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危機管理トピックス

東京都カスタマーハラスメント防止条例/雇用の分野における女性活躍推進/デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方/文部科学白書

2024.07.22
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更新日:2024年7月22日 新着15記事

危機管理トピックス

【新着トピックス】

【もくじ】―――――――――――――――――――――――――

消費者庁
  • 食品表示基準の一部改正に係る答申【7月16日付】
  • サプリメント食品に係る消費者問題に関する消費者委員会意見【7月16日付】
厚生労働省
  • 第10回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会
  • 労働基準関係法制研究会 第9回資料
経済産業省
  • 新しい生体認証精度評価方法に関する国際規格が発行されました 少ないサンプル数で生体認証の精度評価を効率化・短期化へ(ISO/IEC 5152)
  • 「航空燃料供給不足に対する行動計画」を公表します
  • IAEAは2024年4月に行われた東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の取扱いに関する安全性レビューミッション (海洋放出開始後第2回)について報告書を公表しました
総務省
  • デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)についての意見募集
  • デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会(第25回)配付資料 ※ワーキンググループ(第32回)合同開催
国土交通省
  • 令和6年度 日本版MaaS推進・支援事業で11事業を選定しました!~他分野連携やサービス広域化等の促進によりMaaSの高度化を図ります~
  • 2030年における次世代船舶受注量の世界トップシェアを目指します~「船舶産業の変革実現のための検討会」報告書のとりまとめ~

~NEW~
金融庁 「トランジション・ファイナンス環境整備検討会」(第10回)議事次第
▼ 資料3 事務局説明資料
  • 海外×動向
    • IEAは2024年6月に、年次フラグシップレポートの一つである、World Energy Investmentの2024年版を発行。世界のエネルギー投資の現状と今後の展望を整理する中で、トランジション・ファイナンスの重要性やファイナンスド・エミッションに対する課題に言及があった他、日本のクライメート・トランジション利付国債(JCTBs)についてもコラムとして特集。またエネルギー・トランジションにおける金融機関の役割の重要性に触れた上で、排出削減困難なセクターが厳しい開示規制を要求する市場から資金調達できず、より緩やかな規制の金融市場に移ることを”Financial Carbon Leakage”と銘打ち、結果的に実体経済における脱炭素が遅延する可能性を懸念として指摘。
    • ICMAは2024年6月、年次総会に合わせ、Green Enabling Projects Guidanceを公表。グリーンプロジェクトのバリューチェーン(以下、VC)で重要な役割を果たすがそれ自体では明確にグリーンという訳ではない、グリーンイネーブリングプロジェクト(以下、GEP)に求められる基準等を示している。削減貢献量の概念が重要との考えをガイダンス策定の背景としながら、VC全体における環境インパクトを捉え、インパクトの発現を触媒するEnablerの役割をグリーンの概念の中に位置づける試みと考えられる。
  • 国内×事例
    • 2024年6月に九州電力が国内で初めて原子力使途のトランジション・ボンドを発行。関西電力も同年7月に資金使途に原子力を含むトランジション・ボンドの発行を予定。海外では加、仏、米などで原子力を資金使途としたグリーンボンドの発行事例がみられる中での起債事例。
    • 2023年1月から施行されたEUタクソノミー規則において、原子力発電は、一定の条件で「持続可能な経済活動」に含めるものとされた。2023年12月に採択されたCOP28の決定文書において原子力利用が明記された。また、同会場では、有志国22か国が、「2050年までに、2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にするという野心的目標に向けた協働にコミットする」旨の共同宣言を発表した
    • 日本生命は、2024年6月にトランジション・ファイナンスの推進に向け、投融資先の評価基準を定めた「トランジション・ファイナンス実践要領」を策定。最初に企業レベル評価でトランジション適格性を判断し、仮に“Not Aligned”となった場合も、アセットレベル評価で適格性を判断するという同社における評価フローや判断基準を公表。概念レベルではなく、具体的な評価手法・基準値で同社の考える適格なトランジション・ファイナンスを規定することで、企業の脱炭素戦略策定・実行に際しての指針となること、以て実体経済の脱炭素への取組を加速させることを標榜。
  • トランジション・ファイナンスの更なる普及・拡張に向けた具体的な切り口について
    • 国内への更なる普及、特に中堅中小企業や地方に所在する企業への波及
      • 課題認識:GXや”トランジション”の中堅中小企業への普及の必要性がGX実行会議などでも認識され、様々な支援メニューが措置されている。金融面ではトランジション・ファイナンスの推進が想定されるが、既発行企業は多排出産業のいわゆる業界大手企業にとどまっている。
      • 切り口(案):地方自治体や地域中核企業起点でのトランジション・ファイナンス
      • 地方自治体や地域中核企業等が地域・サプライチェーンの脱炭素化の主体として、中堅中小等を含めた個別事業者も利用可能な形でフレームワークを策定することで、個別事業者がフレームワークの策定負担なしにトランジションのための資金へのアクセスが可能となり、結果として地域やサプライチェーン全体でのトランジションの取組が進む可能性。
      • フレームワークの策定主体が個別プロジェクトの第三者検証も含めて実施する形も想定されるところ、適切なレポーティング含めて、4要素を充足させ、トランジション・ファイナンスとしての信頼性を担保することができるかがキーポイント。
    • 国外への普及、特にアジア地域への普及
      • 課題認識:昨年のAZEC首脳共同声明にてもその重要性が言及されるなど、AZECの枠組みでもトランジション・ファイナンスの重要性が語られている。またASEAN域内でもトランジション・ファイナンスのガイダンスが発行される*など、関心が高まっていると認識も、実案件という意味では域内でのトランジションラベルでのファイナンスはまだない。
      • 切り口(案):トランジション・サムライ債/ローンによる一号案件組成
      • 累計発行額は1兆6,000億円を超え、本邦トランジション・ファイナンスマーケットは一巡。2024年2月以来、世界初の国によるトランジション・ボンドであるクライメート・トランジション利付国債の発行も継続的に行い、日本のトランジション・ファイナンスマーケットは普及/拡大期を迎えつつある。
      • また昨年のAZEC首脳共同声明にてトランジション・ファイナンスの重要性が言及されるなど、AZECでもその重要性を共有。
      • 一方で実案件という意味ではASEAN域内でのトランジションラベル付きでのファイナンスはまだない中で、ラベル付きのトランジション・ファイナンスの海外第一号として、トランジション・ファイナンスのリーディングマーケットである日本市場にて、海外発行体が、トランジション・サムライ債/ローンにて調達するという事例が考えられる。
    • 商品の拡張
      • 課題認識:カーボンニュートラル実現に向けては今後10年間で官民合わせて150兆円超のGX投資が必要とされるところ、デット活用のみで民間投資部分を支えることの難しさを指摘する声もある。また中長期的なトランジション、それによる企業成長は本来エクイティストーリーにこそ馴染むもの。
      • 切り口(案):ハイブリッド債、転換社債型新株予約権付社債(CB)、社債型種類株式をはじめとしたエクイティ的性格を持つ金融商品へのトランジション・ファイナンスの拡張
      • カーボンニュートラル実現に向けては今後10年間で官民合わせて150兆円超のGX投資が必要とされるところ、デット活用のみで民間投資を支えることの難しさを指摘する声もある中で、トランジション・ファイナンスがエクイティ的性格を持つ金融商品へ拡張されることも考えられる。
      • CBにおいては、国内外でGreenやSustainability-linkedといったラベル付きで発行事例あり。トランジションラベルでの発行にあたっては、ラベルの信頼性を担保するための検討も必要となると思われるが、類似の形で事例が登場する可能性がある。
  • トランジション・ファイナンスの更なる普及・拡張に向けた上記のような課題を共通認識としつつ、切り口(案)に示されるような、事業会社・金融機関等による、前例のない、前向きな取組についてその重要性を認め、政府としても課題の整理に積極的に関与し、支援していくべきか。

~NEW~
文部科学省 令和5年度 文部科学白書
▼ 特集2 「せかい×まなびのプラン」に基づくグローバル人材育成の推進
  • グローバル化やデジタル化の進展により、国境を越えた活動が日常化するとともに、一国では解決できない地球規模課題に世界が直面する中、我が国が成長し、繁栄するためには、世界の平和と安定が必要です。一方、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響や、ロシアによるウクライナ侵略等により国際社会が分断に向かう動きもあります。このように国際情勢が複雑化する中、教育・研究分野における人的交流を活発化することにより、諸外国との相互理解・信頼に基づく友好な関係を構築することが重要です。
  • 令和5年5月には、「コロナの影響を踏まえた今後の教育のあり方」をテーマに、G7富山・金沢教育大臣会合が開催され、教育・研究分野における人的交流の役割や在り方等について、G7各国、欧州連合(EU)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO:ユネスコ)、経済協力開発機構(OECD)の代表者による議論が行われました。成果文書として採択された「富山・金沢宣言」の中では、留学生・研究者交流が、民主主義、人権、自由、平和等の普遍的価値を共有する人々のネットワークを拡大するとともに、国際社会が一体となって地球規模課題を解決するためのつながりを強化するという役割があることが確認されました。このことから、G7各国の生徒・学生の交流をコロナ禍前の水準に回復し、更に拡大させることの重要性や、大学間の国際ネットワークの進展・深化を通じた質の高い国際交流・国際頭脳循環の活発化について共通認識が図られました。
  • さらに、2023(令和5)年、我が国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は友好協力50周年という記念すべき年を迎えました。我が国とASEANとの間の人的交流は「心と心のパートナー」と呼ばれる強固なパートナーシップの基盤となり、アジア太平洋地域の平和と安定、発展と繁栄のために緊密な協力関係を築いてきました。同年に東京で開催された特別首脳会議では、人的交流を強化し、長年の信頼関係を次世代につなぎ、強化していくことが合意されました。
  • このように各国のリーダーが人的交流拡大の重要性を共有する中、我が国でも、世界が直面する課題の解決に向け、我が国を代表して世界と対等に渡り合い、国際社会の協調・連帯を主導することができるグローバルリーダーや、国際社会の一員として地域社会の活性化を担う人材の育成が求められています。このような人材を育成するためにも、より多くの日本人の生徒・学生が留学等により国際経験を積み、多様な価値観を持つ他者と協働する力を育むことが求められています。また、より多様で優秀な外国人留学生を受け入れることにより、日本人と切磋琢磨する環境をつくるとともに、高等教育の質を向上させることや、日本人の留学への動機付けが行われることも期待されます。そして、留学生交流の基盤となる大学等の教育環境の整備など、日本人が安心して留学へ行ける環境づくりも必要です。このように日本人の国際経験の充実、多様で優秀な外国人留学生の受入れ、教育の国際化を一体的に推進することで、これらが相互に作用し、グローバル人材を育成する好循環を生み出していくことが肝要です。
  • これを実現するため、令和5年8月、永岡文部科学大臣(当時)は、初等中等教育段階から高等教育段階、その後の社会との接続を見据えた、留学生交流の推進や教育の国際化等、一貫したグローバル人材育成のための政策パッケージである「せかい×まなびのプラン」を発表しました。本プランに基づき、「日本人の海外留学の重点的な促進」、「優秀な留学生や人材の受入れ・定着」、「教育の国際化」を一体的に強化・推進することとしています
    • 多様なグローバル人材の学習環境を整備するとともに、高等教育段階において留学生交流が自然と生まれる環境を構築するため、以下の施策に一体的に取り組んでいます。
      • 小・中・高等学校を通じた英語教育の強化
      • グローバル化が進む中で、一部の業種や職種だけでなく、国内外の様々な場面で、英語によるコミュニケーションが必要となっています。学校教育においても、そのための資質・能力を育成し、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養うことが求められています。
      • このため、現行の学習指導要領では、「読むこと」はもちろん、「聞くこと」、「話すこと」、「書くこと」の4技能をバランスよく育成し、子供たちに言語活動を通して英語でコミュニケーションを図る資質・能力を育成することを目標としています。
      • 一方で、令和5年度全国学力・学習状況調査の結果等からは、特に「話すこと」、「書くこと」の力に課題があることや、生徒の英語力に地域間格差が見られることなどが明らかになっているところです。
      • こうした状況を踏まえ、文部科学省では、AI等のデジタル技術を活用した「話すこと」等の発信力強化に向けた実証研究、外国語指導助手(ALT)の授業参画の促進、自治体が行う生徒の英語力向上に向けた取組の推進等を実施しているところであり、引き続き、英語教育の充実に取り組んでいきます。
    • WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築に向けた取組
      • Society5.0において共通して求められる力を基盤として、将来、新たな社会をけん引し、世界で活躍できるビジョンや資質・能力を有したイノベーティブなグローバル人材を育成するため、高等学校等と国内外の大学、企業、国際機関等が協働し、テーマを通じた高校生国際会議の開催等、高校生へ高度な学びを提供する仕組み「アドバンスト・ラーニング・ネットワーク」を形成した拠点校を全国に配置することで、将来的に、WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアムへとつなげることを目的としている事業を実施しています。令和6年度からは、特にコロナ禍の影響で限定的となった、海外の連携校等への短期・長期留学、海外研修や、海外の連携校等からの外国人留学生と日本人高校生とが一緒に履修する英語等による授業、探究活動等を重点的に取り組んでいます。
    • 国際バカロレアの推進
      • 国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、IB機構が提供する国際的な教育プログラムです。IBの教育理念や手法は、学習指導要領の目指す方向性と軌を一にするものであり、語学力のみならず批判的思考や幅広い知識の探求スキル等を育成する特色的なカリキュラム、双方向・協働型授業により、グローバル化に対応した素養・能力を育成する上で適しています。高校レベルのディプロマ・プログラムでは、国際的に通用する大学入学資格(IB資格)が取得可能であり、世界の大学入学者選抜で広く活用されています。
      • IBの導入が進むことで、生徒の進路の多様化や、IBの特徴的な教育手法やカリキュラムが日本の初等中等教育における好事例となり、その質の向上も期待されます。
      • 政府は、成長戦略2021において、日本のIB認定校等を200校以上にするという目標を掲げました。これを受け、文部科学省では、平成30年度に「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」を設立し、情報共有プラットフォームの構築、IBの導入を検討する学校や教育委員会等への支援、大学入学者選抜におけるIBの活用促進等、IBの普及に取り組み、令和5年3月に認定校等が207校となり目標を達成しました。6年3月現在、我が国におけるIB認定校等は241校となっており、今後もグローバル社会における人材育成に資するよう、IBの教育効果等の調査研究や好事例の波及等を通じて、IBの更なる普及・促進を図っていきます。
    • 在外教育施設の機能強化
      • 我が国の国際化の進展に伴って多くの日本人が子供を海外に同伴しており、在外教育施設(日本人学校、私立在外教育施設及び補習授業校)における教育の充実等を通じて、海外で学ぶ日本の子供たちの教育を受ける機会を保障することが重要になっています。令和4年6月には「在外教育施設における教育の振興に関する法律」が公布・施行され、文部科学省及び外務省は、5年4月に本法律に基づく基本方針を定めました。基本方針では、在外教育施設における教育の振興の基本的な方向として、在留邦人の子の学びの保障、国内同等の学びの環境整備、在外教育施設ならではの教育の充実を掲げ、それに向けた施策を示しています。文部科学省では、日本人学校や補習授業校への教師派遣、義務教育教科書の無償給与、教材整備、端末整備の支援等を行うほか、優れた教育プログラムへの重点的な支援により特色ある研究開発による教育の高度化を図るとともに、「在外教育アドバイザー」を設置して教育・運営に係る指導・助言を行っております。
    • 大学の国際化
      • 世界各国から多様で優秀な外国人留学生を受け入れ、日本人学生が積極的に海外留学に参加するためには、その基盤として、我が国の大学が、世界の大学と交流や連携を行い、学生のグローバル対応能力を育成するなど、国際化を進めていくことが重要になります。
      • 文部科学省においては、平成26年度から10年間「スーパーグローバル大学創成支援事業」(以下「SGU」という。)を通じて、大学改革と国際化を支援することで、我が国の高等教育の国際通用性、国際競争力の強化を支援してきました。具体的には、外国語による授業科目や外国語のみで卒業できるコースの増加、外国人教員や国際対応力のある職員の配置等において、顕著な成果を上げることで、着実に外国人留学生や中長期留学を中心とした日本人学生の海外留学を増やしてきました。
      • SGUを通じて大学の国際化が進む一方で、外国人留学生と日本人学生が深く関わり相互研鑽に励むための環境が十分に整っていないことや、外国人留学生の日本国内でのキャリアパスを見据えた受入れが不十分である等の新たな課題が顕在化しています。これを受け、令和6年度からは、国内外で外国人留学生と日本人学生が社会的課題の解決等を目指して、共に学び合うための体制を構築することで、更なる大学の国際化を推し進める「大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業」を実施しています。本事業においては、大学等が教育研究活動を行う国内外の地域における課題解決等を通じ日本人学生と外国人学生がそれぞれの文化的多様性を活かし共に学修する取組を進めています。

~NEW~
国民生活センター 国民生活 2024年7月号【No.143】(2024年7月16日発行)
▼ 消費者教育の視点で考える 子どもの金融経済教育のあり方
  • 金融経済教育推進機構が8月から本格稼働
    • 「金融経済教育推進機構」(以下、J-FLEC)が、金融経済教育を担う新たな司令塔として、2024年8月からいよいよ本格稼働します。
    • これまで金融広報中央委員会(事務局・日本銀行)が金融に関する幅広い情報普及活動を行ってきましたが、J-FLECは「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」に基づいて設立された認可法人で、2022年11月に新しい資本主義実現会議(内閣官房)が取りまとめた「資産所得倍増プラン」の中で、官民一体となって戦略的に金融経済教育を実施するための組織として設立するとされていたものです。運営体制の整備や運営経費などは、政府、日本銀行に加え、全国銀行協会、日本証券業協会等の民間団体からの協力も得て行い、2024年度の収入のうち9割以上は民間からの分担金で賄っています(日本銀行の補助金を含む)。
    • また、2024年3月に閣議決定された「国民の安定的な資産形成の支援に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」には、「金融リテラシーの向上における消費者教育との連携」が明記されています。
  • 子どものうちからの金融経済教育の必要性
    • 昨今の、次の3つの経済社会環境の変化は、子どもたちにも大きく影響しています。
    • 1つ目は、キャッシュレス化により電子マネーなどの「見えないお金」が増えたことです。「見えないお金」は、いくら使ったのかを目で見て把握できないだけでなく、使うとお金が減るという実感を得にくいものです。特にネット上の「見えないお金」の決済でトラブルにつながるケースが増加しており、子どもが無断でオンラインゲームに課金してしまったという相談件数は、2022年度は4,024件と2018年度(1,995件)の約2倍に、また契約購入金額の平均は約33万円と高額になっています。
    • 2つ目は、若者の貧困化です。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」によると、2023年の20歳代の金融資産の非保有率は43.9%と前年より1.8ポイント増え、金融資産保有額(非保有世帯を含む)の中央値は9万円、平均値は121万円です。また、日本学生支援機構の「令和4年度学生生活調査結果」では55%の大学生が奨学金を受けているというデータもあり、若い世代の厳しい経済状態がうかがえます。一方で、若者が、副業や暗号資産への投資など、詐欺的な“もうけ話”のトラブルにあっているという実態もあります。
    • 3つ目に挙げられるのが、人生100年の生活設計が求められるようになってきたということです。今後、さらなる少子高齢化が進むことが予想され、老後の年金受給額が不透明であることから、若いうちから長期的に資産形成する必要があるといわれています。
    • こうしたことなどから、若年層への早期からの金融経済教育の必要性が指摘されています。
  • 消費者教育から考える金融経済教育
    • 金融経済教育を消費者教育として考える場合、経済人として必要とされる知識という視点ではなく、自律し、自立した消費者市民を育む教育としてとらえ直す必要があります。
    • 生活経済を専門とした経済学者・御船美智子氏はかつて著書の中で「生活の経済は、家庭だけでなく全体の経済を、生活・生命の視点で再統合する概念である」とし、家庭生活と家庭経済と家計の関係を図1に示しました。子どもたちが生活を送る家庭は命を育む場であり、家計が貨幣を介して取引する市場経済はその一部です。また、経済学者・宇沢弘文氏は、市場領域は、広い意味での環境(社会的共通資本)に影響を受けるとした上で、非市場領域の重要性を指摘しました。お金は目的ではなく、手段です。生活の場から広く経済をとらえ、多様な価値が息づく持続可能な社会のあり方を考えていくということは、特に消費者教育における金融経済教育を考える際には、重要な視点と考えます。
  • 若い世代への金融経済教育のポイント
    • 日常生活から学ぶ
      • 消費者教育の出発点は生活です。日常生活を題材にして、例えば図2のような学習サイクルで学びを深めることができます。
      • 注意したいのは、子どもは発達の途上にある点です。例えば「見えないお金」を管理したり、使い過ぎを見越して行動したりすることは、小学校中学年までの子どもには難しいものです。そうした場合には、ルール化や「見える化」など、教える側の工夫が必要になります。また、思春期においては特に、まわりに流されず、自ら意思決定できるよう、テーマ選びや場の設定が重要になります。
      • なお、日常生活を教材にする場合には、家庭の経済状態への配慮も不可欠です。
    • 「自然的順序」で教える
      • 生活者の視点で「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の分野を見渡すと、図3の自然的順序が見えてきます。第1フェーズの家計管理は日常の行為であり、収入や資産の多寡にかかわらず、重要となるリテラシーです。黒字化させ、次のフェーズの生活設計とリンクさせながら、金融商品の利用選択につなげていくことになります。ですから、家計管理はお小遣いなど限られたお金を題材にして小さいうちからまず取り組むべきものといえます。支出の意味(自分の心のどのようなニーズを充足させたのか)を問うことで、自分にとって生活に必要なものとは何かを知ることができます。また、予測や抽象的思考が難しい年齢でも、お小遣いから貯蓄をし、必要な時に使う経験は、貯蓄の意義の理解を促し、生活設計、資産形成の基礎となります。
      • ところで、第3分野内の「金融取引の基本としての素養」は契約やトラブルに対応するものであり、また第4分野「外部の知見の適切な活用」は、消費生活センターが役割を果たすことがあるものです。金融経済教育への関心が高まるなか、投資にかかわる悪質な商法や無理な資産運用などによるトラブルが生じる可能性もあり、生活経験を考慮しながら、トラブル事例や広告などを題材に批判的思考力を養うなどして、取り組んでいく必要があります。
    • お金をとおして、持続可能な社会を実現
      • これまで消費者教育では、消費については「エシカル消費」などで意思表示するとしてきましたが、貯蓄や投資で持続可能な社会の実現のために努めている企業への支持を意思表示するということは、さほど扱われてきませんでした。例えば、サステナブルファイナンスなどについて考えることをとおして、主体的に市場経済とかかわる態度を養うことも消費者教育の役割の1つといえそうです。
  • 主体的に経済社会とかかわる力を
    • 高校生に授業をすると、「将来を考えたくない」など、拒否的な反応をする生徒もいます。私たちは一方的に経済的な自立を求めるのではなく、こうした声にまず耳を傾ける必要があるのかもしれません。子どもたちが自律し、自立していくには、主体的であることが不可欠だからです。気候変動をマクロ経済分析に統合した経済学者のウィリアム・ノードハウス氏は、個人の義務として第1に法の成立を促すこと、次に、社会に大きな影響を与える、小さな利他的行為を行うことを挙げており、こうした行動について知ることは、子どもたちが主体性を取り戻すヒントになりそうです。
    • 消費者教育は修得した知識を「適切な行動に結び付けることができる実践的な能力」を育むものです。自らの行動がよりよい生活や社会を実現するのだということを子どもたちと共有し、多様で豊かな持続可能な社会を形成できるよう、消費者教育の視点を生かし、金融経済教育に資することが肝要であると考えています。

~NEW~
東京都 東京都カスタマーハラスメント防止条例(仮称)の基本的な考え方
  • カスタマーハラスメントの防止に関し基本理念を定める。
  • 東京都をはじめ、関係者の責務を明らかにし、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を一層推進する。
  • 顧客等の豊かな消費生活、就業者の安全及び健康の確保並びに事業者の安定した事業活動を実現し、公正で持続可能な社会の形成を促進する。
  • この目的を達成するため、「条例の基本的な考え方」は以下の3つを柱として構成しています。
    • 「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」として、カスタマーハラスメントの禁止を規定
    • 「カスタマーハラスメント」の防止に関する基本理念を定め、各主体(都、顧客等、就業者、事業者)の責務を規定
    • 「カスタマーハラスメント」の防止に関する指針を定め、都が実施する施策の推進、事業者による措置等を規定
  • 策定の趣旨
    • 東京が未来へと発展を続ける鍵
      • 東京が未来へと発展を続ける鍵は、誰もが等しく豊かな消費生活を営み、働く全ての人が持てる力を存分に発揮し、事業者が事業活動を安定的に継続できる社会を作り上げることである。
    • 社会全体でカスタマーハラスメントを防止
      • カスタマーハラスメントは、個々の職場や事業者にとどまらず、社会全体で対応していくことが必要不可欠である。
    • 顧客等による意見の意義
      • 本来、顧客等による苦情や意見、要望は、業務の改善や新たな商品又はサービスの開発につながるものである。
      • 誰もがカスタマーハラスメントを受ける側にも行う側にもなり得るという視点も不可欠である。
    • 公正で持続可能な社会の実現へ
      • 顧客等と働く全ての人とが対等な立場に立って、互いに尊重し合うとともに、カスタマーハラスメントのない公正で持続可能な社会を目指していく。
  • 目的
    • カスタマーハラスメントの防止に関し基本理念を定め、東京都、顧客等、就業者及び事業者の責務を明らかにするとともに、施策の基本的な事項を定める。
    • 顧客等の豊かな消費生活、就業者の安全及び健康の確保、事業者の安定した事業活動を実現し、公正で持続可能な社会の形成を促進する。
  • 基本理念
    • カスタマーハラスメントは、就業者の人格又は尊厳を侵害し、就業者の就業環境を害するとともに、事業者の事業の継続に影響を及ぼすものであり、社会全体でカスタマーハラスメントの防止を図る必要がある。
    • カスタマーハラスメントの防止に当たっては、顧客等と就業者とが対等の立場に立って、相互に尊重する。
  • カスタマーハラスメントを表す用語
    • カスタマーハラスメント
      • 顧客等から就業者に対する、著しい迷惑行為であり、就業環境を害するもの
    • 著しい迷惑行為
      • 暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言など不当な行為
    • 「著しい迷惑行為」とは、次のいずれかに該当する行為が考えられます
      • 違法な行為
        • 暴行、傷害、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害、不退去 他
      • 不当な行為
        • 申出の内容又は行為の手段・態様が社会通念上相当であると認められないもの ※社会通念上の相当性は総合的に判断
        • 代表的な行為の類型(指針(ガイドライン)への記載を想定)
        • 申出の内容が相当と認められない場合の例
        • 事業者の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
        • 申出の内容が、事業者の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合
        • 行為の手段・態様が社会通念上相当と認められない場合の例
        • (1) 身体的な攻撃 (2) 精神的な攻撃 (3) 威圧的な言動 (4) 土下座の要求 (5) 執拗な言動 (6) 拘束的な行動 (7) 差別的な言動 (8) 性的な言動 (9) 従業員個人への攻撃 等
  • 主体を表す用語
    • 事業者 ※事業者は、都内にあり、官民や規模を問わないこととしています。
      • 都内で事業(非営利目的の活動を含む。)を行う法人その他の団体(国の機関を含む。)又は事業を行う場合における個人
    • 就業者 ※就業者は、都内で仕事をする全ての個人であり、都民か否か、 従事する期間、就業の形態を問わないこととしています。また、都外であっても、事業者の行う事業に関連する業務に従事している場合は、就業者に含むこととしています。(ボランティアやフリーランスの形態、芸能・芸術分野、地域の委員・議員などを含む。)
      • 都内で業務に従事する者(都外で事業者の行う事業に関連する業務に従事する者を含む。)
    • 顧客等 ※顧客等は、都民か否かを問わず、カスタマーハラスメントの行為者となる可能性がある、全ての個人を含む表現を定義しています。(取引先、公的サービスの利用者、団体活動の会員、住民、議員、イベント参加者などを含む。)
      • 顧客(就業者から商品又はサービスの提供を受ける者)又は就業者の業務に密接に関係する者
  • カスタマーハラスメントの禁止
    • 何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない。
    • 東京において、カスタマーハラスメントの防止は、働く人の就業環境と心身の健康を守るための喫緊の課題です。
    • カスタマーハラスメントは、働く人や職場の努力だけで防げるものではなく、社会全体に「やってはならない」という認識を浸透させる必要があります。
    • このため、カスタマーハラスメントの禁止規定を設けます。
    • なお、条例に違反した場合の罰則規定はありませんが、カスタマーハラスメントの禁止を明示することで、行為の抑止効果を期待しています。
  • 顧客等への配慮
    • 顧客等の権利(※)を不当に侵害しないように留意する。 ※消費者基本法、消費者教育推進法、障害者差別解消法、表現の自由など
    • 本来、正当なクレームは業務改善やサービス向上につながるものであり、不当に制限されてはなりません。
    • また、就業者が応対する顧客等の中には、障害のある人など、合理的配慮が必要な人も存在します。
    • 顧客等と就業者が対等の立場に立って、相互に尊重する基本理念の下、顧客等の権利について十分に配慮する必要があるため、この規定を設けます。
    • 都は、顧客等、就業者及び事業者に対し、カスタマーハラスメントの防止に関する情報の提供、啓発及び教育、相談及び助言その他必要な施策を行う。
    • 都は、カスタマーハラスメントの防止に関する施策の実施に当たっては、特別区及び市町村との連携を図るよう努める。
    • 都は、カスタマーハラスメントの防止に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努める。
  • 顧客等
    • 顧客等は、カスタマーハラスメントに係る問題に対する関心と理解とを深めるとともに、就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努める。
    • 顧客等は、都が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する施策に協力するよう努める。
  • 就業者
    • 就業者は、カスタマーハラスメントに係る問題に対する関心と理解とを深めるとともに、カスタマーハラスメントの防止に資する行動をとるよう努める。
    • 就業者は、事業者が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する取組に協力するよう努める。
  • 事業者
    • 事業者は、カスタマーハラスメントの防止に主体的かつ積極的に取り組むとともに、都が実施する施策に協力するよう努める。
    • 事業者は、カスタマーハラスメントを受けた就業者の安全を確保するとともに、行為を行った顧客等に対し、中止の申入れその他の必要で適切な措置を講ずるよう努める。
    • 事業者は、就業者が顧客等としてカスタマーハラスメントを行わないように、必要な措置を講ずるよう努める。
  • 指針の作成
    • 都は、カスタマーハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)を定める。
    • 都は、指針において、「カスタマーハラスメントの内容」、「顧客等、就業者及び事業者の責務」、「都の施策」、「事業者の取組」、「その他」事項を規定する。
    • 都は、指針を定め、又は変更したときは、速やかに公表する。
    • 指針への記載を想定している内容は以下のとおりです。
      • カスタマーハラスメントの内容に関する事項
      • 顧客等、就業者、事業者の責務に関する事項
      • 都の施策
        • 都の責務
        • カスタマーハラスメント防止施策の推進
      • 事業者の取組
        • 必要な体制の整備
        • カスタマーハラスメントを受けた者への配慮
        • カスタマーハラスメント防止のための手引(マニュアル)の作成
        • その他の措置
      • その他カスタマーハラスメントを防止するために必要な事項
  • 施策の推進
    • 都は、カスタマーハラスメントの防止に関する「情報提供」、「啓発及び教育」、「相談及び助言」、 「その他」施策を実施する。
    • 都は、カスタマーハラスメントの防止に関する施策の実施及び実施状況を検証し、施策に反映するよう努める。
    • 都がカスタマーハラスメントの防止に関して実施する施策の例は以下のとおりです。
      • 都の事業等に関する情報の提供(ウェブサイト等)
      • カスタマーハラスメントの防止に関する理解を深めるための啓発・教育
      • 労働問題や消費生活問題に関する相談・助言
      • 中小企業等に対する専門家による相談・助言
  • 事業者による措置
    • 事業者は、指針に基づき、必要な体制の整備、カスタマーハラスメントを受けた者への配慮、カスタマーハラスメント防止のための手引(マニュアル)の作成その他の措置を講ずるよう努める。
    • 就業者は、事業者が手引を作成したときは、遵守するよう努める。
    • 事業者の措置の詳細は、指針に記載します。
      1. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
        • 相談先(上司、職場内の担当者)をあらかじめ定め、これを就業者に周知する
        • 相談を受けた者が、あらかじめ定めた留意点などを記載したマニュアルに基づき対応する 等
      2. カスタマーハラスメントを受けた就業者への配慮のための取組
        • 事案に応じ、カスタマーハラスメント行為者に複数人で対応することやメンタルヘルス不調への相談対応 等
      3. カスタマーハラスメントを防止するための取組
        • カスタマーハラスメント行為への対応に関するマニュアルの作成や研修を行う 等
          • ※ 業界団体が作成したマニュアル(都も共通マニュアルを作成)を参考とすることを推奨
      4. 取引先と接するに当たっての対応
        • 立場の弱い取引先等に無理な要求をしない、取引先の就業者への言動にも注意を払う
        • 自社の社員が取引先でカスタマーハラスメント行為を疑われ、事実確認等を求められた場合は協力する 等
          • ※ 関係法令・告示・厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に沿って内容を検討
  • 見直し規定
    • 都は、カスタマーハラスメントの防止に関する取組の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる。

~NEW~
消費者庁 食品表示基準の一部改正に係る答申【7月16日付】
▼ 食品表示基準の一部改正に係る答申について
  • 食品表示基準の改正に関する事項
    1. 健康被害情報の収集等
      • 事業者が把握した健康被害の疑われる情報(医師が診断したもの)については、適切に保健所や消費者庁に報告すべきであり、その報告期限に関しては、重篤度に応じて、可能な限り短期となるよう検討すべきである。
      • 医師の診断の有無に関わらず、健康被害の疑い症例を積極的に収集することにより、広域にわたる健康被害情報の早期検知が可能となる。医師の確定診断がなくても、薬剤師等の医療従事者、消費者から寄せられた健康被害の疑いがある事案について、保健所や消費者庁は積極的に情報収集することを検討すべきである。
      • 今般、義務化が予定されている事業者から保健所への報告に際しては、診断した医療機関名を添えることを要件とする等、報告を受けた保健所から医師への疑義照会が円滑に行なわれるための法的な根拠や運用の在り方を整理すべきである。
      • 医師から事業者への連絡が行われるケースにおいては、医師から保健所への報告も併せて行われることが望ましい。食中毒患者等を診断した医師の報告義務を課している食品衛生法第63条の枠組みの活用を含めて、医師との協力体制の構築について検討すべきである。
      • 保健所に報告された健康被害情報については、医学・疫学的な分析・評価が行われた上で定期的に結果が公表されているが、行政機関や事業者から可能な限り早期に公表される仕組みを設けることも検討すべきである。
    2. サプリメント形状の加工食品に係る製造管理及び品質管理における適正製造規範(GMP)の義務化
      • 製造工程に加えて、原材料工場へ適用できる仕組みも検討すべきである。
      • 消費者庁による立入検査について、必要な検査体制(人員・予算・資格)を早期に整備すべきである。
      • 錠剤やカプセル剤等のサプリメント形状の加工食品に関しては、特定の成分を精製・濃縮していく製造工程において、他の想定できなかった成分も一緒に濃縮されるリスクが繰り返し指摘されていることから、今般義務化が予定されているGMPについて、米国の基準なども踏まえつつ、更なる厳格化を検討すべきである。
    3. 届出後の新たな科学的知見が得られた際の消費者庁への報告
      • 届出者は、新たな科学的知見により当該食品の機能性表示を行うことが適当でない場合には、届出をした機能性表示の内容等の変更を適時・適切に行うことが不可欠であることから、新たな科学的知見が得られた際の消費者庁への報告を遵守事項として義務付けることとされている。その報告については事業者自身に委ねられていることから、実効性を確保するための明確な仕組みを整備すべきである。
    4. 遵守事項に関する届出者の自己チェック等
      • 届出者は、遵守事項を遵守していることを届出後1年ごとに自己評価し、その結果を毎年消費者庁に報告することを遵守事項として義務付けることとされている。事業者自身が行う自己評価について、実効性を確保すための明確な仕組みを整備すべきである。
    5. 義務的表示事項の表示方法及び表示方式等の見直し
      • 表示方法の見直しについては、消費者の意見を取り入れながら丁寧に進める必要があるところ、例えば以下の点に留意すべきである。
      • 摂取上の注意事項について、医薬品との相互作用や過剰摂取により健康被害が生じる可能性があることへの警告表示を含めて、よりリスクが伝わる内容とすべきである。
      • 義務的表示事項の機能性の届出範囲を逸脱する強調表示や表示の切り出しに対する規制を厳格化するとともに、消費者保護の視点からの監視・執行体制を強化すべきである。
      • 容器包装の主要面の表示については、文字が小さくなったり文章を省略したりすることで、必要な注意喚起が伝わらなくなることが懸念されている。まわりくどい表現の改善や視認性の向上を含めて、主要面に表示する情報を精査すべきである。
      • 容器包装の表示だけで機能性及び安全性について理解することは困難であることから、二次元コードの活用等を含めて、表示方式等の更なる検討を行うべきである。
    6. 届出すべき内容の明確化
      • サプリメント形状の加工食品に関しては、その製造から最終製品の出荷までに至る一連の工程に係る情報について、食品表示基準における届出情報として規定することとされている。具体的に届け出られるべき情報を明確にするとともに、消費者に対してわかりやすく情報公開すべきである。
    7. 消費者庁における販売前の確認に時間を要すると認められる場合の手続の見直し
      • これまで届出実績がない等の新規成分について、新規かどうかの判断は成分の新規性で見るのか、あるいは実績のある機能性関与成分であっても新たな機能や科学的根拠が見つかった際には新規という形になるのか等、新規成分の定義を明確にすべきである。
      • リスクの高い商品が安易に流通することがないよう、新規成分や特定の医薬品成分を使用する場合には、特に慎重な確認を行うべきである。
      • 食薬区分の判断基準を示す「無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日薬発第476号)」においては、新規成分本質(原材料)に係る事業者等の照会に対し、専門家が評価した上で判断するという手続が設けられている。新規成分に関しては、この枠組みも有効活用しながら、安全性の確保に万全を期すべきである。
    8. 届出後の科学的知見の充実により機能性表示をすることが適切でないことが判明した場合に機能性表示ができなくなる仕組み
      • 届出後の科学的知見の充実により機能性表示を行うことが適切でないことが判明した場合には、機能性表示ができなくなることはもとより、届出者の自主的な届出撤回の申出を待つことなく、速やかに販売を禁止する仕組みを設けることを検討すべきである。
    9. 有効性の信頼確保のための措置
      • 機能性表示食品制度における有効性の科学的根拠となるPRISMA声明2020への準拠については、令和7年4月の新規届出から導入するとのことである。既に届け出られている分に関しても、自己点検の際に切り替えることを義務付けるなど、有効性の信頼確保に向けた更なる取組を検討すべきである。
    10. 施行期日及び経過措置
      • 経過措置を設けることは必要と考えられるものの、経過措置期間最終日に製造された商品は、賞味期限までの数年間は市場に出回ることになる。経過措置期間内に製造されたものか、期間後に製造されたものか、消費者が判別できるような仕組みを設けることを検討すべきである。
      • 施行期日や経過措置期間については、幅広い層の消費者に対する、きめ細やかな周知・広報を行うべきである。
      • 経過措置期間終了後、2年後を目途として、制度改正の効果について検証を行い、必要に応じて制度の見直しを実施すべきである。
  • その他機能性表示食品全般に関する事項
    1. 食経験
      • サプリメント形状の機能性表示食品に係る安全性の評価方法において、わずか数年間の短い販売実績を喫食実績として食経験を評価しているものが多くみられる。これらは本来の食品の安全性における食経験が適用できるとは言い難く、既存の安全情報の収集や安全性試験の実施を併せて求めるなど、食経験の安全性について検討すべきである。
    2. 食品衛生法
      • 厚生労働省においては、食品全般に関する健康被害情報を医療機関に限らず消費者や事業者等からも収集しており、集められた健康被害情報を医学的・疫学的に解析・分析し、必要に応じて適切な食品衛生法上の措置を行っているとのことである。機能性表示食品に関して、特定の成分による健康被害情報が多数報告された場合には、消費者庁と緊密に連携して、食品衛生法第8条の指定成分等に指定することについても検討すべきである。
    3. 薬機法
      • 機能性表示食品の中には、医薬品成分が含まれているものがある。食品の中に医薬品成分が含まれていても、医薬品のように表示しないことや、通常食べられているものについては医薬品という判断はしないということに一定の合理性があり、その考え方は通知やQ&Aで公表される等の取組がなされているとのことである。引き続き食薬区分を明確にする取組を推進するとともに、悪質な事例(食品の形態でありながら医薬品成分が添加されたもの等)に対する監視・取締りを徹底すべきである。食品表示基準の一部改正の施行後、消費者委員会は、附帯意見の対応状況について、消費者庁及び関係省庁に確認を行っていく所存である。

~NEW~
消費者庁 サプリメント食品に係る消費者問題に関する消費者委員会意見【7月16日付】
▼ サプリメント食品に係る消費者問題に関する意見
  • 我が国には、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)やその他のいわゆる「健康食品」において、特定の保健上の機能が期待される旨を示した(以下「ヘルスクレーム」という。)サプリメント食品が多数みられる。今般の紅麹関連製品に係る事案を受け、機能性表示食品については、安全性の在り方に重点を置いた制度改正が行われる見込みとなっているが、それは、サプリメント食品が抱える問題という観点からみると、一側面への対応に留まっている。
  • 当委員会は、サプリメント食品が惹起する可能性のある、様々な問題について懸念している。本来、ヘルスクレームを謳うことができないはずのその他のいわゆる「健康食品」において、不適切な表示・広告が多数みられる。また、同一の食品を、大量に、長期間摂取することの安全性は必ずしも実証されておらず、サプリメント食品については基原材料の中に微量に存在する有害物質が製造等の過程において濃縮されうること又は製造等の工程において新たに有害物質が生成されうることは政府が認めているとおりである。
  • また、我が国には、欧米主要国とは異なりサプリメント食品を定義しそれを包括的に規律する法律はなく、健康被害情報の収集・活用、有効性・安全性の観点からの実効性の確保、表示・広告規制等において、消費者保護の視点からの規律や監視・執行体制が不十分である。
  • 以上のことから、当委員会は、サプリメント食品に係る消費者問題への対応が急務と考えており、政府に対し、以下のとおり意見を述べる。
  • なお、当委員会は、サプリメント食品に係る消費者問題は、重要事項であると認識しており、今後も調査審議を行っていく。
  • 健康被害情報の収集・活用、有効性・安全性の実効性の確保
    • サプリメント食品を巡る現状は、(1)有効性・安全性について、国の審査を受けた個別許可制の特定保健用食品、(2)有効性・安全性の根拠に関する情報を、事業者が届け出ることで足りる機能性表示食品、(3)栄養成分の機能について一定の表示ができ、自己認証制度である栄養機能食品、(4)届出もないその他のいわゆる「健康食品」が存在するなど、多種多様なタイプのサプリメント食品が混在する状況となっている。
    • しかし、サプリメント食品は、基原材料の中に微量に存在する有害物質が製造等の過程において濃縮されうること又は製造等の工程において新たに有害物質が生成されうることから、有効性・安全性の実効的な確保に向けた取組が必要であり、特定保健用食品、機能性表示食品に限らず、その他のいわゆる「健康食品」を含めた全てのサプリメント食品に対する健康被害情報の収集、GMP(適正製造規範)に基づく製造管理が必要と考えられる。
    • 本来、保健機能食品として国の許可等を得た場合を除き、消費者に対して特定の保健上の機能が期待される食品であると表示することは原則として禁止されている。ヘルスクレームを謳うためには、少なくとも機能性表示食品として届け出てもらう必要があり、その移行がなされるような監視指導を行うための体制整備が必要である。
    • また、有効性・安全性の確認手段を強化するため、必要に応じ、科学的知見を有する専門家(医学や薬学等の専門家や食品安全委員会等)に意見を聴く仕組みを構築する必要がある。
    • 並行してその監視も強化し、有効性・安全性が確認できないケースなども含め問題があると考えられる場合には、販売停止や製品回収等、消費者保護のためより踏み込んだ対応が必要である。なお、機能性表示食品を表示中心の届出制としたまま、表示との関係性の必ずしも強くない事項についての事業者の義務を強化する方向性は、消費者にとっても事業者にとっても不透明なものとなっており、行政運営における公正の確保と透明性の向上(行政手続法第1条第1項)を図る観点からも、法制上明確化が望まれる。
  • 表示・広告規制の強化
    • サプリメント食品は、摂取方法によっては、リスクが高いものと考えられるが、巧みな表現や行き過ぎた広告と相まって、消費者は「(たくさん摂取しても)体によさそう」「病気の予防・治療に効果がある」等の認識に陥る可能性がある。そのため、表示・広告に対する厳しい規定が必要と考えられる。
    • 現状、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)による優良誤認表示、有利誤認表示、不実証広告規制はあるものの、規制対象者は届出者(製造・販売事業者)に限られると考えられる。
    • 健康増進法(平成14年法律第103号)による誇大表示の禁止規定はあるものの、依然として、本来違法であるはずのヘルスクレームを謳う・その他のいわゆる「健康食品」のサプリメント食品が氾濫していることや、「著しく」の解釈のレベルに幅があり、執行にばらつきが生じる可能性がある等により取締りが不十分となっている可能性がある。
    • 機能性表示食品については、食品表示基準に義務的表示(第3条等)、表示禁止事項(第9条等)の規定はあるものの、届出の撤回や機能性表示食品という表示を削除すれば規制の対象外となる。また、同基準には、広告その他の表示を規律する規定がおかれていない。従って、現行法による表示・広告規制は必ずしも十分とはいえない。
    • 他方、薬機法の誇大広告等10に対する規制においては、規制対象が、「何人も」となっており、製造・販売事業者にとどまらず、広告代理店、アフィリエイター等も含まれる。また、違反した場合には、課徴金11が課される場合もある。サプリメント食品に対しては、消費者が、その形状と相まって、医薬品等に近い認知に陥る可能性があることに鑑み、薬機法に定めるような広告規制も参考に、表示・広告規制を強化することが必要である。
  • 消費者への情報提供及び注意喚起
    • 我が国では高齢化が進展しており、高齢者の消費生活における関心事項の1つに、健康の維持等がある。
    • 国民生活センターが実施した調査12によれば、錠剤・カプセル状の健康食品の摂取の理由の上位5位は、「栄養補給」(24.7%)、「体力、持続力の維持・向上」(12.9%)、「ダイエット」(10.3%)、「なんとなく体によさそう」(9.0%)、「エイジングケア、老化予防」(7.9%)となっており、サプリメント食品に対する消費者の期待が見て取れる。また、同調査によれば、錠剤・カプセル状の健康食品を、病気の治療・緩和のために摂取していると考えられる消費者が約20%となっており13、健康上の課題を抱えている消費者に誤った認識のもとに、摂取されている実態がある。
    • さらに、「おおむね摂取目安量より多めに飲む(飲んでいた)」「摂取目安量より多めに飲む(飲んでいた)ことがある」を合わせると約10%となっている。
    • こうした実態をも踏まえ、サプリメント食品について、(1)疾病の予防、治療を目的とする医薬品ではないこと、(2)特定の濃縮された成分を長期間摂取や過量摂取することにはリスクがある等のリスク及び懸念や、(3)消費者において食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めることの重要性等について、既に政府がホームページ等で実施している情報提供や注意喚起の取組を更に充実させると共に、消費者に確実に届き理解を深めることを念頭にした施策を講じる必要がある。
  • 消費者保護の取組を規律する法制度や組織の明確化
    • サプリメント食品は、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、あるいは、その他のいわゆる「健康食品」等、多種多様な形で販売されている実態がある。それぞれを規定する法律に異なる部分があることやヘルスクレームを謳う根拠規定が異なること等を背景に、有効性・安全性に疑義が生じた場合に、誰が、どのような手順で確認を行い、違反した場合にどのような行政措置があるのかがわかりにくい。
    • また、法令違反の可能性がある表示・広告の取り締まりについても、監視・執行体制は十分ではない。こうしたことは、消費者保護の不十分性のみならず、事業者の立場の不安定性や競争条件の不均質性を惹起する可能性がある。
    • 我が国には、サプリメント食品に関する、健康被害情報の収集・活用、有効性・安全性の実効的な確保、表示・広告規制等についてサプリメント食品を包括的に規律するための法制度がなく、一定の監視は行われているものの、サプリメント全般への監視・執行(販売停止や製品回収等)を担う組織が明確でない。そのため、サプリメント食品を規律するための制度整備や、サプリメント食品に係る消費者保護の取組を担う組織の在り方について検討が必要である。

~NEW~
厚生労働省 第10回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会
▼ 資料1-1 報告書(素案)
  • 女性管理職の登用促進(女性管理職比率の公表)
    • 男女間賃金差異の要因は、男女間の勤続年数差と女性管理職比率の低さによところが大きく、女性管理職比率については、我が国は諸外国と比較して低い状況にあることも指摘されている。
    • 女性管理職比率の向上については、男女間賃金差異の是正のみならず、女性のキャリア形成やダイバーシティ推進の観点からも、取組の加速化を図る必要がある。このため、現在開示項目の選択肢の一つとなっている女性管理職比率について、企業の実情を踏まえつつ、開示必須項目とすることが適当である。
    • 加えて、女性管理職比率は、女性従業員が多い企業においては高くなりやすい面があることから、女性管理職の状況について企業が的確に把握できるようにするために、男女それぞれの労働者数の合計を分母とし、男女それぞれの管理職数を分子とする男女別管理職登用比率を活用することも考えられる。
    • このため、例えば、女性管理職比率の公表に加え、企業が公表する際に、この男女別管理職登用比率を説明欄に記載し、管理職登用の実態に関する補足的な説明を付記することを促すことも検討すべきである。あわせて、女性管理職登用拡大に向けての好事例の収集・提供や相談支援など中小企業における取組支援を進めることが求められる。
  • 男女雇用機会均等法等の履行確保とアンコンシャス・バイアス解消に向けた取組の推進
    • 女性活躍推進の前提である労働基準法(昭和22年法律第49号)、男女雇用機会均等法等の履行確保や、コース別雇用管理の適切な運用、間接差別への適切な対応等、引き続き、関連法制度等の周知に加え、実態を踏まえて適切に対応していくことが重要である。
    • また、依然として、家事・育児の大半は女性が担っている現状がある。
    • 一方、育児等の家庭責任を果たすために、男性が仕事に制約を抱えることが当然とは受け止められにくい職場風土がある。こうした職場における性別役割分担意識はアンコンシャス・バイアス13となり、女性活躍の障壁や、様々なハラスメントの背景にもなりやすい。そうしたことから、一層の職場における意識改革が必要である。
    • 例えば「女性だから管理職は無理」といったアンコンシャス・バイアスは管理職、女性労働者それぞれに存在すると指摘されている。ポジティブ・アクションを促す女性活躍推進法の枠組みにより、アンコンシャス・バイアスを解消するような取組を強化すべきである。そのため、啓発事業は中小企業に対するものに加えて、キャリア形成の観点から女性労働者自身に対するものも実施すべきである。
  • ヘルスリテラシー向上(ヘルスリテラシーの重要性)
    • 女性のライフサイクルの中での、女性特有の健康課題(月経、妊娠・出産、更年期、婦人科がんの罹患等)については、職場において女性が働きやすい環境を整備することや、女性自身が知識を得て生涯にわたり健康を確保するために、男性・女性ともに知っておくことが重要である。
    • その際、月経、不妊治療、更年期等の課題について職場での理解・支援を進めていくためには、症状の出方や期間等に個人差があることを理解することが必要である。
    • 月経、不妊治療、更年期等の課題に関しては、個々のヘルスリテラシーを高めることで、医療機関における適切な受診につながり得ることや、生活改善(運動・睡眠等)により労働者自身が上手くコントロールすることでストレス軽減ができるといった理解が広がることが望ましい。自己診断により受診のタイミングが遅れることのないよう、専門家の診断をある段階で受けることが重要ということにも留意する必要がある。
    • 加えて、男女とも勤務先での働き方の改善や、男性の多い職場における理解や男性上司の理解等も大切であり、その促進のための取組を総合的に進めていく必要がある。
  • 先進国におけるハラスメント法制
    • 諸外国におけるハラスメント法制の比較に当たっては、各国の社会状況が異なることから、一概に比較できないことに留意が必要であるが、ILO第190号を批准しているG7国であるイギリス、フランス、ドイツ、カナダについて、情報収集や文献調査を行った。
    • イギリスでは、平等法において性や人種など保護特性に関連したハラスメントが禁止されており、被害者は雇用審判所による低廉迅速な救済を受けることができる。また、ハラスメントからの保護法により被害者を警戒させたり苦しめたりする行動を含め、広範にわたる行動をハラスメントとして禁止しており、被害者は民事救済が受けられるほか、差止命令違反について刑事罰も定められている。加えて、コモンロー上の注意義務違反(ネグリジェンス)により、使用者の注意義務違反の範囲は被用者の精神的な人格的利益の保護に及び、ハラスメントにも妥当するとされている。
    • フランスでは、労働法典において、「モラルハラスメント」、「セクシュアルハラスメント」、「性差別的行為」が規定されており、これに違反してなされた解雇等は無効となるほか、使用者は、予防措置を講ずる義務を負い、行為者に懲戒処分を行うことも求められる。また、2008年5月27日法律において、セクシュアルハラスメントと、出自、性別、障害、国籍等の差別禁止事由に関連するハラスメントが差別として禁止されている。加えて、刑法典において、「モラルハラスメント罪」、「セクシュアルハラスメント罪」、「性差別侮辱罪」等についても規定されている。
    • ドイツでは、一般平等取扱法において、包括的な差別禁止規定があり、人種、民族的出自、性別、宗教若しくは世界観、障害、年齢又は性的アイデンティティを理由とする不利益取扱いは、ハラスメントやセクシュアルハラスメントも含め、一般的に禁止されており、使用者は損害賠償責任を負うほか、予防措置を講ずる義務を負い、行為者に対する適切な措置を講じる義務も負う。しかし、パワーハラスメントやいじめに相当する「モビング」については立法されておらず、民法や事業所組織法による規定により救済されている。加えて、刑法典により、傷害罪、強要罪、脅迫罪、性的侵害罪、性的強要罪、強姦罪、セクシュアルハラスメント罪、侮辱罪等が適用され得る。
    • カナダでは、人権法において、雇用に関する事項について、人種、性別等の禁止事由による差別やハラスメントを禁止するとともに、セクシュアルハラスメントについても禁止しており、人権委員会への苦情申立てができるとされている。また、労働法典では、ハラスメントと暴力について、使用者の義務(防止・保護・応答・援助提供義務)、行政罰等を規定している。加えて、刑法により、犯罪的ハラスメント罪(ストーカー行為)、脅迫罪、暴行罪、身体的危害を与える又は武器による暴行罪、性的暴行罪等が適用され得る。
    • 上記4ヶ国の規律は、差別禁止法によるもの(イギリスの平等法、フランスの2008年5月27日法律、ドイツの一般平等取扱法、カナダの人権法)、労働法典によるもの(フランス、カナダ)、一般的なハラスメント規制法によるもの(イギリスのハラスメントからの保護法)、刑法によるもの等がある。差別禁止法の雇用に関する規定や労働関係法令は、雇用労働関係を中心に保護したものであり、ILO第190号条約が射程範囲とするもののうち、ボランティアについては特別の立法措置は見当たらず、一般的な民法典やコモンロー、刑法典等で対応しているものと考えられる。
  • カスタマーハラスメント(顧客、取引先等からの著しい迷惑行為等)
    • カスタマーハラスメント(顧客、取引先等からの著しい迷惑行為等)については、令和2年にパワハラ防止指針に事業主が取り組むことが望ましい事項として明記された。令和3年に「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」を開催し、令和4年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(以下、「対策企業マニュアル」という。)が作成された。この対策企業マニュアルを参考にしつつ、現在、業界団体や事業者において対応マニュアルを策定するなどの動きがみられる。
    • 厚労省令和5年度調査によると、過去3年間にカスタマーハラスメントを受けた労働者は全労働者のうち10.8%となっており、パワーハラスメントよりは少ないが、セクシュアルハラスメントよりは多い状況にある。また、カスタマーハラスメントを受けた経験を接客頻度別にみると、ほとんど顧客等と接することがない者は 5.3%であるのに対して、勤務日はほぼ毎日顧客等に接している者は17.4%という状況である。接客頻度が高くなるとカスタマーハラスメントを経験する割合が高くなっている。
    • 厚労省令和5年度調査によると、カスタマーハラスメントの行為者は、「顧客等(患者またはその家族等を含む)」が82.3%、「取引先等の他社の従業員・役員」が22.6%となっている。
    • 厚労省令和5年度調査によると、過去3年間に受けた顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の内容としては、「継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)」が57.3%、「威圧的な言動(大声で責める、反社会的な者とのつながりをほのめかす等)」が50.2%等である。また、カスタマーハラスメントを受けた労働者の大半が、「怒りや不満、不安などを感じた」り、「仕事に対する意欲が減退し」ており、被害労働者の心身への影響がみられる。
    • 「顧客や取引先から無理な注文を受けた」、「顧客や取引先からのクレームを受けた」ことによる労災認定もある。この中には、被災労働者が自殺(未遂を含む。)した事案もある。また、令和5年9月に心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改正され、業務による心理的負荷評価表の具体的出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が明記された。
    • 一方で、厚労省令和5年度調査によると、企業側の対応として、相談体制の整備、被害労働者へのメンタルヘルス不調への対応等に取り組む企業は一定数みられるが、「特にない」としている企業は従業員規模1000人以上の企業においても37.2%、企業規模が小さくなるとその割合は高い状況(300~999人規模企業:48.9%、100~299人規模企業:62.0%、99人以下規模企業:73.8%)にある。
    • 厚労省令和5年度調査によると、カスタマーハラスメント対策に積極的に取り組んでいる企業は、取り組んでいない企業と比べると、カスタマーハラスメント被害は少ない状況にある(「積極的に取り組んでいる企業」における過去3年間にカスタマーハラスメントを受けた経験は12.8%であるのに対して、「あまり取り組んでいない企業」における過去3年間にカスタマーハラスメントを受けた経験は23.1%)。
  • カスタマーハラスメント
    1. 対策強化の必要性
      1. 防止対策の意義
        • 顧客等からの著しい迷惑行為であるカスタマーハラスメントは労働者の心身を害するものであることは言うまでもなく、カスタマーハラスメントを目撃した顧客等も不快にするものである。企業においても人材流出や顧客離れをもたらすおそれがあるものである。
        • そうしたことから、カスタマーハラスメントを防止することは、労働者を守るという観点のみならず、個別企業における働きやすい環境を整備することにより、労働者の確保・定着に資するとともに、業種、業界のイメージアップ、さらには顧客等の利益につながるものである。
        • また、カスタマーハラスメント対策等を通じて企業が従業員の顧客対応力を高めること等により、従業員を守るだけではなく、顧客等とのコミュニケーションが円滑になることによる営業上のメリットも期待できると考えられる。
      2. 企業における取組の必要性
        • これまでも、カスタマーハラスメントについては、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワハラ防止指針」という。)において、事業主が行うことが望ましい取組等を明記するとともに、対策企業マニュアルを作成するなどの対策が行われてきたところである。
        • こうした対策等の結果、労働者のカスタマーハラスメントの経験は減少傾向にあるが、厚労省令和5年度調査によれば、勤務日にほぼ毎日顧客と接している者のうち17.4%はカスタマーハラスメントを経験している状況にあること、従業員規模1000人以上の企業においても特段の対応に取り組んでいない企業が37.2%であること、対策に積極的に取り組んでいる企業ではカスタマーハラスメントの被害が少ない状況にあることに鑑み、個々の企業だけでなく、企業横断的にカスタマーハラスメント対策への取組が進むよう、対策を強化することが必要である。また、このような対策強化により、社会全体として、カスタマーハラスメントが許されるものではないということが明確になるとともに、企業がカスタマーハラスメント対策を実施することが望ましいという社会規範が形成されるというメリットがあると考えられる。
    2. 対策強化の方向性
      1. 労働者保護の観点からの法制化
        • 上司や同僚からのハラスメントと、顧客や取引先からのハラスメントでは、その性格や対応も異なるが、労働者の就業環境を害するものであり、企業の負う安全配慮義務等の観点からも、何らかの対策、配慮が必要という点では共通することから、労働者保護の観点から事業主の雇用管理上の措置義務とすることが適切である。
      2. 事業主の措置義務の在り方
        • 従前の4種類のハラスメントに係る事業主の雇用管理上の措置義務においては、行為者が主に企業内の労働者等であり、事業主が発生の予防、発生した場合の対応や再発防止等一連の対応を行うことができる一方、行為者が顧客や取引先等の第三者であるカスタマーハラスメントの場合、必要となる対応は異なるものと考えられる。
        • この点、行為者として、取引先等の他の事業主やその雇用する労働者、顧客、患者やその家族、学校の生徒等も想定されている、セクシュアルハラスメントに係る事業主の措置義務の内容が、参考となる部分があると考えられる。
        • また、カスタマーハラスメントの行為者が取引先である場合について、被害者である労働者を雇用する事業主が、雇用管理上の措置の実施に関して、当該取引先の事業主に対して、必要な協力を求めることができるようにすることが考えられる。
        • なお、具体的には、企業が講じる措置について、取引先と消費者の場合で異なる部分があり得るため、その点は、企業現場の対応も踏まえながら、きめ細かに検討を深めることが重要である。
      3. 消費者法制や各業法等との関係
        • カスタマーハラスメント対策は、消費者法制により定められている消費者の権利等を阻害しないものでなければならないことは当然のことである。また、各業法等によりサービス提供の義務等が定められている場合や、業種・業態等によりサービス提供等における対応方法、基準等が異なる状況がある場合がある。前述の取引先との関係や、消費者の権利、業種・業界等における商慣行等の違いにも留意しつつ、労働者保護の観点から対策を講じるに当たっては、業界団体における対応や業所管官庁との連携による取組が効果的である。
    3. カスタマーハラスメントの定義
      1. 定義の考え方
        • 対策企業マニュアルにおいては、企業や業界により、顧客等への対応方法・基準が異なることが想定されるため、カスタマーハラスメントを明確に定義しておらず、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」がカスタマーハラスメントであると考えられるとしている。
        • 現在、業界団体や企業の対策において、この考え方に即して、取り組まれている実態があることを踏まえると、この考え方を参考にしつつ、社会全体で幅広く受け入れられるカスタマーハラスメントの定義を検討することが適切である。
        • また、カスタマーハラスメントという行為は、「労働者の就業環境が害されるもの」であることは共通するが、特に小売業、公共交通機関、学校現場、医療や介護等福祉等、幅広い業種・業態でみられることが指摘されており、その実態は様々あることが想定されることから、具体的な事例を収集し、分析することも必要である。
      2. カスタマーハラスメントの定義
        • 対策企業マニュアルを参考としつつ、カスタマーハラスメントの定義は、以下のⅠ~Ⅲまでの要素のいずれも満たすものとして検討すべきである。
          • 【カスタマーハラスメントの3要素】
            • Ⅰ 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと
            • Ⅱ 社会通念上相当な範囲を超えた言動であること
            • Ⅲ 労働者の就業環境が害されること
      3. カスタマーハラスメントの3要素の具体的な内容
        • 3要素の具体的内容としては、以下のとおり考えられる。
          • Ⅰ 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと
            • 「顧客」には、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含むと考えられる。「施設利用者」とは、施設を利用する者をいい、施設の具体例としては、駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等が考えられる。「利害関係者」には、法令上の利害関係だけではなく、施設の近隣住民等事実上の利害関係がある者も含むと考えられる。
          • Ⅱ 社会通念上相当な範囲を超えた言動であること
            • 顧客、取引先等の権利を濫用し、逸脱したものをいい、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段・態様が相当でないものが考えられる。
            • 言動が「社会通念上相当な範囲を超えた言動」か否かの判断については、「言動の内容」及び「手段・態様」に着目し、総合的に判断することが適切である。この場合、「言動の内容」、「手段、態様」の双方が必須条件ではなく、「言動の内容」、「手段・態様」の片方のみで社会通念上相当な範囲を超える場合もあり得ることに留意が必要である。
            • また、社会通念上相当な範囲を超えるかどうかの判断に当たっては、正当な指摘等を受けた事業者(労働者)の側の不適切な対応が端緒となっている場合もあることにも留意する必要がある。
              • 社会通念上相当な範囲を超える言動の内容例
                • そもそも要求に理由がない又は全く関係のない要求
                • 契約内容・提供サービスを著しく超える要求
                • 対応が著しく困難、無理な要求
                • 不当な損害賠償請求 等
                • 具体例として考えられるもの
                  • 契約内容を超える要求
                  • 会社の事業とは関係ない要求(性的なもの、プライバシーに関わるもの等)
                  • 商品やサービス内容と無関係である不当な損害賠償要求 等
              • 社会通念上相当な範囲を超える手段・態様例
                • 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
                  • 具体例として考えられるもの
                    • 物でたたく
                    • ぶつける
                    • つばを吐きかける
                    • 殴る、蹴る 等
                • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損 侮辱 暴言、土下座の強要 等)
                  • 具体例として考えられるもの
                    • 「物を壊す」「殺す」といった発言による脅し
                    • SNSへの暴露をほのめかした脅し
                    • インターネット上の投稿(従業員の氏名公開等)
                    • 精神的な暴言、土下座の強要
                    • 盗撮 等
                • 威圧的な言動
                  • 具体例として考えられるもの
                    • 大声でオペレーターを責める
                    • 店内で大きな声をあげて周囲を威圧する
                    • 反社会的な言動 等
                • 継続的(繰り返される)、執拗(しつこい)言動
                  • 具体例として考えられるもの
                    • 頻繁なクレーム
                    • 同じ質問を繰り返し、対応のミスが出たところを責める
                    • 当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立て
                • 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
                  • 具体例として考えられるもの
                    • 長時間の拘束・居座り・電話 等
          • Ⅲ 労働者の就業環境が害されること
            • パワーハラスメントの要件を参考に、当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどの当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることとすることが考えられる。
            • この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当である。
            • なお、言動の頻度や継続性は考慮するが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回でも就業環境を害する場合があり得る。
    4. 総合的な対策の必要性
      • 企業における顧客対応力強化の取組の必要性
        • カスタマーハラスメントは、顧客等の権利の濫用・逸脱であり、金品の要求や土下座の強要といった著しく不当な要求もみられ、本検討会で実施したヒアリングでも把握されたとおり、暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得るものもある。こうした行為については、対策企業マニュアルにおいて、「犯罪に該当し得るもの」であるということや、対応例として「直ちに警察に通報する」ということも示されている。企業においては、こうした考え方も踏まえて、的確かつ毅然と対応できるよう、警察への通報を含めた対応方針をあらかじめ定めて、従業員に周知しておくことが重要となる。
        • 一方で、顧客等が商品やサービスの問題や欠陥を指摘したことに対して、従業員の不適切な対応等企業側の不手際がきっかけとなり、結果として、カスタマーハラスメントに至るケースもみられる。このような形でのカスタマーハラスメントを未然に防止するためには、企業において、顧客対応力強化のための研修の実施や、苦情・クレームがあった場合の対応マニュアルの整備等に取り組むことが考えられる。
        • また、専門性が求められる業種においては、仮に顧客等からの著しい迷惑行為があっても、ハラスメントではなく自らの専門職としての能力不足と考えてしまう場合があるということもヒアリングから示唆された。こうしたことも踏まえつつ、業種・業態、職種、ビジネスの内容により、提供されるサービス等の内容にも違いがあることを踏まえて、業界団体、職能団体、企業等が対応することが必要である。
      • 業界団体等を通じた取組の強化と業所管官庁との連携
        • カスタマーハラスメントの態様は業界により異なることや、独自で対応できない中小企業もあることから、業界が一体となって取り組むことが効果的である。こうしたことから、業界団体や職能団体等を通じた取組を強化することが考えられるが、その際には、業所管官庁との協力、連携が必要不可欠である。
      • 関係省庁の連携強化
        • 取引先については業界特有の商慣行の問題もあり、この点については業所管官庁に加え取引の適正化の観点から関係省庁との協力、連携が必要である。また、ヒアリングにおいて、消費者教育の充実・強化が必要であるという指摘がなされたが、この点については消費者庁との連携が必要である。加えて、暴行・傷害など犯罪に該当し得る行為への対応については、警察庁との連携が必要である。こうしたことから、令和3年より開催している「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」において、参加省庁の拡大や連携の強化を図るなど、当該連携会議の活用等も含めて対応を検討することが適切である。
  • ILO第190号条約
    • 批准検討の視点
      • 今回の検討会においては、G7批准国の状況を中心にハラスメントに係る海外法制を調査・議論したが、ILO第190号条約の批准に向けた検討に当たっては、そうした海外の状況を参考にすることが考えられる。
      • 一方で、法制度やハラスメントの捉え方等は各国の社会状況によって異なるため、単純比較ができないことには留意が必要である。
    • 禁止規定
      • ILO第190号条約では、仕事の世界における暴力及びハラスメントを定義し、禁止する法令を制定することを加盟国に求めている。この点、禁止する法令については、本検討会では、以下の考え方が指摘された。
        • 禁止の在り方や規定の在り方は様々であると考えられるところ、上記総論において提示したが、日本の法制の下で、職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確にした場合、社会規範としてハラスメントは禁止されていることが明確になると考えられること。
        • 事業主の雇用管理上の措置義務の内容に、事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発という項目があり、その具体的内容として、法定化されている4種類のハラスメントについては、「職場におけるハラスメントを行ってならない」旨の方針を明確化することとされている。こうした方針を明確にしない企業は措置義務違反となり、行政指導の対象となることから、職場における行為禁止の要請は既に整備されているとも考えられること。
        • 日本の法制においては、ハラスメントについて、刑法上の犯罪に該当する行為には刑事責任が生じるとともに、民法上の不法行為に基づく損害賠償の対象となるところであり、実際に、ハラスメントは、累次の裁判例等を通じて不法行為に当たるとされてきており、違法な行為であることが明確にされていると考えられること。
        • 日本の労働者災害補償保険法の枠組みでは、業務による強い心理的負荷により発病した精神障害が職業病リストに掲げられており、その認定基準の中でもハラスメントが労災認定に当たって考慮されていることや、労災補償以外にも民事裁判で損害賠償請求が可能であり、広範な救済制度が整備されていると考えられること。
    • 広範な射程範囲
      • 今回調査を実施したイギリス、フランス、ドイツ、カナダの4ヶ国の状況については、差別禁止法によるもの(イギリスの平等法、フランスの2008年5月27日法律、ドイツの一般平等取扱法、カナダの人権法)、労働法典によるもの(フランス、カナダ)、一般的なハラスメント規制法によるもの(イギリスのハラスメントからの保護法)、刑法によるもの等があり、差別禁止法の雇用に関する規定や労働関係法令は、雇用労働関係を中心に保護したものであったことが確認された。
      • また、ILO第190号条約は、仕事の世界における暴力及びハラスメントの定義や保護対象が広範である(求職者、実習生、ボランティアなど通常雇用関係にない者が含まれている)が、4カ国の中でボランティアについて特別の立法措置を講じている例は見当たらず、一般的な民法典やコモンロー、刑法典等で対応しているものと考えられる。
    • 第三者が関与する暴力及びハラスメント
      • ILO第190号条約においては、暴力及びハラスメントの防止及び撤廃のための取組について「適当な場合」には第三者が関与する暴力及びハラスメントを考慮に入れるべきとされている。
      • 本検討会においては、現在、日本において顕在化している第三者からのハラスメントとしてカスタマーハラスメントについて、第三者に対するハラスメントとして就活等セクハラについて検討し、その対策強化の必要性を本報告書において指摘した。
    • 今後の検討の方向性
      • 本検討会では限られた時間の中で検討を行ったが、本報告書で提示した職場のハラスメントは許されるものではないという趣旨を法律で明確にするなどの法整備についても、ILO第190号条約批准に向けた環境整備に資するものと考えられる。
      • 引き続き、条約全般について、さらなる検討を進めることが適切である。
  • 自爆営業
    • いわゆる「自爆営業」についての法令上の定義はないが、一般的に「使用者が、労働者に対し、当該労働者の自由な意思に反して当該使用者の商品・サービスを購入させること」とされており、職場におけるパワーハラスメントが「自爆営業」の背景として指摘されている。「自爆営業」そのものが直ちにパワーハラスメントに該当するというものではなく、職場におけるパワーハラスメントの3要件を満たす場合パワーハラスメントに該当するものであり、該当する場合、都道府県労働局で助言・指導等を行っているところである。
    • 「自爆営業」が社会的に関心を集めていることに鑑み、このような趣旨を、パワハラ防止指針に明記することが考えられる

~NEW~
厚生労働省 労働基準関係法制研究会 第9回資料
▼ 資料1 労働基準法における「事業」、労使コミュニケーションについて
  • これまでの議論を踏まえた労使コミュニケーションに関する課題
    • 視点
      • 労働者個人と使用者の交渉力の格差は厳然としてあり、労働組合等、労働者が集団となって使用者と協議・交渉することにより、実質的なコミュニケーションが行える環境を確保することが重要ではないか。
      • 労働法においては、原則的なルールを法規制として定めた上で、集団的な労使合意(産別組合との労働協約等)により現場の実情に応じたルールへのカスタマイズを許容する法制度をとることが、国際的にも広く見られるところである。
      • また、職場における労働環境改善や、業務効率化などを労使で話し合うような、狭義の労働条件に留まらない労使コミュニケーションも重要である。
    • 課題
      • 労働組合は、個人では圧倒的に不利な立場にある労働者が団結し、争議権を背景に団体交渉を行うことによって労働者の交渉力を使用者と対等の立場に引き上げるための存在であるが、一方で、我が国の労働組合組織率は緩やかに低下している。労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションの活性化が改めて望まれているのではないか。
      • 過半数労働組合がない事業場における過半数代表者については、選出方法や代表の交渉力、なり手の確保など、様々な課題が指摘されており、改善が望まれるのではないか。
      • 企業単位で労働条件が斉一化されている場合もあることから、多数の事業場を有する企業等においては、事業場ごとの労使の協議・交渉のほか、複数の事業場の過半数代表者を一堂に集めて協議をすることで、使用者側の事務負担を軽減しつつ、労働者側も他の事業場の労働者と協力して交渉することができ、より妥当な合意に至る可能性もあるのではないか。
      • 同じ事業場の中にも多様な働き方をする労働者がいる場合など、集団的労使コミュニケーションを前提として、労使協定や労使協議に加えて個人の意思確認を求めることが適当な場面もあるのではないか。
  • これまでの議論を踏まえた労使コミュニケーションに関する課題
    • 労働組合による労使コミュニケーション
      • 労働組合の活性化・労使コミュニケーションの促進について
        • 集団的労使コミュニケーションの基本は、使用者と労働組合による交渉。
        • 労働条件等について、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化する観点から、法制的、政策的な対応として、どのようなものが考えられるか。
      • 過半数労働組合を生かした制度設計
        • 現行の労働基準法制においては、ほとんどの労使協定において、過半数労働組合と過半数代表者を同等に取り扱っているが、組織的基盤の有無等の優位性を生かし、過半数労働組合がある事業場のみに認められる(過半数代表者には認められない)ような制度設計をすることは考えられるか。
        • 一方で、過半数労働組合が労使協定の締結等を行う場合には、非組合員も含む事業場の全労働者の代表としての行動が期待されるのではないか。
    • 過半数代表者の仕組みについて(改善方法)
      • 過半数代表者の選出手続について
        • 過半数代表者の民主的な選出を担保するため、現在省令で定められている選出手続の規定について、改善する点はあるか。その場合どのような課題が生じるか。
      • 過半数代表者を複数選出することについて
        • 過半数代表者の負担軽減等のために、複数選出を義務づける(又は推奨する)ことをどう考えるか。その場合にどのような課題が生じうるか。複数選出とする事業場の要件をどう考えるか。
      • 過半数代表者を任期付きとすることについて
        • 過半数代表者を介した安定的な労使コミュニケーションを行うため、任期付きとすることをどう考えるか。その場合に法律上どのような課題が生じうるか。任期付きとする事業場の要件をどう考えるか。
      • 過半数代表者への支援について
        • 過半数代表者による労働者の意見集約等を有効なものとするため、必要性・有効性の観点からどのような支援が求められるか。企業がどこまで支援することができるか。教育研修・キャリア上の取扱・費用負担・外部専門家の支援など支援によっては、過半数組合には該当しない少数組合との関係が懸念されるが、どう考えるか。
    • 労使委員会・労働時間等設定改善委員会の活用について
      • 労使委員会や労働時間等設定改善委員会の決議は、ほとんどの労使協定に代替できるところであるが、これらの委員会の活用について、どのように考えるか。
    • 事業場ごとの労使コミュニケーションを集団化することについて
      • 事業場単位の法適用との関係
        • 労働基準法の適用単位は事業場であることから、あくまで事業場単位での労使合意が基本と考えるべきか。
        • その場合に、労使当事者が希望する場合には、複数の事業場が集まって、労使協定の締結や労使委員会を開催することができることについて、どのように考えるか。(集団化することによるメリット・デメリットについて、どのように考えるか)
      • 現行法でも、使用者側が当該事業場に所属していることは法令上求めてはいない。また、当該事業場の過半数代表の指名があれば、当該事業場に所属していない者が労使委員会の労働者委員となることもできる。事業場単位を基本として集団化を考える場合に、労使双方の代表それぞれについて、事業場に所属していない者による労使協定の締結や労使委員会委員としての参画、意見聴取等が望ましい場合もあるか。
      • 労使協定、労使委員会、意見聴取(就業規則)のどの手続が適しているか。
        • これらの手続はそれぞれ手続が異なるが、集団化に適した類型のものはあるか。
    • 労働者個人の意思について
      • 労働者個人の意思確認
        • 使用者と労働者個人の交渉力の違いを考えると、労働者の個人同意のみによるデロゲーションは不適当と考えられるが、集団的合意を経た上で、重ねて本人同意を求める制度は現在もある。今後、新たな制度を検討する際は個人同意の必要性を検討することも必要と考えられるか。

~NEW~
経済産業省 新しい生体認証精度評価方法に関する国際規格が発行されました 少ないサンプル数で生体認証の精度評価を効率化・短期化へ(ISO/IEC 5152)
  • 日本が提案した「少ないサンプル数で評価できる新しい生体認証精度評価方法」がISO/IEC JTC 1/SC 37の国際規格として発行されました。
  • 本規格は、生体認証の精度評価に必要とされるサンプル数を1/3以下に低減することが可能なものであり、この規格を適用することにより、生体認証装置の性能改善サイクルが短くなり、より精度の高い生体認証装置を利用できるようになることが期待されます。
  • 背景
    • 生活や業務にITが浸透するにつれ、本人確認が非常に重要となっています。特に、コロナ禍を経て生活や業務のスタイルが大きく変化しており、現場の安全・安心や、人手不足の解消、付加価値向上のため、生体認証(顔、指紋、静脈、虹彩等による本人確認)を利用する機会が増えており、より精度の高い生体認証が求められています。
    • これまでの生体認証の精度評価方法として国際標準ISO/IEC 19795-1(Biometric performance testing and reporting)が利用されていますが、精度が高くなればなるほど、膨大な数のサンプルを必要とすることから、精度改善のボトルネックとなっていました。そこで、日本から「少ないサンプル数で評価できる新しい生体認証精度評価方法」の国際標準化を提案し、議論を推進してきた結果、2024年7月に国際標準ISO/IEC 5152(Biometric performance estimation methodologies using statistical models)が発行されました。
  • 規格の概要
    • 本規格は、生体認証の精度評価に、稀にしか起こらない事象の出現確率を推定する極値統計※1を利用して「他人受入※2率」や「本人拒否※3率」の評価を行う方法を適用するもので、精度評価にかかるサンプル数を1/3以下に低減できることが可能となります。
    • 今までの精度評価方法の国際規格(ISO/IEC 19795-1)では、誤照合率0.0001%(100万分の1)の評価に必要なサンプル数は2,450以上、0.00001%(1000万分の1)では7,746以上のサンプル数を必要としましたが、本規格ではそのサンプル数を1/3以下にできることが認められたことから、誤照合率0.0001%(100万分の1)の評価に必要なサンプル数2,450があれば、0.00001%(1000万分の1)の性能を推定することが可能になります。
      • ※1極値統計:稀にしか起こらない事象の出現確率を推定する統計手法。自然災害(大津波など)の発生確率推定にも使われてきた手法であり、生体認証に応用したことで評価サンプル数の削減を実現した。
      • ※2他人受入:他人を本人として受け入れてしまう誤りのこと。他人受入率が高くなると本人確認結果が信用できなくなり、生体認証装置が使われなくなる。
      • ※3本人拒否:本人なのに他人として拒否してしまう誤りのこと。本人拒否率が高くなると利便性が損なわれ、生体認証装置が使われなくなる。
  • 期待される効果
    • この規格を適用することによって、生体認証装置の性能改善サイクルが短くなり、より精度の高い生体認証装置を利用できるようになることが期待されます。働き方改革(テレワーク等)、教育改革(オンライン授業等)、オンライン医療・見守り、無人店舗・オンライン決済等で、現場の安全・安心、人手不足の解決、その他サービスへの付加価値向上に資する国際標準です。

~NEW~
経済産業省 「航空燃料供給不足に対する行動計画」を公表します
  • 燃料の供給ができない事態が全国各地で生じています。この問題がインバウンドの足枷となり、我が国経済の発展を阻害することのないよう、国土交通省と合同で「航空燃料供給不足への対応に向けた官民タスクフォース」を設置し、官民の関係者が一丸となって今後の対応策を集中的に検討してきました。
  • 今般、今後の対応策について、短期及び中長期の視点ごとに、国、関係業界及び関係事業者の行動計画としてとりまとめたところであり、今後、本行動計画に基づき、航空燃料の供給不足の状態を解消するよう、対策を進めていきます。
  • 航空燃料供給不足に対する行動計画のポイント
    • 短期の取組
      • 新規就航・増便など、各空港における需要量が把握可能な仕組みの構築
      • 航空燃料の供給不足について調整が難航した場合の相談窓口の設置
      • 空港への直接輸入の実施
      • 製油所から空港へのローリー直送の増加、内航船への転用等による輸送力強化
      • 給油作業員の確保に向けた取組
    • 中長期の取組
      • 製油所・油槽所の既存タンクのジェット燃料タンク転用など供給力の確保
      • 空港のジェット燃料タンクの必要な容量の確保等の実施
      • ローリーの台数の確保、船舶の大型化、老朽化した荷役設備の更新等 など、供給力の確保や輸送体制の強化
    • 今後のタスクフォースにおける対応
      • 本行動計画の各施策に基づき、各空港ごとに、新規就航・増便に係る状況についてフォローアップ
      • 更なる改善の取組について、継続的に検討

~NEW~
経済産業省 IAEAは2024年4月に行われた東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の取扱いに関する安全性レビューミッション (海洋放出開始後第2回)について報告書を公表しました
  • 7月18日、IAEA(国際原子力機関)は、東京電力福島第一原子力発電所(東電福島第一原発)におけるALPS処理水の取扱いに関して海洋放出開始後2回目となる安全性レビューミッションに関する報告書を公表しました。
  • 同報告書は、2024年4月23日から26日にかけて、IAEAの職員及び国際専門家が日本を訪れ、その際に実施したレビューの結論を示したものです。
  • 概要
    • 2024年4月の東電福島第一原発におけるALPS処理水の取扱いに関する安全性レビューミッションは、IAEAとの間で2021年7月に署名されたALPS処理水の取扱いの安全面のレビューに関する付託事項(TOR)に基づき実施されたもので、海洋放出開始後2回目のレビューとなります。IAEAレビューは、原子力分野の専門機関であるIAEAの職員及び国際専門家(アルゼンチン、英国、オーストラリア、カナダ、韓国、中国、マーシャル諸島、フランス、米国、ベトナム、ロシア)からなるIAEAタスクフォースにより実施されており、今回は6名のIAEA職員と、9名の国際専門家(アルゼンチン、英国、オーストラリア、韓国、中国、フランス、ベトナム、米国、ロシア)が訪日しました。
    • 今回公表された報告書では、主に、国際安全基準に基づき2024年4月に実施されたレビューにおける見解について記されています。
  • 報告書のポイント(※IAEA海洋放出開始後第2回報告書からの引用、一部要約有)
    • 報告書では、以下の主な技術的事項毎に、IAEAタスクフォースと経済産業省及び東京電力との議論並びに東電福島第一原発の視察調査のポイントや、所見の概要が記載されています。
      • 規制管理と認可
      • 放出管理のシステムとプロセスに関する安全性
      • ALPS処理水の特性評価
      • 放射線環境影響評価
      • ALPS処理水と環境のモニタリングプログラム
      • 利害関係者の関与
      • 職業的な放射線防護
        • また、報告書では、タスクフォースにより、関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかったことが明記されています。
  • 主な確認結果
    • タスクフォースにより、関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった。したがって、IAEAは、2023年7月4日の包括報告書に記載された安全性レビューの根幹的な結論を再確認することができる。
    • 規制インフラは、ALPS処理水の放出を安全に監視するにあたり適切であり、タスクフォースは、原子力規制委員会の継続的な現場での立会いとその活動を直接見ることができた。
    • タスクフォースは、機器及び設備が実施計画及び関連する国際安全基準に合致した方法で設置され、運用されていることを確認した。
    • タスクフォースは、東京電力と日本政府から報告されたデータの正確性と信頼性について、包括的で透明性のある客観的検証を行う上で、IAEAの継続的な裏付け活動とオンサイトでの独立したサンプリングと分析が重要であることを指摘した。
  • 今後の計画
    • タスクフォースは、東京電力と原子力規制委員会の活動が関連する国際安全基準に合致しているかどうかを評価するため、引き続きレビューを行う。
    • 4月のミッション期間中、タスクフォースは次のステップについて話し合い、日本への定期的なレビューミッションを継続する意向を強調した。次回のレビューミッションは2024年第4四半期に実施される予定である。
  • IAEA報告書を受けた対応
    • 日本政府は、引き続き、IAEAレビューを通じて国際的な安全基準に従った対策を講じ続け、安全確保に万全を期していきます。

~NEW~
総務省 デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)についての意見募集
▼ 別紙2 概要
  • 偽・誤情報の流通・拡散等のリスク、それをもたらすアテンション・エコノミー等の構造的リスクが存在。PF事業者ヒアリングでは自主的な取組のみには期待できない状況。
  • こうしたリスクは我が国特有の課題ではなく、諸外国にも共通。諸外国と連携・協力して対処しなければ、状況の悪化が見込まれるとの危機感を持って対応する必要。
  • デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた基本理念や主体の役割・責務を明確化しつつ、情報流通の健全性確保に必要な「総合的な対策」を提言
  • 現状と課題
    • SNS等の情報伝送プラットフォーム(PF)サービスは、国民生活・社会経済活動等に広く・深く浸透し、公益性が高まっている。
    • 偽・誤情報の流通・拡散等の「表層上の」リスク、それをもたらすアテンション・エコノミー等の「構造的な」リスクがある。(令和6年能登半島地震やなりすまし型「偽広告」を巡り顕在化)
    • 特に、SNS等には、(1)低廉な情報発信コスト、(2)拡散促進機能、(3)レコメンデーション機能という特徴(構造)があり、リスクを先鋭化。
    • 金銭対価の仕組みが偽・誤情報の流通・拡散に関連するとも指摘。
    • デジタル広告と広告が掲載されるメディア双方の信頼性にも影響。
  • PF事業者ヒアリングの総括 2024年2~3月に実施
    • デジタル空間における情報流通の適正化等に向けた取組として、全体として十分な回答が得られたとは言いがたい。
    • 特に国外事業者は、日本の状況を踏まえた取組に関する明確な回答がなかったことに鑑みても、日本国内で公共的役割を果たす上で、透明性・アカウンタビリティの確保は総じて不十分。
    • 取組状況についても、全体として十分とは言えない。事業者団体による偽・誤情報対策に関する行動規範の策定に関する議論が白紙となり中断されていることも鑑みると、事業者による自主的な取組のみには期待できない状況。新たに具体的な対応が必要。
  • 日本
    • 権利侵害情報への対応の迅速化、情報削除等に関する運用状況の透明化の措置を義務付ける情報流通プラットフォーム対処法が成立。
  • 米国
    • 合衆国憲法修正1条により表現の自由が手厚く保障。PF事業者に広範な免責が与えられているが、連邦・州レベルで議論の高まり。
  • 欧州
    • 2024年2月、違法情報等への対処を規定するデジタルサービス法の全面適用開始。偽情報に関する行動規範の遵守が事業者に奨励。
  • その他
    • 英国その他の先進国でも制度的な対応が進展。
  • 基本理念
    • 表現の自由と知る権利の実質的保障及びこれらを通じた法の支配と民主主義の実現
    • 安心かつ安全で信頼できる情報流通空間としてのデジタル空間の実現
    • 国内外のマルチステークホルダーによる国際的かつ安定的で継続的な連携・協力
      • 情報発信:(1)自由かつ責任ある発信の確保、(2)信頼できるコンテンツの持続可能な制作・発信の実現
      • 情報伝送:(1)公平・オープンかつ多元的な情報伝送、(2)取組の透明性とアカウンタビリティの確保、(3)利用者データの適正な取扱いと個人のプライバシー保護
      • 情報受信:(1)リテラシーの確保、(2)多様な個人に対する情報へのアクセス保障とエンパワーメント
  • サイバーセキュリティやプライバシー等の関連分野を踏まえた社会全体で対応する枠組み
  • 信頼性のある情報の流通促進と違法・有害情報の流通抑制の両輪による対応
  • 個人レベルとシステムレベルの両面及び相互作用による対応
  • プレバンキングとデバンキングの両輪による対応
  • 流通・拡散する情報とデジタル広告への信頼性に対する相互依存を踏まえた対応
  • 綜合的な対策
    • 情報伝送PF事業者による偽・誤情報への対応
      • 偽・誤情報に対するコンテンツモデレーション※の実効性確保策として、大規模な情報伝送PF事業者を対象とした次の方策を中心に、制度整備も含め、具体化を進めることが適当。※特定のコンテンツの流通・拡散を抑止するために講ずる措置(情報削除、収益化停止等)。
        1. 違法な偽・誤情報に対する対応の迅速化
          • 行政法規に抵触する違法な偽・誤情報に対し、行政機関からの申請を契機とした削除等の対応を迅速化(窓口整備、一定期間内の判断・通知 等)
          • ただし、前提として、行政機関による申請状況の透明性確保等が不可欠
        2. 違法な偽・誤情報の発信を繰り返す発信者への対応
          • 特に悪質な発信者に対する情報の削除やアカウントの停止・削除を確実に実施する方策について、その段階的な実施を含め具体化
        3. 違法ではないが有害な偽・誤情報に対する対応
          • 違法ではないが有害な偽・誤情報への対応は、影響評価・軽減措置の実施を求める枠組みの活用を含め、事業者による取組を促す観点が重要
          • こうした取組の実効性を補完する観点から、情報の可視性に直接の影響がないコンテンツモデレーション(収益化停止等)を中心とした対応について、迅速化や確実な実施を含め、利用者の表現の自由の保護とのバランスを踏まえながら具体化
        4. 情報流通の態様に着目したコンテンツモデレーションの実施
          • 送信された情報の内容そのものの真偽に着目せず、情報流通の態様に着目してコンテンツモデレーションを実施する方策について具体化
        5. コンテンツモデレーションに関する透明性の確保
          • 基準や手続の策定・公表、人員等の体制に関する情報の公表 等
    • 情報伝送PFサービスが与える情報流通の健全性への影響の軽減
      • 情報伝送PF事業者による社会的影響の予測・軽減措置の実施
        • 政府による大枠の制度設計の下、社会的影響を事前予測し、軽減措置を検討・実施(サービスアーキテクチャの変更等による対応)
      • 特に災害等における影響予測と事前の軽減措置の実施
    • マルチステークホルダーによる連携・協力の枠組みの整備
      • 連携・協力の目的(行動規範の策定・推進、軽減措置の検証・評価 等)
      • 協議会の設置、③協議会の役割・権限等
    • 広告の質の確保を通じた情報流通の健全性確保
      • 広告事前審査の確実な実施と実効性向上
        • 審査基準の策定・公表、審査体制の整備・透明化、本人確認の実施 等
      • 事後的な広告掲載停止措置の透明性の確保
        • 基準や手続の策定・公表、人員等の体制に関する情報の公表 等
      • 事後的な広告掲載停止措置の迅速化
        • 外部からの申請窓口の整備・公表、一定期間内の判断・通知 等
      • 事後的な広告掲載停止措置の確実な実施
    • 質の高いメディアへの広告配信に資する取組を通じた健全性確保
      • 広告主・代理店による取組促進(経営陣向けガイドライン等の策定)
      • 広告仲介PF事業者による取組促進
    • A普及啓発・リテラシー向上
      • プレバンキングの効果検証等有効な方法及び取組の推進
      • 普及啓発・リテラシー向上に関する施策の多様化
      • マルチステークホルダーによる連携・協力の拡大・強化
    • B人材の確保・育成
      • 検証報道等の信頼性のある情報を適時に発信する人材
      • コンテンツモデレーション人材
      • リテラシー向上のための教える人材
    • C社会全体へのファクトチェックの普及
      • ファクトチェックの普及促進
      • ファクトチェック人材の確保・育成
      • 関連するステークホルダーによる取組の推進
    • D技術の研究開発・実証
      • 偽・誤情報等対策技術
      • 生成AIコンテンツ判別技術
      • デジタル広告関連技術
    • E国際連携・協力
      • 普及啓発・リテラシー向上・人材育成の国際連携・協力
      • 偽・誤情報等対策技術の国際標準化・国際展開の推進
      • 欧米等とのバイやG7・OECD等とのマルチ連携・協力の推進

~NEW~
総務省 デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会(第25回)配付資料 ※ワーキンググループ(第32回)合同開催
▼ 資料25-3-3 とりまとめ(案)概要資料案
  • 第1章:デジタル空間における情報流通を取り巻く環境の変化
    • デジタル空間における情報流通を巡っては、偽・誤情報の流通・拡散等のリスク、それをもたらすアテンション・エコノミー(※1)やフィルターバブル(※2)等の構造的リスクが存在。さらに、生成AI等の新たな技術やサービスの進展・普及によって、このようなリスクが加速化するおそれ。
    • デジタル空間における情報伝送PFサービスの現状等を整理し、情報流通を巡るリスク・問題を整理。
      • ※1 情報過多の社会において、供給される情報量に比して、人々が支払えるアテンションないし消費時間が希少となることから、それらが経済的価値をもって市場で流通するような経済モデル
      • ※2 アルゴリズムによって、インターネット上で、利用者個人のクリック履歴に基づく情報が優先的に表示される結果、自身の考え方や価値観に近い情報ばかりに囲まれる、いわば「泡」の中に包まれるような状態
    • デジタル空間を活用した技術やサービスの進展・普及等の状況
      • 情報伝送PFサービスは、国民生活や社会経済活動等に広く・深く浸透(人々は情報収集だけでなく発信手段としてサービスを利用。企業や行政による発信や企業等によるデジタル広告出稿も増加 等)
      • 情報伝送PFサービスの情報流通の場としての公益性の高まり(人々の主な情報収集先は伝統メディアから情報伝送PFサービスへ。災害時の情報収集手段としてもSNS等が活用 等)
      • 新たな技術やサービスの進展・普及に伴う変化(生成AI等の新たな技術・サービスの進展・普及によるネット上のコンテンツの多様化 等)
    • デジタル空間における情報流通を巡るリスク・問題
      • 偽・誤情報等、なりすまし型「偽広告」等の流通・拡散、信頼性のある情報の相対的な減少
      • アテンション・エコノミーやフィルターバブル等、情報伝送PFサービスの特徴等により生み出される構造的なリスク・問題
      • 上記を加速化させるリスク・問題(新技術やサービスの進展・普及、地政学上等のリスク・問題等)
      • 特に、多くの人の間で正確な情報の適時な共有が求められる事態における偽・誤情報等の流通・拡散(令和6年能登半島地震等における偽・誤情報等の流通・拡散等)
  • 第2章:様々なステークホルダーによる課題への対応状況
    • 偽・誤情報等の流通・拡散をはじめとするデジタル空間における情報流通を巡るリスク・問題は、実空間への影響も顕在化・深刻化。
    • 現在、デジタル空間における情報流通を巡るリスク・問題に対して、様々なステークホルダーが自主的に様々な対応をしてきている状況にあるが、対応は区々であり、ステークホルダー間におけるこれまでの連携・協力も必ずしも十分とはいえない状況。
    • 情報伝送PF事業者においては、偽・誤情報等への対応として、ステークホルダーとの連携・協力を通じた一層の取組が必要。
    • また、特に多くの外国の情報伝送PF事業者においては、日本国内の状況を踏まえた取組に関する明確な回答がなかったことに鑑みても、透明性・アカウンタビリティの確保は総じて不十分であり、事業者による行動規範策定の取組が白紙の状況となっているなど、自主的な取組のみには期待できない状況であり、具体的な対応が必要。
  • 第3章:諸外国等における対応状況
    • デジタル空間における情報流通の健全性を巡るリスク・問題については、日本特有の課題ではなく、グローバルな課題。
    • 諸外国においては既にマルチステークホルダーが連携・協力して有効な対策の検討・実施が積み重ねられてきている状況。
    • 日本においても、国内におけるステークホルダーの連携・協力を進め、これらのリスク・問題に対して諸外国と連携・協力して対処する必要。
      • 日本
        • 権利侵害情報への対応の迅速化、情報削除等に関する運用状況の透明化の措置を義務付ける情報流通プラットフォーム対処法が成立。
      • 米国
        • 合衆国憲法修正1条により表現の自由が手厚く保障。情報伝送PF事業者に広範な免責が与えられているが、連邦・州レベルで事業者の取組への規制に関する議論が進行中。
      • EU
        • 2024年2月、違法情報等への対処を規定するデジタルサービス法の全面適用開始。偽情報に関する行動規範の策定と参加を奨励。そのほか、マルチステークホルダーによる取組が進展。
      • 大洋州地域
        • オーストラリアやニュージーランドでは、情報伝送PF事業者が民間主導の行動規範に参画。
      • ASEAN諸国
        • ファクトチェックに関するマルチステークホルダーによる連携・協力。リテラシー向上に関するキャンペーン等も実施。
      • 国連
        • 行動規範を作成する取組が進行中。IGF等マルチステークホルダーによる連携・協力。
  • 第4章:デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた対応の必要性と方向性
    • 日本においても、諸外国と同様、ステークホルダーの個々の自主的な取組だけでは情報流通の健全性が脅かされ、ひいては実空間への負の影響を看過し得なくなるという強い危機感を持ち、ステークホルダーがより一層連携・協力して対応していくことが必要な時期にある。
    • デジタル空間の情報流通の健全性を確保するためには、情報流通を巡るリスク・課題を十分に分析し、短期的な止血としての即効性のある対応を進めつつ、中長期的な視野からの対応も並行して進めることが必要。
    • また、情報流通の各過程である「発信」・「伝送」・「受信」に係る様々なステークホルダーが相互に連携・協力して、在るべき方向性について同一の認識を持った上で不断に対応していくことが効果的・効率的。
    • 情報流通に携わる幅広いステークホルダーの間で、健全性確保に向けた「基本理念」を明確化・共有した上で、「総合的な対策」を実施していくという共通認識としていくことが必要。
    • 各ステークホルダーがどのような責務・役割を遂行して情報流通を巡るリスク・課題への対応を実施するべきかを「基本理念」として整理・明確化。
    • そのための具体的な方策としてどのステークホルダーがどのような対策を講ずる必要があるのか等、「総合的な対策」を検討し、ステークホルダーの連携・協力の下で、迅速かつ効果的・効率的に対応を進めていくことが必要。
  • 第5章:情報流通の健全性確保に向けた基本的な考え方(基本理念)
    • 情報流通過程全体に共通する高次の基本理念
      • 表現の自由と知る権利の実質的保障及びこれらを通じた法の支配と民主主義の実現
        • 自由な情報発信と多様な情報摂取の機会が保障され、個人の自律的な意思決定が保護されるとともに、これを通じ、表現の自由や知る権利以外の様々な権利利益(営業の自由など)にも配慮したルールに基づく健全な民主的ガバナンスが実現すること
      • 安心かつ安全で信頼できる情報流通空間としてのデジタル空間の実現
        • 平時・有事(災害発生時等)を通じ、アテンション・エコノミーを構造的要因とするものを含め、偽・誤情報や悪意ある情報の流通による権利侵害、社会的混乱その他のフィジカル空間への影響が抑止されるとともに、情報流通の過程全体を通じ、サイバー攻撃や安全保障上の脅威等への対抗力が確保された強靱なデジタル空間が実現すること
      • 国内外のマルチステークホルダーによる国際的かつ安定的で継続的な連携・協力
        • デジタル空間に国境がないことを踏まえ、国内外の民産学官を含むマルチステークホルダーが相互に連携・協力しながらデジタル空間における情報流通に関するガバナンスの在り方について安定的かつ継続的に関与できる枠組みが確保されていること
    • 情報発信に関する基本理念
      • 自由かつ責任ある発信の確保
        • 自由かつ、ジャーナリズムやリテラシーに裏付けられた責任ある発信が確保されていること
      • 信頼できるコンテンツの持続可能な制作・発信の実現
        • 信頼できる魅力的なコンテンツの制作・発信(ファクトチェックを含む)に向けたリソースが安定的かつ継続的に確保され、そうした活動の透明性が確保されるとともに、その価値が正当に評価されていること
    • 情報受信に関する基本理念
      • リテラシーの確保
        • 受信者において技術的事項を含むリテラシーが確保され、デジタル社会の一員としてデジタル空間における情報流通の仕組みやリスクを理解し、行動できること
      • 多様な個人に対する情報へのアクセス保障とエンパワーメント
        • 個人の属性・認知的能力や置かれた状況の多様性を考慮しつつ、あらゆる個人に対してデジタル空間における情報流通への参画と意思決定の自律性確保の機会が与えられていること
    • 情報伝送に関する基本理念
      • 公平・オープンかつ多元的な情報伝送
        • 多元的で信頼できる情報源が発信する情報が偏りなく伝送(媒介等)されていること
      • 情報伝送に関わる各ステークホルダーによる取組の透明性とアカウンタビリティの確保
        • プラットフォーム事業者や政府を含む関係者の取組・コミュニケーションの透明性が確保されるとともに、それらの取組等や透明性確保につき責任を負うべき主体・部門が特定され、明確であり、当該主体・部門から責任遂行状況について十分に説明してもらうことが可能な状態にあること
      • 情報伝送に関わる各ステークホルダーによる利用者データの適正な取扱いと個人のプライバシー保護
        • 個人情報を含む様々な利用者データの適正な収集・利活用とそれを通じた個人の意思決定の自律性が確保され、個人のプライバシーが保護されていること
    • 各ステークホルダーに期待される役割・責務(抜粋)
      • 情報伝送側
        • 政府
          • 内外のマルチステークホルダー間の相互連携・協力に基づくガバナンスの基本的な枠組みの設計・調整
          • 民間部門による取組について、透明性・アカウンタビリティ確保の促進、コンテンツモデレーションによって生じる被害に対する救済手段の確保、教育・普及啓発、認知度向上等のファクトチェックの推進、研究や技術の開発・実証、人材育成の推進等を通じた支援 等
        • 地方自治体
          • 情報発信主体の一つとして、地域内外への効果的な発信の実施と発信の信頼性向上に向けた体制の確立 等
        • 情報伝送PF事業者
          • 自社サービスや、そのサービスに組み込まれたアルゴリズムを含むアーキテクチャがアテンション・エコノミーの下で情報流通の健全性に与える影響・リスクの適切な把握及び必要に応じたリスク軽減措置の実施
          • 違法・有害情報等の流通抑止のために講じる措置を含め、情報流通の適正化についての一定の責任
          • 大規模な情報伝送PF事業者は、サービスの提供により情報流通についての公共的役割
          • 多くの人の間で正しい情報の適時な共有が求められる場面における、国民にとって必要な情報の確実かつ偏りない伝送
          • コンテンツモデレーションに関し、日本の法令等に精通する等の人材を確保・育成するとともに、全体の基準やその運用状況等のマクロ的、個別の発信者への理由説明や救済手段の確保等のミクロ的両面での透明性・アカウンタビリティ確保 等
        • 広告仲介PFその他広告関連事業者
          • デジタル広告そのものや広告配信先メディアの質の確保に向けた取組の実施及びその透明性・アカウンタビリティの確保 等
      • 情報発信側
        • 伝統メディア(放送、新聞等)
          • デジタル空間で流通する情報の収集・分析を含む取材に裏付けられ、偽・誤情報等の検証報道・記事や偽・誤情報等の拡散を未然に防ぐコンテンツを含む信頼できるコンテンツの発信 等
        • ファクトチェックを専門とする機関を含むファクトチェック関連団体
          • 持続可能なファクトチェックの実現に向けたビジネスモデルの確立
          • 効果的かつ迅速なファクトチェックの実現 等
      • 情報受信側
        • 利用者・消費者を含む市民社会
          • デジタル空間における情報流通に関するリスク・問題や構造の理解及びリテラシーの確保
        • 利用者団体・消費者団体
          • 情報伝送PFサービスの利用者や消費者を含む市民社会のリテラシー向上に向けた支援
        • 教育・普及啓発・研究機関
          • 市民社会のリテラシー向上に向けた効果的な教育・普及活動
          • 情報流通の健全性に対するリスクの度合い・適切な軽減措置の在り方等に関する、ファクトやデータに基づく専門的研究・評価・分析
  • 第6章:総合的な対策
    • 基本的な考え方
      • サイバーセキュリティやプライバシー等の関連分野を踏まえた社会全体で対応する枠組み
      • 信頼性のある情報の流通促進と違法・有害情報の流通抑制の両輪による対応
      • 個人レベルとシステムレベルの両面及び相互作用による対応
      • プレバンキングとデバンキング※の両輪による対応 ※ プレバンキング:偽・誤情報等が流通・拡散する前の備え(リテラシー向上等)デバンキング:偽・誤情報等が既に流通・拡散した状況での事後対応(ファクトチェック等)
      • 流通・拡散する情報とそれに付随するデジタル広告への信頼性に対する相互依存関係を踏まえた対応
    • 総合的な対策
      • 普及啓発・リテラシー向上
        • プレバンキングの効果検証等有効な方法及び取組の推進
        • 普及啓発・リテラシー向上に関する施策の多様化
        • マルチステークホルダーによる連携・協力の拡大・強化
      • 人材の確保・育成
        • 検証報道や信頼性のある情報を適時に発信する人材
        • コンテンツモデレーション人材
        • リテラシー向上のための教える人材
      • 社会全体へのファクトチェックの普及
        • 利用者参加型のファクトチェックの推進
        • ファクトチェック人材の確保・育成
        • 関連するステークホルダーによる取組の推進
      • 技術の研究開発・実証
        • 偽・誤情報等対策技術
        • 生成AIコンテンツ判別技術
        • デジタル広告関連技術
      • 国際連携・協力
        • 普及啓発・リテラシー向上・人材育成の国際連携・協力
        • 偽・誤情報等対策技術の国際標準化・国際展開の推進
        • 欧米等とのバイやG7・OECD等とのマルチ連携・協力の推進
      • 制度的な対応
        • 情報伝送PF事業者による偽・誤情報への対応
        • 情報伝送PFサービスが与える情報流通の健全性への影響の軽減
        • マルチステークホルダーによる連携・協力の枠組みの整備
        • 広告の質の確保を通じた情報流通の健全性確保
        • 質の高いメディアへの広告配信に資する取組を通じた健全性確保
  • 第6章:総合的な対策(制度的な対応)
    • 情報伝送PF事業者による偽・誤情報への対応
      • 偽・誤情報に対するコンテンツモデレーション※の実効性確保策として、大規模な情報伝送PF事業者を対象とした次の方策を中心に、制度整備も含め、具体化を進めることが適当。 ※特定のコンテンツの流通・拡散を抑止するために講ずる措置(情報削除、収益化停止等)。
        • 違法な偽・誤情報に対する対応の迅速化
          • 行政法規に抵触する違法な偽・誤情報に対し、行政機関からの申請を契機とした削除等の対応を迅速化(窓口整備、一定期間内の判断・通知 等)
          • ただし、前提として、行政機関による申請状況の透明性確保等が不可欠
        • 違法な偽・誤情報の発信を繰り返す発信者への対応
          • 特に悪質な発信者に対する情報の削除やアカウントの停止・削除を確実に実施する方策について、その段階的な実施を含め具体化
        • 違法ではないが有害な偽・誤情報に対する対応
          • 違法ではないが有害な偽・誤情報への対応は、影響評価・軽減措置の実施を求める枠組みの活用を含め、事業者による取組を促す観点が重要
          • こうした取組の実効性を補完する観点から、情報の可視性に直接の影響がないコンテンツモデレーション(収益化停止等)を中心とした対応について、迅速化や確実な実施を含め、利用者の表現の自由の保護とのバランスを踏まえながら具体化
        • 情報流通の態様に着目したコンテンツモデレーションの実施
          • 送信された情報の内容そのものの真偽に着目せず、情報流通の態様に着目してコンテンツモデレーションを実施する方策について具体化
        • コンテンツモデレーションに関する透明性の確保
          • 基準や手続の策定・公表、人員等の体制に関する情報の公表 等
    • 情報伝送PFサービスが与える情報流通の健全性への影響の軽減
      • 情報伝送PF事業者による社会的影響の予測・軽減措置の実施
        • 情報伝送PF事業者のビジネスモデルがもたらす将来にわたる社会的影響を事前に予測し、軽減措置を検討・実施(サービスアーキテクチャの変更等による対応)
      • 特に災害等における影響予測と事前の軽減措置の実施
    • マルチステークホルダーによる連携・協力の枠組みの整備
      • 連携・協力の目的(行動規範の策定・推進、軽減措置の検証・評価 等)
      • 協議会の設置
      • 協議会の役割・権限等
    • 広告の質の確保を通じた情報流通の健全性確保
      • 広告事前審査の確実な実施と実効性向上
        • 審査基準の策定・公表、審査体制の整備・透明化、本人確認の実施等
      • 事後的な広告掲載停止措置の透明性の確保
        • 基準や手続の策定・公表、人員等の体制に関する情報の公表 等
      • 事後的な広告掲載停止措置の迅速化
        • 外部からの申請窓口の整備・公表、一定期間内の判断・通知 等
      • 事後的な広告掲載停止措置の確実な実施
    • 質の高いメディアへの広告配信に資する取組を通じた健全性確保
      • 広告主・代理店による取組促進(経営陣向けガイドライン等の策定)
      • 広告仲介PF事業者による取組促進
  • 偽・誤情報の流通・拡散を抑止するための「コンテンツモデレーション」の類型
    • 発信者に対する警告表示
      • 可視性への影響 影響なし
      • 不適切な内容を投稿しようとしている、又は直近で投稿したことが判明している旨の警告を表示する措置(投稿自体は可能)
    • 収益化の停止
      • 可視性への影響 影響なし
      • 広告を非表示にしたり、広告報酬の支払いを停止することにより、収益化の機会を失わせる措置
    • 可視性に影響しないラベルの付与
      • 可視性への影響 影響なし
      • 情報発信者の信頼性等を見分けるためのラベルを付与する措置(本人確認を行っていない利用者の明示等)
    • 可視性に影響するラベルの付与
      • 可視性への影響 一部影響あり
      • 情報の信頼性等を見分けるためのラベルを付与する措置(ファクトチェック結果の付与等)
    • 表示順位の低下
      • 可視性への影響 一部影響あり
      • 投稿された情報を、受信者側のおすすめ欄等の表示候補から外したり、上位に表示されないようにする措置
    • 情報の削除
      • 可視性への影響 影響あり(可視性ゼロ)
      • 投稿された情報の全部又は一部を削除する措置(新規投稿等は可能)
    • サービス提供の停止・終了、アカウント停止・削除
      • 可視性への影響 影響あり(可視性ゼロ)
      • サービスの一部から強制退会、又はその一部の利用を強制終了し、新規投稿等をできないようにする措置
      • アカウントの一時停止又は永久停止(削除)を実施する措置
    • 信頼できる情報の受信可能性の向上(いわゆるプロミネンス)

~NEW~
国土交通省 令和6年度 日本版MaaS推進・支援事業で11事業を選定しました!~他分野連携やサービス広域化等の促進によりMaaSの高度化を図ります~
  • 国土交通省では、地域の課題解決に資するMaaSのモデル構築を図る「日本版MaaS推進・支援事業」について、他分野連携やサービスの広域化等の促進によりMaaSの更なる高度化を図る取組として、11事業を選定しました。
  • 複数の交通モードにおけるサービスを1つのサービスとして、デジタルを活用して提供したうえで、データの連携・利活用等により、地域が抱える様々な課題の解決に取組む「MaaS」の社会実装を支援するため、このたび、「令和6年度 日本版MaaS推進・支援事業」として11事業を選定しました。
  • 国土交通省では、引き続き関係府省とも連携を図りつつ、日本版MaaSの実現に向けた取組を支援していきます。

~NEW~
国土交通省 2030年における次世代船舶受注量の世界トップシェアを目指します~「船舶産業の変革実現のための検討会」報告書のとりまとめ~
▼ 船舶産業の変革実現のための検討会
  • 設置の目的
    • 今後、カーボンニュートラル船・自動運航船をはじめとする次世代船舶への転換が求められる中、世界的な船舶の建造需要の増加が見込まれる一方で、我が国船舶産業の技術・供給基盤は盤石とはいえず、急速な人口減少の中での人材確保という大きな課題にも直面。
    • 我が国船舶産業が引き続き船舶の安定供給によって国民生活や経済安全保障を支えていくためには、生産性・稼ぐ力が高く若者を含む働き手にとって魅力ある産業に生まれ変わるためのこれまでにない変革が必要。
    • 2030年に目指すべき船舶産業の姿・目標を設定するとともに、その方策を検討するため、2023年5月に「船舶産業の変革実現のための検討会」を立ち上げた。
  • 検討事項
    • デジタル技術の活用の方向性
      • 事業者間の連携、設計・建造の変革のための方策
    • 次世代船舶の供給体制の構築
      • 技術開発、コスト面での競争力確保、設備の増強等のための方策
    • 人材の確保・育成
      • 国内人材・外国人材を確保するための方策
    • 2030年に目指すべき船舶産業の姿・目標
  • 船舶産業の変革ロードマップ
    • 技術開発・標準化・設備増強により競争力ある次世代船舶を供給する産業に変革
      • 次世代船舶に係るコア技術及び周辺舶用機器の開発
      • ゼロエミッション船等の建造に必要な設備投資
      • 船舶関連機器のサプライチェーン強靱化
      • 次世代燃料対応機器の標準化・事業の集約化・再構築
    • デジタル技術を駆使し、ニーズに対応できる抜本的に生産性が高い産業に変革
      • 上流から下流までシステムインテグレートするバーチャルエンジニアリング等を導入し、多様化する顧客ニーズに対応した高性能な船舶の開発・設計・建造期間の短縮
    • 待遇改善・魅力向上により十分な人材を確保できる産業に変革
      • 他産業に劣後しない処遇確保、環境改善
      • 魅力ある動画等の作成、SNS等を活用したPR
      • 地域内、あるいはメーカとユーザが連携した専門研修
      • 外国人向けテキスト作成、海外での研修活動 等
    • 国・船級協会による環境整備により他国と同等の競争環境を実現
      • 戦略的な国際基準の策定、公正な国際競争環境の整備
  • 船舶産業が目指す目標(2030~)
    • 2030年に我が国海事産業が次世代船舶の受注量におけるトップシェアを確保
  • 船舶産業が目指す姿(2030~)
    • 新燃料船等の次世代船舶で世界をリードすることで、世界市場で存在感を確保
    • コア技術・部品への先行投資や船のライフサイクル全体への関与を通じて価値を生む産業に変革
    • 日本の経済・国民生活・安全を支える

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