SPNの眼
「店舗等の入店制限時等のポイントー現場社員を守るために」~危機管理おやじのつぶやき(コロナ対応2)[執筆:代表取締役社長 熊谷信孝]
前回は店舗で働く従業員へのサポートの必要性についてつぶやきました。今回は入店制限等における注意点と有効な対応例についてです。
状況は流動的ではありますが、店舗を営業する際の参考としていただければ幸いです。
1.近隣への配慮も必要
大規模店舗で十分な駐車スペースがある場合でも、入場制限による入店待ちの為、店舗周辺の道路が渋滞したり、駐車場に入庫する車両で一車線を埋めてしまったり、違法駐車・駐輪やそれに伴う騒音等による苦情が入るおそれがあります。
入店待ちの行列が歩道にあふれることなどを想定して、事前に近隣に対して、営業時間や想定される迷惑行為、それに対する店舗としての対応等についてご案内しておくことが必要です。
日ごろ交通誘導警備を導入していなくても、警察の指導もいただきながら、交通誘導警備や誘導・案内スタッフを選任・配置して、道路状況の監視や店舗周辺、駐車場付近の巡回も含めた対応体制を整備する必要があります。その際、予め、ルールを決めて、案内を設置したりして、告知しながら、必要に応じて中止要請やルール順守のお願いをして、各種のトラブルや近隣からのクレームへの予防策を実施していくことが重要です。
特に駐車場や停車中の車両(入庫待ち)でクレームとなりやすいのは、エンジンやオーディオの音による騒音苦情、排気ガスや車内・駐車場での喫煙に等による匂いや健康被害の申し出、見知らぬ人や多くの人が近隣にたむろすることによる犯罪等への不安、子どもの安全に関する苦情・申し出、自宅や建物への出入りに支障があるとの申し出等、多岐にわたります。
特に、緊急事態宣言の延長や営業自粛・在宅勤務等によるストレス、小中学校が休みで、お子様が自宅におり、特に防犯面に関する不安を抱えていることなどの事情もあり、ただでさえ、クレームが発生しやすい状況です。
既に入店制限を実施している場合も含めて、近隣から寄せられた苦情・相談等についての対応方針について、対応スタッフと共有して二次クレーム等にならないようにしておくことも必要となります。
当社でも、これらの事情を踏まえた各種のアドバイスが可能です。また、状況に応じて、当社のスタッフが店舗等を訪問して、現地の状況を踏まえた対応方法等をアドバイスします。お困りの際は、何なりと、弊社担当者までご連絡ください。
2.事前告知のポイント
ホームページや店舗等の案内掲示によって、制限する内容について事前に告知しておくことは、既に実践されていることと思われますが、「事前に告知したから大丈夫」ではありません。
その事前告知を知らないで来店したお客様に対する対応についても検討しておく必要があります。多くのトラブルは制限内容等を当日知ったことによるものが多く、そのようなお客さまへの対応が現場スタッフには大きな負担となります。
また、例えば、高齢者を対象とした入店制限時間を設けるといった場合には、その時間帯に制限した趣旨等が分かるような内容にすることや、比較的来店客が少ない時間帯を案内するといった対応もポイントとなります。
事前告知や案内は、掲示・掲載で終わってしまうと、お客様がそれを確認していないと、現況を踏まえた各種の対応法方法やルールについて認識されていない可能性が高いといえます。定期的に、店内放送等を利用して、繰り返し案内を行うことが重要です。忙しいと、つい、告知・掲示して終わりにしてしまいがちですが、後々クレームに発展した場合にその対応に取られる時間を考えると、また、クレームを生まないためにも、適宜店内での案内を行った方が、種々の対応負担も結果として少なくなります。
3.ソーシャルディスタンス対応(整理券の配布等)
店舗の立地状況により、ソーシャルディスタンス対応方法は違ってきます。敷地が大きく来店客に敷地内で対応できる場合でも、自ずと限度があり、そのような時に、店舗に入店できる方を制限し、トラブルを回避するために入店できる順番を確認するための整理券を配布する方法もあります。
なお、整理券を求めて、朝早くからの行列が出来る可能性があります(場合によっては、前日から順番待ちを始める人もいますし、そういう人がいると、他の人も自分も今から並ばないと、商品等が無くなるとおもってしまい、更なる順番待ちを誘引します)ので、その場合は深夜帯も店舗周辺に、事前告知等で整理券配布開始時間について周知しておくとともに、店舗前や周辺での順番待ちは遠慮願いたいこと、そのような順番待ちを見つけた場合は販売中止や停止、制限せざるを得ないことを、店舗内外に告知しておくことも重要となります。
ソーシャルディスタンスを確保する方策としては、そもそも一定の場所に多くの人を滞留・集合・たむろさせないことが基本となりますので、整理券を配布する場合も、このようなルール化、運用は非常に重要です。
また、整理券を配布することによって、車での待機を促すなどを行い、入店の順番を知らせるために駐車場で整理券番号をアナウンスすることで、ソーシャルディスタンスを維持できるような対応を行うことが望ましいといえます。
来店人数が多い場合(営業時間内で入店が出来ない場合なども含む)や、来店数を分散したい場合には、翌日の整理券を配布して対応することも有効です。ただし、翌日の整理券について知らない顧客も想定されることから、事前に説明を行うといった対応も必要となります。
また、店舗の状況によっては、歩道等に入店待ちのお客さまが溢れるなどして、一般の歩行者らの通行の妨げとなってしまうような場合も、整理券等での対応が有効だといえます。
これらの対応の運用にあたっては、対応に慣れた経験あるスタッフ等を配置しないと、余計混乱を招く点に注意が必要です。整理券の配布や入場制限の場合の動線管理は、当社でもこれまで多くの企業の店舗・イベントなどで実施しています。種々の助言も可能ですので、何かお困りの際は、何なりと弊社担当者までご連絡ください。
4.入店時対応ポイント
①「消毒等」
現在、店舗入り口には消毒用アルコールが設置されていることがほとんどかと思いますが、お客さまや従業員の安全管理対策として、スタッフが来店客に対して手指の消毒を行う対応も考えられます。
実際、お客さまの入店前の検温を実施している店舗もあり、もちろん安全管理上はそこまで徹底することが望ましいのですが、「熱がある」ことがすなわち「感染している」とは言い切れないこともあって、お客さまからの苦情等につながる可能性があります。しかしながら、従業員に対する安全配慮義務や施設管理運営上の安全配慮義務に観点からいえば、例えば、37.5度以上であれば入店出来ない旨の事前告知を行う、お断りする場合の対応フローやエスカレーション対応のあり方など、現場で対応するスタッフが適切に対応できるような体制を取っておく必要があります。
なお、出入口が複数ある場合は、できる限り絞り込んだうえで入退店の管理(入口と出口を分け、入口で、消毒等の対応を依頼する等)を行うことも必要だといえます。
なお、買い物かごやカードなど、お客様が共有で利用する備品についても、定期的にアルコール消毒を行う、店内の換気を定期的に行うなどの対策も重要です。既に、コンビニエンスストア等多くの店舗で実施されていますが、レジの前に塩化ビニールを貼り、飛沫が飛散しない対策を行って、従業員及びお客様双方の飛沫感染リスクを低減する取り組みも有効です。
②「マスク着用」
接客に際してマスク着用することについては、会社の方針を明確にして掲示等を行っておくとともに、お客様からマスク着用に関してクレーム等がついた場合の対応方法について、スタッフによって説明や対応が異なると新たな苦情につながるおそれがあることから、統一した対応ができるよう、事前にスタッフに共有しておくことが重要です。
なお、SPクラブの会員サイトにて、特にマスク等の品薄によるカスタマー・ハラスメントを想定した「カスタマー・ハラスメント対応ガイドライン」(店舗編)(以下、カスハラ対応ガイドライン)を公開しています。カスハラ対応ガイドラインでは、ドラッグストア等でのお客様対応を想定した対応例や対応のポイントを、できるだけわかりやすく表記しています。
ご興味がある方は、当社会員サイトからご確認ください(会員サイトへのアクセスの仕方やファイルの収納場所が分からない場合は、弊社担当者までお問合せください)。
③「複数人での入店」
事前に、ご家族等での複数での入店については、自粛をお願いしているところも増えています。一方で、強制することはプライバシー等に関する問題もあり、アナウンスや掲示物を使った「要請」(お願い)が一般的な対応だといえます。この場合、なぜ、「あの客は、複数での来店(入店)を認めているのか」といった、利用客から店舗への苦情やお客さま同士のトラブルなどが想定されます。
お客さまからの店舗への苦情等については、店内アナウンスや掲示物での「要請」が、店舗としてできる限界であることを説明し理解いただくように努めること、間違っても「家族連れのお客さまが悪い」といったことではなく、今般の新型コロナウイルスの影響で通常の運営が難しい状況であることを理解いただきたいこと、趣旨はお客様が密集することでクラスター感染に繋がりかねない「三密」の状況を避けるためであり、できるだけ、付き添い等が不要なお客様は家族連れ等でのご来店を遠慮いただきたいことなどをご理解いただくように努めることになります。
また、お客さま同士のトラブルについては、店舗としては、中立な立場を堅持し、双方と別々に話をすることや、お子さまにも配慮した対応が求められます。
これ以外にもケースバイケースの事案が発生しています。もっとも重要なことは、想定される事案を抽出し、それに対する会社の方針を明確にすること、その方針を、店内等での掲示・案内を通じてお客様はもちろん、現場のスタッフにも明確に示して、正しく理解してもらったうえでの対応をすることです。そして、このことが現場スタッフを守ることにつながります。
カスハラ対策においては、お客さまからの理不尽な言動・不当な要求等があれば、もはや「お客さまは神様」ではなく、毅然とした態度で、不当な対応には応じられないこと、そのようなお客さまにはご利用いただかなくて結構であるくらいの覚悟が会社には必要なのです。もちろん、対応時の言い回しなど、留意しなければいけない事項もありますが、このような基本方針を定め、現場対応時の「伝家の宝刀」として、現場で対応してよい旨を明示し、社内でコンセンサスを図っておく(店舗で対応すれば、店舗の対応は「けしからん」と、本部やお客様相談室にクレームを入れてくるのが、カスタマー・ハラスメントを行う顧客の特徴です)ことが重要です。
そのあたりについても、先程紹介した「カスハラ対応ガイドライン」にも記載・解説しています。また、弊社の各担当者もアドバイスをさせていただきます。いつでもご相談ください。
以上