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SPNの眼

カスタマーハラスメント防止対策~リスクマネージャーが語る実践で役立つトーク術と解決に導くためのポイント~(後編)

2023.10.02
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総合研究部 主任研究員 星 智樹

高級レストランで店員にクレームを入れる男女

※本稿は全2回の連載記事です。前回(9月号)はこちら

5.実践で役立つトーク術と解決に導くためのポイント

今月の「SPNの眼」では、前編(先月)に引続き、「実践で役立つトーク術と解決に導くためのポイント」について、色々なパターンを交えながら解説します。人の行動心理に基づくトーク術とは、心理や効果、原理、法則、話法、手法などを知ることで、その状況に応じた臨機応変な対応や行動を取ることが身につき、様々な問題を早期解決に導くことが可能となります。話し合いと一口に言っても、「ネゴシエーション・協議・対話・折衝・会商・談判」など色々あります。この実践で役立つトーク術は、ビジネスや営業活動、日常生活においても効果が期待できますので是非ご参考にしてください。

(1)二者択一の選択

例えば、営業担当者は、ある問題を解決するための話し合いを任されたとします。会社側から提示された条件で顧客と合意することが、今回のミッションです。顧客に解決案を提示する際、「A案もしくはB案のどちらかお選びください」、と申し向けることで顧客は、「A案もしくはB案以外の選択肢はないと錯覚させる」効果が期待できます。この二つの選択肢を提示し、どちらかを選んでいただくトーク術のことを「二者択一話法(選択話法)」、といいます。

ここでの主なポイント

この、「二者択一話法(選択話法)」、というトーク術は二つの選択肢、「A案もしくはB案のどちらかお選びください」、と提示することでA案もしくはB案のいずれかが選ばれても、こちら側の都合の良い結果となるトーク術のひとつになります。このトーク術は顧客に、「A案もしくはB案以外の選択肢はないと錯覚させる」効果と、その他の選択肢はない、「NO」を言わせないようにする効果が期待できます。筆者もこのトーク術をよく使いますが非常に効果的です。不当要求などの対応では、顧客との話し合いの駆け引きの中で相手方を打ち負かしたり、有利な条件を引き出したりして主導権を握ろうとしてきます。その場合は、顧客の訴えを聞いたと錯覚させる(ごね得をなくす)ため、あえて一度に複数の条件を提示し選択させることで、満足させる狙いもあります。覚えておきましょう

(2)二者択一の選択(応用編)

例えば、無料セミナーに応募された、ある会社の担当者にセミナー受講後フォローのため、アポイントを取ることになりました。目的は、新規アプローチのためです。それでは、二者択一の選択が応用できる電話トーク術を紹介します。例えばこのようなケースでは、『~●●様、お世話になります。この度は、当社セミナーにご参加いただきありがとうございました。早速ではございますが、当社のセミナーはいかがだったでしょうか。一度、ご面談のお時間をいただきたいのですが』、「いつ頃がよろしいでしょうか、ご都合のよいお日にちを教えていただけませんでしょうか」、というトークを使っているのではないでしょうか。このようなアポトークに対して、先方から、「今月は忙しいから、またの機会に…」、「今は忙しいから折を見てこちらから連絡させていただきます」などと遠回しに断られた経験は営業マンなら誰しもあるのではないでしょうか。このような場合は、「二者択一話法(選択話法)」を使ってみましょう。ご面談のお時間をいただきたいのですが、「今週と来週のどちらのご都合がよろしいでしょうか」、「来週と再来週のどちらのご都合がよろしいでしょうか」、と二者択一の選択方法でアプローチすることで、担当者は容易に断りづらくなりアポイントの取れる確率が増す効果が期待できます。トーク術の本では、このようなトークは、「ダブルバインド」として紹介されている場合もあります。

(3)二者択一を躊躇(ためら)う相手には

例えば、顧客に、「A案もしくはB案のどちらかお選びください」、と二つの解決案を提示したとします。それに対して、顧客から「少し考えさせて欲しい」、との申し出があり、しばらく時間が経過しても顧客からの返答がない場合には、顧客に対して新たに、「C案」を提示する方法も効果的です。ただし、この場合、「C案はA案もしくはB案よりも明らかに魅力に欠ける提案」でなければなりません。こうすることで、顧客は、「A案もしくはB案のいずれかを選択することが得策だな」という心理になります。このようなトーク術を、「おとり効果」といいます。

ここでの主なポイント

この、「おとり効果」とは、「二者択一の選択のA案もしくはB案よりも明らかに劣るC案を『おとり』として混ぜる」ことで、意思決定をA案もしくはB案のどちらかを選択させるよう誘導する心理効果のひとつとなります。覚えておきましょう。

(4)三者択一の選択提示も有効

例えば、ある会社に商品企画のプレゼンテーションを担当することになりました。その際、あえて三段階の価格(上・中・下)の企画を提案することで価格に関心を集中させ、「不採用」という選択肢を顧客の選択肢からなくす効果期待できます。このようなトーク術を「松竹梅の法則」、といいます。

ここでの主なポイント

この、「松竹梅の法則」を使ったトーク術は、上述でも紹介しました、「おとり効果」をマーケティングなどで活用するときに、「松竹梅の法則」または「ゴルディロックス原理」をよく使っています。例えば、マックのドリンクやポテトのサイズは、「S・M・L」、ケンタッキーのドリンやポテトも「三種類」となっています。このように身近なところで使われていることがわかります。覚えておきましょう。

(5)話す順番を意識する

  1. 例えば、「良いこと」「悪いこと」の両方を顧客に話す必要がありますが、顧客に「好印象」を持ってもらうため「良いこと」「悪いこと」のどちらを先に話すべきか悩んでいます。このような悩みに直面した場合は、諸説ありますが、「伝える情報量によって話す順番が変化する」、ということを思い出すように意識してください。
  2. 例えば、上司の「良いところ」「悪いところ」「ひとつずつ」教えてください、と質問されたとします。Aさんは、「課長は仕事ができますが性格が悪いです」、と答ました。このような場合、「良いところ」「悪いところ」のどちらを先に話せば顧客にとって好印象なのか見ていきましょう。
    • 課長は仕事ができますが、性格が悪いです。
    • 課長は性格が悪いですが、仕事ができます。

    さてどうでしょう。後者の方が好印象に聞こえませんか。伝える情報量が少ないため最後に聞いた情報が記憶に残りやすい傾向にあるとされています。このような効果を「親近効果」、といいます。

  3. 一方で、例えば、上司の「良いところ」「悪いところ」「三つずつ」教えてください。と質問されたとします。Bさんは、「課長は仕事ができて、頭がよく、清潔感があり、性格が悪く、短気で、部下に厳しい」、と答えました。それでは、このような場合は、「良いところ」「悪いところ」のどちらを先に話せば顧客にとって好印象なのか見ていきましょう。
    • 課長は仕事ができて、頭がよく、清潔感があり、性格が悪く、短気で、部下に厳しい。
    • 課長は部下に厳しく、短気で、性格が悪く、清潔感があり、頭がよく、仕事ができる。

    さてどうでしょう。前者の方が好印象に聞こえませんか。伝える情報量が多くなると最初に聞いた情報が記憶に残りやすい傾向にあるとされています。この効果を「初頭効果」、といいます。

ここでの主なポイント

顧客に「良いこと」「悪いこと」の両方を話す必要がある場合には、話す順番を意識することです。そうすることで、相手方の受け取り方も変化します。「良いこと」「悪いこと」の両方を話す場合は、伝える情報量が少ない時は、「悪いことから良いこと」の順番で、情報量が多い時は、「良いことから悪いこと」の順番で話すようにしましょう。但し、「親近効果と初頭効果」には、「その人との間柄や関係性によって真逆に作用する」ことが稀にあります。総括しますと、初頭効果は、最初に聞いた言葉が印象に残りやすく、親近効果は最後に聞いた言葉が印象に残りやすいため、「良いこと」「悪いこと」の両方を一度に話す必要があり、どちらを先に話すべきか迷った場合には、「良いこと」「悪いこと」「良いこと」の順番で話すことで、「初頭効果と親近効果の両方を網羅」することができます。どちらを先に話すべきか迷った場合には、この伝え方が「安全牌」のようです。覚えておきましょう。

(6)同情を誘うトークも時には有効

例えば、営業担当者は上司からの要請で、ある問題を解決するために顧客との話し合いを任されたとします。しかしながら、上司から指示された解決案では顧客の要求と大きく乖離しており、話し合いは難航しています。では、どのようなトーク術を使って解決に導きますか。このようなケースでは、顧客のお気持ちには理解を示す姿勢で、例えば、「私も顧客のお気持ちは十分理解できますが…」などと相槌をうったり共感したりしながら、「現在の要求内容では会社に上申しても間違いなく否決されます。何とか歩み寄っていただけませんでしょうか。私も会社に何度も掛け合っているのですが、中々理解が得られない状況なのです」、と顧客から同情を誘うような発言を繰り返し行うことで、顧客に歩み寄ってもらうよう誘導させるトーク術に効果が期待できる場合もあります。このトーク術は、悪者(会社側)がいることを顧客に意識させ、営業担当者は顧客の良き理解者(話のわかる人物)として振る舞い、顧客から妥協案を引き出す狙いがあります。このトーク術を「グッドコップ・バッドコップ戦術」、といいます。

ここでの主なポイント

この、「グッドコップ・バッドコップ戦術」はダメで元々、上手くいったらラッキーのトーク術となります。営業担当者は顧客の気持ちを汲み取る発言を繰り返し、一方で会社側は到底受け入れられないことを顧客に繰り返し説明することで、「顧客からの同情を誘い歩み寄っていただくようお願いするテクニック」、です。筆者は、この戦術を使わざるを得ない状況での勤務が多かったため、難しいお客様への対応の際も、この戦術によく助けられました。筆者の私見となりますが、結構な確率で解決に導くことができました。覚えておいて損はないと思います。

(7)両面提示の活用

例えば、営業担当者は新規開拓において自社商品を顧客にプレゼンテーションする場面で、営業担当者が一生懸命自社商品のメリットを強調して説明しましたが、「他社も含め比較検討させていただきます」、と断られてしまった経験はありませんか。顧客はメリットだけを聞かされると、かえって胡散臭さを感じ、往々にして、距離を取ろうとします。その結果、せっかくのプレゼンも顧客には響かないのです。このような状況では、メリットだけを説明するのではなく、あえてデメリットも合わせて説明することで、顧客は他社との比較検討もやりやすくなりますし、当社のことを誠実で正直な会社との印象を与え、信頼感や説得力が増す効果が期待できます。このような手法を、「両面提示の戦術」、といいます。一方で、顧客にメッリト(利点)だけ、もしくはデメリット(リスク)だけを説明するトーク術を「片面提示の戦術」、といいます。

ここでの主なポイント

片面提示と両面提示のどちらが有効なのかは、顧客との関係性を把握して使い分けることが大切です。例えば、顧客との信頼関係がすでに構築されている場合には、「片面提示の戦術」、信頼関係はまだない、または信頼関係が構築されているか判然としない場合などには、「両面提示戦術」が有効といえます。こちらも対応テクニックのひとつになります。

(8)期限の設定も有効

例えば、顧客はあるクラブ会員に興味を示していたとします。営業担当者は、その会員サービスに関するプレゼンテーションを行うことになりました。その際、会員特典やサービス内容などを説明するでしょう。一方で、顧客は入会したいものの会費が高額であることを理由に入会に難色を示しています。その際、場合によっては会費を一定期間減額することで入会を促すケースもあるでしょうが、値引きを提示する場合は顧客に対し、「●●日までにお返事いただいた場合に限ります」、と期限を設定することをお勧めします。期限を設定することで、顧客に対して、「期間限定」「今だけのサービス」、と思わせる効果が期待できるからです。この期限を設定するというトーク術は、「●●時までにご入金いただけませんと、今回のサービスは失効いたします」、「●●時までにお返事をいただけない場合には、他のお客様にお譲りすることになります」などと期限を設定することで、相手方の購入意欲を高めようとするものです。このようなトークを聞いたことがありませんか。それは、テレビショッピングです。「30分以内にお電話をいただいた方に限りこの価格で」、といったようなフレーズを使って、視聴者の購入意欲を煽っています。期限を設定することで、購買意欲を高める効果が期待できるのです。このようなトーク術を「スノッブ効果」または「数の希少性の原理」、といいます。こちらも顧客の心理を突いたトーク術となります。

ここでの主なポイント

他にもよく見る、「期間限定」「地域限定」「1日限定●個」「1日限定●食」などもと同様の効果が期待できます。商品やサービスの利用が限定的と思われている場合、より魅力的に感じる現象のことです。この手法も、「スノッブ効果」または「数の希少性の原理」のひとつです。覚えておきましょう。

(9)高低差をつけるのも有効

例えば、ある銀行の渉外担当者としてお仕事をしていたとします。今日中に定期預金の新規申し込みノルマを達成する必要があります。さて、どうやって定期預金加入者を獲得しますか。あるお宅に訪問した際、お客様に10万円の定期預金に入って欲しいとお願いします。当然ながら、お客様からは「毎月10万円なんて無理です」、とお断りされるでしょう。渉外担当者は、断られることを最初から想定しています。断られた後に、「毎月5千円でいいので何とか定期預金に加入いただけませんか」とお願いするトーク術です。このトーク術を「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(譲歩的依頼法)」、といいます。このトーク術の特長は、本命の要求を通すために、最初は過大な要望額を提示し、一旦お客様から断られた後に本来の要望額を提示することによって、お客様が要望を受け入れやすくなったと錯覚させる人間の心理を巧みに操ったトーク術のひとつとなります。このトーク術は、「チンピラ(下っ端ヤクザ)や半グレ、悪質クレーマー」などが「カツアゲ(喝上げ)」などでよく使うトーク術で知られています。

ここでの主なポイント

このトーク術は、顧客をできるだけ大きく揺さぶり、且つできるだけ高低差をつけて話し合いをすることで、より高い効果を発揮します。しかしながら、「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(譲歩的依頼法)」を使ったトーク術には、「デメリット」もあります。それは、このトーク術を一度使った相手には、このテクニック自体が既に知られているため同じ相手には二度と使えないということです。

(10)その他の手法①

通販サイトなどで、健康食品やサプリメント、レンタルウォータサーバーなどの販売でよく用いられるテクニックのひとつです。このテクニックは、最初に無料サンプルを提供したり、一定期間お試し価格で販売したりすることで、先ずお客様を取り込み、後から段階的に本来の価格で購入させようとする手法のひとつです。この手法を「フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)」、といいます。

ここでの主なポイント

この、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)」のテクニックは、顧客が興味を示しやすいところからスタートさせてお客様を取り込み、その商品を一定期間利用させることでその環境が当たり前の感覚となり、結果的には継続利用の選択方向に誘導させるテクニックのひとつです。このテクニックは、スーパーや百貨店などの試食販売や無料体験、無料レッスン、またメルマガの登録などもこのテクニックを応用したものとなります。こちらも人の心理を利用した手法のひとつです。

(11)その他の手法②

アウトレッドモールやバーゲンセールで用いられる手法のひとつとなります。通常価格より、「●●%OFF」、「●割引」、と提示することでその商品がお買い得だと思わせる効果が期待できる手法です。これを「アンカリング効果」または「係留効果」、といいます。この、「アンカリング効果」または「係留効果」は、通常価格からの乖離が大きければ大きいほどより高い効果を発揮します。

(12)その他の手法(応用編)

例えば、営業担当者は、ある会社にセミナーの見積を依頼されたとします。その際、通常価格よりも高い見積をあえて提示し、顧客にその価格が通常価格だと思わせた後に、本来の価格に戻すことで相手方は、「値引きしてくれた」、「値下げに応じてくれた」、と共感しお得感を演出する手法です。こちらも、「アンカリング効果(係留効果)」の一例となります。

ここでの主なポイント

この、「アンカリング効果(係留効果)」とは、最初に提示された数字や条件が基準となり、その後の判断を無意識に左右する心理作用のひとつです。アウトレッドモールやバーゲンセール以外に、「特別価格」、「タイムサービス」、「タイムセール」、「大特価」、「大売出し」なども同様の心理効果を応用したものです。覚えておきましょう。

(13)「NO」と断る勇気

ハードクレームや不当要求対応が苦手な人の特長として、よく見受けられるのが対応の方向性がすでに決まっているにも拘わらず、顧客の要求に対して、「それはできません」、「お受けできません」、「お断りいたします」、とハッキリ言えない人です。顧客の要求を「拒絶」したり「排斥」したりすることができないため、何度も持ち帰ってくる人が極稀にいます。「出来ないことはできない」、と毅然とした態度で臨む勇気がない人です。悪質クレーマーや不当要求者などは、気が弱い担当者をよく理解しています。自分の条件を優位に飲んでくれる相手を見つけると味をしめ、その担当者を名指するようになります。担当者を変えても「●●と話したい」、と担当者の変更を持ち掛けてきます。このような状況が続くようであれば担当者を変更し、お断りの連絡を入れますが、顧客は、「●●がそれでいいと言ったのか」、と更に因縁をつけてきますが妥協せず徹底して断り続けることです。

ここでの主なポイント

このような顧客に特段のテクニックは必要ありません。ただお断りするだけです。ハードクレームや不当要求、悪質クレ-マ-などの対応では、絶対に妥協しない姿勢と強い気持ちで臨むことが大切です。悪質クレーマーや不当要求対応では相手方が、「これ以上いっても無理だな」「これ以上いっても無駄だな」、と諦めるまでの「我慢比べ」、なのです。

(14)悪質クレーマー対応時の心得

クレームやトラブル等の場合は、最初の対処が最も重要といえます。初動対応から、お客様の話をしっかり聞いて事実確認を進めながら、お客様の主張は善意(クレーム)なのか悪意(不当要求)なのかを見極めることが必要不可欠です。先ずは、

  1. お客様の話をしっかり聞くことに徹し発言内容を記録し共有します
  2. お客様の発言内容の事実関係を確認し、発言内容の真偽を明確にします
  3. お客様の要求内容が社会通念上もしくは法律上、正当な主張なのかを確認します
  4. お客様の損害(不利益)を負ったと主張する原因と、それによって生じた関係性を確認します上記の内容を確認し、対応の方向性について総合的に判断します。

行き過ぎた要求や要望は受けては(対応しては)いけません。「クレーム」「不当要求」は似て非なるものです。不当な要求や悪質クレーマーは明確にお断りして理不尽な行為は絶対に拒絶するようにしましょう。

6.悪質クレーマーの行為と犯罪の種類

悪質クレーマーの行為は、時として犯罪になることがあります。例えば、飲食店や量販店などにおいて、ハードクレームや不当要求対応などで従業員に暴言を吐いたり、土下座を強要したりする場合です。このような状況では、その行為自体が犯罪に該当する場合もありますので、映像の記録や会話を録音することも重要となります。そもそも、トラブルやクレームとは顧客が商品やサービスへの不満から店や企業に責任ある対応を求めるために発生するものです。しかしながら、過度な要求や迷惑行為を行う悪質なクレーマーがいることも事実です。過度な要求や恫喝などの言動や行為が続く場合には、「これ以上●●行為を続ければ警察に通報しますよ」、「これ以上●●行為を続けば●●罪にあたりますよ」、と発することで、その行為を抑制させる効果も期待できます。それでも同様の行為が続くようであれば、躊躇せず直ちに所轄の警察署に通報しましょう。なお、悪質クレーマーへの対応で、よくありがちな行為と犯罪については、以下の通りです。

No. 不良客や不当要求者等の行為例 罪名
1 店員を殴る、蹴る 傷害罪/暴行罪
2 店員や家族、会社役員などに危害を加えるなどと脅す 脅迫罪
3 暴行してまたは脅して謝罪文を書かせる、面会を強要する 強要罪
4 暴行してまたは脅して金品を要求する、債務を免除させる 恐喝罪
5 他の客の前で、大声で騒ぐ。しつこく店員に迫り仕事を妨害する 威力業務妨害罪
6 「なりすまし」「レシート詐欺」など騙して金品を取る 詐欺罪
7 建物に承諾なく入る 住居侵入罪
8 店員などが「退店してほしい」と命じても出て行かない 不退去罪
9 商品や什器、看板など物を壊す 器物損壊罪
10 店員を自宅に呼び出し、帰らせない 逮捕罪/監禁罪

7.おわりに

二回にわたり、「実践で役立つトーク術と解決に導くためのポイント」について解説しました。実際の対応で重要なことは、双方の意見が対立している状況からお互いの利害を調整し、合意形成を目指して話し合うことです。こちらの要望や主張、相手方の要望や主張など、双方の事情を汲み取りながら問題の根幹にあるものは一体何なのかをよく理解し、よく考え、妥協点を探しながら双方が歩み寄って初めて解決に導くことができるのです。一方で、不当要求や悪質クレーマーなどの対応では、「特別な対応スキルは不要」です。謝罪と、できることのみ対応することに徹するだけです。

おわりに、当社では、リスクマネージャーの配置というサービスを提供しています。リスクマネージャーとは、危機管理対応のプロが現場に駆けつけ、具体的に現場の問題解決を支援するサービスのことです。これまでに数多くの緊急対応支援の実績があり、専門スタッフが直接顧客対応をする形で支援するものです。当社が対応可能な業種や案件も幅広く、トラブル対応から企業不祥事、情報漏洩など様々な支援実績があります。また、近年カスタマーハラスメントが増加傾向にあるなか、カスハラ被害から従業員を守るための相談体制の整備や被害を受けた従業員に対する精神的ケア、体制構築や再発防止のための対応マニュアルの作成、カスハラ研修など、企業には従業員の安全や健康に配慮する義務があります。トラブル対応では、時間的なロスはもちろんのこと金銭的、物理的なロスも内在しているため、対応者の負担を考えると人的なロスも大きくなります。当社では、それらの問題をトータルに支援・サポートできる体制を構築しています。カスハラ被害や多種多様な問題に直面し解決策などでお困り、お悩みの方は当社まで遠慮なくご相談ください。

「お問合せ・ご相談はこちら」

以上

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