みなさん、こんにちは。
今回のリスクフォーカスレポートは、引き続き「内部通報制度の検証の必要性」をお届けしてまいります。第1回では、通報件数について、そして第2回では通報内容のカテゴリーについてお伝えしました。最終回となる今回は、「内部通報制度指針(ガイドライン)の改正」をテーマにしたいと思います。
本年5/9(月)付の日本経済新聞に「内部通報制度指針、今夏にも改正 通報者の処分減免促す 制度整備にお墨付きも」という記事があったことをご記憶の皆様も多いのではないでしょうか。この記事においては、今夏、政府が内部通報制度指針を改正する方針であるとし、以下の点が挙げられていました(同記事より引用、一部筆者加筆)。
- 自ら不正に関与しても通報者や調査協力者は社内処分の減免を促すこと(リニエンシー制度)
- 通報を受け付ける対象者(通報制度を利用できる者)を退職者や取引先従業員などに広げること
- 積極的に取り組む企業にお墨付きを与える認証制度を新設する方針
加えて、本日7/6(水)5時00分に朝日新聞デジタルより「内部通報の指針、企業運用改善へ 消費者庁が改正素案」とする記事が配信されました。「内部通報制度」のガイドラインについては意見公募を経て9月に改正するとのことです。改正素案では、5/9(月)の内容を踏まえ、以下の点が盛り込まれています(同記事より引用、一部筆者加筆)。
- リニエンシー制度の導入推奨
- ガイドラインに沿って取り組む企業の認証制度の創設を検討
- 経営トップが全従業員に対し、内部通報制度の重要性を伝え、通報がリスクの早期発見や企業価値を高める正当な行為だと発信することが必要だと明記
- 通報者が特定されないよう、社内で通報内容を共有する範囲を最小限にとどめることや、外部の通報窓口を設けることを推奨
- 不正の調査にあたっては定期監査と合わせて行うなど通報があったことを伏せるよう工夫を求める
- 通報を理由とする解雇や懲戒処分、嫌がらせなどを行ったり、通報内容を漏らしたりした者には懲戒処分を科すことを促す
7/8(金)に、消費者庁における「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」(昨年6月16日を皮切りに本年7月8日までの11回、以下『検討会』)から「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(素案)が公表されております。
(a)および(b)については、5/9(月)の記事においても言及されていましたが、その他の内容については、現行のガイドライン(平成17年)を踏まえ、検討会および、当該検討会の下に法律的・専門的な観点からさらに検討を加えるためのワーキング・グループとして「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会ワーキング・グループ」(本年4月28日を皮切りに同6月29日までの4回、以下『WG』)において議論されてきた内容が盛り込まれているようです。
検討会やWGの議論の土台のひとつとして、平成25年6月に消費者庁が公表した『公益通報者保護制度に関する実態調査 報告書』(以下、『実態調査』)がありますので、こちらも併せてご確認いただきたいと思います。
なお、5/9(月)の記事(通報を受け付ける対象者)における「通報制度を利用できる者の拡大」については後述いたしますが、4/28(木)開催の第1回WGおよび5/24(火)開催の第2回WGにおいて議論されていますので、何らかの形でガイドラインの改正内容に盛り込まれることが考えられます。
5/9(月)記事においては、改正の背景として「同法を所管する消費者庁は制度の形骸化に危機感を募らせ、05年に策定した企業向けの指針を(中略)改正する考えだ。」としています。よって、消費者庁そして政府が改正を検討しているとされる内部通報制度指針(ガイドライン)を踏まえることは、貴社の内部通報制度の「実効性」の検証において有意義な視点となり得ると思われます。
ガイドラインの改正内容を考えていく前に、一度現行のガイドライン(平成17年7月19日 内閣府国民生活局『公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドライン』)を確認しておきたいと思います。構成は以下の通りです。
- 本ガイドラインの目的と性格
「事業者内部での通報処理の仕組みを整備することは、事業者内部の自浄作用を高めるとともに、事業者外部への通報による風評リスクを減少させることにもつながる」としています(以下、本段落において「 」内はガイドラインより引用、一部加筆修正) - 事業者内での通報処理の仕組みの整備
- 仕組みの整備
「経営幹部を責任者とし、部署間横断的に通報を処理する仕組みを整備・運用する」 - 通報窓口の整備
「通報窓口・受付方法の定めと労働者への周知」および「通報窓口の外部設置等」 - 相談窓口の整備
「各事業者の通報処理の仕組みに関する質問等に対応する相談窓口(通報窓口とは別、または一元化)」 - 内部規程の整備
「通報処理の仕組み、特に公益通報者に対する解雇や不利益取扱いの禁止の明記の必要性」 - 秘密保持の徹底
「(事業者内における)情報共有の範囲の限定」および「(内部通報)担当者の守秘義務の徹底」 - 利益相反関係の排除
「(内部通報の)受付担当者、調査担当者その他通報処理に従事する者は、自らが関係する通報事案の処理に関与してはならない」 - 通報の受付
- 通報受領の通知
「通報者が通報の到達を確認できない方法による通報の場合、速やかに通報者に対し、通報受領の旨を通知することが望ましい」 - 通報内容の検討
「調査が必要であるか否かについて、公正、公平かつ誠実に検討」 - 個人情報の保護
「通報の受付は通報者の秘密を守ることが必要」 - 調査の実施
- 調査と個人情報の保護
「通報者が特定されないよう調査の方法に十分に配慮することが必要」 - 通知
「被通報者(その者が法令違反等を行った、行っている又は行おうとしていると通報された者をいう。)や当該調査に協力した者等の信用、名誉及びプライバシー等に配慮しつつ、通報者に通知するとともに、調査結果は、可及的速やかに取りまとめ、通報者に対し、その結果を通知するよう努めることが必要」 - 是正措置の実施
- 是正措置と報告
「調査の結果、法令違反等が明らかになった場合には、速やかに是正措置及び再発防止策を講じるとともに、必要に応じ、関係者の社内処分など適切に対応することが必要」 - 通知
「被通報者や当該調査に協力した者等の信用、名誉及びプライバシー等に配慮しつつ、速やかに通報者に対し、是正結果を通知するよう努めることが必要」 - 解雇・不利益取扱いの禁止
- 「公益通報をしたことを理由として通報者に対し、解雇・不利益取扱(懲戒処分、降格、減給等)をしてはらなない」
- フォローアップ
- 「通報処理終了後、法令違反が再発していない、是正措置及び再発防止策が機能しているかの確認等」および「通報者に対し、通報したことを理由とした不利益取扱いや職場内で嫌がらせが行われたりしていないか等、通報者保護に係るフォローアップが必要」
- その他
- 仕組みの周知等
「通報処理の仕組みやコンプライアンスの重要性についての周知活動の必要性」および「通報処理を行う担当者への研修」、そして「透明度の高い職場環境の形成」
内部通報制度を検証するにあたり、改正が見込まれる内容のみならず、現行のガイドラインにおいても着目すべき点があります。それは「利益相反関係の排除」および「フォローアップ」に関する部分かと思われます。
まず、「利益相反関係の排除」に着目する理由としては、実態調査における通報処理に関する内部規程の内容(P.14)において、内部規程にこの利益相反関係の排除についての内容を盛り込んでいるとする割合が30.2%にとどまっているためです。貴社の内部通報規程において利益相反関係の排除に関する条文が盛り込まれているかをご確認いただくとともに、運用面としても機能しているかの検証をお勧めします。その際には、第一に内部通報担当者を被通報者とする通報を受領した場合の通報処理ルート(当該内部通報担当者を第一受付から除外して事実確認、その後の対応を行うこと等)を確立することが求められます。
第二に取締役を被通報者とする通報を受領した場合の通報処理ルート(一般的には監査役による対応)の確立、第三に、内部通報窓口(制度)を所管する部署全体を被通報者とする通報を受領した場合の通報処理ルートを用意しておく必要性があるものと思われます。ただし、第三の点については、内部通報窓口の設置場所にもよって方向性が異なるものと思われます。すなわち、社内と社外に窓口を設置している場合や、社外にのみ窓口を設置している場合には、内部通報窓口(制度)を所管する部署を除外した通報処理ルートの確立が比較的容易であるのに対して、社内にのみ窓口を設置している場合には、社内における別の窓口の設置についての検討が必要になるものと思われます。いずれにしましても、利益相反関係の排除については、規程と運用の両面についての検討が望まれます。
次に、「フォローアップ(またはモニタリング)」については、弊社が外部委託先として内部通報窓口を運営する中で、通報を繰り返す方や、通報者と被通報者が入れ替わるような、いわゆる通報合戦になってしまう状況、あるいは通報者からの音信が途絶えてしまう事例などに触れるうちに必要性を感じているところです。
一般的に内部通報担当者が総務部門や人事部門等との兼務である場合や、通報件数が多いことで担当者が多忙を極めている場合などは、フォローアップの体制構築やその運用が簡単に進まないことが考えられます。そうした中でも必要性を感じるのは、ケースクローズ(案件収束)後、一定期間を経てからのモニタリングは、現行のガイドラインにあるように「是正措置及び再発防止策が機能しているかの確認」としての側面、言い換えれば従業員への内部通報制度自体への信頼感の醸成、すなわち適切な内部通報に対しては適切な対応が行われるという安心感を抱かせるという意味合いでも肝要であると思うためです。全ての通報案件に対してフォローアップ(モニタリング)が行われることが望ましいことは言うまでもありませんが、一定の基準(ハラスメントに関する内容や、通報者にメンタルヘルス不全の兆候が見られる場合等)を設定してフォローアップすることも体制強化を現実的に進めるうえでの一案かと思います。
さて、現行のガイドライン(指針)をご覧いただいておわかりのように、今夏改正が予測されている内容は次のように分類することができます。「①自ら不正に関与しても通報者や調査協力者は社内処分の減免を促すこと」および「②通報制度を利用できる者を退職者や取引先従業員などに広げること」については、現在のガイドラインで触れられていない内部通報制度の実効性を高めるための内容です。そして「③積極的に取り組む企業にお墨付きを与える認証制度も新設する方針」については、企業が社内外に対して内部通報制度の運用や実効性を示すことを求める内容とも言えます。
では、どのようにして内部通報制度指針の改正の議論が進んだのかを簡単に振り返ってみたいと思います。本レポートの第1回で少し触れた消費者庁における検討会および、当該検討会のWGを確認していきたいと思います。なお、公表されているスケジュールにおいては、WGは第4回(6/29)の後に検討会への中間報告を行い、その後8月後半まで全8回の議論を重ねたうえで取りまとめられる模様です。そのため冒頭の記事にもありますように、ガイドラインの改正については素案に対する意見公募を経て9月になるものと思われます。
まず、「①自ら不正に関与しても通報者や調査協力者は社内処分の減免を促すこと」、すなわちリニエンシー制度については、第2回検討会で示された資料(参考2-1「ガイドラインの各条項に関連するヒアリング結果・内部規程の実例等」)において確認することができます。その中では、検討会の議論の他に、実態調査からの引用もありますので、一部をご紹介します。
- 不正に関与していた社員が自発的に通報等をした場合には、社内の懲戒処分等の発動にあたって通報者等に有利に考慮されうるというメリットを規定すると効果がある(「実態調査」より弁護士の見解として)。
- 調査が開始される前に会社に申告した者には一切社内処分を行わないこと、および調査会後であっても調査に全面的に協力した者には処分を減免することを明確にした。近年、通報件数は増加傾向にある(「実態調査」より大企業の事例として)。
- 良心に基づいて公開して情報を出してくれるということは、リニエンシーの制度でフォローしてあげることで、うまく回っていく(第1回検討会より拝師委員の発言)。
- 効果
- リスクの早期発見、早期対応
- 内部通報窓口(制度)自体に対する会社のスタンスとして、「従業員が良心に基づいて通報すること」を奨励できる
- 仮に現時点で通報が寄せられていない理由が、通報者が不正等に加担させられている場合に自身への懲戒処分を恐れて通報に躊躇しているとき、あるいは上長から口止めされている場合等に通報が寄せられやすくなる
- 懸念点
- 従業員への周知方法を誤ると、「告げ口制度」といった認識で浸透してしまうこと
- 内部通報窓口(制度)を所管する部署のみならず、懲戒処分を決定する機関(賞罰委員会等)との調整を疎かにすると、リニエンシー制度自体が形骸化してしまうこと
- 退職者
退職者に対する損害賠償請求の事例を基にした視点 - 役員等
取締役兼従業員(使用人兼務役員)が会社法違反の事実等を行政機関や週刊誌に告発したところ、取締役を解任された事案を基にした視点 - 取引先事業者
フランチャイズ加盟店のオーナーが、本部社員の不正について本部に詳しい説明を求めた後、本部からフランチャイズ契約を解除された事案を基にした視点 - その他(同業者や従業員の家族等)
- 評価の基準
- ガイドラインへの適合度合
- 経営者のコミットメントの程度
- 内部通報制度の担当者のスキル
- 評価の方法
- 中立公正な第三者機関による評価
- 各評価項目の裏付け資料や実地確認
- 申請内容が虚偽である場合の認証の取消・公表等
- 認証等の有効期間の設定
- ボトムアップの評価とプルアップの評価の併用
- 評価結果の活用
- 消費者庁や関係機関のウェブサイトにおいて優良企業名の掲載
- 消費者、取引先、株主・投資家、行政機関および地域社会等へのPR
- 従業員や就職活動中の学生等へアピール
- 認証制度の段階
大企業と中小企業では内部通報制度に振り向けることのできるリソースに差があるため、認証制度自体も大企業が目指すべき水準と、中小企業が目指すべき水準との間には、均衡を考慮した段階(一例として企業規模に応じた基準による認証など)が必要になるものと思われます。 - 通報の受付と通報対応(通報対応)の区分け
通報窓口(電話やメールを受け付ける窓口)と通報対応(事実確認のためのヒアリングや被通報者への指導等の管理、通報者へのフィードバック等)を同じ部署で行う場合には一連の認証制度によるものが考えられます。一方、通報窓口を外部委託している場合には、その外部委託先についても認証制度の有無を確認できるようにし、外部委託する際の判断基準とすることも一定の効果が見込めると思われます。 - 認証制度の実効性のある運用の継続
事業者のインセンティブが認証を得ることに偏重してしまった場合、形だけの対応(一過性の取組)となってしまい、認証制度自体が形骸化してしまうことが懸念されます。そのため、例えばプライバシーマーク制度のように、継続した実地審査を制度に盛り込むなどの方法が考えられます。
※検討会の構成員である拝師委員は、全国消費者行政ウォッチねっと事務局長で弁護士。
こうした議論を経てきたリニエンシー制度になりますが、実際の運用に際しては事前の社内検討が不可欠です。現時点で考えられる効果と懸念点は以下の点が中心になるかと思われます。
貴社においてリニエンシー制度の導入・運用にかかる課題を洗い出し、今から検討を進めていくことが有効かと思われます。
次に、「②通報制度を利用できる者を退職者や取引先従業員などに広げること」については、第1回WGにて議論された内容が第2回の配布資料(『資料1「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」第1回ワーキング・グループ資料』および『資料2第1回WGにおける意見の整理』)として公表されておりました。そこでは以下の検討の対象となる属性と根拠となる視点が挙げられております。
内部通報制度を利用することのできる範囲をどこまで拡大するのかについては、現時点で意見の分かれるところです。公益通報者保護法においては、通報制度を利用できる者を労働基準法第9条に規定する労働者としていることから、内部通報制度においても同様に「労働者」のみに限定することは一定の合理性があるものと考えることができます。
一方で、内部通報制度の目的のひとつとして「リスクの早期発見・早期対応」あるいは「組織の自浄作用の維持・強化」という側面がある以上、内部通報制度を利用することができる範囲を可能な限り拡大することは、このような目的に即していると考えることもできます。いずれにしましても、WGでの議論は、公益通報者保護法(主に第3条「無効」や第5条「不利益取り扱いの禁止」)に手を加えることで、退職者、役員、取引先あるいは家族等に範囲を拡大する方向で検討していることは間違いなさそうです。
そのため、基本的には内部通報制度においても、こうした方向性を踏まえた議論が求められるでしょう。しかしながら、内部通報制度における議論は、こうした不利益取扱いの未然防止という観点に加えて、通報制度を利用できる者を拡大することで、どのようなリスクを吸い上げ、早期に対応していけるのかという効果の部分と、同時に懸念点も踏まえて検討する必要があるものと思われます。
例えば、退職者については退職者が通報したところ被通報者(事業者)から損害賠償が請求された事案(新聞社への告発により新聞社が週刊誌の記事として掲載したところ、被通報者に名誉棄損を理由として損害賠償請求された事案)を基に、損害賠償請求を違法とする(公益通報者保護法第5条「不利益取扱いの禁止」に加える)方向性でWGでの議論が進んでいます。しかし、そもそも内部通報制度における退職者の位置づけの考え方のひとつとしては、社内の「シガラミ」が無くなり、これまで言いたくても言えなかった事案について通報する可能性のある者と捉えることができ、こうした側面からは通報制度を利用できる者として取り扱うことも不自然なことではありません。一方、通報が寄せられた場合の事実確認は、退職後の時間経過とともに在籍中の従業員より難しくなることが懸念されます。このような両側面を踏まえれば、退職後一定期間(例えば1年間)経過後は対象から外すといった考え方もあります。
最後に「③積極的に取り組む企業にお墨付きを与える認証制度も新設する方針」については、検討会が本年3月に公表した「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会 第1次報告書 以下、『第1次報告書』」において言及されています。その中では、認証制度の目的として「実効性のある内部通報制度の整備・運用の促進を図るため、ガイドライン等にのっとった適切な取組を行う事業者を認証等し、消費者、取引先、株主等のステークホルダーからの評価・信頼の向上につなげることによって、事業者のインセンティブを高め、(中略)内部通報制度を整備・運用している事業者が高く評価され、消費者・取引先からの信頼、企業ブランドの向上、金融市場からの評価、公共調達における評価、優秀な人材の確保等につなげていく」としています。また、認証制度については第1次報告書において以下の視点が挙げられています。
ここからは筆者の推測の域を出ませんが、認証制度に関して上記内容に加えて必要と思われる視点を挙げていきたいと思います。
以上のように、現行の内部通報制度指針(ガイドライン)における「利益相反関係の排除」や「フィードバック」についての検証のみならず、今後ガイドラインの改正に伴い検討が必要と思われる「リニエンシー制度」、「企業の認証制度」、「経営トップからのメッセージ」、「通報者の匿名性担保に関する体制整備」、「通報内容に対する事実確認における工夫」、「通報者に対する不利益取扱いを行った場合の懲戒処分、あるいは「通報制度を利用できる者の拡大」について、今から少しずつ検討し始めていくことが肝要です。
その際、注意していただきたいのは、公益通報者保護法が規定する内容、コーポレートガバナンス・コードの要請、そして株主・取引先・従業員等のステークホルダーとの関係性です。例えば、公益通報者保護法は、あくまでも公益通報に対する規定であり、民事ルールであることから、内部通報制度を直接的に規定するものではありません。そのため、内部通報制度においては法の趣旨とガイドラインを踏まえつつも貴社なりの自律的な制度設計が必要になります。これらとの距離感を適切に保ちつつ、貴社の内部通報制度がどのようにしてその目的(例えば、リスクの早期発見・早期対応や組織の自浄作用の維持強化)を果たしていくのか、すなわち貴社のリスク判断事項としてどこに力点を置くのかについて、一度貴社内で検討の場を設けることをお勧めします。