変動開示を義務付ける会社法改正に係る市中協議を実施(コメント期限:5月5日。2022年4月6日以降開始する会計年度から適用開始予定)
      3. 英国
        • 2020年11月、英財務省は、TCFDに沿った開示の義務化に向けた今後5年間のロードマップを公表
        • 2021年1月、ロンドン証券取引所プレミアム市場の上場企業に対し、コンプライ・オア・エクスプレインベースでTCFDに沿った開示を要求(同年6月、対象をスタンダード市場の上場企業にも拡大する市中協議を実施(コメント期限:9月10日。2022年1月1日以降開始する会計年度から適用開始予定))。
      4. EU
        • 2021年4月、IFRS財団は、サステナビリティに関する国際的な報告基準を策定する基準設定主体の設置に向けた市中協議を実施(コメント期限:7月29日)。同年11月のCOP26前に基準設定主体についての最終決定を行う予定(※)開示要件の詳細については、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)が2022年半ばまでに基準を策定予定
      5. IFRS財団
        • 2021年4月、欧州委員会(EC)は、上場企業及び大企業に対し、サステナビリティ情報の開示を要求する企業サステナビリティ報告指令案を公表(2023会計年度から適用開始予定)
      6. G7首脳コミュニケ(2021年6月)抜粋
        • 我々は、一貫した、市場参加者の意思決定に有用な情報を提供し、かつ、TCFDの枠組みに基づく義務的な気候関連財務開示へ、国内の規制枠組みに沿う形で向かうことを支持する
  • IFRS財団におけるサステナビリティ報告基準の策定の動き
    1. G7財務大臣・中央銀行総裁声明(2021年6月)
      • 我々は、頑健なガバナンス及び公的監視の下で、TCFDの枠組及びサステナビリティ基準設定主体の作業を基礎とし、これらの主体と幅広いステークホルダーを緊密に巻き込んでベストプラクティスを形成するとともに収斂を加速させて、このベースラインとなる基準を策定する、国際財務報告基準財団の作業プログラムを歓迎する。我々は、COP26までの国際サステナビリティ基準審議会の設立につながる最終提案に関する更なる協議を慫慂する。
    2. ISSBの戦略的方向性
      • 投資家の判断に重要な情報(企業価値)にフォーカス(investor focus for enterprise value)
      • 当初は気候関連情報に関する報告基準の開発を優先
      • TCFD等の既存の枠組み・作業等をベースとした基準開発
      • ビルディングブロックアプローチを採用
      • ISSBがベースとなるサステナビリティ報告基準を設定し、その上に各国が政策の優先順位に基づいて、より広範な要求事項や特定の開示の要求事項を追加する方法
  • 人的資本の開示に関する諸外国の動向(米国SECの規則改正)
    • 米国SECは、2020年8月、非財務情報に関する規則を改正し、新たに人的資本についての開示を義務付けることを公表し、2020年11月から適用
    • 改正規則においては、事業を理解する上で重要(material)な範囲で、人的資本・人的資源についての開示を求めており、プリンシプル・ベースのアプローチを採用している
    • 証券取引委員会(SEC)は、人的資本の管理に係る開示に含まれる指標や目的が、時間の経過や企業の事業展開地域、基本的な事業戦略等により大きく変化する可能性があることを踏まえ、詳細な規定は盛り込まないとした
    • 改正規則における人的資本の開示に関する内容は以下のとおり
      1. 事業の説明(Description of the business)箇所において、事業を理解する上で重要(material)な範囲で、会社の人的資本(human capital resources)についての開示が求められる
      2. 当該人的資本・人的資源には、人的資本についての説明(従業員の人数を含む)、会社が事業を運営する上で重視する人的資本の取組みや目標(例えば、当該会社の事業や労働力の性質に応じて、人材の開発、誘致、維持に対応するための取組みや目的など)を含む
  • 企業の人材の多様性確保に関する取組(政府の方針)
    1. 第5次男女共同参画基本計画(2020年12月25日閣議決定) 抜粋
      • 企業における女性の活躍に関し、投資判断に有効な企業情報の開示を促進するため、有価証券報告書等において企業の判断で行う情報開示の好事例を収集し、周知する。また、企業のガバナンスにおけるジェンダー平等の確保の重要性に鑑み、有価証券報告書等における開示の在り方を含め、コーポレートガバナンスの改善に向けてジェンダーの視点も踏まえた検討を行う。
      • 企業における男性社員の育児休業等取得促進のための事業主へのインセンティブ付与や、取得状況の情報開示(「見える化」)を推進する。
    2. 少子化社会対策大綱(2020年5月29日閣議決定) 抜粋
      • 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知を行うほか、有価証券報告書などの企業公表文書等への育児休業取得率の記載を促すなど、事業主が男性の育児休業取得を促す取組を行うことを促進する仕組みの導入について検討する。
  • コーポレートガバナンス・コードの再改訂
    • 再改訂版のコーポレートガバナンス・コードでは、指名委員会・報酬委員会の設置により、指名や報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、これらの委員会の適切な関与・助言を得るべきとされている
    • コーポレート・ガバナンス報告書における取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況の記載を促しており、一定程度の開示が進展
  • 東証の市場区分の見直しにより、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編(2022年4月~)。その際、「流通株式」の定義を見直し、政策保有株式等は「流通株式」から除外される
  • 政策保有株式に関する開示について、投資家からは依然として不十分との声がある
  • 会計監査に対する信頼性の確保に向け、KAM(監査上の主要な検討事項)の記載の導入やコーポレートガバナンス・コードの改訂等を実施
    • 従前の監査報告書は、財務諸表が適正と認められるか否かの表明(監査意見)以外の監査人の見解の記載は限定的であった
    • 海外の動向等も踏まえ、企業会計審議会において審議を行い、監査基準を改訂し、監査報告書において、監査人が着目した虚偽表示リスクなどの監査上の主要な検討事項(KAM)を記載することとした(2021年3月期決算から適用開始。2020年3月期決算から早期適用可)
    • 上場会社において、内部監査部門がCEO等のみの指揮命令下となっているケースが大半を占め、経営陣幹部による不正事案等が発生した際に独立した機能が十分に発揮されていないのではないかとの指摘
    • こうした指摘を踏まえ、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂により、上場会社は、内部監査部門が取締役会や監査役会等に対して適切に直接報告を行う仕組み(デュアルレポーティングライン)を構築すること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携の確保が求められることになった
  • 海外では、監査委員会の活動状況について、監査委員長名でその詳細が開示されている:英国のAudit Committee Report では、例えば、以下の事項が開示されている。
    • 監査委員長名で委員会の活動状況を説明
    • 財務諸表に関連して監査委員会が重要と考えた事項及び当該事項への対処の状況
    • 監査人が非監査業務を提供する場合の監査人の独立性確保に関する説明
  • その他の個別課題
    • EDINETについては、2001年の導入以降、企業や情報利用者において情報提供・利用のインフラとして定着しているが、情報通信技術の進展等により情報の流通経路が多様化し、IT活用が更に進んでいる。このため、利便性向上の観点から、タブレット端末等での閲覧に対応すべきである。また、金融商品取引法上の開示書類の縦覧期間の延長について、延長のニーズや便益とコストとのバランスなどを踏まえ、今後、検討していくことが考えられる。
    • 金融庁は、2018年1月、有価証券報告書における大株主やストックオプションの記載について、事業報告等との共通化の観点から内閣府令を改正した。また、同年3月、法務省は、事業報告等における大株主の記載について法務省令を改正し、財務会計基準機構は、記載内容の共通化を行う場合の「ひな型」を公表した。引き続き、有価証券報告書と事業報告等の共通化や一体化に関する取組みの進展が期待されるところ、政府はこうした取組みを行おうとする企業を積極的に支援することとされている
    • 有価証券報告書の記載情報の重要性・信頼度の高さ、コーポレート・ガバナンス報告書の記載情報の充実度・更新頻度や優れた検索機能等の利便性、といったそれぞれの書類の特徴を勘案すべきとの意見があった。両書類の特色を踏まえ、望ましい情報提供のあり方についての意見交換が行われ、それを踏まえた情報開示の工夫が積み重ねられることが期待される。
    • 我が国企業への投資判断や対話において重要と考える契約について、契約の相手方である米国企業からは契約書の内容が開示されているにもかかわらず、我が国企業からは開示のない事例がみられる。
    • 日経225構成銘柄の企業の多くが英語版アニュアルレポートを作成している一方、有価証券報告書の英語版はほとんど作成されておらず、例えば、有価証券報告書記載の政策保有株式に関する情報が海外投資家に十分知られていない。
    • 適時開示に当たっては、直ちにその内容を開示することとされているが、多くの上場企業による公表のタイミングは証券取引所の立会時間終了後(いわゆる「引け後」)の15時以降に集中している。
  • ご議論いただきたい事項
    1. 前回の金融審議会ディスクロージャーWG報告(2018年6月)における検討事項は以下のとおり。
      • 「財務情報」及び「記述情報(非財務情報)」の充実
      • 建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供
      • 提供情報の信頼性・適時性の確保
      • その他の課題(ITを活用した情報提供、英文による情報提供等)
    2. 前回のWG報告以後の企業開示を巡る経済社会環境の変化として、以下のような点が考えられるが、論点に過不足はないか。また、優先順位をどのように考えるか。
      • サステナビリティ(気候変動対応、人的資本への投資、多様性の確保等)
      • コーポレートガバナンス(取締役会等の活動状況、政策保有株式、監査に対する信頼性確保等)
      • 個別課題(ITの活用、重要な契約、英文開示、提供情報の適時性等)
    3. 上記の他、審議を進めるに当たって、どのような点に配意・留意すべきか。

~NEW~
金融庁 企業アンケート調査の結果
  • コロナによる売上への影響について、全体では、7割弱の企業で売上が減少している。地域別では、どの地域においても6割以上の企業で売上が減少した。業種別では、75%が大幅に売上が減少したと回答した観光業をはじめ運輸業、製造業の多くは、売上が減少したと回答した一方、医療・福祉業、建設業、不動産業では減少したとの回答は5~6割にとどまり、業種によって影響にバラツキが見られた。
  • 資金繰り表の作成状況について、全体では6割強の企業が「自社で作成している」、その一方で、2割が「資金繰り表は作成していない」と回答した。規模が小さくなるほど、自社で作成している先の割合が低くなる一方、メインバンクや税理士の支援を受けて作成している先の割合が高くなる。
  • 資金繰りについて、コロナ発生後に「安定していた」と回答した企業が約6割まで減少したが、2021年4月現在では8割弱が「安定している」と回答している。1回目の緊急事態宣言時では全国的な休業要請等により資金繰り状況への影響が大きかった。企業規模別では、コロナ発生後と2021年4月現在を比較すると、全ての規模において「安定している」と回答した割合が増加した。規模が大きい企業ほど「安定している」と回答した企業の割合が高い。地域別では、コロナ発生後と2021年4月現在を比較すると、全ての地域において「安定している」と回答した割合が1~2割以上増加した。業種別では、コロナ発生後と2021年4月現在を比較すると、全ての業種において、「安定している」と回答した企業が増加した。現在では、卸売業や不動産業では8割強の企業が「安定していた」と回答した一方、観光業は6割弱、運輸業は7割強に留まるなど、回復にはバラツキが見られる。
  • 資金繰りが悪化した理由について、全体では9割が「売上の減少」、次いで3割弱が「原材料・商品・製品の仕入費用や経費の増加」、「納税や保険料の支払」、2割弱が「融資の返済」と回答した。資金繰りの悪化の程度について、全体では6割弱が資金調達までは必要としていない状況であった。債務者区分別では、上位先ほど資金調達の必要性が低くなっており、特に正常先上位では約8割が資金調達までは必要としていない状況であった、一方、要注意先以下では約3割が「3ヵ月以内に資金調達が必要」と回答した。資金繰りが改善した理由について、全体では6割弱が「実質無利子・無担保融資」、次いで4割強が「売上の増加(回復)」、4割弱が「各種補助金・助成金の利用」と回答した。債務者区分別では、支援による改善項目では、大半の項目で下位先ほど割合が高くなっている。
  • 全体では、7割弱がコロナ後に金融機関による支援を受けており、そのうちほぼ全ての企業が資金繰り支援を受けている。債務者区分別では、下位先ほど支援を受けた割合が高く、資金繰り支援・経営改善支援サービスの両方を利用した割合も高くなっている。実質無利子無担保融資の据え置き期間後の対応について、全体では6割強が「約定弁済を開始した、又は開始する予定」と回答した。
  • 今後金融機関から受けたい経営改善支援サービスについて、全体では5割が「取引先・販売先の紹介」、次いで4割弱が「各種支援制度の紹介や申請の支援」を求めている。経営改善支援サービスを受けたいと回答した企業のうち、手数料を支払ってもよいと回答した割合を確認すると、「経営人材の紹介」が5割弱と最も多く、次いで「事業転換に関するアドバイス・提案」が4割強と回答した。
  • 全体では6割強が「売上の低迷」、「資金調達や資金繰り」を、5割強が「人材・人手不足」を懸念している。債務者区分別では「売上の低迷」、「資金調達や資金繰り」において、下位先ほど懸念している企業の割合が高くなっている一方、「人材・人手不足」は差が見られなかった。「現時点では今後の事業継続に懸念事項はない」とした企業は1割程度。
  • メインバンクについて、企業の経営上の課題や悩みを「よく聞いてくれる」又は「ある程度聞いてくれる」(以下、「聞いてくれる」と略記)とする企業の割合は全体で約8割。その割合は債務者区分が下位になるほど低くなる。前回調査時と比べると、傾向に大きな違いはないものの、全体で約5%「聞いてくれる」とする企業の割合が上昇している。コロナ発生前からの変化について、「以前より聞いてくれるようになった」との受け止めは、債務者区分が下位の層にも広がりがあり、顧客に対する幅広い実態把握を継続的に努めていること窺われる。
  • メインバンクについて、企業の経営上の課題に関する分析結果や評価を「よく伝えてくれる」又は「ある程度伝えてくれる」(以下、「伝えてくれる」と略記)とする企業の割合は全体で約6割。その割合は債務者区分が下位になるほど低くなる。この点、前回調査結果と、傾向・水準に大きな差は見受けられない。コロナ発生前からの変化について、「以前より伝えてくれるようになった」との受け止めは、債務者区分が下位の層ほど割合が高く、分析結果の共有の取組みにも広がりが出ていることが窺われる。
  • メインバンクについて、金融機関から伝えられた経営上の課題の分析結果や評価に対する納得感を「とても納得感がある」又は「ある程度は納得感がある」(以下、「納得感がある」と略記)とする企業の割合は全体で約6割。その割合は債務者区分が下位になるほど低くなる。前回調査結果と、傾向・水準に大きな差は見受けられない。コロナ発生前からの変化について、「納得感が減った」と回答した企業の割合は全体でごくわずかであり、コロナ発生前と比べ、伝えられた内容に相応の受け止めをしている企業が多いことが窺われる
  • 従来、金融庁としては、金融仲介機能の発揮状況の確認のためには、個々の地域金融機関の事業性評価の取組状況を把握することが重要との観点から、その材料の一つとして、本アンケートの「事業内容に耳を傾け、確りと分析した上でその結果を企業へアウトプットできており、更に、企業からの納得感を得られているか否か」についての企業の方々からの声は有益であると考えている。こうした観点から、引き続き「企業との課題共有先」(事業性評価に向け、企業と課題を共有することで共通理解の醸成が進んでいる先)と「そうではない先(以下、企業との課題共有先以外の先)」の客観的な回答結果を提示する。
  • メインバンクとの取引継続意向について、「是非、取引を継続したい」とする企業は全体で6割強。その割合は、債務者区分が下位になるほど低くなる。企業との課題共有先では、「是非、取引を継続したい」とする企業は8割強を占めており、その割合は企業との課題共有先以外の先(4割強)の約2倍と明確な差が見られた。また、前回調査と同様、「継続して取引するつもりはない・取引解消を考えている」とする企業の数がゼロ社となった。一方、企業との課題共有先以外の先では「是非、取引を継続したい」とする企業は4割強、「どちらかと言えば取引を継続したい」とする企業を含めても、企業との課題共有先との結果とは差がある。更に、少なくとも2割程の企業については、今後の金融機関の取組状況によっては取引金融機関を変更する可能性を示唆している。以上のことから、企業と課題を共有し、共通理解の醸成を進めることが、企業のニーズや課題を捉えた納得感のある融資やサービスの提案を行うことを通じ、より安定的な顧客基盤の確保に繋がる可能性があることが窺える。
  • 全体では、必要な資金をメインバンクから十分に調達できている割合は7割弱、調達できていない割合は1割弱。企業との課題共有先について、いずれの債務者区分でも、高い割合で必要な資金をメインバンクから十分に調達できているとの回答が占め、企業とメインバンク間の課題共有が成長資金の調達面でもポイントと成り得ることが窺える。
  • 成長資金が調達できない理由としては、足下の借入限度額、事業実態・将来性の理解、担保価値・保有の有無に関する点を問
  • 題とする声が多くを占める。成長資金調達の促進の観点では、いずれの点についても、企業とメインバンクとの課題共有こそが、改善に向けた糸口のとなり得るものであることが窺える。
  • 事業承継の検討について、全体では「具体的に検討している」、「自分の代限りとし、事業承継をするつもりはない」との回答が6割強となった。多くの経営者が自身の事業に対する、展望・意向を、既に足元で見極めていることが窺える。そうした見通しや意向に係る課題は、「後継者が見つからない・決まらない」といった人材面に係る問題と並んで、「自社の財務内容や業績が芳しくない」といった事業そのもの問題が挙げられている。事業承継支援の観点においても、事業改善に向けた企業との課題共有が解決策の糸口になり得ることが窺える。
  • 事業承継相手について、6割弱が「子や親族(親族承継)」、2割強が「社内役員や従業員(社内承継)」を検討。親族承継と社内承継の相談先は、承継相手の「子・親族」,「社内役員・従業員」が多数ではあるものの、1~3位の合算では「メインバンク」が3割程度と一定数存在。「M&Aなどを活用し第三者に承継したい(第三者承継)」の相談先としてはメインバンクが最も多い。
  • 事業承継の相談相手に対し、どの層も、「法人・個人の資産分離など、財務情報等の整理」を期待する傾向。「事業承継候補の選出」について、第三者承継だけではなく社内承継でも需要あり。選出後の「事業承継候補との交渉の仲介」については第三者承継の需要が大きい。
  • 全体では、7割弱がコロナ後に金融機関による支援を受けており、そのうちほぼ全ての企業が資金繰り支援を受けている。経営改善支援を受けた企業の割合は12.6%と一定数存在。受けた経営改善支援サービスの内容については、「経営人材の紹介」と回答した企業の割合は6.9%。当該経営改善支援サービスの満足度を確認すると、全体の満足度の平均が3.70ptである一方、「経営人材の紹介」の満足度は3.07ptにとどまり、「資金繰り表の作成支援」や「事業計画策定支援」等の業務と比べると、満足度は高くない。
  • 企業が今後事業を継続するうえでの懸念事項を確認すると、「後継者を含め、経営人材が不足していること」と回答した企業の割合が27.9%、「十分な数の従業員が確保できず人手が不足していること」と回答した企業の割合が34.8%となっており、今後事業を継続していくうえで人材確保を懸念している企業が一定数存在。
  • 現在の状況を踏まえ今後金融機関から受けたい支援を確認すると、経営改善支援を受けたいと回答した企業のうち、「経営人材の紹介」と回答した企業の割合は18.6%と、今後事業を継続するうえでの懸念事項としてあげた人材確保に関して、金融機関から支援を受けることへの期待が高いことが窺える。また、手数料を支払ってもよいと回答した割合を確認すると、「経営人材の紹介」が5割弱と最も多い。
  • 「経営人材が不足している」と回答した企業の割合は66.6%と、多くの企業で経営人材が不足しているという認識がある。「経営人材が不足している」と回答した企業のうち、「その人材要件が明確に固まっている」と回答した企業の割合は10%程度にとどまっており、金融機関が、企業が必要とする経営人材の要件を明確化し、そのニーズを顕在化させることができれば、人材マッチングへと結びつけられる可能性は十分にあると考えられる。企業が新たに経営人材を採用することを検討する場合、経営人材に求める役割を確認すると、「営業・販売力の強化」と回答した企業の割合が60.3%、「経営者の右腕人材・相談役」と回答した企業の割合が51.3%。
  • 企業で経営人材が必要となった場合に、誰に経営人材を紹介してもらいたいかを確認したところ、メインバンクやそのグループ会社と回答した企業の割合が35.0%となっており、「社内の役員・従業員」、「社外の知人」といった関係者を除くと、最も高い割合となっている。
  • 直近約5年間で「経営人材紹介サービス」を活用し「経営人材を採用した」と回答した企業(n=350)のうち、年齢、雇用形態を確認すると、年齢は30代~50代と回答した企業の割合が74.6%、雇用形態では常勤雇用と回答した企業の割合が91.0%。
  • 採用した経営人材の定着状況を確認すると、「勤務継続中」と回答した企業の割合が83.0%と大半ではあるが、「任期途中で
  • 退職」と回答した企業の割合も13.3%となっており、コストをかけて経営人材を採用しても、採用後にミスマッチが生じるなど、任期途中で退職に至るケースもみられる。直近約5年間で「経営人材紹介サービス」を活用し「経営人材を採用した」と回答した企業のうち、経営人材の紹介者の状況を確認すると「民間人材紹介会社」と回答した企業の割合が最も多く42.3%となっている。次いで「子や親族、社内従業員、知人等」、「プロフェッショナル人材戦略拠点」となっている。「メインバンクやそのグループ会社」といった金融機関と回答した企業の割合は、9.8%となっており、金融機関が人材マッチング業務に取り組み始めてからはまだ数年といった中、一定割合を占めている。
  • 採用した経営人材の役割をみると、「営業・販売力の強化」が45.8%と最も多く、経営人材の多くが販路拡大のために採用されていることが分かる。「経営者の右腕人材・相談役」は2番目に多い27.4%であり、経営全体を俯瞰し、経営者とともに企業を支えることのできる人材のニーズが高いことが分かる。採用した経営人材の職歴・経験では、「求めた役割の経験がある」が最多であるほか、「大企業勤務経験がある」が27.4%と3割弱を占めており、経営人材を採用した中小企業の多くが、大企業人材が有する専門的知識やマネジメントスキル等を自社の経営に活かしていることが窺える。
  • 経営人材の定着状況について、経営人材の紹介者別に確認すると、「メインバンクやそのグループ会社」では定着率が95%を超えており、紹介者別では最も高い割合となっている。経営人材の紹介者別の満足度を確認すると、「メインバンクやそのグループ会社」はすべての項目で平均を超えるなど、金融機関の人材マッチング業務への取組みに対し、企業の満足度は相対的に高いことが窺える。

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金融庁 「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」の公表について
▼(別紙1)PDFサステナブルファイナンス有識者会議報告書
  • 現在、世界は気候変動に加え、生態系と生物多様性の危機、海洋プラスチック問題など、いわば地球環境容量の限界とも言える環境課題に直面している。同時に経済的格差の拡大と中間層の没落、貧困と飢餓、新たな感染症の出現、強制労働やジェンダー差別等のビジネスと人権等の幅広い社会課題があり、日本においては少子高齢化や地域社会の疲弊なども重要な課題となっている。これらはいずれも、社会の持続可能性を脅かす危機である。
  • 中でも、2050年カーボンニュートラルの実現は、今議論すべき最も重要な目標の1つである。特に、2021年4月には、2030年度におけるGHG削減目標の引上げが表明されたところであり、よりスピード感を持って対応する必要がある。同時に、こうした動きは、大きな産業構造転換を伴うものであるため、その過程において公正な移行を確保するという視点も重要と考えられる。
  • これらの持続可能性の危機の多くは経済活動と密接に関係する。そして金融資本市場はその経済活動の根幹に位置し、経済活動の方向をも左右する。したがって、従前の考え方からの転換を加速し、金融資本市場における投融資の判断にESG(環境、社会、ガバナンス)の要素を組み込むことを始めとした、サステナブルファイナンスを推進することは、SDGsを達成し持続可能な社会を構築する上で鍵となる。世界各国でサステナブルファイナンスが政策的に推進されているのもそのためである。特にカーボンニュートラル実現のためには巨額の資金を必要とすることから、金融資本市場に期待される役割は大きい。
  • また、持続可能な社会の構築は、それに拠って立つ金融資本市場や金融主体にも便益をもたらすものである。この点、大多数の国内企業株式を幅広く保有する機関投資家(ユニバーサルオーナー)やそれに近い立場にある金融主体が好例である。サステナブルファイナンスは、個々の経済活動にともなう正や負の外部性を金融資本市場が適正に織り込み、環境や社会課題を考慮した投融資等を行うことで、環境や社会の課題が改善するなど、それらの経済活動が全体として拠って立つ基盤を保持し強化する効果を持つ。それは結局、個々の経済活動にも便益をもたらす。したがってユニバーサルオーナー等にとっては、サステナブルファイナンスに係る取組みが自らの保有する投融資ポートフォリオ全体のリスク・リターンの改善につながるという効果があると期待される。
  • さらに、ESG要素を投融資の判断に組み込むことは、ESGに係るリスクの低減や投資機会の発見にもつながる。また、投資家や金融機関等がサステナブルファイナンスを進めることは、その投融資先におけるESG要素への対応を促す効果を持つ。これにより、投融資先のESGリスク耐性が向上し収益見通しの安定性が図られれば投融資リスクの低減が期待される。ESG要素を取り入れた新たなビジネス機会の発掘・創出により投融資先の収益見通しが向上すれば、投融資価値の増大も期待される。また、企業には、これまでの事業ポートフォリオに基づく経営戦略に囚われない発想の転換が必要であり、金融機関にはそうした実体経済の移行を先導・誘導する役割も期待される。
  • 以上のように、サステナブルファイナンスは、持続可能な経済社会システムの実現に向けた広範な課題に対する意思決定や行動への反映を通じて、経済・産業・社会が望ましいあり方に向けて発展していくことを支える金融メカニズム、すなわち、持続可能な経済社会システムを支えるインフラと位置付けるべきものと考えられる。それは、持続可能な経済社会システムの構築という将来を見据えた息の長い取組みでもある。したがって民間セクターが主体的に取り組むとともに、制度的な枠組み作りなどを通じて政策的にも推進していくべきと考えられる。
  • 持続可能な経済社会システムの実現という共通目標に向かう世界の動きの中で、企業経営における課題認識も変わりつつある。世界経済フォーラムが毎年公表するグローバルリスク報告書でも、近年は、発生可能性や影響度の両面で上位にランクされるリスク項目は環境や社会に関するものとなっている。また、それらの課題が自社の事業活動にどのようなリスクと機会をもたらすかを考え、そうしたリスクや機会にいかに対処するかについて戦略を練ることは、中長期的な企業価値の維持・向上にとって不可欠となっている。
  • このためには、外部環境の様々な変化を、将来を見据えて感じ取るとともに、そうした変化の兆しに対して自社の戦略の強靭性(レジリエンス)を不断に検証し必要に応じそれを更新していく知見、姿勢、能力が求められる。具体的には、環境・社会課題の最新動向に関する知見を活用し、積極的に課題解決に取り組む姿勢や、外に対して開かれた実質的で内実のある建設的な対話を行う能力が重要となる。
  • 企業が投資家や金融機関と、このような建設的な対話を進めることは、インベストメント・チェーン全体の機能向上に資すると考えられるが、その際、サステナビリティ情報に関する適切な企業開示が鍵となる。金融機関や投資家が投資判断にESG要素を組み込むにあたっても、十分な情報開示が前提となる。
  • サステナビリティを巡る課題のうち、特に気候変動は喫緊の課題である。気候関連情報については、国内外でTCFD提言に基づく情報開示が進展しており、国際的に確立された開示の枠組みとなっている。
  • 2017年に公表されたTCFD提言においては、企業への気候変動による影響を、移行リスクと物理的リスクの2つのリスク、及び機会に分類した上で、自社が直面するそれらの気候変動影響をもとに、ガバナンス、戦略、リスク管理、及び指標と目標の4つの項目に沿って開示することを推奨している。
  • 日本ではTCFDコンソーシアム等を中心に、TCFD提言へ賛同する企業や金融機関等が一体となって、開示を推進してきた。その結果、既に世界最多の約400社がTCFD開示に取り組んでいる。しかし自社への影響把握や対応策を検討するに当たっては気候変動の長期かつ不確実な影響を考慮する必要があることなどを理由に、依然、TCFD開示を躊躇している企業も多い状況にある。
  • 現在、英国を筆頭に、TCFDによる気候関連開示の義務化を進めるなど、TCFD開示を積極的に推進する動きが見られる。日本においては、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」での議論を経て、2021年6月、コーポレートガバナンス・コードが改訂され、東京証券取引所におけるプライム市場の上場企業に対し、「国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」とされた。
  • これは、コンプライ・オア・エクスプレインの枠組みであるコーポレートガバナンス・コードにおいてTCFD等の位置づけが明確化されることにより、企業の自主性や柔軟性を確保しつつ、気候関連開示の充実を図るものである。こうした動きは、投資家との建設的な対話を深めることに貢献すると考えられるが、今般の改訂を踏まえて、引き続き、企業開示の質と量の充実を促していくべきである。
  • また、投資家からは、比較可能性を確保した形で最も信頼性の高い法定開示書類における開示を進めることが望ましいとの意見があり、企業側からは、すでに法定開示の中で積極的に開示している事例も見られるが、法定開示に求められる情報の正確性や訴訟リスク等を鑑みると、各企業の置かれた状況に応じた自主性や柔軟性を維持しつつ、意思決定に有用でグローバルにも通用する開示を促す枠組みが望ましいとの意見がある。これらの意見も踏まえつつ、COP26に向けたIFRS財団等の国際的な動向を注視しながら、気候変動関連情報の開示の充実に向けた検討を継続的に進めていくことが重要である。
  • その際には、我が国の資本市場の一層の機能発揮に向け、投資家の投資判断に必要な情報を十分かつ適時に分かりやすく提供することや、建設的な対話に資する情報開示を促進していくため、サステナビリティに関する開示を含め、企業情報の開示のあり方について幅広く検討を行うことが適当である。
  • 人気を集めているESG関連投資信託だが、どのような基準に基づき「ESG」や「SDGs」という名称を付すかについては、現在各社の裁量に委ねられており、ESG関連投資信託の銘柄選定基準は、個々の運用会社や商品によって異なっている。例えば、資産運用会社や投資信託ごとに定められた独自のESG評価基準に基づき選定した後に、定量分析等により投資対象企業を決定する場合が多い一方、あくまでもESGを複数の評価基準の1つとして位置付けている場合もある。また、一般的に、ESGの取組みに対する評価方法や具体的なESGスコアの算出基準は、目論見書等の顧客向けの資料において説明されていないことが多い。
  • このため、顧客保護の観点から、ESG関連投資信託の組成や販売に当たって、投資銘柄の選定基準も含めて丁寧に説明を行うとともに、その後の選定銘柄の状況についても可能な限り具体的な指標を用いて、継続的に説明することが必要となる。とりわけ、投資信託に「ESG」や「SDGs」等の名称をつける場合には、顧客がその名称の趣旨を誤認することのないよう、その商品が当該名称の示唆する特性をどのように満たしているかを、可能な限り指標等も用いて明確に説明すべきである。
  • さらに、環境的・社会的インパクトの創出を当該商品の重要な特性とするものについては、上記に加えて、期待されるインパクトとその達成状況も、可能な限り具体的な指標を用いて説明することが必要となる。とりわけ、「インパクト投資」等の名称を付ける場合には、当該インパクトをどのように実現していくかを、可能な限り指標等も用いて明確に説明すべきである。
  • 金融機関においては、自らの事業基盤として重要な産業分野や地理的範囲における脱炭素化の動きにどのように前向きに関与していくかビジョンを示していくことも有益である。さらに、こうしたビジョンに沿って、金融機関が投融資先における気候変動対応を推進する上では、企業の環境的課題を特定し、その解決に資する技術やサービスの価値を発掘できるよう、ノウハウの蓄積やスキルの向上、分析ツールの開発等を主体的に進めることが重要である。特に、脱炭素化に伴う産業構造の転換が投融資先の重大なリスクになりかねないので、早め早めの対応を取ることが望まれる。
  • 一般的に、気候変動リスクは移行リスクと物理的リスクの二つに大きく分類される。具体的に、金融機関における移行リスクとは、脱炭素社会への移行(気候変動緩和のための政策変更、技術革新、投資家・消費者のセンチメント・需要・期待の変化等)によって引き起こされるリスク、物理的リスクとは、気候変動に伴う極端な気象現象の過酷さ・頻度の上昇等急激に起こるリスクと、海面上昇等の長期的な気候パターンの変化によって引き起こされるリスク、とに分類される。
  • 金融機関におけるリスクの区分としては、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、及びオペレーショナルリスク等が挙げられるが、気候変動リスクは、これら従来のリスク区分に新たに加えられるものではなく、各リスクを発生又は増幅させる「リスクドライバー」であるといえる。したがって、気候変動リスクについては、既存のリスク管理の枠組みに、整合的な形で統合されることが適当である。
  • その際に考慮が必要な気候変動リスクの特殊性としては、リスク期間の長さとリスクの不確実性の高さの2点が挙げられる。気候変動による気温の上昇や災害の激甚化といった影響の顕在化は、今後数十年かけて現れるとされている。また、気候変動については、GHG排出が累積するにつれて平均気温が比例的に上昇する傾向が科学的にも確認されているが、温暖化に伴う永久凍土の融解等により気温上昇がそうした傾向以上に急激に進む可能性について、その発生の具体的なタイミングや態様には科学的に不確実な部分も残されている。
  • 銀行や保険会社等の金融機関においては、それぞれの規模・特性に応じて、こうした気候変動リスクの特徴を踏まえた管理態勢の構築が重要である。この点、NGFS等から、以下の通り、監督上の重要項目が示されている。金融庁においても、これらの内容を踏まえ、金融機関との対話を重ねつつ、監督上の目線を盛り込んだガイダンスを策定するなど、金融機関の対応を具体的に促していくことが適当である。

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内閣官房 気候変動対策推進のための有識者会議(第6回)議事次第
▼資料1 報告書取りまとめに向けた論点整理
  1. なぜカーボンニュートラルの実現を目指すのか
    1. 人類共通課題としての「地球上での持続的な活動」の必要性
      • 化石燃料を大量に使用する人類の活動は、「人新世」とも呼ばれるほど、地球に多大な影響を及ぼし、地球に不可逆的な変化をもたらすことが懸念される。その最も重要な指標の一つが大気のCO2濃度とそれによって引き起こされる気候変動。
      • 内外で、平均気温の上昇や熱波の発生、海面水位の上昇、農作物や生態系への影響等を観測。気候変動が進めば、気象災害のみならず、生態系の損失、食料安全保障への影響、貧困の拡大や健康への影響が増加する可能性が予測されている。
      • 望ましい地球環境を維持し、次の世代に引き継ぐことは現役世代の責務。人類の経済活動を、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)の内側に収めることが重要。「臨界点」を超えないよう、今すぐ取組の加速化が必要。
    2. 世界的な気候変動への意識の高まりと企業活動の変化
      • 現在、125カ国・1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現にコミット。EU・英国、米国で2030年に向けて野心的な目標を設定。
      • 企業には、気候変動はビジネスの前提条件になりつつある、積極的に取り組むことで将来の成長機会を逃さないようにしたい、という考え方が浸透。また、気候変動への取組が金融市場からの評価を左右。先駆的なグローバル企業はサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを新たな取引規範としつつある。
      • 若者をはじめ消費者の中でも、地球環境への負荷が低い選択をしたいという声が広がっている。
      • 我が国も、2050年カーボンニュートラルを宣言し、2030年度に温室効果ガスの46%削減を目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明。新しい削減目標の表明に敬意を表するとともに、実現に向けた取組を社会全体で進めていくべきと考える。
    3. カーボンニュートラルが目指すもの
      • カーボンニュートラル実現への取組は、「環境へかけているマイナスをゼロにする」、若しくは気候変動による気象災害などの「リスクを低減する」だけのものではなく、持続可能な新しい経済社会につくり変えるチャンスと捉えるべき。例えば、
        • 各国ともカーボンニュートラル実現に向けた取組を、国内産業の成長や雇用創出、インフラ整備と結びつけており、内容についても、各国が直面する経済的・地理的状況を踏まえた戦略的な内容となっている。
        • 企業においても、気候変動への関心の高まりや対応をチャンスへとつなげる動きが進んでいる(例えば、食物由来ミートなどカーボンフットプリントが低い食材が「健康」というメリットを提供するなど、「気候変動への取組+アルファ」の価値を提供する商品・サービスの提供)。
        • 地域においても、分散電源化を進めることが地方創生へメリットをもたらし、災害時などの地域におけるレジリエンス向上につながる。
      • 経済社会の構造の変革に向けて大きな成長市場が出現する。未来を切り拓く企業の挑戦を通じて新しい投資やイノベーションが促され、産業の競争力と我が国経済の成長力が強化され、ひいては望ましい地球環境が保たれた豊かで持続可能な社会が実現する。
      • この好循環の実現のため、カーボンニュートラルへの取組を、気候変動問題という地球規模・人類史的な課題の解決だけを目指すのではなく、我が国経済社会の発展と、人々の快適で豊かな暮らしも併せて実現するという「三方よし」の精神で進めていく必要。
  2. どのようにカーボンニュートラルの実現に取り組むか
    1. 需要・供給両面からのアプローチ
      • 2050年カーボンニュートラル、2030年度46%削減は非常に高い目標であり、これまでの延長線上ではない取組が必要。これまでは、供給サイドからの取組が中心であったが、今後は需要サイドからのアプローチも積極的に展開して、社会全体が一体となって取り組むことが必要。2050年カーボンニュートラル実現のためには革新的なイノベーションを進めていく必要があるが、2030年度目標達成までは10年も残されていないことから、目標達成に間に合うよう計画的かつスピード感をもって、既存の技術等を総動員して取り組んでいく必要。
      • 個人が脱炭素に価値を置き、脱炭素化したライフスタイルを選好すれば、また投資家が脱炭素を重視した投資を行えば、それに応じて企業行動は大きく変化する。政府の規制やインセンティブ措置をうまく組み合わせて、社会の意識や仕組みを変化させることによって、「成長には脱炭素への取組が必須」という仕掛けを強化していくべき。
      • 金融市場では、投資家が脱炭素への取組を企業に求める動きが強まっている。より踏み込んだ情報開示を企業に求めることなどにより、世界の資金をグリーン成長に資する事業支援に振り向けていくことが重要。
      • 個人の行動変容を促すためには、科学的論理的、定量的な説明を尽くしながら、個々人にとって遠い未来や遠いどこかの問題ではなく、自身にかかわる問題であるとして共感を得るような工夫と大きな社会的気運の形成が必要。さらに、そこから行動変容へとつなげていくための「動機付け」の取組が必要である。地球環境への負荷が低い選択をしたいという消費者の声は広がっており、その気持ちに応えた商品・サービスの提供も、個人の行動変容を促進。
      • 技術の具体化・社会実装という大きな壁を乗り越えるため、水素・アンモニア、CCUS、水素還元製鉄等のイノベーションを推進する必要。乗り越えるべきハードルの高さに鑑みれば、温室効果ガスの排出削減に寄与するかどうかの観点から技術中立的にあらゆる選択肢を検討するべき。自動車の電動化、再生可能エネルギーの最大限の導入などは巨額の設備投資が課題。
      • 脱炭素は巨大な投資機会。この機会を逃さずに大胆に投資していく必要。この分野の技術の優位性を確立し、市場を獲得していくことが重要。このため、企業は脱炭素の観点からの成長戦略の策定と、積極的な情報開示により、ESG金融等の資金を呼び込んでいくことが重要。
    2. 政府の取組
      • 個人の行動変容を巻き起こすとともに、企業がリスクの高い投資に安心して踏み切ることができるよう、政府は2050年カーボンニュートラルと2030年度目標を必ず実現するという強い覚悟を大胆な政策で示す必要。政府は中長期的な政策支援の方向性を明示し、かつ複数年度にわたって予算、税制、リスク性資金を活用していくというコミットを、具体的な政策及び計画で示すべき。併せて、規制改革・標準化、民間の資金誘導を推進するとともに、地域の取組や人々のライフスタイルの変革を後押しするなど、総合的に政策を推進する必要。
      • 持続可能で競争力があり、雇用や成長を生み出す脱炭素社会に移行していくため、政府の政策推進に当たっては、企業がチャレンジできる環境を整え、チャレンジを応援する役割を担うことが重要。こうした観点から、日本銀行の気候変動対応を支援するための資金供給措置を歓迎。さらに、グリーン、トランジション、イノベーションの取組に民間資金を呼び込むよう政策を推進し、それらの取組を後押しするべき。
      • 将来の国際情勢や技術・イノベーション動向を正確に予測することは困難。複数のシナリオを想定し、常に最新の動向を勘案して、必要に応じて見直していくことが必要。併せて、決めたことが予定通りに動いているかのチェック、科学的見地に立った取組の効果把握をしながら進めていくことも重要。
    3. 世界の脱炭素化に向けたリーダーシップの発揮
      • 気候変動を巡る国際社会の動きは、我が国のグローバルな経済外交においても考慮すべき重要な要素。気候変動は一国の政策・技術で解決できず、世界全体で取り組むことが必要。我が国として、世界各国がより積極的に自国の温室効果ガス排出削減に向けて取り組むよう、積極的な外交を展開。
      • 気候変動問題の解決を国際的に図る中では、最終的に、国富をいかに国内に残し、還流していくかという視点が必要。COPの場での議論や国際標準化等のルールメーキングに積極的に参画していくべき。
      • 国内の脱炭素社会実現への取組で得られた成果を活用し、世界、特にアジアの脱炭素化への移行、トランジションを支えることが非常に重要。また、大規模排出国の排出削減という課題についても、各国と連携して取り組んでいくべき

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内閣官房 成長戦略会議(第13回)配付資料
▼資料1:成長戦略の秋に向けた検討課題案
  • 大きな方向性
    1. 成長戦略の考え方
      • 経済成長率を上昇させるためには、労働参加率と労働生産性の向上が必要である。
      • 成長戦略によって労働生産性を向上させ、その成果を働く人に賃金の形で分配し、労働分配率を向上させることで、国民の所得水準を持続的に向上させ、需要の拡大を通じた成長を実現する。
      • 労働生産性の向上というと、コストに注目しがちであるが、労働生産性は売値-コストを基礎とするため、コストが低くても売値が低ければ、生産性は低くなる。製造コストの何倍の価格で販売できているかを示すマークアップ率を見ると、日本は1.3倍に留まり、G7諸国の中で最も低い。日本企業が付加価値の高い新製品や新サービスを生み出し、高い売値を確保することで、労働生産性の向上を図り、労働分配率を高める。
    2. 当面の方向性
      • 現在、世界各国において、コロナ禍の下、新たな資本主義の構築を目指す動きが進んでいる。我が国としても、政府一体となって、医療体制の構築、感染防止、ワクチン接種の3つの柱からなる対策の徹底、雇用や生活に対する支援、日常生活や社会経済活動の回復等の新型コロナ対策に全力を挙げるとともに、我が国経済が力強い成長を実現できるよう、将来に向けた成長戦略を強力に進める必要がある。
      • まず、コロナ禍でも経済を牽引している、デジタルやグリーンといった成長の潜在可能性のある分野については、民間の大胆な投資とイノベーションを促し、国際競争に打ち勝つ産業を創出する必要がある。その際、既存の成熟企業は、経営者が既存事業の深化だけでなく、新規事業の開拓を同時に行う「両利きの経営」を進め、豊富な資金や人材を活用して、付加価値の高い新製品や新サービスの創出を進める必要がある。
      • また、日本企業は社歴の長い企業が多い一方で、新しい企業の数が少ない。このため、未開拓の分野に進出するスタートアップを生み出し、かつ、その規模を拡大する環境を整備する必要がある。
      • 他方、コロナ禍では、利益を伸ばす企業がある一方、飲食、宿泊、文化芸術・エンターテイメントなどの業種や、そこで働く非正規やフリーランスの方々を始めとして、大きな影響が生じている。このため、将来に向けた新たな取組や業態転換といった事業再構築を支援するとともに、労働移動の円滑化を図る必要がある。
      • さらに、日本を含め、世界全体で、製造・販売・事務といった中スキル職が減少し、専門職・技術職等の高スキル職と、対個人サービス等の低スキル職が増加する「労働市場の両極化」が進んでおり、コロナ禍によって格差が更に拡大する懸念がある。このため、自動化やデジタル技術を雇用の代替ではなく、新たな雇用の創出に活用する環境を整備することで、中間層を支える良質な雇用を拡大する必要がある。また、産業構造の転換に伴う失業なき労働移動を支援するため、再教育・能力開発を推進し、兼業・副業など多様で柔軟な働き方を拡大するとともに、コロナ禍の影響を強く受けている非正規の方々に焦点を当てた労働移動円滑策を推進する必要がある
  • デジタル化への集中投資・実装とその環境整備
    • デジタル庁による準公共分野のデジタル化支援(健康・医療・介護、教育、決済等)
    • デジタル広告市場のルール整備
    • デジタル技術を用いた規制の具体化
  • グリーン成長戦略に向けた新たな投資の実現
    • エネルギー基本計画の決定
    • 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の継続的フォローアップ
    • 成長に資するカーボンプライシング
    • カーボンニュートラル市場への内外の民間資金の呼込みのためのガイドライン、情報基盤の整備
    • 地域脱炭素ロードマップに基づき、脱炭素先行地域等における脱炭素実現を目指す。
    • EV用の蓄電池の国内生産設備の形成
    • 電動車(EV・FCV等)の普及促進
    • 水素ステーションの整備
    • 電気自動車向けの充電設備の整備
    • 自動車のサプライチェーンについての事業者の事業再構築の促進
    • 石炭火力自家発電のガス転換等
    • 鉄鋼の高炉・コークス炉、工業炉の低炭素化のための改修・リプレース
    • 再エネ普及のための送電線網の整備
    • 需要家による太陽光発電の電気の長期引き取り契約の推進
    • 既存住宅・建築物の省エネリフォーム
    • ムーンショット型研究開発
  • 少子化の克服・「人」への投資の強化
    • フリーランス保護制度の在り方
    • 事業者とフリーランスの取引の適正化の法制面の早急な整備。併せて、公取委の執行体制の整備。
    • フリーランスへの労災保険の特別加入の対象拡大
    • 労働移動の円滑化
    • コロナ禍の影響を強く受けている非正規の方々を始めとした、失業なく労働移動できるシステムの検討
    • リカレント教育を始めとする能力開発
    • こども政策・子育て支援
  • 経済安全保障の確保と集中投資
    • 半導体工場の我が国への立地支援
    • レアアース等の重要技術・物資のサプライチェーン
    • 次世代データセンターの最適配置の推進
    • 重要技術の育成支援
  • スタートアップを生み出し、かつ、規模を拡大する環境の整備
    • スタートアップのエコシステム形成に向けた包括的支援
    • 新規株式公開(IPO)における価格設定プロセスの見直し
    • SPAC(特別買収目的会社)制度の検討
    • スタートアップと出資者との契約の適正化に向けたガイドライン
  • 事業再構築・事業再生の環境整備
    • 大企業・中堅企業 採算性の回復が望める事業者に対する事業再構築の促進のための私的整理円滑化の法制面の検討
    • 中小企業 中小企業の私的整理等のガイドラインの策定等
    • 事業再構築支援
  • 新たな成長に向けた競争政策の在り方
    • 公正取引委員会の唱導(アドボカシー;提言)の強化
    • 公正取引委員会の体制整備
  • 活力ある地方づくりを支える足腰の強い中小企業の構築
    • コロナ禍で影響を受けている等の中小企業への支援
    • 取引価格へのしわ寄せを防ぐための、下請取引の適正化の強化
    • 最低賃金引き上げへの対応
  • イノベーションへの投資の強化
    • 10兆円規模の大学ファンドへの拡充と早期施行
  • 重要分野における取組
    • PPP/PFIの推進(空港、林業などの検討)
    • 全ゲノム解析の推進
    • ワクチンの国内での開発・生産
    • コンステレーションの実証など宇宙開発利用の加速
    • インターチェンジフィーの在り方を含めたキャッシュレス環境の整備
    • 自動配送ロボットの関連法案の早期提出
    • 医薬品産業の成長戦略
  • 防災・減災、国土強靱化
    • 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の推進

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内閣府 令和3年第12回経済財政諮問会議
▼資料1-1 重症化防止を目標とした感染症への対応強化とマクロ経済政策運営(有識者議員提出資料)
  • 我が国のワクチン接種2回完了率はおおむね5割に達し、足下では諸外国と比べても早いスピードで接種が進んでいる。特に、高齢者については、接種完了率が9割近くとなった結果、感染者数は抑制され、感染者に占める重症者の割合も大幅に低下している。10月から11月までの早い時期に、希望するすべての人に接種を完了し、また、新たな治療薬の普及や重症化を防ぐための医療提供体制の強化に重点的に取り組むことで、重症化を相当程度防ぐことができると期待され、こうした対応を迅速かつ着実に進めることが重要。
  • ワクチンや治療薬の普及状況を踏まえ、感染症対応の主たる目標を重症化防止に移行し、ワクチン接種証明や検査・陰性証明(以下「接種証明等」)の活用等により、感染拡大・重症化の防止と経済社会活動を両立する「新しい国民生活の姿」を実現すべき。年末年始には活発に消費活動ができるようにすることを含め、いつまでに何をするのかをロードマップとして具体的に示し、予見可能性を高めるとともに、万全の財政措置を講ずることを含めて、国民の安心を確保すべき。
  • 同時に、当面の間、感染症が経済を下押しする中で、躊躇ない機動的なマクロ経済政策運営により、影響を受ける事業者や家計を徹底して支援するとともに、自律的な経済成長に向けた重点4分野(グリーン、デジタル、子ども、地方)の投資がしっかりと喚起されるよう、必要な施策を計画的かつ迅速に執行すべき。
    1. 感染拡大・重症化の防止と経済社会活動の両立~「新しい国民生活の姿」実現~
      • 感染拡大・重症化の防止と経済社会活動を両立する「新しい国民生活の姿」の実現に向けて、国民の予見可能性を高め、安心を確保するためにも、以下を含むロードマップを早急にとりまとめるべき。
        1. 直ちに取り組むべき事項
          • 10月から11月までの早い時期に、希望するすべての人への接種完了に向け、職域接種再開や都道府県による大規模会場の展開の支援を進めるほか、接種のインセンティブを高める方策を講じるべき。このためにも、接種証明等の活用のガイドラインを早期に示し、外食、旅行、イベントなどで積極的に活用すべき。
          • また、若者の接種率向上に向けて、どういう対策が有効か、各種アンケート調査等も活用すべき。あわせて、ワクチン確保の総量及び見通し、ワクチン接種の進展による重症者や死亡者の抑制状況について、日々データで明らかにすべき。
          • 国内外の感染状況、ワクチン接種の状況等を踏まえた上で、感染拡大防止措置の下、諸外国の取組との連携を図りながら、まずは経済活動に関係する者を対象として我が国が承認したワクチン接種者に対する帰国・入国後の隔離措置の制限緩和を行い、段階的に対象者の範囲を拡大していくべき。
          • 重症化の防止に向けて、診療所等の医療関係者の協力の下、臨時の医療施設の設置、宿泊療養施設の医療提供体制の強化や一時的な療養施設の拡充に最大限取り組むべき。また、約70万人とも言われる潜在看護師への支援を強化し、その参画を促すべき。
          • 緊急事態宣言地域において、都道府県は市区町村の協力も得つつ、病床の最大限の確保に取り組むべき。厚労省は、搬送困難者や妊婦・小児への緊急対応、自宅療養者の健康観察等に取り組む墨田区などの取組を他の保健所設置自治体等に展開すべく、これらの自治体に施設整備や必要な機材購入を直接支援すべき。
          • 1床当り最大1950万円の緊急支援補助金の活用を促すとともに、コロナ感染症受け入れに割り当てられた病床の活用状況を都道府県毎、医療機関毎に病床数を含めて公表すべき。
          • 重症化を防止する新たな中和抗体薬の投与を全国的に抜本拡大して、医療への負荷を減らすべき。また、中和抗体薬の日々の使用状況を明らかにするとともに、どの医療機関で投与が可能となるかなど、アクセス方法などについてわかりやすく示すべき。
          • 上記の取組を進めつつ、重症化防止を軸として、緊急事態宣言の基準を見直すべき。
        2. 中期的に取り組むべき事項
          • 国内の新薬開発に向けて、PCR検査機関やコロナ陽性者に対する治験の案内を行うなど支援を強化すべき。あわせて、ワクチンの治験環境の整備・拡充や薬事承認プロセスの迅速化など「ワクチン開発・生産体制強化戦略」に掲げる取組を着実に推進するべき。
          • 抗原定性検査の拡充に向けて、抗原簡易キットの薬局等での販売許可などの規制緩和や、医療機関(陽性者)や陰性証明(陰性者)への接続を検討すべき。
          • ワクチンによる予防効果の低下が見込まれる者を対象としたブースター接種の推進に向けて、ワクチン確保を着実に推進するべき。
          • 国民の安心確保に向けて、オンラインで健康相談、診療、服薬が行える仕組みの構築など感染症にレジリエントな社会の実現に向けた取組を工程を定めて推進すべき。
          • 骨太方針2021に記載した感染症有事に備えるための実効性ある医療提供体制の強化のための対策を講じることができる法的措置を検討し、速やかに結論を得るべき。また、緊急事態宣言の効果を高めるための、また、将来起こり得るより一層厳しい感染症に備えるための法的措置について国民的議論を深め、結論を得るべき。
    2. 現下の景気動向を踏まえた当面の対応と来年度にかけてのマクロ経済政策運営
      • 日本経済は今年に入り、従前の想定と比較して感染症の拡大に伴う経済への下押し圧力を受けた結果、GDPは4月以降足元にかけても概ね横ばいで推移しているとみられる。感染拡大防止最優先で取り組む一方、経済の底割れは決して起こさないとの観点で経済運営に万全を期すべき。併せて、感染症の長期化に伴う諸課題(社会とのつながり、貧困、ストレス等)へのきめ細かな対応・支援が重要。
      • 同時に、諸外国では感染症対策と並行して、グリーン化、デジタル化の推進など新たな成長基盤の構築に向けた取組が活発化し、経済回復が加速している。こうした動きに乗り遅れることなく、民需主導の自律的な経済成長の実現を図るべき。
        1. 国民の最後の我慢に寄り添う支援を徹底すべき
          • 低所得の子育て世帯、困窮世帯、雇用保険の対象とならない女性や若者を中心とする非正規雇用者への支援を徹底するべき。
          • 人手不足分野・成長分野への失業なき円滑な労働移動を促進するために、デジタル化、グリーン化に対応したリカレント教育の強化を図るべき。
          • 国民の我慢も長期化している中、もうしばらくの間国民の自粛を促し、その協力に報いるためにも、例えば、消費に直結するデジタル化に対応したマイナポイントの活用などの家計支援も含め、感染拡大が抑制された際に期待される消費の回復・喚起を持続的なものとするよう取り組むべき。
        2. グリーン、デジタル、地方、子ども・子育ての重点4分野における投資と成長を支える基盤づくりに向け、規制改革や資金調達の円滑化を含めて、取組を加速すべき。
          • グリーン:再生可能エネルギーの導入加速のための支援と接続制約の緩和、必要な送配電網の整備、EV普及支援、EV充電設備・水素ステーションの整備、住宅・建築物の省エネ対策
          • デジタル:全国共通に使える接種証明や接種券の電子化、及びそれらの機能を付与することによるマイナンバーカードの利便性向上促進、そしてそれらを始めとする行政のデジタル化の推進、5GのPFIを含む施設整備の促進とビヨンド5Gの技術開発、デジタル人材育成の加速、高校における1人1台端末の導入促進、テレワーク導入促進、オンライン診療の加速
          • 地方活性化:最低賃金を含む賃上げしやすい環境の整備に加え、生産性向上や海外展開に取り組む中小企業への大胆な支援、農業ベンチャーの資金調達柔軟化、農業人口減に対応したスマート農業による生産拡大、観光客が戻るまでの時間を活用した観光業や観光地の再生、ウォーカブルな街づくり、移住支援金の拡充
          • 子ども・子育て:保育による支援に加え、NPOや地域独自の事業などを含めた包括的な支援を行うことができる体制づくり
          • 基盤づくり:STEAM教育の抜本的な強化、求職者支援制度等の第2のセーフティネットの強化、孤独・孤立対策や障害者の社会参画支援
        3. 国際的なサプライチェーンの強靭化
          • 足下で急増している東南アジアなどにおける感染拡大が国際的なサプライチェーンを毀損することのないよう、途上国へのワクチン支援やサプライチェーンの感染防止策や再構築に向けた支援を行うべき。
        4. 経済安全保障の観点から、半導体などの基幹部品の国産化などサプライチェーンの強靭化を図るべき。
          • 経済活動の礎となる国民の安全・安心の確保
          • いつ起こるとも分からない新たな感染症や頻発する甚大な自然災害といった経済・国民生活への脅威に対し、国産治療薬・ワクチンの開発・生産体制の整備や、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策に基づく取組等を強力に推進すべき。
        5. 民需を喚起するワイズスペンディングの徹底に向け、諮問会議の下にある経済・財政一体改革推進委員会において、EBPM等を通じて必要な改革事項の議論を深めるべき

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内閣府 満足度・生活の質を表す指標群(ダッシュボード)
▼概要
  • 2021年3月の生活満足度は低下。特に女性で低下した。「健康状態」「社会とのつながり」「生活の楽しさ・面白さ」の満足度は女性で低下幅が大きい。コロナへの感染不安、友人等との交流の減少、気分の沈み等に困っている割合は女性が高い。
  • 2021年3月の生活満足度は特に東京圏で低下し、地方圏の生活満足度を下回った。「健康状態」「社会とのつながり」「生活の楽しさ・面白さ」の満足度は東京圏で低下幅が大きい。コロナへの感染不安、友人等との交流減少、気分の沈み等に困っている割合が東京圏で高い。
  • 生活満足度が高い人(7以上)の割合が低下。生活満足度が平均よりやや低い人(4~5)の割合が上昇。32.9%の人の生活満足度が低下した一方、生活満足度が上昇した人も概ね同程度(30.9%)存在。特に30歳代以下の若者は生活満足度が大きく低下/上昇した人の割合がともに高い。
  • 1年間の変化の中で「旅行・出張がやりにくい」ことに困っている人が64%と最も多いが、該当者の満足度の低下幅は最も小さい。気分が沈み、気が晴れないことに困っている人が44%。該当者の満足度低下幅も大きい
  • この1年間の変化としては、友人等との交流、頼れる人の数は「減少」した者の割合が高く、SNS利用割合は「増加」した人の割合が高い。友人等との交流、頼れる人の数、SNS利用頻度の増加(減少)は、いずれも満足度と正(負)の関係。
  • この1年間の生活変化として
    • 仕事時間や通勤時間が減少した人は、WLBに関する満足度が上昇する傾向にある。
    • 新たに運動を開始した人は、健康の満足度が上昇する傾向にある。
    • 新たに趣味・生きがいができた人は、生活の楽しさの満足度が上昇する傾向にある。
  • イギリス・アメリカ等では、生活満足度以外にもWell-beingに関する様々な指標の調査を官民で実施。今回調査ではメンタルヘルス関係の調査項目を盛り込んだが、主観的Well-beingに関する把握方法については、関係省庁や民間とも連携しつつ、更なる検討を進めることが重要

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国民生活センター 2020年度にみる60歳以上の消費者トラブル-コロナ禍で、通信販売の相談件数は過去最高に-
  • 2020年度に全国の消費生活センター等に寄せられた相談のうち、契約当事者が60歳以上である相談の件数は、約34万件となりました。
  • 契約当事者が60歳以上である相談の内容をみると、コロナ禍で通信販売の利用機会が増えたためか、通信販売に関する相談が増加し、過去最高の相談件数となりました。
  • 相談が寄せられた商品・サービスの内容を見ると、マスクを含む「保健衛生品その他」等、コロナ禍の影響と思われるものが見られました。また、健康食品や化粧品等の定期購入に関する相談が多数寄せられたほか、「インターネット接続回線」等の情報通信関連のトラブルに関する相談も、2019年度に引き続き多く寄せられました。「架空請求」に関する相談は2019年度に比べ大幅に減少しましたが、2020年度も約1.6万件の相談が寄せられ、引き続き注意が必要です。
  • そこで、契約当事者が60歳以上の相談について分析を行い、消費者への注意喚起を行います。
  • 相談事例
    • 【事例1】当選金を受け取れる手続きとして電子マネーを購入し個人情報を伝えてしまった
    • 【事例2】定期購入のサプリを解約したいが、無料メッセージアプリの手続きがうまくいかない
    • 【事例3】曽祖父が携帯電話の調子が悪いため店舗に行ったら、最新型のスマホを契約していた
    • 【事例4】固定電話をアナログ回線に戻すと料金が安くなる、と家に来た業者に言われ応じた
    • 【事例5】定額制動画配信サービスの解約手続きができない
    • 【事例6】母がトイレの水漏れ修理を業者に依頼したところ高額な便器の交換工事を勧められた
    • 【事例7】補助金と保険金が受給できると勧誘され屋根工事の契約をしたが虚偽だった
    • 【事例8】海外から注文した覚えのないマスクが届いた
    • 【事例9】市場価格連動型の小売電気を契約後、市場価格が高騰し電気代が10倍になった
  • 60歳以上の契約当事者のトラブルの特徴
    • 通信販売に関する相談が増加し、店舗購入や訪問販売、電話勧誘販売の相談は減少
    • 架空請求の相談は大幅に減少し、健康食品等の定期購入に関する相談が増加
    • 情報通信関連の相談が非常に多い
    • 高齢になるにつれ、訪問販売や電話勧誘販売、訪問購入の相談の割合が高くなる
    • 新型コロナウイルス感染症に関連する相談がみられた
  • 消費者へのアドバイス
    • 消費者トラブルはひとごとではありません。自分は大丈夫と思いこまず、日頃からいろいろな消費者トラブルについて知っておきましょう
    • 消費者トラブルを防ぐには、周囲の方による見守りも非常に大切です
    • 不安に思った場合やトラブルになった場合は消費生活センター等に相談してください
      • 消費者ホットライン「188(いやや!)」番 最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。

~NEW~
国民生活センター 保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!-申請サポートを受ける前に、損害保険会社に連絡を 保険金の請求は、加入者ご自身で!!-
  • 「火災保険を使って自己負担なく住宅の修理ができる」や「保険金が出るようサポートする」など、「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスに関する相談が急増しています。
  • 国民生活センターでは、過去複数回にわたって同様のトラブルに関する注意喚起を行いましたが、その後も相談件数は増加傾向が続いております。2020年度の相談件数は2019年度の2倍以上となり、2021年度も前年同期を上回る相談が寄せられています。災害で被害を受けた直後でなくとも、過去の災害で被害のあった地域に勧誘を行うケースもみられ、注意が必要です。
  • 年度別相談件数:2018年度は1,759件、2019年度は2,691件、2020年度は5,447件、2021年7月31日までの件数は1,465件です。
  • 相談事例
    • 【事例1】保険金の請求期限が迫っていると勧誘を受けた
      • 昨日、「台風や地震で建物の被害がないか近所を調査している」と事業者が訪問してきた。その事業者から「3年前の大型台風で損害を受けている部分があるかもしれない。火災保険の請求期限が迫っている。調査費用は無料なので、調査だけでも受けてはどうか。調査して、火災保険が利用できることが分かれば申請手続を代行し、その保険金の一定割合を手数料でもらう。保険金が出なければ負担はない」と言われた。とりあえず調査だけでもと思い業務委託契約書に署名したが、以前保険会社に大型台風の件で問い合わせたところ、保険金の支払いは難しいと言われたことを思い出し、昨日の勧誘自体が不審に思われてきた。契約書裏面にクーリング・オフについての記載があったが、クーリング・オフできるか。(2021年5月受付 60歳代、男性)
    • 【事例2】インターネット広告で見つけた事業者に勧誘を受けた
      • 「火災保険を使って屋根や外壁の工事の見積もりをする」とのインターネット広告を見つけ、事業者へ連絡を取ったところ、後日自宅に来訪することになった。訪問した事業者から「修理代を上回る保険金が受け取れる。手数料は40%だが損はない」と言われ、損がないならと契約することにした。受け取った書面には、修理箇所と損傷の程度を判断して見積もりを作成するサービスで、保険金が下りたらその40%を事業者に支払うと書いてある。よく考えると、保険会社の査定が見積もり通りとは限らないと思い、解約を申し出たが、解約できないと言われた。どうすればいいか。(2021年4月受付 60歳代、男性)
  • 消費者へのアドバイス
    • 請求期限が迫っている等の勧誘やインターネット広告をうのみにせず、安易に契約しないようにしましょう
    • 申請サポート会社に頼らずとも、保険金の請求は加入者自身で行えます
    • うその理由で保険金を請求することは絶対にやめましょう
    • 不安に思った場合やトラブルになった場合は早めに消費生活センター等に相談しましょう

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国民生活センター PIO-NETにみる2020年度の危害・危険情報の概要
  • この概要は、PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)により収集した2020年度の「危害・危険情報」をまとめたものです。
  • 当該情報の詳細については、「消費生活年報2021」にまとめ、2021年10月に国民生活センターホームページ上に掲載する予定です。
    • 「危害・危険情報」とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けたという情報(「危害情報」)と、危害を受けたわけではないが、そのおそれがある情報(「危険情報」)をあわせたもの。データは、2021年5月末日までの登録分。なお、消費生活センター等からの経由相談を除いている。
  • 2020年度の傾向と特徴
    • 全国の消費生活センター等から収集した「危害・危険情報」は14,979件で、対前年度比でみると9.1%減となっています。
    • 「危害情報」は12,887件で、上位3商品・役務等は「健康食品」「化粧品」「医療サービス」でした。「危険情報」は2,092件で、上位3商品・役務等は「四輪自動車」「調理食品」「敷物類」でした。
    • 「危害情報」は、「健康食品」が404件、「化粧品」が228件、それぞれ減少するなど、前年度より1,204件減少しました。
    • 「危険情報」は、「四輪自動車」が117件減少するなど、前年度より288件減少しました。
    • 「危険情報」のうち、3位の「敷物類」が、前年度(153位、2件)から75件増加しました。これは珪藻土(けいそうど)マットの一部の銘柄に、石綿(アスベスト)が含まれていたことが報道されたことを受け、健康への影響についての相談などが増加したためです。
    • 新型コロナウイルス関連の危害情報は450件、危険情報は34件で、いずれも1位はマスクなどを含む「他の保健衛生用品」(危害129件、危険12件)となっています。

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国民生活センター 新型コロナワクチン接種の予約を案内する怪しいメールに注意!-国がコロナワクチン接種に関連して金銭やクレジットカード番号を求めることはありません-
  • 国民生活センターでは、新型コロナワクチンの接種(以下「コロナワクチン接種」)に便乗した消費者トラブルや悪質商法に関する相談を受け付けるため、「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」を開設しています。この度、国の機関を装い、コロナワクチン接種のポータルサイトに似せたサイトに誘導し、個人情報やクレジットカード番号を入力させようとするメールに関する情報が寄せられましたので、消費者に注意を呼びかけます。
  • 相談事例
    • 「自衛隊大規模接種センター」というところからメールが届き不審なサイトに誘導された
      • 昨日、差出人の名称が「自衛隊大規模接種センター」と表示されるコロナワクチン接種の予約サイトを案内するメールが届いた。同じメールが何通も届いたので怪しいメールだと思ったが、記載されているURLをクリックしてみた。するとコロナワクチン接種に関するポータルサイトによく似た画面が表示され、厚生労働省のマークも記載されていた。画面をクリックすると、氏名や住所といった個人情報を入力する画面となり、次のページではクレジットカードの情報を入力する画面となった。(2021年8月受付)
  • 消費者へのアドバイス
    1. アドバイス
      • コロナワクチン接種に関連したメールやSMSなどには注意してください
        • 国の機関等の名称を用いてコロナワクチン接種の予約に関連しているかのように装い、メールやSMSに記載されているURLに誘導しようとしているものが確認されています。突然送られてきた心当たりのないメールなどに記載されているURLは、詐欺的なサイトにつながる可能性があるので、クリックやタップをしないでください。
      • コロナワクチン接種は無料です
        • コロナワクチン接種は無料です。国や自治体がコロナワクチン接種に関連して金銭の支払いや銀行口座・クレジットカード番号の登録を求めることはありません。求められても決して応じないようにしてください。
    2. 少しでも「おかしいな?」、「怪しいな?」と思ったり、不安な場合はご相談ください

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厚生労働省 これからの労働時間制度に関する検討会 第2回資料
▼資料2 裁量労働制の労働環境に与える影響の分析
  • 業務の基本的事項にする裁量の程度は、適用労働者の方が大きい。
  • 具体的な仕事の内容・量に関する裁量の程度は適用労働者のほうが大きい
  • 報告進捗の頻度に関する裁量の程度は、適用労働者の方が「上司に相談せず、自分で決めている」とする比率が高い
  • 業務の遂行方法に関する裁量の程度は、適用労働者の方が「上司に相談せず、自分で決めている」と回答する比率が高い
  • 出退勤時間にする裁量の程度は、適用労働者のほうが大きい
  • 適用労働者のほうが2時間強、週当たり労働時間が長い。一方で約2割年収が高い。適用労働者の方が仕事がある日の睡眠時間は若干短い。適用労働者の方が仕事がない日の睡眠時間は若干長い。
  • 適用事業場はタイムカード・ICカードでの時間管理が非適用と比べて少ない一方で自己申告が多い。ほぼすべての裁量労働制対象業務において適用労働者のほうが1人1日あたりの労働時間が長い
  • 制御変数を制御した場合、適用労働者のほうが1週あたり労働時間が1.3時間前後長い。その一方で、企業による固定効果を勘案した分析は同一企業内で比較可能な労働者のうち適用労働者と非適用労働者を十分確保できず、精確な推定はできなかった。
  • 専門型と企画型別に見ると、適用労働者の方が専門型で約1.2時間、企画型で約2.4時間長くなっていた。課長クラスで区切った役職別に見ると、課長クラス未満は適用労働者の方が約1.5時間長かったが課長クラス以上はほとんど変わらなかった。未就学児の子供の有無別で見ると、どちらも裁量労働制適用により1.2~1.3時間長くなっていた
  • 裁量労働制が適用されている労働者のほうが健康状態がよいと答える確率が高い。
  • 適用労働者のほうが、仕事の後の疲労感が「ほとんどない」と答える確率が高い。
  • 適用労働者と非適用労働者で、時間に追われている感覚について統計的に有意な差はない。
  • 適用労働者のほうが、仕事で家族や自分の用事に集中できないことが全くないと答える確率が低い。
  • 適用労働者と非適用労働者では、仕事の悩みでよく眠れないことに関する統計的に有意な差はない。
  • 適用労働者のほうが、仕事についての不安感がほとんどないと答える確率が高い。
  • 職種によらず裁量労働制を導入している事業所の労働時間は長いが、職種によっては十分なサンプルサイズが得られていないものもある
  • 裁量労働制の非適用から適用に転じた場合には前年からの労働時間の変化がプラスになる傾向にあるが、引き続き裁量労働制の適用を受ける場合には労働時間の変化がマイナスになる傾向にある。
  • 非適用→適用では労働時間が変わらない労働者の割合は減少し、労働時間が増えた労働者の割合は増加している。他方、適用→適用では、労働時間が増えた労働者の割合が減少している
  • 企画型の場合、適用労働者となることによって労働時間が増える確率と減る確率がほぼ同程度に確認できる
  • 課長クラス未満でも課長クラス以上でも、非適用→適用で労働時間が増加する傾向にある一方で、適用→適用では労働時間が増加する確率は減少する傾向にある
  • 子供がいない労働者では非適用→適用で労働時間が増える確率が高いのに対し、子どもがいる労働者では労働時間が減る確率が高くなっている。
  • 非適用→適用で健康状態がよくなったと労働者が回答する確率は増加し、悪くなったと回答した確率は減少した
  • 分析のまとめ:
    1. 労働時間の変化
      • 裁量労働制の適用を受けた年の前後で労働時間を比較すると、平均としてはたしかに増加しており、認識の面でも労働時間が増加したと考えるものが増えることが確認できる
      • その一方で、適用が継続すると労働時間は実際上も認識上も減少する傾向がある
      • 労働者の属性(専門型・企画型、役職、子どもの有無)次第で労働時間が増える場合もあれば減る場合もあり、裁量労働制の適用だけをもって労働時間が増加するとは言いがたい
      • 業務の性質や社内の役職、労働者個人の生活状況等労働者を取り巻く状況に合わせて労働時間が調整される度合いが強まったと考えることができる
    2. 健康状態の変化
      • 裁量労働制の適用をもって直ちに健康状態が悪化するとは言いがたい
      • 健康状態の好転を感じる労働者も中にはいるということが言える
  • 週あたり労働時間は、適用年数によって非適用と比べた場合の増加傾向に違いがある。年収は適用1~3年目で増加し、全体としても非適用労働者より約10%~20%前後高い。
  • 専門型では、適用労働者の年齢が39歳未満あることが労働時間の増加に影響、さらにそのうち労働時間の把握方法がタイムカード・ICカードでない場合ではより労働時間の増加に影響を及ぼす。
  • 企画型では、適用労働者の年齢が44歳未満である場合に、より裁量労働制の適用により労働時間の増加が大きくなり、そのうち40歳未満だとさらに労働時間の増加への影響が見られる

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厚生労働省 第50回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日)
▼資料1 直近の感染状況等の分析と評価
  • 感染状況について
    • 全国の新規感染者数は、減少の動きが見られるが、報告日別では、直近の1週間では10万人あたり約116と過去最大の水準となり、ほぼ全ての地域でこれまでに経験したことのない規模の感染者数の発生が継続している。首都圏を中心に減少の動きがみられるが、中京圏では依然として高い水準で増加傾向となっており、お盆の影響などから感染者数の減少につながっていない地域もある。年齢別に10万人あたりの感染者数をみると、20代が依然最多だが、10代の感染者数が増加し、30代に並んできており地域によっては30代を超えている。
    • これまでの感染者数の急速な増加に伴い、重症者数も急激な増加が継続し、過去最大の規模となり、死亡者数も増加が続いている。公衆衛生体制・医療提供体制が全国各地で非常に厳しくなっており、災害時の状況に近い局面が継続している。
    • 実効再生産数:全国的には、直近(8/15時点)で1.06と1を上回る水準が続いており、首都圏では0.97、関西圏では1.15となっている。
    • 感染状況の分析【地域の動向等】 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。
      1. 首都圏(1都3県)
        • 東京では、新規感染者数は減少に転じているが、依然として約177で非常に高い水準となっている。入院者数は20-50代を中心に増加が継続。60代以上でも増加が継続。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数では、40-60代を中心に高止まりだが、70代以上の増加が継続している。入院者数と重症者数は共に過去最高の水準で、夜間をはじめ新規の入院受け入れ・調整が困難な事例が生じている。さらに、救急医療や集中治療室等の受け入れなど一般医療の制限も生じている。
        • 埼玉、千葉、神奈川でも、新規感染者数は減少に転じ、それぞれ、約136、152、170。いずれも10-50代が中心。病床、重症病床の使用率は高止まりしており、特に、神奈川では、重症病床使用率が8割を超える厳しい状況が続いている。埼玉、神奈川の夜間滞留人口は低い水準を維持しているが、東京、千葉の夜間滞留人口は、お盆明けから増加に転じており、首都圏では再度感染拡大に転じることが危惧される。
      2. 沖縄
        • 新規感染者数は約287と全国で最も高い水準だが、今週先週比が0.91で、減少の動き。20-30代が中心。病床使用率及び重症病床使用率は9割前後を継続し、厳しい状況が続いている。夜間滞留人口は、足下で増加に転じており、新規感染者数の動向に注視が必要。
      3. 関西圏
        • 大阪では、新規感染者数は今週先週比が1.09で増加傾向が続き、約198。20-30代が中心。入院者数は増加が続き、重症者数も増加。
        • 夜間滞留人口はお盆明けから増加に転じており、感染の拡大が継続する可能性もある。京都、兵庫では、新規感染者数の上げ止まりの動きがみられ、それぞれ、約134、120。いずれも、入院者数が急速に増加。京都では、重症病症使用率は高止まりしており、厳しい状況となっている。重点措置から緊急事態措置に移行した滋賀では、新規感染者数の減少の動きが見られ、約88。京都では、夜間滞留人口が増加に転じており、注視が必要。
        • その他、奈良では新規感染者数の増加傾向が続き、約103。和歌山では減少の動きが見られ、約47。
      4. 中京・東海
        • 重点措置から緊急事態措置に移行した愛知では、今週先週比が1.39と新規感染者数の急速な増加傾向が続き、約168。一方、岐阜では上げ止まりの動きが見られ、約111、三重、静岡では減少の動きが見られ、それぞれ、約143、100。いずれも、入院者数、重症者数の増加傾向が継続。夜間滞留人口は岐阜、愛知、静岡では低い水準で推移。三重では減少に転じており、新規感染者数の減少につながるか注視が必要。
      5. 北海道
        • 重点措置から緊急事態措置に移行。新規感染者数は今週先週比が0.78で、減少の動きが見られ、約54(札幌市約79)。重症病床使用率は2割を切る水準が継続。夜間滞留人口の減少は見られるが、依然高い水準であり、今後の感染状況への影響が懸念。
      6. 九州
        • 福岡では、新規感染者数は、今週先週比が0.83で、減少の動きが見られるが、約123と依然100を超える水準。入院者数は高止まりし、厳しい状況となっている。重症病床使用率は2割を切る水準。夜間滞留人口はお盆明けから増加に転じており、今後の感染状況への影響が懸念。熊本、鹿児島では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ約87、62。新たに重点措置とされた佐賀、長崎、宮崎では、減少の動きが見られ、それぞれ、約71、31、62。
        • その他、大分では、減少の動きが見られるが、約90と依然として高い水準となっている。
      7. その他緊急事態措置対象地域
        • 重点措置から緊急事態措置に移行した宮城、岡山、広島では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ、約54、76、79。いずれも病床使用率が5割を超え、厳しい状況となっている。夜間滞留人口は、宮城では減少に転じ、岡山、広島は下げ止まり。新規感染者数の減少が続くか注視が必要。
        • 茨城、栃木、群馬では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ約62、61、83。特に、群馬では、病床使用率が7割を超える水準が継続し、厳しい状況が続いている。夜間滞留人口は茨城、栃木では低い水準を維持しており、新規感染者数の減少が続くか注視が必要。一方、群馬では、増加に転じており、今後の感染状況への影響が懸念。
      8. その他重点措置対象地域
        • 新たに重点措置に追加された高知では、新規感染者数が減少に転じる動きが見られ、約83。福島、石川では、新規感染者数は減少が続き、それぞれ、約30、33。
        • 富山、山梨、香川、愛媛では、新規感染者数が減少し、それぞれ、約48、59、52、28。
        • 上記以外 青森、福井、鳥取、島根、徳島では、それぞれ約52、37、31、31、52と25を超えて、増加傾向が続いており、今後の状況に注視が必要。
  • 変異株に関する分析
    • 1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算、8/16-8/22)が約89%で、ほぼ全ての都道府県で8割を超えている。直近では各地で10割に近い状況と推計されており、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)からほぼ置き換わったと考えられる。
  • ワクチンの効果
    • 国内でのワクチンの有効性(発症予防効果等)について、アルファ株からデルタ株の置き換わり期において、約9割との報告があるが、年代等により幅があり、デルタ株や免疫減衰の影響も鑑み、引き続き分析していくことが必要。
  • 今後の見通しと必要な対策
    • 首都圏を中心に感染者数の減少の動きが見られている。これまでの7月、8月の連休、お盆、夏休みの影響が弱まっていくこと、今後の気候状況やワクチン接種がさらに進むなどの減少要因もあるが、大学などの学校再開や社会活動の活発化、滞留人口の増加の動向などもあり、再度感染者数の増加に繋がることも懸念される。これまでの感染の急拡大を受け、重症者数は過去最大規模となり死亡者数も過去の感染拡大期と比べれば低い水準であるものの増加が続いている。高齢の感染者や高齢者施設のクラスターも増加しており、今後さらに死亡者数が増加することが懸念される。
    • 依然として高水準の感染者数が続いており、引き続き、これまでにない災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要。特に、医療・公衆衛生体制は非常に厳しい状況にあり、中等症や重症患者の入院調整対応が困難となり、手術など一般医療の制限や救急での搬送が困難な事例も生じている。現下の感染拡大を抑えるための対策を継続するとともに、医療体制の強化、保健所業務の重点化や支援の強化などが引き続き必要である。
    • 多くの市民の協力により、感染者数の減少の動きが見られている。今後も、着実な感染の抑制につながるよう、引き続き取組を継続することが必要。
      1. 自分や家族の命を守るために必要な行動を
        • 既にワクチンを接種した方も含め、市民は、自分や家族を守るためにも、外出はなるべく避けて(最低でもこれまでの半分以下の頻度に)、家庭で過ごしていただくことが必要。外出せざるを得ない場合も遠出をさけ、混雑した場所や時間など感染リスクが高い場面を避けること。引き続き、ワクチン接種を積極的に進めるとともに、少しでも体調が悪ければ検査・受診を行うこと。
      2. 基本的な感染対策の徹底を
        • マスクの着用を含め基本的感染防止策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化、従業員がワクチンを受けやすい環境(ワクチン休暇など)の提供、会議の原則オンライン化とテレワーク推進(特に基礎疾患を有する方や妊婦など)、有症状者は出社させず休ませることなどを徹底すること。特にマスクについては、飛沫防止効果の高い不織布マスクなどの活用を推奨する。
      3. 学校の再開において適切な対応を
        • 感染拡大に繋がらないよう、ガイドライン等に基づき、保育施設・教育機関ごとに適切な対応を講じることが必要。
      4. 最大限に効率的な医療資源の活用を
        • 特例承認された中和抗体薬の活用や、重症化に迅速に対応できる体制の早急な整備を進め、地域の医療資源を最大限活用して、必要な医療を確保することが求められる。さらに、全国的に厳しい感染状況が少なくとも当面は続くという前提で、臨時の医療施設などの整備を含め、早急に対策を進める必要がある。

~NEW~
経済産業省 第6次エネルギー基本計画策定に向けて御意見を募集します
▼エネルギー基本計画(案)
  • 東京電力福島第一原子力発電所事故を含む東日本大震災から今年で10年の月日が経過した。10年前の未曾有の大災害は、エネルギー政策を進める上での全ての原点であり、今なお避難生活を強いられている被災者の方々の心の痛みにしっかりと向き合い、最後まで福島復興に取り組んでいくことが政府の責務である。このことはエネルギー政策に携わるもの全てがひとときも忘れてはならない。
  • その上で、第六次のエネルギー基本計画は、気候変動問題への対応と日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服という二つの大きな視点を踏まえて策定する。
    1. 気候変動問題への対応
      • 気候変動問題は人類共通の喫緊の課題として認識されている。個々の気象災害と地球温暖化との関係を明らかにすることは容易ではないが、世界各地でこれまでに無かったような極端な気象現象が生じており、気候変動問題は世界各国が取り組まなければならない課題である。こうした中、先進国をはじめとして各国は、脱炭素化に向け、技術のみならず、国際的なルール形成の局面において、自国の産業構造などを踏まえ自国に有利なルール作りに邁進し、また、事業者も脱炭素技術を利用した競争力強化に取り組み始めている。21世紀以降、デジタル技術における覇権争いに、新たに気候変動、脱炭素化を巡る覇権争いの要素も加わり、日本としても国際的なルール作りのみならず、これまで培ってきた省エネルギー技術や脱炭素技術、カーボンニュートラルに資する新たなイノベーションにより国際的な競争力を高めていくことが求められている。グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった大きな変換のうねりを的確に捉え、将来に向けた積極的な成長戦略を進めることにより民間の大胆な投資とイノベーションを促し、ポストコロナの時代に対応した社会経済構造へのパラダイムシフトにつなげることが不可欠である。
      • 今後の気候変動問題への取組は、産業革命以降形成されてきた産業構造を一変させる可能性を秘めるものであり、変化への対応を誤れば、産業競争力を失いかねない。一方で、日本が国際的なルール作りを先導し、日本が有する脱炭素技術を世界とりわけアジアにおける脱炭素化への課題解決に活かしていけば、新たな成長産業を産み出す契機にもなり得る。
      • こうした世界的な状況も踏まえ、我が国は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言するとともに、2021年4月には、2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として、2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの新たな方針を示した。
      • 気候変動問題への対応は、これを経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会として捉える時代に突入し、各国の産業競争力を左右する重要な要素になっていることを国民一人一人が認識する必要がある。
      • この気候変動問題への対応の大きなカギを握るのは、エネルギーの需給構造の変革であり、今後のエネルギー政策を考えていく上では、こうした世界的な潮流を議論の前提として意識しなければならない。
    2. 日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服
      • 気候変動問題に関する世界的な関心が高まる中、日本のエネルギー需給構造は、大きな変革の途上にある。
      • 高度成長期に構築されたエネルギー設備の高経年化が進む中にあって、自然災害の大規模化といった要因も重なり、高度成長期以降では類を見ない大規模停電を経験し、改めて安定供給の重要さを再認識した。将来にわたる強靱で安定的なエネルギー需給構造の確立に向けては、必要な投資の確保やそれを可能とする事業環境の整備など、官民一体となった取組が引き続き求められる。
      • 一方で、日本の電気料金は震災以降高止まっている。これまでの伝統的な電力多消費産業に加えて、今後、デジタル化の進展により情報通信産業をはじめ、社会全体における新たな電力消費の拡大が見込まれる中、電気料金の抑制は、日本の産業競争力に直結する重要な課題である。
      • 足下でGDPの2割以上を占めるものづくり産業が将来にわたって日本の産業構造の重要な役割を果たしていくためにも、産業界におけるカーボンニュートラルに向けた取組のみならず、それを支える安定的で安価なエネルギー供給は不可欠である。
      • 安全の確保を大前提としつつ、安定的で安価なエネルギー供給の確保と、気候変動問題への対応を進めるという、これまでもエネルギー政策の大前提とされてきたS+3Eの大原則をこれまで以上に追求していくためにも、あらゆる政策を総動員していかなければならない。
    3. 第六次エネルギー基本計画の構造と2050年目標と2030年度目標の関係
      • 第六次のエネルギー基本計画は、こうした大きな二つの視点を踏まえて策定され、2050年カーボンニュートラルに向けた長期展望と、それを踏まえた2030年に向けた政策対応により構成し、今後のエネルギー政策の進むべき道筋を示すこととする。
      • 2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標であり、両者の関係性は新たに以下のように整理される。
      • すなわち、2030年に向けて今後取り組むエネルギー分野における様々な施策や技術開発は、全て2050年カーボンニュートラルに連なるものとなる。2030年度の新たな削減目標に向けては、既存の技術を最大限活用し、この野心的な目標の実現を目指し、その上で、2050年カーボンニュートラルに向けては、2030年度の目標に向けた取組を更に拡大・深化させエネルギーの脱炭素化を進めつつ、現時点では社会実装されていない脱炭素技術について、これを開発・普及させていくこととなる。
      • 一方で、2050年を見据えた様々な技術開発・イノベーションの成否を現時点で正確に予測することは困難であり、2050年に向けては、カーボンニュートラルという野心的な目標を掲げつつ、常に最新の情報に基づき施策、技術開発の重点を決めていくことが求められる。
      • 2050年カーボンニュートラルを目指し、様々な可能性を排除せずに脱炭素化のための施策を展開し、イノベーション実現に向けた技術開発に取り組む中にあっても、常に安全の確保を大前提としつつ、安定的で安価なエネルギー供給を目指すことは当然の前提である。S+3Eを大前提に、2030年度の新たな削減目標や2050年カーボンニュートラルという野心的な目標の実現を目指し、あらゆる可能性を排除せず、使える技術は全て使うとの発想に立つことが今後のエネルギー政策の基本戦略となる。
      • こうした考え方の整理に立って、今回のエネルギー基本計画を定めることとする。
  • S+3Eの大原則を改めて以下のとおり整理する。
    1. あらゆる前提としての安全性の確保
      • あらゆるエネルギー関連設備の安全性は、エネルギー政策の大前提である。特に原子力については、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる。
      • また、保安人材の高齢化などによる将来の人材不足への懸念、自然災害の頻発・激甚化やサイバー攻撃の複雑化・巧妙化なども踏まえ、原子力はもちろんのことながら、その他のエネルギー源についても、安全性確保への不断の取組が求められる。
    2. エネルギーの安定供給の確保と強靭化
      • 我が国は、四方を海に囲まれ、国際連系線がなく、化石資源に恵まれず、地熱は世界第3位のポテンシャルを有する一方で、遠浅の海の面積はイギリスの8分の1、森林を除く平地面積はドイツの半分であり、自然エネルギーを活用する条件も諸外国と異なるなど、エネルギー供給の脆弱性を抱えている。資源調達における交渉力の限界等の課題や、資源国やシーレーンにおける情勢変化の影響などを背景として、供給不安に直面するリスクを常に抱えており、エネルギー安全保障の確保は、我が国の大きな課題であり続けている。
      • また、エネルギーの安定供給を確保していく上では、近年の自然災害の頻発・激甚化によりエネルギー供給が危機に瀕したことや、インフラ設備へのサイバー攻撃のリスクが高まっていることなども踏まえる必要がある。
      • こうした課題を克服し、エネルギーの安定供給(Energy Security)を確保するため、多層的に構成されたエネルギーの供給体制が、平時のみならず、危機時にあっても適切に機能する強靱性(レジリエンス)を高めていくことが重要である。
      • また、新たな脱炭素技術分野の重要性が増しつつあることを踏まえ、これまでのエネルギー自給率に加え、トランジションの観点も踏まえながら、サプライチェーン全体での安定供給体制を確保することの重要性が増している。
    3. 気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保
      • 環境への適合(Environment)については、前述したように、カーボンニュートラルに向けた対応が世界的な潮流となっており、重要性が急激に増している。
      • 気候変動問題への取組に当たっては、我が国の温室効果ガス排出量の8割以上を占めるエネルギー分野の取組が特に重要となる。S+3Eのバランスを取りながら、エネルギーの脱炭素化に取り組むことは国の責務である。
      • エネルギーの脱炭素化に当たっては、発電所の建設のための土木・建設工事のための掘削や建設機械の使用等に加え、EVや蓄電池、太陽光パネルなどの脱炭素化を支える鉱物の採掘・加工や製品の製造過程におけるCO2排出を考慮する必要もあり、エネルギー供給面のみならず、サプライチェーン全体での環境への影響も評価しながら脱炭素化を進めていく観点が重要である。
      • また、気候変動のみならず、周辺環境との調和や地域との共生も重要な課題であり、エネルギー関連設備の導入・建設、運用、廃棄物の処理・処分に際して、これらへの影響も勘案していく必要がある。
    4. エネルギー全体の経済効率性の確保
      • エネルギーは、産業活動の基盤を支えるものであり、特に、その供給安定性とコストは、事業活動に加えて企業立地などの事業戦略にも大きな影響を与えるものである。
      • 経済効率性(Economic Efficiency)の向上による低コストでのエネルギー供給を図りつつ、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を実現していくことは、産業界の事業拠点を国内に留め、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件となる。とりわけ、我が国の電気料金は、国際水準に照らして家庭用・産業用ともに高い状況が続いており、日本の国際競争力を左右しかねない状況にある。
      • 一方で、カーボンニュートラルに対応するに当たっては一定の負担増加が想定される。例えば、現時点の技術水準を前提とすれば、既存の電力供給やガス供給などを、脱炭素化された火力や蓄電池等と組み合わせた再生可能エネルギーや水素から作られる燃料などに切り替えることは、コスト上昇の要因となりうる。
      • 産業競争力の維持・強化や国民生活の向上を図り、成長戦略としてカーボンニュートラルに取り組んでいくためには、脱炭素技術の低コスト化のための研究開発とともに、徹底した省エネ、需給予測の高度化、AI・IoT等の新たな技術による発電所運転の最適化・更なる効率化、系統制約の克服、調整力の確保等による電力システムの柔軟性向上、規制改革等に取り組み、費用対効果の視点から評価しつつ、エネルギーコストを可能な限り低下させることが不可欠である。

~NEW~
経済産業省 デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』を取りまとめました
▼DXレポート2.1(DXレポート2追補版)(概要)
  • 検討の背景と議論のスコープ
    • 経済産業省が2020年12月に公開した「DXレポート2」において、政策の方向性として「レガシー企業文化からの脱却」、「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」の必要性を示した。
    • また、企業がラン・ザ・ビジネスからバリューアップへ軸足を移し、アジャイル型の開発等によって事業環境の変化への即応を追求すると、その結果として、究極的な産業の姿としてユーザー企業とベンダー企業の垣根が無くなっていくとの方向性を示した。また、ユーザー企業とベンダー企業が「相互依存関係」にあることも示した。
    • ユーザー企業とベンダー企業の垣根が無くなっていく姿が産業の将来像であるとしたとき、こうした産業の創出を遠い未来のこととしたうえで、「ユーザー企業とベンダー企業の共創」を議論していては、双方が変革の足枷となっている相互依存関係を脱することはできないと考えられる。
    • 他方、「DXレポート2」の中でも、「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿やその中での企業の姿がどういったものであるかという点までは議論を進められていなかった。
    • 以上の背景を踏まえ、本研究会ではデジタル変革後の産業の姿、その中での企業の姿、そして企業の変革を加速させるための課題や政策の方向性を議論することとした
  • 既存産業の業界構造は、ユーザー企業は委託による「コストの削減」を、ベンダー企業は受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」というWin-Winの関係にも見える。
  • しかし、両者はデジタル時代において必要な能力を獲得できず、デジタル競争を勝ち抜いていくことが困難な「低位安定」の関係に固定されてしまっている。
  • 既存産業の企業がデジタル産業の企業へと変革していくうえで、ユーザー企業には2つのジレンマが存在し、ベンダー企業には3つのジレンマが存在。
  • 変革を阻むジレンマを打破するためには、企業経営者のビジョンとコミットメントが必要不可欠。
  • 社会全体でデジタル化が進む中で、企業はこの不可逆的な変化に適応し、データとデジタル技術を駆使して新たな価値を産み出すことが求められている。
  • デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらすのがデジタル産業である。
  • デジタル産業を構成する企業は、価値創出にデジタルケイパビリティを活用し、それらを介して他社・顧客とつながり、エコシステムを形成している。
  • デジタル産業は、ソフトウェアやインターネットにより、グローバルにスケール可能で労働量によらない特性にあり、資本の大小や中央・地方の別なく、価値創出に参画できる。
  • 市場との対話の中で迅速に変化する必要性や、1社で対応できない多様な価値を結びつける必要性から、固定的ではないネットワーク型の構造となる。
  • デジタル産業を構成する企業は、その特色を踏まえて4つに類型化できる。
    1. 企業の変革を共に推進するパートナー
      • 新たなビジネス・モデルを顧客とともに形成
      • DXの実践により得られた企業変革に必要な知見や技術の共有
      • レガシー刷新を含めたDXに向けた変革の支援
    2. DXに必要な技術を提供するパートナー
      • トップノッチ技術者(最先端のIT技術など、特定ドメインに深い経験・ノウハウ・技術を有する)の供給
      • デジタルの方向性、DXの専門家として、技術や外部リソースの組合せの提案
    3. 共通プラットフォームの提供主体
      • 中小企業を含めた業界ごとの協調領域を担う共通プラットフォームのサービス化
      • 高度なIT技術(システムの構築技術・構築プロセス)や人材を核にしたサービス化・エコシステム形成
    4. 新ビジネス・サービスの提供主体
      • ITの強みを核としつつ、新ビジネス・サービスの提供を通して社会への新たな価値提供を行う主体
  • デジタル産業の企業類型へと変革を推進するために、企業類型ごとの目指すべき姿を明らかにし、これらの本質的かつ重要な違いを、既存の産業との比較を下敷きとして、わかりやすい宣言や原則の形でまとめる。また、企業類型ごとに企業が自社の成熟度を評価することができるデジタル産業指標(仮)を策定する。
  • 現在DX事例として公表されているものの多くは、取組みのレベルが、デジタル産業へといたる変革の道筋のどの段階にあるのか、全体感ある解説がなされていない。企業がDXの具体的な戦略を定め、着実に歩みを進めていくにあたり、DX全体の地図やゴールに向けた変革の道筋としてどのようなパターンがあるのかを示す必要がある。目指すべきデジタル産業の姿に向け、そこに至る企業の変革の道筋を、抽象化したパターンとして明らかにする。
  • 経済産業省では、半導体・デジタル産業戦略を2021年6月にとりまとめた。同戦略の推進は本レポートにおけるデジタル社会の実現を大いに加速するものである。同戦略においては、社会のデジタル化を支える、クラウド事業者やプラットフォーム事業者等をデジタル産業と捉えているが、本レポートにおいては、価値創出の全体にデジタルケイパビリティを活用し、それらを介して他社・顧客とつながることで、エコシステムを形成している全ての企業を含めた広がりを「デジタル産業」としている。

~NEW~
経済産業省 9月・10月は「DX推進指標」の集中実施期間です
  • 毎年9月・10月は、経済産業省が取りまとめた「『デジタル経営改革のための評価指標(DX推進指標)』のとりまとめ」に基づく、「DX推進指標」の集中実施期間です。経営とITに関する35項目からなる簡易な自己診断を実施し、自社のDX推進状況をフォローアップしましょう。診断結果をご提出いただいた企業には、他の提出企業のDX取組状況と自社の取組状況を比較できる「ベンチマーク」を提供します。
    1. 概要
      • 経済産業省は、我が国企業におけるデジタル経営改革を推進するため、2019年7月に「DX推進指標とそのガイダンス」を取りまとめました。毎年9月・10月は、本指標の診断の集中実施期間として、DX推進状況の把握と次期経営計画への反映を促しているところです。
      • 本指標は、DXの推進状況について各企業が簡易な自己診断を行うことを可能とするものであり、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者の間で現状や課題に対する認識を共有し、次のアクションにつなげる気付きの機会を提供することを目的としています。
    2. DX推進指標の内容
      • 具体的には、以下の2つから構成されます。
        1. DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標(「DX推進の枠組み」(定性指標)、「DX推進の取組状況」(定量指標))
        2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標(「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)、「ITシステム構築の取組状況」(定量指標))
      • 定性指標は35項目からなり、現在の日本企業が直面している課題やそれを解決するために押さえるべき事項を中心に項目を選定しています。
    3. ベンチマークと分析レポートのご案内
      • DX推進指標の自己診断に取り組み、結果を独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)にご提出いただいた企業には、後日、自己診断結果と全体データとの比較を可能にするベンチマークを提供します。この分析結果を活用することにより、自社と全体との差を把握し、次のアクションを検討することなどができます。
      • また、IPAでは診断結果を取りまとめ、全体の経年変化や、企業規模別の特徴、DX先行企業の特徴等を明らかにする分析レポートを毎年作成、公表しています。自己診断結果の入力への御理解と御協力をお願いいたします。
    4. 今後のスケジュール
      • 10月31日までに以下IPAのHPから診断結果をご提出いただいた企業には、令和3年版のベンチマークの速報版を11月中頃に提供します。IPAではDX推進指標の分析レポートも毎年公表しており、令和3年版の分析レポートは令和4年3月頃公表予定です。
▼DX推進指標 自己診断結果入力サイト(独立行政法人 情報処理推進機構)

~NEW~
経済産業省 「健康経営銘柄2022」及び「健康経営優良法人2022」の申請受付を開始しました
  • 経済産業省は、健康長寿社会の実現に向けた取組の1つとして、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取組を戦略的に実践する「健康経営」を推進しています。
  • 本日、「健康経営銘柄2022」及び「健康経営優良法人2022」の申請受付を開始しました。健康経営がより評価される環境を整備し、健康経営の裾野の拡大を図るため、令和3年度から情報開示の促進など新たな項目を健康経営度調査に追加します。
    1. 健康経営への関心の高まり
      • 2014年度から実施している「健康経営度調査」に回答する法人は年々増加しており(昨年度は2,523法人)、特に日経平均株価を構成する225銘柄のうち8割を超える企業が回答するなど、各業界のリーディングカンパニーの多くが経営戦略の1つとして健康経営を推進しています。「健康」はESG(環境・社会・ガバナンス)情報の“S”に位置づけられており、企業経営における「健康」の位置づけに関心が高まっています。
    2. 健康経営度調査の実施について
      • 健康経営度調査とは、法人の健康経営の取組状況と経年での変化を分析するとともに、「健康経営銘柄」の選定及び「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定のための基礎情報を得るために実施している調査です。
      • 令和3年度調査のポイント
        • 令和3年度は、健康経営がより評価される環境を整備し、健康経営の裾野の拡大を図るため、新たに以下の点を健康経営度調査に反映しました。
          1. 情報開示の促進(健康経営度調査フィードバックシート等の開示をホワイト500の必須要件とする等)
          2. 業務パフォーマンスの評価・分析(従業員の業務パフォーマンスの測定の有無とその手法)
          3. スコープの拡大(自社だけでなく、取引先の健康経営の取組を支援しているか、社会全体の健康への寄与等)
    3. 健康経営銘柄の選定について
      • 健康経営の取組の促進を図るため、東京証券取引所の上場会社の中から、特に優れた健康経営を実践している企業を「健康経営銘柄」に選定し、投資家にとって魅力ある企業として紹介します。
      • 令和3年度健康経営度調査の回答に基づき評価を行います。
    4. 健康経営優良法人認定制度について
      • 健康経営を実践している大企業や中小企業等が社会的に評価される環境を整備することを目的に、経済産業省が制度設計を行い、日本健康会議※が認定する制度です。本制度では、大規模の企業等を対象とした「大規模法人部門」と、中小規模の企業等を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門により、それぞれ「健康経営優良法人」を認定しています。※経済団体、医療団体、保険者などの民間組織や自治体が連携し、職場、地域で具体的な対応策を実現していくことを目的に組織された活動体。
      • 健康経営優良法人2022(大規模法人部門)の認定について
        • 令和3年度健康経営度調査の回答に基づき、要件の達成状況を判定します。大規模法人部門の上位法人は、「ホワイト500」として認定されます。
      • 健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)の認定について
        • 健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定申請書の内容に基づき、要件の達成状況を判定します。中小規模法人部門の上位法人は、「ブライト500」として認定されます。
    5. 今後のスケジュール
      • 令和3年度健康経営度調査回答期間
        • 令和3年8月30日(月曜日)~令和3年10月25日(月曜日)
      • 健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定申請期間
        • 令和3年8月30日(月曜日)~令和3年11月1日(月曜日)
      • 選定・認定時期
        • 令和4年3月頃(予定)

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総務省 労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)7月分結果
▼労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)7月分結果の概要
  • 就業者数は6711万人。前年同月に比べ56万人の増加。4か月連続の増加。男性は3712万人。前年同月と同数。女性は2999万人。57万人の増加
  • 雇用者数は5992万人。前年同月に比べ50万人の増加。4か月連続の増加。男性は3266万人。前年同月と同数。女性は2726万人。50万人の増加
  • 正規の職員・従業員数は3594万人。前年同月に比べ16万人の増加。14か月連続の増加。
  • 非正規の職員・従業員数は2062万人。前年同月に比べ19万人の増加。4か月連続の増加
  • 役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は36.5%。前年同月に比べ0.2ポイントの上昇
  • 主な産業別就業者を前年同月と比べると,「卸売業,小売業」,「学術研究,専門・技術サービス業」,「金融業,保険業」などが増加
  • 就業率(就業者/15歳以上人口×100)は60.8%。前年同月に比べ0.8ポイントの上昇
  • 15~64歳の就業率は78.1%。前年同月に比べ1.2ポイントの上昇。男性は84.3%。0.6ポイントの上昇。女性は71.7%。1.9ポイントの上昇。20~69歳の就業率は79.5%。前年同月に比べ1.2ポイントの上昇
  • 完全失業者数は191万人。前年同月に比べ6万人の減少。18か月ぶりの減少。男性は119万人。前年同月に比べ3万人の増加。女性は73万人。前年同月に比べ8万人の減少
  • 求職理由別に前年同月と比べると,「勤め先や事業の都合による離職」が1万人の増加。「自発的な離職(自己都合)」が3万人の減少。「新たに求職」が1万人の減少
  • 完全失業率(完全失業者/労働力人口×100)(季節調整値)は2.8%。前月に比べ0.1ポイントの低下
  • 非労働力人口は4136万人。前年同月に比べ88万人の減少。4か月連続の減少

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総務省 多文化共生事例集(令和3年度版)の公表
▼(別添1)多文化共生事例集(令和3年度版)概要
  1. コミュニケーション支援(17事例)
    • 行政・生活情報の多言語化、相談体制の整備(9事例)
      • 一元的相談窓口の開設・運営
      • 多言語翻訳機器を活用した多言語相談対応 など
    • 日本語教育の推進(6事例)
      • 日本語教室での日本人住民と外国人住民の交流の場の創出
      • ICTを活用した外国人散在地域における日本語教室の運営 など
    • 生活オリエンテーションの実施(2事例)
      • 生活設計支援冊子の作成・地域に出向いた生活オリエンテーションの実施
  2. 生活支援(53事例)
    1. 教育機会の確保(12事例)
      • 就学前教室・関係機関と連携した就学促進など
    2. 適正な労働環境の確保(9事例)
      • 技能実習生の受入環境の整備・就業・定着支援など
    3. 災害時の支援体制の整備(11事例)
      • 外国人防災リーダーの養成・地方公共団体間の広域連携協定の締結など
    4. 医療・保健サービスの提供(5事例)
      • 医療現場への「やさしい日本語」の導入と普及
      • メンタルヘルス相談、医療通訳派遣事業など
    5. 子ども・子育て及び福祉サービスの提供(7事例)
      • 外国人保護者とのコミュニケーション支援ツールの作成
      • 外国人高齢者支援など
    6. 住居確保のための支援(3事例)
      • 多言語対応が可能な不動産業者の紹介など
    7. 感染症流行時における対応(6事例)
      • 動画を活用した情報発信・SNSを活用した関係機関・団体との情報共有など
  3. 意識啓発と社会参画支援(12事例)
    1. 多文化共生の意識啓発・醸成(7事例)
      • 外国人住民向けのガイドブックの作成と日本人向けのワークショップの開催
      • 官民一体で企画・運営を行う外国人住民と日本人住民の交流イベントの開催など
    2. 外国人住民の社会参画支援(5事例)
      • 多文化共生キーパーソンを活用した地域づくり
      • 外国人コミュニティと地域や行政が連携して課題解決を目指す「外国人コミュニティ事業」の実施など
  4. 地域活性化の推進やグローバル化への対応(9事例)
    1. 外国人住民との連携・協働による地域活性化の推進・グローバル化への対応(4事例)
      • 観光分野における外国人住民の取組
      • 外国人材を活用したインバウンド誘致事業など
    2. 留学生の地域における就職促進(5事例)
      • 大学とハローワークとの留学生就職支援協定の締結
      • 市内企業への留学生の就職支援など
  5. 推進体制の整備等(6事例)
    1. 多文化共生施策の推進体制の整備(3事例)
      • 多文化共生に係る連携体制の整備
      • 広域連携による外国人相談対応など
    2. 多文化共生の推進に係る指針・計画の策定(3事例)
      • 幅広い主体と連携した指針・計画の策定
      • 指針・計画の策定後の評価・進捗管理など

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国土交通省 株式会社ソラシドエアに対する厳重注意について
  • 株式会社ソラシドエアにおいて、以下の通り客室乗務員に不適切な行為が認められましたので、国土交通省航空局は本日付で同社に対して別添の通り厳重注意を行い、必要な再発防止策を検討の上、令和3年9月17日までに報告するよう指示しましたのでお知らせします。
  • 下記の事案は、何れも航空法第104条第1項に基づき認可した運航規程に違反するものです。国土交通省航空局は、同社において再発防止が確実に図られ安全運航のための体制が維持されるよう、引き続き厳格に指導監督を行ってまいります。
  • 【事案1】
    • 令和2年10月26日、SNJ70便(那覇発-名古屋行)において、先任客室乗務員が乗務前のアルコール検査時に、自身の代わりに別の客室乗務員に検査を実施させる不正を行った。
  • 【事案2】
    • 令和3年3月25日、SNJ84便(那覇発-鹿児島行)において、先任客室乗務員(事案1と同一者)は、ある客室乗務員(事案1と同一者)の乗務前のアルコール検査時に、別の客室乗務員に検査を実施させる不正を行わせた。当該便に乗務した客室乗務員3名は、飛行勤務開始7時間前まで飲酒していた。

~NEW~
国土交通省 カーボンニュートラルポート(CNP)形成に向けた施策の方向性をまとめました~「CNP の形成に向けた検討会」中間とりまとめ等を公表~
▼CNPの形成に向けた施策の方向性 中間とりまとめ
  • 概要
    • 我が国の輸出入貨物の99.6%を取扱う国際物流の結節点であり、CO2排出量の約6割を占める発電所、製鉄、化学工業等の多くが立地する産業拠点である港湾は、水素・燃料アンモニア等の輸入を含め、CO2排出量削減の取組を進める上で、重要な役割を果たすことが求められています。
    • 国土交通省では、本年6月より、「カーボンニュートラルポート(CNP)の形成に向けた検討会」を開催し、CNPの形成に向けた取組の加速化を図る各種方策について、検討を行ってまいりました。
    • この度、本検討会において、CNPの形成に向けた施策の方向性について中間とりまとめを行うとともに、国交省において、港湾管理者によるCNPの形成に向けた計画の策定を促進するため、CNP形成計画策定マニュアル(ドラフト版)を作成しました。
    • 今後、中間とりまとめに示された施策の方向性に沿った取組を進めるとともに、本検討会において更に議論を深め、本年末を目途に最終とりまとめ及びマニュアル(初版)の公表を予定しています。
  • 中間とりまとめのポイント
    • CNPの目指す姿は、「水素等サプライチェーンの拠点としての受入環境整備」と「港湾地域の面的・効率的な脱炭素化(港湾オペレーションの脱炭素化、臨海部立地産業との連携を含めた港湾地域における面的な脱炭素化)」。
    • この目指す姿の実現に向けて、「CNP形成の取組範囲」「港湾地域における官民一体となった取組」「水素等の大量・安全・安価な輸入・貯蔵等」等の10項目について、取組の方向性をとりまとめ。
  • CNPの目指す姿
    • CNPとは、国際物流の結節点・産業拠点となる港湾において、水素・燃料アンモニア等の次世代エネルギーの大量・安定・安価な輸入や貯蔵等を可能とする受入環境の整備や、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化、集積する臨海部産業との連携等を通じて温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指すものをいう。具体的には、主として次の2点を目指すこととする。
      1. 水素等サプライチェーンの拠点としての受入環境の整備
        • 今後、海外から大量の水素や燃料アンモニア等の輸入が想定されることから、港湾における受入環境を整備する必要がある。そのサプライチェーンの構築にあたっては、事業者の意向やエネルギーキャリアの特性を踏まえつつ、国全体での最適化を図ることが望ましい。その際、例えば、メタネーションによる合成メタンのサプライチェーンを構築する際には、既存のLNGインフラを活用し得るように、岸壁や貯蔵タンクなどについて、公共・民間いずれが所有する施設かを問わず、可能な限り既存ストックを有効活用することを検討する。
        • 一般的に海上輸送コストを削減するためには、大型船を活用した大量一括輸送が有利である。一方で、単位発熱量あたりの容積・重量は、水素や燃料アンモニアは化石燃料と比べて大きく、現在と同規模の熱エネルギー需要を想定した場合、水素や燃料アンモニア等の輸送量や貯蔵体積・貯蔵に必要な土地の面積は、化石燃料より大きくなる可能性がある。このため、個々の事業者が大型船で輸送した場合、それぞれの需要地での係留施設、貯蔵タンク等の設備投資が大きくなる等非効率な輸送となる可能性がある。
        • 効率的な大量一括輸送を実現する方策として、輸入拠点港湾において大型船の受入環境を整備し、内航船で国内他港へ二次輸送する海上輸送ネットワークの構築等が考えられる。また、こうした輸入拠点港湾については、比較的小規模な需要家も網羅する広範な供給網を形成する観点から、希望する事業者が同一の条件で利用可能な「オープンアクセス」タイプとして整備・運営されることも検討する。輸送されるエネルギーキャリアの特性やリスクマネジメントの観点を踏まえ、港湾間の連携も考慮しつつ、全国的な最適配置について検討していく。
        • これらの輸入拠点港湾の形成を含む海上輸送ネットワークの構築については、国全体での最適化を図る観点から、事業者や港湾管理者等の意向を踏まえつつ、国が戦略を作り主導していくことが望ましい。
        • 水素や燃料アンモニア等の利用は段階的に進むことが想定されるため、導入規模や技術開発に応じた適切なシナリオを描く必要がある。例えば水素についてはLNG火力発電所、燃料アンモニアについては石炭火力発電といった大口需要家と連携するなど各港の実情に合わせた段階的な取組を検討していく。
        • 港湾経由で輸移入された水素や燃料アンモニア等は、貯蔵タンクに入れられた後、需要者に配送されることとなるが、需要に応じてパイプラインや輸送トラック等適切な方法を選択することとなる。特にパイプラインを敷設する場合には、域内の将来的な需要も想定しつつ、適切な規模・範囲を検討する。また、港湾に貯蔵される水素・燃料アンモニア、LNG等は舶用燃料としての利用も見込まれることから、船舶の技術の開発状況に応じて、船舶への燃料供給体制の整備についても検討する。
        • 水素や燃料アンモニア等の取扱いにあたっては、安全性の確保に十分留意する必要がある。更に、切迫する南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模地震・津波や頻発化・激甚化する高潮・高波・暴風などの自然災害、また、気候変動に起因する災害リスクの増大が懸念されている。このような災害が発生した場合であっても水素等サプライチェーンを維持するため、拠点となる港湾の強靭化の方策を検討する。
        • 加えて、海外において水素等を製造・輸送・貯蔵し、水素等の輸出に対応した岸壁・供給設備等から我が国に対して輸出するビジネスを支援することにより、水素等の大量・安定・安価な輸入を確保する。これにより、我が国における水素等の取引ハブの形成を目指す。
      2. 港湾地域の面的・効率的な脱炭素化
        • 温室効果ガス排出量の大宗を占める港湾地域において、水素・燃料アンモニア等の需要企業と供給企業、行政機関等の連携により、脱炭素社会への移行を促進する。
        • まず、荷役機械、係留中の船舶、港湾を出入りする大型車両等を含め、港湾オペレーションの脱炭素化を目指す。特に公共ターミナル(国、港湾管理者等が所有する岸壁及びふ頭用地)については、2050年までに全ての公共ターミナルにおいてカーボンニュートラルを実現する。また、公共ターミナルに係留中の船舶、公共ターミナルに出入りする大型車両についても、カーボンニュートラルの実現に資する取組を推進していく。
        • また、公共ターミナル周辺地域及び専用ターミナル(民間事業者が所有する岸壁及びふ頭用地)についても、火力発電所、化学工業、倉庫等の臨海部に立地する産業との連携を含め、公共ターミナルと一体となって、港湾地域における面的な脱炭素化を目指す。そのためには、行政機関、港湾立地・利用企業等が連携するプラットフォームとして協議会等を設け、国が示す施策やマニュアルを踏まえつつ、地域の実情を勘案し、CNPの形成に取り組む。
        • 加えて、海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)の整備、余剰電力から製造される水素の海上輸送ネットワークの配送拠点、港湾工事の脱炭素化、藻場・干潟等のブルーカーボン生態系の造成・再生・保全をはじめ、港湾空間を活用した様々な脱炭素化の取組を展開する。
        • 上記(1)及び(2)の取組においては、個別企業によるものだけでなく港湾立地・利用企業等の連携、また港湾ターミナルだけでなく港湾周辺や臨海部を含む港湾地域における連携によって、いかに多くのシナジー効果を生み出すかという視点が重要である。加えて、上記(1)及び(2)の取組が、当該港湾の国際競争力並びに当該港湾を通じた国内産業立地競争力の強化に寄与するという視点から、寄港船社や荷主等の港湾利用者等から適切に評価されることを目指す。また、港湾地域にESG投資を呼び込み、化石燃料中心の産業から脱炭素型の新たな産業への移行を促進するという視点も念頭に置きつつ、CNP形成に向けた取組を推進する。
        • これらの取組により、港湾を拠点として、臨海部、さらにはその後背地の都市部等へと面的に広がる水素等の次世代エネルギー利活用社会の実現につなげていくことが期待される。

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