危機管理トピックス
令和4年版防衛白書(防衛省)/令和3年度 文部科学白書(文科省)/第91回新型コロナ対策アドバイザリーボード(厚労省)/コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針を改訂(経産省)
更新日:2022年7月25日 新着16記事
【新着トピックス】
【もくじ】―――――――――――――――――――――――――
- 首相官邸 日本経済団体連合会夏季フォーラム岸田内閣総理大臣講演
- 防衛省 令和4年版防衛白書
- カジノ管理委員会 特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ事業の免許等の処分に係る審査基準等の制定について
- 文部科学省 令和3年度文部科学白書
- 消費者庁 令和4年7月の消費生活意識調査結果について
- 経済産業省 「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を改訂しました
金融庁
- IOSCOによる最終報告書「COVID-19発生下における取引所及び市場仲介業者のオペレーショナル・レジリエンス並びに今後の混乱期に向けた教訓」の公表について
- 金融活動作業部会(FATF)による「金融犯罪との闘いにおける提携:データ保護、テクノロジー、民間セクターの情報共有に関する報告書」の公表について
国民生活センター
- 【若者向け注意喚起シリーズ<No.12>】男性も増加!脱毛エステのトラブル
- 「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?(No.1)-電子タバコや医薬品でも!!-
- 乳児の首にひもが絡まった昼寝用マット(相談解決のためのテストからNo.167)
- リターンが届かないクラウドファンディングのトラブル
厚生労働省
- 障害者のテレワーク雇用に向けた企業向けガイダンス」を開催します~誰もが挑戦でき、活躍できる社会へ~
- 第91回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年7月21日)
国土交通省
- 三大都市圏の平均混雑率はおおむね横ばい~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和3年度実績)~
- 津波防災地域づくりをパッケージで支援~防災・安全交付金等令和4年度当初予算で実施される津波対策~
~NEW~
首相官邸 日本経済団体連合会夏季フォーラム岸田内閣総理大臣講演
- 新型コロナの感染が全国的に拡大しています。若者を中心に全ての年代で感染者が急増している。最大限の警戒が必要であると認識しています。
- 感染者数が増える中で、重症者の数、死亡者の数はまだ低水準でありますが、病床使用率は総じて上昇傾向にあり、多くの地域で3割を超える水準を示しています。
- 私たちの国は、これまで6回の感染の波を乗り越えてきました。全体として対応力は強化されています。政府としては、現時点で、新たな行動制限を考えてはおりませんが、医療体制を維持・強化し、メリハリの利いた感染対策を行いながら、社会経済活動の回復に向けた取組を段階的に進めていく方針です。
- そして、医療体制については、病床、ベッドの数を7月の頭で約3万確保しておりましたが、昨年来、確保してきた最大のキャパシティとしては5万まで用意することができます。近いうちにこの5万をフル稼働させる体制を用意いたします。そして、検査拠点を拡大するとともに、特にワクチンについては、高齢者を守ることを重点に置いて、高齢者、また医療関係者、高齢者施設従事者へ4回目の接種を進めてまいります。また、3回目のワクチン接種については、若い方々を中心に引き続き接種を呼び掛けていかなければならないと思いますが、その環境整備として、大手町の自衛隊大規模接種会場等を延長するなど、様々な環境整備を進めていきたいと思っています。
- その中で、経済界、またさらには医療介護の現場から寄せられている声として、「療養者あるいは自宅待機となる濃厚接触者が増える結果として、経済活動を維持することができるのか」、こうした課題が提示されています。その観点から、科学的知見に基づいて、濃厚接触者の待機期間を短縮することといたしました。今、濃厚接触者の待機期間、原則7日、2回の検査を組み合わせて5日目解除という方針で臨んでおりますが、これを原則5日、2回の検査を組み合わせることによって最短3日で解除できる体制を行っていきたいと思っております。各企業においても、感染防止等の徹底、あるいはBCP、事業継続計画の確認をお願いできればと思っております。
- そして3点目に申し上げることは、ロシア侵略に端を発した冬のエネルギー供給の問題です。電力の安定供給確保については、この夏は、乗り切れる見通しを立てました。しかし、この冬に向けて、再度需給ひっ迫が懸念されます。こうした事態に備え、先日、私から経済産業大臣に対し、できる限り多くの原発、この冬で言えば最大9基の稼働と、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指して、火力発電の供給能力を追加的に確保する、こうしたことを指示いたしました。
- ロシアに大きくエネルギー供給を依存しているヨーロッパも同様の課題に直面しており、各国は、それぞれ、国のエネルギー事情を踏まえて対応しています。例えば、イギリス、ドイツ、さらにはフランス。こうした国々においては、脱炭素の観点から削減対象としていた石炭火力の一時的活用を試みている。また、ベルギーでは、閉鎖予定だった原発の運転延長を決定するなど原子力の活用を進める国も多いというのが現状です。
- 我が国においても、火力発電のフル活用はもちろんのこと、電力の安定供給と脱炭素化を考えますと、原子力の活用は極めて重要であると思っています。足下のみならず、中長期的に、次世代軽水炉、小型原子炉、核融合といった次世代技術の研究開発や原子力分野における人材育成にしっかり取り組んでいきたいと思っています。もちろん、同時に、再生可能エネルギーの最大限の導入も推進してまいります。新たな制度を作り、財政資金を投入することで、送電網整備や蓄電池への投資を進めてまいります。
- 第1に、人への投資ということです。
- 持続可能な経済を作るためには、成長と分配の好循環を実現させていくことが重要です。「成長か、分配か」ではなく、「成長も分配も」と申し上げております。成長と分配の好循環を実現するための鍵は、持続的な賃上げです。力強い成長を実現させ、その果実を賃上げという形で分配し、消費を喚起していくことで、次の成長につなげていく。経済界の皆様方には、賃上げは次の成長への投資である、あるいは企業の社会的責任である、こうしたことを改めて御認識いただければと思っています。
- 今年の春闘においては、賃上げは2.07パーセントと一定の成果が上がっています。しかしながら、物価の高騰が続く中において、今後も今年以上の持続的な賃上げが求められる状況になっています。コロナ前の業績を回復した企業においては、3パーセント以上の賃上げを実現していただきたいと思っています。賃上げ税制、開示ルールの整備など、賃上げしやすい雰囲気を醸成するため、政府としても総合的な取組を進めてまいります。是非、もう一段の賃上げへの御協力をお願いしたいと思っています。
- そして、成長と分配はセットだと申し上げています。経済成長があって初めて賃上げは可能である。これから申し上げるように、私たちは、様々な成長戦略も実行してまいります。政府も全力で、この成長にも取り組む。是非、経団連の皆様方にも引き続き御協力をお願いするところであります。加えて、賃上げによる個人の所得引上げと併せ、所得を更に増やしていくためには、貯蓄から投資へのシフトも含め、次の成長につなげる努力を行っていきたいと思っております。
- また、賃上げの大前提として、生産性の向上にも取り組んでまいります。従業員への人的投資は、企業の責任において、より充実いただきたいと思いますが、政府においては、3年で4,000億円の予算を活用し、民間の多くの皆様方から意見を伺い、政府の教育訓練投資を抜本的に拡充・強化していきたいと思います。例えば、企業が実施するオンライン研修への支援、あるいは大学院などに通うための特別休暇を取得するための従業員の賃金支援など、様々な取組を進め、生産性の向上と持続的な賃上げの好循環を実現していきたいと思います。経済界の皆様方におかれましても、是非、もう一段、人的投資の拡充・強化に踏み込んでいただきたいと思います。
- 2点目として、科学技術・イノベーションです。
- AI(人工知能)、量子など、我が国の勝ち筋となる先端科学技術について、社会実装まで見据えた国家戦略を定め、将来の成長への期待を経済界とも共有し、官民が大胆な投資を行っていきたいと思います。
- 政府としましても、従来より踏み込んだリスクを分担いたしますので、産業界の皆様には、是非、リスクを取って、イノベーションに向けた大胆な投資を行っていただきたいと考えています。
- 加えて、探究的な学び、STEAM教育、文理分断からの脱却に、初等中等教育からリカレント教育まで一貫して取り組んでいきたいと思っています。経済界の皆様方の関与もお願いいたすところです。
- そして第3に、スタートアップです。
- 新しい資本主義の下で、力強い成長、そして、様々な社会課題の解決の担い手として、スタートアップに大いに期待したいと思っています。
- 今、日本経済を牽引(けんいん)するような多くの大企業も、かつてはスタートアップとして、その歴史をスタートされました。皆様方の後に続き、日本の経済を牽引するような企業が次々と生まれる。こうした日本にしたいと思っています。
- こうしたことから、年末までに、スタートアップ5年10倍増を視野に、5か年計画を策定してまいります。
- さらには、スタートアップ政策の司令塔機能として、新たに、スタートアップ担当大臣を任命することとしたいと思っています。
- そして第4に、脱炭素実現など持続可能なエネルギー供給システムの構築ということについて申し上げます。
- ロシアによるウクライナ侵略は、我が国のエネルギー安定供給に大きな課題を突き付けました。
- こうした事態に直面する中で、エネルギー供給システムの根本からの見直し、エネルギー安定供給を実現できる体制構築、これが急務となっています。
- 同時に、パリ協定の実現に向けて、2050年カーボンニュートラル実現といった野心的な目標に我が国はコミットしているわけでありますから、これも追求しなければならない。また、脱ロシア依存を進める中で、この国際的な約束も実現していかなければならない、こうしたことであります。
- このために、グリーントランスフォーメーション、いわゆるGXを実行していくことで、日本の経済・社会、産業構造を転換していく。こうした、これまでの資本主義の負の側面を克服していく、これは新しい資本主義の中核課題ですが、そのために、新たにGX実行推進担当大臣を任命したいと思っています。官邸にGX実行会議を設置し、来週27日に、第1回目の議論を行ってまいりたいと思っています。
- このGXの実行に向けても、10年ロードマップとして示すことによって、企業の予見可能性をしっかりと高めていきたいと思っています。
- そして、この政策の大きな柱として、複数年度にわたる、予見可能性のある形で、脱炭素に向けた民間の長期巨額投資の呼び水となる前例のない支援の仕組みを用意していきたいと思っています。
- 是非、財源の裏付けをしっかりと持つ形で、民間セクターや市場に、政府としてのコミットメントを明確にしていきたいと思います。
- そして5点目として、デジタル化について申し上げます。
- デジタル田園都市国家構想という構想を申し上げていますが、是非、地方の課題を解決することによって、全国の成長を押し上げていく、こうした取組を進めていきたいと思っておりますが、その際に、インフラ基盤の整備、そして、転職なき移住、この2つをしっかり進めていきたいと思っています。
- インフラ基盤の整備については、2030年度末までに5Gの人口カバー率99パーセントを達成、全国各地で十数か所の地方データセンターの拠点を5年程度で整備する、また、2027年度末までに光ファイバーの世帯カバー率99.9パーセントを達成する、また、日本周回の海底ケーブルを2025年度末までに完成する、こうした目標を掲げて取り組んでまいります。
- そして、もう1つ、デジタルに関しては、転職なき移住ということで、コロナ禍で多くの方がテレワークを経験し、場所を選ばず働けることを実感されましたが、むしろ、これからはそうした働き方を積極的に取り込むことが、企業にとって、優秀な人材を確保し、そして、新たなビジネス・成長の芽の発見につながる、こうした時代になっていると感じます。
- 政府は、こうした動きを積極的に後押しし、サテライトオフィス整備のために寄付した場合に節税効果がある企業版ふるさと納税等、様々な制度を用意していきたいと思っています。
- そして、こうしたデジタル化をしっかりと進める上において、やはり、アナログ規制、行政組織の改革、これが重要だということで、昨年11月、デジタル臨調を立ち上げました。
- 是非、この規制の見直し等もデジタル臨調において思い切って進め、令和7年6月までの3年間で、こうしたアナログ規制の一掃に向けて、努力していきたいと思っております。
~NEW~
防衛省 令和4年版防衛白書
▼本編
- 現在の安全保障環境の特徴として、第一に、国家間の相互依存関係が一層拡大・深化する一方、中国などのさらなる国力の伸長などによるパワーバランスの変化が加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性が増している。こうした中、自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指した、政治・経済・軍事などにわたる国家間の競争が顕在化している。中でも、米中の戦略的競争は一層激しさを増し、貿易、台湾、南シナ海、人権といった分野において顕在化するとともに、ロシアによるウクライナ侵略など、既存の秩序に対する挑戦への対応が世界的な課題となっている。
- このような国家間の競争は、軍や法執行機関を用いて他国の主権を脅かすことや、ソーシャル・ネットワークなどを用いて偽情報などを流し、他国の世論を操作することなど、多様な手段により、平素から恒常的に行われている。こうした競争においては、軍事的手段と非軍事的手段を組み合わせた、いわゆる「ハイブリッド戦」が採られることがあり、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いている。また、いわゆるグレーゾーンの事態が国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向にあり、今後、さらに増加・拡大していく可能性がある。
- 第二に、テクノロジーの進化が安全保障のあり方を根本的に変えようとしている。情報通信などの分野における急速な技術革新に伴う軍事技術の進展を背景に、現在の戦闘様相は、陸・海・空のみならず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を組み合わせたものとなっている。さらに、各国は、人工知能(Atificial Intelligence)技術、極超音速技術、高出力エネルギー技術など将来の戦闘様相を一変させる、いわゆるゲーム・チェンジャーとなり得る先端技術の開発や活用に注力している。特に、技術の進展・拡散と相まって、無人・AIアセットの開発・導入が進められており、従来の軍隊の構造や戦い方に根本的な変化が現れる可能性がある。また、経済安全保障の重要性が認識され、先端技術の流出防止や輸出管理強化、サプライチェーンの強靭化が進められており、科学技術・イノベーションは激化する国家間の競争の中核となっている。
- 第三に、一国のみでの対応が困難な安全保障上の課題が増加している。まず、宇宙・サイバーといった新たな領域の安定的利用の確保が国際社会の安全保障上の重要な課題となっている。近年、各国においては、国全体としてのサイバー攻撃対処能力の強化が進められるとともに、海洋に関しては、既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づいて自国の権利を一方的に主張し、行動する事例がみられるようになっており、公海における航行の自由や上空飛行の自由の原則が不当に侵害されるような状況が生じている。さらに、核・生物・化学(Nuclear, Biological and Chemical)兵器などの大量破壊兵器とそれらの運搬手段である弾道ミサイルなどの拡散や国際テロの問題は、依然として、国際社会にとっての大きな脅威の一つとして認識されている。また、気候変動が安全保障環境や軍の活動に様々な影響を与えうるとの認識が国際社会に急速に共有されてきている。さらに、2019年末以降中国で発生した新型コロナウイルス感染症の対応にあたって、各国は、医療機関とともに軍も活用して、自国の同感染症への対応やワクチン接種の促進に努めた。一方で、軍の中でも感染者が発生し、訓練や共同演習の中止・延期を余儀なくされるなど、軍事活動などにも様々な影響・制約をもたらした。
- 新型コロナウイルス感染症に関しては、偽情報の流布を含む様々な宣伝工作やいわゆる「ワクチン外交」など、自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指した動きも指摘されている。例えば、ロシアと中国は、自国で開発したワクチンを宣伝するとともに各国へ供給を行っており、こうしたいわゆる「ワクチン外交」は、欧米製ワクチンなどに対する信頼を損なうための偽情報や工作活動と結びついている旨指摘されている。このように、今後、新型コロナウイルス感染症への対応をめぐって国家間の戦略的競争が一層顕在化していくと考えられることから、安全保障上の課題として重大な関心をもって引き続き注視していく必要がある。
- 2022年2月21日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの一部である東部の「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」を独立した主権国家として承認する大統領令に署名した上で、これら分離派勢力との間の「友好協力相互支援条約」に基づく支援「要請」があったとの名目で、同月24日、ドンバスの住民保護などを目的とした「特別軍事作戦」の実施を決定した旨を表明し、ウクライナに対する侵略を開始した。ロシア軍は、侵略当初から、各種のミサイルや航空攻撃を行うとともに、北部、東部及び南部の複数の正面から地上軍を同時に侵攻させ、首都キーウ付近まで到達したものの、ウクライナ軍の強固な抵抗や、作戦・戦術面において指摘されている様々な失敗などもあり、侵攻兵力は大きな損害を被ったとされ、ウクライナ北部などから後退した。しかしながら、その後、兵力の再編成が指摘され、ウクライナ東部及び南部における攻撃を強化するなど、引き続き、戦況は予断を許さない状況となっている。
- 今般のロシアによるウクライナへの侵略は、ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反であり、このような力による一方的な現状変更は、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序全体の根幹を揺るがすものである。また、ウクライナ各地においてロシアによる残虐で非人道的な行為が明らかになっているが、多数の無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反、戦争犯罪であり断じて許されない。
- 第二次世界大戦後の国際秩序においては、力による一方的な現状変更を認めないとの規範が形成されてきたが、そのような中で、国際の平和及び安全の維持に主要な責任を負うこととされている国連安保理常任理事国の一つであるロシアが、国際法や国際秩序と相容れない軍事行動を公然と行い、罪のない人命を奪っているという事態は前代未聞と言えるものである。このようなロシアの侵略を容認すれば、アジアを含む他の地域においても一方的な現状変更が認められるとの誤った含意を与えかねず、わが国を含む国際社会として、決して許すべきではない。
- 国際社会は、このようなロシアによる侵略に対して結束して対応しており、各種の制裁措置などに取り組むとともに、ロシア軍の侵略を防ぎ、排除するためのウクライナによる努力を支援するため、防衛装備品等の供与を続けている。ウクライナ侵略にかかる今後の展開については、引き続き予断を許さない状況にあるが、わが国としては、重大な懸念を持って関連動向を注視していく必要がある。
- 今般のロシアによるウクライナ侵略においては、ウクライナ自身の強固な抵抗に加え、国際社会が結束して強力な制裁措置などを実施するとともに、ウクライナを支援し続けることにより、ロシアは大きな代償を払わざるを得ない状況に陥っている。また、欧州各国は、ロシアの脅威に対応するため、結束を強める動きを見せており、ウクライナ侵略を契機として、欧州の安全保障環境は大きな転換点を迎えている。NATOの東方拡大を自国に対する脅威と位置づけてきたロシアの侵略行為がこのような欧州諸国の安全保障政策の変化を促したことは明らかであり、「勢力圏」の維持を通じて自国の安全を確保するとのロシアの戦略的な目的が今般の侵略により達成できているとは言い難い状況にある。こうしたことも踏まえ、NATO加盟国である米国の同盟国であり、欧州とはロシアが位置するユーラシア大陸を挟んで対極に位置するわが国としては、欧州と東アジアを含むインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識の下、その戦略的な影響を含め、今後の欧州情勢の変化に注目していく必要がある。さらに、ウクライナ侵略を受けた欧州情勢の変化は、米中の戦略的競争の展開やアジアへの影響を含め、グローバルな国際情勢にも影響を与え得るものである。いずれにせよ、引き続き関連動向について、強い関心を持って注視していく必要がある。
- 朝鮮半島では、半世紀以上にわたり同一民族の南北分断状態が続いている。現在も、非武装地帯(Demilitarized Zone)を挟んで、150万人程度の地上軍が厳しく対峙している。このような状況にある朝鮮半島の平和と安定は、わが国のみならず、東アジア全域の平和と安定にとって極めて重要な課題である。
- 北朝鮮の金正恩国務委員長は2013年3月、経済建設と核武力建設を並行して進めていくという、いわゆる「並進路線」を決定し、2016年5月の朝鮮労働党第7回大会において、「並進路線」を「先軍政治」2と併せて堅持する旨明らかにした。北朝鮮は2016年から2017年にかけ、3回の核実験のほか、40発もの弾道ミサイルの発射を強行した。これを受けて、関連の国連安保理決議により制裁措置がとられたほか、わが国や米国などは独自の制裁措置を強化した。
- 一方、2018年4月には、金正恩委員長は、国家核武力が完成し、「並進路線」が貫徹されたとし、「全党、全国が社会主義経済建設に総力を集中する」という「新たな戦略的路線」を発表した。また、「核実験と大陸間弾道ロケット試験発射」の中止などを決定し、同年5月には、北部の核実験場の爆破を公開した。同年6月の米朝首脳会談で金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化の意思を表明した。
- しかし、2019年2月の米朝首脳会談は、双方が合意に達することなく終了し、金正恩委員長は同年12月、米国の対北朝鮮敵視が撤回されるまで、戦略兵器開発を続ける旨表明した。また、2021年1月の朝鮮労働党第8回大会において米国を敵視する姿勢を示し、同時に「核戦争抑止力を一層強化し、最強の軍事力を育てる」など、核・ミサイル能力の開発を継続する姿勢を示した。
- 金正恩委員長は、同年10月にも演説を行い、「われわれの主敵は戦争そのもの」であるとしつつ、軍事力の保有は主権国家の「自衛的、義務的な権利」であることや、軍事力の強化が党の「最重大政策」である旨を強調した。2022年2月以降、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルの発射を再開したが、特に同年3月24日の発射後には、大々的に新型ICBM級弾道ミサイルの発射を喧伝しつつ、今後も核戦力を強化していく旨を表明するなど、関連技術を向上させていく意思を改めて明らかにした。こうしたことから、北朝鮮は引き続き核・ミサイルをはじめとする戦力・即応態勢の維持・強化に努めていくものと考えられる。同年2月の最高人民会議における北朝鮮の発表によれば、北朝鮮の同年度予算に占める国防費の割合は、15.9%となっているが、これは、実際の国防費の一部にすぎないとみられている。
- 北朝鮮は、過去6回の核実験に加え、近年、弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、大量破壊兵器や弾道ミサイル開発の推進及び運用能力の向上を図ってきた。技術的には、核兵器の小型化・弾頭化を実現し、これを弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる。さらに、2021年1月には金正恩委員長が「中長距離巡航ミサイルをはじめとする先端核戦術兵器」の開発に言及し、同年9月及び2022年1月には、北朝鮮は長距離巡航ミサイルの試験発射が成功した旨発表した。
- また、非対称的な軍事能力としてサイバー領域について大規模な部隊を保持し、軍事機密情報の窃取や他国の重要インフラへの攻撃能力の開発を行っているとみられるほか、大規模な特殊部隊を保持している。加えて、北朝鮮は、わが国を含む関係国に対す
- る挑発的言動を繰り返してきた。
- 北朝鮮のこうした軍事動向は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうものとなっている。
- 特に2022年に入ってから、北朝鮮は極めて高い頻度で、かつ新たな態様でのミサイル発射を繰り返しているほか、累次にわたり核武力の強化に言及するなど、国際社会に背を向けて核・弾道ミサイル開発のための活動を継続する姿勢を依然として崩していないのみならず、さらなる挑発行動に出る可能性も考えられ、こうした傾向は近年より一層強まっている。
- 北朝鮮の核兵器保有が認められないことは当然であるが、同時に、弾道ミサイルなどの開発・配備の動きや朝鮮半島における軍事的対峙、北朝鮮による大量破壊兵器やミサイルの拡散の動きなどにも注目する必要がある。
- その閉鎖的な体制などから、北朝鮮の動向の詳細や意図の明確な把握は困難だが、わが国として強い関心を持って注視していく必要がある。また、拉致問題については、引き続き、米国をはじめとする関係国と緊密に連携し、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしていく。
- 北朝鮮は、これまで各種の弾道ミサイルの発射を繰り返してきているが、その動向については、次のような特徴がある。
- 第一に、弾道ミサイルの長射程化を引き続き追求しているものとみられる。長射程の弾道ミサイルの実用化のためには、弾頭部の大気圏外からの再突入の際に発生する超高温の熱などから再突入体を防護する技術についてさらなる検証が必要になると考えられるが、北朝鮮は、2017年11月に、搭載する弾頭の重量などによっては10,000kmを超える射程となりうる「火星15」型ICBM級弾道ミサイルを発射した際、弾頭の再突入環境における信頼性を再立証した旨発表するなど、長射程の弾道ミサイルの実用化を追求する姿勢を示している。
- また、2022年3月24日に北朝鮮が発射したICBM級弾道ミサイルは、この時の飛翔軌道に基づけば、搭載する弾頭の重量などによっては1万5,000kmを超える射程となり得ると考えられ、この場合、米国全土が射程に含まれることになる。
- 北朝鮮が弾道ミサイルの開発をさらに進展させ、長射程の弾道ミサイルについて再突入技術を獲得するなどした場合は、米国に対する戦略的抑止力を確保したとの認識を一方的に持つに至る可能性がある。仮に、北朝鮮がそのような抑止力に対する過信・誤認をすれば、北朝鮮による地域における軍事的挑発行為の増加・重大化につながる可能性もあり、わが国としても強く懸念すべき状況となりうる。
- なお、北朝鮮は、わが国を射程に収めるノドンやスカッドERといった弾道ミサイルについては、実用化に必要な大気圏再突入技術を獲得しており、これらの弾道ミサイルに核兵器を搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる。
- 第二に、飽和攻撃などのために必要な正確性、連続射撃能力及び運用能力の向上を企図している可能性がある。スカッド及びノドンについて、2014年以降、過去に例の無い地点から、早朝・深夜に、TELを用いて、多くの場合、複数発、朝鮮半島を横断する形で発射している。これは、スカッド及びノドンを、任意の地点から、任意のタイミングで発射する能力を示している。
- また、2017年3月6日に発射された4発のスカッドERとみられる弾道ミサイルは、同時に発射されたと推定される。さらに、近年、短距離弾道ミサイルと様々な火砲を組み合わせた射撃訓練なども実施しており、こうした発射を通じて、北朝鮮は、弾道ミサイルの研究開発だけではなく、実戦的な運用能力の向上を企図している可能性がある。
- 2017年5月に発射されたスカッドミサイルを改良したとみられる弾道ミサイルについては、終末誘導機動弾頭(MaRV)を装備しているとの指摘もある。2019年の弾道ミサイルなどの発射において、北朝鮮が公表した画像では、異なる場所から発射し、特定の目標に命中させていることも確認できる。
- こうしたことから、北朝鮮が、既存の弾道ミサイルの改良や新たな弾道ミサイル開発により攻撃の正確性の向上を企図していることが考えられる。
- さらに、2019年11月28日及び2020年3月2日にそれぞれ2発発射された短距離弾道ミサイルの発射間隔は1分未満と推定され、飽和攻撃などに必要な連続射撃能力の向上を企図していると考えられる。
- 第三に、発射の兆候把握を困難にするための秘匿性や即時性を高め、奇襲的な攻撃能力の向上を図っているものとみられる。
- TELや潜水艦を使用する場合、任意の地点からの発射が可能であり、その兆候を事前に把握するのが困難となるが、北朝鮮は、TELからの発射やSLBMの発射を繰り返している。さらに2021年9月以降は、鉄道発射型の弾道ミサイルも発射している。
- また、2019年以降、北朝鮮は特に、固体燃料を使用しているとみられる弾道ミサイルの発射を繰り返しており、弾道ミサイルの固体燃料化を進めているとみられる。一般的に、固体燃料推進方式のミサイルは、保管や取扱いが比較的容易であるのみならず、固形の推進薬が前もって充填されていることから、液体燃料推進方式に比べ、即時発射が可能であり発射の兆候が事前に察知されにくく、ミサイルの再装填もより迅速に行えるといった点で、軍事的に優れているとされる。こうした特徴は、奇襲的な攻撃能力の向上に資するとみられる。
- 第四に、他国のミサイル防衛網を突破することを企図し、低高度を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルの開発を進めている。短距離弾道ミサイルA及びBは、通常の弾道ミサイルよりも低空を飛翔するとともに、変則的な軌道を飛翔することが可能とみられるほか、2021年以降に発射された鉄道発射型の弾道ミサイル及び新型のSLBMは、いずれも短距離弾道ミサイルAと外形上類似点があり、変則的な軌道を飛翔した。
- さらに、北朝鮮は、同年9月以降、「極超音速ミサイル」と称するミサイルの発射も繰り返している。このように、北朝鮮は、ミサイル防衛網を突破するためのミサイル開発に注力しているものとみられる。
- 第五に、発射形態の多様化を図っている可能性がある。2016年6月22日、2017年5月14日、7月4日、同月28日、11月29日、2019年10月2日、2022年1月30日、2月27日、3月5日、同月24日、5月4日及び同月25日の弾道ミサイル発射においては、通常よりも高い角度で高い高度まで打ち上げる、いわゆるロフテッド軌道と推定される発射形態が確認されたが、一般論として、ロフテッド軌道で発射された場合、迎撃がより困難になると考えられる。
- このように、北朝鮮は、極めて速いスピードで弾道ミサイル開発を継続的に進めてきており、特に、近年、固体燃料を使用して通常の弾道ミサイルよりも低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルを立て続けに発射するなど、ミサイル防衛網を突破するための関連技術の高度化に注力している。このような高度化された技術がより射程の長いミサイルに応用されることも懸念される。
- 北朝鮮は攻撃態様の複雑化・多様化を執拗に追求し、攻撃能力の強化・向上を着実に図っており、このような能力の強化・向上は、発射兆候の早期の把握や迎撃をより困難にするなど、わが国を含む関係国の情報収集・警戒、迎撃態勢への新たな課題となっている。引き続き北朝鮮の弾道ミサイル開発の動向について、重大な関心をもって注視していく必要がある。
- 人工知能(AI)技術
- いわゆる人工知能(AI)技術は、近年、急速な進展がみられる技術分野の一つであり、軍事分野においては、指揮・意思決定の補助、情報処理能力の向上に加えて、無人機への搭載やサイバー領域での活用など、影響の大きさが指摘されている。この点、オースティン米国防長官は、米国防省高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)のAIプロジェクトに今後5年間で約15億ドルを投資すると述べており、AIへの投資を「最優先事項」と位置づけている。AIを活用した技術の例として、米国では、収集した情報をAIが分析し、戦闘部隊などにネットワーク経由で迅速に共有する先進戦闘管理システム(Advanced Battle Management System)の実証実験が2019年12月に実施されている。また、中国では、次世代指揮情報システムの研究・開発を目的に、中央軍事委員会がAI軍事シミュレーション競技会を2020年7月に開催を発表している。また、各国は、AIを搭載した無人機の開発を進めている。米国のDARPAは、空中射出・回収・再利用が可能なISR(情報収集・警戒監視・偵察)用の小型無人機のスウォーム飛行、潜水艦発見用の無人艦など、多様な無人機の開発を公表している。このほか、空対空戦闘の自動化に関する研究開発や、2021年6月には、スカイボーグシステム2の2回目の飛行試験に成功するなど有人機と高度な無人機が連携する構想の研究を推進している。中国電子科技集団公司は、2018年5月、人工知能を搭載した200機からなるスウォーム飛行を成功させており、2020年9月には中国国有軍需企業が無人航空機のスウォーム試験状況を公開している。このような、スウォーム飛行を伴う軍事行動が実現すれば、従来の防空システムでは対処が困難になることが想定される。ロシアは、2019年9月、大型無人機S-70「オホートニク」と第5世代戦闘機Su-57との協調飛行試験を実施しており、飛行試験の状況を動画で公開している。複座型のSu-57に約4機のオホートニクが随伴し、航空・地上標的への攻撃を担当する可能性も報じられている。また、こうした無人機は、いわゆる自律型致死兵器システム(Lethal Autonomous Weapons Systems)に発展していく可能性も指摘されている。LAWSについては、特定通常兵器使用禁止・制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons)の枠組みにおいて、その特徴、人間の関与のあり方、国際法の観点などから議論されている。
- 量子技術
- 「量子技術」は、日常的に感じる身の回りの物理法則とは異なる「量子力学」を応用することにより、社会に変革をもたらす重要な技術と位置づけられている。2019年12月には、米国防省の諮問機関である米国防科学技術委員会が軍事への応用が期待される量子技術として量子暗号通信、量子センサー、量子コンピュータをあげている。量子通信においては、例えば、第三者が解読できない暗号通信とされる量子暗号通信が各国で研究されている。中国は、北京・上海間約3,000kmにわたる世界最大規模の量子通信ネットワークインフラを構築したほか、2016年8月、世界初となる量子暗号通信を実験する衛星「墨子」を打ち上げ、2018年1月には、「墨子」を使った量子暗号通信により、中国とオーストリア間の長距離通信に成功したとしている。また、量子センシングに関しては、2020年3月、グリフィン米国防次官(当時)が、量子技術の国防への応用に楽観的であってはならないと指摘する一方で、量子センサーが、ナビゲーション情報を改善するものとして期待でき、今後数年間で実現可能とされる見込みと証言している。このほか、量子レーダーは、量子の特性を利用して、ステルス機のステルス性を無効化できる可能性が指摘されている。量子コンピュータは、現在のスーパーコンピュータでは膨大な時間がかかる問題を、短時間かつ超低消費電力で計算することが可能となるとされ、暗号解読などの分野への応用の可能性が指摘されている。中国は、量子コンピュータを重大科学技術プロジェクトとして位置づけ、量子情報科学国家実験室の整備などのために約70億元を投資している。
- 次世代情報通信技術
- 民間の移動通信インフラとして、2019年4月以降各国で相次いで商用サービスが開始されている第5世代移動通信システム(5G)が注目を集めている。米国は、2020年3月に「5Gの安全を確保するための米国家戦略」を公表し、同年5月には同戦略の国防政策上のアプローチを示した「米国防省5G戦略」を公表した。国防省の戦略では、5Gは極めて重要な戦略的技術であり、これによってもたらされる先端技術に習熟した国家は長期にわたり経済的及び軍事的な優位を獲得するとの認識を示している。さらに、米国防省は、米軍基地内に5G実験を行うための実証基盤を開設する取組を2019年10月から開始しており、複数の基地を5G実験施設として指定している。2021年12月には、ユタ州のヒル空軍基地で5Gネットワーク実験設備が完成している。また、仮想通貨に利用されているブロックチェーン技術4についても、軍事分野への応用が期待されており、米国は、2020年10月に公表した「重要な新興技術のための国家戦略」において、20の重要・新興技術分野のうちの一つに同技術を選定している。
- 積層製造技術
- 3Dプリンターに代表される積層製造技術は、低コストで通常では作成できないような複雑な形状でも製造が可能なことや、在庫に頼らない部品調達など兵站に革命が起きる可能性があることから、各国で軍事技術への応用の可能性が指摘されている。例えば、米陸軍は、予備物品の輸送が不要になることから、「物流に本当の革命を起こすことになる」としており、米空軍は、部品不足が指摘される航空機のエンジン部品の製造を発表している。
- 2014年のロシアによるクリミア「併合」、2016年の米大統領選へのロシアの介入疑惑、2020年の台湾総統選挙をめぐる中国の活動、2022年のロシアによるウクライナ侵略などでも指摘されているように、主にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を媒体とした、偽情報の流布や、当該政府の信頼低下や社会の分断を企図した情報拡散などによる情報戦への懸念が高まっている。こうしたSNS上での工作には、ボットと呼ばれる自律的なプログラムが多用されるようになっているとの指摘がある。大手ソーシャルメディア各社は、ボットアカウントも含め、中国やロシアなど政府によるプロパガンダ5作戦に利用されているとするアカウントの削除を発表してきている。このような偽情報の流布などによる情報戦は、AIやコンピューティング技術のさらなる活用により、一層深刻になる可能性がある。このため、米国の2021年度国防授権法は、国土安全保障長官に対して、デジタル・コンテンツの偽造に使われる技術や、これが外国政府により使われた場合の安全保障への影響について報告するよう命じている。また、米国防省高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)は、画像や音声の一貫性に着目し、偽造されたコンテンツを自動的に発見するアルゴリズムの研究を行っている。
- IoTやAI、5G、クラウドサービスなどの利用拡大、テレワークの定着など、情報通信ネットワークは経済社会において、必要不可欠なものになっている。そのため情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃は、人々の生活に深刻な影響をもたらしうるものであるとともに、サイバー空間における諜報活動の一環であるサイバー攻撃は国の安全保障にとって現実の脅威となっている。
- サイバー攻撃の種類としては、情報通信ネットワークへの不正アクセス、メール送信などを通じたウイルスの送り込みによる機能妨害、情報の改ざん・窃取、大量のデータの同時送信による情報通信ネットワークの機能妨害のほか、電力システムなどの重要インフラのシステムダウンや乗っ取りを目的とした攻撃などがあげられる。また、ネットワーク関連技術は日進月歩であり、AIを利用した攻撃が行われる可能性も指摘されるなどサイバー攻撃も日に日に高度化、巧妙化している。
- 軍隊にとって情報通信は、指揮中枢から末端部隊に至る指揮統制のための基盤であり、情報通信技術(Information and Communications Technology)の発展によって情報通信ネットワークへの軍隊の依存度が一層増大している。攻撃の実施主体や被害の把握が困難なサイバー攻撃は、敵の軍事活動を低コストで妨害可能な非対称的な攻撃手段として認識されており、多くの外国軍隊がサイバー空間における攻撃能力を開発しているとみられる。
- 諸外国の政府機関や軍隊のみならず民間企業や学術機関などの情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃が多発しており、重要技術、機密情報、個人情報などが標的となる事例も確認されている。例えば、高度サイバー攻撃(Advanced Persistent Threat)のような、特定の標的組織を執拗に攻撃するサイバー攻撃は、長期的な活動を行うための潤沢なリソース、体制、能力が必要となることから、組織的活動であるとされている。このような高度なサイバー攻撃に対処するために、脅威認識の共有などを通じて諸外国との技術面・運用面の協力が求められている。また米国は、情報窃取、国民への影響工作、重要インフラを含む産業に損害を与える能力を有する国家やサイバー攻撃主体は増加傾向にあり、特にロシア、中国、イラン及び北朝鮮を最も懸念していると評価しているように、各国が、軍としてもサイバー攻撃能力を強化しているとみられる。
- 北朝鮮には、偵察総局、国家保衛省、朝鮮労働党統一戦線部、文化交流局の4つの主要な情報及び対外情報機関が存在しており、情報収集の主たる標的は韓国、米国及びわが国であるとの指摘がある。また、人材育成は当局が行っており、軍の偵察総局を中心に、サイバー部隊を集中的に増強し、約6,800人を運用中と指摘されている。
- 各種制裁措置が課せられている北朝鮮は、国際的な統制をかいくぐり通貨を獲得するための手段としてサイバー攻撃を利用しているとみられる7ほか、軍事機密情報の窃取や他国の重要インフラへの攻撃能力の開発などを行っているとされる。例えば、次のサイバー攻撃への関与が指摘されている。
- 2017年5月、マルウェア「ワナクライ」により、世界150か国以上の病院、学校、企業などが保有する電子情報を暗号化し、使用不能にするサイバー攻撃が発生。わが国や米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは、その背後に北朝鮮の関与があったことなどを非難する声明を発表。また、このサイバー攻撃によって14万ドル分のビットコインが集められたとの指摘。
- 2021年2月、米司法省は、北朝鮮軍偵察総局所属の北朝鮮人3名をサイバー攻撃に関与した疑いで起訴。
- 2021年4月に公表された「国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネル最終報告書」において、大量破壊兵器や弾道ミサイル計画を支える利益を生み出すために金融機関や仮想通貨取引所に対する攻撃が継続していると評価し、2019から2020年11月までに計3億1,640万ドル相当を窃取したとする分析を公表。
- 2021年5月、韓国原子力研究所は、北朝鮮のサイバーグループがVPNサーバの脆弱性を悪用して内部ネットワークに侵入したと発表。
- 自国防衛の目的で購入・開発を行った兵器であっても、国内生産が軌道に乗ると、輸出が可能になり移転されやすくなることがある。例えば、通常戦力の整備に資源を投入できないため、これを大量破壊兵器などによって補おうとする国家に対し、政治的なリスクを顧みない国家から、大量破壊兵器やその技術などの移転が行われている。大量破壊兵器などを求める国家の中には、自国の国土や国民を危険にさらすことに対する抵抗が小さく、また、その国土において国際テロ組織の活発な活動が指摘されているなど、政府の統治能力が低いものもある。こうした場合、一般に大量破壊兵器などが実際に使用される可能性が高まると考えられる。
- さらに、このような国家では、関連の技術や物質の管理体制にも不安があることから、化学物質や核物質などが移転・流出する可能性が高いことが懸念されている。例えば、技術を持たないテロリストであっても、放射性物質を入手しさえすれば、これを散布し汚染を引き起こすことを意図するダーティボムなどをテロの手段として活用する危険があり、テロリストなどの非国家主体による大量破壊兵器の取得・使用について、各国で懸念が共有されている。
- 大量破壊兵器などの関連技術の拡散はこれまでに多数指摘されている。例えば、2004年2月には、パキスタンのカーン博士らにより北朝鮮、イラン、リビアに主にウラン濃縮技術を中心とする核関連技術が移転されたことが明らかになった。また、北朝鮮は、シリアの秘密裡の核関連活動を支援していたとの指摘もある。
- 運搬手段となる弾道ミサイルについても、移転・拡散が顕著であり、旧ソ連などがイラク、北朝鮮、アフガニスタンなど多数の国・地域にスカッドBを輸出したほか、中国によるDF-3(CSS-2)、北朝鮮によるスカッドの輸出などを通じて、現在、相当数の国などが保有するに至っている。例えば近年では、イエメン北部を拠点とする反政府武装勢力ホーシー派が、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に対し散発的に弾道ミサイルなどを用いた攻撃を行っているが、ホーシー派はイランから武器供給を受けているとの指摘がある。
- 北朝鮮は、技術や通常兵器、WMDサプライ・チェーンのための物品の拡散源であり続けていると指摘されている。例えば、2019年に発射実験された2種類の短距離弾道ミサイルの発射台付き車両(Transporter-Erector-Launcher)が砂色・黄褐色に塗装されているのは販売目的があるとの指摘があるほか、イランとの間で長距離ミサイル開発についての協力を行っているとの指摘もある。
- この点、1980年代から90年代にかけて北朝鮮が発射実験をほとんど行うことなく、弾道ミサイル開発を急速に進展させてきた背景として、外部からの各種の資材・技術の北朝鮮への移転の可能性が考えられる。また、弾道ミサイル本体及び関連技術の移転を行い、こうした移転によって得た利益でさらにミサイル開発を進めているといった指摘もある。
- こうした動きに対する国際社会の断固たる姿勢は、大量破壊兵器などの移転・拡散に関与する国への大きな圧力となり、一部の国に国際機関の査察を受け入れさせるといった結果にもつながっている。
- 一方、近年では懸念国が大量破壊兵器などを国外に不正輸出する際に、書類偽造や輸送経路の多様化などによって巧妙に国際的な監視を回避しつつ、移転を継続していると指摘されている。また、懸念国が、先進国の主要企業や学術機関などに派遣した自国の研究者や留学生などを通じて、大量破壊兵器などの開発・製造に応用し得る先端技術を入手する、無形技術移転も懸念されている。
- 気候変動による各国の軍に対する直接的な影響として、異常気象の増大は大規模災害の増加や感染症の拡大をもたらすと考えられており、災害救援活動、人道復興支援活動、治安維持活動、医療支援などの任務に、各国の軍隊が出動する機会が増大するとともに、過酷な環境下で活動する軍の要員の身体に悪影響を与え得るとされる。また、気温の上昇や異常気象、海面水位の上昇などは、軍の装備や基地、訓練施設などに対する負荷を増大させると考えられている。さらに、軍事作戦への影響も指摘されている。NATOは2021年4月、気候変動及び異常気象は、NATOにとって、戦術、作戦及び軍事戦略の各レベルで重大な影響があるとした。例えば、海上作戦では海流パターンの変化が海上警戒監視及び対潜水艦作戦に影響を与え、陸上作戦では、洪水、氷雪または嵐による供給路の遮断などが兵站にとって重大な課題になるとしている。
- 加えて、軍に対しても、温室効果ガスの排出削減を含む、より一層の環境対策を要求する声が高まる可能性が指摘されている。
~NEW~
カジノ管理委員会 特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ事業の免許等の処分に係る審査基準等の制定について
- 以下の審査基準等を本日制定しました。(令和4年7月22日施行)
- 審査基準
- 「特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ事業の免許等の処分に係る審査基準」
- 法第41条各号で規定する免許の基準への適合性を審査するための基準を定めるもの。
- カジノ管理委員会規則等
- カジノ事業規制関係
- 「特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ事業者又はカジノ施設供用事業者が行う設置運営事業等の監査及び会計に関する命令」
- 特定複合観光施設に係るカジノ事業者又はカジノ施設供用事業者が行う設置運営事業等の監査及び会計に関してカジノ管理委員会規則・国土交通省令で定めることとされた事項を定めるもの。
- 電子申請関係
- 「関係行政機関が所管する法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則の一部を改正する命令」
- 規則別表各号に掲げる関係行政機関としてカジノ管理委員会及び国土交通省を追加する改正を行うもの。
- カジノ事業規制関係
- 審査基準
▼特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ事業の免許等の処分に係る審査基準要点
- 申請者等の社会的信用及び申請者の人的構成に関する事項(法§41(1)Ⅰ~Ⅴ関係)
- 申請者等の十分な社会的信用に係る判断基準として、暴力団との関係の有無・内容等を総合勘案し、不正又は不誠実な行為を行うおそれがないことを規定。また、人的構成に係る判断基準として、組織体制や役員の資質が的確な業務遂行を可能とするものであることを規定。
- カジノ事業者の財務の健全性に関する事項(法§41(1)Ⅵ関係)
- 事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有することに係る判断基準として、十分な純資産を保持していること等を規定。また、事業に係る収支の見込みが良好であることに係る判断基準として、その見込みが合理的根拠に基づく適正なものであること等を規定。
- カジノ施設の規模、構造及び設備、カジノ関連機器等に関する事項(法§41(1)Ⅶ~Ⅹ関係)
- カジノ施設の数が一を超えないことに係る判断基準として、カジノ施設が構造的・機能的な一体性を有していること等を規定(IR整備法施行令で定めた3%の面積規制の算定方法は、規則で規定済み。)。
- 定款、業務方法書、カジノ施設利用約款に関する事項(法§41①Ⅺ・Ⅻ、法§53①関係)
- 定款、業務方法書(広告勧誘、特定金融業務、コンプライアンス確保等の具体的な業務実施方法、体制整備等について記載するもの)及びカジノ施設利用約款の法令適合性等に係る判断基準として、必要な事項が記載されていること等を規定。
- 依存防止規程に関する事項(法§41(1)ⅩⅢ関係)
- 依存防止規程の法令適合性等に係る判断基準として、法令遵守宣言のほか、利用制限措置の具体的な手続が記載されていること等を規定。
- 犯罪収益移転防止規程に関する事項(法§41(1)Ⅹⅳ関係)
- 犯罪収益移転防止規程の法令適合性等に係る判断基準として、法令遵守宣言のほか、取引時確認の具体的な手続が記載されていること等を規定。
- カジノ行為区画内関連業務に関する事項(法§41(1)ⅩⅤ関係)
- 区画内関連業務がカジノ事業の健全運営に支障を及ぼすおそれがないことに係る判断基準として、業務の内容が著しく射幸心をそそるおそれがないものであること等を規定。
- その他、カジノ行為粗収益(GGR)の集計、契約・再委託契約の認可等に係る審査基準についても策定
▼特定複合観光施設区域整備法に基づくカジノ事業の免許等の処分に係る審査基準本文
- 法第39条の規定によるカジノ事業の免許の基準については、法第41条に定められているとおりであり、その審査基準は以下のとおりとする。
- 「申請者が、人的構成に照らして、カジノ事業を的確に遂行することができる能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること。」(法第41条第1項第1号)
- カジノ事業を的確に遂行することができる能力に関する事項
- カジノ事業に係る業務の的確な遂行に必要な人員が各部門に配置される組織体制、人員構成にあること。
- 役員が、その経歴及び能力に照らして、カジノ事業者としての業務を的確に遂行することができる十分な資質を有していること。
- 十分な社会的信用に関する事項
- 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- 暴力団との関係の有無・内容
- 法令遵守状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 社会生活における活動の状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 経済的状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 他者との不適切な社会的・経済的な関係の有無・内容
- 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- カジノ事業を的確に遂行することができる能力に関する事項
- 「申請者の役員が十分な社会的信用を有する者であること。」(法第41条第1項第2号)
- 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- 暴力団との関係の有無・内容
- 法令遵守状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 社会生活における活動の状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 経済的状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 他者との不適切な社会的・経済的な関係の有無・内容
- 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- 「出資、融資、取引その他の関係を通じて申請者の事業活動に支配的な影響力を有する者が十分な社会的信用を有する者であること。」(法第41条第1項第3号) 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- 暴力団との関係の有無・内容
- 法令遵守状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 社会生活における活動の状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 経済的状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 他者との不適切な社会的・経済的な関係の有無・内容
- 「申請者の主要株主等基準値以上の数の議決権等の保有者(営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であるときは、その法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その役員を含む。以下同じ。))及び当該主要株主等基準値以上の数の議決権等の保有者が法人等であるときはその役員が十分な社会的信用を有する者であること。」(法第41条第1項第4号) 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- 暴力団との関係の有無・内容
- 法令遵守状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 社会生活における活動の状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 経済的状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 他者との不適切な社会的・経済的な関係の有無・内容
- 「当該申請に係る特定複合観光施設区域の施設土地権利者(営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であるときは、その法定代理人)及び当該施設土地権利者が法人であるときはその役員が十分な社会的信用を有する者であること。」(法第41条第1項第5号) 例えば、以下の事項を総合的に勘案してカジノ事業に関連して不正又は不誠実な行為を行うおそれがないと認められる者であること。
- 暴力団との関係の有無・内容
- 法令遵守状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 社会生活における活動の状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 経済的状況に関する不適切な経歴・活動の有無・内容
- 他者との不適切な社会的・経済的な関係の有無・内容
- 「申請者がカジノ事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、当該カジノ事業に係る収支の見込みが良好であること。」(法第41条第1項第6号)
- カジノ事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有することに関する事項 以下の事項等を総合的に勘案して、カジノ事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すると認められること。
- 事業等のリスクが顕在化し、カジノ事業の収益が見込みよりも下振れした場合にも、将来にわたって設置運営事業を継続できる規模の純資産を保持すること。
- 設置運営事業に係る施設整備等について、資金が安定的な手段により調達されていること及び将来にわたって必要となる資金調達が確実であること。
- カジノ事業の安定的な実施に必要な流動資産を保持すること。
- カジノ事業に係る収支の見込みが良好であることに関する事項
- 以下の事項等を総合的に勘案して、カジノ事業に係る収支の見込みが良好であると認められること。
- カジノ業務の収益及びその他の業務の収益の見込みが合理的な根拠に基づく適正なものであること。
- 将来にわたって設置運営事業を実施するために必要な利益が見込まれていること(事業等のリスクが顕在化し、カジノ事業の収益が見込みよりも下振れした場合を含む。)。
- 以下の事項等を総合的に勘案して、カジノ事業に係る収支の見込みが良好であると認められること。
- カジノ事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有することに関する事項 以下の事項等を総合的に勘案して、カジノ事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すると認められること。
- 「申請者が、人的構成に照らして、カジノ事業を的確に遂行することができる能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有する者であること。」(法第41条第1項第1号)
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文部科学省 令和3年度文部科学白書
▼特集1 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の軌跡とレガシーの継承・発展
- ドーピングとは、競技者の競技能力を向上させるため、禁止されている薬物や方法を使用することなどを意味します。ドーピングは、(1)競技者に重大な健康被害を及ぼす、(2)フェアプレーの精神に反し、人々に夢や感動を与えるスポーツの価値を損ねる、(3)優れた競技者によるドーピングが青少年に悪影響を与えるなどの問題があり、各国において厳格に防止活動に取り組むことが求められています。
- 我が国は、2006(平成18)年に国際連合教育科学文化機関「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」を締結し、世界ドーピング防止機構(WADA)常任理事国として、国際的なドーピング防止活動に率先して取り組んでおり、国際的に見ても我が国のドーピング防止規則違反確定率は低い状態を維持しています。スポーツ庁は、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)との連携を図りつつ、アスリート等に対するドーピングの未然防止を目的とした教育・啓発活動、ドーピング検査技術の研究開発などに積極的に取り組むとともに、若い世代を対象としたドーピング防止教育を推進しています。さらに、東京2020大会に向けて、国際競技大会に対応できる検査員の育成を図るとともに、関係機関とのドーピング防止活動に関するインテリジェンス(情報)共有の仕組みを構築しました。スポーツ庁は、今後も、JADAをはじめ関係団体と連携し、スポーツの価値を守るため、クリーンでフェアなスポーツの実現に努めていきます。
- インターネット上での誹謗中傷は社会全体で大きな問題となっていますが、東京2020大会では、アスリートに対するSNSでの誹謗中傷が多く報道され、アスリートのメンタルヘルスに注目が集まった大会でもありました。スポーツ庁では、ウェブサイト等において誹謗中傷防止に向けた長官メッセージを発出し、注意喚起を行ったほか、JOCでは、SNS等における誹謗中傷を監視するチームを設置し、悪質な事案についてはSNS事業者への通報等を行いました。さらに、HPSCでは、アスリートが安心して競技に打ち込めるよう、心理サポートの専門家がカウンセリングを実施するなど、相談体制を整備しました。
- また、競技用ユニフォームを着用したアスリートが性的意図をもって写真・動画を撮影・流布される、性的ハラスメント問題に対しては、組織委員会が会場での性的ハラスメント目的が疑われる写真・映像の撮影・送信を禁止行為に定め、被害防止に取り組みました。加えて、スポーツ庁からスポーツ団体に対し、アスリート向けの相談窓口の周知を行ったほか、JOCでは被害情報の提供等に関し警視庁との連携を図るなど、スポーツ界全体で被害防止に向けて取り組みました。
- 東京2020大会においては、コロナ禍という厳しい状況の中、各地域が誇る文化芸術活動への支援等を通じて、多様な文化芸術の発展や文化財の活用を図るべく取り組んだものの、多くのイベントが中止・延期を余儀なくされるなど、大きな影響を受けました。文化プログラムの一つとして実施してきた日本博事業は今後、2025年大阪・関西万博に向けて「日本博2.0」として、「日本の美と心」というテーマを中核としつつ、様々な方々の参画を得ながら、新しい価値創造を進め、文化の力で、社会課題の解決と経済社会の新しい成長に挑戦するような取組を実施します。
- また、文化オリンピアードで創出されたプログラムの半数以上が2021(令和3)年以降も継続予定であり、レガシーとして各地域の文化資源が次世代へも継承されることが見込まれます。
- 文部科学省においては令和2年度から順次実施されている学習指導要領において、様々な教科等において障害のある人との交流及び共同学習等の機会を設けるよう配慮すること等を盛り込むとともに、道徳科をはじめ各教科や特別活動等において、「心のバリアフリー」に関する理解を深めるための指導の充実を図りました。これに先がけて平成29年には校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針を策定、周知しました。
- また、令和元年11月には、授業等で活用できるよう「心のバリアフリーノート」を作成し、ホームページで公表するとともに教育委員会等に周知し、全国的な普及・活用を図りました。
- さらに、教育職員免許法の改正(平成28年11月)及び同法施行規則の改正(平成29年11月)により、教職課程で履修すべき事項が全面的に見直され、令和元年度入学の学生から「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」の科目を受講することを必須としました。
- 学校における交流及び共同学習の推進については、「心のバリアフリー学習推進会議」を開催し、学校における障害のある子供と障害のない子供の交流及び共同学習等の推進方策について検討を行い、平成30年2月に報告を取りまとめました。
- 令和2年11月には、全国各地で実施されている交流及び共同学習の取組事例の中から、各地方公共団体の参考となる優れた実践事例をまとめ「交流及び共同学習オンラインフォーラム」として公開し、心のバリアフリーにも資する交流及び共同学習の充実を図りました。
- スポーツ等を通じた「心のバリアフリー」の普及については、第18回全国障害者スポーツ大会(平成30年10月)において、障害の有無にかかわらずスポーツのすばらしさや感動を共有できる大会を目指した試みとして、国民体育大会との融合を推進しました。
- また、障害の有無にかかわらず参加できるスポーツ大会についてSNS等で情報発信するとともに、オンラインによるパラアスリート派遣やパラアスリートのメッセージ動画配信、IPC公認教材「I’m POSSIBLE」日本版の小・中・高・特別支援学校への無償配布等を実施しました。パラリンピック開催期間中には、約1万5,000人の児童・生徒が競技会場で応援(学校連携観戦)し、パラリンピアンの活躍を通じて共生社会について学びました。
- 令和2年5月にバリアフリー法が改正されるとともに、同年10月に同施行令の一部が改正され、一定規模以上の新築等を行う場合にバリアフリー基準への適合義務の対象として、新たに公立小中学校等が位置づけられました。これを踏まえ、文部科学省は、同年12月、学校施設バリアフリー化推進指針を改訂するとともに、公立小中学校等における7年度末までの整備目標を設定しました。
- また、令和3年度から、公立小中学校等のバリアフリー化工事に対する補助率を3分の1から2分の1に引き上げたほか、全国の学校設置者を対象とした講習会開催等の普及啓発を実施しました。
- 東京2020大会を契機としたかつてない地域住民等のスポーツへの関心の高まりを、「スポーツ・レガシー」として各地域におけるスポーツによる地方創生、まちづくりの取組に転化させ、それらを将来にわたって継続・定着させます。そして、スポーツを活用した地域の社会課題の解決を促進することで、スポーツが地域・社会に貢献し、競技振興への住民・国民の理解と支持を更に広げ、競技振興と地域振興の好循環を実現していきます。
- また、国及びJSCは、国立競技場等の国立スポーツ施設について、スポーツ大会への活用に加え、地域におけるスポーツの拠点・まちづくりの中核的な存在の一つとなり、東京大会のレガシーとして、長く、国民の皆様に親しまれる場となるよう、積極的な利活用の在り方等について検討を進めます
▼特集2 新型コロナウイルス感染症禍における文部科学省の取組
- 令和2年2月28日に、文部科学省から各学校の設置者へ臨時休業の実施を要請し、多くの学校において、臨時休業の措置がとられました。臨時休業措置は、子供たちや各家庭において学校がどれだけ大きな存在であったのかということを改めて浮き彫りにする機会となり、学校は学習機会と学力を保障するという役割のみならず、全人的な発達・成長を保障する役割や、人と安全・安心につながることができる居場所・セーフティネットとして身体的、精神的な健康を保障するという福祉的な役割をも担っていることが再認識されました。こうしたことも踏まえ、文部科学省としては、感染症対策を徹底しつつ、最大限子供たちの健やかな学びを保障するため、様々な施策を行ってきました。
- 例えば、学校の衛生管理の観点から、児童生徒等の感染リスクを低減するための取組に資するよう、令和2年5月に「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」を作成し、その後も最新の知見を踏まえ、随時改訂し、周知してきました。同年6月には「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」を作成したほか、令和3年度においては、各教育委員会等に対し、変異株の知見や感染状況を踏まえた適時適切な情報発信を行うとともに、学校で児童生徒等や教職員の感染が確認された場合の対応ガイドラインを作成し、臨時休業の基準などについても示しました。
- また、一定の期間児童生徒がやむを得ず学校に登校できない場合などには、学習に著しい遅れが生じることのないよう、ICT端末を自宅等に持ち帰り、登校できなくても学校と自宅等をつなぐ手段を確保し、児童生徒とコミュニケーションを絶やさず学びを止めないようにすることが重要です。
- このため、ICT端末を活用した学習指導を行うに当たっての留意事項や自治体の事例等を周知するとともに、経済的に困難な家庭への通信費支援の充実を図りました。
- 加えて、教職員は、学校の業務を継続し、児童生徒等の学びの継続の保障や地域における社会機能を維持するために不可欠な存在であることから、令和4年2月の内閣総理大臣の指示を受け、各教育委員会等に対して、自治体の衛生部局等と連携して教職員の新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)に取り組むようお願いをしました。
- さらに、新型コロナウイルス感染症の影響が長期にわたり、児童生徒が様々なストレスや課題を抱える中、児童生徒の心理面や家庭環境への影響に対し、しっかりと対応する必要があると考えており、児童生徒の心のケアや福祉的な支援の充実に向け、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置のための支援を行うとともに、養護教諭やスクールカウンセラー等による支援を行うこと、24時間子供SOSダイヤルなど相談窓口を周知することなど児童生徒の心のケア等に十分に配慮するよう、学校現場に示してきています。
- 加えて、感染症予防や正しい情報の収集、差別や偏見、新しい生活様式などを記載した、学校現場において感染症予防に関する教育を行うための、小・中・高等学校の教師用の指導資料について、新たな知見等を踏まえ令和4年3月に改訂しました。
- 修学旅行については、その教育的意義や児童生徒の心情等を考慮し、適切な感染防止策を十分に講じた上で、その実施方法の適切な変更・工夫を含め実施に向け配慮いただくようお願いしました。
- 高校入試については、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ、受検生が安心して臨めるよう、実施者である都道府県教育委員会等に対し、調査書において、学習評価の内容や諸活動の記録等の記載が少ないことをもって、不利益を被らないようにすることなどの配慮を依頼しました。
- また、試験会場等の感染症対策や追検査等による受検機会の確保なども依頼し、各実施者において、これらの措置を講じた上で、試験が実施されました。
- こうした必要な情報の周知等の実施に加え、一人一人のニーズに応じたきめ細かな指導を可能とする指導体制と安全・安心な教育環境を整備するため、令和3年3月に公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を改正し、公立小学校の学級編制の標準を35人に引き下げました
- また、学校における感染症対策や教育活動の充実のため、必要な情報の周知等の実施に加え、教員業務支援員等の人的な支援、消毒液など保健衛生用品の整備等の物的な支援、空調設備やトイレ改修等の衛生環境改善に必要な予算措置を講じています。さらに、「GIGAスクール構想」の開始時期を令和3年4月に大幅に前倒しし、児童生徒1人1台端末環境の整備等を進めるなどしてきたところですが、日々、感染症対策に配慮した工夫や取組を行っていただいている学校現場を支え、子供たちが安心して学校生活を送ることができるよう、文部科学省としても、引き続き、必要な助言や支援を行っていきます。
- 文部科学省では、新型コロナウイルス感染症により経済的な影響を受けている学生等への対応として、経済的に困難な学生等が活用可能な支援策を取りまとめ、継続的に支援を行っています。具体的には、令和2年4月から始まった高等教育の修学支援新制度の着実な実施に加えて、家計が急変した世帯に対する新制度及び貸与型奨学金による随時の支援等に取り組んでいます。さらに、令和3年度は「学生等の学びを継続するための緊急給付金」により、新型コロナウイルス感染症の影響でお困りの学生等に対して現金10万円の支給を行いました。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、学生等が様々な不安を抱えやすい状況にあることから、各大学等に対し、相談体制の整備や専門家との連携等により、学生等の悩みや不安に寄り添ったきめ細かな対応をいただくようお願いしています。こうした取組を通じ、今般の新型コロナウイルスの影響で学生等が進学・修学を断念するようなことがないよう、引き続きしっかり支援していきます。
~NEW~
消費者庁 令和4年7月の消費生活意識調査結果について
- 「乳幼児の育児中の事故の経験」について
- 乳幼児の育児経験がある人のうち、約4割が「転落」、「転倒」の事故を経験。
- 事故の経験があると回答した人の割合は、「転落」が43.8%、「転倒」が43.3%で、他の事故と比較して割合が高かった。
- 乳幼児の「やけど」、「誤飲」を経験した半分近くが医療機関も受診。
- 事故の経験があると回答した人のうち、医療機関を受診させた経験のある人が占める割合は「やけど」が44.4%、「誤飲」が49.0%で、他の事故と比較して割合が高かった
- 乳幼児の育児経験がある人のうち、約4割が「転落」、「転倒」の事故を経験。
- 「乳幼児の事故対策の認知度」について
- 事故対策のうち、乳幼児を自転車に乗降させる際の正しい順序や、ブドウ等の球形の食品は4等分して与えること、硬めの敷布団を使うことについては、半数以上が認知していない。
- 乳幼児を自転車に乗降させる際の正しい順序については56.3%の人が、ブドウ等の球形の食品は4等分して与えることについては54.5%の人が、硬めの敷布団を使うことについては53.3%の人が認知しておらず、これらの事故対策が最も認知率が低い。
- 事故対策のうち、乳幼児を自転車に乗降させる際の正しい順序や、ブドウ等の球形の食品は4等分して与えること、硬めの敷布団を使うことについては、半数以上が認知していない。
- 「事故対策の実践状況」について
- 事故対策を認知していながら実践している割合が低い項目は、事故対策用の物品を別途用意する必要があるものに集中。
- 「窓が大きく開かないように補助錠を付ける」、「海や川で遊ぶときはライフジャケットを着用させる」等の実践割合が最も低い5項目は、いずれも補助錠やライフジャケット等、事故対策用の物品を別途用意する必要があり、事故対策を認知していても5割から6割の人しか実践していない。
- 事故対策を認知していながら実践している割合が低い項目は、事故対策用の物品を別途用意する必要があるものに集中。
~NEW~
経済産業省 「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を改訂しました
▼エグゼクティブ・サマリー-CGSガイドライン改訂について-
- 取締役会の役割・機能の向上
- 「監督」の意義
コーポレートガバナンス改革では取締役会を核とする監督機能の強化が重視されてきたが、その「監督」の意味が誤解されているおそれもあることや、社外取締役が相当程度増えたことを踏まえ、改めて「監督」の意義について整理を行った。- 社外取締役が一定程度増え、取締役会による個々の具体的な業務執行決定の範囲が限定的となる場合において、取締役会に期待される「監督」とは、経営陣が策定し、取締役会が決定した経営の基本方針や戦略に照らして、指名・報酬の決定を通じた経営の是非の判断やパフォーマンスの評価を行うことが中核となる。
- 取締役会による「監督」とは、単に執行にブレーキをかけたり、不祥事を自ら発見することではない。適切なリスクテイクや社内の経営改革の後押し、リスクテイクをしないことのリスク(不作為のリスク)を提起することも含まれる。
- また、取締役会は資本市場からどう見られているかを意識し、自社の企業価値への評価を理解しなければならない。社外取締役が監督を行うに当たっては、株主等のステークホルダーの利益に資するかどうかの視点も持つことが重要である。
- 相当数の社外取締役が含まれることとなると、必然的に、伝統的な取締役会からは変容を求められる。このような取締役会で議論する際には、株主等のステークホルダーに説明できるものであるかの確認、専門性・経験に根ざした助言を行うことや、株主から経営に関する提案があった際に、経営陣に対して真剣に検討するよう説得力をもって主張する、そうでない場合は株主に対して説得力を持って経営陣が対応することを支持するなどの目的意識を持つことが有益である。
- モニタリング機能を重視したガバナンス体制
社外取締役の増加など監督機能の強化が進められ、機関設計の変更を行う企業も増えていることや、経営のスピードを上げつつ経営陣がリスクテイクをしやすくすることが重要であることを踏まえ、ガバナンス体制やそれに応じた機関設計の選択について、考え方を改めて整理した。- 取締役会の典型的な姿は、(A)取締役会を監督に特化させることを志向するモデル、(B)取締役会の意思決定機能を重視しつつ取締役会内外の監督機能の強化を志向するモデルの二つに大別される。
- いずれのモデルにおいても、取締役会が経営の基本方針を定めることと、監督機能を強化することにより、経営陣による適切なリスクテイクや社内の経営改革の後押しをすることを通じて、企業価値の向上につなげる強い意識を持つことが期待される。
- モニタリング機能を重視した(A)のガバナンス体制では、以下の点において有益である。
- 経営者の暴走や腐敗を防ぐことを前提としつつ、権限委譲を通じて広範な裁量を執行側に与えることで、経営者の権限と責任がより明確化され、健全なリスクテイクが促される点
- 取締役会による監督がパフォーマンスの評価を中心に選解任や報酬を通じて行われることとなるため、評価を高めるよう動機付けられた経営者のリスクテイクが促される点
- 会社内部の共同体の組織論理が優先され、組織の維持や売上高の拡大を重視する傾向のあった会社が、利益率の向上や経営資源の効率的配分を重視する方向に経営を変えようとする際に、外部者による客観性のある評価を通じて会社内部の論理が相対化される点
- 取締役会の意思決定機能を重視する(B)のガバナンス体制については、個別の業務執行の決定に取締役会が関与するため、特に社外取締役の比率・数を高めていく場合には、意思決定におけるスピードを損なわないための運営上の工夫が必要となる。
- どのようなガバナンス体制を選択するか、ガバナンスをどのように経営に活かすかは競争戦略の軸の一つであり、企業が主体的に選択すべきものであるが、企業によってはモニタリング機能に重点を置いたガバナンス体制への移行を検討することは有益である。
- いずれのガバナンス体制を取るのか、それに適した機関設計はどれかについて、会社が自覚的に選択し、その理由について株主等のステークホルダーに説明できるようにすることが望ましい。
- 監査等委員会設置会社へ移行する際の検討事項
社外取締役を増やそうとする企業などが監査等委員会設置会社に移行する流れが強まっていることを踏まえ、監査等委員会設置会社への移行を実効的なものとする上で重要な検討事項を整理した。- 執行のスピードとリスクテイクの必要性や、社外取締役の増加により取締役会に求められるものが変容することも踏まえ、自社の取締役会の役割・機能の見直しがなされることが重要。個別具体的な業務執行事項の決定を執行側に大幅に委任し、取締役会を監督に特化させることが十分に検討されるべき。
- 監査等委員会の意見陳述権と任意の指名委員会・報酬委員会の関係については、不必要な競合が生じないよう、監査等委員会が任意の指名委員会・報酬委員会の決定手続の適切性を中心に確認したうえで、各委員会の判断を踏まえて監査等委員会としての意見を形成することが考えられる。
- 監査の実効性を高めるべく、内部統制システムを利用した監査を主体としたうえで、監査等委員会と内部監査部門の連携強化や、内部監査部門の強化を図ることが重要(監査役設置会社、指名委員会等設置会社においても有効な取組)。
- 社長・CEOの解任・不再任をめぐる議論の契機となる基準等
- 社長・CEOのあるべき像や評価基準を明確にした上で、どのような場合に発案して議論するべきか、考え方を整理しておくことは、社長・CEOの解任・不再任の議論を実効性あるものとすることに資する。このための方策として、取締役会または指名委員会において、社長・CEOの解任・不再任の要否について議論を始める契機となる基準(定量基準を定める場合もある)を、平時から設けておくことを検討することが有益である。
- 後継者計画・後継者指名のプロセスや指名委員会が設置されている場合にはこれを監督する指名委員会の関与などについての基本方針を情報発信し透明性を確保することは有益であるが、デリケートな事項であるため、個別事項の開示は外部に開示しても支障がない範囲で行うことが適切である。
- 会社の抱える課題を踏まえた取締役の選任
- 会社の抱える課題に応じて、取締役会に必要とされる知識・経験・能力を持った者を、適正規模を考慮しながら選任することが有益である。
- 特に、資本市場との間で相互理解を高めることや、経営資源の効率的配分を重視する方向に経営を変えていくことは多くの日本企業にとって重要な課題である。このため、CEO・CFOの資本市場への理解度を深めることや、経営トップや社外取締役が投資家との対話に応じることに加え、資本市場を意識した経営に関する知識・経験・能力を備えた者を社外取締役として選任することも、選択肢の一つになり得る。
- 取締役会が経営陣による戦略の策定・遂行を監督する仕組みの強化等を目的に、「投資家株主の関係者」を取締役として選任する事例がある。このような場合には、利益相反、情報管理、独立性・社外性、開示などに留意する必要がある。
- 「監督」の意義
- 社外取締役の資質・評価の在り方
- 社外取締役の資質
- 社長・CEOの選解任に責任を持って関与し、必要に応じてリードすることができる人物が社外取締役に含まれていることが重要である。
- 社外取締役には、取締役会を通じて監督するとともに、社内にはない幅広い視点や洞察を持ち込むことで取締役会の議論に付加価値をつけるため、能動的に情報を取りに行くほか、研修等を通じた自己研鑽の努力が期待される。
- 企業は個々の社外取締役に適合した研修機会の提供・斡旋や費用の支援を行うべきである。
- 指名委員会・報酬委員会の構成・委員長
- 任意の指名委員会・報酬委員会について、構成員の過半数を社外取締役とすること及び委員長を社外取締役とすることを検討すべきである。
- 社外取締役の評価
- 社外取締役の評価は、社外取締役である議長や指名委員長、筆頭独立社外取締役などが主導し、社外取締役による自己評価や相互評価等の取組を行うことが考えられる。
- 相互評価の聴取等(最終的な評価や判断を行うわけではない)のためにインタビューを行う場合、社外取締役である議長、指名委員長や筆頭独立社外取締役等や、第三者機関が実施することが望ましい。多面的に捉えるため、相互評価において社長・CEOを含む執行側の取締役の声を聞くことも考えられる。
- 情報発信に当たっては、評価の詳細の公表は適さず、評価をした事実やプロセスを公表することが考えられる。
- ボードサクセッション
- 取締役会が監督機能を自律的かつ継続的に発揮できる状態を作り出す取組(ボードサクセッション)について議論することが考えられる。
- ボードサクセッションに関する検討を意味あるものとするために、取締役会と指名委員会の連携、指名委員会が一部の役割を担う場合にはその開催頻度の増加、関係者(議長、指名委員長、社長・CEO、事務局等)の間の信頼関係の構築が重要となる。
- 社外取締役の資質
- 経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備
- 執行側の機能強化の重要性
- 社長・CEOは、企業経営の舵取りを行い、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を果たす上で中心的な役割を担う。
- 大胆な経営改革は、トップがリーダーシップを発揮して行うほかなく、「トップの経営力」が成否の鍵を握る。
- リスクテイクができ、しがらみにとらわれない経営判断ができる社長・CEOを選任するためには、それを実現する指名の仕組みが機能することが前提となる。
- このような資質を備えた社長・CEOが、リーダーシップを発揮して経営改革を推進するための社内の仕組みを作り、「攻めのガバナンス」を実現するには、例えば、下記のような取組を行うことが有益。
- 社長・CEOを中心とするトップマネジメントチームを、社長・CEO自身が組成し、責任・権限を明確にした上で、権限委譲を進める
- リーダーシップが必要な場面では、社長・CEO直属で経営戦略の策定・遂行を行う仕組みを作る
- 社長・CEOを数年間で順送りにせず、海外よりも高い就任年齢の若返りを図ることにより、社長・CEOが精力的に経営戦略を実現できる期間を確保する
- 社長・CEOをはじめとする経営陣へのインセンティブを強化する
- 次世代の社長・CEOを支える幹部候補の育成を行う
- 社長・CEO退任者の役割を明確化し、不当な影響力の行使を防ぐ
- トップマネジメントチームの組成と権限の委譲
- 業務執行のスピードを向上させ、より適切な経営判断が行えるようにするためには、社長・CEOを中心としたトップマネジメントチームにおいて各業務執行役員の責任・権限を明確にし、その内容に応じて権限委譲を進めることが有効である。その際、責任・権限を明確化する中で、機能毎の最高責任者(CXO)を設置することも有効である。
- トップマネジメントチームにおいても、イノベーション創出のため、ダイバーシティの確保は重要であり、ダイバーシティの面も含めた積極的な開示がなされることが望ましい。
- 経営戦略等の策定・実行における工夫
- 自社の企業価値を向上させるためには、上場企業の企業価値は資本市場において評価されるという基本に意識を向け、資本効率性の向上や新しい事業の開拓を目指す戦略が必要となる。その際には、取締役会と執行側の双方において以下について検討することも重要である。
- 内部留保の使途を巡る本質的な議論を行うこと。また、現預金の水準が経営戦略や事業運営上望ましいレベルにあるのかについて検討すること
- 経営戦略に関わる指標について、先入観を排除し、社外取締役の意見も踏まえて意識的に考えることこそが経営であるとの意識を持つこと
- 競争優位を生み出す研究開発や人的資本などの無形資産の投資・活用に向けた戦略を構築すること
- 事業ポートフォリオを不断に見直し、経営環境の変化に合わせてその最適化を図っていくこと
- 自社の企業価値を向上させるためには、上場企業の企業価値は資本市場において評価されるという基本に意識を向け、資本効率性の向上や新しい事業の開拓を目指す戦略が必要となる。その際には、取締役会と執行側の双方において以下について検討することも重要である。
- 経営・執行の機能強化のための委員会の活用
- 経営・執行の機能強化のための方法の一つとして、戦略やサステナビリティ等の特定のテーマを社長・CEOのコミットメントの下で全社的に検討・推進するための委員会を設けることも、選択肢として考えられる。
- こうした委員会は、現状では主に執行側の機能を強化する意図で設置されていることが多く、その場合には社内者中心に構成されることが想定される。また、執行側の機能を強化する意図で設置される場合においても、委員会が取締役会に直接報告する関係とすることは、委員会での検討結果を取締役会での議論に繋げる観点等から、有益である。
- 他方、企業が設置する委員会には、様々な文脈で取締役会の機能強化・機能補完を目的として設置されるものも存在し、用いられる場面や目的に応じて、構成メンバーをどうすべきかなどが異なると考えられる。
- 経営陣の報酬
- 経営戦略を踏まえて具体的な目標となる経営指標(KPI)を設定し、その実現のためにどのような報酬体系がよいのかという順番でストーリー性をもって検討することが重要。
- 非財務指標を用いる場合には、取締役会や報酬委員会において、経営戦略・経営計画を踏まえた議論を十分に行った上で、用いる指標や定量目標を明確に定め、当該指標を選択する理由等について、透明性の高い開示を行うことが望ましい。
- グローバル展開が進む企業であれば、業績目標へのコミットや株主目線での経営姿勢を明らかにするため、執行側のトップである社長・CEOについて、業績連動報酬の比率をグローバルにベンチマークする企業の水準まで高めることや、長期インセンティブ報酬の比率の目安をグローバル水準である40~50%程度とすることも考えられる。
- 幹部候補人材の育成・エンゲージメント向上
- 将来の幹部候補となる人材プールを作り、意識的に育成していくことが重要である。自社株報酬や持株会の活用は幹部候補に対する動機付けとして有益であり、人的資本投資の拡大にも資するものである。
- 執行側の機能強化の重要性
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金融庁 IOSCOによる最終報告書「COVID-19発生下における取引所及び市場仲介業者のオペレーショナル・レジリエンス並びに今後の混乱期に向けた教訓」の公表について
▼ICSCOメディアリリース
- 証券監督者国際機構(IOSCO)の代表理事会は、本日公表された報告書において、COVID19パンデミックが取引所及び市場仲介業者(併せて「規制業者」という)に及ぼした影響について説明するともに、これらの規制業者は概ねオペレーション上強靭であったと結論付けている。
- 本報告書では、規制業者は、移動や事業活動の制限、著しい市場のボラティリティや記録的な取引量が生じた期間など、パンデミックによって生じた前例のない困難の中において、顧客及び経済全体にそのサービスを提供し続けたことを強調している。
- また、パンデミックはアウトソーシングに関する一部の取決めを混乱させ、サイバーセキュリティのリスクを増大させた。さらに、既存、新規及び新興のテクノロジーの利用を加速させた。
- 本報告書においてIOSCOは、オペレーショナル・レジリエンスとは、規制業者が混乱期において、重大な業務を遂行する能力と定義しており、これは既にある国際的な定義と整合的である。既存のIOSCOによるオペレーショナル・レジリエンスに関する原則、勧告及びガイダンスは、規制業者及び規制当局がオペレーショナル・レジリエンスを検討する際の中核的な構造を提供しており、本報告書の調査結果は、上記枠組みがうまく機能したことを示唆している。
- しかし、パンデミックは、規制業者がオペレーショナル・レジリエンスを改善する方法に関する教訓を学ぶ機会も浮き彫りにした。そこで本報告書は、規制業者の将来のオペレーショナル・レジリエンスに関する取決めに資するために、以下のとおり、いくつかの観察事項を提示し、規制業者によるパンデミック中の対応から得られた教訓を特定している。
- オペレーショナル・レジリエンスは、技術的解決策のみならず、規制業者における手続、施設及び人員にも依存する。
- 特に(外部の)サービス提供者とオフショアサービスについて、潜在的なリスクとコントロールの変化を適切に評価するために、混乱の前後において依存関係と相互関連性を考慮する。
- 業務継続計画(BCP)の見直し、更新及びテストを行い、パンデミックの教訓がBCPに反映されていることを確保する。これには、危機の長期的性質、複数の場所への影響、リモート又はハイブリッド業務の影響及びオペレーショナル・レジリエンスへの影響を把握するための、規制当局等・規制業者・第三者のサービス提供者間のコミュニケーションチャネルの重要性などの教訓が含まれる。
- 効果的なガバナンス枠組みは、新たなあるいは予期されなかった状況におけるオペレーショナル・レジリエンスを促進し支援する。
- より自動化された、紙の文書及び手動プロセスへの依存が少ないコンプライアンス及び監視プロセスは、遠隔化された労働力により良く対応できる可能性がある。規制業者による遠隔化された労働力のモニタリング及び監視アレンジメントの見直しは、リモートまたはハイブリッド環境における継続的な有効性確保のために適切である可能性がある。
- 情報セキュリティリスク-分散化されたリモートワークは、サイバー攻撃を防止し、情報セキュリティを確保する重要性を高める可能性がある。
- IOSCOは、ウクライナ紛争が始まる前に、オペレーショナル・レジリエンスに関する市中協議報告書を公表した。最近の地政学的緊張、サプライチェーンの混乱及びエネルギー不足は、取引所と市場仲介業者のオペレーショナル・レジリエンスに困難をもたらしている。特に、金融市場及びコモディティ市場は不安定であり、サイバーリスクが増大している。上記状況は、今後さらに進展する可能性が高く、オペレーショナル・レジリエンスとこれに対する柔軟なアプローチが引き続き重要であることを浮き彫りにしている。本報告書で得られた観察事項及び教訓は、今後生じうる新たなシナリオにおいても有意義と考えられる。特に、(1)BCPの見直し、更新及びテスト、(2)情報セキュリティリスク、並びに(3)オペレーショナル・レジリエンスへの影響の理解を助けるために行う規制当局等・規制業者・第三者のサービス提供者間における良好なコミュニケーションチャネルの維持の重要性は有意義と考えられる。
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金融庁 金融活動作業部会(FATF)による「金融犯罪との闘いにおける提携:データ保護、テクノロジー、民間セクターの情報共有に関する報告書」の公表について
▼「金融犯罪との闘いにおける提携:データ保護、テクノロジー、民間セクターの情報共有に関する報告書」(原文)Executive Summary*グーグル翻訳結果
- マネーロンダリング(ML)、テロ資金供与(TF)、大量破壊兵器(PF)およびデータ保護とプライバシー(DPP)の拡散に対する資金調達に対抗することは重要な公益です。どちらも、以下を含む重要な目的を果たします。人権と基本的自由(プライバシーの権利など)を支持し、テロを含む犯罪活動から国民を保護する。これらの利益は対立したり、本質的に相互に排他的ではありません。マネーロンダリング防止、テロ対策資金調達、拡散防止資金調達のための効果的な体制(AML/CFT/CPF)は、公的部門と民間部門がAML/CFT/CPFとDPPの両方の目的を追求することを要求しています。
- このレポートは、個人データの共有の増加に関連するリスクが適切に考慮されるように、データ保護およびプライバシー規則に従って、責任を持ってそのようなイニシアチブを設計および実装するために、民間部門エンティティ間の情報交換の強化を検討している管轄区域を支援することを目的としています。適切なバランスを取るために、FATFはこの作業でデータ保護当局、学者、技術プロバイダー、および民間部門に相談しました
- AML/CFT/CPFシステムは、組織犯罪グループ、腐敗した役人、テロ組織、武器の増殖者、または麻薬や人身売買業者が金融システムにアクセスすることを奪おうとします。これらの努力にもかかわらず、犯罪組織はより洗練され、システムのギャップを利用するようになっています。独身者
- 金融機関は、トランザクションの部分的なビューしか持っておらず、多くの場合、大きくて複雑なパズルの1つの小さなピースを見ています。犯罪者は、管轄区域内または管轄区域間で複数の金融機関を使用して、違法な資金の流れを階層化することにより、この情報のギャップを悪用します。より正確で一貫性のある情報がなければ、個々の金融機関がこれらの活動を検出することはますます困難になります。金融機関は、協調分析を使用したり、データをまとめたり、責任ある方法で他の共有イニシアチブを開発したりすることで、マネーロンダリングやテロ資金供与のリスクをよりよく理解、評価、軽減するために、パズルのより明確な全体像を構築しようとしています。
- 重要なことに、これらの目的での個人データの収集と使用は、データ保護とプライバシーの懸念を引き起こす可能性があります。データの誤用、不必要な共有、または不足保護の範囲は、悪意のある活動に従事していない個人に悪影響を与える可能性があります。関連するデータとシステムは、該当するDPPルールに従って管理および設計する必要があります。法的枠組みが要求する場合、イニシアチブが必要であり、合理的であり、処理の目的(すなわち、ML/CFT/CPF)に比例していることが重要です。
- イニシアチブは、個人データの共有の増加に関連するリスクが適切に考慮されるように、責任を持って効果的に設計および実装する必要があります。一般に、これらのリスクは、金融犯罪と闘うことの公益よりも重要である必要があります。
- 重要なことに、これらの目的での個人データの収集と使用は、データ保護とプライバシーの懸念を引き起こす可能性があります。データの誤用、不必要な共有、または保護の欠如は、悪意のある活動に従事していない個人に悪影響を与える可能性があります。関連するデータとシステムは、該当するDPPルールに従って管理および設計する必要があります。法的枠組みが要求する場合、イニシアチブが必要であり、合理的であり、処理の目的(すなわち、ML/CFT/CPF)に比例していることが重要です。イニシアチブは、個人データの共有の増加に関連するリスクが適切に考慮されるように、責任を持って効果的に設計および実装する必要があります。一般に、これらのリスクは、金融犯罪と闘うことの公益よりも重要である必要があります。
- このレポートでは、FATFとそのグローバルネットワークのメンバーが、国内のDPPフレームワークの法的要件の範囲内で民間部門の情報共有を増やした経験を共有しています。これらの情報共有イニシアチブのそれぞれは、それらの固有の特性と関連するDPP要件に応じて、ケースバイケースで検討する必要があります。
- これらの経験は、AML/CFT/CPFの民間部門の情報共有手段が、主要なテストと要件を条件として、DPPの規則と義務に準拠して達成できることを示しています。テクノロジーは、ポリシーの目的のバランスを取り、プライバシーリスクを軽減する上で有効な役割を果たすことができますが、適切なガバナンスと法的枠組みがこれらのイニシアチブの成功の鍵となります。個人情報共有イニシアチブが試験的に実施されるか、進歩して成熟するにつれて、このタイプの共有がAML/CFT/CPFの有効性を高めることができるかどうか、いつ、どのように高めることができるかを評価するためのより定量的なデータがあります。FATFは、この作業が、民間部門の情報共有メカニズムに着手することを検討している国々が、情報共有イニシアチブの設計におけるDPPの義務にどのように取り組んでいるかを理解するのに役立つことを期待しています。
- これは拘束力のない報告です。民間部門の実体間の情報交換の強化を検討している法域への勧告は、FATFグローバルネットワークの法域全体で学んだ観察と教訓を反映しています。
- 公的部門は、例えば必要に応じて法律や監督手段を更新することにより、民間部門の情報共有イニシアチブにおいて積極的な促進の役割を果たすことを検討する必要があります。規制サンドボックスとパイロットプログラムを利用する。共有の恩恵を受ける領域、類型、またはデータ型を強調する。コラボレーションと調整を促進するための主要な機関/連絡先を特定する。ガイダンスまたはチェックリストを提供する。共有と監視のための安全なプラットフォームを構築する。データを調和させ、標準化するためのプロジェクトを開発します。
- 公共部門は、FATF勧告2に準拠して、また国際的に、たとえば定期的なフォーラムを開催することにより、DPPとAML/CFT当局間の定期的な対話を確保および促進する必要があります。共同戦略を考案する。共同ガイダンスの提供またはセクター全体の関与の実施。業界のイニシアチブを支援する。規制サンドボックスやテクノロジースプリントなどの共同イニシアチブを実施します。
- 民間部門は、目的に適したプライバシー強化技術の適用を検討する必要があります。データ準備に向けた措置を講じます。設計によるデータ保護を追求する。DPP当局との早期かつ継続的な関与を確立する。成功を測定するための指標と指標を開発する。情報共有に関連するリスク軽減を防止するための対策を採用する
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国民生活センター 【若者向け注意喚起シリーズ<No.12>】男性も増加!脱毛エステのトラブル
- 全国の消費生活センター等には脱毛エステについての相談が多く寄せられています。契約当事者の年代をみると、10~20歳代の割合が高く、性別では女性が多いものの2020年度からは男性からの相談も増加しています。
- 相談事例
- 【事例1】広告に掲載されていた施術を希望したが、高額なプランを勧められた
- 【事例2】体験後に強引に契約を迫られ、契約してしまった
- トラブル防止のポイント
- 「お試し施術」「月額○○○円」など低価格の広告をうのみにしない
- 低価格の広告を見て店舗に出向いたところ高額なコースを勧誘されたというケースが目立ちます。気軽さや安さを強調した広告だけで判断しないようにしましょう。
- 強引に契約を迫られてもきっぱりと断る
- 「割引は今日だけ」などとせかされるケースも見受けられます。金額やコース内容に不安がある場合は、安易に契約せずきっぱりと断りましょう。
- 契約は慎重に検討する
- 分割払い(個別クレジット)の場合は、手数料を含めた金額や分割払いの期間を必ず確認してください。また、長期間にわたる契約では、脱毛機器が肌に合ってなかったり、事情が変わって通えなくなったりと、解約せざるを得ない状況も想定されます。都度払いができる店やコースも検討しましょう。
- 契約にあたっては、施術内容や契約条件について契約書面等と突き合わせて理解できるまでしっかりと説明を受けましょう。
- クーリング・オフできる場合があります
- 特定商取引法の特定継続的役務提供に該当するエステティックサービスの契約であれば、特定商取引法に定める契約書面を受け取った日から数えて8日以内であれば書面またはメール等によりクーリング・オフ(無条件での契約解除)をすることができます。
- クーリング・オフ
- 少しでも不安に思ったら早めに消費生活センター等に相談する
- 消費者ホットライン「188(いやや!)」番最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。
- 「お試し施術」「月額○○○円」など低価格の広告をうのみにしない
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国民生活センター 「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?(No.1)-電子タバコや医薬品でも!!-
- SNSやインターネット上で「1回目90%OFF」「初回実質0円(送料のみ)」など通常価格より低価格で購入できることを広告する一方で、定期購入が条件となっている通信販売に関する相談(通信販売での「定期購入」に関する相談)が全国の消費生活センター等に引き続き多く寄せられています。
- これまでは、化粧品、健康食品等を中心に相談が寄せられていましたが、近年では、電子タバコや医薬品など、他の商品にも「定期購入」の販売方法が見られます。
- 本年6月1日に、改正特定商取引法が施行され、「詐欺的な定期購入商法」の規制が強化されましたが、消費者は注文前に契約内容をよく確認する必要があります。
- 化粧品、健康食品、飲料に関する相談の年度別相談件数:2016年度は14,909件、2017年度は19,264件、2018年度は23,026件、2019年度は50,569件、2020年度は56,094件、2021年度は52,446件です。
- 2021年度の化粧品、健康食品、飲料以外の商品に関する相談件数は5,815件です。2021年度の全ての商品に関する相談件数は58,261件です。2020年度以前と検索条件が異なるため、破線で区別している。2022年度の全ての商品に関する相談件数は5月31日までで8,629件である。
- 相談事例
- 【事例1】電子タバコを注文したら定期購入だった。2回目に大量の商品が届き、解約がうまくできない
- 【事例2】医薬品を注文したら定期購入だった。定期購入とは思わなかったと申し出たら、初回商品を通常価格で購入すれば解約に応じると言われた
- 【事例3】マウスウォッシュを購入したら5回の購入が条件の定期購入だった。低価格で購入するつもりが、高額な購入になってしまった
- 相談受付状況からみる特徴
- 「化粧品」、「健康食品」に関する相談でも商品の幅が広がっている
- 2021年度は、1位が「化粧品」、2位が「健康食品」となっています。「化粧品」「健康食品」の中でも、契約当事者の属性によって特徴があったり、商品の幅が広がっています。
- 「他の教養娯楽品」「医薬品」などの商品にも広がっている
- 2021年度は、3位が「他の教養娯楽品」、4位が「医薬品」となっています。化粧品、健康食品、飲料以外の商品にも「定期購入」の販売方法が広がっています。
- 「他の教養娯楽品」では、「電子タバコ」や「電子タバコのカートリッジ」に関する相談が多く寄せられています。
- 「化粧品」、「健康食品」に関する相談でも商品の幅が広がっている
- 消費者へのアドバイス(インターネット通販中心)
- 低価格を強調する広告の場合、注文する前に販売サイトや「最終確認画面」の表示をよく確認しましょう
- 必ず「最終確認画面」で、定期購入が条件となっていないか、2回目以降の分量や代金などの販売条件等を確認しましょう。
- 改正特定商取引法では、販売業者等は、販売サイトの「最終確認画面」において、顧客が「注文確定」の直前段階で、分量、販売価格・対価、支払の時期・方法、引渡・提供時期、申込期間(期限のある場合)、申込みの撤回、解除に関することなどの契約の申込みの内容を簡単に最終確認できるように表示することを義務付けています。
- また、販売業者等がこれらの契約の申込みの内容について、表示しなかったり、不実の表示や消費者を誤認させるような表示を行った場合、これにより誤認して申込みをした消費者は、申込みの意思表示を取り消すことができます。
- 低価格を強調する広告の場合、注文する前に販売サイトや「最終確認画面」の表示をよく確認しましょう
- 「最終確認画面」のチェックリスト
- 注文する前
- 定期購入が条件になっていませんか?
- (定期購入が条件になっている場合、)継続期間や購入回数が決められていませんか?
- 支払うことになる総額はいくらですか?
- 解約の際の連絡手段を確認しましたか?
- 「解約・返品できるか」「解約・返品できる場合の条件」(返品特約)、解約条件を確認しましたか?
- 利用規約の内容を確認しましたか?
- 「最終確認画面」をスクリーンショットで保存しましたか?
- 未成年者の場合は以下の点も確認してください。
- 販売サイトに「法定代理人の同意を得ている」のチェック欄があった際は、同意を得てチェックを入れていますか?
- 年齢や生年月日を成人であると偽らず、正確に入力して申込んでいますか?
- 注文する前
~NEW~
国民生活センター 乳児の首にひもが絡まった昼寝用マット(相談解決のためのテストからNo.167)
- 消費生活センター等の依頼に基づいて実施した商品テスト結果をご紹介します。
- 依頼内容
- 「子ども用マットについているひもが寝かせていた乳児の首に絡まった。商品に問題がないか調べてほしい。」という依頼を受けました。
- 調査
- 当該品は、乳幼児の昼寝用マットとして販売されている商品で、使用しないときは丸めて下側の2箇所に2本ずつ付いているひもにより収納できるものでした。
- 相談者は、生後5カ月の乳児を日中に寝かせる際に当該品を使用していました。ひもは危ないと感じていたため普段はマットの下に入れるようにしていましたが、ひもが首に巻き付いていた当日はひもをマットの下に入れていたかは不明とのことでした。また、寝かせる際にはひもが付いている位置とは逆側に頭を向けていましたが、気付いたときにはひもが付いている位置の方に頭が向いていたとのことでした。
- 当該品の同型品のほか、乳幼児の昼寝用マットとして販売されている商品の中で、収納のためのひもが付いている商品3銘柄のひもの長さを調査したところ、43~50cmでした。これらは4カ月児相当のダミー人形の首回り(23cm)よりも長く、いずれの銘柄のひもも乳幼児の首に巻き付く可能性があると考えられました。
- なお、当該品の同型品や参考品の表示内容を確認したところ、いずれの銘柄もひもに関する注意表示は見られませんでした。
- 消費者へのアドバイス
- ひもが付いたマットを使用する際には、ひもの長さによっては乳幼児の首に巻き付くおそれがありますので、首に巻き付かない長さにひもを束ねるなどの対策を忘れずにしましょう。
~NEW~
国民生活センター リターンが届かないクラウドファンディングのトラブル
- 内容
- クラウドファンディングサイトで、レーザー工具の製造会社に約10万円の支援をした。リターンとして送られるはずの製品が期日を2カ月過ぎても届かない。サイトの運営業者に問い合わせても、製造会社に連絡するように言われただけだった。(70歳代男性)
- ひとこと助言
- クラウドファンディングとは、プロジェクトを立ち上げた事業の実行者が、インターネットを通じて資金提供を呼び掛け、賛同する支援者から資金を調達する仕組みですが、支援者に対価(リターン)として商品などを提供する「購入型」で、商品が届かないなどの相談が寄せられています。
- 支援を行う前に、プロジェクトの説明やクラウドファンディングサイトの規約をよく読み、不明な点は実行者やサイトに確認しましょう。実行者の住所、名称、連絡先、リターンの提供時期なども確認しましょう。
- トラブルの際は、原則当事者同士で解決することになります。実行者にリターンの提供や返金を求めましょう。当事者で解決ができない場合は、サイトに協力を依頼しましょう。
- 困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。
~NEW~
厚生労働省 「障害者のテレワーク雇用に向けた企業向けガイダンス」を開催します~誰もが挑戦でき、活躍できる社会へ~
- 厚生労働省は、「令和4年度障害者のテレワーク雇用に向けた企業向けガイダンス」を下記の通り開催します。インターネットを通じて同時配信されるため、オンラインでの参加も可能です。
- テレワークは、障害者の多様な働き方のひとつであり、自宅でも働くことができる機会として大きな可能性があるとともに、企業の方にとっても全国から優秀な人材を確保することができるというメリットがあります。こうしたことを踏まえ、昨年度は支援機関や企業での事例の紹介等を行う全国フォーラムを開催しました。
- さらに今般、障害者をテレワークで雇用することに興味・関心を持たれている企業や、テレワークでの雇用を検討されている企業の方に対して、ガイダンスを開催します。当ガイダンスでは、障害者雇用におけるテレワークの具体的な導入に向けた手順、求人の出し方、雇用管理(合理的配慮の提供含む)のポイント、障害特性に応じた支援機器の活用等に関する説明を行います。
- なお、「障害者のテレワーク雇用に向けた企業向けコンサルティング」についても、あわせて実施しています。各企業の課題や取組状況、雇用する障害者の特性等に応じて、専門アドバイザーが課題解決策の提案等を行っていますので、より個別具体的な課題について相談したいとお考えの場合等には、ホームページより、お気軽にお問い合わせください。
~NEW~
厚生労働省 第91回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年7月21日)
▼資料1 直近の感染状況等の分析と評価
- 感染状況について
- 全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約565人となり、今週先週比は1.72と急速な増加が継続している。また、全国的にこれまでで最も高い感染レベルとなるなど、全ての都道府県や年代で増加している。
- 新規感染者数の増加に伴い、療養者数は増加し、病床使用率は、地域差が見られるものの総じて上昇傾向にある。大都市部を始め多くの地域において3割を超え、一部で5割を超える地域も見られる。また、重症者数や死亡者数は、低水準にあるものの増加傾向にある。
- 実効再生産数:全国的には、直近(7/3)で1.23と1を上回る水準となっており、首都圏、関西圏ともに1.25となっている。
- 北海道新規感染者数は約229人(札幌市約280人)、今週先週比は1.90。30代以下が中心。病床使用率は約1割。
- 北関東茨城、栃木、群馬では新規感染者数は約269人、321人、384人、今週先週比は2.10、2.23、2.07。茨城、栃木では30代以下が中心、群馬では20代以下が中心。病床使用率について、茨城、群馬では3割強、栃木では2割強。
- 首都圏(1都3県)東京の新規感染者数は約830人、今週先週比は1.64。30代以下が中心。病床使用率は4割弱、重症病床使用率は4割強。埼玉、千葉、神奈川の新規感染者数は約517人、504人、639人、今週先週比は1.90、1.79、1.93。病床使用率について、埼玉では4割弱、千葉では4割強、神奈川では5割弱。
- 中京・東海愛知の新規感染者数は約617人、今週先週比は1.80。20代以下が中心。病床使用率は約3割。岐阜、静岡、三重の新規感染者数は約432人、446人、399人、今週先週比は1.69、1.80、1.58。病床使用率について、岐阜では3割弱、静岡では4割強、三重では4割弱。
- 関西圏大阪の新規感染者数は約845人、今週先週比は1.74。30代以下が中心。病床使用率は4割弱、重症病床使用率は約2割。滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の新規感染者数は約500人、554人、601人、531人、458人、今週先週比は1.88、1.70、1.89、1.81、1.34。病床使用率について、京都では3割強、和歌山では6割弱、滋賀では5割強、兵庫では4割強、奈良では3割強。
- 九州福岡の新規感染者数は約814人、今週先週比は1.77。20代以下が中心。病床使用率は4割強。佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の新規感染者数は約869人、469人、965人、683人、613人、738人、今週先週比が1.28、1.46、1.37、1.50、1.40、1.61。病床使用率について、佐賀では4割弱、長崎では約4割、熊本では6割強、大分では約4割、宮崎では約3割、鹿児島では4割強。
- 沖縄新規感染者数は約1,656人と全国で最も高く、今週先週比は1.37。30代以下が中心。病床使用率は7割強、重症病床使用率は3割弱。
- 上記以外秋田、福島、新潟、鳥取、島根、山口、香川の今週先週比は2.34、2.00、2.08、1.36、1.10、2.10、2.14。鳥取、島根の新規感染者数は約511人、911人。病床使用率について、青森では4割強、福島では3割強、島根では5割強。
- 今後の見通しと必要な対策
- 感染状況について
- 新規感染者数について、全国的にこれまでで最も高い感染レベルとなっており、前回の感染拡大を大きく超える地域が増えている。
- また、増加幅に差が見られるものの、全ての都道府県で、急速な感染拡大が継続している。沖縄県は他の地域よりも高い感染レベルが継続し、かつ、これまでで最も高い水準となり、病床使用率からも厳しい状況にある。
- 全国の年代別の新規感染者数は、全ての年代で増加し、60代以上での増加幅も拡大している。これまでも新規感染者の急増から遅れて、重症者・死亡者が増加する傾向にあり、高齢者の感染者数の増加とともにこれらの増加が懸念される。
- 今後の感染状況について、発症日のエピカーブや大都市における短期的な予測では、多くの地域で新規感染者数の増加が続くことが見込まれ、また全国的にも今後過去最高を更新していくことも予測されるため、医療提供体制への影響も含め最大限の警戒感をもって注視していく必要がある。
- 感染者増加が継続する要因としては、(1)ワクチンの3回目接種と感染により獲得された免疫は徐々に減衰していること、(2)今後、夏休みの影響もあり、接触の増加等が予想されること、(3)オミクロン株のBA.5系統への置き換わりが進んでいること等によると考えられる。
- 新規感染者の感染場所について、自宅及び学校等における割合がそれぞれ増加傾向にある(大都市部では積極的疫学調査が重点化されており、感染経路の十分な把握がされていないことに留意が必要)。
- 感染の増加要因と抑制要因について
- 感染状況には、以下のような感染の増加要因と抑制要因の変化が影響するものと考えられる。
- ワクチン接種等
- 3回目接種から一定の期間が経過することに伴い、重症化予防効果に比較し、感染予防効果は、今後減弱が進むことが予想され、留意が必要。また、これまでの感染により獲得した免疫についても、今後同様に減弱が進むことが予想される。
- 接触パターン
- 夜間滞留人口について、全体としては概ね横ばい傾向となっているが、大都市部において、東京、神奈川、大阪など足元で減少している地域もあるが、愛知では増加が継続するなど地域差が見られる。昨年末のピークに迫る地域や超える地域もあるため、今後の感染状況への影響に注意が必要。
- 流行株
- BA.2系統の流行から、現在BA.5系統が主流となり、置き換わったと推定される。特にBA.5系統は、感染者数がより増加しやすいことが示唆され、免疫逃避が懸念されるため、感染者数の増加要因となりえる。
- 気候要因
- 気温の上昇により屋内での活動が増える時期であるが、冷房を優先するため換気がされにくい場合もある。
- ワクチン接種等
- 感染状況には、以下のような感染の増加要因と抑制要因の変化が影響するものと考えられる。
- 医療提供体制について
- 全国的には、病床使用率は地域差が見られるものの、新規感染者数の増加に伴い、大都市を始め上昇傾向にある。特に、沖縄県では、病床使用率の上昇が継続し、7割を超え全国に比較して高い傾向にある。また、医療従事者の感染が増加していることによる医療提供体制への負荷が懸念される。
- 検査の陽性率が上昇し、症状がある人など必要な方に検査が適切に受けられているか懸念がある。
- 救急搬送困難事案については、非コロナ疑い事案、コロナ疑い事案ともに、地域差はあるが全国的に急増している。また、熱中症による救急搬送の増加にも十分な注意が必要である。
- 対策と基本的な考え方について
- 感染が急拡大している中で、日本社会が既に学んできた様々な知見をもとに、感染リスクを伴う接触機会を可能な限り減らすために、それぞれが感染しない/感染させない方法に取り組むことが必要。
- そのために、国、自治体は、日常的な感染対策の必要性を国民に対して改めて周知するとともに、感染防止に向けた国民の取組を支援するような対策を行う。また、医療提供体制の強化について、これまで以上に取り組む必要。
- ワクチン接種の更なる促進
- 4回目接種について、高齢者施設等における接種を促進。対象者にできる限り早く接種いただけるよう取組の推進が必要。また、医療従事者及び高齢者施設等の従事者への対象拡大の検討が求められる。
- 3回目接種を促進するとともに、接種率が低い地域に対して個別に接種促進を図ることが必要。
- 検査の活用
- 第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、国と自治体は検査ができる体制を確保し、検査の更なる活用が求められる。
- 【高齢者】高齢者施設等の従事者への頻回検査(施設従事者は週2~3回程度)の実施が必要。地域の実情に応じて、高齢者施設等の利用者への節目(例:帰省した親族との接触等が想定されるお盆等)での検査の推奨。
- 【子ども】地域の実情に応じて、クラスターが発生している場合には、保育所・幼稚園等の教職員・保育士への頻回検査の実施が必要。自治体や学校等の判断で、健康観察を徹底し、何らかの症状がある者等には検査を行い、部活動の大会や修学旅行などへの参加を可能としながら、集団感染を防止することが必要。
- 【若者等】大人数での会食や高齢者と接する場合(特にお盆・夏休みの帰省での接触)の事前検査をさらに推奨。都道府県が有症状者に抗原定性検査キットを送付するなど、有症状者が医療機関の受診前に抗原定性検査キット等で自ら検査する体制整備が必要。
- 効果的な換気の徹底
- 第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、エアコン使用により換気が不十分になる夏場において、効果的な換気方法の周知・推奨が必要(エアロゾルを考慮した気流の作り方、気流を阻害しないパーテーションの設置等)。
- 保健医療提供体制の確保
- 更なる感染拡大に備え、国の支援のもと、都道府県等は以下の体制の点検と強化が必要。
- 迅速・スムーズに検査でき安心して自宅療養できる体制の強化・治療薬を適切かつ早期に投与できる体制の構築・強化
- 病床の更なる確保に向けた確保病床の計画的な稼働準備等・病室単位でのゾーニングによる柔軟で効率的な病床の活用の推進
- 救急搬送困難事案の増加傾向への対応。コロナ患者以外の患者受入体制の確認とともに、熱中症予防の普及啓発、熱中症による救急搬送が増えていることを注意喚起。また、救急医療の適切な利用について国民へ呼びかけ
- 高齢者施設等における集中的実施計画に基づく検査等及び高齢者施設等における医療支援の更なる強化
- 保健所業務がひっ迫しないよう、入院調整本部による入院調整や業務の外部委託・一元化を更に推進
- 基本的な感染対策の再点検と徹底
- 不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの継続。3密や混雑、大声を出すような感染リスクの高い場面を避ける。飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用する。咽頭痛、咳、発熱などの症状がある者は外出を控える。接触機会を減らすために、職場ではテレワークの活用等の取組を再度推進する、など基本的感染対策の再点検と徹底が必要。また、イベントや会合などの主催者は地域の流行状況や感染リスクを十分に評価した上で開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスクを最小限にする対策の実施が必要。
- ワクチン接種の更なる促進
- 参考:オミクロン株とその亜系統の特徴に関する知見
- 感染性・伝播性
- オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。
- 感染の場・感染経路
- 国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様、飛沫が粘膜に付着することやエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。
- 重症度
- オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、限られたデータであること等を踏まえると、今後もさまざまな分析による検討が必要。前回の感染拡大における死亡者は、昨年夏の感染拡大と比べ、80歳以上の占める割合が高く、例えば、感染する前から高齢者施設に入所している利用者が感染し、基礎疾患の悪化等の影響で死亡するなど、新型コロナウイルス感染症が直接の死因でない事例も少なくないことが報告されている。高齢の感染者や基礎疾患を有する感染者の基礎疾患の増悪や、心不全や誤嚥性肺炎等の発症にも注意が必要。
- ウイルスの排出期間
- オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出は、時間の経過とともに減少する。有症状者では、発症日から10日目以降において、排出する可能性が低くなることが示されている。なお、無症状者では、診断日から8日目以降において排出していないことが示されている。
- ワクチン効果
- 初回免疫によるオミクロン株感染に対する感染予防効果や発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、3回目接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、3回目接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。
- オミクロン株の亜系統
- 世界におけるBA.4系統及びBA.5系統の占める割合が増加しており、これらの系統はBA.2系統と比較して感染者増加の優位性が示唆されている。世界的には、BA.4系統及びBA.5系統へ置き換わりつつある中で、陽性者数が増加傾向となっている。BA.4系統及びBA.5系統はBA.1系統やBA.2系統に比して既存免疫を逃避する傾向が示されているが、感染力に関する明確な知見は示されていない。なお、東京都のデータに基づき算出されたBA.5系統の実効再生産数は、BA.2と比較して約1.27倍とされた。また、民間検査機関の全国の検体では約1.4倍と推計された。WHOレポートでは、複数の国から集積した知見によると、BA.4系統及びBA.5系統に関して、既存のオミクロン株と比較した重症度の上昇は見られないとしている。一方で、国内の実験室内のデータからは、BA.5系統はBA.1及びBA.2系統よりも病原性が増加しているとする報告があるが、臨床的には現時点では確認されていない。また、BA.4及びBA.5系統中心に感染者数が増えている国では、入院者数・重症者数が増加していることに注意を要する。BA.4系統及びBA.5系統は全て国内及び検疫で検出されている。ゲノムサーベイランスによると、BA.5系統については検出割合が増加しており、置き換わりが進んでいる。ウイルスの特性について、引き続き、諸外国の状況や知見を収集・分析するとともに、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていくことが必要。
- 感染性・伝播性
- 感染状況について
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国土交通省 三大都市圏の平均混雑率はおおむね横ばい~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和3年度実績)~
- 令和3年度の三大都市圏における混雑率は、東京圏:108%、大阪圏:104%、名古屋圏110%となり、いずれの都市圏も前年度に比してほぼ横ばいの調査結果となりました。
- 本調査は、通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を把握するため、毎年度実施しているものです。
- 三大都市圏主要区間の平均混雑率(令和3年度実績)※カッコ内は昨年度調査の混雑率
- 東京圏108%(107%)
- 大阪圏14%(103%)
- 名古屋圏110%(104%)
- 混雑率:最混雑時間帯1時間の平均(主に令和3年10月~11月の1日又は複数日の乗車人員データを基に計算したもの)
~NEW~
国土交通省 津波防災地域づくりをパッケージで支援~防災・安全交付金等令和4年度当初予算で実施される津波対策~
▼添付資料
- 津波対策警戒区域の指定と堤防整備による総合的な津波対策の推進~北海道浜中町~
- 北海道厚岸郡浜中町は、日本海溝・千島海溝で想定すべき最大クラスの地震・津波の影響を受ける地域である。
- そこで、警戒避難体制を特に整備すべき区域として令和3年10月に津波災害警戒区域を指定するなど、津波防災地域づくりの取組を充実させてきた。
- 令和4年度から、防災・安全交付金を活用して海岸堤防のかさ上げ等に着手することで、ハード・ソフト一体となった総合的な防災・減災対策を更に推進する。
- 災害時における行政機能維持のため役場庁舎を高台移転し、防災機能を集約した新庁舎が令和3年1月に開庁した。
- 平成24年に公表された津波浸水予測を基に『はまなか津波防災マップ』を作成、また、『浜中町地域防災計画』を令和3年4月に更新。
- 切迫する巨大地震への意識啓発のため、北海道主催の講演会を後援。地元住民等に向けた『津波防災地域づくり講演会in浜中』を開催。
- 警戒避難体制を特に整備すべき区域として令和3年10月に津波災害警戒区域を指定した。
- ハードとソフトが連携した津波対策~静岡県・静岡市~
- 静岡県静岡市は、沿岸部に産業拠点や観光交流文化拠点等の多様な施設が集積している。一方、静岡県第4次地震被害想定では、最大クラスの地震・津波が発生した場合、沿岸部を中心に甚大な被害が想定されており、市民の安全と産業、文化、観光を守るための対策を推進していく必要がある。
- 静岡県では、津波到達時間が短く、広範囲に甚大な被害が想定されることから、ハード・ソフト対策を組み合わせ、各地域の特性に合わせた津波対策を「静岡方式」と称し、実施している。
- 地域住民等への津波避難マップの配布や掲示板の設置、防災アプリを活用した避難トレーニングなど津波災害に対する意識啓発を図っている。
- 静岡県では、地域防災計画において、3月11日を含む10日間を津波対策推進旬間と定め、津波避難訓練等を通じて、沿岸市町及び自主防災組織等の連携強化並びに住民の意識高揚を図っている。
- 静岡市では、平成29年3月に「津波防災地域づくりに関する法律」第10条に基づく「静岡市津波防災地域づくり推進計画」を策定。「安心・安全な暮らしと、活気賑わいが両立するまちづくり」を基本方針に津波防災地域づくりを推進。
- 「津波対策緊急事業」の事業採択による津波対策の推進~愛知県田原市~
- 愛知県田原市田原海岸では、近い将来発生が予測される南海トラフ地震による津波に対して、津波災害から市民の生命・財産及び産業基盤を守り、安心して暮らすことができる魅力あるまちづくりを目指し、学識経験者、住民代表などから構成する『田原市津波防災地域づくり推進協議会』を設置し『田原市津波防災地域づくり推進計画』を策定・改訂している。また、令和元年7月の津波災害警戒区域の指定等、順次、必要な対策を講じている。
- 令和4年度から個別補助事業「津波対策緊急事業」により、海岸保全施設の整備等のハード対策をより推進し、早期に津波被害に対する地域の安全性の向上を図り、ハード・ソフト両面で津波対策の充実を図る。
- 田原市は最大クラス(L2)・計画規模(L1)いずれの場合でも津波の浸水想定区域となる箇所が存在。
- 地域住民と一体となり、津波対策を協議するため、平成27年8月、田原市津波防災地域づくり推進協議会を設立し、平成28年5月に推進計画を策定した。
- 令和元年7月、津波災害警戒区域を指定した他、推進計画の改訂を令和3年6月に行う等、積極的に宇波対策の取組に努めている。
- 大規模災害から市民の命を守るための取組~高知県・安芸市~
- 高知県安芸市では、南海トラフ巨大地震による震度6弱から7の地震動が想定され、地震発生後の津波により市内全域の沿岸地域において大規模な被害の発生が想定されている。
- 南海トラフ巨大地震発生時に想定される最大クラス(L2)の津波でも確実に人命を守ることを目指して、災害に強い地域づくりを構築するため、津波避難タワー及び避難場所などのハード整備を実施。
- 最大クラス(L2)の津波が発生した際に住民の命を守るため、津波避難タワー、津波避難場所の整備を進めている。
- 津波浸水想定区域を反映させたハザードマップを作成し、住民への周知を図っている。
- 地域の特性を踏まえた「静岡方式」による津波対策の推進~静岡県・牧之原市、吉田町~
- 静岡県では、第4次地震被害想定において推計された被害をできる限り減らすため、2013年に静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013を策定し、人命を守ることを最も重視し、地震・津波対策をハード・ソフトの両面から可能な限り組み合わせて充実・強化することにより、想定される被害をできる限り軽減する「減災」を目指す。
- 静岡県では、津波到達時間が短く、広範囲に甚大な被害が想定されることから、ハード・ソフト対策を組み合わせ、各地域の特性に合わせた津波対策を「静岡方式」と称し、実施している。
- 静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013では、人命を守ることを最も重視し、「想定される犠牲者を2022年度までの10年間で8割減少させる」ことを減災目標として掲げている。
- 減災を達成するために、189アクションを盛り込み、アクションごとに具体的な取組及び達成すべき数値目標、達成時期を定めている。