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危機管理トピックス

マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題(金融庁)/警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点(警察庁)

2023.07.10
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更新日:2023年7月10日 新着17記事

危機管理トピックス

【新着トピックス】

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

警察庁
  • 令和5年5月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点について(通達)
法務省
  • 7月は「再犯防止啓発月間」です
  • 第73回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~
厚生労働省
  • 第4回飲酒ガイドライン作成検討会 資料
  • 第123回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年7月7日)
経済産業省
  • 第二期スポーツ未来開拓会議中間報告を公表します
  • IAEAが東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書を公表しました
  • 「アートと経済社会について考える研究会報告書」を公表します
総務省
  • 令和5年「情報通信に関する現状報告」(令和5年版情報通信白書)の公表
  • 我が国における青少年のインターネット利用に係るペアレンタルコントロールの効果的な啓発に関する調査結果の公表
国土交通省
  • 第26回国土審議会 配布資料
  • 海外インフラプロジェクト相談ホットラインの運用を開始~ 海外インフラプロジェクトにおけるトラブルへの対応を強化します~
  • ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会

~NEW~
金融庁 「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題」(2023年6月)の公表について
▼「マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題」(2023年6月)
  • 我が国のマネロン事犯やその主体等の概要
    • 我が国においては、暴力団によるマネロンがとりわけ大きな脅威として存在しており、2021年中のマネロン事犯1の検挙件数の10.1%を暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者が占めている。暴力団は、時代の変化に応じて様々な資金獲得犯罪を行っており、覚醒剤の密売、賭博、恐喝、強盗、窃盗等に加え、特殊詐欺やコロナに関連した給付金等の不正受給事犯等の資金獲得犯罪への関与も確認されている。暴力団は、不正に獲得した資金を押収される事態を回避するため、マネロンを行い、個別の資金獲得活動とその成果である資金との関係を不透明化している実態がある。このほか、近年、暴力団のような明確な組織構造は有しないものの、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行っている準暴力団と呼ばれる集団が、特殊詐欺、組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活性化させており、暴力団と準暴力団が結託するなどして規制を逃れつつ、巧みに資金を獲得している状況がみられる。
    • 特殊詐欺については、近年我が国での認知件数と被害額が高い水準にある。特殊詐欺の犯行グループは、首謀者を中心に、だまし役、詐取金引出役、犯行ツール調達役等の役割を分担した上で、預貯金口座、携帯電話、電話転送サービス等の各種ツールを巧妙に悪用し、組織的に詐欺を敢行するとともに、詐取金の振込先として架空・他人名義の口座を利用するなどし、マネロンを敢行している。また、外国の犯行拠点の存在が表面化するなどしている。
    • 来日外国人が関与する犯罪は、メンバーの出身国に存在する別の犯罪グループの指示を受けて国内で犯罪を敢行するなど、その人的ネットワークや犯行態様等が一国内のみで完結せず、国境を越えて役割が分担されることがあり、巧妙化・潜在化する傾向を有する。2021年中のマネロン事犯の検挙件数のうち、来日外国人によるものは91件で、全体の14.4%を占めた。2019年から2021年までの間の組織的犯罪処罰法に係るマネロン事犯の国籍等別の検挙件数では、中国及びベトナムが多く、特に中国が全体の半数近くを占めている。
    • また、帰国した外国人の口座を、解約手続等の措置を執ることなく利用し、詐欺や窃盗等の犯罪収益が入金される事例が後を絶たず、来日外国人の口座譲渡によりマネロンの敢行が助長されていることに注意を払う必要がある。国籍等別に犯罪収益移転防止法違反の検挙件数をみると、日本が最も多いものの、我が国の在留外国人数に比して、外国人が関与した口座譲渡に係る犯罪の検挙が目立っていることに留意する必要がある。
  • マネロン対策等において注意すべき犯罪類型やリスク
    1. 特殊詐欺をはじめとした詐欺等の犯罪
      • 近年、我が国においては、特殊詐欺が多発している。特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗を含む。)の総称である。以前は、親族、警察官、弁護士等を装い、親族が起こした事件・事故に対する示談金等を名目に金銭等をだまし取る(脅し取る)オレオレ詐欺と称される手口が主流だったが、現在では、
        • 税金還付等に必要な手続きを装って被害者にATMを自ら操作させ、口座間送金により財産上の不法な利益を得る、「還付金詐欺」
        • 未払いの料金があるなど架空の事実を口実として金銭等を脅し取る、「架空料金請求詐欺」
        • 親族・警察官・銀行協会職員等を名乗り、キャッシュカード交換手続きを装って通帳などをだまし取る、「預貯金詐欺」
        • 警察官や銀行協会職員等になりすました犯人が自宅を訪れ、被害者が目を離している隙に、キャッシュカードをすり替えるなどして盗み取る、「キャッシュカード詐欺盗」
          などの手口が増加しており、詐欺の手法も多種多様になっている。
      • 特殊詐欺等の犯罪者グループ等は、いわゆる「架け子」、「受け子」、「出し子」、「現金回収・運搬役」、「リクルーター」等のように、役割分担を細分化させており、そのネットワークを海外にまで広げているケースもみられる。
      • さらに、犯罪者グループ等に対し、自己名義の口座や偽造した本人確認書類を悪用するなどして開設した架空・他人名義の口座を遊興費や生活費欲しさから安易に譲り渡す者や帰国前の在留外国人が自分の口座を不正に譲渡する等の事例が確認されているほか、最近では、詐取した資金を預貯金口座から不正に譲渡された他人の暗号資産アカウントに送金する事例も確認されている。このような不正な預貯金口座や暗号資産アカウントを利用して、詐欺で得た被害金を次々と移転させ、マネロンを敢行している。
      • 一時減少していた特殊詐欺の認知件数・被害額は、コロナの流行が落ち着きをみせたこと等もあり、2022年には再び増加しており、2022年の被害額は、370.8億円にのぼっている。特殊詐欺被害者の大部分は65歳以上の高齢者となっているが、架空請求詐欺などにおいては、30~40代の被害も増加している。
    2. デジタル技術を活用した取引時確認手法(e-KYC)におけるリスク
      • e-KYC(electronic Know Your Customer)とは、オンラインで完結する本人特定事項の確認方法の通称であり、2018年11月の犯罪収益移転防止法施行規則の改正・施行により、同規則第6条第1項第1号ホからトなどの方式が新たに認められた。近年、金融機関では、顧客から写真付き本人確認書類の画像と本人の容貌の画像の送信を受ける方法(同号ホ)が多く用いられている。なお、金融機関が、e-KYCを実施するに当たっては、申し込みのあった顧客について本人であることの確認や本人確認書類の精査等の本人確認手続の一部を、1件当たり数百円などの単価で他の企業に委託していることが一般的である。
      • しかしながら、金融機関が、当該e-KYC業務の委託先に対して、適切な研修や指導を実施しなかった場合や、本人確認手続の一部を受託した事業者が適切な確認作業を実施していない場合、委託先におけるe-KYC業務が適切に実施されず、適切な取引時確認がなされないリスクがある。
      • また実際に、金融機関の顧客が、e-KYCにおいて偽造した運転免許証等を用いて口座を開設しようとした事例も発生している。偽造した本人確認書類等で作成された口座は、特殊詐欺の犯行グループ等により、マネロン等に悪用されるおそれがある。
      • このような点を踏まえ、金融機関においては、e-KYCを他の企業に委託している場合には、e-KYCが法令等に基づき適切に実施されることを確保するため、委託先の定期的なモニタリングや最近の検証実績の確認、e-KYCの悪用事例を踏まえた検証態勢の高度化の検討等の措置を講じることが重要である。
      • また、e-KYCを利用するに当たっては、偽造本人確認書類を検知できるよう適切な検証機能を整備し、不正な口座開設申請を検知した場合には、警察庁への通報や疑わしい取引の届出を行うことが必要である。利用するe-KYCの手法についても、利用者の真正性がより確認しやすいマイナンバーカード等に搭載されている公的個人認証機能による本人確認方法(犯罪収益移転防止法施行規則第6条第1項第1号ワ)等を検討することも考えられる。
    3. 暗号資産を使ったマネロン・テロ資金供与・拡散金融
      • 我が国においては、2016年に資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」という。)及び犯罪収益移転防止法が改正され、暗号資産に関する法整備が行われた(2017年4月施行)。2021年4月時点で、暗号資産に関する法規制を導入(あるいは法規制で暗号資産の取扱いを禁止)しているのは58の国・地域にとどまるとされている。海外の事業者の中には、日本の居住者に対して、無登録で暗号資産の交換等を業として行う者も見受けられ、こうした事業者に対し、金融庁として警告書を発出している。
      • このほか、暗号資産については、特に高額の暗号資産の現金化に際しては金融機関の関与が欠かせない実態はあるものの、一般的には、法定通貨による取引のように、金融機関による仲介がなくとも取引が完了し得ることから、テロリストやテロ支援者、経済制裁対象者等が、暗号資産を経済制裁の回避手段として悪用している可能性がある。また、こうした仲介者を介さない暗号資産の移転については、その規模の実態把握が困難であることも指摘されている。海外では、ツイッターで暗号資産ウォレットアドレスを周知することで、ISIL(Islamic State of Iraq and the Levant)に対する暗号資産の移転を匿名で呼びかける事例や、シリアへの渡航を企図するISIL支持者に対し渡航資金を援助する方法を提供した事例も確認されている。
      • なお、暗号資産に係る不公正取引については、各国で法規制当局による執行事例が増えるとともに、各国マーケットにおける課題も確認されている。
      • マネロン対策等の国際基準の策定を担うFATFでは、2019年に暗号資産に関するFATF基準を最終化した後、2021年に基準実施の目線となるガイダンスを改訂し、現在、(1)FATF基準の各法域での実施状況とその促進策、(2)暗号資産に関する通知義務(いわゆるトラベルルール。以下、「トラベルルール」という。)の実施状況と効果的な実施に向けた課題、(3)新たなリスクへの対応(分散型金融(Decentralized Finance:以下、「DeFi」という。)、P2P(Peer to Peer)取引を含むアンホステッド・ウォレット、非代替性トークン(Non-Fungible Token:以下、「NFT」という。)等)、(4)拡大するリスクへの対応(北朝鮮による暗号資産の窃取・悪用、テロリストによる暗号資産の利用等)などのテーマについて議論を行っている。
      • 我が国が議長国を務める2023年5月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明では、同年4月に当庁ホストにより開催されたFATFの暗号資産コンタクト・グループ(Virtual Assets Contact Group。以下、「VACG」という。)東京会合での議論等も経て、トラベルルールを含むFATF基準のグローバルな実施を加速するための作業、並びに、DeFi及びP2P取引も含む新たなリスクに関する作業についても支持が表明されている。また、2023年2月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議の成果文書においても、トラベルルールを含む、FATF基準のグローバルな実施の必要性が指摘されている。
      • コラム 【暗号資産関連のマネロン等リスクの傾向】
        • 2023年6月にFATFは「暗号資産:FATF基準の実施状況についての報告書」(原題「Virtual Assets: Targeted Update on Implementation of the FATF Standards」)16を公表した。今年で、2019年のFATF基準の最終化から4年経過し、一部の法域は暗号資産(Virtual Asset:以下、「VA」という。)及び暗号資産交換業者(Virtual Asset Service Provider:以下、「VASP」という。)に関する規制を導入しているものの、世界的な実施状況は比較的芳しくなく、基準の履行は他のほとんどの金融セクターに遅れをとっている、と危機感が示されている。報告書での指摘事項は下記のとおり。
        • 各法域はFATF基準の基本的な充足に苦慮しており、2023年3月に実施した調査に回答した151の法域のうち、3分の1以上がリスク評価を実施しておらず、また、相互審査報告書及びフォローアップ報告書の結果によれば、審査対象となった法域のうち73%の法域が適切なリスク評価を実施していない。
        • 調査回答法域のほぼ3分の1は、VASPセクターを規制するかどうか、またどのように規制するかをまだ決めていない。
        • 回答法域の60%がVA及び暗号資産交換業を許可すると決定している一方、11%がVASPを禁止することにしたと報告しているものの、相互審査報告書とフォローアップ報告書の結果によると、VASPを効果的に禁止することは困難であり、このアプローチを採用している法域のうち1つだけが、FATF基準の要求事項をほぼ履行している。
        • トラベルルールについては、調査の回答法域の半数以上がトラベルルールの実施に向けた措置を講じていないなど、実施は依然不十分である。
        • トラベルルール・ソリューションツールは相応の数が存在し、一部の法域のVASPで利用が開始されているものの、FATF基準のトラベルルール要件を全て満たしたツールはほとんどなく、ツール間の相互互換性にも課題が残る。
        • 北朝鮮によるランサムウェア攻撃や制裁逃れを含む不正な暗号資産関連活動が大量破壊兵器拡散の資金調達にもたらす脅威について、深刻な懸念が示されている。ISIL、アルカイダ、過激派右翼グループによる資金調達など、暗号資産は、テロ資金供与リスクの増大ももたらしている。
        • DeFiやP2P取引を含むアンホステッド・ウォレットについては、VAエコシステム全体の一部分ではあるが、制裁対象者による乱用を含め、マネロン等のリスクをもたらす。これらのリスクを低減するうえでの課題として、DeFiアレンジメントにおけるVASPの義務に責任を負う具体的な自然人又は法人の特定、P2P取引を含むアンホステッド・ウォレット取引に関連する不正金融リスクの評価、データギャップの解消などが挙げられている。VAエコシステムが発展し、VASPがAML/CFTのための統制を導入していくにつれ、DeFi及びP2P取引がもたらすリスクは増大する可能性がある。これは、暗号資産が広く受容され、法定通貨に換金することなしに支払いに使われることがより一般的になることで、より課題となる。
        • 今後の取組として、FATFは、勧告15の実施を改善するため、2024年6月までのロードマップを2023年2月に採択し、また、勧告15への準拠を促すため、引き続きアウトリーチを実施し、キャパシティの乏しい法域に支援を提供するとした。加えて、FATFは、DeFi及びP2P取引を含むアンホステッド・ウォレットに関する知見、経験及び課題を引き続き共有し、FATFの更なる作業が必要となり得る進展がないか、この分野における市場動向を監視してゆく。
        • 上記の作業も踏まえ、FATFは、各法域における勧告実施の進捗と、DeFiやP2P取引などの新たなリスクへの対応に関して、2024年に報告書を作成予定である。
      • コラム【ランサムウェアによる不正資金調達への対策に関するFATF報告書】
        • 2023年3月、FATFは、犯罪者がランサムウェア攻撃を実行するための手法と身代金の資金洗浄手法について分析した報告書を公表した。
        • 同報告書によると、ランサムウェア攻撃に関連する資金移転は、近年世界規模で急激に拡大している。業界による推計では、ランサムウェア攻撃による2020年と2021年の身代金支払額は2019年と比較して最大4倍増となっている。ランサムウェア攻撃の支払い及び後続する資金洗浄のほとんどで暗号資産が利用されており、近年では、匿名性を強化する技術(匿名性を高めた暗号資産や、ミキサー等)の利用も増えている。
        • 同報告書にて、FATFは、各法域での好事例とともに、各法域に対し、暗号資産交換業者に関するものを含むFATF基準の実施、及び検知の向上、捜査及び財産回復の取組の推進、サイバーセキュリティ当局やデータ保護当局なども含めた、幅広い当局間の協力、民間セクターとの連携の支援、国際協力の強化を推奨している。
        • FATFはまた、ランサムウェアに関連する疑わしい取引の検知を向上させることを目的として、各法域から収集した経験・データを基に、下記のとおり、潜在的リスク指標を取りまとめ、同報告書の付属文書として公表している。
          • <ランサムウェアによる不正資金調達を検知するための潜在的リスク指標>
            • 銀行及びその他の金融機関・送金機関による、ランサムウェア被害者の支払いの特定
              • ランサムウェア復旧を扱うサイバーセキュリティコンサルティング企業又はインシデント対応企業への仕向電信送金
              • ランサムウェア復旧を扱う保険会社からの通常と異なる被仕向電信送金
              • 顧客によるランサムウェア攻撃又は支払いに関する自己報告
              • 顧客へのランサムウェア攻撃に関するオープンソース情報
              • 同一の銀行口座からVASPの複数の口座への大量の取引
              • 支払明細に「身代金」などの語句やランサムウェアグループの名前が含まれる
              • リスクの高い国・地域にあるVASPに対する支払い
            • VASPによるランサムウェア被害者の支払いの特定
              • インシデント対応企業又は保険会社による、第三者の代理での暗号資産購入の依頼
              • 顧客が身代金支払いのために暗号資産を購入しているとVASPに申告する
              • 暗号資産取引の履歴のないユーザーによる標準的なビジネス慣行以外の送金
              • 顧客が口座の限度額を引き上げて第三者に送金する
              • 顧客が支払いにかかる時間について不安や焦りを感じているようである
              • 匿名性を強化した暗号通貨の購入あるいは関連する取引
              • リスクの高い国・地域にあるVASPに対する支払い
              • 新規顧客が暗号資産を購入し、口座の残高全額を単一のアドレスに送金する
            • VASPによる身代金の支払い受領・ランサムウェア犯罪口座の特定
              • 最初の大規模な暗号資産移転後に、顧客がデジタル通貨の取引をほとんど、あるいはまったく行っていない
              • ウォレットアドレスのブロックチェーン分析によりランサムウェアとのつながりが判明する
              • 暗号資産への資金の変換後、即時の引き出し
              • ランサムウェアに関係のあるウォレットへの暗号資産の送金
              • リスクの高い国・地域でのVASPの利用
              • ミキシングサービスへの暗号資産の送金
              • 暗号化されたネットワークの使用
              • 確認情報がコンピューター画面上のデータの写真である、あるいはファイル名に「WhatsApp image」などの文言が含まれる
              • 顧客のSyntaxが顧客のデモグラフィックと一致しない
              • 顧客情報により、顧客がProton MailやTutanotaなどのプライバシーの高い電子メールアカウントを所有していることが示される
              • 認証情報の不整合、又は偽の身元情報での口座作成の試み
              • 複数の口座が同一の連絡先とつながっている、アドレスが異なる名前で共有されている
              • 顧客がVPNを使用しているように思われる匿名性を強化した暗号通貨に関連する取引
    4. 資金決済(収納代行)におけるリスク
      • 資金移動業者はそのビジネスモデルや規模、取引形態が様々であり、2020年の資金決済法の改正で導入された、送金金額上限のない第一種資金移動業の認可・登録が始まっているほか、2023年4月より、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への賃金支払いが可能となっているなど、資金移動業者の可能な業務の幅も広がっている。
      • そのため、資金移動業者が直面するマネロン等リスクについても様々であり、それぞれの資金移動業者が直面するリスクに応じたマネロン対策等を講ずる必要がある。例えば、国内の少額の資金移動にとどまらず、海外送金を行っている資金移動業者においては、法制度や取引システムの異なる外国へ犯罪収益が移転されて追跡が困難になるといった海外送金に共通するリスクに直面している。また、代理店利用がある資金移動業者においては、代理店における不適切な本人確認によるリスクに直面している可能性がある。
      • 海外送金サービスを提供する資金移動業者に口座を提供する銀行においては、顧客である資金移動業者が国内拠点と海外拠点との間で複数の小口送金取引を取りまとめて決済(いわゆるバルク送金取引。以下、「バルク送金」という。)を行っている場合、小口送金の実態は国境を跨ぐ資金決済でありながら、バルク送金の中に含まれる個々の送金人や受取人に関する情報が不透明となるリスクがある。
      • 資金移動業者と口座を提供する銀行との間で、お互いのマネロン対策等の実施状況を確認し合うとともに、マネロン等が疑われる資金決済が行われたり、制裁対象者等への支払い等が含まれたりすることのないよう、リスクに応じた対応を講じることが重要となる。
    5. サイバー犯罪(フィッシング詐欺、ランサムウェア等)
      • 近年、デジタル化の進展等に伴い、サイバー空間の公共空間化が加速する中、国内では、2022年中のサイバー犯罪の検挙件数は12,369件と過去最多を記録した。同年は、ランサムウェアによる攻撃が、サプライチェーン全体の事業活動や地域の医療提供体制に影響を及ぼす等、市民生活に大きな影響を及ぼす事案も発生し、フィッシング報告件数が増加する18中でインターネットバンキングに係る不正送金被害が一時的に急増するなど、サイバー空間をめぐる脅威は、極めて深刻な情勢が続いている。
      • また昨年から、金融機関を装って、マネロン対策等の名目で、利用者の口座の暗証番号・インターネットバンキングのログインID・パスワードや、クレジットカード/キャッシングカード番号等を不正に入手しようとするフィッシングメールも多数確認されており、金融庁で注意喚起を行なっている。
      • また、サイバー空間においては、各種機器のぜい弱性の探索行為等が確認されている。警察庁が検知したこれらのアクセス件数は、1日1IPアドレス当たり7,707.9件と、継続して高水準で推移している。これらのアクセスのほとんどが海外を送信元とするものであり、海外からのサイバー攻撃等に係る脅威が引き続き高まっていると認められる。検知したアクセスの宛先ポートに着目すると、ポート番号1024以上のポートへのアクセスが大部分を占めており、これらのアクセスの多くがぜい弱性を有するIoT機器の探索やIoT機器に対するサイバー攻撃を目的とするためのものであるとみられる。
      • このように、引き続きサイバー空間における脅威が極めて深刻である中、警察では、2022年4月に新設した警察庁サイバー警察局等が中心となり捜査・実態解明に取り組むとともに、関係省庁、民間事業者等と連携した効果的な被害防止対策を推進している。金融庁も、業界団体との意見交換会において、フィッシング詐欺対策の検討・実施を要請するとともに、警察庁サイバー警察局等と連携し金融業界に対しフィッシング詐欺等に係る注意喚起を行ったほか、警察庁や一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3)と連携し、各業界団体を通じ、金融機関に対してフィッシング詐欺対策の推進を要請した。金融庁は引き続き関係省庁及び関係団体と連携し、サイバー空間に実空間と変わらぬ安全・安心を確保すべく努めている。
    6. テロ資金供与リスク
      • 欧米諸国をはじめとし、世界各地でテロ事件が発生し、2021年8月にはアフガニスタンにおいてタリバーンが政権樹立を宣言する等、国際的なテロを巡る情勢は、改善の見通せない状況が続いている。
      • 日本では、現時点で、国連安保理決議を受けた資産凍結等の措置の対象者に日本人や我が国に居住している者はおらず、幸いにも、現在まで、日本国内において、国連安保理が指定するテロリスト等によるテロ行為は確認されていない。しかしながら、過去には、殺人、爆弾テロ未遂等の罪で国際刑事警察機構を通じ国際手配されていた者が、不法に我が国への入出国を繰り返していたことも判明しており、過激思想を介して緩やかにつながるイスラム過激組織のネットワークが我が国にも及んでいる可能性がある。また、我が国にもISILを支持したり、ISILのプロパガンダに共鳴したりする者がいるほか、ISILに戦闘員として加わるため、シリアへの渡航を企てた疑いのある者が把握されている。
      • FATFが2019年に公表したレポート21でも、「国内でテロやテロ資金供与の事例がない場合であっても、それをもってテロ資金供与リスクが低いと直ちに結論付けることはできず、国内で資金が収集され、又は海外に送金される可能性を排除すべきではない」との指摘がなされており、日本においてもテロ資金供与リスクに十分配慮する必要があり、日本を経由した資金が海外のテロ活動に使われることがあってはならない。
      • 2021年にFATFが公表した第4次対日相互審査報告書において、我が国はテロ資金供与対策に関して、「日本のNPO等は、知らず知らずのうちに、テロ資金供与の活動に巻き込まれる危険性がある」との指摘がなされ、これを受けて、2022年6月に内閣府より「NPO法人のテロ資金供与対策のためのガイダンス」が公表されるなど、政府でも対策が進められている。
      • 金融機関においても、日頃から昨今の世界情勢やテロ資金供与の危険度が高い国・地域、取引等について情報蓄積及び分析を行うとともに、NPOが口座を開設している場合には、海外送金の有無や支援している地域や団体も踏まえ、リスクの特定・評価を行い、テロ資金供与リスクに対して、継続的かつ予防的なリスク対応を行うことが重要である。
      • なお、テロ資金供与について我が国では、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(以下、「テロ資金提供処罰法」という。)に基づき、タリバーン・ISIL及びアル・カーイダ関係者等及びその他のテロリスト等に対してテロ資金の提供等が規制されているほか、外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」という。)、国際テロリスト等財産凍結法に基づき、国連安保理決議で指定された制裁対象者に対する取引が規制され、資産凍結等が求められている。
      • また、金融庁の「マネー・ロ-ンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)では、FATF勧告等の国際的な基準を踏まえると、制裁対象者の指定に係る外務省告示等の発出前においても、国連安保理決議で経済制裁対象者が追加されたり、同対象者の情報が変更されたりした場合には、遅滞なく自らの制裁対象者リストを更新して顧客等の氏名等と照合するとともに、制裁対象者リストに該当する顧客等が認められる場合には、より厳格な顧客管理を行い、同名異人か本人かを見極めるなどの適切かつ慎重な対応を求めている。
      • コラム【野生動植物の違法取引に関連するマネー・ローンダリング】
        • 昨今、環境に対する世界的な関心が高まっているところ、環境犯罪を助長する資金の流れや洗浄手法等に対する認識向上を目的として、2020年6月にFATFは「マネー・ローンダリングと違法野生生物取引」(原題「Money Laundering and the Illegal Wildlife Trade」)、2021年6月には「環境犯罪にかかるマネー・ローンダリング」(原題「Money Laundering from Environmental Crime」)を公表した。
        • 警察庁によれば、我が国では、国内における環境事犯としては、廃棄物事犯、動物・鳥獣関係事犯等があり、2020(令和2)年から2022(令和4)年までの間における環境事犯の検挙事件数は次のとおりである(省略)。
        • 我が国においても、FATFや国際的な議論を踏まえ、環境犯罪をリスクと認識して対応することが必要であり、国際的に希少な野生動植物・森林資源・鉱物に関する取引や廃棄物投棄等に関係した取引等を前提としている場合等には、マネロンのリスクを意識した対応を行うことが必要である。金融機関として気を付けるべきは、貿易決済に関する送金を取り扱う場合の注意事項と同様に、顧客の職業やビジネスの内容と送金の送付先、裏付けとなる商取引に不自然なものがないか、取引されているモノが野生動物や希少動物、もしくは象牙といったものでないかという確認をするなどのリスクの特定・評価を行い、リスクに応じて、必要な場合には、更なる深掘り調査をするということがリスクベースの対応であると言える。
    7. 地政学リスク(含む大量破壊兵器に関する拡散金融リスク)
      • マネロン及びテロ資金供与リスクのほかにも、拡散金融(核兵器をはじめとした大量破壊兵器等の製造・取得・輸送などに係る活動への資金提供)に係るリスクに対しても十分に対策を講じる必要がある。我が国においては、拡散金融について、国際テロリストと同様に、国連安保理決議等により指定される大量破壊兵器に関連する活動に関与する者に対し、外為法等に基づく資産凍結等措置をはじめとする制裁措置が実施されている。
      • 特に、北朝鮮については、2023年4月に公表された国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル報告書において、引き続き北朝鮮による制裁違反・回避が疑われる事例及びその詳細な手法が報告されている。同報告書では、2022年に北朝鮮が暗号資産関連企業及び暗号資産取引所等へのサイバー攻撃を通じて過去最高額(10億米ドル相当以上(窃取時点))の暗号資産を取得した旨などが指摘されている。同様に、2020年4月に米国連邦政府関係省庁が合同で公表した、北朝鮮によるサイバー攻撃に関するガイダンス26においても、北朝鮮が、企業・金融機関・中央銀行・暗号資産関連事業者等へのサイバー攻撃により不法にドル資産等を取得していることを注意喚起している。
      • 金融機関においては、北朝鮮等の拡散金融に係る制裁対象者が関与する取引を無為に行わないよう適切な確認・検証態勢を整備するとともに、取引がある場合には適切に資産凍結等の措置を講ずる必要がある。また、テロ資金供与対策と同様に、拡散金融に係る制裁対象者についても、日頃から、公表後遅滞なく自らの制裁対象者リストを更新して、より厳格な顧客管理を行うなど、対応を確実に実施することが必要である。
      • 我が国を含む各国は金融制裁や輸出入禁止措置等を課しており、日本においては、プーチン大統領を含むロシア政府関係者、ロシアの財閥であるオリガルヒ等に対する資産凍結等の制裁、ロシアの主要金融機関等に対する国内資産の凍結、国際的な合意に基づく規制リスト品目や半導体など汎用品、ロシアの産業基盤強化に資する物品等の輸出禁止措置等を実施している。
      • なお、我が国における、ロシアによるウクライナ侵略を受けた金融制裁については、閣議了解29に基づき、外為法に基づく種々の経済制裁による諸般の義務の遵守が要請されている。また、外為法に基づく支払規制及び資本取引規制をより一層効果的なものとするため、2022年4月の同法改正により暗号資産に関する取引が資本取引規制の対象とされ、暗号資産交換業者に資産凍結措置に係る確認義務を課す等の措置も講じられている。
      • FATFにおいても、2022年3月より、ロシアを非難する声明の発出や、加盟国としての権利制限を段階的に行ってきたが、2023年2月の総会において、「ロシアに対するFATF声明(原題:FATF Statement on Russian Federation)」が採択され、ロシアによるウクライナ侵略に対する重大な懸念を表明するとともに、ロシアのFATFメンバーシップの完全停止が決定された30。なお、ロシアは、従来どおりFATF勧告の遵守義務を負い、FATF型地域体であるEAG(Eurasian Group on Combating Money Laundering)メンバーにはとどまっている。FATFメンバー国には、引き続き、ロシアによるウクライナ侵略における国際金融システムへの脅威に十分警戒することが求められている。
      • ロシアによるウクライナ侵略に係る情勢については、予断を許さない状況が続くが、金融庁としては、これまでと同様に、関係当局や業界団体等と連携し、マネロン等リスクに与える影響を勘案し、リスクに応じた対応に取り組んでいく。
      • 金融機関においては、自ら又は他の金融機関を通じて暗号資産を含む海外送金等を行う場合に、これら外為法をはじめとする海外送金等に係る国内外の法規制等に則り必要な措置を講ずることはもとより当然であり、マネロン対策等と同様、日頃から制裁への対応を確実にして、追加的な制裁が発動された際には早急に必要な措置を取れるよう備えておく必要がある
  • 業態別のリスクの所在と現状と課題
    1. 預金取扱金融機関
      • 継続的な顧客管理の実施に当たっては、金融機関が自らの全顧客のリスク評価を実施し、顧客の情報が不足している場合や、そのリスクに応じて最新の情報が必要な場合には、顧客にアンケート等の郵便物を送付するなどして対応している金融機関が多い。しかし、顧客からアンケート等への返信が得られないケースも散見され、取組状況に遅れが出ている金融機関も認められる。継続的な顧客管理の実施に当たっては、金融機関の顧客のリスク評価に応じた中長期的な行動計画を策定した上で、その進捗を管理しながら着実かつ丁寧に対応を進めていくことが重要となる。さらに、調査に対する顧客からの回答率を向上させる努力も重要であり、顧客における継続的な顧客管理への理解を促すたの周知活動や、郵便の送付以外にも顧客属性や顧客との関係性を踏まえた回答チャネルの充実等も積極的に検討する必要がある。金融庁としては、2022年3月公表の改訂FAQにおいて、改めて「簡素な顧客管理措置(Simplified Due Diligence:以下、「SDD」という。)」の考え方について留意点を明確化する改訂を行うなど、継続的な顧客管理に関する態勢整備を促してきているが、金融機関の顧客のリスクに応じた適切な継続的顧客管理の在り方について、金融業界の実務や課題等を勘案しながら、引き続き、必要な議論を行っていく。
      • 取引モニタリングは、疑わしい取引の届出を行うため、不自然な取引を事後的に検知するもので、職員の気付きによるものとシステムによる検知の二種類が一般的である。特にシステムによる検知については、取引パターン分析のためのルールやシナリオの有効性について検証・分析の上、抽出基準の改善を図るとともに、誤検知率を踏まえた、より有効な取引の形態、抽出基準を特定する取組の継続的な実施等が重要である。
      • 他方、取引フィルタリングは、取引を行う前に制裁対象者等の取引不可先が含まれていないかを職員の目視やシステムを使って検知する手法である。システム上、あいまい検索機能の適切な設定や国連安保理決議等で経済制裁対象者等が指定された場合の遅滞なき対応(制裁対象者指定から24時間以内にリスト照合を可能とする態勢)等が求められている。
      • なお、取引モニタリングやフィルタリングについては、誤検知率の高さやシステム費用負担等の課題から、預金取扱金融機関業界を中心に、マネロンシステムを共同化して、負担を軽減するとともに、対策を高度化できないか議論が行われている(3章4.参照)。各金融機関においては、マネロン対策等の高度化に向けて、後述する共同化の枠組みの活用も期待される
    2. 暗号資産交換業者
      • 近年発生している、特殊詐欺や不正送金等の犯罪収益についても、被害者口座からこれらの口座に詐取金を入金した後、暗号資産を購入し、即時に購入した暗号資産をどこかに出金するといった手口が多数認められる。
      • 不正利用が増加傾向にある暗号資産交換業者において、不正利用の手口の分析やそれに応じた取引モニタリングシナリオの見直しなどの不正利用対策が十分に行われていない。
    3. 資金移動業者
      • 多くの事業者において、顧客リスク評価及び継続的な顧客管理に向けた実効性のある計画を策定し、対応期限内に実施することが課題である。
      • また、リスクに応じて定期的に実態把握を行うのみならず、顧客のマネロン等リスクが高まったと想定される具体的な事象が発生した場合(例えば適時開示や報道等により不芳情報に接した場合)には、顧客情報や取引内容を確認・検証し、顧客リスク評価の見直しをするなど、リスクベース・アプローチによる対応の実効性を高めることが必要である。
      • 代理店を介して取引を行っているにもかかわらず、代理店が適切に業務を実施しているかを確認していない事例や、代理店で発生した問題事案について報告を受けるのみで、代理店管理方法が実効性を有しているかについての検証や分析を実施していない事例が認められた。資金移動業者は、各代理店のリスク評価を行った上で、そのリスクに応じて管理態勢のモニタリングを実施することが課題である。なお、グローバルに展開している外資系資金移動業者の中には、母国当局からの行政処分を受け、日本を含む世界各地で代理店管理プログラムや代理店に対する監査の見直し等、代理店管理を強化する取組を行っている事業者もある。
    4. 金融商品取引業者等
      • 資産運用業務においては、投資家から犯罪収益が流入するリスクや、金融商品取引業者等の投資行動を通じた経済制裁対象者等が関与している企業等に対する資金流入のリスク等が考えられる。そのため、金融商品取引業者等はマネロン対策等においては、例えば、自社による直接的投資先であれば、投資先の役員や実質的支配者について制裁対象者リストと照合することや、ファンド・オブ・ファンズを通じた投資等、運用委託先を通じた間接的投資であれば、委託先運用業者に対してマネロン等リスク管理態勢の確認を行う等の対応が考えられる。
      • 運用商品(投資信託等)の販売を委託する場合は、販売会社を通じて犯罪収益が運用商品に流入するリスクがあることから、委託先販売会社のリスクに応じたマネロン等リスク管理態勢等の適切性の継続的確認・審査を実施することが重要である。
      • 経済制裁対象者のリストと既存顧客の氏名等との照合の頻度が定期的なものにとどまり、リスト更新時の随時の照合を行っていない。
  • マネロン対策等に係る金融庁の取組
    1. マネロン対策等に係る業務の共同化
      • 金融のデジタル化の進展やマネロン等の手口の巧妙化等を踏まえ、国際的にも、金融活動作業部会(FATF)において、より高い水準でのマネロン等への対応が求められており、金融機関におけるマネロン対策等の実効性の向上は、喫緊の課題となっている。一方で、各金融機関における取引モニタリング等システムの誤検知率が非常に高く、検知結果について人による再検証が必要になる等、マネロン対策等の実効性を向上させるに当たっては、特に中小金融機関にとって、システム整備や人材確保等の面で負担が大きく、単独での対応には限界があるといった課題がある。このような課題について、銀行業界を中心に、マネロン対策等に係る業務システムを共同化して負担を軽減するとともに対策を高度化できないか議論が行われてきた。こうした民間主導の取組を推進すべく、金融庁では以下のような取組を進めてきた。
      • 金融庁は、2022年6月に資金決済法を改正し、新たに為替取引分析業に許可制を導入することとした。2022事務年度は、制度の円滑な施行に向けて、関係事業者へのヒアリング等を通じて業務の実態把握等を進めた。事業者ヒアリングにおいては、金融機関のみならず、マネロン対策等関連システムを開発・提供するシステムベンダーや、AI等の先端技術を活用したデータ分析システムを研究・開発する事業者とも議論を重ね、マネロン対策等に係るデータ分析について最新の動向を把握し、分析手法等に関し知見を蓄積してきた。同時に、為替取引分析業者に対する監督上の着眼点や課題も整理し、2023年5月に同業者向け監督指針を公表52するなど監督体制の整備を行った。
      • また、金融庁は、全国銀行協会が設置した「AML/CFT業務共同化に関するタスクフォース」を始め、各種研究・検討会に参加するなどして、民間主導の業務共同化の取組を支援し、又はその質の向上を促してきた。
      • 複数の金融機関で利用可能なAI等の技術を活用した共同システムの開発・実装を財政的に支援することにより我が国金融業界全体のマネロン対策等の高度化・実効性の向上を適切かつ迅速に推進させることを目的として、「マネー・ローンダリング等対策高度化推進事業」に係る経費を令和4年度第2次補正予算において措置し、2023年1月16日に補助事業者の公募を開始した。2023年3月27日には、外部有識者による審査結果を踏まえて選定した補助事業者2社を公表した
    2. 警察庁等との特殊詐欺対策等に係る連携
      • 特殊詐欺等の犯罪においては、預貯金口座が犯罪の実行を容易にするツールとして使われる手口が複数確認されている。
      • 例えば、「預貯金詐欺」や「キャッシュカード詐欺盗」においては、犯人が高齢者などからキャッシュカード等をだまし取る又は窃取したうえで、ATMで被害者の預貯金口座から不正に資金を引き出すなどの手口が確認されている。そのほか、「還付金詐欺」においては、犯人が税金還付など手続きを装って被害者にATMを操作させ、被害者口座から犯人の口座に送金をさせて不法の利益を得る手口が、また、「架空料金請求詐欺」においては、未払いの料金があるなど架空の事実を口実として被害者をだまし、被害者自らで現金を引き出して犯人に手交したり、犯人口座に送金させたりする手口が確認されている。
      • 預貯金口座は、被害者からだまし取った金銭の収受や犯罪者グループ等内での金銭の収受等に悪用されており、これには、口座の売却目的で作られ不正に譲渡された口座や、帰国する外国人等から不正に譲渡された預貯金口座等が利用されている実態がある。
      • そのため、特殊詐欺被害を防ぐためには、キャッシュカード等を犯人に悪用されている被害者の預貯金口座や取引に係る対策と、振込先として悪用されている口座への対策の双方が必要と考えられる。強盗・特殊詐欺緊急対策プランではこの双方の観点を取り入れた検討案となっており、警察庁・金融庁においては、預金取扱金融機関の業界団体等と連携して、対策の実効性や実施にあたっての課題などの具体的な検討を進めている。
      • また、預貯金口座等の悪用の背景には、偽造免許証等、不正な本人確認書類を用いて、売却目的や犯罪利用のための口座開設を行っている者の存在も確認されている。このような犯罪に対しては、犯罪収益移転防止法で定められている取引時確認における本人確認を厳格化して、悪用を防止することが考えられる。
      • この観点を踏まえ、強盗・特殊詐欺緊急対策プラン及び2023年6月9日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においては、本人確認手法の実効性を高めるため、犯罪収益移転防止法等に基づく非対面の本人確認手法について、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化する等の対策が盛り込まれている。
    3. 実質的支配者リスト制度に係る連携
      • マネロン対策等においては、法人の悪用防止のため、実質的支配者(Beneficial Owners:以下、「BO」という。)の確認が重要とされており、犯罪収益移転防止法においても、法人顧客の実質的支配者の確認が義務付けられている。
      • 2022年1月31日より、法務省により実質的支配者リスト制度(以下、「BOリスト制度」という。)が開始された。これは、全国の商業登記所が、株式会社等(利用者)が提出した自社の実質的支配者に関する情報が記載された書面(実質的支配者リスト。以下、「BOリスト」という。)を確認した上で、その写しを交付する制度である。BOリストの写しを活用することで、確認手続の円滑化が期待されるものであり、金融庁においても、法務省と連携し、所管業界への周知や制度の活用を呼び掛けている。
      • BOリストの写しについては、一部の地方銀行においては、法人(非上場株式会社)の新規口座開設の際に、口座開設を希望する顧客に依頼して、法務局での取得と銀行への提出を依頼しているなど、積極的に活用されている事例もある。BOリストの写しは、法人顧客の実質的支配者について確認を行ったことの証跡として使えるものであり、より多くの金融機関において活用されることを期待したい。
      • また、BOリスト制度については、一般社団法人金融財政事情研究会により「商業登記所における実質的支配者リスト制度の利便性向上に関する研究会」が立ち上げられ、2023年5月から議論が開始されている。全国銀行協会及び全国地方銀行協会などがメンバーとして議論に参加しているほか、法務省、財務省及び金融庁もオブザーバーとして参加し、制度の更なる活用に向けた利便性向上策について検討を行っている。
      • コラム【法人及び信託(法的取極め)の実質的支配者の透明性向上に係るFATF勧告24・25の改訂について】
        • パナマ文書の事例など、租税回避や違法な資産の隠匿のため、法人や信託(法的取極め)の悪用に対する懸念が国際的に高まるなか、FATFでは、2019年10月に、法人の実質的支配者(BO:Beneficial Ownership)の特定に際し各国が抱える共通の課題、及び対応の好事例を集めた報告書を公表した。
          • 勧告24改訂
            • その後、2022年3月には、法人の実質的支配者の透明性を向上させる観点からFATFは、勧告24及びその解釈ノートを改訂した。2023年3月には、同勧告の実施に向けた目線であるガイダンスの改訂版を公表している。
            • <勧告24及び解釈ノート改訂のポイント>
              • 国に対し、国内法人及び当該国とsufficient linkがある外国法人のリスク評価を義務化
              • 当局が、複数の手段を用いて、法人のBOを適時に特定するメカニズムの確保を義務化(Multi-prongedアプローチ。(a)法人に対する自身のBO情報の取得・保持(カンパニー・アプローチ)、及び(b)公的組織(税当局、FIU、BOレジストリ等)によるBO情報の取得・保持又はその代替メカニズム(レジストリ・アプローチ)、を義務化したうえで、必要に応じて、(c)補足的手段(証券取引所、金融機関、DNFBPsによる情報)を活用する、といった、多面的な情報ソースに当局がアクセスしてBO情報を取得するよう求めている。)
              • BO 情報に求められる要件として、十分性(BOたる自然人及びその手段・構造の特定に十分である)、正確性(他の情報源を活用して検証される)、最新性(BOに変更があった場合、合理的な期間内に更新される)を記載
              • 金融機関、DNFBPs、一般大衆により、BOレジストリー又はその代替メカニズムにアクセスできるようにすることを各国に検討するよう求めている
          • 勧告25改訂
            • 信託(法的取極)の実質的支配者の透明性向上に関しては、2023年3月、FATFは勧告25及びその解釈ノートの改訂を公表している75。現在、同勧告の実施に向けたガイダンスの改訂作業を進めている。
            • <勧告25及び解釈ノート改訂のポイント>
              • 国に対し、(a)自国法に基づく信託、(b)受託者が自法域に居住する信託、又は、自法域が信託の管理地である信託、(c)自国と”sufficient link”がある外国信託 のマネロン等リスクの評価を義務付け
              • 信託の受託者が居住する法域、又は、信託の管理地である法域に対し、受託者によるBO情報の取得・保持を義務付けるよう要請
              • 国に対し、自国法に基づく信託の類型等の開示を義務付け
              • 当局が受託者からBO情報を適時取得できる権限の確保
              • その他の当局によるBO情報の取得方法については、各国は、リスクベース・アプローチにより、必要に応じて、公的登録機関・他の関係当局(税当局等)・他の代理人(士業・金融機関等)等から1つ以上の手段を用いることを検討

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内閣官房 海外ビジネス投資支援の取組み
▼海外ビジネス投資支援にかかるベンチマーク(2023(令和5)年1~3月期)(2023年7月3日公表)
  • 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、内外の経済情勢や企業動向を踏まえ、政府として「技術と意欲ある」我が国企業を支援するための施策の企画立案及び関係省庁間の調整を行うとされたことを踏まえ、令和4年8月1日、内閣官房に海外ビジネス投資支援室が設置されました。
  • 政府として「技術と意欲ある」我が国企業の海外ビジネス投資を支援することにより、(1)企業の収益力強化、(2)我が国の成長力強化、(3)地球規模の問題解決への貢献を目的として、(1)「支援体制」の強化、(2)「支援メニュー」の強化・周知を大きな柱とする「海外ビジネス投資支援パッケージ」を取りまとめ、令和4年12月20日に公表しました。
  • 支援パッケージの各支援策の進捗を確認するため、ベンチマークを設定しており、半年に一度、各年3月末及び9月末を基準時として、取りまとめ公表することとしています。
  • 初回である今回の公表では、支援パッケージを期中の2022年12月に公表したことから、公表後の2023年1月~3月を対象期間としています。(2022年10月~12月を参考として併記)
  1. 政府ワンチーム化による連携強化
    • 政府機関等の間の連携強化に関する実績事例
      • 政府機関等主催のセミナーに登壇(JOIN主催、JBIC・JICA・NEXIが登壇:1件、JICA主催・JETRO等共催、JBICが登壇:1件)
      • 投資先企業に政府機関を紹介(CJ機構:3件)
      • 政府機関から国外企業を紹介され投資を検討(CJ機構:2件)
      • 政府機関主催のワーキンググループに参加(JBIC:1件)
      • 政府機関と基本協定書を締結(NEXI:1件)
      • 協調融資・付保案件について協議(JBIC・NEXI:4件)
    • 外公館等との連携強化に関する実績事例
      • 現地日本国大使館と、現地で連携すべき機関について意見交換をおこない、現地関係機関の紹介を受けた(JOIN:1件)
      • 現地日本商工会及び現地日本国大使館と講演会を共催(JBIC:1件)
      • 現地商工会議所の後援を受け日本企業向けオンライン報告会を主催(JBIC:1件)、登壇(JETRO:1件)
      • 現地日本商工会及び現地日本国大使館主催のセミナーに登壇(JBIC:1件)
  2. 地域支援機関(地方自治体・商工会議所・地銀等)との連携強化
    • 各地域支援機関との対話件数:3件
      • 地方自治体と面談(GBIS室:1件)
      • 商工会議所と面談(GBIS室:1件)
      • 商工会議所参加の講演会に登壇(GBIS室:1件)
    • 各地域支援機関との連携に関する実績事例
      • 県貿易協会と、業務協力を行うための覚書を締結(NEXI:1件)
      • 国立大学法人と包括連携協定を締結(JETRO:2件)
      • 地方・中堅中小企業向けセミナーを主催し、現地地方自治体が登壇。現地企業への周知に現地地銀のネットワークを活用。(JOIN:1件)
      • 地方金融機関等を対象に勉強会・業務説明・セミナーを主催(JBIC:8件)
      • 商工会議所、経済連合会等と共催でセミナーを実施(JBIC:1件)
      • 地域支援機関等主催のセミナー・講演会において、業務説明・講演を実施(JBIC:4件、JICT:1件)
  3. 国際機関・グローバル投資家等海外プレーヤーとの連携強化
    • 日本に強みがある技術のPRを行った機会の件数
      • 国際機関(アジア開発銀行(ADB)、欧州復興開発銀行(EBRD)等)へのPR(GBIS室:8件)
      • 外国政府関係者へのPR(GBIS室:5件)
      • 豪日経済委員会カンファレンスに登壇しPR(GBIS室:1件)
    • 海外の企業・案件情報に関する対話件数
      • 国際機関(ADB、EBRD等)と対話(GBIS室:7件)
      • 外国政府関係者と対話(GBIS室:5件)
    • 海外プレーヤーとの連携強化に関する実績事例
      • ADB主催のセミナーに登壇(GBIS室:2件)
      • 豪日経済委員会カンファレンスに登壇(GBIS室:1件)
      • EBRDと、JETRO・EBRD間の連携や個別プロジェクトにおける連携等について協議し、合意(GBIS室:3件)
      • 他のG7の公的輸出信用機関と共にウクライナ支援の共同声明を発表(NEXI:1件)
      • ギリシャ・インドネシア・カンボジアにおける現地関係機関それぞれと、連携強化のための覚書を締結(NEXI:1件)
      • UAEにおける現地関係機関と、相互に情報交換・協業を行うための覚書を締結(JOIN:1件)
      • EBRDとの覚書に基づき協調融資案件について協議(JBIC:1件)
      • 国際金融公社(IFC)と協調融資案件について協議(JBIC:1件)
  • 総括(上記のうち案件組成につながったもの)
    • 協調融資・付保案件についての協議の結果、4件(ウズベキスタン2件、トルコ、エジプト)の案件を組成(JBIC・NEXI)
    • EBRDとの覚書の締結及び協議の結果、協調融資案件1件(エジプト)を組成(JBIC)
    • IFCとの協議の結果、協調融資案件1件(ウズベキスタン)を組成(JBIC)
  1. 政府機関等の海外ビジネス投資支援機能強化・改善
    1. 海外ビジネス投資支援データ(※括弧内は2022年10月~12月の実績)
      • JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業採択件数:2022年10月~2023年3月の間に59件〔2022年9月の公募の結果〕
      • JICAが実施するセミナー(民間企業向け、金融機関向け等)の件数:21件(31件)
      • JBICの出資件数及び出資金額:2件100億円(1件133億円)
      • JBICの投資金融件数及び投資金融金額:31件10,236億円(22件4,189億円)
      • JETROのJ-BRIDGEを通じて生まれた協業成功事例件数:7件(1件)
      • NEXIの保険の付保金額:1,147億円(2,626億円)
      • 海外ビジネス投資支援官民ファンド(JOIN、JICT、CJ機構)の投資件数及び投資金額
      • JOIN:該当なし(4件約291億円)、JICT:該当なし(4件約216億円)、CJ機構:1件13億円(1件30億円)
      • 中小機構の海外展開ハンズオン支援アドバイス件数:1,043件(985件)
      • 日本公庫の海外展開の資金支援実績
      • 国民事業:506件(1,106件)、農林事業:104先(95先)、中小事業:140社(192社)
      • 政府機関等と大学VC間にて案件に関する対話等の実施:
      • 国立大学法人(東北大、東大、京大、阪大)より出資をうけた大学VC(4社)と政府機関等(10機関)双方の取組みを紹介する
      • 意見交換会を主催(GBIS室)
    2. 支援メニュー強化・改善に関する実績事例
      • NEXIは、投資保険や融資保険等に関する制度の改正、運用の緩和(送金不能リスクのてん補事由の拡充、保険金支払いにおける「事業不能等」要件の緩和などを行った。海外投資保険の「事業不能等」要件の緩和により、事業が完全な停止に至らずとも、事業全体に重大な支障が生じている場合であれば保険金支払いの対象とみなすことが出来るようになった。
      • JBICについては、日本の産業の国際競争力の維持・向上に資するサプライチェーンの強靱化や、デジタル・グリーンなどの成長分野を見据えたスタートアップ企業等の日本企業のリスクテイク推進等を進めるための法改正案を国会に提出(改正法案は、4月7日に成立)。
    3. 伴走支援等を経て海外投資案件組成を行った実績事例
      • JETROが、ベトナム、米国、フランスにおいて伴走支援を行い、店舗開店、海外企業との共同研究開発が行われた。
    4. 支援メニュー強化・改善が案件組成に寄与した実績事例
      • 該当なし

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国民生活センター 強引な勧誘やキャンセル妨害も! 中古自動車の売却トラブルに注意
  • 内容
    • インターネットの一括査定サイトで中古車の査定を依頼したところ、5社から連絡があり、その中の1社が自宅へ査定に来た。「ドアに修理歴がある。事故車なので15万円だが、今日すぐに引き渡せば25万円で買い取る」と、強引に契約させられ、車を持って行かれた。30分後に「他社と比較したいので車を戻してほしい」と伝えたが「今から返すのは面倒だ。他社にはこちらから連絡する」と言われ、車を返してもらえない。解約して車を取り戻したい。(70歳代)
  • ひとこと助言
    • 車の売却は、特定商取引法によるクーリング・オフの対象外です。査定の場で「今日なら高く買い取る」などと急かされても、一度冷静に考えましょう。
    • 複数の事業者からの査定額をしっかり比較検討することが大切です。強引に売却を迫る事業者には「今回は査定をお願いしただけで、今は売らない」「他店の査定額と比べる」などと伝え、きっぱりと断りましょう。
    • 契約後は、原則として契約書の内容に従うことになります。契約前に契約書をよく確認しましょう。特にキャンセル料の金額や発生時期の確認は重要です。
    • 困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等(消費者ホットライン188)、もしくは、車買い取りの事業者団体である(一社)日本自動車購入協会(JPUC)の消費者相談窓口(0120-93-4595)にご相談ください。

~NEW~
警察庁 令和5年5月の特殊詐欺認知・検挙状況等について
  • 令和5年1~5月の特殊詐欺全体の認知件数は7,788件(前年同期6,085件、前年同期比+28.0%)、被害総額は153.6憶円(124.7憶円、+23.2%)、検挙件数は2,658件(2,296件、+15.8%)、検挙人員は873人(782人、+11.6%)
  • オレオレ詐欺の認知件数は1,718件(1,340件、28.0%)、被害総額は47.7憶円(39.1憶円、+22.0%)、検挙件数は835件(591件、+41.2%)、検挙人員は376人(303人、+24.1%)
  • 預貯金詐欺の認知件数は1,053件(892件、+18.0%)、被害総額は12.9憶円(10.6憶円、+21.7%)、検挙件数は555件(519件、+6.9%)、検挙人員は175人(192人、▲8.9%)
  • 架空料金請求詐欺の認知件数は2,055件(1,016件、+102.3%)、被害総額は51.8憶円(35.9憶円、+44.3%)、検挙件数は91件(64件、+42.2%)、検挙人員は40人(37人、+8.1%)
  • 還付金詐欺の認知件数は1,774件(1,627件、+9.0%)、被害総額は20.3憶円(18.4憶円、+10.3%)、検挙件数は439件(291件、+50.9%)、検挙人員は75人(48人、+56.3%)
  • 融資保証金詐欺の認知件数は82件(43件、+90.7%)、被害総額は1.1憶円(0.9憶円、+16.3%)、検挙件数は9件(11件、▲18.2%)、検挙人員は6人(6人、±0%)
  • 金融商品詐欺の認知件数は70件(10件、+600.0%)、被害総額は6.2憶円(0.8憶円、+636.3%)、検挙件数は12件(2件、+500.0%)、検挙人員は13人(6人、+116.7%)
  • ギャンブル詐欺の認知件数は10件(20件、▲50.0%)、被害総額は0.3憶円(1.8憶円、▲84.5%)、検挙件数は0件(7件)、検挙人員は0人(4人)
  • キャッシュカード詐欺盗の認知件数は983件(1,113件、▲11.7%)、被害総額は12.4憶円(17.1憶円、27.5%)、検挙件数は708件(811件、▲12.7%)、検挙人員は178人(184人、▲3.3%)
  • 組織犯罪処罰法違反の検挙件数は91件(37件、+145.9%)、検挙人員は36人(8人、+350.0%)、口座開設詐欺の検挙件数は293件(272件、+7.7%)、検挙人員は163人(149人、+9.4%)、盗品等譲受け等の検挙件数は2件(0件)、検挙人員は0任(0人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は1,085件(1,224件、▲11.4%)、検挙人員は856人(979人、▲12.6%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は53件(37件、+43.2%)、検挙人員は54人(40人、+35.0%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は5件(6件、▲16.7%)、検挙人員は4人(3人、+33.3%)
  • 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では、男性32.0%:女性68.0%、60歳以上89.0%、70歳以上69.8%、オレオレ詐欺では、男性18.6%:女性81.4%、60歳以上98.4%、70歳以上96.0%、架空料金請求詐欺では、男性61.7%:女性38.3%、60歳以上71.2%、70歳以上43.7%、融資保証金詐欺では男性79.7%:女性20.3%、60歳以上14.9%、70歳以上2.7%、特殊詐欺被害者全体に占める高齢(65歳以上)被害者の割合について、特殊詐欺 81.7%(男性28.5%、女性71.5%)、オレオレ詐欺 97.8%(18.6%、81.4%)、預貯金詐欺 99.4%(9.4%、90.6%)、架空料金請求詐欺 57.9%(65.0%、35.0%)、還付金詐欺 80.1%(34.6%、65.4%)、融資保証金詐欺 4.1%(66.7%、33.3%)、金融商品詐欺 30.0%(42.9%、57.1%)、ギャンブル詐欺 20.0%(100.0%、0.0%)、交際あっせん詐欺 0.0%、その他の特殊詐欺 35.1%(53.8%、46.2%)、キャッシュカード詐欺盗 99.4%(12.2%、87.8%)

~NEW~
警察庁 警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点について(通達)
  • 人的リソースの重点化等により体制を抜本的に強化して推進すべき事項
    • 全国的な治安情勢の構造的変化に対応するため、警察庁及び各都道府県警察は、警察組織全体から捻出した人的リソースを重点的に投入すること等により、以下の取組を推進するものとする。
      1. サイバー空間における対処能力の強化
        • 警察庁は、都道府県警察からの出向の拡充等によるサイバー特別捜査隊の増強や、全国の情報技術解析部門(警察庁サイバー警察局、管区警察局情報通信部、四国警察支局情報通信部、東京都警察情報通信部、北海道警察情報通信部、府県情報通信部及び方面情報通信部における情報技術解析部門をいう。)における人的・物的リソースの再配分、技官のキャリアパスの見直し等により、重大サイバー事案その他都道府県警察のみでは対処が困難なサイバー事案に対する警察組織全体の対処能力向上を図る。【サイバー特別捜査隊の増強:令和5年度以降随時増員要求を実施、その他:令和5年中に方針決定】
        • 各都道府県警察は、サイバー部門において、高度な専門的知識及び技術を要するサイバー事案(重大サイバー事案を含む。)に対処するための体制を拡充するとともに、サイバー部門以外の事件主管課の捜査力のみでは対処が困難な捜査事項について、高度な専門的知識及び技術に基づいた支援を行うことができる体制を確保する。【可能な限り速やかに実施】
          なお、態勢の構築に当たっては、これらの業務を行う所属が複数に分かれる場合であっても、サイバー部門において捜査部門と支援部門の一体的な運用がなされるよう、十分に配意する。
        • 各都道府県警察は、例えば、各部門の事件主管課の若手捜査員を一定期間サイバー部門で受け入れ、必要な専門的知識及び技術を修得するための実践的教養を行うなど、各部門におけるサイバー捜査能力の向上が図られるような取組を推進する。【可能な限り速やかに実施】
      2. 繁華街・歓楽街対策の強化を含む、匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締りの強化
        • 近年、暴力団とは異なり、SNSを通じるなどした緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す犯罪グループが特殊詐欺等を広域的に敢行するなどの状況がみられる。また、犯罪グループが、匿名性の高い通信手段等を活用しながら役割を細分化したり、犯罪によって得た収益を基に各種の事業活動に進出したりするなど、その活動実態を匿名化・秘匿化する実態もみられる。
          警察庁は、準暴力団を含むこのようなグループ(以下「匿名・流動型犯罪グループ」という。)に対する対策を強化するため、現在準暴力団として把握されていないものを含め、治安対策上問題のある犯罪グループを実効的に把握するための情報集約の在り方について、都道府県警察を指導するほか、下記イ及びウにより都道府県警察が構築する匿名・流動型犯罪グループ対策のための体制や風俗環境浄化に係る専従体制等の在り方について、都道府県警察の規模等に応じた着眼点や留意点を具体的に提示する。【速やかに実施】
        • 各都道府県警察は、匿名・流動型犯罪グループに対する戦略的な取締りを強化するため、
          • 匿名・流動型犯罪グループの活動実態を総合的に分析するための実態解明体制
          • 匿名・流動型犯罪グループの主要メンバー等を取り締まるための事件検挙体制
            を、既存の特殊詐欺の取締体制や、暴力団に係る実態解明体制・事件検挙体制とは別に構築する。また、疑わしい取引に関する情報等を活用して匿名・流動型犯罪グループの資金獲得活動及びマネー・ローンダリングの実態を解明しつつ、犯罪収益の剥奪に向けた事件指導をより一層推進するため、既存の犯罪収益解明班を拡充する。【いずれも可能な限り速やかに実施】
        • 大規模な繁華街・歓楽街を管轄する都道府県警察は、繁華街・歓楽街対策の重点見直し等により、
          • 暴力団、匿名・流動型犯罪グループによる資金獲得活動の実態の総合的分析
          • 取締対象者を戦略的に選定した取締り
            等を一体的に行うための、組織犯罪対策部門(犯罪収益対策部門を含む。)、保安部門等から成る専従体制を構築する。また、その他の県警察においても、適切に重点課題を設定し、同様の取組が実質的に推進されるような連携態勢を構築する。【いずれも可能な限り速やかに実施】
      3. 特殊詐欺に係る広域的な捜査連携の強化
        • ア 警察庁は、広域的に行われる特殊詐欺に対して、都道府県警察が緊密に連携した的確な組織捜査を実現するため、下記イにより都道府県警察が構築する新たな体制で受理することとする捜査嘱託事項の検討や、専従体制を構築する一部の大規模都府県警察に対する各道府県警察からの人員拠出の調整を行うほか、連絡共助の円滑化を図るため、特殊詐欺事件に係る国費事件の認定要件の緩和等、捜査嘱託の実施に関する負担を軽減する方策について検討する。【速やかに実施】
        • イ 各都道府県警察は、広域的に行われる特殊詐欺に的確に対応するため、他の都道府県警察からの捜査嘱託を受理する新たな体制を構築する。
          具体的には、捜査事項が集中する傾向にある一部の大規模都府県警察にあっては、捜査嘱託を受理する専従体制を、新たな所属又は特殊詐欺の取締りを主管する所属内の室等として新設するとともに、その他の道府県警察にあっても、予想される捜査嘱託件数等の業務量を踏まえつつ、捜査嘱託を受理するための所要の体制を、特殊詐欺の取締りを主管する所属内に構築する。【可能な限り速やかに実施】
      4. 経済安全保障の確保その他の対日有害活動対策の強化
        • 各都道府県警察は、経済安全保障の確保等、対日有害活動への対策を強化するため、警備部門における情報収集体制強化に向けたこれまでの取組を加速するとともに、国際情勢の変化に伴う業務量の増加の状況を踏まえつつ、必要な外国語能力を有する職員を含め、体制の更なる拡充を行う。【可能な限り速やかに実施】
      5. 要人に対する警護等の強化
        • 警察庁は、引き続き、教養訓練の高度化、先端技術を活用した資機材や銃器に対処するための資機材等の整備等を推進し、警護等の高度化を図る。また、実践的な警護の経験を通じた警護員の能力向上を図るため、都道府県警察間における警護員の機動的な運用を推進する。その他、警護対象者等への違法行為に悪用され得る技術の進展等の情勢の変化に的確に対応するため、最新の知見を取り入れつつ、警護等について不断の見直しを行う。【継続的に実施】
        • 各都道府県警察は、警護専従員のみならず、指定警護要員等についても、職務、経験及び技能に応じた実践的教養を確実に受けさせるとともに、警護等に関する体制の状況を点検し、必要に応じて拡充すること等により、警護対象者に対する警護等に万全を期する。また、警護対象者と聴衆の安全を確保するため、主催者との連携を強化する。【体制の状況の点検及び必要に応じた拡充:可能な限り速やかに実施、その他:継続的に実施】
      6. ローン・オフェンダーその他不特定多数の者に危害を加えるおそれのある者に対する対策の強化
        • 警察庁は、いわゆるローン・オフェンダーその他不特定多数の者に危害を加えるおそれのある者に対する対策として、情報収集・集約、危険度評価、危険度に応じた対策等に係る関係部門間の効果的な連携方策について、警備部門を中心に、早急に検討を行う。【令和5年度中に試行実施、令和6年度中に当面構築すべき体制の在り方を決定】
        • 各都道府県警察は、当該検討結果を踏まえ、所要の体制を構築する。【検討結果が示され次第、可能な限り速やかに実施】
      7. 自転車その他の小型モビリティ対策の強化
        • 警察庁は、良好な自転車交通秩序を実現させるための制度の在り方について幅広く検討する。【令和5年度中】
        • 各都道府県警察は、警察署における交通部門と地域部門の連携を抜本的に強化するなど自転車や特定小型原動機付自転車等の指導取締りに従事する体制を実質的に強化した上で、自転車指導啓発重点地区・路線を中心に、PDCAサイクルに基づく、関係所属が連携した指導取締りを行う。【速やかに実施】
  • 組織内の人的リソースを一層有効に活用するために業務の効率化・合理化のための見直しを行うべき事項
    • 社会情勢の変化やそれに伴う治安情勢の変化を踏まえ、創意工夫を凝らした業務改革により、前例踏襲等を排した業務の効率化・合理化を徹底し、組織内の貴重な人的リソースを一層有効に活用するため、警察庁及び各都道府県警察は、以下の取組を推進するものとする。
      なお、記載がない取組についても、各都道府県警察の実情等に応じて、業務の効率化・合理化のための取組を不断に推進するものとする。

      • 情勢に応じた警察の活動拠点や所属の在り方等の見直しを検討するべき事項
        • 警察署の業務見直し
        • 交番、駐在所等の在り方の見直し
        • 本部執行隊等の在り方の見直し
      • 限られた人的リソースの有効活用の観点から業務の実施方法等の見直しを検討するべき事項
        • メリハリのある地域警察活動の推進
        • 交通指導取締りや交通規制の在り方の見直し
        • 交通事故事件捜査の在り方の見直し
        • 引き当たり捜査への情報通信技術の活用
        • 業務上過失事件等の捜査の加速化
        • 保管場所標章関係業務の見直し
        • 許可等関係事務の業務集約
        • 庶務・会計業務の集約
      • その他
        1. 広域的に行われる犯罪等に効率的に対処するための所属を超えた連携の強化
          • 効率的なサイバーパトロール等のための連携強化
            • 警察庁は、サイバー空間における警察のサイバーパトロールが効率的に実施されるよう、これを一元的・集約的に実施することの適否等を含め、効率的なサイバーパトロールのための役割分担の在り方を、全国的な観点から早急に検討する。【令和5年中】
            • 警察庁は、捜査の効率化と部門を超えた捜査員の育成の観点から、都道府県警察の各部門からの若手捜査員の派遣等による警視庁サイバー犯罪対策課協働捜査班の体制拡充等を警視庁と検討する。【令和5年中に方針決定】
          • 特殊詐欺に係る広域的な捜査連携の強化【再掲】
        2. 先端技術の活用等による警察活動の更なる高度化
          • 留置管理業務の高度化
            • 警察庁は、全国警察における実効ある留置事故防止対策を推進するため、非接触型センサにより呼吸等のバイタル情報を計測し、異常を検知する技術の留置管理業務への活用可能性を調査・検討する。【令和5年度に実証実験。令和6年度中の試験導入、令和7年度以降の全国展開を目指す。】
          • ウェアラブルカメラの活用等【施策内容は再掲】
            • 警察庁は、
              • 地域警察活動におけるウェアラブルカメラの活用
              • 交通指導取締りにおけるカメラ映像等の客観的証拠の更なる活用
                等について検討する。【令和5年度中】
          • 許可等関係事務への先端技術の活用【施策内容は再掲】
            • 警察庁は、審査のチェック機能の強化等の観点から、AI等を用いた実証実験を行うなど、許可等関係事務の高度化・合理化のための更なる取組を推進する。【古物営業法の許可に関する実証実験:令和5年度中】
          • 複数の部門にまたがる事案に関する更なる連携の強化
        3. 働きやすい職場環境の形成等
          • 警察庁及び各都道府県警察は、働き方が多様化する中で、より効率的な業務運営をするための見直しを推進するほか、仕事と子育て・介護等の両立を支援するための勤務制度及び資機材を整備するなど、組織内の職員の意見を幅広く把握しつつ、高い規律と士気の保持に資する、働きやすい職場環境の形成を図るための各種取組を的確に推進する。【継続的に実施】
          • 警察庁及び各都道府県警察は、第一線において即時に事案に対処しなければならない職員の職務執行を支援するため、職員からの相談・照会に直ちに応じるための窓口を整備したり、各種マニュアルの整備・改定をしたりするなど、職員のニーズを十分に踏まえつつ、第一線における職務執行を支えるための取組を推進する。【継続的に実施】

~NEW~
法務省 7月は「再犯防止啓発月間」です
  • 平成28年12月に、「再犯の防止等の推進に関する法律」(再犯防止推進法)が公布・施行されました。
  • 同法第6条には、国民の間に広く再犯の防止等についての関心と理解を深めるため、7月を再犯防止啓発月間とする旨が定められています。
  • 法務省では、普段の生活では触れる機会の少ない「再犯防止」というテーマについて、御関心を持っていただけるよう、PRイベントや情報発信を積極的に行っています。
  • 令和5年度の取組
    • 再犯防止啓発ポスターの作成
      • 令和5年3月に「第二次再犯防止推進計画」が策定され、再犯防止の取組は新たな段階を迎えております。
      • そのような今だからこそ、再犯防止がなぜ必要か、改めて考え直すことをコンセプトに、本ポスターを作成しました。
      • 再犯防止は、犯罪をした者等が再び犯罪をすることを防ぐ取組でありますが、その根底には、新たな被害者を生まない、安全・安心な社会の実現という目的があります。
      • 令和5年度の再犯防止啓発ポスターは、そのような思いを一人でも多くの方にお伝えするために、「変わってほしい 被害者も 加害者も 生まない 未来のために」をキャッチフレーズとしました。
      • このポスターは、法務省の出先機関のほか、裁判所、地方公共団体、鉄道会社等にも御協力いただき、全国で掲示いただいています。また、法務省前の祝田橋交差点にあるポスター掲示板のほか、法務省内にも掲示しています。
      • 本ポスターを目にされた一人でも多くの方が、再犯防止について知っていただき、また、考えるきっかけとしていただけますと幸いです。
    • ソーシャルメディアサービス(SNS)を活用した情報発信
      • 令和5年度においても、ソーシャルメディアサービスの「Twitter」や「note」を活用し、再犯防止に関する情報について、集中的に発信を行います。ぜひご覧ください。

~NEW~
法務省 第73回“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~
  • “社会を明るくする運動”とは?
    • “社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~は、すべての国民が、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動です。令和5年で73回目を迎えます。
  • 地域のチカラが犯罪や非行を防ぐ
    • テレビや新聞では、毎日のように事件(犯罪)のニュースが報道されていますが、安全で安心な暮らしはすべての人の望みです。犯罪や非行をなくすためには、どうすればよいのでしょうか。取締りを強化して、罪を犯した人を処罰することも必要なことです。しかし、立ち直ろうと決意した人を社会で受け入れていくことや、犯罪や非行をする人を生み出さない家庭や地域づくりをすることもまた、とても大切なことです。
    • 立ち直りを支える家庭や地域をつくる。そのためには、一部の人たちだけでなく、地域のすべての人たちがそれぞれの立場で関わっていく必要があります。“社会を明るくする運動”では、犯罪や非行のない地域をつくるために、一人ひとりが考え、参加するきっかけをつくることを目指しています。
  • あなたもできることから始めてみませんか
    • “社会を明るくする運動”では、街頭広報、ポスターの掲出、新聞やテレビ等の広報活動に加えて、だれでも参加できるさまざまな催しを行っています。イベントに参加したり、このホームページを見たりしたことなどをきっかけにして、犯罪や非行のない安全で安心な暮らしをかなえるためいま何が求められているのか、そして、自分には何ができるのかを、みなさんで考えてみませんか。
▼「この運動において力を入れて取り組むこと」の例
  • 犯罪や非行をした人の立ち直りを支え、再犯を防止することの大切さや、更生保護の活動について、デジタルツールも活用するなどして、広く周知し、理解を深めてもらうための取組
    • 犯罪や非行をした人たちが社会復帰をするためには、地域社会において彼ら彼女らが孤立することのないよう、その立ち直りを支えていくことが大切です。そのことが再犯を防止し、新たな被害者を生まない、安全・安心な地域社会作りにつながります。
    • 立ち直りを支えるため、国や地方公共団体においては再犯の防止等に関する各種施策が行われ、また、民間においても、更生保護ボランティア等による多様な活動が行われています。施策や活動の内容を広く知ってもらい、理解を深めてもらうことは、地域全体で立ち直りを支える大きなチカラにつながります。
    • 私たちは、本運動を通じて、様々な広報媒体や広報手法を用いて情報の発信に努め、人から人へ、立ち直りを支えることの大切さが広く伝わっていくように努めていきます。
      • 一人ひとりにできる、再犯防止や更生保護の活動を知る関わりの例
        • 再犯防止や更生保護について、SNS等で発信された情報をフォローする
          • 例)法務省Twitter・法務省保護局Twitter・法務省保護局Instagramのフォロー、更生保護ボランティアに関するメッセージ動画の拡散
        • 再犯防止や更生保護をテーマとしたシンポジウムへの参加やオンライン上でのライブ配信を視聴する
          • 例)再犯防止、就労・住居の支援、福祉支援、依存症からの回復支援等をテーマとしたシンポジウムへの参加、ライブ配信の視聴
        • “社会を明るくする運動”に関係する各種イベントに参加する
          • 例)街頭広報活動、ミニ集会、住民集会、公開ケース研究会等への参加
  • 犯罪や非行の防止や、犯罪や非行をした人の立ち直りには様々な協力の方法があることを示し、多くの人に協力者として気軽に参加してもらうための取組
    • 犯罪や非行を防止する、犯罪や非行からの立ち直りを支援する、というと、難しく聞こえるかもしれません。また、「犯罪や非行をした人」という言葉からは、怖い、どう接したらよいか分からない、といったイメージを持たれることもありますし、関わりといっても、何をしたらよいか分からないという人もいるかもしれません。
    • しかし、協力の方法は様々です。例えば、身近なところでは、地域に孤立していそうな人がいたら、挨拶をしてみること。そのことが、孤立を少しでも防ぎ、ひいては犯罪に陥ることを防ぐことにつながるかもしれません。様々な人が、自分にできることで支え手となり、それが層のように重なれば、大きく豊かな運動となります。
    • 私たちは、本運動を通じて、犯罪や非行の防止と犯罪や非行からの立ち直りに理解を示してくれる人たちに、多様な関わり方の例を示し、多くの協力者を巻き込んだ運動となるように努めていきます。
      • 見守りとしての関わりの例
        • 地域にいる、犯罪や非行から立ち直ろうとしている人に対し、偏見を持たず、温かい視線で見守る
        • 地域で孤立していそうな人がいたら、声を掛けてみる
      • 資金や物資面での関わりの例
        • 犯罪や非行をした人の立ち直りを支援する事業のクラウドファンディングに協力してみる
        • 犯罪や非行をした人が関わるソーシャルファームの作る農作物を購入してみる
        • 立ち直り応援基金へ寄附をする
      • 各種行事への関わりの例
        • 犯罪や非行の防止や立ち直りを支援するイベントにサポートスタッフとして関わる
  • 保護司、更生保護女性会会員、BBS会員、協力雇用主等の更生保護ボランティアの活動を支援し、なり手を増やすための取組
    • 犯罪や非行をした人は、刑務所での刑を終えるなどした後、再び地域に戻り、地域において再出発を図ります。その人たちに対し、同じ地域社会の一員として、彼ら彼女らを支える多くの更生保護ボランティアが存在します。保護司、更生保護女性会会員、BBS会員、協力雇用主等、民間の立場から関わる更生保護ボランティアが地道な活動を積み重ねているからこそ、地域社会における、息の長い支援が形作られているのです。
    • しかし、日本では、社会の変動により、少子高齢化や地域社会における人間関係の希薄化が進み、保護司を始めとするボランティアが減少傾向にあり、従前のような活動が難しくなってきています。
    • 私たちは、本運動を通じて、更生保護ボランティアの様々な活動を広報し、それを体験する機会を提供したり、更生保護の各種イベントを行う際に広く市民からサポートスタッフを募集したり、更生保護ボランティアになるための方法を広く周知するためのセミナーを行ったりして、更生保護ボランティアのなり手を増やし、活動を発展させていくことができるよう努めていきます。
      • 一人ひとりにできる、更生保護ボランティアの活動を発展させるための関わりの例
        • 更生保護ボランティアの活動を体験する
          • 例)保護司活動インターンシップへの参加、“社会を明るくする運動”各種イベントへの参加、保護観察所への問合せ
        • 更生保護ボランティアになるための方法を知る
          • 例)保護司セミナーへの参加、“社会を明るくする運動”各種イベントへの参加、法務省ホームページ・保護局公式Twitter等の閲覧、保護観察所への問合せ
  • 民間協力者と地方公共団体と国との連携を強化しつつ、犯罪や非行をした人が、仕事、住居、教育、保健医療・福祉サービスなどに関し必要な支援を受けやすくするためのネットワークをつくる取組
    • 犯罪や非行をした人たちの中には、その背景に、虐待、貧困、ホームレス、学習機会の不足、高齢・障害、依存など様々な「生きづらさ」を抱えている人たちが少なくありません。また、一人の人が複数の生きづらさを抱え、制度を利用して支援を受けたいけれども、制度と制度の狭間に陥り、適切な支援を受ける機会を逸しているということもあります。
    • その人たちの立ち直りを支えるには、農福連携のように、異なる立場や分野の支援者が互いに手を携えてネットワークを作り、そのネットワーク全体で生きづらさを解消していく必要があります。
    • 私たちは、本運動を通じて、犯罪や非行をした人たちの立ち直りを息長く支えるネットワークを作るための取組を展開していきます。
      • ネットワーク作りの例
        • “社会を明るくする運動”推進委員会の構成機関・団体に、様々な立場や分野の機関・団体に加入していただく
        • “社会を明るくする運動”関連のポスターや広報資材を、幅広い機関・団体に掲出していただく
        • 就労、住居、教育、保健医療・福祉サービス(農福連携を含む。)を担当する機関や、様々な「生きづらさ」を抱えている人への支援を行う団体と、更生保護の関係機関・団体が、それぞれの分野に携わる人に参加を促しながら、犯罪や非行からの立ち直りに関するシンポジウムその他のイベント等を実施する
  • 犯罪や非行が起こらないよう、若い人たちの健やかな成長を期する取組
    • 近年、地域の人間関係の希薄化が進み、地域全体で若い人たちを見守る機会の減少や、子育て世帯の孤立による児童虐待、コミュニケーションの不足による孤立等を背景に、様々な社会のひずみへとつながり、そのことが、若い人たちの健やかな成長を阻み、非行や犯罪につながっていることが考えられます。
    • 私たちは、本運動を通じて、若い人たちの健やかな成長を期する取組を行い、その取組に多くの人々に参加していただけるよう、呼びかけに努めていきます。
      • 若い人たちの健やかな成長を期する取組への関わりの例
        • 学校や地域で行われる非行防止集会に参加する
        • 大学で行われる非行防止のためのワークショップに参加する
        • “社会を明るくする運動”に関係する各種イベントに参加する
      • 子育て世帯支援への関わりの例
        • 更生保護女性会が行う子育て支援教室に参加する

~NEW~
厚生労働省 第4回飲酒ガイドライン作成検討会 資料
▼【資料2】飲酒ガイドラインに記載する内容(たたき台)
  • 飲酒による身体等への影響について
    • 飲酒した際、飲んだお酒に含まれるアルコールの大半は、小腸から吸収され、血液を通じて全身を巡り、肝臓で分解されます。アルコールの分解には、体内の分解酵素と呼ばれる物質等が関与しています(*)が、体質的に分解酵素のはたらきが弱いなどの場合には、少量の飲酒で体調が悪くなることがあります。*肝臓で、アルコールはアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解されます。酢酸は筋肉や心臓に移動してさらに分解され、最終的に炭酸ガスと水になります。
    • 飲酒による影響には個人差があり、例えば年齢、性別、体質等の違いによって、それぞれ受ける影響が異なります。主な身体への影響として、以下のような特有の状態変化や固有のリスクなどが生じる可能性があります。なお、体調など個人のそのときの状態にも左右されます。
      • 年齢
        • 高齢者は若い時と比べて、体内の水分量の減少等で同じ量のアルコールでも酔いやすくなり、飲酒量が一定量を超えると認知症の発症リスクが高まる可能性[2]があります。併せて、飲酒による転倒・骨折のリスクが高まります。
        • 20代の若年者については、脳の発達途中であり、多量飲酒によって脳の機能が落ちるとのデータもあるほか、健康問題(高血圧等)のリスクが高まる可能性もあります。
      • 性別
        • 女性は、一般的に、男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないことや、エストロゲン(女性ホルモンの一種)等のはたらきにより、アルコールの影響を受けやすいことが知られています。このため、女性は、男性に比べて少ない量かつ短い期間での飲酒でアルコール性肝硬変になる場合があるなど、アルコールによる身体への影響が大きく表れる可能性があります。
      • 体質
        • アルコールを分解する体内の分解酵素のはたらきの強い・弱い(*)などが、個人によって大きく異なります。分解酵素のはたらきが弱い場合などには、飲酒により、顔が赤くなったり、動悸や吐き気がする状態になることがあります。(これを「フラッシング反応」と言います。)そのような人が、長年お酒を飲んで不快にならずに飲酒できるようになった場合でも、アルコールを原因とする口の中のがんや食道がん等のリスクが非常に高くなるといったデータがありますので注意が必要です。*分解酵素のはたらきの強弱は、遺伝子によるものと言われています。
        • また、過度な飲酒や、飲酒後の行動によって、以下のようなリスクが高まる可能性があります。
    • 疾病発症等のリスク
      • 急激に多量のアルコールを摂取すると急性アルコール中毒になるリスクがあります。また、長期にわたって多量に飲酒をすることによって、アルコール依存症(*)、生活習慣病、肝疾患、がん等の疾病の発症のリスクが高まります。*アルコール依存症とは、大量のお酒を長期にわたって飲み続けることが主な原因で発症する精神疾患の一つです。お酒をやめたくてもやめることができない、飲む量をコントロールできない等の症状により、仕事や家庭など生活面にも支障が出てくることがあります。
    • 行動面のリスク
      • 使用することで危険を伴う機器等の利用による事故などの発生、他人とのトラブル等、飲酒後に適切ではない行動をとることによって生じるリスクなどがあります。
  • 飲酒量(アルコール量)について
    • 飲酒をするに当たっては、飲酒の量に注意することが重要ですが、お酒に含まれるアルコール量に関しては、「グラム(g)=お酒の量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8」で表すことができ、食品のエネルギー(kcal)のようにその量を数値化できます。お酒に含まれるアルコール量(g)を数値として認識し、自身のアルコール摂取量を把握することで、例えば疾病発症等のリスクを避けるための具体的な目標設定を行うなど、自身の健康管理にも活用することができます。
    • このため、単にお酒の量(ml)だけでなく、お酒に含まれるアルコール量(g)について着目することは重要です。
    • 飲酒量(アルコール量)については、第2期計画や令和6年度から開始予定の健康日本21(第三次)において、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」として、「1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」と示されています。これを参考に、より少ない量での飲酒を心がけることは、生活習慣病リスクの上昇を抑えることにつながるものと考えられます。なお、飲酒の影響を受けやすい体質を考慮する必要がある人や、体調不良の場合などには、より少ない飲酒量(アルコール量)とすることが望まれます。
    • また、世界保健機関(WHO)等においても、飲酒量(アルコール量)が少なくなるほど、飲酒によるリスクはより少なくなると言われています。飲酒量(アルコール量)が多くなることは、身体へのリスクを高めるだけでなく、飲酒後の危険な行動につながる可能性も高めます。・これらを避けるよう、飲酒量(アルコール量)に注意していくことが重要です。
  • 飲酒に係る留意事項
    • 飲酒をする場合又は飲酒をしようとする場合には、身体等への影響を考慮し、以下の点に留意することが重要です。
      1. 避けるべき飲酒等について
        • 避けるべき飲酒や飲酒に関連した行動には、例えば以下のようなものが挙げられます。飲酒をする場合には、自分が現在どのような状況にあるのかを確認し、飲酒に適するかを個別に判断していく必要があります。
          • 多量のアルコール摂取や急激な飲酒、特に短時間の大量飲酒
            • 様々な身体疾患の発症や、急性アルコール中毒を引き起こす可能性があります。一時多量飲酒(過去30日間で一度の純アルコール摂取量60g以上)は、外傷のリスクも高めるものであり、避けるべきです。
          • 他人への飲酒の強要
            • 飲酒は様々なリスクを伴う可能性があるものであり、他人に無理な飲酒を勧めることは避けるべきです。併せて、飲酒を契機とした暴力や暴言などにつながらないように配慮しなければなりません。
          • 不安や不眠を解消するための飲酒
            • 不安の解消のための飲酒を続けることによって依存症のリスクの増大を招いたり、飲酒により眠りが浅くなり睡眠リズムを乱す等の支障をきたすことがあります。
          • 病気等療養中の飲酒や投薬後の飲酒(病気等の種類や薬の性質により変わります)
            • 病気等の療養中は、過度な飲酒で免疫力がより低下し、感染症にかかりやすくなる等の可能性があります。また、投薬後に飲酒した場合は、薬の効果が弱まったり、副作用が生じることがあります。飲酒の可否、量や回数を減らすべきか等の判断は、主治医に尋ねる必要があります。
          • 飲酒中又は飲酒後における運動・入浴などの体に負担のかかる行動
            • 飲酒により血圧の変動が強まることなどによって、心筋梗塞などを引き起こす可能性や、転倒などにより身体の損傷を引き起こす可能性があります。
      2. 配慮のある飲酒の仕方等について
        • 飲酒をする場合においても、リスクを下げるために、例えば、以下のような配慮等をすることが考えられます。これらにも留意することが重要です。
          • 飲酒に際して自らの状態や体調等を把握する
            • 自分の状態に応じた飲酒により、飲酒のリスクをコントロールすることが重要です。AUDIT(問題のある飲酒をしている人を把握するために世界保健機関(WHO)が作成したスクリーニングテスト。飲酒問題の早期発見等のため、10項目の簡易な質問でアルコール関連問題の重症度の測定を行うものです。)等を参考に、自らの飲酒の習慣を把握することなどが考えられます。
          • 身体等へのリスクを高める飲酒量(アルコール量)を踏まえて、あらかじめ飲酒する量を決めて飲酒をする
            • 自ら飲む量を定めることで、過度な飲酒を避けるなど飲酒行動の改善につながると言われています。行事・イベントなどの場で飲酒する場合も、各自が何をどれくらい飲むかなどをそれぞれ自分で決めて飲むことが大切です。
          • 飲酒前又は飲酒中に食事をとる
            • 血中のアルコール濃度を上がりにくくし、お酒に酔いにくくする効果があります。
          • 飲酒の合間に水(炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする(水などを混ぜてアルコール度数を低くして飲酒をする、少しずつ飲酒する、アルコールの入っていない飲料の選択肢も考慮するなど)
            • 飲む量に占めるアルコールの量を減らす効果があります。
          • 一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)
            • 毎日飲酒を続けた場合、アルコール依存症の発症につながる可能性があります。このため、定期的に飲酒をしないようにするなど配慮が必要です。
      3. その他留意事項
        • そのほか、法律で禁止されている場合や、特殊な状態で飲酒を避けることが必要な場合などとして、以下のようなものがあります。
          • 法律違反に当たる場合等
          • 飲酒運転(自転車の運転を含む)※飲酒時には、安全運転に必要な情報処理能力、注意力、判断力等が低下します。
          • 20 歳未満の飲酒 ※脳の発育に悪影響を及ぼし、若い頃からの飲酒によって依存症になる危険性も上がります。
          • 飲酒による不適切な状態での動作や判断によって事故や事件を招いてしまう行為(フォークリフト等の機械の操作等)
        • 特殊な状態で飲酒を避けることが必要な場合等
          • 妊娠中・授乳期中の飲酒 ※胎児性アルコール症候群等をもたらす可能性があります。 ※授乳期中などには、家庭内などの周囲の理解や配慮が必要です。
          • 体質的にお酒を受け付けられない人(アルコールを分解する酵素が非常に弱い人等)の飲酒 ※アルコールを分解する酵素が非常に弱い人は、ごく少量の飲酒でも、強い動悸、急に意識を失うなどの反応が起こることがあり危険です。

~NEW~
厚生労働省 第123回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年7月7日)
▼【資料1】直近の感染状況の評価等
  • 感染状況や医療提供体制の状況等
    • 新規患者数は、4月上旬以降緩やかな増加傾向となっており、5類移行後も7週連続で増加が継続している。(全国の6/26~7/2の定点当たり7.24人、前週比1.18)
    • 地域別の新規患者数は、46都道府県で前週より増加傾向にあり、特に沖縄県で感染の拡大がみられる。(沖縄県の6/26~7/2の定点当たり48.39人、前週比1.23)
    • 全国の年代別新規患者数は、すべての年代で前週より増加傾向にある。
    • 変異株の発生動向について、系統の割合が大部分を占めており、特にXBB.1.16系統は増加傾向、XBB.1.5系統は低下傾向、XBB.1.9系統は横ばいとなっている。
    • 新規入院者数や重症者数は、いずれも増加傾向となっている(直近のデータほど過小評価となっている点に留意が必要)。
    • 医療提供体制の状況について、全国的にひっ迫はみられないが、沖縄県では入院者数の増加や院内クラスターの発生により、医療への負荷が増加している状況にある。
    • 救急医療について、救急搬送困難事案数はコロナ疑い、非コロナ疑いともにほぼ横ばいとなっている。
    • 夜間滞留人口について、5類移行後において、全国的に大きな増加はみられていない。
  • 今後の見通し
    • 過去の状況等を踏まえると、新規患者数の増加傾向が継続し、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある。また、感染拡大により医療提供体制への負荷を増大させる場合も考えられる。
    • 自然感染やワクチン接種による免疫の減衰や、より免疫逃避が起こる可能性のある株の割合の増加、また、夏休み等による今後の接触機会の増加等が感染状況に与える影響についても注意が必要
  • 今後の取組
    • 引き続き、感染動向等を重層的に把握するとともに、特に、感染の拡大がみられる沖縄県と密接に連携を取っていく。
    • 地方自治体や医療関係者などと連携して、高齢者や基礎疾患を有する方など重症化リスクの高い方等について、ワクチン接種を行うとともに、感染拡大が生じても必要な医療が提供されるよう、幅広い医療機関で新型コロナ患者に対応する医療体制への移行を引き続き進めていく。
    • 手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用など、基本的な感染対策に関する広報を引き続き強化していく。

~NEW~
経済産業省 第二期スポーツ未来開拓会議中間報告を公表します
▼中間報告書概要版
  • 少子化が進む中、「みる」スポーツと地域スポーツの好循環によるスポーツ産業の成長を実現する。
  • 全般:方向性・具体的取組
    • エンターテインメントの選択肢が拡大している中、みるスポーツの更なる拡大には、観戦体験を高度化する新たなサービス展開やホスピタリティビジネスの拡大により、より一層のコンテンツの魅力拡大が必要。
    • さらに、急速な少子高齢化を踏まえ、国内市場のみならず海外に市場展開することは急務。
    • これらの取組を支える人材の育成も重要な課題。
  • 方向性
    1. スポーツコンテンツの魅力向上
      • 最新技術を利用した視聴価値向上や、DXを活用した新たなサービス展開・スポーツ振興くじの充実等によりスポーツへの関心を喚起する。
    2. スポーツチームの価値に対する理解増進
      • チームの存在が地域に多様な価値を生むことについて、チームが主体的に発信し、地域住民の理解を増進する。
    3. スポーツへの関心拡大に向けた取組の強化
      • 地元自治体による試合日程の周知・イベント主催や、スポーツチーム同士の連携による共同プロジェクトの取組を強化。
    4. ホスピタリティ関連ビジネスの拡大
      • スタジアムアリーナにおける個室や特別席の設置、高価な飲食の提供、選手交流など様々なサービスによるイベントを高付加価値化。
    5. 海外展開推進
      • 急速な少子高齢化を踏まえ、国内市場のみならず海外への市場展開を推進する。
    6. 他産業との連携推進
      • スポーツチームの有するリソースをオープン化することにより、民間企業・大学等と連携してイノベーションの創出を目指す。
    7. 経営を担う優秀な人材と資金が循環するエコシステムの構築
      • スポーツチームへの投資による経営人材の呼び込み、それによる収益増加に伴う更なる人と資金の好循環を生み出すことを目指す。
  • 今後の具体的な取組
    • 「みる」スポーツに関する情報発信
    • 「ホスピタリティ」によるスポーツ観戦文化の変革
    • スポーツチームの価値算定手法の確立
    • スポーツ産業の国際展開支援
    • スポーツオープンイノベーションの促進
    • アマチュアスポーツ団体等の「みる」スポーツへの展開支援
    • スポーツ経営人材育成システムの検討
    • スポーツ振興くじの魅力拡大
  • 事例
    • ホスピタリティビジネスを拡大し、様々なニーズに応えるサービスを展開し現地での観戦価値を拡大。
    • これまでの場所の概念にとらわれず、付加価値の高い観戦体験の拡張。
    • 市場を海外に拡大すべく、我が国のスポーツコンテンツを国内のみならず海外にも展開。
    • 海外選手の獲得をきっかけにインバウンドにもつなげる取組を推進。
  • スタジアム・アリーナ改革:方向性・今後の取組
    • 近年、民間活力を活用した「指定管理者制度」や「PFIコンセッション方式」、「企業版ふるさと納税」制度の活用などによる施設整備の事例も増えてきているが、引き続き、資金調達の支援制度等の在り方の検討が必要。
    • 特に、海外では、医療・福祉施設の併設による健康づくりや、企業・大学等との協業に貢献する新しい公共財としての施設機能を付与させることで投資を呼び込む動きが注目されていることも踏まえ、スタジアムやアリーナがもつ社会的価値の可視化に向けた算定手法の検討も進める必要がある。
  • スタジアム・アリーナ改革:事例
    • 地域住民の「健康づくり」に貢献し、地域社会においてスタジアムが住民にとって「なくてはならない施設」とすることで、大きな成功を収めている、公設公営の最先端モデルのスポーツ複合施設。
    • スポーツアクティビティに留まらない、データを起点とした様々なサービスプログラムの組み合わせと利便性向上によって、市民の健康づくりコミュニティ創出に寄与するスポーツ・健康増進空間を創出。
  • スポーツDX推進による収益拡大:方向性・具体的取組
    • 近年、スポーツでも放送・配信、ファンエンゲージメント、競技力強化、選手管理、審判・判定への活用など多くの分野でDXが進展。
    • スポーツDXによってビジネスを多角化し収益拡大につなげるため、必要なルール整備を進めるほか、様々活用されるスポーツデータ等の権利性を明確化し、無許諾利用への対応を進めることが必要。
  • スポーツDX推進による収益拡大:事例
    • NFT×ファンタジー
      • デジタルトレーディングカード(NFTカード)とファンタジースポーツの要素を取り入れたサービス。海外では大きな人気を博しているが、日本でのサービス展開のアウトラインが不明確。
    • データの権利性等の明確化とインテグリティの強化
      • 日本のスポーツも海外スポーツベッティング市場において対象になっていることをふまえ、スポーツデータ等の権利を明らかにし、無断に使用された場合の対応策や、国内におけるインテグリティ対策を進める必要。
      • 例えば、海外では、民間のデータ会社が提供するモニタリングシステムを用いて不正を検知し、規制当局やスポーツ団体等に報告する取組が進んでいる。
  • スポーツツーリズムの活性化:方向性・具体的取組
    • 訪日外国人旅行者の増加、地方への誘客、消費額の増加促進が重要とされており、我が国の強みを生かしたスポーツツーリズムを引き続き推進。
    • 国内居住者の国内宿泊旅行に伴う消費額は訪日外国人の3倍以上である中、アウェイツーリズムなど、プロスポーツコンテンツのポテンシャルを活用した取組を推進しつつ地域へ誘客促進することが必要。
    • ほとんどの観光客は複数の目的をもって観光行動を行う中、スポーツをこの目的の一つに如何に組み込むかという戦略を競技、リーグ横断で連携し検討することが必要。
  • すべての世代をスポーツに誘導:方向性・具体的取組
    • スポーツは、身体的健康のみならず、精神的、また社会的な健康に良い影響をもたらすとされており、Well-beingの向上に大きく貢献するもの。
    • 先端技術を活用したスポーツへの関心を喚起する商品開発等、企業で進められている取組との連携も図りつつ、人々のライフパフォーマンスを向上させるスポーツの推進に取り組むことが重要。
  • 地域スポーツの環境整備:方向性・具体的取組
    • 少子化等によって子供の運動機会が減少し、将来にわたってスポーツを「する」者が減っていくことは、スポーツ産業の持続可能性という観点でも危機的状況。
    • 地域スポーツ環境の再構築に向け、企業に対する学校体育施設等の開放等により、プロスポーツチームや民間スポーツ関連企業等の多様な主体の積極的な参入を促すとともに、スポーツ機会を保証する方策を財源と共に検討することが必要。

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経済産業省 IAEAが東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書を公表しました
  • 日本政府が、2021年4月に発表した基本方針を受け、日本政府と国際原子力機関(IAEA)との間で、令和3年7月8日に署名された、ALPS処理水の取扱の安全性に係るレビューの包括的な枠組みに関する付託事項(TOR)に基づき、これまでIAEAによる一連のレビューが行われてきました。7月4日、これらのレビューを総括する報告書がグロッシーIAEA事務局長から岸田総理に手交され、IAEAから公表されました。
  • IAEA包括報告書の要旨(Executive Summary)においては、以下の結論が述べられています。
    • 包括的な評価に基づき、IAEAは、ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東電、原子力規制委員会及び日本政府による関係する活動は関連する国際的な安全基準に整合的であると結論付けた。
    • 包括的な評価に基づき、IAEAは、東電が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けた。
  • また、IAEAは、同要旨の中で、放出前、放出中及び放出後もALPS処理水の放出に関し日本に関与することにコミットし、追加的レビュー及びモニタリングが継続予定であることは、国際社会に追加的な透明性及び安心を提供するものであると述べています。
  • 日本政府は、同報告書の内容を詳細に確認した上で、透明性をもって国内外に情報発信してまいります。また、今後とも、IAEAに対する必要な情報共有を継続するとともに、ALPS処理水の海洋放出について、国際社会の一層の理解を醸成していくことに努めます。
  • [参考]ALPS処理水
    • ALPS(多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System))等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化した水。さらにALPS処理水は、その後十分に希釈され、トリチウムを含む全ての放射性物質について安全に関する規制基準値を大幅に下回るレベルにした上で、海洋放出されることが想定されている。

~NEW~
経済産業省 「アートと経済社会について考える研究会報告書」を公表します
  • 経済産業省として初めてアート産業の振興について検討を行いました。その課題や対応の方向性を取りまとめた「アートと経済社会について考える研究会」の報告書を公表します。
  • 文化芸術は経済社会を支える主要なエンジンであるとの認識が世界的に共有されていますが、日本におけるアート市場規模はまだまだ小さいなど、文化芸術と実経済社会との間には隔たりがあると考えられます。
  • 経済産業省では、アートの持つ経済産業的意義を確認しつつ、需要を拡大し、アートと経済社会が互いに支え合い発展していくようなエコシステムの構築に向けて「アートと経済社会について考える研究会」を設置し、議論を積み重ねてきました。
  • この度、議論の内容及び今後のアート産業の振興に向けた課題や対応策等を取りまとめた報告書を公表します。
  • 議論のポイントは以下の通りです。
    • 企業のアートに対する需要の拡大に向け、アートの企業競争力等に関するエビデンス等の周知・普及や、企業が過去に購入したアートの活用に向けた取組が必要であること
    • 地域活性化や観光需要獲得等の意義を踏まえ、地域においてアートを活かすためのノウハウを整理することが必要であること
    • 創造的な社会の実現に向け、多くの人々がアートに親しむことが重要であり、アートが社会生活に浸透しやすい環境整備に向け、多くの・人に開かれた市場の設計が重要であること
    • テクノロジーを用いたアートが、イノベーションを促す面も踏まえ、メディアアーティストの育成等が必要であること
  • また、報告書の内容に関する各有識者のコメントの一部を御紹介いたします。
    • 大林 剛郎 (研究会座長)(株式会社大林組代表取締役会長)
      • これからの時代には「やりたいことをやる」、「人と違うことをやりたい」ということも大事であり、このような要素がアートや人文知にあるのではないかと考えています。
      • 企業においては、不確実性が高まる中でステークホルダーを束ねる求心力、グローバル化の中での差別化、AIに代替されない創造性あふれるイノベーション人材の育成等が求められる中で、アートが貢献できる余地があると考えられます。
    • 日比野 克彦 (東京藝術大学学長)
      • (アートの持つ力とは)一人一人違っているということを受け入れることができる力だと思います。
      • 「多様性を持つ社会をどうやってつくるのか?」「ダイバーシティとは何なのか?」「誰一人取り残さないためにはどうすればいいのか?」そういう問いが立ちはだかった時に、多様な個性を否定せず受け入れる力、アートの特性である分からないものを引き受ける力が必要です。
    • 武田 菜種(Plugin+代表/Art Basel VIPレプレゼンタティブ日本/アートウィーク東京VIPリレーションズ)
      • 現代アートは人や社会に新しい考え方や視点、自由な発想を提供し、受け手側に考察する機会をもたらし対話を生みます。
    • 齋藤 精一(パノラマティクス主宰)
      • よそ者としてのアーティストの活動は、作品としてのアウトプットだけではなく、作品制作の過程に起こる様々な摩擦や文脈を作り出し、鑑賞者と作品、土地と鑑賞者、地域と鑑賞者、地域同士の会話等、結果として様々な会話を創発することができます。

~NEW~
総務省 令和5年「情報通信に関する現状報告」(令和5年版情報通信白書)の公表
▼別添1「令和5年版情報通信白書の概要」
  • 第1部:新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
    • 通信インフラの高度化やデジタルサービスの多様化等に伴い、データ流通も進展。
    • インターネット普及初期の頃はホームページ閲覧など片方向のデータの流通が中心(Web1.0)。2000年代に入り、SNS等の普及により、不特定多数のユーザ間での双方向のデータのやり取りが進展(Web2.0)。近年は、ブロックチェーンを活用したデータの流通・分散管理をベースとするWeb3が注目
    • さらに、我が国を含む各国でメタバースや生成AIを活用した新たなサービスも登場(例:Chat GPT、プロンプト型画像生成AI)
    • 我が国の企業でもデータの活用が進展する一方、米国の企業と比較すると活用状況は低調
    • 活用の課題・障壁として、我が国では「データの収集・管理に係るコスト」や「データの管理に伴うリスクや社会的責任の大きさ」を挙げる企業が多い
    • SNS、検索などプラットフォーマーの提供するデジタルサービスは我々の生活の利便性向上に貢献する一方、一定数のユーザは、サービス利用時にプラットフォーマーへパーソナルデータを提供することについて不安を感じている
    • プラットフォーマーへパーソナルデータを提供する際に重視する点について、我が国では、「十分なセキュリティの担保」、「データの利用目的」、「適切なデータの取扱い方法」を挙げるユーザが多い
    • SNS等プラットフォームサービス上では、その特性(例:アテンション・エコノミー、アルゴリズム)により、自分と似た意見にばかり触れてしまうようになる(エコーチェンバー)、自分好みの情報以外が自動的にはじかれてしまう(フィルターバブル)等、「情報の偏り」が生じやすい
    • SNS等の普及により、利用者が様々な情報を容易に入手・発信可能となる一方、誹謗中傷や偽・誤情報の流通・拡散の問題も顕在化。AI・ディープフェイクの普及により、偽画像・動画の拡散が加速するおそれ
    • SNS等では自分に近い意見や考え方等が表示されやすい傾向があることについて知っている(「よく知っている」と「どちらかと言えば知っている」の合計)と回答した割合は、欧米と比較すると低い。また、我が国について年代別に見ると、50歳代及び60歳代では他の年齢層と比較すると低い
    • また、ファクトチェック等の偽・誤情報に関連した取組の認知度も他国と比較すると低い状況
    • データを活用した多様なデジタルサービスは我々の生活に深く浸透。Web3の応用技術やメタバース等の新たなサービスも注目を集めており、地域活性化、防災等の我が国が抱える様々な社会的・経済的課題解決に貢献すると期待
    • データの安全かつ適正な流通を促進し、データ利活用の恩恵を誰もが享受できる社会の実現に向けた取組の推進が重要
      • データ流通を支える強靱な通信ネットワーク
        • 非常時でも継続的にデジタルサービスを利用できる環境の実現に向けて、災害に強い通信ネットワークの構築、代替手段の確保(例:事業者間ローミング、非地上系ネットワークの活用)
        • 災害に対するレジリエンス向上等の観点から、データセンターや海底ケーブル等の立地分散化を推進
        • 国際情勢が複雑化する中、経済安全保障の観点から、サイバーセキュリティやサプライチェーンリスクへの対応を強化
      • 超高速・超大容量のデータ流通を支えるBeyond5Gの早期実現
        • メタバース等の新たなサービスの普及、データ主導型のSociety5.0の実現に向けて、超高速・超大容量・超低遅延のデータ流通を可能とするBeyond 5G(6G)に向けた取組を強化・加速
        • 地球温暖化等環境問題が深刻化する中、超低消費電力でのデータ流通を可能とするBeyond 5Gの早期実現が必要
      • 標準化・国際ルール形成への貢献
        • 国境のないデジタル空間では、国際社会と連携して標準化やルールを推進・形成していくことが重要
        • 普及・進化が著しいAIについては、G7広島サミットで立ち上げられた「広島AIプロセス」やG7デジタル・技術大臣会合で合意されたアクションプラン等に基づき、各国と連携してAIの利用環境整備等を推進
        • メタバースについては、メタバース間の相互運用性の実現、関連技術の国際標準化等に向けた取組を促進
      • 豊かかつ健全な情報空間の実現
        • 様々なデータ・情報が流通するインターネット空間において、国民一人一人が、適切に情報を受発信したり、AI等の新たなツール・サービスを正しく活用したりするためのリテラシーの向上
        • 表現の自由に配慮するとともに、透明性を確保した上で、情報の媒介者であるプラットフォーム事業者を含めた幅広い関係者による自主的取組(例:ファクトチェック、研究開発)の促進
  • 第2部:ICT市場の動向
    1. 総合的なICT政策の推進
      • デジタル田園都市国家構想の推進
        • 構想の実現に向け、「ハード・ソフトのデジタル基盤整備」、「デジタル人材の育成確保」、「誰一人取り残されないための取組」等の取組を加速
        • 「デジタル田園都市国家インフラ整備計画(改訂版)」に基づき、光ファイバ、5G等デジタル基盤の整備を強力に推進
      • 2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方に関する検討
        • 情報通信審議会 情報通信政策部会 総合政策委員会で、我が国の情報通信産業の国際競争力と安全安心な利用環境の確保の視点から、予想される2030年の未来の姿からのバックキャストを行い、10年後の情報通信政策のあるべき方向性等について議論し、2023年6月、「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」最終答申を取りまとめ、公表
    2. 電気通信事業政策
      • デジタルインフラの整備・維持、安心性・信頼性の確保
        • 「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の目標達成(光ファイバ世帯カバー率(2027年度末):99.9%)に向けた光ファイバの整備、「デジタルインフラ整備基金」によるデータセンターや海底ケーブルの地方分散の支援等を実施。また、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を開催し、非常時における携帯電話事業者間のネットワーク相互利用等に関する検討を実施
      • 安心・安全な利用環境の整備
        • 消費者保護ルールの整備、インターネット上の違法・有害情報や偽・誤情報への対応等の取組を推進
    3. 電波政策
      • 5Gの普及・展開
        • 「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の目標達成(5G人口カバー率(2025年度末)全国97%)に向けて、補助金・税制措置による5Gの普及促進、インフラシェアリングの推進等の取組を実施
    4. 放送政策
      • 放送の将来像と放送制度の在り方の検討
        • 「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の提言等を踏まえ、設備の共用化の推進、マスメディア集中排除原則の見直し、複数地域での放送番組の同一化等を可能とするための制度整備等を実
      • 放送ネットワークの強靱化、耐災害性の強化
        • ケーブルテレビの光化による放送ネットワークの耐災害性強化等を通じて、災害時にも情報を確実に届けられる環境の整備を推進
    5. サイバーセキュリティ政策
      • 情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保
        • 国民が安心してICTを利用できる環境を整備するため、IoT機器のセキュリティ確保、電気通信事業者によるC&Cサーバの検知等の取組の促進、サプライチェーンリスク対策に関する取組等を推進
      • サイバーセキュリティ人材の育成
        • NICTのナショナルサイバートレーニングセンターを通じたサイバーセキュリティ人材育成の取組(CYDER等)を推進
    6. ICT利活用の推進
      • 社会・経済的課題の解決につながるICT利活用の推進
        • ローカル5Gの推進、テレワークの普及促進、教育・医療等におけるICT利活用の推進
      • 誰もがICTによる利便性を享受できる環境の整備
        • 年齢や障害によるデジタルディバイドを解消し「誰一人取り残さない」デジタル化に向けた取組(高齢者等を対象としたデジタル活用支援、情報バリアフリー促進支援等)、ICT活用のためのリテラシー向上に向けた検討・取組等を推進
    7. ICT技術政策
      • Beyond 5Gに向けた研究開発と実装、国際標準化
        • 次世代情報通信インフラBeyond 5G(6G)の実現に向けて、新たな基金を活用し、我が国が強みを有する技術分野を中心として、社会実装・海外展開を目指した研究開発を強力に推進するとともに、産官学の連携によるBeyond 5G(6G)の国際標準化等を推進
    8. ICT国際戦略
      • 我が国のICT分野における国際競争力強化と世界の社会課題解決への貢献
        • 我が国の国際競争力強化と世界的な課題解決への貢献のため、デジタルインフラ等の海外展開、デジタル分野での二国間・多国間における連携(日米、日欧、QUAD、G7、IGF等)等を推進
        • 2023年4月のG7デジタル技術・大臣会合では、議長国である我が国の主導により、「安全で強靭性のあるデジタルインフラ」、「自由でオープンなインターネットの維持・推進」、「責任あるAIとAIガバナンスの推進」等6つのテーマについて議論が行われ、本会合の成果として「G7デジタル・技術閣僚宣言」を採択
    9. 郵政行政
      • デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方の検討
        • 郵便局におけるマイナンバーカードの普及・活用策の検討、行政サービスの窓口としての活用推進、郵便局と地域の公的基盤との連携に関する実証事業等を実施

~NEW~
総務省 我が国における青少年のインターネット利用に係るペアレンタルコントロールの効果的な啓発に関する調査結果の公表
  • 主な知見
    • スマートフォンの利用率が高まる中、未就学児のスマートフォン利用率も既に約25%に達している。また、中学校入学や高等学校入学など、ライフステージが変わるタイミングで利用率が大幅に増える傾向にあり、中学1年生の利用率は75.4%、高校1年生での利用率は96.4%である。
    • ペアレンタルコントロールを実施していない・関心のない保護者は、ペアレンタルコントロールに関するリテラシーが低い傾向が顕著に見られ、青少年のスマートフォン利用に関するトラブル遭遇経験が不明(30.9%)、遭遇に気づいても特に対応しない割合(34.8%)が高い。
    • ペアレンタルコントロールについて知る手段として多くの保護者が期待しているのが、インターネット・テレビ・本・パンフレットである。また、未就学児や小学低学年の保護者に向けた啓発には、それらに追加して学校や保育園での説明が強く求められている。
    • 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールを実施していない理由としては、学校が管理・指導すべきだという考えと、そもそも強く制限されておりペアレンタルコントロールをする必要性を感じていないというものがある。また、学習用端末のフィルタリングサービスについて教えてもらった経験のない保護者が49.4%、家庭内ルールについて教えてもらった経験のない保護者が47.1%であり、これらの値はスマートフォンに関する類似質問よりもかなり高い数字である。
    • 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールについて読んだり教わったりした経験として、インターネット経由が14%と、私用スマートフォンに関する類似質問への回答(25%)に比べて低かった。特に、家庭内でのペアレンタルコントロールについて実施なし・関心なしの保護者では、インターネットを通じてフィルタリングサービスに関する情報を得た経験が1.3%、家庭内ルールに関する方法を得た経験が1.5%と、著しく低かった。これらの背景には、学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールについてはインターネット上にコンテンツが少ないことが考えられる。
    • 青少年がスマートフォンや学習用端末を利用していて、かつ、ペアレンタルコントロールを実施していない保護者に対して、スマートフォン利用のペアレンタルコントロールに関する啓発資料を新たに作成して提示したところ、高い啓発効果が確認された。ペアレンタルコントロールに関心のない保護者に対しても、「さらに知りたくなった」、「現在のやり方では不足していると感じた」と回答した人の割合が、スマートフォン・学習用端末それぞれで5割を超えたり、少なくとも1つに該当した保護者が100%になるなど、大きな意識変化が見られた。
    • 作成した啓発資料に対しては、一部「あまり良くなかった」「良くなかった」という評価も見られた(スマートフォンで13.7%、学習用端末で5.5%。)その理由として、「知っている内容ばかりだった」「ほしい情報がなかった」というものが多かった。一方で、調査対象となったペアレンタルコントロールを実施していない保護者は、ペアレンタルコントロールに関するリテラシーが低く知識が少ない傾向にあることが分かっており、「知っている」といってペアレンタルコントロールの必要性を取り合わない、実施しない保護者に対しては、コンテンツ以外の方法での啓発も必要な可能性がある。
▼報告書(概要)
  • 本調査から得られる示唆
    1. 未就学からペアレンタルコントロールの啓発を推進するとともに、特に中学1年生・高校1年生の保護者を対象に啓発を強化することが効果的
      • スマートフォンの利用率が高まる中、未就学児のスマートフォン利用率は既に約25%に達している。また、中学校入学や高校入学など、ライフステージが変わるタイミングで利用率が大幅に増える傾向で、中学1年生の利用率は75.4%、高校1年生での利用率は96.4%である。
      • その一方で、ペアレンタルコントロールについて教えてもらった経験のない保護者は平均して40%程度おり、少なくない。特に未就学では50%を超える。実際、保護者インタビュー調査でも、ペアレンタルコントロールや機種・ルールの設定等の経験がなく知識を持っていないという思いが強い保護者が多く存在した。
      • 以上を踏まえ、未就学児の保護者を始めとして広範なペアレンタルコントロールに関する啓発の促進が急務であり、特に、ライフステージが変わるタイミングで実施することが大切である。
    2. ペアレンタルコントロールの実施なし・関心なしの保護者の家庭では、青少年が高いリスクにさらされており、重点的な啓発が必要
      • ペアレンタルコントロールを実施していない・関心のない保護者は、ペアレンタルコントロールに関するリテラシーが低い傾向が顕著に見られた。ペアレンタルコントロールに関心を持たなかったり実施したりしていない理由としては、「子どもを信頼している」という回答が多かったが、実際にはそもそも子どもとのコミュニケーション量が少ない傾向が見られる。青少年のスマートフォン利用に関するトラブル遭遇経験についても不明割合が多く(ペアレンタルコントロールの実施なし・関心なしの保護者で30.9%)、遭遇に気づいても特に対応しない割合が高い(ペアレンタルコントロールの実施なし・関心なしの保護者で34.8%)。
      • 青少年が極めて高いリスクにさらされているといえ、引き続きペアレンタルコントロールを実施していなかったり、関心のなかったりする保護者に対する啓発を検討・推進していくことが重要である。
    3. スマートフォン利用のポジティブ・ネガティブ影響について調査を行い、エビデンスベースで啓発することが必要
      • 保護者インタビュー調査では、スマートフォンのメリット・デメリットを教育面・IT面・心理面で、エビデンスベースで把握したいという意見が見られた。
      • 啓発に当たってはスマートフォン利用のメリット・デメリットについて、教育・IT・心理・社会生活等様々な面から整理して啓発することが望ましいと考えられる。それにあたり、青少年のスマートフォン活用がもたらす様々なポジティブ・ネガティブ影響について調査を実施し、エビデンスを集めることも必要である。
    4. 未就学児や年齢の高い青少年であってもスマートフォントラブルに巻き込まれるリスクがあることを啓発することが必要
      • 未就学児の保護者はペアレンタルコントロールを実施していない傾向にあり、その理由として、親の見ている前でのみスマートフォンを利用させていることがある。しかし実際には、未就学児でも「インターネットの使い過ぎにより、体調や学業に支障をきたしてしまった」(3.3%)、「歩きスマホ・ながらスマホでけがをしたり(させたり)物を壊してしまった」(3.2%)、「ワンクリック詐欺に遭い、意図していない契約による多額の請求が来てしまった」(2.6%)等のトラブルに遭遇している。
      • 有識者会議では、目の届く範囲でやらせていたとしても画面を常に監視できるわけではなく、「目の届く範囲でやらせているからペアレンタルコントロールがいらない」というのは言い訳に過ぎないという意見が複数出た。また、未就学児に対して、フィルタリングサービスを導入していない保護者のスマートフォンを使わせるより、いっそのことペアレンタルコントロールをしっかりした専用スマートフォンを使わせて管理を徹底した方が良いのではないかという意見も見られた。
      • 高校生の保護者もペアレンタルコントロールを実施していない傾向にあるが、高校生はトラブル遭遇確率が高く、トラブルに遭遇していない確率は最も低い。
      • 以上を踏まえ、未就学児や高校生の保護者が自分事化できるような啓発が必要である
    5. ペアレンタルコントロールの啓発手段としては、インターネット、テレビ・本・パンフレットが有効であり、特に低年齢層には学校や保育園での説明も効果的
      • ペアレンタルコントロールについて知る手段として多くの人が期待しているのが、インターネットと、テレビ・本・パンフレットである。実際、現在実施している人は、それらの手段で知った経験が多い。また、未就学児や小学低学年の保護者に向けた啓発には、それらに追加して学校や保育園での説明が強く求められている。
      • 以上を踏まえ、ペアレンタルコントロールの啓発手段としては、インターネット、テレビ・本・パンフレットを引き続き活用することが望ましい。また、特に低年齢層の保護者向けには、積極的に学校や保育園で青少年のスマートフォン利用に関するセミナーを実施したり、コンテンツを配布したりすることが求められる。そのような場で活用するためのコンテンツや講座の制作も求められる。
    6. トラブルごとに有効な対応方法を、エビデンスベースで啓発することが必要
      • 実際に起こったトラブルに対しては、「スマートフォンを利用する時のルールを厳しくした」(40.0%)、「一定期間スマートフォンの利用を禁止した」(25.9%)、「フィルタリングサービスを利用するようになった」(17.1%)の3つが多く、かつ、成功する人が多かったため、適切なトラブル対応方法として啓発コンテンツに盛り込むことが推奨される。ただし、「スマートフォンを利用する時のルールを厳しくした」と「一定期間スマートフォンの利用を禁止した」は、実施率と成功率の乖離が大きかった。
      • トラブルの内容によって傾向は大きく異なっていた。例えば、「SNS・メッセージアプリ・ゲームなどでいじめや誹謗中傷を受けた」では、「無視をするように子供に言った」、「学校に相談した」、「周囲の知人に相談した」といった対応で成功した割合が高い。トラブルの内容によって適切な対応方法は異なるといえる。
      • 以上を踏まえ、トラブル内容によって異なる適切な対応方法をエビデンスベースで啓発することが必要である。全体的な傾向としては、ルールの厳格化、スマートフォン利用の一時禁止、フィルタリングサービスが有効なケースが多いが、トラブルによって大きく異なる。また、ルールの厳格化やスマートフォン利用の一時禁止は成功しない場合も多かったため、青少年がルールを守れるような施策の啓発も必要と考えられる。
    7. ペアレンタルコントロールを現在実施していない保護者には、実際に起こる青少年のトラブルやその影響、具体的なペアレンタルコントロール手法と効果、コミュニケーションの重要性について、インターネット、テレビ・本・パンフレット、学校や保育園での説明で啓発することが効果的
      • 現在ペアレンタルコントロールを全くしてない保護者の中でも、ペアレンタルコントロールに関心のある保護者の79%、関心のない保護者の48.4%は、きっかけがあればペアレンタルコントロールを実施したいと思っていることも分かっている。特に多かったのは「子どもの身体・健康への影響がどの程度あるのかを知ることができる」で、保護者が自分の子供のこととして自分事化して、危機感を抱けるようになることが重要といえる。
      • 「ルールを子どもが破ってしまった時の適切な対応の仕方を知ることができる」や「それぞれの取り組みをすることで抑えられるトラブルを知ることができる」など、具体的な手法やその効果に関するものも多かった(図表3.15)。実際、保護者インタビュー調査でも、「家庭や子どもに合った設定をするための、基本的に設定すべき機能やルールのガイドラインが欲しい。」、「ニュースにならないような身近なトラブル事例を知りたい。具体的な身近な事例のほうが理解しやすく、関心・危機感を持ちやすい。」、という意見が見られた。
      • さらに、ペアレンタルコントロールに関心を持たなかったり実施したりしていない理由としては、「子どもを信頼している」という回答が多かったが、実際にはそもそも子供とのコミュニケーション量が少ない傾向が見られる。また、青少年がネット上のトラブルに巻き込まれた時に親に相談しないことがあると思う人が少なく、理解が乏しい。
      • ペアレンタルコントロールについて実施なし・関心なしの保護者は、ペアレンタルコントロールについて知る手段として「学校や保育園・幼稚園等で知ることができる」へのニーズが相対的に高い(図表3.19、図表3.20)。そのような場で強制的に教えられることが、実施も関心もないグループでは有効と考えられる。
      • 以上を踏まえ、まず、ペアレンタルコントロールを現在実施していない保護者には、実際に起こる青少年のトラブルやその影響、具体的なペアレンタルコントロール手法とその効果、闇雲に子どもを信頼するのではなくてコミュニケーションすることが重要であることを啓発することが効果的である。また手段としては、インターネット、テレビ・本・パンフレット、学校や保育園での説明と多角的に実施していく。
    8. 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールの啓発を推進することが必要
      • 学習用端末についての家庭内でのペアレンタルコントロールを実施していない理由としては、学校が管理・指導すべきだという考えと、そもそも強く制限されておりペアレンタルコントロールをする必要性を感じていないというものがある。また、学習用端末のフィルタリングサービスについて教えてもらった経験のない保護者が49.4%と、家庭内ルールについて教えてもらった経験のない保護者が47.1%であり、これらの値はスマートフォンよりもかなり高い。
      • しかし実際には、学習用端末でのトラブル(※)として「インターネットの使い過ぎにより、体調や学業に支障をきたしてしまった」(2.9%)、「SNS・メッセージアプリ・ゲームなどでいじめや誹謗中傷を受けた」(1.7%)、「インターネット上でアダルトサイトや薬物・犯罪情報など、不適切な内容を見てしまった」(1.4%)、「歩きながらの学習用端末利用でけがをしたり(させたり)物を壊してしまった」(1.4%)が多く、全体的にスマートフォンよりは低いものの、トラブルは存在していた。また、特に小学低学年では「インターネットの使い過ぎにより、体調や学業に支障をきたしてしまった」が3.7%で小学高学年と中学よりも高く、2番目に「歩きながらの学習用端末利用でけがをしたり(させたり)物を壊してしまった」(2.4%)が来ているのも特徴的である。
      • 以上を踏まえ、学習用端末でもトラブルが発生していてペアレンタルコントロールが必要であるということや、特にトラブルとしてはインターネットの使い過ぎ、いじめや誹謗中傷を受ける問題、不適切な内容を見てしまう問題、歩きながらの利用、といった点が多いことを啓発することが求められる。また、小学低学年は特に学習用端末でのトラブルが多いこと、インターネットの使い過ぎと歩きながらの利用の危険性を啓発することも必要である。
        • ※本調査における学習用端末に関する分析は、青少年保護者が青少年の学習用端末でのトラブル遭遇状況にどういった認識を持っているか基づいて実施しており、実際に発生しているトラブル遭遇状況とは完全に一致しない場合がある
    9. 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールについて、学校での説明をより拡充すると同時に、保護者の相談に応える機会もさらに設定することが必要
      • 家庭内でのペアレンタルコントロールについて知りたい手段としては、「端末配布時に、学校からの直接説明・保護者宛のプリントなどで知ることができる」が約36%でトップであった。また、ペアレンタルコントロールに関心を持ったきっかけとして、「端末配布時に、学校から直接説明・保護者宛のプリントなどで説明を受けたから」が約24%でやはりトップで、現在ペアレンタルコントロールに関心のない保護者が関心を持ちそうなきっかけとしても「端末配布時に、学校から直接説明・保護者宛のプリントなどで説明を受けたら」が約20%で最多であった。ペアレンタルコントロールをしている理由のテキスト分析でも、学校からの呼びかけとの回答が多かった。さらに、現在ペアレンタルコントロールを全くしてない保護者でも、関心のある保護者の81.6%と関心のない保護者の58.1%が、何かきっかけがあればペアレンタルコントロールをすると思うと回答している。
      • しかしその一方で、家庭内でのペアレンタルコントロールについて「端末配布時に、学校から直接説明・保護者宛のプリントなどで教えてもらった」はトップであるものの約25%しかおらず、「端末配布時以外に、学校の保護者会・PTAの会合・講演会などで教えてもらった」は約14%であった。
      • 有識者会議では、入学説明会、配布時、配布に伴う全体説明会などで学習用端末のペアレンタルコントロールの啓発をすることが重要であるとの指摘があった。
      • 以上を踏まえ、学校で端末を配布する際や、それ以外の講演会などで、学習用端末で起こりうるトラブルや家庭内でのペアレンタルコントロールについて、より啓発を広げていく必要がある。また、保護者の相談に応える機会もより増やし、学校に相談することでトラブルを解決するような場面を増やすことも大切である。
    10. 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールの啓発資料として、インターネットコンテンツを拡充することが必要
      • 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールについて読んだり教わったりした経験として、インターネットが約14%と、スマートフォンの約25%に比べて低かった。また特に、ペアレンタルコントロールについて実施なし・関心なしの保護者では、インターネットを通じてフィルタリングサービスに関する情報を得た経験が1.3%、家庭内ルールに関する情報を得た経験が1.5%と、著しく低かった。これらの背景には、学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールについてはインターネット上にコンテンツが少なく、よく調べないと学ぶことができないことがあると考えられる。
      • 以上を踏まえ、学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロールやトラブル事例についても啓発資料を作成し、インターネットのアクセスしやすい場所で公開することが求められる。
    11. 学習用端末の家庭内でのペアレンタルコントロール啓発に当たっては、適切な学校と保護者の指導の連携・分担の方法、学習用端末のトラブルの子供への影響、ルールを子供が破った時の適切な対応の仕方などを盛り込むことが効果的
      • 家庭内でのペアレンタルコントロールをしていない保護者がペアレンタルコントロールをしたいと思うこととしては、「適切な学校と保護者や家庭での指導の連携と分担の方法を知ることができる」、「子どもの学習・成績への影響がどの程度あるのかを知ることができる」、「ルールを子どもが破ってしまった時の適切な対応の仕方を知ることができる」が多かった。
      • 以上を踏まえ、適切な学校と保護者の指導の連携・分担の方法、学習用端末のトラブルの子どもへの影響、ルールを子どもが破った時の適切な対応の仕方などを含めると、現在家庭内でのペアレンタルコントロールをしていない保護者にも効果的と考えられる。
    12. 啓発資料は手軽さ・分かりやすさを重視して作成することが効果的
      • スマートフォン利用のペアレンタルコントロールに関する啓発資料を作成し、青少年がスマートフォンや学習用端末を利用していて、かつ、ペアレンタルコントロールを実施していない保護者に提示したところ、高い啓発効果が確認された。ペアレンタルコントロールに関心のない保護者に対しても、「さらに知りたくなった」、「現在のやり方では不足していると感じた」と回答した人の割合が、スマートフォンでも学習用端末でも5割を超えたり、少なくとも1つに該当した保護者が100%になるなど、大きな意識変化が見られた。
      • さらに、コンテンツへの総合評価は「やや良かった」以上がスマートフォンで86.3%、学習用端末で94.6%と非常に高く、ペアレンタルコントロールに関心のない人からの支持も高かった77.9%と89.2%となっていて極めて高かった。
      • 特に評価されたのは、内容が分かりやすかった、文章の量が適切で読みやすかったという点であり、今回のデザイン・仕様・内容は十分に啓発に適しているといえる。
      • 以上を踏まえると、特にペアレンタルコントロールに関心のない層に対しては、内容を充実させることよりも、分かりやすく理解のしやすい文字数・文字の大きさ・イラスト・色合いを重視し、資料を作成することが望ましいといえる。
    13. 青少年向けのスマートフォン・学習用端末利用に関する啓発資料を拡充させることが必要
      • 作成した啓発資料への意見として、「この内容では青少年と一緒に読むことが難しいため、より分かりやすい青少年向けのコンテンツ(漫画・動画など)が欲しい」というものが複数見られた(図表5.13)。
      • 有識者会議では、青少年も親に守ってほしいと思っている子が多く、青少年と保護者が共に学べるコンテンツの作成は意義があるという意見があった。
      • 以上を踏まえ、青少年も分かりやすく学ぶことができ、そこからコミュニケーションを取りながらペアレンタルコントロールを実施できるようなコンテンツを作成することが望ましいといえる。
    14. ペアレンタルコントロールの実施なし・関心なしの保護者へは啓発コンテンツだけでなく、強制参加の説明会などで丁寧なコミュニケーションが必要
      • 作成した啓発資料に対しては、一部「あまり良くなかった」「良くなかった」という評価も見られた(スマートフォンで13.7%、学習用端末で5.5%)。その理由としては、「知っている内容ばかりだった」「ほしい情報がなかった」というものが多かった。その一方で、調査対象となったペアレンタルコントロールを実施していない保護者は、ペアレンタルコントロールに関するリテラシーが低く知識が少ない傾向にあることが分かっている。
      • 以上を踏まえると、「知っている」といってペアレンタルコントロールの必要性を取り合わない、やらない人に対しては、面で広めるコンテンツ以外の方法として、強制参加の説明会などで丁寧なコミュニケーション等の方法での啓発も必要と考えられる。

~NEW~
国土交通省 第26回国土審議会 配布資料
▼資料3_国土形成計画案・国土利用計画案(主な修正箇所)
  • 在留外国人数の我が国の総人口に占める割合は約2.5%(2022年末時点)と、コロナ禍の影響もあり減少していた傾向から再度増加に転じている。将来推計人口の中位推計では、外国人の割合は、2050年には約7.0%、2070年には約10.8%と増加する見込みとなっている。外国人が地域人口の相当の割合を占める地域が増加することも想定される。
  • 森林・林業関係者による森林の適切な整備・保全を加速するとともに、森林空間を活かした教育や企業による森林づくり活動など、国民参加の森づくりを進める。また、森林整備に関する山間部と都市部の間での広域連携を進めるとともに、「都市(まち)の木造化」(第2の森林づくり)等を通じた国産材等の利用拡大を推進し、さらに、レーザ測量や衛星画像等による森林資源情報を整備し、その共有と高度利用を図ることで、森林の効率的な整備・保全や国産材の安定供給につなげていく。加えて、「花粉症対策の全体像」に基づき、10年後には花粉発生源のスギ人工林を約2割減少させることを目指し、スギ花粉等の発生の少ない多様で健全な森林へ転換していく。
  • 我が国においては、デジタル社会の目指すビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げており、このような社会を目指すことは、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることにつながる。こうした考え方を基本としつつ、「国土づくりの基本的方向性」として「デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり」を掲げたとおり、これからの国土づくりにおいては、社会経済においてデジタル化の進展により各種のDXが加速している状況を踏まえ、地域における様々なサービスや活動分野において、デジタル活用を通じて効率性・生産性の向上につなげる必要がある。加えて、地域空間におけるデジタル活用の意義として、従来は場所や時間の制約で実現できなかったサービスや活動が、デジタルを活用することで、そうした制約を克服して国土全体にわたって様々なサービスや活動の恩恵が享受できることが挙げられる。こうしたデジタル活用の特性を国土づくりに活かし、デジタルを手段として徹底活用して、リアルの地域空間の質的な向上を図ることにより、場所と時間の制約を越え、多様な暮らし方や働き方を自由に選択できる地域社会の形成を通じて、個人と社会全体のWell-beingの向上につなげる必要がある。
  • 「デジタル・ガバメント」を推進する観点から、地方公共団体における、基幹業務等のシステムの統一・標準化、行政手続のオンライン化、マイナンバーカードの普及及び利用の促進、AI・RPAの利用推進、情報セキュリティ対策の徹底のほか、「窓口DXSaaS」のガバメントクラウド上の提供等による「書かないワンストップ窓口」の横展開の促進等を通じて、デジタル社会の構築に向けた取組を着実に進めていく。あわせて、デジタル人材が不足する中小規模の地方公共団体等に対する人材支援等を推進する。
  • こどもまんなか社会の実現の観点からのこどもまんなかまちづくりを進める必要があり、良質な住宅の供給や保育所の充実のほか、デジタル技術の活用も通じた安全で快適な道路の整備や、まちづくりGXの推進による公園緑地の確保等を通じたゆとりある都市空間の整備、公共空間等におけるバリアフリー化の推進など、子育て世代が安心して暮らせる空間を創出するとともに、あわせて、多世代の交流を促進するコミュニティ拠点の形成、三世代同居・近居等を促進するなど、多世代が交流するまちづくりを推進する。
  • GX・DXの推進、経済安全保障の観点から国際競争が激化する中、我が国の国際競争力の強化を図るため、我が国経済の成長を牽引する産業について、国土全体にわたって各地域が有する産業集積や産業基盤の優位性を活かし、企業の立地戦略等も踏まえ、生産拠点の整備や強化を図っていく必要。特に、GXの実現に向けては、我が国企業が世界に誇る脱炭素技術の強みを活かして、世界規模でのカーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、持続可能な形で気候変動に対応する公正な移行の観点を含め、新たな市場・需要を創出し、日本の産業競争力を強化することを通じて、経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用・所得の拡大につなげることが求められる。
  • 農山漁村発イノベーション等により地域資源を活用して所得と雇用機会を確保し、農用地保全や生活支援を集約的に行う農村型地域運営組織(農村RMO)の形成等を通じて農山漁村に人が住み続けるための条件を整備するとともに、「デジ活」中山間地域の取組を推進することにより、農山漁村の活性化を図る。また、中山間地域における農地保全のための地域ぐるみの話合い、農地の粗放的な利用、基盤・施設整備等にきめ細やかに取り組めるよう支援し、農村の持続的な土地利用を推進する。
  • 外国人材が長期にわたり我が国で活躍できるよう、留学から就職に至るまで一貫した対応を行うとともに、外国人が地域人口の相当の割合を占める地域が増加することも想定されることから、共通の課題を抱える地域間の連携も図りつつ、外国人が暮らしやすい地域社会づくりを進める。
  • 一部の再エネ事業において、太陽光パネルの安全面、防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄等に対する懸念が顕在化し、地域社会との共生が課題となっている中、地球温暖化対策推進法に基づき、地域の合意形成を図り、地域の環境保全や地域経済・社会の発展に資する地域共生型の再エネ導入を促進する。加えて、再エネの地産地消を推進する。
  • 地域の現場において、(1)及び(2)による地域管理構想の策定及び実施が円滑かつ効果的に進められるよう、関係府省間の連携、国と地方公共団体との連携による伴走型の推進体制の構築を図る。また、地域管理構想の策定及び実施に当たっては、住民や地域団体等のほか、地域の実情に応じて、農村型地域運営組織(農村RMO)、地域おこし協力隊、集落支援員、関係人口、大学・研究機関、民間企業等の多様な主体の参加を促進するとともに、地域管理構想の円滑な推進を支援するマネジメント人材の確保・育成を含めた中間支援組織との連携強化を図る。
  • 人口減少等を背景に、所有者不明土地等の低未利用土地の増加が懸念されている。このため、相続登記等の申請義務化や相続等により取得した土地所有権を国庫に帰属させることができる制度等による所有者不明土地の発生予防、地域福利増進事業や公共事業における収用手続の合理化等による利活用の円滑化、所有者不明土地・建物管理制度の活用等による適正な管理など、所有者不明土地に関する諸制度を適切に組み合わせつつ、円滑かつ適切な活用を促進する。
  • グリーン国土の創造の取組と連動し、多彩で恵み豊かな美しい自然環境を将来世代に引き継ぐため、自然資本の保全・拡大に向けたネイチャーポジティブの考え方に根ざした国土利用・管理の推進、自然環境が有する多様な機能を活用した地域課題の解決、緩和策、適応策、生態系保全を統合した地域づくりの推進を基本的な視点として、環境と共生する国土利用・管理の取組を充実・強化する。
  • 三大都市圏を結ぶ「日本中央回廊」の形成につながり、災害時に代替輸送ルートとしても機能するリニア中央新幹線や整備新幹線等の整備を進める。また、基本計画路線及び幹線鉄道ネットワーク等の高機能化等の地域の実情に応じた今後の方向性について調査検討を行う。さらに、都市鉄道ネットワークの整備推進、地域鉄道の維持・活性化や鉄道貨物に対する新たな社会的要請の高まりを踏まえた貨物鉄道ネットワークの強化と最大限の活用を図る。
  • 「GX実現に向けた基本方針」に即し、全国規模での電力系統整備計画に基づき、費用便益分析を行い、地元理解を得つつ、道路、鉄道網等の活用も検討しながら、全国規模での系統整備や海底直流送電の整備を推進するなどの取組を進める。地域間を結ぶ系統については、今後10年間程度で、過去10年間と比べて8倍以上の規模で整備を加速すべく取り組み、北海道からの海底直流送電については、2030年度を目指して整備を進める。さらに、系統整備に必要となる資金調達を円滑化する仕組みの整備を進める。
  • 「こども未来戦略方針116」に示されたとおり、急速な少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、我が国の経済・社会システムを維持することは難しく、世界第3位の経済大国という、我が国の立ち位置にも大きな影響を及ぼす。若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、こうした状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であり、ラストチャンスである。国土政策の観点からも、人口減少や少子化が加速する地域社会において、こども・子育て支援の取組強化は喫緊の課題であり、「共働き・共育て」の推進など、安心してこどもを産み育てるための環境整備を進める必要がある。このため、こどもまんなかまちづくりを推進する観点から、良質な住宅の供給や保育所の整備等の就学前教育・保育の充実等を促進するとともに、子育てしやすい都市・地域空間づくりを進め、安全で快適な道路や公園等の整備、公共空間等における子育てバリアフリー化の推進を図るなど、子育て世代が安心して暮らせる社会を構築する。あわせて、地域における子育て支援の拠点や多世代の交流を促進するコミュニティ拠点の形成、三世代同居・近居、良質なテレワークの更なる普及、ワーク・ライフ・バランスの確保等により、子育てに係る負担の軽減を図る。
  • 地域づくりに多様なノウハウを有する人材を取り込むことも重要な課題であり、地域リーダーはもとより、地域価値を向上させる地域デザインを担うクリエイティブな人材やデジタル人材、円滑かつ効果的な地域づくり活動を実践するためマネージャー、コーディネーター、ファシリテーターなど、様々な役割を担う人材の発掘・育成を図る
  • 大学、高等専門学校等と連携し、地域課題の解決や地域産業の稼ぐ力の向上に携わるデジタル人材、クリエイティブな人材等の地域人材の育成を推進する。また、新産業の創出や産業構造の転換に貢献する地方大学の魅力向上や大学を核とする地域活性化を図るとともに、デジタル技術等も活用した効果的な地域課題の解決等に資する東京圏の大学等の地方へのサテライトキャンパスの設置に向け、地方公共団体と大学等の連携を推進するほか、大学等が自発的に地方へのサテライトキャンパスの設置に取り組むような環境整備を図る。
  • 「女性デジタル人材育成プラン」やリスキリング支援等により女性従業者の増加を図るとともに、男性による家事・育児への参画等の拡大を始め、「共働き・共育て」の推進等を通じて、男女共同参画の観点から、性別役割分業意識を払拭し、性別を問わず人々の多様な暮らし方・働き方の選択肢を広げる必要がある。
  • 水素は、利用方法次第では高いエネルギー効率、低い環境負荷等の効果が期待され、将来の二次エネルギーの中心的役割を担うことが期待される。水素を本格的に利活用する水素社会を実現するためには、社会構造の変革を伴う大規模な体制整備が必要である。このため、改定「水素基本戦略153」に基づく対応を進め、既存燃料との価格差に着目した事業の予見性を高める支援や、需要拡大や産業集積を促す拠点設備支援を含む、規制・支援一体型での制度整備に需給両面で取り組み、2030年頃までの商用開始に向けて、水素コア技術を国内外で展開しつつ、水素・アンモニアの大規模かつ強靱なサプライチェーンの早期構築を目指す。また、家庭用燃料電池、燃料電池車等の普及拡大に向けた取組を推進し、加えて水素発電等の実証を進める。大阪・関西万博では、これらの我が国の革新的技術について、万博会場内外における実証・展示・情報発信を行うことで、国内外に対し、我が国としての今後のエネルギー・環境のあり方を示していく。さらに、我が国の産業や港湾の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進する。
  • 地域の礎であり、地域経済に大きな効果をもたらす役割が期待されている伝統行事や民俗芸能等について、継承及び振興に必要な支援を実施し、文化振興及び地域の活性化を推進する。我が国の伝統芸能、工芸技術や生活文化、風俗慣習や民俗芸能等の無形の文化財について、生活様式の変化等の影響を受け、後継者不足等の課題が生じている。こうした現状にかんがみ、無形の文化財の保存・継承を図るため、2021年度に新設した無形の文化財の登録制度の活用を進める。また、我が国の伝統的工芸品産業の振興を図るため、伝統的工芸品の国内外への普及啓発や需要開拓、産地指導や人材育成・確保等を推進する。
  • 地域の伝統的な食文化について、幼少期からの関心と理解を深めるべく、学校給食に郷土料理や地元食材の導入を促す。特に我が国の様々な伝統的な和食は多様で豊かな自然と人々の知恵が育んだ食に関する習わしであり、味、美しさ、栄養バランス等に優れ、国際的にも高い関心を集める一方、ライフスタイルの変化により人々の生活との結び付きが薄れつつある。「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから2023年で10年になることを契機に、国内外における和食の普及及び拡大に係る取組や、国産農林水産物及び食品の消費拡大に向けた取組を推進する。また、日本酒、焼酎、泡盛等のユネスコ無形文化遺産への早期登録を推進する。
  • 住民は地域文化の本来的な担い手であり、住民が優れた文化芸術に触れることができる機会の充実や文化芸術活動への主体的な参加によって、地域における文化力の向上とともに、充実感を持った生活の実現も図られる。このため、住民が質の高い文化芸術に対して鑑賞、参加、創造する機会の拡充を図る。また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機にスポーツと文化を融合させながら我が国の文化芸術の価値を世界へ発信してきたことで培われたレガシーを活用していくことが重要である。こうしたことも含め、大阪・関西万博に向けて、全国で実施する「日本博 2.0」を通じ、地域の優れた文化芸術を体験できる機会の拡充を図る。
  • 国土を縦貫あるいは横断し、全国の主要都市間等を連結して、その時間距離の短縮を図る国土の骨格を支える基幹的な高速陸上交通ネットワークとして、14,000kmの高規格幹線道路と、これを補完し広域圏内や広域圏間の交流・連携を強化する広域道路網を合わせたシームレスなサービスレベルが確保された高規格道路ネットワークについて、既存ネットワークも活用しつつ概ね2万km余の形成・機能向上を図る
  • 整備新幹線については、現在建設中の北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(金沢・敦賀間)について、着実に整備を進める。また、未着工区間である北陸新幹線(敦賀・新大阪間)や九州新幹線(新鳥栖・武雄温泉間)については、引き続き必要な検討等を実施するとともに、関係地方公共団体等との調整を進める。基本計画路線及び幹線鉄道ネットワーク等の高機能化等の地域の実情に応じた今後の方向性について調査検討を行う。また、新幹線における土木構造物の健全性を維持・向上するため、予防保全に基づいた大規模改修等を行うなど、新幹線の強靱化対策を加速化させることにより、幹線鉄道ネットワークの安全運行を確保する。在来線については、特急列車が拠点都市間を相互に連絡する線区のほか、貨物列車が現に走行している線区、災害時等において貨物列車が走行する蓋然性が高い線区は、我が国の基幹的鉄道ネットワークを構成しており、こうした線区を中心に、国において、JR会社法に基づく国土交通大臣指針を適切に運用しつつ、JR各社や並行在来線各社と連携して、その維持・機能向上を図る。さらに、地域の実情に応じた地域間連携及び大都市圏との繋がりを支える幹線鉄道ネットワークの高機能化・サービス向上に向けた取組を検討する。その際、新幹線と在来線の直通運転化や高速化等による機能強化を進めるほか、軌間可変電車に関する技術開発を推進する。これらに加えて、都市鉄道については、まちづくりと連携しつつ、ネットワークの拡大・機能の高度化を推進する
  • 火山災害対策を一層強化するため、火山調査研究推進本部の体制整備、専門的な知識や技術を有する人材の育成と継続的な確保等を行う。
  • 地域全体の利益を実現する最適な国土利用・管理については、関連する制度を組み合わせながら、人口減少が加速するなかで、発生する低未利用土地や空き家などの有効利用や高度利用による土地利用の効率化を図るとともに、地域の持続性確保につながる土地利用転換といった土地利用の最適化を進めることが重要である。
  • 国土利用計画法及びこれに関連する土地利用関係法の適切な運用並びに、本計画、国土利用計画都道府県計画、同市町村計画など、土地利用に関する計画による土地利用の計画的な調整を通じ、適正な土地利用の確保と国土資源の適切な管理を図る。特に、土地利用基本計画においては、都道府県は地域が主体となった土地利用を推進するため基礎自治体である市町村の意向を十分に踏まえるとともに、土地利用の影響の広域性を踏まえた地方公共団体など、関係機関相互間の適切な調整を図ることにより、土地利用の総合調整を積極的に行う。これらの取組を支援するため、国は地域の土地利用のあり方の検討に資する基礎的情報等を提供するとともに、地方公共団体に対する人的支援や研修等の充実を図る。特に、市町村計画と市町村管理構想の一体的策定など計画の実効性を高める取組を進める市町村に対して、国や都道府県による支援の充実を図る。

~NEW~
国土交通省 海外インフラプロジェクト相談ホットラインの運用を開始~ 海外インフラプロジェクトにおけるトラブルへの対応を強化します~
  • 海外インフラプロジェクトにおける様々なトラブルに関する民間企業からの相談窓口として設置している「海外建設・安全対策ホットライン」について、令和5年7月3日より、「海外インフラプロジェクト相談ホットライン」に改称し、建設会社やコンサルタントのみならず国土交通分野に係るメーカーやオペレーター、商社等の関係事業者も広く利用できるように運用を拡充いたします。
  • 運用拡充の概要
    • 海外建設プロジェクトのみならず、海外インフラプロジェクト全般の相談窓口であることを明確にするため、「海外建設・安全対策ホットライン」から「海外インフラプロジェクト相談ホットライン」に改称
    • 建設会社やコンサルタントのみならず、国土交通分野に係るメーカーやオペレーター、商社等の関係事業者もご利用いただけるようホットラインを拡充
  • 海外インフラプロジェクト相談ホットラインの概要
    • 海外インフラプロジェクトにおける施工技術、施工管理マネジメントの課題、安全対策、支払の遅れや拒否等の案件受注後におけるトラブルに関する建設会社、コンサルタント、メーカーやオペレーター、商社等の国土交通分野に係る事業者からの相談をホットラインにて受付
    • 寄せられた相談事項について、原因分析等問題事象の精査や国内発注機関としてのノウハウの活用等により、以下のサポートを実施
      1. 相手国政府・発注機関への働きかけ
        • 相手国政府との政策対話、改善・対応要求や個別技術協力
        • 外務省、JICAへの問題解決の働きかけ 等
      2. 専門家の紹介
        • 相談企業への技術的アドバイスを行う専門家(施工管理、基礎、橋梁、トンネル、ダム等)の紹介
        • 相手国エンジニア研修生受入れ等の関係機関への依頼 等

~NEW~
国土交通省 ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会
▼資料2-1 「ラストワンマイル・モビリティに関する制度・運用の改善策」(案)
  • 担い手確保、自動車DX・GXに関する今後の取組の方向性
    • 担い手確保について
      • 現在の旅客自動車運送事業の担い手は、平均年齢が高く、男性比率も高い状態となっているため、新たな担い手の確保に向けては、若者や女性の雇用が重要である。また、運賃改定による効果が出ている地域はあるものの、未だ労働条件や職場環境の改善が課題となっているとの指摘もある。したがって、ドライバーを中心とした担い手確保のためには、賃上げや職場環境の改善を通じて、若者や女性も含めた全ての担い手候補にとって働きたいと思える職場環境を整備していくことが不可欠である。そのため、国において、以下の方向性で取り組むことが重要である
      • 運賃改定の効果もあり、例えばコロナ禍で減少していた東京都内のタクシー運転手数は回復の兆しにある(令和5年3月末比で663人増(令和5年6月21日現在))。こうした運転手の回復を全国でも実現するため、働きたいと思える職場環境の整備を通じてバス・タクシー業界のイメージ向上を図りつつ、経済動向や物価情勢を踏まえて運賃改定を迅速に行える環境を整備する。職場体験なども交えた効果的な採用活動や二種免許取得に係る支援を行う。
      • 事業者における担い手確保等のための取組の好事例の周知を行う。
        • (取組例)
          • 個人毎の健康診断結果や健康相談の受診などで付与される「健康ポイントカード」を導入し、ポイントの高い社員を表彰しているほか、健康診断で異常がなかった者や異常があってもすぐに受診・治療した者に対して「健康手当」を支給。この取組により、各人が健康管理に気を遣うようになり、健康診断の有所見率が低下し、離職率の低下につながった。
          • これまでは乗務終了後に事務所で手書きにより日報を記載していたが、営業車全車にタブレット端末を整備し、「自動日報システム」を導入。この取組により、乗務終了後に事務作業に費やす時間が大幅に減少した。
          • 特に若者や女性の雇用を促進するために、
            • 短時間勤務や兼業など、柔軟で多様な勤務形態を促進する。
            • 綺麗で清潔な更衣室、ロッカー、トイレや休憩施設の整備など、若者や女性がここで働きたいと感じる営業所等の施設・設備の整備を促進する。
            • まずは、女性が運転する事業用車両については、高度な防犯対策(コンパートメント式の車両や車内ドライブレコーダー、自動緊急通報装置等)の実施を促進する。
        • 以上のような取組に加え、「働きやすい職場認証制度」1を普及させ、働きやすい労働条件・労働環境の改善に向けた事業者の取組を促す等、継続的な担い手確保に向けてあらゆる取組を促進していく。
    • GXについて
      • 2050年のカーボンニュートラルの実現に向けたEV車両等の導入をはじめとした取組は、バス・タクシー事業者にとってエネルギー使用に係るコスト低減による経営改善に繋がり得るものであり、バス・タクシー事業者が国や自治体等の関係者と協力して脱炭素化に向けて取り組むことが重要である。また、地方部を中心に、タクシーの主な燃料であるLPガスのスタンドが減少しており、LPガスの充填が困難になっているなど、その取組の推進は待ったなしである。そのため、地域公共交通を担うバス・タクシー事業者におけるそれぞれの事業の持続可能性を保ちつつ、中期的な期間(5年程度)でGXを進めるため、国において、以下の方向性で取り組むことが重要である。
        • GXの取組について、関係省庁と連携し、車両の購入、充電・水素充てんインフラの整備等、必要な支援を行う。また、その実施状況について、継続的にフォローアップを実施し、利用者・事業者双方にとってよりよいものとなるよう、その後の支援のあり方について継続的に検討を行う。
        • 利用者・事業者双方がGXによるメリットを実感できることが必要であるため、GXによるメリットとして例えばEVバス・タクシーは、以下のような利点を有していることを利用者・事業者に周知・広報していく。
          • 静穏性に優れており、揺れも少なく、乗車時の快適性がより確保されており、停車・発進を繰り返す路線バスの利便性・安定性向上が期待できること
          • 1充電あたりの航続距離は200kmを超えるほどまで向上しており、路線バス・タクシーとして導入するにあたっては十分LPガススタンドが近くにない地域においても、EVタクシーの導入・運用により営業所の維持を図ることが可能となること
          • 燃料費の削減による経営効率の改善が可能となること
          • 災害時等に移動式電源としても利用できる場合があること 等
        • 2030年までに10,000台のEVバスの導入が実現される将来を目指して、地域公共交通計画において、EV車両等の導入に係る目標、見通しや取組方針が盛り込まれるよう、協議会等で促していく。
        • EV車両の導入に当たっては、道路運送高度化事業の活用を促進し、予算面、税制面及び手続面の簡素化による総合的な支援を行う。具体的には、充電設備や変電設備などの関連設備等の整備も併せて総合的にEV車両の導入を図る場合において、令和5年度に創設された固定資産税・都市計画税軽減制度を活用する際には、充電設備、車両購入費や配車システム等の導入に係る各種支援を優先的に行うことする。
      • 以上のような取組に加え、関係省庁、自治体及び他事業者と連携してインフラの最適配置を行い、再生可能エネルギーによる供給を進めるなど、社会全体で脱炭素社会に向けた取組の促進を図っていく。
    • DXについて
      • サービス面に関する取組の方向性
        • IT技術を活用して利便性や効率性の向上が見込めるものについては、できるだけ早期に事業者に導入されるよう取り組む。
        • 具体的には、以下の方向性で取り組むことが重要である。
          • キャッシュレス決済の導入について、2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すという政府目標が定められている。また、バス分野においては、現金を取り扱うことによる様々な課題(路線バスの運賃箱の設置・更新・メンテナンスに多額の費用がかかる、運転者等の業務負担や定時性の確保に影響を与えている等)が生じており、新紙幣が発行される2024年以降に向けて運賃箱の更新に係る事業者の負担が顕在化している。こうした点を踏まえ、路線バス利用者に与える影響を考慮しつつ、まずはキャッシュレス決済比率の飛躍的な向上の実現を可能とする環境整備を早期に行う。
          • タクシーの配車アプリについては、タクシー事業の実車率・供給力の向上が期待できるほか、キャシュレス化やタクシーチケット等のデジタル化も可能となるが、いまだ導入が進んでいない地域も存在し、全国における配車アプリの導入率は60.8%(令和4年3月31日現在。全国ハイヤー・タクシー連合会調べ。)に留まっていることから、導入率を高めるために支援を行う。
          • AIオンデマンド交通については、AIを活用した効率的なルーティングにより、利用者の予約に対してリアルタイムに最適な配車を実現することができ、地域の移動ニーズに効率的かつ機動的に応えることのできる移動手段として有効であることから、必要な地域において早期に導入されるよう促進を図る。
          • 交通サービスの効率性や利便性の向上には、交通関連データの収集やオープン化が重要であるため、バス乗降センサーを駆使した交通サービスの見直しやGTFS3情報及びバスロケーション情報のオープン化の徹底を加速させる。
        • 以上のような取組を行っていくことで、安全性や快適性の面において世界最高水準のバス・タクシーサービスを実現していく。
      • 自動運転に関する取組の方向性
        • 将来的に取り組んでいくべき事項としては、自動運転の実装が挙げられる。交通事故に関して、死亡事故発生件数のうち95%は運転者の違反によるとされているため、公共交通への自動運転の導入は、このような運転者の違反による交通事故の削減効果が期待できる。
        • また、無人自動運転バス・タクシーを遠隔で監視することにより、現在の車両1台につき運転者1人という運行形態を1人の遠隔監視者が複数の車両を運行するという運行形態にすることができ、人件費比率の高い現在のバス・タクシー事業において、大幅にコストを削減することが期待できるだけでなく運転手不足も解消できる。特に、繁忙期における一時的な運転手不足の解消に大きな効果が見込まれる。更には新たな職業やサービスの創出が期待されるとともに、一人当たり賃金の増加等の効果が期待でき、より持続的な経営が期待できる。
        • そのほか、自動運転は、前方車両の減速を人間より迅速に察知し緩やかに減速するため、後続車への影響が少なく渋滞を緩和し、定時性の向上が期待される。
        • 一方で、自動運転の実現に向けては、安全性の向上、地域の理解、事業性の確保が課題となっており、これらの課題解決には長期的な取組が必要である。
        • そのため、自動運転の今後の社会実装に向けて長期的な視点で優先的に解決していくべき課題等を実証するため、地方自治体等による自動運転の実証実験等の取組に対して支援を行う。また、支援策の実施状況について、新たに生じる課題等も含め、継続的にフォローアップを実施する。また、利用者にとってどのようなメリットがあるのかについてもあわせて検討していく。
        • 実証事業の長期的かつ継続的実施により、公道での走行経験を蓄積して安全性を向上させ、継続的に同じ地域で走行して地域住民の安心感を形成し、事業性を確保していく。
        • 自動運転の社会実装を通して、交通事故の低減や、路線の維持などのバス・タクシー事業の持続的な経営につなげ、更なる安全・安心な地域公共交通の実現を図っていく

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