SPNの眼
平成24年3月30日、「東京都帰宅困難者対策条例」が制定された。
平成25年4月1日から施行されるため、今回は、簡単にその概要(内容は、筆者にて整理・抜粋)を整理し、情報提供をさせていただきたいと思う。
「帰宅困難者」について、「事業所、学校等に通勤し、通学し、又は買物その他の理由により来店し、若しくは来所する者等で徒歩により容易に帰宅することが困難なものをいう」と定義(第一条【目的】)
都民の責務として定められた事項(第三条【都民の責務】)
1.大規模災害の発生に備えて、あらかじめ、家族その他の緊急連絡を要する者との連絡手段の確保、待機し、又は避難する場所の確認、徒歩による帰宅経路の確認、その他必要な準備を行うように努める
2.大規模災害の発生時に自らの安全を確保するため、むやみに移動しないように努める
3.都、区市町村、他の事業者その他関係機関が行う帰宅困難者対策に協力し、かつ、自発的な防災活動を行うように努める
事業者の責務として定められた事項(第四条、第七条)
1.事業者は社会的責任を認識し、従業員の安全と管理する施設や設備の安全の確保に努める(第四条【事業者の責務】)
2.事業者の努力義務(第四条【事業者の責務】)
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- 大規模災害発生時は、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携して帰宅困難者対策に取組む
- あらかじめ従業員との連絡手段を確保する
- 家族その他の緊急連絡を要するものとの連絡手段の確保、待機し、又は避難する場所の確認、徒歩による帰宅経路の確認、その他必要な準備を行うよう従業員に周知する
- 管理施設の周辺で多数の帰宅困難者が発生することによる混乱や事故発生を防止するため、都、区市町村、他の事業者その他関係機関及び当該施設住民との連携・協力に努める
- 大規模災害発生時の従業員の施設内での待機や安全に帰宅させるための方針等について、防災計画において明らかにし、従業員へ周知するとともに、定期的に内容の確認・改善に努める
3.従業員の一斉帰宅抑制(第七条【従業員の一斉帰宅抑制】)
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- 大規模災害発生時は、管理施設の安全性と周辺状況を確認の上、従業員に施設内での指示その他の必要な措置を講ずることで、従業員が一斉に帰宅することの抑制に努める
- 従業員の施設内での待機を維持するため、従業員の三日分の飲料水食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するように努める
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公共交通事業者等による利用者の保護(第八条【公共交通事業者等による利用者の保護】)
1.鉄道事業者その他の公共交通事業者の努力義務
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- 公共交通機関の運行停止により管理施設内に多数の帰宅困難者が生じた場合、施設の安全性や周辺の状況を確認して、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携し、施設内での待機に係る案内、安全な場所への誘導その他公共交通機関の利用者の保護のために必要な措置を講じるよう努める
2.百貨店、展示場、遊技場等の集客施設の設置者又は管理者の努力義務
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- 施設内で多数の帰宅困難者が生じた場合、施設の安全性や周辺の状況を確認して、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携し施設内での待機に係る案内、安全な場所への誘導その他施設利用者の保護のために必要な措置を講じるよう努める
3.上記以外の施設の設置者又は管理者
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- 上記に準じた施設利用者保護のために必要な措置を講じるよう努める
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一時避難場所確保に向けた知事の義務(第十二条【一時滞在施設の確保等】)
1.都の施設の中から、帰宅困難者を一時的に受け入れる施設(「一時滞在施設」)を指定し、都民や事業者に周知する
2.一時滞在場所の確保に向け、都の施設以外の公共又は民間施設の管理者たる国、区市町村及び事業者に協力を求め、帰宅困難者受入体制を整備する
3.区市町村及び事業者その他の関係機関と連携し、大規模災害発生時において帰宅困難者の一時滞在場所への円滑な受入れのために必要な措置を講ずる
帰宅支援に向けた知事の義務
1.区市町村及び事業者その他の関係機関と連携・協力のもと、大規模災害の発生時における公共交通機関の運行停止の場合の代替交通手段及び輸送手段並びに帰宅支援ステーション(徒歩により帰宅する者に飲料水、便所、災害関連情報等の提供等を行う店舗等)を確保する
以上が東京都の帰宅困難者条例の概要である。
事業者に対して、明確に、帰宅抑制に向けた努力義務やそれを実現するための食糧等の備蓄努力義務が規定されていることが注目に値する。
首都直下地震の発生確率がニュース等で報道される今、あるいは台風等で交通機関が乱れる昨今、企業としては、帰宅困難者対策は不可避であり、早急に検討すべき課題であると言えるだろう。