2024/11/18
危機管理トピックス
【省庁別記事(前半)】
【首相官邸】
【2024年10月】
首相官邸 「闇バイト」に関する石破総理からのメッセージ
- 「闇バイト」ね。SNSで楽に小遣い稼げるって詳しい内容も言わないで、仕事の募集して、実は強盗とか詐欺とか募集するってやつですよね。
- どういう広告かというと、「簡単な仕事ですよ」「誰でもできますよ」「リスクないですよ」「すぐに儲(もう)かりますよ」そんな広告ですが、世の中にそんな仕事があるわけない。楽に・誰でも・短い期間でたくさん稼げる、そんな仕事なんてありません。
- こんな怪しい募集には絶対乗ってはいけません!警察に捕まった人もいっぱいいますよ。一生を棒に振ることになってしまいますよ。
- 「仕事の内容がよくわからない」「やり取りがすぐに消えるアプリで個人情報を送信させる」そういう怪しい求人には絶対に応募してはいけません。
- でも、住所なんかの個人情報を送っちゃった人、逃げたら何されるかわからない。そうやって困っている人もおられると思います。そういうときは絶対に抜け出してください。警察に相談してください。警察はそうやって相談に来た人、そういう人たちの安全は絶対に守ります。
- あなたの大切な人生です。軽い気持ちで人生を壊してはいけません。「簡単な仕事」「誰でもできます」「リスクありません」「儲かります」そんな仕事は世の中にありません。もし乗っちゃったら、必ず警察に相談してください。皆さんどうぞよろしくお願いいたします。
▼ そんなバイトないから!それ「バイト」ではなく犯罪です。(政府広報オンライン)
▼ 『闇バイト』の真実 高額報酬をうたう犯罪実行役の募集(政府広報オンライン)
▼ 「闇バイト」は犯罪実行者の募集です(警察庁HP)
首相官邸 首相官邸ホームページの偽サイトに御注意ください(注意喚起)
- 首相官邸ホームページになりすました偽サイトの存在が確認されています。
- 偽サイトにアクセスすると、個人情報を盗まれる、コンピューターウイルスに感染する等の被害にあうおそれがあるので、御注意ください。
- 首相官邸ホームページ(日本語)の正しいURLは「https://www.kantei.go.jp/」です。アクセスする前に必ず御確認ください。
首相官邸 「世界津波の日」2024高校生サミットin熊本 石破総理ビデオメッセージ
- 皆様は、「世界津波の日」の由来を御存じかと思います。1854年11月5日の安政南海地震の時、一人のリーダーが、自らの稲むらに火をつけて暗闇の中で逃げ遅れていた人たちを高台に避難させて迫り来る大津波から多くの命を救った「いなむらの火」という逸話があります。
- 大津波で、約2万人もの尊い命を失った東日本大震災を教訓にするため、我が国では、2011年にこの日を法律で「津波防災の日」と定めました。その後、我が国も努力をいたしまして、2015年12月、国連総会において、「世界津波の日」としてこれを制定する決議が満場一致で採択をされたのであります。
- 今年は、お正月を祝う特別な日であった元旦に、1月1日に、能登半島地震が発災し、津波も含めて、大きな被害が生じました。その能登は先月豪雨にも見舞われて、今もなお、懸命な復旧・復興が続いています。
- 地震や津波に限らず、豪雨も、近年、日本のみならず、世界でも激甚化・頻発化しています。各国の災害の経験から得られた教訓を共有し、今後の対策にいかしていくことは、我々の使命です。
- 2016年の熊本地震、2020年の豪雨と大きな災害に見舞われた、ここ熊本で、「熊本の教訓を世界へ、そして未来へ」をテーマとして、高校生サミットが開催されることは大変意義深いものであります。
- これからの未来を担う若い皆さんが、このサミットを通じて深められた知見、相互の絆、これらをいかして、将来、防災や国土強靱化のリーダーとして、国内外で活躍されることをお祈りして、私からの御挨拶といたします。どうぞよろしくお願いいたします。
首相官邸 CEATEC2024オープニングレセプション 石破総理ビデオメッセージ
- 「CEATEC 2024」が、世界各国から数多くの方々の御参加の下、盛大に開催されますことを、心よりお慶(よろこ)び申し上げます。
- 今年でCEATECは記念すべき25回目の開催を迎え、「Innovation for ALL」をテーマとして、経済発展と社会課題の解決につながるデジタル技術を用いた最先端の機器やサービスが展示されると承っております。
- 本年は、AI(人工知能)に特に焦点を当てて、その中核を担うエキスパートの方々が集結されると伺っております。
- 生成AI等の登場によります急激なデジタル化の進化により、世界は新たな時代の変化に直面しております。この変化に対応し、日本経済の活性化と成長を加速させるため、政府といたしましても、イノベーションの促進に一層力を入れてまいります。
- AIを始めとしたデジタル技術は、「コストカット型の経済」から「高付加価値創出型の経済」へと移行するために欠かせない要素です。また、地方におきましても、半導体製造工場などの投資は、既に大きな経済効果をもたらしており、雇用、所得を生み出す牽引役となっております。
- 「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するため、「物価高の克服」、「日本経済・地方経済の成長」、「国民の安心・安全の確保」を柱とする経済対策を実行するよう全閣僚に指示いたしました。皆様方の積極的な経営判断を後押しできますように、成長力に資する国内投資促進に取り組みます。
首相官邸 鳥インフルエンザ関係閣僚会議
▼ 令和6年10月17日会議資料
- 高病原性鳥インフルエンザとは
- 原因(病原体)
- 国際獣疫事務局(WOAH)が作成した診断基準により高病原性鳥インフルエンザウイルスと判定されたA型インフルエンザウイルス
- 対象家きん
- 鶏、あひる、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥及び七面鳥
- 症状・特徴
- 元気消失、食餌や飲水量の減少、産卵率の低下、顔の腫れ、トサカや脚の変色(紫色)、咳、鼻水、下痢。
- 急性例ではこれらの症状を認めず、急死する場合もある。
- ※人獣共通感染症:海外では、家きん等との密接接触に起因する高病原性鳥インフルエンザウイルスの人の感染及び死亡事例も報告。
- 発生状況
- 渡り鳥により国内に持ち込まれることが多く、冬期に発生しやすい。我が国において、直近では、平成26、28、29、令和2、3、4、5年度に発生。
- ※内閣府食品安全委員会によると、「我が国の現状においては、鶏肉や鶏卵を食べることにより、鳥インフルエンザがヒトに感染する可能性はないと考える」としている。
- 渡り鳥により国内に持ち込まれることが多く、冬期に発生しやすい。我が国において、直近では、平成26、28、29、令和2、3、4、5年度に発生。
- 原因(病原体)
- 北海道における高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜発生事例について
- 場所
- 北海道厚真(あつま)町の養鶏農場(肉用鶏)・飼養羽数:約1.9万羽
- 周辺農場
- 3km圏内:2戸、約32万羽3km-10km圏内:3戸、約39万羽合計5戸、約71万羽
- 発生経緯
- 10月16日(水)、北海道厚真町の養鶏農場において、死亡羽数が増加したことを受け、家畜保健衛生所が簡易検査を実施した結果、同日23時40分、A型インフルエンザ陽性と判明。
- そのため、同家畜保健衛生所によりPCR検査を実施。その結果、17日(木)9時45分、疑似患畜と確定
- 場所
- 総理指示(10月16日)を受けた対応について
- 総理指示(10月16日23時42分)
- 鳥インフルエンザと考えられる家きんが確認された場合、農林水産省はじめ関係各省が緊密に連携し、徹底した防疫措置を迅速に進めること。
- 現場の情報をしっかり収集すること。
- 家きん業者に対し、厳重な警戒を要請するとともに、予防措置について適切な指導・支援を行うこと。
- 国民に対して正確な情報を迅速に伝えること
- 対応
- 関係省庁(消費者庁、警察庁、総務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省及び防衛省)と連携し、都道府県が実施する防疫措置(当該農場の飼養家きんの殺処分及び焼埋却、移動制限区域・搬出制限区域の設定、消毒ポイントの設置等)について、職員の派遣等、必要に応じた支援を実施。(また、環境省において発生農場周辺半径10kmを「野鳥監視重点区域」に指定し、県に野鳥の監視を強化するよう要請。)
- 農林水産省政務による都道府県知事との意見交換を実施するとともに、疫学、野鳥等の専門家からなる疫学調査チームを派遣。
- 全都道府県に対し、鳥イン鳥インフルエンザの早期発見及び早期通報並びに飼養衛生管理の徹底を改めて
通知し、家きん農場における監視体制の強化を実施。併せて、経営支援対策を周知。 - 消費者、流通業者、製造業者等に対し、鳥インフルエンザに関する正しい知識の普及等(鶏肉・鶏
卵の安全性の周知、発生県産の鶏肉・鶏卵の適切な取扱いの呼び掛け等)を実施。
- 総理指示(10月16日23時42分)
- 高病原性鳥インフルエンザの発生状況
- 昨シーズン(R5)は、野鳥における感染事例が数多く確認された中、家きんにおける発生は10県11事例と大幅減少。
- 専門家からは、R4シーズンの大規模発生も踏まえた、農場における飼養衛生管理の向上も寄与しているとの指摘。
- 高病原性鳥インフルエンザ対策
- 令和6年度シーズンに向けて、引き続き、発生時の防疫措置に備えて万全を期すことができるよう都道府県等と連携するとともに、発生予防対策の強化、発生時の速やかな対応、発生農場の家きんの再導入に向けた指導に取り組んでいるところ。
- 農場や地域一体となった発生予防対策の強化
- 令和5年度シーズンの疫学調査、調査研究で得られた知見を現場での発生予防対策に活用。
- 第三者の視点による、飼養衛生管理基準の遵守状況の正しい評価・理解
- 過去に発生のある農場・地域において発生リスクが高くなることを念頭に置いた農場での警戒及び地域的な対策の徹底
- 地域一体となった農場周辺地域におけるカラス等の野鳥や猫・イタチ等の小動物の誘引防止対策
- 野鳥における鳥インフルエンザ感染状況の監視と警戒の呼びかけ
- 発生時の速やかな対応
- 関係省庁と連携した迅速な防疫措置(通行制限・遮断、円滑な消毒ポイントの設置、防疫作業従事者の健康管理、大規模農場での発生に伴い災害派遣要請があった際の自衛隊との連携)
- 農場ごとに行う全羽殺処分の羽数を低減させるため、農場の分割管理を活用。マニュアルを基に各農場の実態に即した指導。
- 発生農場の家きんの再導入に向けた指導
- 発生農場が早期に家きんを再導入できるよう、埋却地・焼却施設の確保や飼養衛生管理の指導を実施。
- 飼養衛生管理基準の定期報告のタイミングを活用し、飼養衛生管理基準の遵守徹底を図るとともに、特に埋却地や焼却施設の事前確保を指導。
- 大規模農場においては、事前に策定する対応計画について農場自ら防疫措置に協力することを推進。
- 農場や地域一体となった発生予防対策の強化
- 令和6年度シーズンに向けて、引き続き、発生時の防疫措置に備えて万全を期すことができるよう都道府県等と連携するとともに、発生予防対策の強化、発生時の速やかな対応、発生農場の家きんの再導入に向けた指導に取り組んでいるところ。
- 家きんにおける高病原性鳥インフルエンザ疑い事例に係る環境省の対応について
- 北海道厚真町の農場における高病原性鳥インフルエンザの疑い事例への環境省の対応は、以下のとおり。
- 発生農場周辺半径10kmを「野鳥監視重点区域」に指定し、北海道に野鳥の監視を強化するよう要請を行う。
- 環境省北海道地方環境事務所に、北海道と連携し、現地周辺の野鳥に関する情報収集を行うよう指示する。
- 北海道と調整の上、野鳥での感染状況の把握等を目的とした鳥類相調査を実施する
- 北海道厚真町の農場における高病原性鳥インフルエンザの疑い事例への環境省の対応は、以下のとおり。
首相官邸 基本方針
- 国民の納得と共感を得られる政治を実現し、日本を守り、国民を守り、地方を守り、若者・女性の機会を守る。すべての人に安心と安全をもたらす社会を実現する。その強い覚悟の下、内閣の総力を挙げて、以下の政策を推し進める。
- 日本を守る
- 激変する安全保障環境から日本を守り抜くため、国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化に取り組むとともに、現実的な国益を踏まえた外交により、日米同盟を基軸に、友好国・同志国を多く獲得し、外交力と防衛力の両輪をバランス良く強化し、我が国の平和、地域の安定を実現する。自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下、法の支配に基づく国際規範を形成し、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導する。北朝鮮による拉致被害者の帰国実現に取り組む。あわせて、自衛官の処遇改善等に取り組む。経済安全保障、サイバーセキュリティの強化に取り組む。
- 子育て支援に全力を挙げるとともに、地方によって異なる少子化をめぐる状況にも目を向け、若者・女性に選ばれる地方、多様性のある地域分散型社会づくりを目指す。
- 経済あっての財政との考え方に立ち、デフレ脱却最優先の経済・財政運営を行う。成長分野に官民挙げての思い切った投資を行い、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進める。コストカット型経済から高付加価値創出経済への転換、持続可能なエネルギー政策、イノベーションとスタートアップ支援を推進し、力強く発展する、危機に強靱な経済財政を実現する。
- 国民を守る
- 賃上げと人手不足緩和の好循環に向け、生産性と付加価値の向上、実質賃金の増加を実現する。多様な人生の在り方、多様な人生の選択肢を実現できる柔軟な社会保障制度を構築する。
- 東日本大震災、能登半島地震をはじめとする大規模災害からの復興に全力で取り組むとともに、防災・減災、国土強靱化の取組を加速する。巨大自然災害や頻発化・激甚化する風水害に対処し、国民を守るための体制整備を進める。
- 万一、大規模な自然災害、テロ、感染症など、国家的な危機が生じた場合、国民の生命、身体、財産を守ることを第一に、政府一体となって、機動的かつ柔軟に全力で対処する。
- 地方を守る
- 「地方こそ成長の主役」との発想に基づき、少子高齢化や人口減少にも対応するため、地方創生2.0を起動するべく、集中的に取り組む基本構想を策定し、実行する。農業・漁業・林業を振興し、あわせて、観光産業の高付加価値化、文化芸術立国に向けて取り組む。
- 若者・女性の機会を守る
- あらゆる人が最適な教育を受けられる社会をつくるとともに、あらゆる組織の意思決定に女性が参画するための取組を推進し、若者・女性、それぞれの方々の幸せ、そして人権が守られる社会を実現する。
首相官邸 総合経済対策の策定について(内閣総理大臣指示)
- 能登地域においては、一月の地震や先般の大雨により多くの方々が被災し、厳しい状況に置かれております。被災地のニーズや被災者の方々の声をよく踏まえながら、早期の復旧・復興に向けた対応に万全を期してまいります。十月中旬を目途に追加の予備費措置を講ずるよう、関係大臣間で調整してください。その後も、切れ目なく、被災地の必要な支援に取り組みます。
- 全ての人々が安心と安全を感じられる未来を創るためには、物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現しなければなりません。我が国経済は、五・一〇パーセントの賃上げ、最低賃金の過去最大の引上げ、名目百兆円超の設備投資、名目六百兆円を超えたGDPなど、新型コロナを乗り越えて改善を続けていますが、GDPの五十四パーセントを占める個人消費は力強い回復には至っていません。好循環を後戻りさせることなく、デフレからの脱却を確実なものとするため、三年間の集中的な取組が必要です。
- こうした考え方のもと、足元で物価高に苦しむ方々への支援、デフレ脱却を確かなものとするための成長力強化、災害対応を含む安心・安全の確保といった重要課題に速やかに対応することを目的として、「総合経済対策」を策定します。
- 経済対策の柱は、第一に、物価高の克服です。物価上昇を上回って賃金が上昇するといった成長と分配の好循環が確実に回り出すまでの間、足元で物価高に苦しむ方々への支援が必要です。当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を始め、総合的な対応を図ります。構造的な対応として、家庭・住宅の省エネ・再エネなどエネルギーコストの上昇に強い社会の実現に向けた対応も図ります。
- 第二に、日本経済・地方経済の成長です。ICT技術も活用して、新たな地方創生施策の展開(「地方創生二・〇」)を図ります。食料安全保障の観点を踏まえた農林水産業の支援のほか、地方のサービス業、観光などの各分野において、地方の潜在能力を最大限に引き出す取組を進めます。中堅・中小企業の賃上げ環境の整備として、省力化投資の促進や価格転嫁の徹底等を進め、賃上げの継続を支援します。科学技術・イノベーション、半導体・経済安全保障、GX、DX、スタートアップなど、成長力に資する国内投資促進に取り組みます。
- 第三に、国民の安心・安全の確保です。能登地域を始めとする自然災害からの復旧・復興に全力を尽くします。今後も想定される災害への備えに万全を期すため、防災体制の抜本強化や避難所環境の整備など防災・減災、国土強靱化の取組を進めます。外交・安全保障環境への変化にも的確に対応します。こども・子育て支援を含め、誰も取り残さない社会の実現にも取り組みます。
- 以上三つの柱に沿って、経済財政政策担当大臣を中心に、与党とも十分連携して、具体的な施策の検討を進めていただきますようお願いいたします。来るべき総選挙後、速やかに経済対策を決定して補正予算を提出いたします。取りまとめに当たっては、課題の性質に応じて、規制・制度改革や財政投融資の手法なども積極的に活用してください。財政措置を伴うものについては、財務大臣と十分に内容を協議願います。
- 閣僚各位におかれましては、国民の皆様の声を聞き、与党とも十分連携して、施策の具体化に取り組んでいただくよう、よろしくお願い申し上げます
【2024年9月】
首相官邸 岸田総理は日経リスキリングサミットに出席しました
- このサミットには、2022年から3年連続で参加させていただいております。私の掲げた新しい資本主義の考え方の下で、人への投資は、大変重要な位置付けを占めています。政府として、ジョブ型人事の導入、労働移動の円滑化、リ・スキリングによる能力向上支援、この3つからなる、三位一体の労働市場改革を進めてきましたが、これらの改革を社会に根付かせる観点から、このサミットは大きな役割を果たしています。3年前、初めてこのサミットに出席させていただいた当時、まだリ・スキリングという言葉自体が、日本の経済社会において十分に定着していなかった。こんな雰囲気を考えますときに、この3年間の変化は大変大きなものがあったと思っています。本日も、議論が大いに盛り上がりますことを期待しております。
- さて、総理就任以来、新しい資本主義の下で、成長と分配の好循環を目指してきました。過去30年間日本を覆い続けた低物価、低賃金、低成長、縮み志向のデフレ型経済から抜け出し、成長型経済に移行していくこと。これを何としても実現しなければならない、こうした強い思いを持って取り組んできました。
- その結果、実に30年ぶりとなる5パーセントを超える春季労使交渉の賃上げ、100兆円を超える攻めの設備投資、海外投資家が評価する企業ガバナンス改革、史上最高値水準の株価、そして名目GDP(国内総生産)も初めて600兆円の大台を超えるなど、新たな経済ステージへの移行の兆しが確実に見えてきています。
- このチャンスを逃さない、絶対に後戻りさせない。こうした強い決意をもって、取組を進めていく必要があります。
- 日本が、この正念場を乗り越えて、成長型経済へと移行していくためには、DX(デジタル・トランスフォーメーション)・GX(グリーン・トランスフォーメーション)などの社会課題解決を成長のエンジンにできるかがカギとなります。
- 非連続的なイノベーションが絶え間なく起こる、DXやGXの潮流は、個人に必要とされるスキルや、労働需要を、大きく変化させることになります。人生100年時代に入り、就労期間が長期化する一方で、DX・GXによって産業の成長・衰退のサイクルが短期間で進む中、働き方は、大きく変化しています。
- キャリアは会社から与えられるものから、一人一人が自らのキャリアを選択する時代となってきました。職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、働き手が自分の意思でリ・スキリングを行え、そして、職務を選択できる制度に移行していくことが重要です。若い方もシニアの方も、年齢にかかわらず、能力を発揮して働くことができる環境整備をしてまいります。
- また、今年に留まらず、来年も、再来年も、持続的な賃上げの定着のためには、春季労使交渉における労使の協力に加えて、労働生産性やマークアップ率の向上を通じた、付加価値の拡大が必要となります。
- 内部労働市場と外部労働市場をつなげ、社外からの経験者採用にも門戸を開き、働き手が自らの選択によって、社内外に労働移動できるようにしていくことが、持続的な賃上げの推進と日本経済の成長のためにも急務であり、ジョブ型人事の導入の重要性がここにあります。
- 先月末には、ジョブ型人事を先行して導入した20社の企業に御協力いただき、導入範囲、等級・報酬制度、採用・キャリア自律支援などが具体的に分かるように情報提供いただいたジョブ型人事指針を策定し、公表いたしました。
- そもそも、我が国では、一旦就職をすると、学び直しをしなくなる傾向がありましたが、その背景には、年功賃金制などの、戦後に形成された人事システムがあります。
- 従来は、新卒一括採用中心、人事異動は従業員でなく会社主導、企業から与えられた仕事を頑張るのが従業員であり、将来に向けたリ・スキリングがいきるかどうかは人事異動次第。従業員の意思による自律的なキャリア形成が行われにくいシステムでありました。
- 先行企業を見ると、ジョブ型人事の導入により、社員のエンゲージメントスコアが向上し、リ・スキリングの受講者が3倍になった例も見られます。本日、御参加の企業の皆様にも、自社のスタイルに合ったジョブ型人事の導入を検討するに当たって、ジョブ型人事指針を参考にしていただければと思います。
- リスキリングサミットの初日は、人的資本経営をテーマに、リ・スキリングに取り組まれている企業の最新事例がいくつも紹介されたと聞いています。
- 政府としても、三位一体の労働市場改革の取組の中で、個人のリ・スキリングを直接支援する施策の強化や、生活安定性を維持したままでリ・スキリングを推進するための環境整備を進めています。
- まず、働く個人が、主体的にリ・スキリングに取り組むことができるように、個人への直接給付である教育訓練給付の給付率を、これまでの最大70パーセントから80パーセントに今年10月から引き上げます。
- また、働く個人自らの選択による労働移動の円滑化という観点から、失業給付制度について、自己都合で離職する場合にも、在職中などからリ・スキリングに取り組んだ場合には、会社都合の離職と同様に給付制限期間なく失業給付が受け取れるよう、雇用保険法の改正を行ったところであり、来年4月から施行いたします。
- さらに、人手不足が目立つ、自動車運送、建設、製造・加工、介護、観光、飲食といった職種について、業界団体などによる民間検定を政府が認定する新たな枠組みを創設いたしました。既存の公的資格でカバーできていなかった産業・職種のスキルの階層化・標準化を進めるとともに、そのスキルの習得を行う場合には、本年秋から、新たに教育訓練給付の対象に追加し、支援を行ってまいります。
- 2日目となる本日は、地方創生とリ・スキリングをテーマに、議論が行われると伺っております。
- これまでも言われてきたとおり、地方経済では、そもそも雇用機会がない、あるいは、職種に見合った人材がいないがリ・スキリングも難しいといった、深刻な課題があると認識しています。
- この課題を乗り越えるために必要なカギが、地方と成長産業の掛け算であると、私は確信しています。
- 例えば、台湾の半導体メーカーが熊本県に工場建設を決定したことをきっかけに、熊本市に、半導体エンジニアを育成するリ・スキリング施設が設けられました。
- また、九州を皮切りに、半導体企業と大学・高専などが参画する産学官連携の半導体人材育成コンソーシアムが、北海道、東北、関東、中部、中国地方など、全国的に次々と組成されております。
- こうした取組は、企業の成長や、賃上げ、雇用の拡大にとっても大きな機会になると同時に、地元経済の成長につながることを期待しています。
- 30年続いた縮み志向から脱却し、日本経済を確実に成長型経済に移行するためには、こうした事例を全国各地で、様々な分野で、増やしていく必要があります。
- 経済対策で措置した7兆円規模の国内投資支援などをフルに活用して、全国で良質な雇用機会が創出されるよう、政府としても取組を進めてまいります。
- 日本全体でリ・スキリングを推し進めていくためには、政府、企業、教育機関、そして個々の働き手の意欲が結集して、三位一体の労働市場改革を進めていくことが不可欠です。
- 本日お集まりの企業、そして個人として参加されている皆様、リ・スキリングによる日本の成長に向けて、共に取り組んでまいりましょう。
- 結びになりますが、今回の日経リスキリングサミットが、官民を挙げた人への投資の起爆剤となること、そしてお集まりの皆様のますますの御健勝、御活躍を祈念し、私からの御挨拶とさせていただきます。御清聴、誠にありがとうございました。
首相官邸 食料安定供給・農林水産業基盤強化本部(第8回)議事次第
▼ 資料4 食品ロス削減・食品寄附促進の取組について
- 食品ロス削減に係る背景とこれまでの取組
- 我が国では、2000年に「循環型社会形成推進基本法」及び「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」が制定され、食品ロス削減を推進してきたが、SDGsの国際目標の達成に向け、2019年に議員立法によって「食品ロスの削減の推進に関する法律」を制定。
- 「食品ロスの削減の推進に関する法律」に基づき、2020年3月末に「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」を閣議決定。事業系食品ロス及び家庭系食品ロスそれぞれで、2000年度比で2030年度までの半減目標を設定。
- 直近(2022年度)の食品ロス量は着実に減少。特に事業系食品ロスについては、半減目標(2030年度までに273万トン)を達成。家庭系食品ロスは半減目標(2030年度までに216万トン)まであと20万トン。
- 2023年12月22日取りまとめの「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」や、2024年7月2日の食品ロス削減推進会議における総理指示(事業系食品ロスの「新たな目標」の議論、食品事業者及び自治体における取組状況の開示の強化、官民による「食品寄附促進のためのガイドライン」の作成、食品の期限表示のあり方の見直し、「『食の環』プロジェクト」の推進等)を踏まえ、
- 年度末の基本方針の5年後見直しへ反映する。
- 食品寄附等に関するガイドライン案(概要)
- 食品寄附への社会的信頼を高め、食品寄附活動の促進に寄与するため、一定の管理責任を果たすことができる食品寄附関係者(寄附者、仲介者(フードバンク、フードパントリー等))を認定する仕組みなどにより特定するための食品寄附に関するガイドラインを官民協議会における議論を通じて作成する。
- ガイドラインの記載項目
- 総論部分
- ガイドラインについて、目的、食品寄附の意義、対象範囲、用語の定義、寄附に関する手続きを含む関係者の役割と責務、関係法令の適用関係、保険の活用、データ・システム活用などの項目を想定
- 各論部分
- 主体ごとに、それぞれが整備すべき体制、ガバナンス、提供先・提供元の選定、契約上の留意点、衛生面等の管理、提供時の注意、トレーサビリティ、事故時の対応、情報管理・財務管理、国・自治体等による支援・連携、中長期的課題などの項目を想定
- 総論部分
- 「食の環(わ)」プロジェクトに向けた施策の全体像(概要)
- 食品ロス削減
- 排出削減の取組(公表・商慣習見直し・国民運動等)
- 食品寄附の促進(期限表示、保険、DX)
- フードバンク・こども食堂等を介した食品寄附への支援(食品寄附ガイドライン作り、フードバンク・こども食堂等の活動支援等)
- 食べ残し持ち帰り促進(持ち帰りガイドライン作り)
- (食品の)経済的アクセス
- 食料提供に向けた体制づくり(地域の関係者が連携して取り組む協議会の設置等支援)
- 食料提供に資する体制づくり(食料支援等を通じたつながり創出)
- フードバンク・こども食堂等を介した食品寄附への支援(食品寄附ガイドライン作り、フードバンク・こども食堂等の活動支援等)
- フードバンク・こども食堂等への食料提供(備蓄米無償交付等)
- (食品の)物理的アクセス
- 食料提供に向けた体制づくり(地域の関係者が連携して取り組む協議会の設置等支援)
- 移動販売等の拠点となる施設整備
- 店舗への交通手段の確保
- 移動販売等で店舗を届ける
- 商品を届ける(ラストワンマイル配送支援等)
- 食品アクセスの状況や対策事例等
- 食品ロス削減
首相官邸 第1回 災害時における地下水等活用推進に向けた有識者会議 議事次第
▼ 令和6年能登半島地震の概要
- 令和6年1月1日16時10分にマグニチュード7.6、深さ16kmの地震が発生し、石川県輪島市、志賀町で震度7を観測したほか、北海道から九州地方にかけて地震を観測
- この地震により石川県能登地方に対して大津波警報を、山形県から兵庫県北部を中心に津波注意報を発表し、警戒を呼びかけ
- 地震による建物の倒壊・損壊に加え、輪島市では市街地の火災による「複合災害」が発生
- 石川県珠洲市、能登町及び志賀町の3市町、新潟県上越市では津波により約200ha浸水
- 石川県、富山県、新潟県の広い範囲で、液状化による被害が発生
- 道路、上下水道施設を中心に甚大な被害が発生
- 耐震化未実施等により、浄水場や配水池、処理場に直結する管路など、上下水道システムの基幹施設が被災したことにより、広範囲での断水や下水管内の滞水が発生するとともに、復旧の長期化を生じさせた
- 被災市町村からの要請に基づいて、全国からの給水車による給水活動が展開された
- 国土交通省地方整備局の計22台の給水機能付き散水車により給水支援を実施
- 水資源機構が珠洲市に設置した「可搬式浄水装置」2台により1月12日から飲料水供給拠点として供給
- 石川県羽咋市では、能登半島地震発生翌日の1月2日に、防災情報「利用できる井戸水の案内について」のメール(羽咋市安全・安心メール)を市民に発信。1月23日現在、32箇所の井戸水を紹介。
- 能登半島地震発災直後より、井戸(地下水)を代替水源として活用した七尾市を対象に、有識者が3月2日(土)に地下水活用状況調査を実施。
- 断水が長期間に及ぶ中、市民や事業者が主体的に所有井戸を開放。
- 地元専門学校や地域住民が主体となり、発災後に生活用水確保のため、井戸を新設した事例もあり。
- 近年、災害が激甚化・頻発化する中で、大規模災害時における水源の確保は全国の地方公共団体に共通する喫緊の課題
- 令和6年能登半島地震の経験を踏まえ、災害時の代替水源確保のための実効的な取り組みを推進する
- 被災地での水利用調査結果
- 水道が整備される以前に利用されていた井戸が複数点在しており、今回確認出来た既設井戸は、349箇所あり、うち発災後に活用された既設井戸は、25箇所(7%)であった
- 自噴井戸や湧き水などを含めた水源全体で、476箇所あり、うち発災後に活用された水源は、88箇所(18%)であった
- 活用された水源の約半数は湧水であり、その有効性が確認できた
- また、七尾市では「自噴井戸」が自発的に開放された事例が多く見受けられた
- 一方、発災後に整備された新設井戸が期待した水量が得られず、活用に至らなかった事例も見られた
- 今回全ての水源を確認できた訳ではないが、各市町において災害時に活用し得る水源が多く分布していることを確認できた
【衆議院/参議院】
※現在、該当の記事はありません。
【内閣府】
【2024年11月】
内閣府 男女共同参画局 「女性に対する暴力をなくす運動」について
▼ 令和6年度「女性に対する暴力をなくす運動」実施要綱
- 目的
- 暴力は、その対象の性別や加害者・被害者の間柄を問わず、決して許されるものではないが、特に、配偶者等からの暴力、性犯罪・性暴力、ストーカー行為、売買春、人身取引、セクシュアルハラスメント等の暴力は、重大な人権侵害であり、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題である。
- この運動は、都道府県、市区町村、男女共同参画推進連携会議、関係団体、有識者等との連携、協力の下、社会の意識啓発等、女性に対する暴力の問題に関する取組を一層強化することを目的とする。
- 特に、女性に対する暴力の根底には、人権の軽視があることから、人権の尊重のための意識啓発や教育の充実を図ることとする。
- 実施期間
- 令和6年11月12日(火)から11月25日(月)までの2週間(11月25日は「女性に対する暴力撤廃国際日」)
- 主唱
- 内閣府、内閣官房、警察庁、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
- 協力を依頼する機関・団体等
- 都道府県、市区町村、男女共同参画推進連携会議、関係団体、有識者等
- 運動の重点
- 次の事項に重点を置く。
- 「女性に対する暴力根絶のためのシンボルマーク」や「パープルリボンバッジ」を積極的に活用するなどにより、配偶者等からの暴力、性犯罪・性暴力、ストーカー行為、売買春、人身取引、セクシュアルハラスメント等は決して許されないものである、との社会認識を更に醸成すること。
- 暴力の「未然防止」や「拡大防止」に向けた意識を高めるとともに、暴力の被害に遭っていながらその自覚がない人に被害を受けていることを認識してもらい、被害者や関係者が、相談窓口等の必要な情報を入手し、ためらうことなく相談できるようにすること。
- 次の事項に重点を置く。
内閣府 脳卒中や心臓病等に関する世論調査(令和6年7月調査)
- あなたは、脳卒中や心臓病等についてどのような印象を持っていますか。(○は1つ)
- 怖い印象を持っている(小計)95.7% (怖い印象を持っている72.5%、どちらかといえば怖い印象を持っている23.2%)
- 怖い印象を持っていない(小計) 2.2% (どちらかといえば怖い印象を持っていない 1.1%、怖い印象を持っていない 1.1%)
- 脳卒中や心臓病等を怖いと思う理由は何ですか。(○はいくつでも)
- 死に至る場合があるから82.1%
- 日常生活の中で、突然、発症するから78.5%
- 麻痺や喋りにくさなどの後遺症が残る場合があるから73.1%
- 治療や療養には、家族や親しい友人などに負担をかける場合があるから52.5%
- あなたは、脳卒中や心臓病等の予防のために、生活習慣の改善をしようと思っていますか。(○は1つ)
- 既に改善を始めて6ヶ月以上である37.8%
- 既に改善を始めて6ヶ月未満である 7.5%
- 1ヶ月以内に改善をしようと思っている10.3%
- 6ヶ月以内に改善をしようと思っている10.5%
- 改善しようと思っていない31.6%
- 生活習慣をすぐに改善しようと思わない理由は何ですか。(○はいくつでも)
- 病気の自覚症状がないから52.3%
- 生活習慣を改善するための時間的なゆとりがないから30.2%
- 生活習慣を改善するための経済的なゆとりがないから22.5%
- 生活習慣を改善することがストレスになるから21.5%
- その他15.2%
- 脳卒中や心臓病等の予防のために、普段の生活で心がけていることは何ですか。 (○はいくつでも)
- 野菜をたくさん食べるようにしている54.7%
- 体を動かすようにしている49.0%
- 食塩を取り過ぎないようにしている48.8%
- あなたは、現代の日本の社会が、脳卒中を発症した後にも働き続けられる環境だと思いますか。 (○は1つ)
- そう思う(小計)21.6% (そう思う 4.8%、どちらかといえばそう思う16.8% )
- そう思わない(小計)77.1% (どちらかといえばそう思わない51.3%、そう思わない25.8%)
- 働き続けることを難しくさせている理由は何だと思いますか。 (○はいくつでも)
- 後遺症のために日常生活における動作などが変化したことに対する職場の環境が整っていないから75.6%
- 治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから55.1%
- 治療・検査と仕事の両立が精神的に困難だから50.0%
- 体調が悪いときに職場が休むことを許してくれるかどうか分からないから30.9%
- あなたは、脳卒中や心臓病等について、政府として、どういったことに力を入れてほしいと思いますか。(○はいくつでも)
- 脳卒中や心臓病等を発症した際に治療できる医療機関の充実74.1%
- 脳卒中や心臓病等を発症した後のリハビリテーションの充実71.6%
- 脳卒中や心臓病等を発症した後にも仕事や学校を続けられるための環境整備57.5%
- 脳卒中や心臓病等を発症したときの救急搬送の体制整備57.2%
内閣府 令和6年第13回経済財政諮問会議
▼ 資料1 足下の経済状況と今後の課題(内閣府)
- 2024年4-6月期は2期ぶりのプラス成長。先行きについても、賃上げを始めとする所得の増加、堅調な設備投資を背景に、緩やかな成長が見込まれ、マクロでみた需給の改善が進むことが期待される。消費者物価は、輸入物価の上昇が緩やかになる中で、2025年度には前年比2%程度の上昇となる見通し。
- 個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる一方で、依然として、力強い回復には至っていない。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。低所得者を中心として、消費者マインドの改善に足踏みが残ることに留意。収入に対して生活必需品への支出シェアが高く、物価上昇の影響を大きく受ける低所得者へのきめ細かい配慮が求められる。
- 設備投資は、名目では過去最高を更新しているが、物価上昇の影響もあり、実質ベースの伸びは緩やか。直近10年間のストックの伸びをみると、無形資産の伸び率は鈍化。中小企業では、人手不足感が顕著となっており、特に、省力化投資の取組が期待される。
- 20年間でみると、経常利益が増加する中、配当及び内部留保は、それを上回るペースで大きく増加。一方、設備投資
- 及び人件費は、概ね横ばい。労働分配率は、緩やかに低下する傾向。経常利益の増加が、賃上げや設備投資の増加にも繋がるよう、経営マインドの更なる変革が期待される。
- 1990年代以降、消費者物価上昇率が落ち込んでいる時期を除いて、それを上回るベースアップは実現していなかったが、今年の春季労使交渉では、33年ぶりの高い賃上げとなる中、物価上昇率を上回るベースアップも実現する見込み。足下(2024年8月)で、実質賃金は前年比でマイナスとなったが、今後、高水準の賃上げが浸透していく中で、プラスに転ずることが期待される。我が国の実質賃金の伸びは、長年にわたり、労働生産性の上昇よりも低い水準で推移してきている。労働生産性の上昇に応じ、物価上昇率を上回る賃上げを継続することが期待される。
- 本年の最低賃金の全国加重平均は過去最大の引上げとなり、地域差も縮小。他方、我が国の最低賃金は、諸外国と比較すると、フルタイム労働者の賃金中央値に比べて低水準。また、若い世代では、最低賃金水準が高い地域への流入が進む傾向がみられる。引き続き、最低賃金の引上げを進めるとともに、地方創生の観点から、地域差を縮小していくことが期待される。
- 賃上げを行う中小企業は増えているが、その約6割以上は防衛的賃上げ(業績の改善がみられない中での賃上げ)。価格転嫁については、発注企業からの交渉申し入れも浸透しつつある。その流れを継続・拡大させ、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させることによって、中小企業の賃上げ環境を整備していくこと求められる。
- 我が国の潜在成長率は0.6%程度と、他のG7諸国に比べて低い。我が国の潜在成長率の先行きは、労働力人口の減少に伴い労働投入のマイナス寄与が見込まれている。潜在成長率を高めていくためには、生産性を向上させることが必要。我が国の労働生産性は、国際的にみて低い水準。資本の老朽化も進んでいる。人への投資、設備の更新、業務オペレーションの改善などにより、労働と資本の効率性を高めていくことも期待される。
- 地域ごとの特色を活かし、地域産業の高付加価値化を進めることによって、労働生産性を高め、我が国全体の成長力の底上げにつなげていくことが期待される。2050年までの人口推計をみると、都市部では高齢者人口が増加する一方、地方部では生産年齢人口・高齢者人口ともに減少する見通し。それぞれが直面する課題に応じた取組を計画的に進めていくことが求められる。
- 金融資本市場は、8月上旬に世界の株式市場における株価が変動する中、日本の株価も大きく変動。引き続き、株式・為替市場の動向やそれらが実体経済に与える影響を注視していく必要。「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現に向け重要となる経済・金融環境の安定に向け、市場との丁寧な対話が期待される。
▼ 資料2 「日本創生」に向けた新政権の課題(有識者議員提出資料)
- 石破総理は、岸田前政権の経済財政政策を踏襲し、「経済あっての財政」との考え方の下、デフレ脱却最優先の経済・財政運営を行い、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するとともに、イノベーション、スタートアップ支援の強化と生産性向上を通じて、コストカット型経済から高付加価値創出型経済へ移行する方針を示された。
- 政策運営の基本方針と重要政策への取組
- この移行に向けて、国民の安心・安全の確保を基盤としつつ、資料5で提言する適切なマクロ経済財政運営、地域資源を中心とした新たな価値の創造、物価上昇を上回る賃金向上、投資立国実現による付加価値生産性の向上を一体的に推進する必要がある。
- 以下の重要政策に取り組むことで、健康で文化的な生活を営める水準を全国で確実に実現し、国民の暮らしを守りながら、経済成長を実現していくべき。
- 地方創生
- 地方創生なくして成長型経済・高付加価値創出型経済の実現はあり得ない。これまでの成果と反省を活かし、地方創生の取組を再活性化すべき。諮問会議では、持続可能な地方経済の構築の観点から議論すべき。
- 本年中に取りまとめる「基本的考え方」に基づく全国各地の独自の取組を一層強力に支援するため、国は、地方創生交付金を梃子とすることに加え、特区制度、企業版ふるさと納税、企業の地方移転、二地域居住の促進等をトータルパッケージで取り組むことが重要。これにより地方に“しごと”を創出し、若者・女性に選ばれる地方の創出につなげるべき。
- 特に、デジタル技術を最大活用し、自治体情報システムの標準化や共通化を徹底しつつ、地域資源のアナログ価値をデジタル化・マネタイズする「地方創生×デジタル」の好事例を発掘し、国・地方で一体となって横展開に取り組むべき。また、地方文化都市の創出、海外活力の取り込み(投資誘致の促進、インバウンド活性化、コンテンツツーリズム)など地域の特色を踏まえた取組を講じることで地方の魅力を引き出し、付加価値を生むべき。
- 各地域の多様なステークホルダーの参画による地方の自主的・主体的取組を促すため、広域連携の推進や土地利用規制の見直しなど、地方自ら提案・実現していける環境を整えるべき
- 地方創生なくして成長型経済・高付加価値創出型経済の実現はあり得ない。これまでの成果と反省を活かし、地方創生の取組を再活性化すべき。諮問会議では、持続可能な地方経済の構築の観点から議論すべき。
- 賃金向上、人手不足対応
- 我が国の生産年齢人口は、2040年までの20年間で約2割減少。2030年代に減少が加速し、地方で減少が著しい見込み。安定的な物価上昇とそれを上回る賃金の上昇、人手不足解消に向け、人への投資、成長分野への人の移動、働きたい人が働けるための環境整備等が必要。
- リ・スキリングなど就職氷河期世代も対象とした人への投資強化、女性活躍にもつながる年収の壁等の制度改革、高齢者や外国人等多様な人材の更なる活躍拡大に取り組むとともに、適切な価格転嫁と生産性向上支援等により、賃上げ・最低賃金引上げの定着に向けた環境整備を図るべき。諮問会議として、賃金向上に向けて、マクロ経済の観点から集中的に議論すべき。
- NISAの活用等、貯蓄から投資への流れを進め、「資産運用立国」に向け取組を加速させる。特に、年金制度改革の議論に合わせて、iDeCo(個人型確定拠出年金)の見直しについて結論を得るべき。
- 我が国の生産年齢人口は、2040年までの20年間で約2割減少。2030年代に減少が加速し、地方で減少が著しい見込み。安定的な物価上昇とそれを上回る賃金の上昇、人手不足解消に向け、人への投資、成長分野への人の移動、働きたい人が働けるための環境整備等が必要。
- 投資立国・安定的エネルギー供給
- 成長型経済の実現に向け、「資産運用立国」の政策を引き継ぐとともに、投資立国の実現、持続可能なエネルギー政策の確立、イノベーションとスタートアップ支援の強化に取り組むべき。
- 科学技術・イノベーション、GX、DX、AI・半導体、バイオ等、産業に思い切った投資が行われる「投資立国」に向けた官民連携の取組を加速していくべき。
- 安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定的な供給、経済効率性、環境性のバランス(S+3E)を確保した、最適なエネルギーミックスの実現。
- イノベーション創出や生産性向上の牽引役になりうるスタートアップが絶え間なく生み出され、多数のユニコーン企業を創出する仕組みを構築するべき
- 成長型経済の実現に向け、「資産運用立国」の政策を引き継ぐとともに、投資立国の実現、持続可能なエネルギー政策の確立、イノベーションとスタートアップ支援の強化に取り組むべき。
- ハード・ソフト両面での防災・減災
- 近年災害が頻発化・激甚化し、国民生活や経済活動の大きなリスクとなっている。防災・減災に向けて、災害リスクの低い地域に都市・居住機能を集中するコンパクトシティは、平常時にこそ形成すべき。インフラ整備、備蓄体制整備、避難所環境の整備、ボランティア育成・連携、防災DXなどハード・ソフト両面で防災機能の抜本的な拡充を図り、災害に強いレジリエントな国土の形成とその推進体制の整備を行うべき。
- 地方創生
- 政策運営の基盤としてのEBPM
- 石破内閣における経済財政諮問会議の使命は、関係する会議と連携しながら、経済財政運営全般の「司令塔」の役割を果たすことである。国全体の成長に加え、Well-beingを重視し、全国津々浦々まで一人一人が豊かで幸せな社会の構築を目指すべきである。そうした社会の実現に向けて、データに基づき財政支出を見直し、ワイズ・スペンディングを徹底すべき。
- これまでの成長戦略の検証を踏まえた具体化を行っていくべき。
- 地方創生10年のレビューを踏まえた政策運営を行っていくべき。
- 持続可能な全世代型社会保障の構築に向けて、全世代型社会保障の改革工程の着実な実現と社会保障の給付と負担の見通しについて関係府省が連携して示すべき
- 石破内閣における経済財政諮問会議の使命は、関係する会議と連携しながら、経済財政運営全般の「司令塔」の役割を果たすことである。国全体の成長に加え、Well-beingを重視し、全国津々浦々まで一人一人が豊かで幸せな社会の構築を目指すべきである。そうした社会の実現に向けて、データに基づき財政支出を見直し、ワイズ・スペンディングを徹底すべき。
内閣府 月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(令和6年10月)
- 日本経済の基調判断
- 現状 【判断維持】
- 景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。
- (先月の判断) 景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。
- 先行き
- 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。
- 政策の基本的態度
- 経済財政運営に当たっては、デフレ脱却を確かなものとするため、「経済あっての財政」との考え方に立ち、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現していく。
- 足元で物価高に苦しむ方々への支援など「物価高の克服」、新たな地方創生施策の展開、中堅・中小企業の賃上げ環境整備、成長力に資する国内投資促進など「日本経済・地方経済の成長」、災害対応を含む「国民の安心・安全の確保」を柱とした「総合経済対策」を早急に策定する。
- 「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」に基づき、令和6年能登半島地震の被災者の生活、生業の再建をはじめ、被災地の復旧・復興に至るまで、予備費を活用した対応に加え、経済対策によって万全を期す。
- 政府と日本銀行は、引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を行っていく。
- 日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
- 現状 【判断維持】
- 賃金の動向
- 1990年代末以降、長期的にゼロ%前後で推移してきた名目賃金・物価の上昇率は、2022年以降の輸入物価の上昇と、それに対応した価格転嫁・賃上げ促進の結果もあって、いずれもデフレに陥る以前の90年代の水準の伸びに。
- 日本の労働者の約3割を占めるパートタイム労働者の賃金は相対的に低く、パートタイム労働者比率の上昇は、全労働者の平均の名目賃金を押し下げ。就業形態別に実質賃金を見ると、パート時給は、昨年半ばより前年比プラスが継続しており、フルタイム労働者は、現金給与総額では6月以降プラスが続き、ボーナスを除く定期給与でもマイナス幅が縮小傾向。
- 10月以降各都道府県で順次最低賃金引上げが開始し、9月末以降、パート労働者の募集賃金(時給)は一段と増加。
- GDP等の動向
- 我が国の名目GDPは、1992年度に500兆円を超えてから、デフレを始め様々な困難に見舞われたこともあり、おおむね500兆円台で推移。2024年4-6月期には、名目GDPが史上初めて年率換算で600兆円を超えた。実質GDPは、消費や投資を始め内需が押上げに寄与し、2四半期ぶりのプラス成長となった。
- 設備投資は、2024年4-6月期には名目年率106兆円と、1991年以来33年ぶりに過去最高を更新。実質でも持ち直しの動きが続く。GDPの54%を占める個人消費は、名目では過去最高となっているが、実質は、賃金の伸びが物価上昇に追いつかなかったこともあって、力強さを欠いてきた。
- 経済の成長力を示す潜在成長率は0%台半ば。資本、労働、生産性の各側面からの潜在成長率の向上が課題。
- デフレ脱却の定義と判断(1)物価の基調
- デフレ脱却とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」。現在は、物価が持続的に下落するデフレの状態にない。一方、デフレに後戻りしないという状況を把握するためには、消費者物価やGDPデフレーター等の物価の基調に加え、その背景として、GDPギャップ、単位労働費用、賃金上昇、企業の価格転嫁の動向、物価上昇の広がり、予想物価上昇率など、幅広い指標を総合的に確認する必要。
- 四半世紀にわたり続いた、賃金も物価も据え置きで動かないという凍りついた状況が変化し、賃金と物価の好循環が回り始め、デフレ脱却に向けた歩みは着実に進んでいる
- デフレ脱却の定義と判断(2)物価の背景
- GDPギャップは4-6月期に▲0.6%程度まで縮小。単位労働費用は春闘賃上げや夏季ボーナスもありプラスに。
- 名目賃金上昇率を詳細にみると、パートタイム労働者の時給は、2023年後半から上昇幅が拡大。フルタイム労働者の所定内給与も2024年春以降、上昇率が高まっている。ただし、5~29人の比較的規模の小さい事業所で上昇に遅れ。
- 仕入価格上昇に対し販売価格も上昇し、過去30年と異なり価格転嫁が進展。1年前と比べて価格が上昇した品目は7~8割と1980年代の姿に近づく。企業の中期的な予想物価上昇率は上昇し、2022年以降2%程度で安定的に推移。
- 足下の物価の動向
- 消費者物価上昇率は、昨年11月以降おおむね2%台で推移。9月は、酷暑乗り切り支援の効果もあり、電気・ガス代の上昇幅が縮小。ただし、夏以降、引き続き食料品の価格上昇が拡大。米のほか、飲料やコーヒー、肉類等で上昇幅拡大。
- 基礎的支出(食料品や光熱費等)に分類される財・サービスの物価上昇率が、選択的支出(教養娯楽費等)に分類される財・サービスの物価上昇率を再び上回るようになっており、基礎的支出が相対的に多い低所得者への影響に留意が必要。
- 円ベースの輸入物価は、7月半ばから9月にかけて円安が是正されたこともあり、このところ下落。一方、10月以降、為替が再び円安方向に動いたこともあり、輸入物価は下げ止まる可能性(5図)。
- 個人消費の動向
- 可処分所得が春闘の賃上げ反映や堅調な夏季ボーナス、定額減税の効果等もあって増加する中、個人消費は持ち直しの動きがみられるが、緩やかな伸びにとどまり、結果として貯蓄率は2024年に入り上昇。
- 新車販売は一部メーカーの出荷停止事案による落ち込みから持ち直し、外食は売上・客数ともに緩やかな増加が続く。
- 世帯別に貯蓄率をみると、勤労世帯ではコロナ禍前に比べて高止まり。一方、高齢無職世帯ではコロナ禍前に戻り、低所得世帯ではコロナ禍前の水準を下回って低下が進む。物価上昇が進む中で、貯蓄を取り崩して必要な消費に回している可能性。
- 消費者マインドは、緩やかな改善傾向はみられるものの、食料品価格の上昇もあって、改善に足踏み。
- 企業部門の動向
- 企業の業況感は、製造・非製造業とも改善。売上の7割を占める非製造業は、1990年代初めのバブル期以降最高水準。
- 企業の設備投資意欲は引き続き旺盛。2024年度の設備投資計画は、9月時点で前年度比10%増と堅調。
- 企業の人手不足感は引き続き高い水準にあり、特に非製造業ではバブル期以来の歴史的な高さ。人手不足が成長の制約とならないよう、省力化投資等が課題。
- 経常収支の動向
- 日本の経常収支は、企業の海外投資が進んだ結果、海外からの配当・利子等の黒字が拡大。一方、貿易収支の黒字は縮小し、原油等の資源価格の高騰により赤字化しやすい傾向に。
- 財の輸出は全体ではおおむね横ばい。中国向けが減少の一方、その他のアジア向けが持ち直すなど、地域ごとにばらつき。
- 訪日外客数(インバウンド)がコロナ禍前を上回り過去最高の一方、出国日本人数はコロナ禍前を依然下回る。その結果、旅行サービス収支の黒字は拡大。デジタル関連サービス分野を中心にサービス収支全体の赤字は拡大傾向。
- 世界経済の動向
- 米国では、個人消費を中心に景気は拡大。雇用者数は緩やかに増加、失業率はおおむね横ばい。物価上昇率は低下傾向にあり、物価の安定と雇用の最大化を使命とするFRBは、9月に0.5%ptの利下げを実施。
- 中国では、政策効果により供給の増加がみられるものの、景気は足踏み状態。欧州では、実質GDPの回復にばらつき。ユーロ圏では、景気は一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動き。
- 米国、中国は成長が鈍化するものの、世界経済全体としては、3%台の成長の見込み。ただし、欧米の高い金利水準の継続、中国の不動産市場の停滞の継続、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響による下振れリスクに留意。
内閣府 「食育に関する世論調査」の概要
- 「食育」は、心身の健康の増進と豊かな人間形成のために、食に関する知識や食を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践することができる人間を育てることです。その中には、規則正しい食生活や栄養バランスのとれた食事などを実践したり、食を通じたコミュニケーションやマナー、あいさつなどの食に関する基礎を身に付けたり、自然の恵みへの感謝や伝統的な食文化などへの理解を深めたりすることが含まれます。
- あなたは、食について最近1ヶ月の間に話題にしたことはありますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 栄養バランスや食生活について57.7%
- 食材について46.4%
- 料理レシピなどの調理について40.7%
- 食品の安全性について35.8%
- あなたは、乳児や幼児に対する食育に関して、どのような取組が必要だと思いますか。(○はいくつでも) (上位4項目)
- 保護者が食について学ぶ機会の充実71.8%
- 保育所・幼稚園・認定こども園などでの給食の実施・充実49.8%
- 保育士・幼稚園教諭・保育教諭やそれらを目指す学生の食に関する指導力の向上43.4%
- 保育所・幼稚園・認定こども園などと、食育に取り組む民間企業や地域の方々との連携強化40.5%
- あなたは、小・中学校などの児童・生徒に対する食育に関して、どのような取組が必要だと思いますか。(○はいくつでも) (上位4項目)
- 児童・生徒が食生活や食文化について学べるコンテンツの充実56.0%
- 保護者が食について学ぶ機会の充実53.7%
- 学校給食における地場産物の利用拡大など、学校給食の充実51.7%
- 家庭科などの教科や給食の時間などにおける栄養教諭と連携した食に関する指導の充実47.2%
- 食品メーカーや食品スーパー、外食・中食などの民間企業では、様々な形で食育に取り組んでいます。あなたは、民間企業による食育の取組に関する情報について、何から発信すれば手に入れやすいと思いますか。(○はいくつでも) (上位5項目)
- テレビや新聞による広告64.5%
- 食品スーパーなどの店頭ポスターや店内ディスプレイ56.0%
- 食品スーパーなどの陳列棚における表示47.5%
- インターネット広告38.3%
- 食品の容器包装における表示37.9%
- あなたは、どのような工夫があれば、食や農林水産業への理解を深めることにつながる農林漁業体験に参加したいと思いますか。(○はいくつでも) (上位6項目)
- 体験費用が無料又は安価であること55.2%
- 食品工場や加工施設の見学・試食などと合わせて体験できること49.1%
- 近場で日帰りできること47.1%
- 郷土料理を食べたり、農山漁村に宿泊して食文化や体験を楽しんだりするなど農山漁村に親しむ機会があること37.1%
- バスなどによる送迎があること37.0%
- 収穫物の一部を持って帰ることができること34.1%
- 参加したいと思わない10.9%
- あなたは、日常生活の中でどのような場面であれば、より多くの人が農林水産業や産地について身近に感じたり、考えたりすることができると思いますか。(○はいくつでも) (上位4項目)
- 食品を買ったり、外食をしたりするときに関連する産地情報が得られる56.0%
- テレビや新聞などを通して農林水産業や産地についての情報が得られる47.5%
- 農林漁業体験や生産者と消費者の交流を促進する活動など、食に関するイベントに参加する40.6%
- 動画やSNSなどにより農林水産業や産地についての情報が得られる33.1%
【2024年10月】
内閣府 「国立公園に関する世論調査」の概要
- あなたは、自然についてどの程度関心がありますか。(〇は1つ)
- 関心がある(小計)86.2%(関心がある42.3%、どちらかといえば関心がある43.9)
- 関心がない(小計)13.2%(どちらかといえば関心がない11.6%、関心がない1.6%)
- あなたがこどもの頃の日常生活で、植物、昆虫や野鳥などのいきものの多い公園、田畑、里山、森林、海、川、山などの自然にふれあう機会はどの程度でしたか。(〇は1つ)
- あった(小計)87.3%(多かったと思う53.6%、ある程度あったと思う33.7%)
- なかった(小計)12.2%(あまりなかったと思う9.8%、ほとんどなかったと思う2.4%)
- あなたは、現在の日常生活で、植物、昆虫や野鳥などのいきものの多い公園、田畑、里山、森林、海、川、山などの自然にふれあう機会はどの程度ですか。(〇は1つ)
- ある(小計)47.1%(多い13.5%、ある程度ある33.5%)
- ない(小計)52.4%(あまりない35.6%、ほとんどない16.8%)
- あなたが、日本にある自然や文化に親しむ枠組みとして、知っている枠組みはありますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 国立公園77.7%
- 史跡・名勝・天然記念物63.0%
- 世界文化遺産60.3%
- 世界自然遺産58.9%
- あなたが、日本にある自然や文化に親しむ枠組みのうち、行ってみたいところはどこですか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 世界自然遺産62.1%
- 世界文化遺産54.9%
- 史跡・名勝・天然記念物52.6%
- 国立公園51.9%
- あなたは、過去1年間に、国立公園に仕事での目的も含めて何回行きましたか。ただし、国立公園地域内に住んでいる場合は除きます。(〇は1つ)
- 0回54.9%
- 1回17.8%
- 2~4回14.3%
- 5回以上4.2%
- 行ったところが国立公園なのか分からない6.8%
- あなたは、国立公園に行きたいと思いますか。(〇は1つ)
- 行きたい(小計)85.3%(行きたい39.8%、どちらかといえば行きたい45.5%)
- 行きたくない(小計)12.5%(どちらかといえば行きたくない9.3%、行きたくない3.2%)
- 国立公園ではどのようなことをしたいと思いますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 自然の風景や絶景スポットを楽しむ88.1%
- 寺社、史跡、美術館、博物館など文化的な観光名所を訪れる62.6%
- 温泉を楽しむ61.7%
- 地域の食材を使った食事や名物料理を楽しむ52.6%
- 国立公園ではどのように過ごしたいと思いますか。(○は1つ)
- 日帰りで、短時間の滞在としたい19.9%
- 国立公園内や国立公園近辺で1泊して、楽しみたい37.6%
- 国立公園内や国立公園近辺で連泊して、楽しみたい9.4%
- 近隣の観光名所も訪れつつ2泊以上して、周遊観光したい21.4%
- 宿泊はしたいが、あまり移動や観光はせず、滞在先でのんびりと過ごしたい8.4%
- あなたは、国立公園にどのような役割を期待しますか。(○はいくつでも)(上位5項目)
- 自然に親しみ理解し学ぶ場67.5%
- 国や地域を代表する優れた自然を後世に残す場57.4%
- 日常生活から離れ、休息する場52.7%
- 日本を代表する風景地として世界に誇るべき場47.9%
- 野生生物の生息地44.3%
- あなたは、国立公園に行こうとする場合、どのような情報があったらよいと思いますか。(○はいくつでも)(上位3項目)
- 自然の美しい景色が見られる場所についての情報75.4%
- 国立公園までの交通に関する情報55.1%
- 宿泊施設や休憩所に関する情報49.4%
- あなたは、国立公園に行こうとする場合、どのような情報があったらよいと思いますか。(○はいくつでも)(上位3項目)
- 自然の美しい景色が見られる場所についての情報75.4%
- 国立公園までの交通に関する情報55.1%
- 宿泊施設や休憩所に関する情報49.4%
- あなたが、国立公園に行った場合、旅行中にどのようなところから情報を収集したいと思いますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 観光案内所60.9%
- 宿泊施設49.5%
- ガイドブック・雑誌40.9%
- 組織や団体が自ら運営する公式ホームページやSNS40.7%
- あなたは、国立公園の魅力を向上させるためには、どのような取組が必要だと思いますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 国立公園と、温泉や食材を中心にした地域の観光イベントとの連携事業を増やす52.9%
- 登山道やトイレ、キャンプ場、展望台などの施設を整備する46.9%
- 国立公園を中心に地域の文化財・歴史にふれあえるツアーを増やす38.4%
- 自然体験ツアーや自然観察会などの利用プログラムを充実させる38.1%
- 野外活動の安全に関する技術や動植物・地域の文化・歴史に関する知識を身につけた地域のガイドの案内により国立公園を巡る有料のツアーを「ガイド付きツアー」と言います。あなたは、どのようなガイド付きツアーに参加してみたいと思いますか。(○はいくつでも)
- (上位5項目)
- 自然解説に郷土の文化や歴史的な視点を織り交ぜたストーリー性のあるツアー44.7%
- 一般にはあまり知られていない場所を訪れるツアー40.2%
- 自然環境への悪影響が少ないツアー33.0%
- 洞窟探検や流氷ウォークなどの自分ひとりでは挑戦できない冒険心を駆り立てるツアー32.3%
- 植物、昆虫や野鳥などのいきものの解説をしてくれるツアー31.9%
- ガイド付きツアーに参加したいと思わない12.1%
- 現在と未来の環境、地域の暮らし、経済への影響に十分配慮した観光のあり方として、持続可能な観光への関心が高まっています。あなたは、国立公園での観光にどのようなことが必要だと思いますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 登山道を外れて歩かない、ゴミを持ち帰るなど、自然を荒らさない取組88.2%
- 外来生物の駆除や、希少な動物や植物の保全活動など、自然生態系の回復に貢献する取組62.4%
- 地域住民の生活環境や文化を守る配慮52.0%
- 過度な混雑を避けるための対策49.5%
- 国立公園を訪れる人が休日などの関係で一時期に集中するため、植物が踏み荒らされたり、混雑により自然を快適に楽しめないなどの問題が生じる場合があります。このような問題に対して、あなたは、どのような対策が必要だと思いますか。(○はいくつでも)(上位5項目)
- 入域できる人数を制限する55.8%
- 国立公園の利用者に対して、自然の中で守るべきマナーの教育を徹底する55.7%
- 国立公園への入域料を徴収し、その費用で過剰な利用により被害を受けた自然の修復などを行う54.5%
- 自然を休めるために一定期間、一切の入域を禁止する41.5%
- 車は使わず徒歩のみでの利用にするなど、自然に悪影響を及ぼすおそれのある利用の仕方を禁止する37.9%
- 国立公園でも外国人旅行者が増えていますが、あなたの気持ちに近いものはどれですか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- ルール、マナー違反が増えないか心配85.8%
- 経済効果が期待できそう45.9%
- 地域活性化が期待できそう28.3%
- 宿泊費などの高騰が心配24.9%
- 国立公園内に大規模な車道、ホテルやスキー場などの観光施設をつくることは利用者が便利になる反面、自然を損なうことも考えられます。自然保護と観光開発の関係について、あなたはどのように考えますか。(○は1つ)
- 観光施設を減らし、自然に戻していくべきだ5.3%
- 自然を守るためには、既存の施設の活用や更新にとどめ、これ以上観光開発を行うべきではない38.6%
- 自然との調和を図りつつ、ある程度の観光開発も行うべきだ50.1%
- 自然保護よりも、観光開発を行うべきだ0.7%
- 国立公園内で地熱や風力などの再生可能エネルギー施設をつくることは、自然に優しいエネルギー供給として必要である反面、優れた自然景観や生物多様性を損なうことも考えられます。自然保護と再生可能エネルギー施設整備とのバランスについて、あなたはどのように考えますか。(○は1つ)
- 再生可能エネルギー施設を減らし、自然に戻していくべきだ9.1%
- 自然を守るためには、既存の施設の活用や更新にとどめ、これ以上施設の整備をすべきではない28.9%
- 小規模な施設にするなど、自然との調和を図りつつ、再生可能エネルギー施設の整備もすべきだ56.1%
- 自然保護よりも、再生可能エネルギー施設の整備をすべきだ1.4%
- あなたは、国立公園内の登山道やトイレなどの公園施設の整備やその維持管理に関する費用は、誰が負担すべきだと思いますか。(○は1つ)
- 国民が収めた税金から国や地方公共団体が全て負担する13.8%
- 国や地方公共団体が一部負担した上で、国立公園の利用者が施設利用料などの形で負担する71.6%
- 国立公園の利用者が施設利用料などの形で全て負担する12.5%
- 国立公園の登山道やトイレなどの公園施設を適切に管理するため、国立公園に入る際に入域料を支払わなければならないとします。あなたは、1人あたりいくらまでなら支払えると思いますか。(○は1つ)
- 100円まで8.6%
- 500円まで41.0%
- 1,000円まで35.3%
- 2,000円まで9.1%
- 2,001円以上2.6%
- 払いたくない2.4%
内閣府 「水循環に関する世論調査」の概要
- あなたは、水とのかかわりのある豊かな暮らしとはどのようなものだと思いますか。 (〇はいくつでも) (上位5項目) 令和2年10月→令和6年7月
- 安心して水が飲める暮らし0%→ 86.9%
- いつでも水が豊富に使える暮らし2%→ 50.8%↓
- 洪水の心配のない安全な暮らし4%→ 48.6%↓
- 身近に潤いとやすらぎを与えてくれる水辺がある暮らし2%→ 44.5%↑
- おいしい水が飲める暮らし7%→ 43.0%
- あなたの使っている水道水の水源は何か知っていますか。(○は1つ)
- 知っている(小計)6%→ 69.7%↓(具体的な河川や湖などの名称まで知っている38.9%→ 36.3%、河川や湖などであることは知っている37.6%→ 33.4%↓)
- 知らない(小計)6%→ 29.7%↑(漠然としか知らない16.4%→ 21.3%↑、知らない5.3%→ 8.3%↑)
- あなたは、現在使用している水道水の質について満足していますか。(○は1つ)
- 全ての用途において満足している2%→ 58.3%
- 飲み水以外の用途において満足している9%→ 38.2%
- 全ての用途において満足していない4%→ 3.1%
- あなたは、普段、水をどのように飲んでいますか。(○はいくつでも) (上位4項目)
- 特に措置を講じずに、水道水をそのまま飲んでいる9%→ 39.1%↓
- ミネラルウォーターなどを購入して飲んでいる9%→ 36.1%
- 浄水器を設置して水道水を飲んでいる0%→ 34.3%↑
- 水道水を一度沸騰させて飲んでいる4%→ 16.2%
- あなたは、8月1日が「水の日」、この日から1週間が「水の週間」であることを知っていますか。(○は1つ)
- 「水の日」、「水の週間」を両方とも知っている5%→ 4.4%
- 「水の日」だけ知っている4%→ 8.1%↑
- 「水の週間」だけ知っている7%→ 3.0%
- 「水の日」、「水の週間」を両方とも知らない8%→ 84.3%
- 世界的に、地球温暖化に伴う気候変動の影響により、水問題がさらに深刻化することが懸念されています。あなたは、どのようなことが心配だと思いますか。(○はいくつでも)(上位4項目)
- 気候の不安定化による洪水や土砂災害の頻発6%→ 84.3%
- 降水量の変化や水温の上昇による自然環境や生態系への影響→ 67.0%
- 渇水の増大による水不足及び海外での食料生産の不安定化9%→ 56.3%↑
- 海面上昇による標高の低い沿岸地域の氾濫6%→ 43.7%
- 水とかかわりのある豊かな生活を将来にも続けていくために、あなたが行政に力を入れて欲しいと思うことはなんですか。(○はいくつでも)(上位6項目)
- 洪水・土砂災害防止施設の整備5%→ 71.3%↓
- 老朽化や災害による被害を受けた上下水道の整備※ → 70.7%
- 水質汚濁防止のための下水道などの整備5%→ 46.3%
- 雨水利用や水の再利用の促進7%→ 42.6%↑
- 水源地域の整備・保全6%→ 42.2%
- 河川や湖沼の水質浄化対策8%→ 38.2%
内閣府 消費動向調査
▼ 令和6(2024)年9月分調査 結果の要点
- 消費者の意識(二人以上の世帯、季節調整値)
- 消費者態度指数
- 令和6(2024)年9月の消費者態度指数は、前月差0.2ポイント上昇し36.9であった。
- 消費者意識指標
- 消費者態度指数を構成する各消費者意識指標について、令和6(2024)年9月の動向を前月差でみると、「雇用環境」が0.8ポイント上昇し42.2、「収入の増え方」が0.4ポイント上昇し40.1、「耐久消費財の買い時判断」が0.1ポイント上昇し31.0となった。一方、「暮らし向き」は0.3ポイント低下し34.4となった。
- また、「資産価値」に関する意識指標は、前月差0.2ポイント上昇し40.2となった。
- 基調判断
- 消費者態度指数の動きから見た9月の消費者マインドの基調判断は、改善に足踏みがみられる。(据置き)
- 消費者態度指数
- 物価の見通し(二人以上の世帯)
- 令和6(2024)年9月の1年後の物価に関する見通しで、最も回答が多かったのは「上昇する(5%以上)」(46.6%)であった。
- 前月差でみると、「上昇する」が1.0ポイント増加したのに対して、「変わらない」が0.6ポイント減少、「低下する」が0.3ポイント減少した。
- 消費者の物価予想については、「上昇する」と見込む割合は9割を超えている。(据置き)
【2024年9月】
内閣府 月例経済報告(月次)
▼ 関係閣僚会議資料(令和6年9月)
- 日本経済の基調判断
- 現状 【判断維持】
- 景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。
- (先月の判断)景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。
- 先行き
- 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。
- 政策の基本的態度
- 「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」等に基づき、物価上昇を上回る賃金上昇の実現や官民連携投資による社会課題解決と生産性向上に取り組む。
- 「デフレ完全脱却のための総合経済対策」及びその裏付けとなる令和5年度補正予算並びに令和6年度予算を迅速かつ着実に執行する。また、足元の物価動向の中、年金生活世帯や中小企業にとっては厳しい状況が続いており、まずは、早急に着手可能で即効性のある対策を講じるなど、二段構えでの対応を行っていく。
- 「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」に基づき、令和6年能登半島地震の被災者の生活、生業の再建をはじめ、被災地の復旧・復興に至るまで、予備費を活用し切れ目なく対応する。
- 日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
- 政府と日本銀行は、引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を行っていく。
- こうした取組により、デフレからの完全脱却、成長型の新たな経済ステージへの移行を実現していく。
- 現状 【判断維持】
- 主要先進国におけるコロナ禍後の経済動向
- 主要先進国の実質GDPはコロナ禍前の水準を回復。アメリカは、個人消費や設備投資といった民需が景気拡大をけん引。日本は、いずれの指標でも中位程度の回復。
- 失業率は、各国ともにコロナ禍で上昇した後、現在はコロナ禍前とおおむね同水準に低下。日本の失業率はピークでも1%に抑えられ、足下は2%台半ばと、先進国最低で推移。消費者物価上昇率は、多くの欧米諸国で一時9%前後まで高まったが、現在は2~3%程度まで低下。日本はピーク時は4.3%となった後、2023年秋以降2%台で推移。
- 欧米では、物価上昇率の高まりを受け、2022年以降、金融引締めが急速に進んだが、足下では物価上昇率の低下を受け、ユーロ圏や英国で利下げが行われるなど潮目が変化しつつある。
- 我が国経済の変化と今後の課題
- 1990年代末以降、長期的に名目賃金・物価の上昇率はともにゼロ%前後で推移してきたが、コロナ禍からの世界経済の回復や
- 2022年の資源価格高騰を機に輸入物価が上昇。コストプッシュ型物価上昇に対し価格転嫁・賃上げを促進した結果、名目賃金も上昇に転じ、デフレに陥る前の水準まで伸びが高まり、24年6月には物価上昇率を超え、実質賃金はプラスに。こうした中、金融政策の主な手段は、他の多くの中央銀行と同様、短期金利に戻り、政策金利は25%程度に。
- この3年間で、名目GDPは56兆円増加し、史上初めて600兆円を超えた。設備投資も過去最高の106兆円、消費も増加。
- GDPギャップは足下▲6%程度まで縮小。一方、潜在成長率は0%台半ば。資本、労働、生産性の各側面から潜在成長率を引き上げるとともに、価格や賃金をシグナルとした市場経済の本来のダイナミズムを取り戻すことが重要。
- 企業部門の動向
- 2024年4-6月期の企業収益は、営業利益、経常利益ともに過去最高を更新。
- 中小企業では、付加価値と人件費が同程度の伸びとなり、労働分配率はおおむね横ばい。一方、大中堅企業では、付加価値の伸びが人件費の伸びを上回り、労働分配率は緩やかな低下傾向に。
- 過去四半世紀、国内設備投資の成果である固定資産の伸びはわずかで、海外直接投資や現預金が大きく増加。借入はほとんど増えず、内部留保が拡大。企業部門の好調さを賃上げや投資拡大に回すことにより、成長型経済の実現につなげる必要。
- 設備投資の動向
- 設備投資を形態別にみると、持ち直しの動きが続く中で、ソフトウェアなど知的財産生産物への投資が継続的に増加。業種別でみると、足下では非製造業がけん引。
- 将来の成長の源泉となる研究開発投資のGDP比は、過去10年程度で、韓国、アメリカ、英国等で大きく上昇しているのに対し、日本はほぼ横ばい。無形資産投資の促進を通じた生産性向上が課題。
- 民間建設工事の出来高が横ばい傾向の中、手持ち高は過去最高水準まで増加。建設業の人手不足の影響もあって、受注工事の工期が以前よりも長期化。今後、高水準の手持ち工事高は、徐々に出来高に反映される見込み。
- 賃金の動向
- フルタイム労働者の定期給与は春闘賃上げの反映が進み、高い伸び。特別給与(ボーナス等)は6-7月を通じて高い伸びとなり、中小規模の事業所の伸びが寄与。実質賃金では、パート時給は前年比プラスが継続。フルタイム労働者も2か月連続でプラス。ボーナス等を除く定期給与でも着実に持ち直し。転職により年収が増加する者の割合も上昇。
- 最低賃金は、現行制度で最大の引上げ幅となり、全国加重平均で1,055円に。本年10月以降、パート労働者の賃金上昇につながることが期待。最低賃金引上げへの対応として、企業の半数が価格転嫁を挙げる一方、設備投資による生産性向上を挙げる中小企業は4分の1程度。引き続き、価格転嫁対策とともに、生産性向上に向けた投資の後押し等が重要。
- 物価の動向
- 消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移。円安の是正もあり、円ベースの輸入物価はこのところ下落。また、5%以上の物価上昇を予想する世帯の割合が縮小し、家計の予想物価上昇率の平均はやや低下。
- 一方、直近では食料品の価格上昇がやや拡大。米、肉類、チョコレートなどの価格の上昇が寄与。
- サービスの物価上昇の分布は、コロナ禍前は0%近傍に集中し、価格据置きが続いていたが、足下で、より多くの品目でプラス領域に。
- 個人消費の動向
- 個人消費は、2023年に入って以降、名目所得の伸びが物価上昇に追いつかず、力強さを欠いていたが、実質所得が増加傾向に転じる中で、持ち直しの動き。今後も、賃上げが広がることにより、消費が持ち直していくことが期待。
- 財消費をスーパー等のPOSデータでみると、防災関連財の販売増もあり、8月は売上数量が増加。
- サービス消費は持ち直しが続く。外食は売上、客数ともに緩やかに増加。日本人延べ宿泊者数も7月は増加。
- 8月は台風による運休の影響で新幹線旅客数が減少。宿泊稼働も月末にかけて低下した後、9月に入り例年並みに回復。
- アメリカ経済の動向
- アメリカは個人消費を中心に景気は拡大。失業率が4%台で推移する中、雇用者数は増勢が鈍化。
- 消費者物価上昇率は、財価格の低下を受け、2%台に低下。住居費を中心にサービス価格は底堅く推移。ただし、家賃や賃金の伸びの鈍化を受け、今後、サービス価格の伸びも鈍化する可能性。
- 中古住宅価格は上昇が継続しており、住宅購入の際の家計の負担は増している。
- 欧州経済
- ユーロ圏経済は、実質GDPの回復にばらつき。ドイツ経済は足踏み状態。背景に、2022年以降の輸出の停滞と、政策の先行き不透明感による投資マインドの弱さと高い金利水準の継続による設備投資の弱い動き。
- 州別の一人当たりGDPは、旧西ドイツ10州では、旧東ドイツ5州よりも高い。
内閣府 第10回 消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会
▼ 【資料1】 中間整理(案)
- デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方について
- デジタル取引の特徴の分析・具体化
- デジタル取引は、時間・空間・資材等の物理的障壁がほとんどないため、誰でも、誰とでも、いつでも、どこでも取引に関わることを可能とする。また、事業者の参入・撤退も容易である。
- 主体について、実店舗を有さない事業者や消費者等が売り手となるなど取引主体が多様化する一方、広告・取引の場・決済手段の各提供者等が多層的に関わり、取引関係が複雑化している。
- 時間について、即時に取引を行うことが可能になる一方、契約締結までの過程が段階的に進むことなく瞬時に行われ、また、消費者が生活する時間と取引する時間との境界が曖昧となってきている。
- 場所について、隔地間・越境取引が普遍化する一方、取引関係者の素性や商品の状態等の直接確認が困難であり、また、周囲に知られず取引可能となるため第三者によるチェック、サポートが効きにくい側面がある。
- 客体・取引対象について、有体の物やサービスにとどまらず無体の情報が取引対象として事業者から提供され、他方で、消費者が金銭を支払うのではなく情報、時間、関心・アテンションを提供する取引が急速に拡大している。また、基本的なサービスを無償で提供することで自らとの取引に消費者を誘引し、追加サービスを提供する有償の取引に転換させるというビジネスモデル(いわゆる「フリーミアム」)も展開されている。
- また、取引環境全体を見たときにも、リアル取引とは大きく異なる特徴が見られる。
- 多様かつ膨大な情報、商品・サービスの提供が可能となっている一方、自然人である消費者にとって情報・選択の機会・選択肢の過多や取引の複雑化により単独で情報を十分に吟味し、判断することが困難となっている。
- デジタルエコノミーにおいては、AI等の技術の進展に伴い事業者による消費者の様々な情報の収集・分析・利用や、それに基づく取引の個別化が進展している。また、生成AIの普及は利便性の向上をもたらす一方で、消費者が偽・誤情報に取り囲まれる状況の発生等にもつながっている。
- 取引方法がデジタル化し、インターネット上で取引が完結することにより利便性が高まる一方、現実空間では限定的であった事業者側による取引環境の設計・デザインの範囲・内容が拡大している。すなわち、デジタルの取引空間においては、プラットフォームを含む事業者側が「アーキテクチャーの権力」を強力に行使して取引環境を設計し、それによって消費者の行動を現実の取引空間と比較してより効果的・無限定的に誘導することが可能である。
- マーケティング手法が多様化・高度化する一方、従来よりも消費者の認知機能・心理メカニズムの分析に基づく手法が強化され、消費者が気付かないまま誘導される状況が多く発生している。
- デジタル化によって海外事業者との関わりが促進されているが、これは、日本においては海外事業者によるデジタルプラットフォームが多いという側面、デジタルプラットフォームを利用することで有形の商品が海外事業者から容易に日本国内の消費者の元に届けられるという側面、無形のサービスやソフトウェアが海外事業者から日本の消費者に提供されるという側面に分けて分析する必要がある。海外事業者が提供されるものが有形物である場合と無形物である場合については、日本国内にフルフィルメント事業者や物流事業者という接点があるか否か、有形物と無形物がもたらしうる害の相対的な差異に留意して検討する必要がある。
- デジタル取引においては、技術革新が飛躍的に進み、それによって取引環境が急激に変化することも特徴である。
- デジタル取引について、リアル取引と(次元の)異なる規律が必要となる場面、規律が整備されていない場面の整理
- 「消費者の脆弱性」の利用・作出との関係
- AI等の技術の発展により、事業者が消費者の様々な情報を収集・分析(プロファイリング)し、それに基づくレコメンデーションやターゲティング広告等を行うことが可能となっており、「消費者の脆弱性」を高精度に推測し、利用することも可能となっている。
- 事業者側が取引環境を設計・デザインすることが可能となっていることが、消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をするよう誘導する、いわゆるダークパターン(ダーク・コマーシャル・パターン)の拡大につながっている。
- ダークパターンについては、自律性の阻害、経済的損失、プライバシー被害、心理的被害といった個々の消費者の被害にとどまらず、競争のゆがみや信頼低下による構造的な消費者の被害を生じさせるとの指摘もなされている。
- ダークパターンは、技術的要素(デザイン)によって構成され、進化的な発展が可能であるため、事業者の主観的な意思によらずに「消費者の脆弱性」を利用・作出する可能性がある。
- デジタル技術により「消費者の脆弱性」が作出・利用される場面については、デジタル取引特有の環境やデジタル技術による規律、情報処理能力の非対称性といった特徴によるものであり、リアル取引とは異なったこれらの特徴を踏まえた対応が必要となると考えられる。例えば、消費者自身が「消費者の脆弱性」の作出・利用や被害に気づくことが困難であるという特徴を踏まえて規律の実効性をいかに確保するかを検討することが考えられる。
- その上で、デジタル技術により「消費者の脆弱性」が作出・利用される場面についての対応を検討する中で明らかとなってくる「消費者の脆弱性」の捉え方や対策について、リアル取引にもフィードバックして応用・活用するべきであり、過度にデジタル取引に特有のものとして限定し過ぎず、相互に参照しながら検討することも重要である。
- 消費者の取引環境の個別化との関係
- プロファイリングに基づくレコメンデーション、ターゲティング広告等は、消費者の選択を支援し、利便性を高めるものである一方で、自律的な意思決定をゆがめるリスクを持つ。また、パーソナライズド・プライシングについては、価格差別がプラスの経済効果を持ち得ることから一律に規制対象とする必要はないが、一定の条件の下で価格差別が問題となる場合がある。
- これらを踏まえ、取引環境の個別化について、いかに健全性を確保するかが課題となる。健全性の確保の在り方については、倫理的な正当性に基づいて検討すること、事業者側と消費者側との対話により認識のギャップを埋めること、利益の追求だけでなく消費者の自律的な意思決定につながる関係性の構築の志向等の健全性を裏打ちするものを捉えて促進すること、搾取や不公正な慣行、消費者の自律的な意思決定の阻害等の不健全なものを捉えて取り除くことなどの観点が考えられる。
- もっともダークパターンが不健全であるとして対策を検討する場合とは異なり、パーソナライズド・プライシングやターゲティング広告においてはそれらを用いて商品やサービスがより多く売れるようにすることが一般的に不健全なわけではなく、それらを用いた搾取や不公正な取引が不健全であると考えるべきである。加えて事業者においては単に商品やサービスをより多く売るというだけでなく、買い手である消費者の関係的自律を尊重し確保するという視点も必要になってくると考えられる。
- また、デジタル取引においては、消費者にとって、自分が見ている広告や商品・サービス、それらの価格が自分に対して個別化されたものなのか否かが判然とせず、他の消費者にどのように表示されているのかも分からないという、透明性に関する問題への対応が課題となる。リアル取引に比してデジタル取引においては個別化されていること自体が不透明であることが、消費者の自律的な意思決定を歪めるリスクを高めていると考えられる。
- さらに、情報は対価性のみならず人格的価値にも根差すものであることを踏まえ、その収集・分析・利用の適切性・信頼をいかに確保するかが課題となる。例えば、プロファイリングにより一般的な情報からセンシティブ情報が生成され得ることを踏まえると、それを使って認知的な脆弱性を攻撃するようなターゲティングは許されるべきではないと考えられる。
- AIは過去のデータに依拠するが、必ずしも予見可能性が高いとはいえない部分があり、確率は低くともミス(誤推定による不適合)は必ずあるということを踏まえる必要がある。
- 事業者が多層的に関わることとの関係、技術の進展、情報化の下で法制度が果たすべき役割
- デジタル取引においては、事業者側が取引環境を設計・デザインすることが可能となっているという特徴を踏まえた対応、取引基盤提供者としてプラットフォーム提供事業者や決済機能提供事業者、情報・広告提供者が重要な役割を果たし、事業者が多層的に関わることを踏まえた対応が課題となる。
- 事業者による技術や情報の利用が消費者の選択の支援になる側面がある一方で、消費者の自律的な意思決定をゆがめるリスクがあることを踏まえ、その健全性・信頼性を確保することが重要となる。
- デジタル技術の進展や飛躍的な技術革新がもたらすデジタル取引の急激な環境変化に対応するためには、対症療法的な手法に限らず、包括的な視野に立った適切な規律の在り方を検討することも重要である。
- また、悪質な行為に対しては厳格に対応し、健全な事業活動についてはこれを促進するインセンティブを設計する等のメリハリの利いた規律の在り方を検討することや越境取引の普遍化を踏まえた対応を検討することも重要である。
- 消費者のエンパワーのために技術を活用することについて、実効性・信頼性の確保の観点も踏まえながら検討することも重要である。
- デジタル化の下で消費者法制度が役割を果たすためには、関係主体との関係も踏まえながら行政が必要なリソースを効果的に注げるようにしていくことも重要である。
- 消費者・消費者団体のデジタル化への対応力との関係
- デジタル取引において、事業者(特にプラットフォーム提供事業者)と消費者との間には情報処理能力の非対称性等による新たな格差が生じている。
- デジタル化に対応する消費者団体の形成が遅れており、消費者団体の人的リソースの問題も深刻となっている。また、例えばデジタルネイティブ世代であるからといってデジタル取引における消費者問題に適切に対応できているとは限らず、むしろデジタル取引における消費者問題により広くさらされているものであり、その実態を消費者団体において捉えられるかを含めて課題となっている。
- ダークパターンにより自律的な意思決定をゆがめるという問題や情報、時間、関心・アテンションが奪われるという問題のように実害を感じにくい、あるいは経済的な損失の発生に至らない問題については、消費者本人では気づきにくいため、消費者の意見を集約して活動(提言)する組織がモニタリングしていくことが必要である。
- 消費者の認知過程を保護し、自律的な意思決定を支援すること必要である。
- 消費者教育やリテラシーの向上と組み合わせることも重要である。
- 「消費者の脆弱性」の利用・作出との関係
- デジタル取引の特徴の分析・具体化
内閣府 高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)
- 第1 目的及び基本的考え方
- 大綱策定の目的
- 基本的考え方
- 年齢に関わりなく希望に応じて活躍し続けられる経済社会の構築
- 一人暮らしの高齢者の増加等の環境変化に適切に対応し、多世代が共に安心して暮らせる社会の構築
- 加齢に伴う身体機能・認知機能の変化に対応したきめ細かな施策展開・社会システムの構築
- 第2 分野別の基本的施策
- 就業・所得
- 年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境の整備
- 高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリングの推進
- 企業等における高齢期の就業の促進
- 高齢期のニーズに応じた多様な就業等の機会の提供
- 公的年金制度の安定的運営
- 高齢期に向けた資産形成等の支援
- 年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境の整備
- 健康・福祉
- 健康づくりの総合的推進
- 生涯にわたる健康づくりの推進
- 介護予防の推進
- 持続可能な介護保険制度と介護サービスの充実
- 地域包括ケアシステム構築の深化・推進
- 必要な介護サービスの確保
- 介護サービスの質の向上
- 仕事と介護の両立支援
- 持続可能な高齢者医療制度の運営
- 認知症施策の総合的かつ計画的な推進
- がん対策の推進
- 人生の最終段階における医療・ケアの体制整備
- 身寄りのない高齢者への支援
- 支援を必要とする高齢者等を地域で支える仕組みづくりの促進
- 加齢による難聴等への対応
- 健康づくりの総合的推進
- 学習・社会参加
- 加齢に関する理解の促進
- 高齢期の生活に資する学びの推進
- デジタル等のテクノロジーに関する学びの推進
- 社会保障教育及び金融経済教育の推進
- 消費者教育の推進
- 身近な場やオンラインでの学習機会の充実
- 地域における社会参加活動の促進
- 多世代による社会参加活動の促進
- 地域住民を支援する専門人材・団体の活動基盤の整備
- 生活環境
- 豊かで安定した住生活の確保
- 居住支援の充実
- 空き家対策の推進
- 安全・安心で快適な住生活と循環型住宅市場の実現
- 高齢社会に適したまちづくりの総合的推進
- 地域における移動手段の確保
- 多世代に配慮したまちづくりの総合的推進
- 農山漁村のコミュニティの維持
- 金融経済活動における支援
- 消費者被害の防止
- 認知機能の変化に応じた交通安全対策
- 情報アクセシビリティの確保
- 公共交通機関や建築物等のバリアフリー化
- 高齢期の特性に配慮した防災・防犯対策
- 防災施策の推進
- 犯罪、悪質商法、人権侵害等からの保護
- 成年後見制度の利用促進
- 豊かで安定した住生活の確保
- 研究開発・国際展開等
- 高齢社会に資する研究開発等の推進
- 高齢者等のサポートに係る技術の開発や社会実装等の推進
- 高齢期にかかりやすい疾病等及び健康増進に関する研究開発等
- 高齢社会対策の総合的な推進のための調査分析・データ等の利活用
- 健康・医療産業の国際展開及び国際社会への知見等の発信
- 健康・医療産業の国際展開
- 国際社会への知見等の発信
- 高齢社会に資する研究開発等の推進
- 就業・所得
- 第3 推進体制等
- 推進体制
- 推進に当たっての留意事項
- 大綱の見直し
内閣府 令和6年第12回経済財政諮問会議
▼ 資料4 岸田内閣のマクロ経済運営の成果と今後の課題(有識者議員提出資料)
- 当面のマクロ経済運営: 賃上げの定着による消費回復・好循環拡大
- これまでのマクロ経済運営によって、我が国経済は、「新たなステージ」への移行が進みつつある。賃上げは33年ぶりの高水準となるなど、賃金と物価の好循環が回り始めている。この前向きな動きを後戻りさせてはならない。8月上旬には株価や為替等が短期的に大きく変動したが、日々の市場動向に一喜一憂せず、「骨太方針2024」で示された方針に基づき、「新たなステージ」への移行に向け、揺るぎないマクロ経済運営を行う必要がある。
- 力強さを欠く消費の回復に向け、プラスの実質賃金の定着が重要。足下では実質賃金の27か月ぶりのプラス、過去最高の引上げとなり地域差も縮小した最低賃金等、明るい動きが見られる。価格転嫁対策、医療・介護、建設・物流等の業種別の賃上げ施策のフォローアップなど、「賃上げの定着」に向けた取組を更に強化すべき。併せて、物価高支援を時限的措置として講じつつ、家計の所得を引上げ、消費を力強く回復させ、回り始めた経済の好循環を大きく拡大すべき。
- 今後とも、「経済あっての財政」という基本的考え方の下、政府・日銀が連携し、市場と丁寧に対話しながら、安定的なマクロ経済運営に万全を期すべき。経済状況に応じた機動的なマクロ経済運営が重要であり、今後の政策対応に当たっては、下記の成長力強化に軸足をおき、人口減少下で成長を実現するための具体策を検討し、予算・税制・財政投融資・規制改革等を合わせて総合的に取り組むことが求められる。
- 2030年度を見据えた経済構造の変革: 成長力強化と持続可能性の確保
- 生産年齢人口の減少が本格化する2030年度までが、経済構造の変革のラストチャンスである。各経済主体において「日本が成長型経済に移行しつつある」ことを共通理解とし、以下の取組を進め、賃上げや投資拡大等の前向きな行動を全国的なムーブメントとすることで、2030年代以降も実質成長率1%以上を実現し、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保すべき。
- 賃上げが定着しつつある今こそ、構造的な賃上げが実現する労働市場の構築に向け、攻めの労働政策として、全世代型リスキリングやジョブ型人事の導入等を推進し、「生産性が高い仕事は高い賃金で報われ、高い賃金が実現するキャリアアップや労働移動が行われる」活力ある労働市場とすべき。また、同一労働同一賃金の徹底、男女間賃金格差の是正等が重要。
- 同時に、老朽化が進む我が国の「資本」の刷新も重要。攻めの投資促進策として、GX・DXなどの分野における新技術の社会実装、宇宙・海洋を始め新たなフロンティアの開拓など、官民を挙げて、社会課題の解決に向けた積極果敢な国内投資を推進することが重要。
- 「成長と分配の好循環」の実現を目指すには可処分所得の増加が重要であり、国民の将来の安心の確保を通じた消費の拡大につなげるためにも、年収の壁対策、被用者保険の適用拡大を含め全世代型社会保障構築に向けた取組を進めるべき。
- 財政の持続可能性の確保に向けては、2025年度PB黒字化を目指すとともに、その取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指し、経済再生と財政健全化の両立を更に前進させるべき。その際、歳出構造を平時に戻しつつ、政策立案段階からのEBPMにより、政策効果の発現に向けたプロセス管理を徹底することが重要
内閣府 第20回規制改革推進会議
▼ 資料1-1 規制改革に関するこれまでの取組と成果(概要)
- 「先送りできない課題に正面から取り組み、社会課題を乗り越えて変化を力にする」という基本姿勢のもと、社会変革を起動し、誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会を実現するという観点から、利用者目線による規制・制度改革を実施。その成果の結実および最大化に向けた取組を推進していく。
- 革新的サービスの社会実装・国内投資の拡大
- 交通物流
- 地域の移動の足不足解消
- 自家用車活用事業を開始。自家用有償旅客運送制度も改善。【6年度】
- 全国21地域で自家用車活用事業を開始。例えば、札幌・仙台では配車アプリ・マッチング率90%未満の時間帯枠は消滅。
- ドローンの事業化
- 立入管理措置なく鉄道等の上空横断が可能「レベル5飛行」の実現【6年度】
- レベル3,5飛行に係る承認実績は13社。飛行回数320回以上の実績(食料、医薬品等の中山間部への運搬)
- 地域の移動の足不足解消
- 観光
- インバウンドの受け皿としての古民家、別荘等の有効活用
- 簡易宿所(古民家、別荘等)の設置要件の緩和【6年度】
- コールセンターなど遠隔対応を可能にすることを検討
- インバウンドの受け皿としての古民家、別荘等の有効活用
- 医療
- デジタルヘルスの推進等
- オンライン診療の諸制約の撤廃、診療報酬見直し等 【4~6年度】
- オンライン服薬指導の諸制約の撤廃【4,5年度】
- プログラム医療機器(SaMD)の開発・市場投入の促進(二段階承認制度の導入等)【4~6年度】
- NDBの利活用の容易化等【5年度】
- 医師偏在の緩和のための在宅医療を提供する環境の整備【5,6年度】
- オンライン診療がコロナ前からの4年で400倍以上に増加
- オンライン服薬指導が2年で200倍以上に増加
- SaMDの開発が2年で8倍に増加
- 薬の開発、副作用防止のための医療等データの利用数が5倍に増加
- へき地等の診療所の管理者を兼務可能であることを明確化
- 新型コロナウイルス感染症に係る在宅での検査等の円滑化
- コロナ抗原検査キットの一般販売(OTC化)【4年度】
- 一般用抗原検査キット(OTC)として16製品が承認
- デジタルヘルスの推進等
- 介護
- 介護の質確保及び介護職員の負担軽減
- 介護ロボット等を活用する高齢者施設の人員配置基準の特例的な柔軟化【4,6年度】
- デジタル、AI等を活用した要介護認定の迅速化等【6年度】
- 該当施設の人員配置基準を最大10%緩和(要介護者:看護・介護職員=3:1から3:最小9に)
- 介護の質確保及び介護職員の負担軽減
- 公共
- ローカルルールの原則廃止
- 自治体に提出する「就労証明書」や介護に係る手続様式等を全国統一し、
- 新設・改正時のローカルルールを原則廃止【4~6年度】
- 令和5年度に法令改正等により様式を全国統一、さらに令和6年度に全省庁のローカルルール新規発生防止を決定
- ローカルルールの原則廃止
- 教育
- 遠隔教育の活用促進(オンライン教育)
- 高等学校等における遠隔教育の受信側教員の配置要件の緩和【6年度】
- 臨時免許状や特別非常勤講師等の活用による受信側の教員不足に係る制約を解消し、令和6年度中に活用状況を確認
- 特別免許状制度の透明化
- 特別免許状授与基準の策定・公開【4年度】
- 小中高で英会話学校講師など外部人材の活用数が約5倍に
- 遠隔教育の活用促進(オンライン教育)
- 農林水産業
- 農地所有適格法人の要件緩和
- 農地を所有できる法人について、議決権要件を緩和【6年度】
- 議決権要件について、農業関係者のみではなく、食品事業者等とあわせて過半でも可能に
- 農業用施設の建設に係る農地転用許可の迅速化
- 地域計画に定められた農業用施設について農地転用許可不要(面積要件撤廃)【6年度】
- 農畜産物の加工・販売施設等を迅速・円滑に建設することを可能に
- 改正漁業法の運用改善
- 漁業権の有効活用、漁協の組合員資格要件の柔軟な運用【4,5年度】
- 新規の漁業権として延べ約830件を免許(暫定値)
- 農地所有適格法人の要件緩和
- 交通物流
- スタートアップの成長基盤整備
- 起業家の負担軽減
- 定款認証制度の見直し、迅速化【4~6年度】
- 令和6年度にスタートアップ設立を72時間で完了(「モデル定款」システム構築後に24時間に短縮)、手数料引下げを検討
- 外国人材の受け入れ・活躍促進
- 海外起業人材の活躍に資する在留資格の見直し【4~6年度】
- 海外のスタートアップ起業人材の在留期間を2年に延長
- AIによる契約書レビュー
- 契約書の自動レビューサービスの利活用に向けたガイドライン制定【5年度】
- 「AI契約書レビュー」導入企業数が1年で約4割増
- 起業家の負担軽減
- 良質な雇用の確保
- 「自爆営業」の根絶
- 労働政策審議会においてパワハラ防止指針改正を検討【6年度】
- 自爆営業の類型等を明確化
- 「偽装フリーランス」防止
- AI等による指示の扱いも含め、労働者と自営業者の線引きを明確化【6年度】
- 令和6年度中にフリーランス・ギグワーカーの保護の在り方に関する議論を深め、最低賃金法や労働基準法への適用を目指す
- 副業・兼業の円滑化(「競業避止契約」の適正化)
- ノウハウ流出のおそれがない場合の副業・兼業の制限の是非など考え方を明確化【6年度】
- 令和6年度中に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」及びモデル就業規則にて明確化し、副業・兼業の更なる促進を目指す
- 「自爆営業」の根絶
内閣府 第4回公益通報者保護制度検討会(2024年9月2日)
▼ <資料1>中間論点整理(案)
- 制度見直しの必要性
- 事業者内で重大な法令違反を目撃した場合、労働者等が公益通報を躊躇又は断念する主な要因は、
- 誰に相談・通報したら良いのか分からないこと
- 上司や同僚などに公益通報者の身元が特定され、不利益取扱いを受ける懸念があること
- 公益通報をしても、利益相反のない独立した立場で適切な調査が実施されない懸念があること
であり、令和5年度の消費者庁の各種実態調査結果からもこのことが裏付けられている。
- このため、令和2年改正では、事業者に対して、従事者を定める義務(以下、従事者を定めることを「従事者指定」といい、従事者を定める義務を「従事者指定義務」という。)の他、体制整備義務を課すとともに、従事者には公益通報者を特定させる事項に関する守秘義務が課された。
- 従事者指定義務及び従事者の守秘義務により、事業者内で利益相反になりにくい体制が確保され、不正を相談・通報する先が明確化・集約されることで、労働者が安心して公益通報をすることができるようになること、また、従事者の専門性が向上し、公益通報が適切に対処され、国民の生命、身体、財産等の被害の未然防止・拡大防止のための事業者の自浄機能の発揮につながることが期待された。
- 令和2年改正については、令和5年度の消費者庁の民間事業者に対する実態調査から、以下のような効果が認められる。
- 平成28年度に消費者庁が実施した実態調査結果と比較して、事業者における内部通報制度の導入が進み、従業員数300人超の事業者の導入率は82.0%から91.5%、従業員数300人以下の事業者の導入率は26.3%から46.9%に上昇している。
- 従業員数3,000人超の事業者における内部通報制度の活用が進み、その半数超が内部通報窓口の年間受付件数が30件超に上る等、平成28年度よりも増加している。
- 事業者において、内部通報の役割が一層認識されるようになり、内部通報制度を「導入している」と回答した事業者のうち、「不正発見の端緒」として、「(窓口や管理職等への)内部通報」を選択した割合は、76.8%と最多で、「内部監査」や「上司による業務チェック」を上回っており、この割合は平成28年度と比べて18%ポイント上昇している。
- 事業者における公益通報者保護制度の認知度が向上しており、平成28年度は、従業員数300人超の事業者の法及び事業者向けガイドラインの認知率が63.6%だったが、令和5年度は、従業員数300人超の非上場事業者に限定されるが、法の指針が求める義務について、91.3%が「知っている」と回答している
- 一方で、以下のような事象や実態調査結果から、事業者の体制整備の不徹底や運用上の課題も認められる。
- 内部通報制度が十分に機能せず、外部通報によって、国民生活の安全・安心を脅かすような不祥事が発覚しており、その中には、事業者が従事者指定義務や体制整備義務を一切履行せず、重大な不正について内部で指摘があったものの、特段の対処をしなかった事案があった。
- 民間事業者に対する実態調査で、非上場の義務対象事業者の1割超(10.7%)は「(従事者指定の)義務を知っているが、担当者を指名していない」と回答し、その理由について、その約半数が「上司などに情報が共有されており、特段不都合もないため」を選択している。従事者指定義務の認知度は9割を超えている(92.3%)ものの、一部の事業者においては、従事者を指定しなくても、部下から情報が共有されると考え、義務が履行されない状況にある。
- 直近5年以内に企業から公表された不祥事に関する第三者委員会等の報告書で内部通報制度についての指摘があった企業では、「内部通報窓口の通報件数が殆どない」、「従業員の多くが内部通報窓口の存在について知らない」といった課題があった5。民間事業者に対する実態調査で内部通報制度を「導入している」と回答した事業者においても、全体として、内部通報窓口の利用は限定的である。従業員数3,000人超の事業者であっても、内部通報窓口の年間受付件数が「0件」、「1-5件」又は「把握していない」と回答した事業者は、全体の12.3%を占めている。
- このような状況を踏まえ、更なる法改正を通じて、事業者の体制整備の徹底や実効性向上を図るとともに、公益通報に対する国民の不安を払拭することを支持する意見が多かった。
- なお、制度の見直しを検討するにあたっては、従業員数3,000人超など、大規模な事業者では、既に内部通報窓口が大いに活用されており、通報窓口のリソースを踏まえ、企業にとって本当に対応が必要な通報が見過ごされないように留意する必要があるとの意見もあった。
- また、ガバナンスや人権尊重の観点から、日本企業の内部通報制度の実効性に対する国外の関心は高く、ESG評価機関や海外投資家、取引先等からの要請に応え、内部通報の年間受付件数を公表している事業者も多い。本年5月には、「国連ビジネスと人権の作業部会(The UN Working Group on Business and Human Rights)」(以下「ビジネスと人権作業部会」という。)から、通報に対する報復に罰則がないことなど、公益通報者保護制度の課題について、改正法附則第5条(検討)に基づく法の見直しで改善するよう勧告を受けている。
- さらに、近年、諸外国では公益通報者保護の強化が進んでおり、EU通報者保護指令(以下「EU指令」という。)や2019年のG20大阪サミットで承認された「効果的な公益通報者保護のためのハイレベル原則」(以下「G20ハイレベル原則」という。)にあるような国際的潮流と比べて、日本における公益通報者の保護は強化されているとは言えない状況にある。
- 以上を踏まえ、日本の企業が海外進出や投資などで悪影響を受けないよう、法改正によって、ガバナンスや人権尊重に対する国際的な要請に応えていく必要があるとの意見が多かった。
- 事業者内で重大な法令違反を目撃した場合、労働者等が公益通報を躊躇又は断念する主な要因は、
- 個別論点
- 事業者における体制整備の徹底と実効性の向上
- 従事者指定義務の違反事業者への対応
- 公益通報者を特定させる事項を伝達される者についての従事者指定義務は、事業者の体制整備の中核的役割を果たす特に重要なものであるとして、法定指針ではなく、法律に明記されている。しかしながら、
- 民間事業者に対する実態調査において、非上場の義務対象事業者のうち、「(従事者指定の)義務を知っているが、担当者を指名していない」と回答した事業者が回答者全体の1割超を占めていること
- 従事者の守秘義務違反には刑事罰が規定されている一方、事業者の従事者指定義務違反には、特段の罰則が規定されていないこと
- を踏まえ、従事者指定義務の履行徹底に向けて、行政措置権限の強化を支持する意見が多かった。具体的には、現行法の報告徴収、指導・助言、勧告、勧告に従わない場合の公表に加え、勧告に従わない場合の命令権や立入検査権を規定し、是正すべき旨の命令を行っても違反が是正されない場合には、刑事罰を科すべきとの提案があった。
- また、命令を行っても違反状態が解消しない事業者に対し、罰則を規定することの副次的な効果として、従事者指定義務違反の事実が、公益通報者保護法の通報対象事実となることにより、消費者庁の法執行の実効性向上が期待できるとの意見もあった。
- 加えて、事業者に対する罰則規定を設けることで不祥事の発生や不利益取扱いを防止するのみならず、自浄機能を高める努力を行っている事業者の自主的な取組みを後押しする、あるいは、自浄機能が十分ではない事業者の体制整備を支援する発想が必要であるとの意見もあった。
- 公益通報者を特定させる事項を伝達される者についての従事者指定義務は、事業者の体制整備の中核的役割を果たす特に重要なものであるとして、法定指針ではなく、法律に明記されている。しかしながら、
- 体制整備の実効性向上のための対応
- 内部通報制度の実効性向上には、内部通報制度が従業員に認知され、信頼されることが必要不可欠である。事業者の労働者等及び役員・退職者に対する法及び体制の教育・周知については、体制整備義務の一部として、法定指針に規定されているが、民間事業者に対する実態調査において、通報を理由とする不利益取扱いの禁止について、「特段周知していない」と回答した事業者が、非上場の義務対象事業者の1割超(13.7%)を占めている。また、就労者に対するアンケート調査では、従業員数300人超の事業者に勤める就労者のうち、内部通報制度を理解している割合や内部通報窓口を認知している割合は全体の半数に届いておらず、内部通報制度や体制についての周知は必ずしも徹底されていない。
- 直近5年以内に公表された企業不祥事に関する第三者委員会等の報告書で内部通報制度について指摘があった企業においても、内部通報窓口の存在について、多くの従業員が知らないと回答した事例や主としてハラスメント関連の窓口と認識されていた事例があり、事業者による周知の不徹底が、内部通報制度が機能しない一因になっている。
- 加えて、内部通報制度の理解度が低い就労者は、相対的に高い割合で、SNSやインターネット上のウェブサイトを「最も通報しやすい先」として認識しており、SNSへの行き過ぎた投稿や内部告発により、事業者のレピュテーションが必要以上に損なわれる事態に発展する等、公益通報者保護法の通報先に応じた保護要件が労働者等に正しく理解されていない状況がある。
- 一方、内部通報制度の理解度が高い就労者は、その多くが勤務先における研修や周知が理解のきっかけと回答しており、重大な法令違反目撃時の通報意欲が高く、実際に通報した経験も相対的に多い。このため、事業者による周知の徹底により、就労者の理解度が向上し、保護要件を満たす形で適切な公益通報が促されるという効果が期待できる。
- 以上を踏まえ、内部通報制度の実効性向上と適切な形での公益通報の促進に向けて、通報先に応じた保護要件や公益通報を理由とする不利益取扱いの禁止、事業者の体制整備義務や従事者の守秘義務等、事業者による法令の概要の周知を法律上の義務として規定し、徹底させることを支持する意見が多かった。
- 加えて、その他の意見として、EU指令に倣い、内部通報のフォローアップ手続を設け、通報者に適切な対応がとられていることを示し、その心理的な安全性を確保することも実効性向上の観点から重要との意見もあった。
- 体制整備義務の対象となる事業者の範囲拡大
- 令和5年度の消費者庁の実態調査から、従業員数300人以下の事業者(1,488者)のうち、内部通報制度を導入していない事業者(790者)の半数近く(386者)が、その理由について、「努力義務にとどまるから」と回答している。こうした状況を踏まえ、体制整備義務の対象となる事業者の範囲を、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者にも拡大すべきとの意見があった。
- 具体的に、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)では、常時雇用する労働者の数が101人以上の事業主は、労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定することが義務付けられており、これに倣い、体制整備義務の対象を、常時使用する労働者の数が100人超300人以下の事業者にも広げることが考えられるとの提案があった。
- 一方、中小規模事業者における公益通報の件数は少ないことから、公益通報対応のノウハウを蓄積することは難しく、特に小規模事業者の場合には、守秘義務を遵守しても、意図せず公益通報者の身元が明らかになる可能性があり、実効的な体制整備を求めることは現実的ではないとの意見や内部通報窓口の導入支援を行う民間サービス等も少なく、中小規模事業者の対応のハードルが高いとの意見もあった。
- また、中小規模事業者の内部通報窓口の設置負担に鑑み、例えば、弁護士会などが主体となった通報窓口プラットフォームを整備することを検討してはどうかとの意見があった。
- 従事者指定義務の違反事業者への対応
- 公益通報を阻害する要因への対処
- 公益通報者を探索する行為の禁止
- 通報者探索の防止については、体制整備義務の一部として、法定指針に規定されているが、公益通報がなされた後、事業者内で公益通報者を特定することを目的とした調査などが行われることは、公益通報者自身が脅威に感じることはもちろん、公益通報を検討している他の労働者を萎縮させるなどの悪影響があり、法律上、通報者探索を禁止する明文規定を設けるべきとの意見があった。
- また、法律上明記するだけではなく、通報者を探索する行為に対し、行政措置又は刑事罰を規定すべきとの意見もあった。
- 公益通報を妨害する行為の禁止
- 労働者に公益通報しないことを約束させるなど、公益通報を妨害する行為は、本法の趣旨に大きく反する行為であり、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国などにおいて、法律上、禁止されている他、通報を妨害する合意等を無効とする規定がある。日本においても、こうした行為を禁止する明文規定を設けるとともに、違反時の行政措置又は刑事罰を規定すべきとの意見があった。
- 公益通報のために必要な資料収集・持ち出し行為の免責
- 証拠となる資料がなければ、通報先に対して、公益通報者が見聞きした不正行為の存在を証明することができないが、公益通報のために必要な資料収集・持ち出し行為が事業者による解雇や懲戒等の対象となるのかどうかが明確ではなく、公益通報を躊躇する要因になっている。このため、公益通報のために必要で社会的相当性を逸脱しない限り、資料収集・持ち出し行為が免責されるよう規定を設けるべきとの意見があった。
- この点について、EU指令第21条(報復からの保護措置)では、「通報のための証拠となる情報の取得又はアクセスは、それ自体が犯罪となる場合を除いて免責される」と規定されている他、G20ハイレベル原則の原則9においても、「公益通報者が、通報行為に関連して責任を問われることがないよう確保する」と記載されており、これらに照らして、日本の公益通報者保護は十分ではないとの意見もあった。
- 加えて、公益通報に伴う資料収集・持ち出し行為について、刑事責任を問われる可能性があれば、安心して公益通報ができないため、民事免責のみならず、刑事免責についても具体的要件を検討して法定する必要があるとの意見もあった。具体的検討にあたっては、窃盗罪、横領罪、背任罪及び不正競争防止法上の営業秘密侵害罪等に該当する可能性も踏まえ、各犯罪の構成要件との関係を整理する必要があるとの提案があった。
- 公益通報の刑事免責
- 現行法では、通報行為の民事免責は規定されているものの、刑事免責が規定されておらず、公益通報を行ったことについて、あらゆる責任が免除されるのか予測可能性に欠けている。このため、刑事免責の明文化を検討してはどうかとの意見があった。
- 具体的には、関係する刑罰として、刑法の秘密漏示罪、名誉毀損罪、信用毀損罪の他、特別法の守秘義務違反時の罰則等があり、これらの構成要件との関係を整理する必要があるとの提案があった。
- 濫用的通報者への対応
- 日本の大企業の内部通報窓口には、公益通報には該当しない通報が多数なされており、従事者の負担が非常に大きく、重要な内部通報が見逃されないようにする必要があること、また、EU指令第23条には、通報者が故意に虚偽の通報を行った際の罰則が規定されていることを踏まえ、濫用的通報や虚偽通報に対し、罰則を設けるべきとの意見があった。
- 上記意見について、悪性の強さが明らかで、公益通報者保護制度を害するような行為を明確に処罰対象とすることは、制度の健全性を保つ上でメリットになる一方、新設した罰則の存在自体によって、公益通報をしようとする労働者が萎縮するというデメリットが生じるということもあり得、メリットとデメリットの両方について今後更に検討する必要があるとの提案があった。また、刑法には、虚偽告訴罪、名誉毀損罪及び偽計業務妨害罪があることから、これらの犯罪規定との関係を整理する必要があるとの提案もあった。
- 公益通報者を探索する行為の禁止
- 公益通報を理由とする不利益取扱い(報復)の抑止・救済
- 不利益取扱いの抑止
- (ア)不利益取扱いに対する罰則と対象となる不利益取扱いの範囲
- 平成18年4月の公益通報者保護法施行後、通報者が公益通報をしたことを理由に不利益取扱いを受けた事案が多数生じており、現行の民事ルールだけでは、不利益取扱いに対する抑止の効果が不十分であるとの指摘がなされてきた。以下の理由から、公益通報を理由とする不利益取扱いに対する刑事罰が必要との意見が多かった。
- 従事者の守秘義務違反に対して刑事罰がある一方、公益通報を理由とする不利益取扱いを行った事業者及び個人には罰則がないことは不均衡であり、法益侵害の視点からの整合性がとれない。
- 事業者内に内部通報制度が存在していても、通報後の不利益取扱いのおそれが十分に払拭されていないため、不正を発見しても内部通報に踏み切れない状況がある。
- EU指令を含め、諸外国においては法で保護される通報を理由とする不利益取扱いに罰則を設けている国が多い。
- 日本議長国下のサミットで承認されたG20ハイレベル原則の原則8で、「報復行為を行った者に対し、効果的で、相応かつ抑止力のある制裁を科す」ことが求められており、G20ハイレベル原則を取りまとめた日本においても、この原則を実施する必要がある。
- 「ビジネスと人権作業部会」から、公益通報者保護法の見直しの検討において、公益通報者に報復した事業者に罰則を導入するよう勧告を受けており、人権尊重の観点からも国際的な要請に応える必要がある。
- 一方、留意すべき事項として、以下の意見があった。
- 配置転換については、公益通報との因果関係を客観的に判断できず、刑事罰の導入によって企業の人事・労務管理に支障を来すおそれがあるため、守秘義務違反の場合と同列に扱うべきではない。
- 人権保護の重要性に国による違いはなくとも、各国の雇用形態には違いがあり、それを意識した制度設計が必要。特に解雇は万国共通だが、配置転換は異なり、罰則を検討するにあたっては、分けて検討する必要がある。
- 公益通報の基本的価値を毀損するような悪質な行為を取り上げ、事業活動を不当に萎縮させない要件を規定する必要があり、例えば、現行法の要件のうち、「不正の目的」の内容を明らかにできるかを議論すべき。
- 平成18年4月の公益通報者保護法施行後、通報者が公益通報をしたことを理由に不利益取扱いを受けた事案が多数生じており、現行の民事ルールだけでは、不利益取扱いに対する抑止の効果が不十分であるとの指摘がなされてきた。以下の理由から、公益通報を理由とする不利益取扱いに対する刑事罰が必要との意見が多かった。
- (イ)間接罰か、直罰かについて
- 行為の悪質性に鑑み、不利益取扱いに対する直罰を想定した意見が多かった一方、不利益取扱いを行った自然人及び法人の予測可能性を確保するため、直罰方式ではなく、行政による是正命令に違反するような場合にのみ、行政罰又は刑事罰が適用されるように措置すべきとの意見があった。
- (ア)不利益取扱いに対する罰則と対象となる不利益取扱いの範囲
- 不利益取扱いからの救済
- (ア)公益通報者の立証責任緩和と対象となる不利益取扱いの範囲
- 通報者が解雇その他の不利益取扱いを受けた場合、公益通報者保護法で保護されるには、当該解雇その他の不利益取扱いが通報を理由とすることの立証を通報者が行わなければならない。しかしながら、情報や証拠資料が事業者側に偏在していることなどから、その立証が困難な場合もあり、通報者にとって大きな負担となっているとの指摘がある。以下の理由から、不利益取扱いが公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換し、公益通報者の立証責任を緩和すべきとの意見が多かった。
- 公益通報の受益者は企業の他、市民や社会である一方、日本においては、公益通報に伴うコストやリスクは公益通報者である個人だけが負っている構図となってバランスを欠いており、公益通報を躊躇する一因になっている。
- EU諸国やアメリカ、韓国等では、法律上、保護要件を満たす通報者の立証責任を緩和しており、G20ハイレベル原則の原則7でも、解雇の場合も含め、立証責任を比例した方法で分配するメカニズムの導入の検討が求められているが、日本だけが導入していない。
- 労働者・企業間の情報量の格差や実務上、企業側に立証責任がある労働契約法(平成19年法律第128号)上の解雇権濫用法理との平仄の観点から、解雇が公益通報をしたことを理由としてなされたことの立証責任は事業者に転換されるべき。
- 一方、立証責任の緩和に慎重な意見として、以下があった。
- 解雇については、一般の労働紛争において、公益通報を行った労働者も含め、労働者側の立証負担が一定程度軽減されている。このため、公益通報者保護法で新たに立証責任を緩和する規定を設ける必要があるかについては慎重に検討する必要がある。
- 解雇権濫用と公益通報を理由とする解雇で、どちらで提訴・認定されるかには様々な判断があり、公益通報者が地位回復を目指す場合には、両者の効果には違いがない。
- 人事上の取扱いに不満をもつ労働者の濫用的通報が懸念され、特に配置転換は経営活動の中で頻繁に行われるものであり、立証責任の転換によって、事業者の経営判断や人事・労務管理が制約されるおそれがある。
- 上記意見に対して、以下の反論があった。
- 解雇権濫用法理があるから公益通報者保護法上の立証責任の緩和は不要とすると、公益通報者保護法の存在意義が問題となる。解雇について、労働契約法上の解雇権濫用における評価根拠事実・評価障害事実と、公益通報者保護法上の公益通報を理由とした不利益取扱いであるという因果関係の評価根拠事実・評価障害事実は、必ずしも重ならない部分もあるために、解雇についても公益通報者保護法に立証責任緩和の規定を設けることには意味がある。
- 通報者にとって不利益取扱いを受けたことの精神的苦痛は大きく、公益通報者保護法上の立証責任の緩和によって、労働契約法上の解雇権濫用法理の適用では通常、認められない慰謝料が認められやすくなるという導入効果は重要。
- 制度が悪用されるおそれがあるとの意見について、現行法は「不正な目的」がある場合は公益通報ではないとして、保護しない制度になっており、この目的要件が悪意ある濫用的通報者への一定の歯止めとなる。
- 公益通報を躊躇させないという法の趣旨を貫徹させるには、解雇のみならず、配置転換も含めた不利益取扱いについて、立証責任の緩和が必要。
- 無用な争いを避けるために通報者に対する措置を一時凍結するなど、人事・労務管理上の支障を生じるとの懸念があるが、正当な理由があれば解雇や懲戒、配置転換は可能であり、当該労働者が公益通報を行ったことによって妨げられるものではない。このような制度の仕組みが、あらかじめ労働者・事業者の双方で明確になっていることで、無用な争いは少なくすることができる。
- 事業者は人事プロセスを客観化する必要があり、事業者の窓口負担が重く、制度を悪用する通報者がいるというだけでは、公益通報を理由とする立証責任の転換に反対する理由にはならない。
- 加えて、立証責任を緩和する場合の具体的な規定振りについて、因果関係の不存在の立証は事業者であっても困難な場合があるため、正当な理由の存在を証明させるEU指令のモデルは一案であるとの提案があった。
- 通報者が解雇その他の不利益取扱いを受けた場合、公益通報者保護法で保護されるには、当該解雇その他の不利益取扱いが通報を理由とすることの立証を通報者が行わなければならない。しかしながら、情報や証拠資料が事業者側に偏在していることなどから、その立証が困難な場合もあり、通報者にとって大きな負担となっているとの指摘がある。以下の理由から、不利益取扱いが公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換し、公益通報者の立証責任を緩和すべきとの意見が多かった。
- (イ)その他
- 訴訟を起こすことの経済的・心理的負担は大きく、公益通報を理由とする不利益取扱いであることの立証負担も大きいことを踏まえ、不利益取扱いを受けた公益通報者が救済される手段として、訴訟以外の救済手段の整備を求める意見があった。
- 具体的には、行政当局が関与し、生成AIを活用した公益通報該当性の判断の効率化等を通じて、公益通報者の支援を行うことや、ADRによる仲介あっせんを通じた早期救済の仕組みづくりを求める意見があった。
- また、公益通報を理由とする不利益取扱いであると裁判上認定された場合の損害賠償額増額の仕組みづくりを求める意見もあった。
- (ア)公益通報者の立証責任緩和と対象となる不利益取扱いの範囲
- 不利益取扱いの範囲の明確化
- 不利益取扱いの具体例として、現行法上、解雇、降格、減給、退職金の不支給が明記されているが、配置転換についても明記すべきという意見があった。
- 不利益取扱いの抑止
- その他の論点
- 通報主体や保護される者の範囲拡大
- 退職者
- 令和2年改正で、退職後1年以内の労働者と役員が、保護される通報主体に追加された。退職後1年以内の者と1年超の者を区別する合理的な理由はなく、海外法制も参考に、退職後の期間制限を撤廃すべきとの意見があった。
- 取引先事業者・フリーランス
- 働き方の多様化が進展し、従業員のいない個人事業者や一人社長など、いわゆるフリーランスという働き方が増えている。大部分のフリーランスにおいては特定の取引先と継続的な関係を持ちつつ、経済的に依存する傾向に陥りやすい。特にフリーランスとしての事業が主たる生計の手段である場合、発注事業者から指示を受け、役務を提供し、収入を依存する点で、その実質は、使用者と労働者との関係に類似するものとなっている。このため、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)の制定により、フリーランスの保護が強化された。
- 公益通報との関係においても、フリーランスは労働者と同様、事業に関連した不正を知り得る立場にあるが、労働者に準じる弱い立場にあることが多く、公益通報を理由とする契約の解除や取引の削減等の不利益取扱いを受ける懸念があること、また、EU指令第4条やオーストラリア会社法1317AAA条において、法文上又は解釈上、保護される通報者にフリーランスが含まれていることを踏まえ、日本においても、保護される通報者の範囲にフリーランスを含めるべきとの意見があった。
- さらに、下請事業者についても、元請事業者との関係で弱い立場に置かれているから、保護される通報者の範囲に含めるべきとの意見もあった。
- その他
- 上記の他、複数人が共同して公益通報が行われるなど、複数の共同通報者によって通報要件を満たす場合も全員が保護の対象となるよう、例えば公益通報者保護法第8条(解釈規定)や法定指針で明文化することが必要であるとの意見があった。
- 退職者
- 通報対象事実の範囲の見直し
- 通報対象事実については、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を直接的な目的とする法律の刑事罰・過料の対象行為や違反状態が最終的にこれらの罰則につながる行為に限定されており、対象法律の規定方式は、別表及び政令で指定するポジティブリスト方式をとっている。
- 様々な法律の規定において、その保護法益や目的は多種多様な場合があり、別表や政令に列挙されていない法律の規定ではあるものの、国民の利益擁護の観点から重要な規定は存在しており、法律の限定列挙によって労働者の保護が左右されることに不合理な面があるとして、現在のポジティブリスト方式を改め、除外すべき法律があれば、これを列挙するネガティブリスト方式を採用すべきとの意見があった。
- また、公益の観点から、犯罪行為や過料の対象として規定された違反行為の事実がそれ以外の法令違反の事実より常に重要であるとは言いがたく、刑事罰や過料による限定を外すべきとの意見もあった。
- 行政機関に対する公益通報(2号通報)の保護要件の緩和
- 行政機関に対して書面でする公益通報の保護要件について、氏名に代えてメールアドレス等の継続的に連絡が取り合える連絡先を記載した場合や、弁護士である代理人を選任した場合も同様に保護対象とすべきとの意見があった。
- 通報主体や保護される者の範囲拡大
- 事業者における体制整備の徹底と実効性の向上
内閣府 月例経済報告
▼ 月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(令和6年8月)
- 日本経済の基調判断
- 現状 【上方修正】
- 景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。
- (先月の判断) 景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。
- 先行き
- 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。
- 現状 【上方修正】
- 政策の基本的態度
- 「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」等に基づき、物価上昇を上回る賃金上昇の実現や官民連携投資による社会課題解決と生産性向上に取り組む。
- 「デフレ完全脱却のための総合経済対策」及びその裏付けとなる令和5年度補正予算並びに令和6年度予算を迅速かつ着実に執行する。また、足元の物価動向の中、年金生活世帯や中小企業にとっては厳しい状況が続いており、まずは、早急に着手可能で即効性のある対策を講じるなど、二段構えでの対応を行っていく。
- 「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」に基づき、令和6年能登半島地震の被災者の生活、生業の再建をはじめ、被災地の復旧・復興に至るまで、予備費を活用し切れ目なく対応する。
- 日本銀行は、7月31日、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度で推移するよう促すこととともに、長期国債買入れの減額計画を決定した。日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。
- 政府と日本銀行は、引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を行っていく。
- こうした取組により、デフレからの完全脱却、成長型の新たな経済ステージへの移行を実現していく。
- GDPの動向
- 我が国の名目GDPは、1973年度に初めて100兆円を超えて以降、約5年毎に約100兆円ずつ増加し、1992年度に500兆円を超えたが、その後約30年の間、500兆円台で推移。2024年4-6月期に年率換算で史上初めて600兆円を超えた。
- 4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%(年率+3.1%)と、2四半期ぶりのプラス成長。消費や投資をはじめ内需が押上げに寄与。個人消費は、物価上昇の下でも増加し、5四半期ぶりに実質でもプラス。
- 設備投資の動向
- 民間企業の設備投資は、2023年1-3月期に名目で年率換算100兆円を超え、2024年4-6月期には106.3兆円と、1991年(104.9兆円)以来33年ぶりに過去最高を更新。実質でも持ち直しの動きが続く。
- 設備投資の約2割を占める研究開発投資は、24年度計画が+8.7%と、引き続き高い意欲。一方、日本企業の研究開発投資は、米英と比較して製造業に偏っており、情報通信や専門・科学技術サービスなど非製造業で投資拡大の余地。
- 研究開発は将来の成長の源泉。日本の15歳時点での数学的・科学的リテラシーは男女ともにOECD加盟国中1位であり、研究開発のポテンシャルは高い。能力の高い人材が存分に力を発揮するための教育や組織マネジメントが重要。
- 賃金の動向
- フルタイム労働者の現金給与総額(名目)は、2024年上半期は前年比2.7%と27年ぶりの高い伸び率。実質賃金では、パート時給は前年比プラスが継続、フルタイム労働者も、春闘賃上げが反映され始めていることに加え、夏のボーナスが堅調であったことから、6月は前年比でプラスに。振れの大きい特別給与(ボーナス等)を除く定期給与でも着実に持ち直し。
- こうした結果、実質総雇用者所得は約3年ぶりに前年比プラスに転じた。
- 特別給与(ボーナス等)の伸びを事業所規模別にみると、今年は中小規模の事業所の伸びが寄与。
- 産業別の所定内給与の伸びをみると、人手不足感の強い建設、運輸等で高い伸びが続くとともに、6月の診療報酬改定等に伴い、医療・福祉の賃金も伸び始めている。
- 個人消費の動向
- 2024年4-6月期の個人消費は、実質GDP成長率を0.5%pt押上げ。1-3月期に消費を大きく押し下げた自動車出荷停止事案の反動により耐久財が増加したことに加え、半耐久財・非耐久財が共にプラスに寄与。サービスは増加傾向の中で横ばい。特殊要因の大きい耐久財を除くと、1-3月期、4-6月期ともにプラスの伸び。
- 家計の可処分所得は、賃上げの反映や夏のボーナスによる実収入の増加に加え、定額減税の効果もあり、名目・実質ともに大きく増加。超過貯蓄の取り崩しはアメリカと比べ限定的。今後の消費の下支えに期待。
- 4月以降の高気温の影響もあって、家電販売ではエアコンの売上が好調、オリ・パラ需要もありテレビの売上も増加し、全体として持ち直しの動き。夏物衣料品の売上も堅調。大手アパレルチェーンは客単価・客数ともに増加傾向。
- 今年の夏は、全国的に平年を大きく上回る気温を観測。猛暑日を記録した地点数は、過去5年で突出した多さだった昨年を上回る傾向。猛暑の影響について、景気ウォッチャーによると、(1)エアコンや日傘、アイスクリーム等の季節商材の消費が増加する一方、(2)テーマパークやレストラン等で、外出控えにより客足が遠のくなど、プラス・マイナス両面あり。
- 報道等によると、8月8日の南海トラフ地震臨時情報発表後、太平洋側を中心にイベント中止、旅館等の宿泊キャンセル等の影響。一方、POSデータでみると、水や非常食といった防災関連財の売上高は急増。
- 物価の動向
- 消費者物価上昇率は、昨年11月以降、引き続き2%台で推移。8月以降「酷暑乗り切り緊急支援」による電気・ガス料金補助が開始され、9月から11月にかけて、消費者物価上昇率の押下げに寄与する見込み。
- 輸入物価は、契約通貨ベースでは23年夏ごろから横ばいの一方、円ベースでは円安の進行により緩やかに上昇してきたが、足下で円安が是正されたこともあり、下落方向に向かうと見込まれる。
- 購入頻度の高い品目の価格は、全体平均より高い上昇率。主食品では、米の価格は2023年末以降上昇し、7月は前年同月比+17%と上昇。新米流通による供給量増加を今後見込むが、食料支出割合の高い低所得層等への影響は注視。
- アメリカ経済の動向
- アメリカは個人消費を中心に景気は拡大。設備投資は、半導体法等に加えAI需要により情報通信機器が増加。
- 消費者物価上昇率は2%台に低下。ただし、食料品等の身近な財・サービスの価格は、コロナ禍前と比較して高い状況。雇用者数は増勢が鈍化。特に、ヘルスケア等を除く民間部門の増加幅は縮小。局面が変化しつつある。
- 長期的な予想物価上昇率の安定が、雇用の大幅減少なき物価上昇率の低下につながってきた可能性。物価と賃金のノルムの定着が、安定的なマクロ経済環境の維持のためにも重要であることが示唆されている。
- いわゆるラストベルトと呼ばれる州では、製造業従事者比率が高い。ラストベルトの製造業の労働生産性は、全米平均と比較して伸びが低い傾向。
- 世帯所得中央値は、20世紀には全米平均を上回っていたが、現在は下回っている。
- ラストベルトでは、大卒未満の白人の人口割合、高齢化率が高い。
- 欧州経済
- ユーロ圏経済及び英国経済は、実質GDP成長率が2024年4-6月期もプラスになり、景気は持ち直しの動き。
- 消費者物価上昇率の低下を受け、ECBは6月に、BOEは8月に利下げ。
- 宮崎県等の経済と地震の影響について
- 宮崎県の人口は約104万人、県内総生産約3.6兆円(日本全体に占めるシェアは約0.6%)
- 日向灘を震源とする地震(8月8日)により、宮崎県、鹿児島県の一部工場の生産活動に影響はあったものの、大きな被害はなく、再開済。
- 工業
- 宮崎県の工業は、食料品23%、電子部品・デバイス・電子回路11%、化学11%、飲料・たばこ・飼料11%、ゴム6%で、全体の約6割を占める。(1)食料品では鶏肉加工、(2)電子部品・デバイス・電子回路では半導体前工程、シリコンウエハ、(3)化学、(4)飲料では焼酎、(5)ゴムでは四輪車タイヤ等。
- 農林水産業
- 農業産出額は3,505億円〔全国第6位〕。うち、畜産が2,349億円〔3位〕(うち肉用牛826億円〔3位〕、豚520億円〔3位〕、鶏905億円〔2位〕)で、農業産出額の67%を占めている。農産物の生産量は、きゅうり、キンカン、ヒュウガナツが全国第1位、ピーマン、にがうり、ズッキーニ、マンゴーが2位。
- 海面漁業・養殖業産出額は312億円〔全国第14位〕。水産物の生産量は、海面漁業でまぐろ類で第4位、海面養殖業でぶりが4位、内水面養殖でうなぎが3位。
【公正取引委員会】
※現在、該当の記事はありません。
【金融庁】
【2024年11月】
金融庁 FATFによる市中協議文書「AML/CFT及び金融包摂に関するFATF基準の改訂案」の公表について
▼ AML/CFT及び金融包摂に関するFATF基準の改訂案(翻訳)
- 金融活動作業部会(FATF)は、金融包摂を促進するための措置とより整合させるため、FATF勧告の改訂を検討しています。これは、AML/CFT対策の意図しない結果に対処するためのFATFの作業プログラムの一環です。FATFは、提案された変更について、関心のあるステークホルダーからの意見やコメントを求めています。
- 改訂版は、勧告1とその解釈ノートに焦点を当てており、勧告10と15、および関連する用語集の定義に対応する変更が加えられています。これらの改正案は、リスクベース・アプローチにおける比例性と簡素化措置への一層の注目を通じて金融包摂をより促進すること、また、各国、監督当局、金融機関が簡素化措置を実施する際により大きな信頼性と保証を与えることを目的としています。
- FATFは、以下の問題に関する意見を特に歓迎します。
- FATFは、リスクベースのアプローチの文脈でこれらの概念をどのように適用すべきかを明確にするために、勧告1の「相応」という用語を「比例」に置き換えることを検討しています。簡素化された措置に関して、より明確な期待を設定すること。また、FATFの文言を金融包摂のステークホルダーやフレームワークの文言とより密接に一致させること。これらの目的のために、「比例」という用語は次のように定義されます:「FATF勧告によって採用されたリスクベースのアプローチの文脈では、比例または相応の措置または行動とは、特定されたリスクのレベルに適切に対応し、リスクを効果的に軽減するものです」。FATFは、この変更を進めるかどうか、および提案された定義についての意見を歓迎します。
- FATFは、監督当局に対し、「金融機関/DNFBPが実施するリスク軽減措置を見直し、考慮する」こと、リスクを部分的にしか理解しないことによる過剰遵守を避けること、また、金融機関とのエンゲージメントにおける比例性を考慮することを求める改正を検討しています。FATFは、この変更の潜在的な影響についての意見を歓迎します。
- 低リスクの状況における簡易措置の採用について、FATFは「各国が簡易措置を許可することを決定する可能性がある」を「各国は簡易措置を許可し、奨励すべきである」に置き換えることを提案しています。これにより、各国は、簡素化された措置を実施するための環境をより積極的に作り出すことが明確に求められることになります。
- 潜在的にリスクの高い状況の例として「非対面の顧客識別と取引」については、非対面のインタラクションに関連するリスクを軽減する可能性のあるデジタルIDシステムの技術的進歩を反映するための資格の追加(「適切なリスク軽減措置が実施されていない限り」)、そして多くの国でこれが金融機関との通常のインタラクションモードになっていることを認識しています。
金融庁 金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第4回)議事次第
▼ 資料1 事務局説明資料
- クロスボーダー収納代行に対する規制の必要性
- クロスボーダー収納代行業者は、銀行や資金移動業者等が行う国際送金と同様の機能を果たしているが、我が国においては金融規制が必ずしも課されておらず、銀行や資金移動業者等との間で規制・監督における整合性がとられていない。
- クロスボーダー送金に関して、同じ活動、同じリスクについては、同レベルの規制・監督が適用されるべき(Same activity, same risk, same regulations)との国際基準設定主体における議論もある中で、クロスボーダー収納代行業者に資金移動業者に係る規制を及ぼすことが考えられる。
- また、国際的な商取引が社会の中に着実に根付く中で、その決済手段である国際送金の安全性や確実性等を確保することは、利用者保護等の観点から重要。もっとも、国際送金には世界共通の統一的なルールやシステムがなく、複数の法域に所在する事業者間の協力により成立しているという実態があり、その安全性や確実性の確保は各法域に所在するそれぞれの事業者を規律する制度に頼らざるを得ない。そのため、特に国内利用者の保護の観点から、クロスボーダー収納代行につき適切な規律を設ける必要性は高いと考えられる。
- 金融安定理事会による市中協議文書「Recommendations for Regulating and Supervising Bank and Non-bank Payment Service Providers Offering Cross-border Payment Services(クロスボーダー送金サービスを提供する銀行・ノンバンクの規制・監督に係る勧告)」(2024年7月16日)
- 勧告1銀行と非銀行を含む送金事業者のリスク評価を行う。
- 勧告2リスク評価に基づき、銀行・非銀行に対する規制がそれぞれのリスクに対処できるものか、リスクに対して比例的なものであるか、整合的に適用されているかを評価し、必要に応じて法、規制、監督(オーバーサイト)の在り方を見直す。
- 勧告3規制・監督を通じて顧客保護を行う。
- 勧告4当局は、ガイダンスの公表などにより、規制・監督の透明性を確保する。
- 勧告5当局は、PSPに係るライセンスや登録制度を見直し、顧客保護の実施を確実なものとする、また、ライセンス付与や登録の過程で適合性テストや(fit and proper test)AML/CFTのコンプライアンスプログラムの評価などを実施する。
- 勧告6法域内及び法域間で当局間の情報交換を行う。また、情報やデータに対するアクセスを確保し、包括的なリスク評価やリスク対応を可能にする。
- クロスボーダー収納代行において考えられるリスク
- 支払人の二重支払のリスク
- クロスボーダー収納代行では、一般に国内外に複数の仲介者が介在するため、適切に代理受領権の設定がなされていない可能性がある。また、契約上代理受領権が設定されていても、紛争が生じた場合、国際私法の問題(準拠法の不確実性等)により当該代理受領権の設定が有効と判断されるか不確実である。また、海外における裁判対応等で支払人が負担を強いられる可能性がある点も留意が必要。
- 資金移動業者には資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる財産的基礎が求められる(資金決済法第40条第1項第3号) 。こうした措置を通じ支払人の二重支払リスクを軽減させることが可能。
- 資金決済の遅延等リスク
- クロスボーダー収納代行では、一般に法域を跨がって複数の者が資金決済に関与するため、国内のみで完結する収納代行と比較し、資金決済の遅延等が発生するリスクが高い。
- 資金移動業の登録により、体制整備義務(資金決済法第40条第1項第4号)や委託先管理義務(同法第50条)を課すことを通じ、リスク軽減が可能。また、資金決済の遅延等が発生しても、当局から当該業者に早期の原因究明や、要すれば是正措置を求めることが可能(同法第54条、55条)。
- 利用者情報保護上のリスク
- 収納代行にて取り扱われる利用者情報(支払人等の氏名や支払金額等の決済情報等)には、個人情報や経済的価値が高い情報が含まれている。クロスボーダー収納代行においては、利用者情報の越境移転を伴う可能性が高く、移転先の法域の情報保護法制の在り方によっては利用者の権利利益を侵害する恐れがある。
- 個人情報の保護については、収納代行業者も含めて、個人情報保護法により既に一定の規制がなされているものの、資金移動業者の登録を求める場合には、「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」を適用し、個人データの越境移転に係る同意取得の際に追加的な取組みを促すことが可能となる(同ガイドライン第13条)。また、個人情報に該当しない情報を含め、資金決済法に基づく安全管理措置の対象とすることが可能となる(資金決済法第49条)。
- 詐欺、マネー・ローンダリング等の不正利用リスク
- 詐欺事案や違法賭博における送金に関して、クロスボーダー収納代行が悪用された事例では、その資金の追跡が困難となる。
- 資金移動業の登録により、犯罪収益移転防止法の適用を通じて適切な監視を及ぼすことが可能となり、外為法・国外送金等調書法といった国際送金を行う業態に課される規制も適用されることとなる。
- 支払人の二重支払のリスク
- 規制の対象とすべき者(案)
- クロスボーダー収納代行の依頼を引き受けた者が為替取引の行為者であり、その者において資金移動業者の登録が必要。
- 為替取引の行為者からその業務の一部の委託を受けて、行為者の指導・監督の下に、クロスボーダー収納代行の一部を行うに過ぎない者(委託先)は、独自に為替取引を営んでいるわけではないため、原則資金移動業者の登録は不要。
- 寄附の実態について(金額及び方法)
- 内閣府「市民の社会貢献に関する実態調査」(2023年9月)によると、
- 年間寄附金額について、1万円未満が個人では約6割、世帯では約5割を占めている。(年間寄附回数は、2回以下が過半数(56.2%))
- 寄附を行った方法としては、募金箱での現金寄附に次いでクレジットカード等(ポイント・電子マネー含む)が2番目に多く、前回調査(2019年)から大きく増加。
- 対応案
- 基本的な考え方
- キャッシュレス手段を通じた寄附のニーズが高まっており、主要なキャッシュレス手段である前払式支払手段を通じた寄附を可能にすることは、公益増進の観点から意義が認められる。
- 他方、前払式支払手段の用途拡大の要望をこれまで極めて限定的にしか認めてこなかった主な理由は、為替取引規制の潜脱の防止にあることを十分に踏まえる必要。また、前払式支払手段の寄附への利用を認めた場合には、寄附スキームを悪用したマネー・ローンダリングや詐欺を誘発するおそれがあることにも留意すべき。
- 従って、寄附を全て認めるのではなく、寄附金受領者や金額に一定の制限を課した上で認めることとしてはどうか。
- 対応案
- 寄附金受領者の限定
- 要望を踏まえると、(1)国、地方公共団体、(2)法律に基づいて設置された認可法人 を寄附金受領者とすることが考えられるか。寄附金控除の枠組みを参考に、更に広げる余地があるか。
- 上限額の設定
- 年間寄附金額について、1万円未満が過半を占めていること、一般的な交通系ICカードのチャージ上限額が現状2万円であることを考えると、1回当たり1~2万円とすることが考えられる。
- なりすましへの対応
- 寄附金受領者の限定、上限額の設定により、マネー・ローンダリングや詐欺のリスクは軽減できたとしても、何者かが寄附金受領者になりすまして寄附金を募る等のリスクを排除できないおそれがある。
- こうしたなりすましのリスクには、以下等で対応を図っていくことが可能と考えられる。
- 発行者による加盟店管理
- 一定の場合を除いての払戻し禁止
- 高額電子移転可能型前払式支払手段については犯罪収益移転防止法上の取引時確認が必要であること
- 寄附金受領者の限定
- 基本的な考え方
- 暗号資産交換業者の状況
- 2024年9月の国内取引金額は約1.6兆円(現物取引:約0.9兆円、証拠金取引:約0.7兆円)
- ビットコイン価格は、2024年3月末時点ではおよそ71,334米ドル(約1,080万円)と過去最高値を更新、2024年9月末の国内口座数は約1100万口座を突破しており、利用者は拡大し続けている。
- 暗号資産交換業者は、29業者(2024年10月31日時点)である。
- FTX事案の経緯
- 2022年11月、FTX Japan(暗号資産交換業者・第一種金融商品取引業者)の親会社であるFTX Trading Limitedが破綻したことを受け、財務局は金融商品取引法に基づきFTX Japan社に対して資産の国内保有命令を発出した。その結果、同社の資産の国外流出を防止できた。
- 一方、資金決済法においては、資産の国内保有命令は措置されていない。全事業者のうち、半数以上は暗号資産の現物取引のみを行っており、そうした金融商品取引業登録を受けていない事業者が破綻した場合、資産の国内保有命令を発出できず、当該業者の破綻時等に顧客の資産の国外流出を防止できないおそれがある。
- 現行の規制の枠組み等
- 資金決済法上、顧客の暗号資産の国内管理は求められておらず、また資産の国内保有命令が措置されていない。そのため、暗号資産交換業者の破綻時等においても、顧客の暗号資産の国外への流出を防ぐ法的手段がない。
- ※暗号資産のデリバティブ取引を行っている業者については、第一種金融商品取引業者としての登録を受けているため、金融商品取引法第56条の3に基づき資産の国内保有命令を発出することが可能であるが、2024年10月31日時点では、暗号資産交換者29業者のうち21業者は、暗号資産の現物取引のみを取り扱っており、第一種金融商品取引業者としての登録は受けていない。
- 電子決済手段等取引業者については、現時点で登録業者は存在しないが、今後グローバルに活動する登録業者が現れることも想定されるところ、資金決済法上、顧客の電子決済手段の国内管理は必ずしも求められておらず、資産の国内保有命令も措置されていない。そのため、電子決済手段等取引業者の破綻時等においても、顧客の電子決済手段の国外への流出を防ぐ法的手段がない。
- 資金決済法上、顧客の暗号資産の国内管理は求められておらず、また資産の国内保有命令が措置されていない。そのため、暗号資産交換業者の破綻時等においても、顧客の暗号資産の国外への流出を防ぐ法的手段がない。
- 見直しの方向性(案)
- 金融商品取引業者に対する資産の国内保有命令の規定を参考に、資金決済法においても暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対する資産の国内保有命令を規定することが考えられる。
- 根拠
- (新設)
- 対象
- 全ての暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者
- 要件
- 公益又は利用者の保護のため必要かつ適当であると認める場合
- 対象資産
- 貸借対照表の負債の部に計上されるべき負債の額(保証債務の額を含む。)から非居住者に対する債務の額を控除して算定される額に相当する資産
- 根拠
- 金融商品取引業者に対する資産の国内保有命令の規定を参考に、資金決済法においても暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対する資産の国内保有命令を規定することが考えられる。
- ご議論いただきたい事項
- クロスボーダー収納代行への規制
- クロスボーダー収納代行に当たるサービスについて、資金移動業者の登録を受けることなく提供しているケースがある。このようなサービスについて、二重支払リスク・資金決済の遅延リスク等に対処する観点から為替取引規制を適用し、規制の対象とすることについてどう考えるか。
- クロスボーダー収納代行に為替取引規制の適用を行うに当たり、クロスボーダー収納代行の依頼を引き受けた者を規制対象とすることをどう考えるか。
- 前払式支払手段の寄附への利用
- 前払式支払手段の寄附への利用を認めることについてどう考えるか。利用を認める場合、寄附金受領者の限定や上限額の設定についてどう考えるか。
- 寄附スキームを悪用したマネー・ローンダリングや詐欺等の悪用リスクを軽減するために、追加的に措置を講じることが考えられるか。
- 暗号資産交換業・電子決済手段等取引業における資産の国内保有命令
- 現行の資金決済法では、暗号資産交換業者に対して資産の国内保有命令を発出することができない。グローバルに活動する暗号資産交換業者が破綻した場合等に国内利用者の資産の返還を担保するため、資産の国内保有命令を発出することができるよう規制を導入することについてどう考えるか。
- 同様の考え方に基づき、電子決済手段等取引業者についても、資産の国内保有命令を発出することができるよう規制を導入することについてどう考えるか。
- クロスボーダー収納代行への規制
金融庁 「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表(サステナビリティに関する考え方及び取組の開示)
▼ 記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)
- 投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み
- 開示検討の初期段階からCEOやCFO、経理部等が連携し、開示に関する取組みを推進することが充実した開示を行うにあたり重要
- 開示に前向きな企業であることを示す方策としては、開示タイミングの見直しを行い、有価証券報告書を株主総会前に開示することも有用
- 海外投資家向けに、日本語だけではなく、英語での情報発信も行うことが重要
- 個別開示例における評価ポイント以外の投資家・アナリスト・有識者からの主なコメントは以下のとおり
- サステナビリティ開示は中長期の経営戦略であることから、経営陣やガバナンスによるリーダーシップの発揮、経営者の意思表示、経営陣の意向を示すことが重要。具体的には、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」のセクションと、「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションが連携することが挙げられる
- サステナビリティに関する活動内容の記載だけではなく、活動の結果や活動の過程で何に貢献しようとしているのかについて開示することは有用
- 重要なサステナビリティ指標に関する実績について、第三者保証を受けていることを開示することで、正しいデータや記述を行うため取組みを行っていることを示すことができるため、信頼性確保の観点において有用
- 同じ用語であっても、企業と投資家で考え方に違いがあるものがあるため、用語を明確化することが重要。一例としては「マテリアリティ」が挙げられ、企業にとっての重要課題を意味する「マテリアリティ」と、財務・会計上において使用される業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある項目を意味する「マテリアリティ」の2つの意味で使用されている
- 投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント
- ガバナンスでは、執行側の記載だけではなく、監督側についても記載することが重要
- 監督側の記載としては、取締役会が経営陣をどのように監督しているかについて記載することが有用。具体的には、取締役会がサステナビリティ戦略をモニタリングするスキルを有しているか否かの記載や、取締役会等の監督機関への報告頻度、報告内容に加え、報酬制度を通じた経営者の評価について記載することが挙げられる
- 執行側の記載としては、委員会等の位置付けや責任者、構成員に加え、議論の頻度や内容、サステナビリティ関連のリスクと機会の優先順位付けの方針について記載することが挙げられる
- サステナビリティは、ESGのEやSの取組みの延長ではなく、中長期的な将来キャッシュ・フローに影響を与えるリスクと機会に関する概念であることを理解したうえで、戦略のセクションでは、企業理念や経営戦略にサステナビリティ戦略がどのように関わるかを開示することが有用
- サステナビリティ関連のリスクと機会を識別するためのプロセスについて開示することは有用。加えて、SASBスタンダートを参照した記載とすることはより有用
- リスク管理では、サステナビリティ関連のリスクだけではなく、機会についても記載することが必要。具体的には、サステナビリティ関連のリスクと機会をどのように識別・評価し、優先順位をつけているのかについて開示することが挙げられる
- 指標には比較可能な指標と独自指標があるが、なぜその指標を選定したか開示することが有用であり、独自指標の場合には、指標の定義を開示することが有用
- 指標及び目標では、指標と目標に加えて、目標に対する実績、実績に対する評価及び目標の達成時期について記載することが有用
- ガバナンスでは、執行側の記載だけではなく、監督側についても記載することが重要
- 投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント:個別テーマ
- 重要なサステナビリティ項目については、TCFDの4つのコアコンテンツに基づき開示をすることで、リスク要因だけではなく、機会に関する取組みを行っていることを示す手段になるため有用
- 知的財産は、企業価値の算定において重要な要素であり、知的財産について具体的に記載することは有用
金融庁 金融安定理事会による「暗号資産政策実施に関するG20ロードマップ:状況報告書」の公表について
▼ G20暗号資産政策実施ロードマップ:現状報告(グーグル翻訳)
- 暗号資産のリスクに対処するための調整された包括的な政策及び規制対応の効果的な実施を促進、支援、監視することは、G20の優先事項です。
- この状況報告は、IMF-FSB暗号資産政策実施ロードマップの進捗を反映しています。
- 各国・地域は、IMF、FSB、および基準設定主体(SSB)によって策定された政策および規制対応の実施において進展が見られました。ほぼすべてのFSB加盟国の管轄区域では、暗号資産やステーブルコインに関する既存の規制の枠組みを新たに策定したり、改訂したりする計画があるか、すでにその枠組みが整備されています。IMF、FSB、SSBs、金融活動作業部会は、G20を超えた政策枠組みの認識を高め、実施を支援するために、ワークショップ、アウトリーチセッション、知識共有イベント、能力開発プログラムを開催しています。
- しかし、このような進展にもかかわらず、課題は残っています。FSBフレームワークの一貫性のない実施は、その有効性を妨げ、規制当局の裁定取引につながる可能性があります。オフショア管轄区域に由来する国境を越えた暗号資産活動は、当局にとって規制および監督上の課題が高まっています。適用される法律や規制への違反が蔓延していることは、FSBフレームワークやその他の暗号資産に関する国際基準を実施するための努力を著しく損なうものです。ステーブルコインは、突然の信頼の喪失に対する脆弱性や、発行者または原資産の準備資産に対する潜在的な実行に対する脆弱性のため、特定の規制要件に従う必要があります。
- IMFとFSBは、SSBs及びその他の国際機関と共に、暗号資産市場に対する世界的に調整された包括的な政策及び規制アプローチを引き続き支援し、推進していきます。FSBは、2025年末までにFSBフレームワークの実施状況のレビューを行う。
▼ 全文 G20 Crypto-asset Policy Implementation Roadmap Status report
金融庁 金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)議事次第
▼ 資料1 事務局説明資料
- 第一回WGにおける委員からのご発言の概要(保険仲立人関係)
- 日本企業の中でリスクマネジメントの意識が高まる中、顧客の立場に立って、最適なリスクマネジメント手法を提案できる保険仲立人の活用は進めていくべき。
- 保険仲立人の活用促進に向けた議論にあたっては、保険の利用者である日本企業(リスクマネジャー)が保険仲立人を活用する理由・動機を把握することも重要。
- 現在の制度上、保険仲立人と保険代理店の実質的な業務について、再保険のアレンジ等の一部業務を除いては大きな差異がないように思われる一方で、保険仲立人に対しては保証金の供託や手数料・報酬の開示等の代理店にはない義務が設けられており、保険仲立人業に参入するインセンティブが低くなっているのではないか。顧客が保険仲立人と保険代理店を使い分ける業務上の差異を明確にすべき。
- 保険仲立人は顧客の立場に立つこととされているが、現在の監督指針において、その手数料は保険会社から受領することが求められている。この状況では、保険仲立人の保険商品の手配にあたり、手数料を支払う保険会社の意向に影響されてしまうおそれがあり、この制度は見直す必要があるのではないか。
- 現在の日本の制度上、保険仲立人と保険代理店の規制は完全に分かれているが、海外では、あまり競争条件に違いがない。今後の議論にあたっては、国際的な整合性も見つつ、我が国でどのようにしたら保険仲立人の活躍が広がるかということを考えることが重要。
- 誠実義務に基づくベストアドバイスの提供
- 保険代理店が所属保険会社の商品しか取り扱えない一方、保険仲立人は多くの保険会社や外国保険業者の中から顧客に最適な商品を選び、顧客に提示することが期待できる。
- また、顧客に最適な商品を選ぶにあたり、保険会社と交渉することや競争入札を実施して保険料を引き下げること、複数の保険会社・保険商品を組み合わせるなど、オーダーメイドの商品を組成することも期待できる。
- 総合的なリスクマネジメント業務の提供
- 顧客は、保険契約締結の媒介だけでなく、保有する様々なリスクの分析・評価、その結果を踏まえた最適な商品の選定、保険契約の条件の見直し、キャプティブの活用、各種のリスクコントロールの実施等、様々なリスクマネジメントのアドバイスを受けることが期待できる。
- 今般、保険代理店チャネルにおいて様々な問題が生じたことを踏まえ、保険仲立人の制度導入当初からの目的である販売チャネルの多様化及び販売面での競争を改めて促す観点から、保険仲立人の活用促進に向けた施策を検討してはどうか。
- 保険仲立人の活用の動機等
- 保険会社の代理人ではなく、顧客に対する誠実義務(ベストアドバイス義務)を負っている保険仲立人を活用したい。
- 保険会社に所属しない保険仲立人の方が、保険代理店よりも保険会社に対する交渉力が高いと考えた。
- 保険代理店の場合は所属保険会社の商品に限定されてしまうが、保険仲立人は多くの保険会社や外国保険業者の商品から選ぶことができるため、自社のニーズに適した保険プログラムの提案が期待される。
- 保険仲立人が有する日本企業のリスクマネジメントに係る豊富な知見を活用し、自社の取組みを見直すことで、より効率的な保険の手配が期待される。
- グローバルに事業を展開する事業会社では、海外拠点のリスクに包括的に対処する「グローバル保険プログラム」を組成することが多いが、その際には、国際的に活動する保険仲立人が有する豊富な国際的なネットワークやITインフラ、各国の保険・リスクに関する情報が欠かせない。
- 国際的に活動する保険仲立人は、元受保険契約と再保険契約をワンストップで対応できるほか、再保険市場の動向にも精通している。
- 媒介手数料の受領方法 対応の方向性
- 現在の取扱いは、1995年の制度創設時に、諸外国の状況等を参考にしながら、決められたもの。(注) 米国(ニューヨーク州)、英国、ドイツでは、制度上、保険仲立人は保険会社と顧客のいずれからも手数料を受領でき、通常、手数料は保険会社から受領している。
- 顧客から手数料を受領することを認めれば、①保険仲立人が顧客と保険会社の双方から手数料を受領することで、顧客の保険調達コストが増加するおそれがあるほか、②過度の手数料競争を招くおそれもある、との指摘もある。
- 保険仲立人が、保険会社だけでなく、顧客からも手数料を受領できるよう、監督指針の規定を削除してはどうか。(手数料の受領先及び金額については、保険仲立人・保険会社・顧客の三者で調整した上で決めることが考えられる。)
- その上で、今後の新たな手数料収受形態について、顧客の利益が害されないようにする観点からの措置を検討してはどうか。例えば、顧客と保険会社の双方から手数料を受領する場合は、保険仲立人は顧客に対し、手数料開示請求権がある旨をあらかじめ説明することが考えられる。
- 保証金の供託 対応の方向性
- 2013年のWG報告書では、「一定期間問題がなかった場合には、1千万円を目処にさらなる引き下げについて検討が行われることが適当である」とされているが、それ以降、ADR制度における紛争解決機関への申立てを含め、保険仲立人が保険契約者に大きな損失を与えるような事態は確認されていない。
- 保証金の最低金額を2,000万円から1,000万円に引き下げることとしてはどうか。また、現在、「過去3年間の手数料等の合計金額」とされているものを、「過去3年間の手数料等の平均金額」とすることについては、賠償資力を確保する金額を現行の3分の1にすることになるが、どう考えるか。
- 保険代理店等との協業 対応の方向性
- 上記のような保険を組成する場合、海外の保険市場に精通しており、国際的なネットワークが豊富な保険仲立人が参加すると、顧客に対してより良い保険プログラムを提案することも可能。(注2) 米国(ニューヨーク州)、英国、ドイツでは、保険仲立人と保険代理店の協業を禁止するような規制は存在しない。
- 保険契約者保護の観点から、保険仲立人と保険代理店等の役割分担を事前に顧客に説明する等、保険契約者の誤認防止措置を前提として、保険仲立人と保険代理店等の協業を認めてはどうか。
- 海外直接付保 対応の方向性
- 事業会社が抱えるリスクが多様化する中、海外の保険市場からの調達を含め、事業会社の適切な保険の調達を確保することは、重要な課題。
- この点、海外直接付保は保険契約者保護等の観点から原則禁止されているところ、保険仲立人は、国際的なネットワークを有しており、海外の保険市場に精通している事業者が多いほか、顧客に対する誠実義務が課されていることから、海外直接付保において保険仲立人を活用することで、顧客の利益を害する可能性は低いと考えられる。
- 国内で同等又は有利な条件の保険が調達できないこと等を、保険仲立人が代わりに確認した場合には、保険仲立人の確認書を十分に斟酌して許可の審査を行うこととするとともに、当該許可に係る保険契約の締結の媒介を可能とするよう見直すこととしてはどうか。
- その他
- 現行の保険業法上、保険代理店において、保険会社が委託した業務に係る不祥事件が生じた場合、所属先の保険会社が当局に不祥事件を届け出ることとされている。他方、保険仲立人には当局に不祥事件を届け出る義務はなく、当局が即座に問題を把握することが困難となっている。このため、保険仲立人の活用促進に向けた施策を実施する一方、当局による保険仲立人のモニタリング強化を図る観点から、保険仲立人が不祥事件を起こした場合、当局にその旨を届け出る義務を課すこととしてはどうか。
- これまでの施策の他、保険仲立人の活用促進に向け、どのような施策が考えられるか。
- 保険契約者等に対する便宜供与の解消 対応の方向性
- 保険契約者間の平等性・公平性を確保する等の趣旨から、
- 「特別の利益の提供」として禁止される行為の対象に、例えばサービスの利用や物品の購入、役務の提供等の「便宜供与」のうち、上記の趣旨に反するようなものを新たに含めるとともに、
- 特別の利益の受け手の対象に、保険契約者又は被保険者の「グループ企業」を追加してはどうか。
- 第二回WGにおける委員からのご発言の概要
- 保険金関連事業を兼業する保険募集人への対応
- 制度化にあたっては、体制整備義務等が課される、不当なインセンティブに基づき顧客の利益又は信頼を害するおそれのある兼業として、どのような事業が含まれるのか明確にすべきではないか。
- 保険業法令において、保険募集人全般を対象として、保険募集に係る顧客の利益を害してはならないことを求める一般的な規定を置くべきではないか。
- 今般の保険金不正請求事案は、自動車修理業を兼業する保険募集人における不正請求という特殊なケースであると考えられるため、兼業ではなく保険募集一般に関して、顧客の利益を害してはならないことを求める規定を設けることは慎重に検討すべきではないか。
- 兼業する保険募集人に対して体制整備義務等を課すのであれば、コスト負担との関係で一定規模以上の兼業する保険募集人に限って義務を課すということにも合理性があるのではないか。
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応
- 新たな体制整備義務等を課す特定保険募集人の範囲を検討するにあたっては、特定保険募集人ごとの手数料収入の分布状況も見る必要があるのではないか。
- 事業報告書の提出義務等が課されている特定保険募集人(450社程度)は、規模が大きいと考えられるから、当該保険募集人全てに新たな体制整備義務等を課すべきではないか。
- 新たな体制整備義務を課す対象として、事業報告書の提出義務等が課されている特定保険募集人(450社程度)のうち、大規模であることによる弊害が特に大きい特定保険募集人に限るということもあり得るのではないか。
- 新たな体制整備義務等を課すべき特定保険募集人を決めるにあたり基準・要件をどのように設定するとしても、潜脱を防止するために当局によるモニタリングは必要ではないか。そのため、基準・要件を設定するにあたっては、当局のモニタリングリソースを考慮する必要があるのではないか。
- 定量的な基準・要件を設定する場合、会社分割等による潜脱をどのように防止するのか検討する必要があるのではないか。
- 保険金関連事業を兼業する保険募集人への対応 考え方案
- 中小規模の保険募集人に対しては、これまでも保険会社からの適切なけん制が機能してきたものと考えられることを前提に、保険金関連事業を兼業する一定の規模以上の大規模な保険募集人に対し、体制整備等を求めることは考えられるか。
- 保険金関連事業以外に、不当なインセンティブに基づき顧客の利益又は信頼を害するおそれのある事業はあるか。あるとすれば、どのような類型が想定されるか。
- 中小規模の保険募集人に対しても、何らかの対応を求めるとすれば、例えば、次のようなものが考えられるか。
- 兼業の弊害防止に関する一般的・理念的な規定に関して、現在、「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づく取組方針を公表した保険募集人は一部にとどまっていることから、中小規模の保険募集人も含め、「顧客本位の業務運営に関する原則」の周知を図り、同原則の理念を踏まえた自主的な取組みを促す。
- 規模にかかわらず全ての保険募集人に対し、体制整備等を求める。
- また、これらの他に中小規模の保険募集人に求める対応として、何か考えられるものはあるか。
- 考え方案
- 現行法令上の特定保険募集人の要件は(1)乗合保険会社15社以上、又は、(2)乗合保険会社2社以上かつ手数料収入10億円以上とされている。この要件を参考としつつ、以下の点を考慮しながら、一定の要件を満たす者を「特定大規模乗合保険募集人」として定義してはどうか。
- 今般の保険金不正請求事案の再発防止の観点からは、規模が大きくなればなるほど保険会社からの営業上の配慮が働きやすくなり、教育・管理・指導機能が弱まりやすくなることに鑑みて、必要な内部管理体制等を自ら構築する義務を課すべき特定保険募集人の対象を検討していく必要があると考えられる。
- 上記の要件(1)又は(2)に該当している特定保険募集人のうち、約半数は、(1)の要件にのみ当てはまる手数料収入10億円未満の比較的規模の小さな特定保険募集人である。
- 新たな体制整備義務等を課す場合には、当局による定期的なモニタリング等を通じて、体制が十分に整備されているかを把握・確認することで実効性を確保することを想定しているが、当局のモニタリングの深度とリソースとのバランスをどのように考えるべきか。
- 特定保険募集人のうち、体制整備義務等の対象とはしない保険募集人に対しても、自発的な体制整備を促す観点から、事業報告書の記載項目を拡充し(現在の記載項目は33頁参照)、内部管理体制に関する整備状況を記入させるなどして、当局における機動的なモニタリングのための参考情報とすることも考えられるがどうか。
- さらに、定量的な要件の潜脱防止の観点からは、以下に該当する特定保険募集人を機動的なモニタリングの対象としてはどうか。
- 今後一定の期間のうちに、体制整備義務の対象となることが見込まれる特定保険募集人
- 過去一定の期間において、体制整備義務の対象であった特定保険募集人
- その他モニタリングが必要と認められる特定保険募集人
- 保険金関連事業を兼業する保険募集人への対応
金融庁 金融庁ウェブサイトの偽サイトにご注意ください!
- 金融庁ウェブサイトを装い、銀行口座等の個人情報を不正に入手する偽サイトの存在が確認されています。
- 金融庁ウェブサイトの正しいURL(アドレス)は「https://www.fsa.go.jp/」ですので、必ずご確認ください。
- フィッシングの具体的な手口
- 氏名や電話番号、メールアドレスのほか、保有する金融機関の口座情報(支店番号、口座番号、暗証番号、ログインID、ログインパスワード等)の入力を誘導し、情報が窃取される仕組み。
- 当庁から、取引金融機関の暗証番号、インターネットバンキング等のログインID・パスワード等について、ウェブサイト上で入力を求めるようなことはありません。
- また、当該偽サイトの本文に記載されたリンクを開くと、コンピューターウイルスに感染する可能性や金銭的な被害にあうおそれがありますので、くれぐれもご注意ください。
- なお、上記のようなケースに限らず、不審に思った場合は、最寄の警察や金融庁金融サービス利用者相談室に情報提供・ご相談をお願いします。
金融庁 長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について
- 長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について
- 金融庁は、証券取引等監視委員会から長期国債先物に係る相場操縦の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、令和6年10月4日に審判手続開始の決定(令和6年度(判)第19号金融商品取引法違反審判事件)を行ったところ、被審人から課徴金に係る金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第178条第1項第14号に掲げる事実及び納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書の提出があり、これを受けた審判官から金商法第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、以下のとおり決定を行いました(詳細は、決定要旨(PDF:180KB)を参照してください。)。
- 決定の内容
- 被審人(野村證券(株)(法人番号6010001074037))に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。
- 納付すべき課徴金の額金 2176万円
- 納付期限 令和7年1月6日
- 被審人(野村證券(株)(法人番号6010001074037))に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。
▼ 決定要旨
- 法第178条第1項第14号に該当
- 被審人は、第一種金融商品取引業を行うことにつき関東財務局長の登録を受けている株式会社であるが、同社の自己勘定取引に従事していた者において、同社の業務に関し、大阪市中央区北浜1丁目8番16号所在の株式会社大阪取引所(以下「大阪取引所」という。)に上場されていた長期国債先物2021年3月限月について、同先物の売買を誘引する目的をもって、別表記載のとおり、令和3年3月9日午前8時45分49秒頃から同日午後2時16分59秒頃までの間、大阪取引所において、最良売り気配若しくはこれに劣後する価格に複数の売り注文を重層的に入れて売り板を厚くした上で、同先物を下値で買い付け、又は、最良買い気配若しくはこれに劣後する価格に複数の買い注文を重層的に入れて買い板を厚くした上で、同先物を上値で売り付けることを交互に繰り返すなどの方法により、合計2466単位の売付けの申込みを行うとともに合計462単位を買い付ける一方、合計1619単位の買付けの申込みを行うとともに合計462単位を売り付けるなどし、もって、自己の計算において、同先物の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、大阪取引所における同先物の相場を変動させるべき一連の市場デリバティブ取引及びその申込みをしたものである。
【2024年10月】
金融庁 金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第3回)議事次第
▼ 資料1 事務局説明資料
- 立替サービスの規制のあり方
- 立替サービスは、利用者から依頼を受けて、立替サービス事業者が資金を立て替えた上で、後から利用者に対して立替金を請求するサービスと考えられるが、貸金業法や資金決済法で通常想定される取引ではないため、貸付けや為替取引の該当性は個別のサービスの枠組みに照らして判断する必要がある。
- こうした立替サービスを実施しようとする事業者からは、関係する行政庁や、業界団体に対して、業法上の登録の要否を含む法令の適用関係に係る照会がきている。
- 貸金業法における貸付けの定義は、「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)」とされている(貸金業法第2条第1項)。
- 条文では、「貸付け」の範囲について、金銭の貸付けを中心としつつ、金銭の貸付けと同一の経済的効果を有するもの(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付)を含めており、また、それらの行為の媒介についても「貸付け」に含める構成となっている。
- 判例上は、必ずしも当事者間の現実の金銭の交付は求められておらず、借主が現実に受け取った場合と同一の経済上の利益を得れば、消費貸借が成立するとされており、立替サービスの形態によっては、貸金業法上の貸付けに当たり得ると考えられる。
- BNPLとは、明確な定義があるわけではないものの、狭義ではクレジットカード等を用いずに商品の購入を行い、後日送付される請求書に基づいてコンビニや銀行等で支払いを行うような後払い決済サービスのことを指すと考えられている。
- 令和2年1月公表の国民生活センターのレポートによると、消費者トラブルへの対応や加盟店調査等が不十分であるとの課題が指摘されており、消費者トラブル防止のために、後払い決済サービス事業者に対して販売店と協力して取り組むよう要望がなされている。
- 国民生活センターで受け付けた相談傾向
- 後払い決済サービスが関連する相談について、その内容としては、販売サイト等で低価格で購入できることを広告で強調し、実際には数か月以上の継続(定期購入)が条件等となっている健康食品や化粧品等の通信販売に関するものが多くみられる。
- 消費生活相談からみる後払い決済サービスの課題
- 相談事例や、相談処理における後払い決済サービス事業者の聞き取り等から、以下の課題があげられる。
- 消費者の支払能力を超えた請求がされている
- 消費者トラブルへの対応が不十分
- 加盟店調査等が十分ではない
- 相談事例や、相談処理における後払い決済サービス事業者の聞き取り等から、以下の課題があげられる。
- 後払い決済サービス事業者への要望
- 同報告書は、消費者トラブルを防止するよう、後払い決済サービス事業者に対し、以下の事項を要望。
- 消費者が支払総額を十分に認識できるよう、加盟店である販売店と協力して取り組むこと
- 未成年者であるかの確認等を、販売店と協力して取り組むこと
- 消費者からのトラブルの解決に向けて適切かつ迅速に対処すること
- 不正利用の防止に取り組むとともに、不正利用の問合せに係る事実確認を自ら行うこと
- 加盟店契約締結にあたり、販売店のサイト上の表示につき、トラブル発生のおそれがないか確認すること
- 加盟店契約締結後の、販売店のサイト上の表示等の定期的な調査や、トラブルの申出があった場合における苦情の発生状況等の調査、改善要請、加盟店契約解除の実施
- 販売店における苦情の発生状況等の情報を事業者間で共有することについての検討
- 同報告書は、消費者トラブルを防止するよう、後払い決済サービス事業者に対し、以下の事項を要望。
- 国民生活センターで受け付けた相談傾向
- 外国の金融機関等のシンジケートローン参加
- 外貨建てのシンジケートローンの組成は、日本企業による外貨調達ニーズに応える選択肢の1つであるが、貸付けに係る法規制によりシンジケートローンに参加可能な金融機関等に制約がある。
- 海外進出をしている日本企業から日本国内の金融機関に対して、現地の地場銀行にシンジケートローンに参加してもらえるか相談があった場合に、当該地場銀行が日本国内に支店・営業所等を設置していないという法制上の理由により、断らざるを得なかった事例も存在する。
- シンジケートローンに係る法制上の整理
- 日本国内で銀行業や貸金業を営む者であれば、国内銀行等が組成するシンジケートローンに参加し、アレンジャーを介した借入人への貸付けが可能である。
- 外国の法令に準拠して外国において銀行業を営み、日本において銀行業の本拠となる支店を持つ「外国銀行」も、上記シンジケートローンに参加可能である。
- 「外国銀行」の免許を受けない外国の金融機関等が上記シンジケートローンに参加するためには、貸金業登録が必要であり、そのためには、日本国内に営業所等を設置する必要がある。一方、日本でビジネスを行っていない外国の金融機関等が、国内銀行等が組成するシンジケートローンに参加するために日本に営業所等を設置することは現実的でないとの指摘がある。
- 現行貸金業法において、外国の金融機関等が国内銀行等によって日本国内で組成されるシンジケートローンに参加しようとする場合、日本国内に営業所等を設置していることや、営業所ごとに貸付け業務に一定の経験を有する役員や貸金業務取扱主任者を置くことなどの人的要件を満たしていることが前提となっている。
- 他の金融関係法令等においても、国内で各種業を営もうとする場合には、利用者保護の観点や検査・監督の実効性を確保する観点から、外国法人に対して国内拠点を要求しているほか、一定の人的要件を満たすよう求めている例もある。外国の金融機関等が国内銀行等によって日本国内で組成されるシンジケートローンへの参加のみを行う場合について、上記の利用者保護の観点等も考慮しつつ、どのような規制を及ぼすべきか、考える必要がある。
- 貸金業者に適用される主な規制
- 基本的に、借り手の属性や貸付けの態様等にかかわらず、貸金業者が行う貸付けに対して、各種の規制が課されている。
- 参入規制
- 営業所等を有することが前提[貸金業法第3条第1項]
- 人的要件[貸金業法第6条第1項第15号、同施行規則第5条の7]
- 常務に従事する役員のうちに貸付けの業務に3年以上従事した経験を有する者を配置
- 営業所等ごとに貸付けの業務に1年以上従事した者を常勤の役員又は使用人として1人以上配置
- 貸金業務取扱主任者の設置義務[貸金業法第6条第1項第13号、第12条の3、同施行規則第10条の7、第10条の8]
- 貸金業務取扱主任者が、常勤であること、かつ、他の営業所等と重複して置かれていないことが要件
- 営業所等ごとに貸金業の業務に従事する従業員50人に1人以上の割合で設置
- 財産的要件[貸金業法第6条第1項第14号、同施行令第3条の2]
- 最低純資産額(5,000万円以上)
- 与信限度規制
- 総量規制等[貸金業法第13条、第13条の2、第41条の35等]
- 顧客等への貸付けの際の返済能力調査、記録の作成・保存義務
- 個人顧客の返済能力調査における指定信用情報機関(JICC、CIC)保有の信用情報の使用・提供義務、源泉徴収票等の徴収義務
- 返済能力を超えた貸付け禁止(個人顧客の総借入残高が年収等の3分の1を超える貸付け など)
- 上限金利規制[貸金業法第12条の8、利息制限法第1条、出資法第5条第2項]
- 利息制限法の上限金利(借入金額に応じて15%~20%)を超える利息の契約等の禁止(行政処分対象)
- 出資法の上限金利(20%)を超える金利の契約禁止(刑事罰対象)
- 総量規制等[貸金業法第13条、第13条の2、第41条の35等]
- その他の規制
- 書面の交付に関する義務[貸金業法第16条の2、第17条、第18条 等]
- 契約締結前書面・契約締結時書面の交付※契約の相手方等の承諾を得て電磁的方法により提供することも可
- 受取証書の交付※債権の弁済者の承諾を得て電磁的方法により提供することも可
- 偽りその他不正又は著しく不当な行為の禁止、取立て行為規制[貸金業法第12条の6、第21条第1項]
- 書面の交付に関する義務[貸金業法第16条の2、第17条、第18条 等]
- 参入規制
- 基本的に、借り手の属性や貸付けの態様等にかかわらず、貸金業者が行う貸付けに対して、各種の規制が課されている。
金融庁 金融安定理事会による「クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップ:2024年統合進捗報告書」および「クロスボーダー送金の目標達成に向けた年次進捗報告書:2024年KPI報告書」の公表について
▼ クロスボーダー送金の目標達成に向けた年次進捗報告書:2024年KPI報告書の要旨
- 定量的なハイライト
- ホールセール
- ホールセールのクロスボーダー送金の全体的なスピードは、基調的な決済時間とは無関係な技術的要因により、僅かに低下した。2024年、SWIFTネットワーク上で1時間以内、および1営業日以内に入金された送金の割合は、それぞれ50.6%(2023年比-3.2pp)、92%(-0.7pp)と低下した。ホールセールのクロスボーダー送金のスピード低下は、部分的には実際の決済時間とは無関係な2つの要因によるものである。すなわち、1)SWIFTにおける非営業日の定義変更により、結果的に営業日から除外される非営業日の日数が減少したこと、2)多くの金融機関が進めているISO 20022対応に伴う技術面での更改に関連した要因。例えば、ISO未対応の受取銀行は、ISO 20022準拠のメッセージを受け取った際、変換に追加的な時間がかかる。後者の要因は、マーケットが異なるタイムラインのもとでISO 20022に対応していることによる、一時的な相互運用性の課題を反映したものである。これらの課題は、ISO 20022へ移行したクロスボーダー送金に関わる金融機関が増えるとともに、軽減ないしは全体として解消されると期待される。早期にISO 20022を採用した銀行からは、実際の決済処理におけるスピードにポジティブな影響が出ていることが報告されている。
- In-flight(訳注:SWIFTにより捕捉される、送金銀行から受取銀行に着金するまでのプロセス)の処理時間はほぼ全ての地域で改善した一方、beneficiary leg(訳注:SWIFTにより捕捉される、受取銀行への着金から受取人口座に入金されるまでのプロセス)の処理時間の変化にはより大きな差があった。In-flightの処理時間が1時間以内に収まった送金の割合については、7地域中6地域で、+0.4pp~+3.3ppの改善がみられた。ホールセール送金のbeneficiary legは引き続き最も遅い部分であり、地域ごとの差の程度もより大きかった。
- 中東地域はin-flight、beneficiary leg双方の処理時間で最も大きな改善を見せた一方、アフリカ地域はbeneficiary legの処理時間で目標から最も遠い状態が継続。いくつかの地域では、スピードにおいて注目すべき改善が見られ、中東地域のin-flight、beneficiary legの処理時間では、最も大きな改善が見られた(1時間以内に処理が完了した割合は、それぞれ87.5%<+1.8pp>、35.3%<+5.8pp>)。これらの改善はあったものの、中東地域、サブサハラ・アフリカ地域(24.7%)、アジア・太平洋地域(29.5%)は、引き続きbeneficiary legが最も遅い地域となった。
- ホールセールのクロスボーダー送金のアクセスについては、クロスボーダー送金の授受において、少なくとも3つの選択肢が国または領域に存在する割合を指標としており、結果は92.4%と前年から不変。
- リテール
- コスト、スピード、透明性のKPIを示すサンプルの構成が大幅に変わった。2024年においては、2023年に含まれていた送金事業者の17.3%が除外された一方で、23.6%が新しく加わった。これらの構成変化はKPIに影響を与えており、前年との比較に課題を生じさせている。本報告書では、可能であれば、2023、2024両年に存在したサービスの結果をハイライトし、これらの変化がKPIに与える影響を明らかにしている。
- グローバルレベルで見ると、2024年のコストのKPIでは改善が見られず、1%の目標を達成したユースケースは無かった。P2Bを除き、全てのユースケースにおいてグローバルの平均コストは、+0.1ppから+0.3ppの間で僅かに増加した。1%の目標に達したコストのKPIは無かった。
- どのユースケースにおいても、平均コスト1%以下という目標に達した送金側の地域は存在しなかった。多くの地域やユースケースにおいて、コストは2023年より2024年のほうが高かった。しかしながら、小さな改善も見られた。例えば、P2B送金のコストは、ラテンアメリカ・カリブ地域(3.3%から2.7%)と南アジア地域(3.8%から3.7%)の両方で低下した。全ての地域やユースケースの中で、P2P送金では、ラテンアメリカ・カリブ地域からの送金(4%)、サブサハラ・アフリカ地域からの送金(3.8%)、P2B送金では南アジア地域からの送金(3.7%)が、目標から最も離れている。サブサハラ・アフリカ地域における全てのユースケースで平均コストが3%を上回った。
- 24.1%のコリドーで、3%超の平均コストが記録された(2023年から+0.4pp)。受取側のコストに特化した調査では、受取側の平均手数料が送金額に占める割合について、0.1%から1.8%まで差があることを示した。受取側のコストは常に外国為替マージンを含んでいるとは限らなかったが、含まれている場合は常に、外国為替マージンは受取側のコストのかなりの部分を占めた。
- スピードと透明性のKPI算出手法が見直された。新しい手法は、1つの送金事業者が提供している異なるスピードの階層に属する送金サービスの割合にフォーカスした。新しい手法のもとで、送金事業者は、提供する送金サービスの数に関係なく、コリドーやグローバルKPIに対して同じ影響度を持つことになった。この手法の変更は、データセットが非常に多くのサービスを有する送金事業者と、提供するサービス数が限定的な送金事業者の両方を含むことから、必要とみなされた。提供されるサービスは必ずしも異なる送金事業者のマーケットシェアを反映していないほか、サンプル抽出技術に起因して、送金事業者により提供される全ての送金サービスがデータセットに含まれていることを保証するものではない。このようなスピードと透明性のKPIにおける変更によって、コスト、スピード、透明性のKPIにおいて現在適用される手法はより整合的なものになっている4。年次比較を行うため、2023年のスピードと透明性のKPIが新しい手法のもとで再度計算された。
- リテール送金のスピードは2023年から悪化した。P2P送金のスピードが最も目標に近かった。見直された手法のもとで、送金事業者が送金開始から1時間以内、および1営業日以内に決済を完了する送金サービスの割合はそれぞれ33.5%(-0.7pp)、69%(-5pp)に減少した。この結果はサンプル構成の変化の影響を受けた可能性がある。P2P送金が最も目標に近く、全送金事業者の平均で、1時間以内、および1営業日以内に決済される割合は、それぞれ46.4%、77.8%であった。1時間以内に決済が完了する送金事業者の送金サービスの割合は、B2Bで5.9%(+5.1pp)、B2Pで4.9%(+3.7pp)にとどまった。
- アジア・太平洋地域では、アクセスに関して大きな改善が見られたが、課題も残存している。全地域の中で、アクセスに関しては東アジア・太平洋地域(87.2%、+3.5pp)と南アジア地域(86%、+1.6pp)で大きな改善が見られた。これらの改善の一方で、南アジア、中東・北アフリカ地域は、中小零細企業(Micro, Small and Medium-size Enterprises、MSMEs)のクロスボーダー送金へのアクセスに最も課題がある2地域となった。2023年から、高中所得法域(upper-middle-income jurisdictions)ではMSMEsのアクセスの増加が見られたが(+2.8pp)、低中所得法域(lower-middle-income jurisdictions)では僅かに減少した(-0.2pp)。
- コストとスピードに関する透明性は全てのユースケースにおいて改善した。エンドユーザーに対してスピードとコストの情報を提供している送金事業者の送金サービスの割合は、2024年に僅かに増加した(新しい算出手法で55.6%、+1.1pp)。透明性の水準は、B2Bで最も向上した(38.3%、+4.5pp)一方、P2Pで最も高水準であった(66.4%、+2.3pp)。
- レミッタンス
- 200米ドルのレミッタンス送金の平均コストは、2023年(6.4%)よりも0.1pp上昇した一方で、500米ドルの平均コストは不変(4.3%)。
- 2024年のコストは、大半の地域やユースケースで僅かな上昇が見られる一方、最も高コストであるサブサハラ・アフリカ地域では、レミッタンスの平均コストが僅かに低下した。2023年から0.6pp低下したサブサハラ・アフリカ地域(7.7%)を除き、全ての地域において、200米ドルの送金の平均コストは不変か、2023年より上昇した。南アジア地域の実績は6.2%であり、引き続き、コストKPIの目標である3%に対して最も近い地域となった。中東・北アフリカ地域と南アジア地域は、引き続き、デジタル手段によるレミッタンスのコストにおいて最も低い地域となった(それぞれ4.2%と4.3%)。現金によるレミッタンスのコストは、2023年から僅かに減少しているとはいえ(8.7%、-1.2pp)、サブサハラ・アフリカ地域で最も高コストである状態が続いている。見識のある消費者にとってのレミッタンスコストを捉えるSmart Remitter Target(SmaRT)指標では、200米ドルの送金コストは3.2%(-0.3pp)、500米ドルは2.4%(-0.1pp)と僅かに低下した。
- 銀行経由の200米ドルのレミッタンス送金の平均コストは上昇した一方、その他のサービスプロバイダー経由のコストはほぼ不変。モバイルマネーはレミッタンスにおいて最も安い方法ではなくなり、2024年においては、送金用カードが最も費用対効果の高い選択肢であった。モバイルマネーを使ったレミッタンス取引のコストは、2024年に5.4%(+1pp)まで増加を続けた。
- 2024年、レミッタンスの平均的なスピードは、2023年と比較して速くならなかった。1時間以内に入金されるレミッタンスの割合は、サブサハラ・アフリカ地域が引き続き最も高く、62%(+3pp)であった。東アジア・太平洋地域は75%の目標に対して47%(+1pp)と最も遠かった。
- とりわけ200米ドルのレミッタンス送金におけるレミッタンス事業者の透明性に焦点を当てると、レミッタンス事業者が手数料と外国為替マージンの内訳に関する情報を開示しているかどうかについてのみ、データが利用可能。レミッタンス事業者によって総手数料と外国為替マージンの内訳が開示されているサービスの割合は、2023年からほぼ変わらず99%(+1pp)であった。レミッタンス取引における、スピードを含む他の側面について透明性があるサービスの割合は未算出。
- ホールセール
金融庁 「預金取扱金融機関の耐量子計算機暗号への対応に関する検討会」(第2回)議事次第
▼ 資料3 作業部会説明資料
- 【脅威リスク】量子技術進展に伴う攻撃リスクについて
- 米国では大統領令などによりPQC移行を推進しており、グローバルな送金システムなどにおいて、PQC移行が接続前提条件となり、移行未完了のシステムが接続不可となるビジネスリスクの影響度が大きい
- 高リスクとして、海外当局の規制により、グローバルな送金システムなどにPQC対応未完了システムが接続不可となるビジネスリスクについて、記載予定
- 【移行期限設定】優先度高システムにおける2030年期限設定の妥当性
- NSA(National Security Agency)では、2033年までに、各ベンダーに対してPQC移行依頼
- 米政府では、2035年までに連邦政府機関システムにPQC導入によりリスク解消する方針を発表
- 米国金融標準化団体ASC X9は、2027~2052年にCRQCが実現見通し公表
- ビジネスリスク観点において、優先度高システムは2030年代前半から半ばを目安にPQCのアルゴリズムを利用可能な状態にすることが妥当。もっとも、上記のタイミングについては、当局規制や技術状況をフォローしながら柔軟に対応することが必要
- PQCへの完全移行時期は、脆弱性や実装課題、顧客影響等も踏まえて、継続検討課題として各社が判断するものであることから本検討成果物における記載対象外
- 技術進展や規制動向に備え、暗号インベントリ作成は早期着手が必要
- 【暗号インベントリ作成に関する優先度検討】
- 各機関において、データ保存期間や漏洩リスク評価などリスクベースでの検討実施の上、優先度を策定
- 中長期的な視点では、暗号管理ツールの活用やSBOMなどのソフトウェア資産管理の取り組みに含めて推進する進め方も有り
- リスクベースで検討した移行優先度の高いシステムから作成するのが現実的
- 中長期的にはSBOMなどのソフトウェア資産管理の取組に含めて推進
- 【移行対象に関する優先度検討】
- 暗号インベントリ作成と同様に、リスクベースでの移行優先度検討が必要
- 内部通信については、多層防御により一定レベルのセキュリティ強度が担保されており、ケースバイケースでの検討が必要
- リスクベースでの検討により、各社ごとに移行対象システムの優先度選定が必要
- 内部システムは多層防御の観点に基づき、ケースバイケースで検討
- 【監督当局、業界団体等との連携】政府機関や民間団体など業界全体としての発信について
- 国の取り組み
- PQC対応は、金融分野のみならず、今後、重要インフラ全体に波及することも想定され、重要インフラ防護の観点から同政策を所掌するNISCの関与も必要
- 他方で、NISCが自ら全ての重要インフラの状況を把握することは困難であることから、個々の重要インフラの状況把握については、監督当局、業界団体が支援
- 金融業界の取り組み
- 預金取扱金融機関やお客様に向けたPQC移行推進のためには、当局以外にも各ステークホルダー(ベンダーやシステムインテグレータを含む)への働きかけや発信が必要であるため、移行全体ロードマップ提示が必要
- 金融業界(預金取扱金融機関以外も含む)としての対応スタンスや移行ロードマップを取り纏め・策定する主体を、金融庁などの協力を得ながら決定する必要有
- 金融庁や各団体と相談しつつ、業界全体向けのロードマップを作成する必要有
- 国の取り組み
- 【コンティンジェンシープラン】
- 対応期限までに優先度が高いPQC移行が完了しない場合を不測の事態と捉えて、量子コンピュータを用いた暗号危殆化リスクを低減させるための代替の対策を検討しておくことを推奨
- 具体的なリスク低減策として、事前共有鍵による通信秘匿化、暗号通信の利用を必要最低限にする、重要な文書への署名については物理原本の厳重保管等
- 【暗号アジリティ】脆弱性への迅速な対応や段階的にPQC移行検討について
- PQCは既存暗号と比べて新しい技術であるため、将来的に効率の良い解読法や重大な脆弱性が発見される可能性があり、クリプト・アジリティ(暗号の俊敏性)の組み込みやハイブリッド方式の利用を検討
- PQC移行自体がゴールではなく、網羅的かつ継続的な暗号管理や迅速な暗号切り替え可能な仕組みの導入が必要
- 【暗号インベントリ】標準的なインベントリ構築手法について
- 暗号利用システム構築担当者(開発ベンダ含む)への問合せを想定するが、より正確かつ網羅的に調査するためツール利用による方法も要検討(FS-ISACでは手作業やスキャンツール利用など複数の収集方法について提示)
- インベントリ構築例
- スコープ
- 自組織で利用される暗号機能をもつシステムで、以下対象を想定
- 自組織開発のシステム、自組織外から提供されたシステムおよび製品
- 自組織で利用される暗号機能をもつシステムで、以下対象を想定
- 収集する情報
- 暗号利用場面 以下情報を想定
- ユーザとの通信
- インターネットVPNによるリモートアクセス
- 電子文書や電子メールへの署名
- サーバ証明書による認証
- データベースの暗号化
- 暗号利用用途 以下情報を想定
- 通信内容を保護するため
- お客さま情報を安全に保存するため
- 文書の改ざんを防ぐため
- サーバのなりすましを防ぐため
- 暗号実装箇所 以下情報を想定
- (Ex.自組織開発アプリ、自組織外製品(ハードウェア/ソフトウェア/アプリ)
- 利用アルゴリズム 以下情報を想定
- (Ex.RSA-OAEP、ECDH、RSA-PSS、ECDSA)
- 利用している鍵長
- 鍵管理方法(Ex.自組織所有のHSMにて管理、クラウドサービスで管理)
- 利用担当者
- 暗号利用場面 以下情報を想定
- 収集方法
- 以下の複数手段を想定
- システム担当者、開発ベンダーや製品ベンダーへのヒアリング
- ネットワークスキャンツールやアプリケーションコード解析による発見
- 以下の複数手段を想定
- スコープ
金融庁 業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点
▼ 主要行等
- 大手保険会社等への顧客情報漏えいについて
- 近時、保険会社の出向者等が銀行又は銀行グループ内の保険代理店における多数の個人情報を長期にわたり外部に漏洩していた事実が確認されている。これを踏まえ、下記の対応に取り組むよう、改めて要請する。
- 顧客に関する情報管理態勢
- 顧客に関する情報は金融取引の基礎をなすものであり、適切な管理がなされることが極めて重要である。金融機関は、顧客に関する情報へのアクセス及びその利用は業務遂行上の必要性のある役職員に限定されるべきであるという原則を踏まえ、内部管理態勢の整備を図る必要がある。特に、顧客情報へのアクセス管理の徹底や内部関係者による外部への持ち出しの防止について、出向者を含む役職員全体に対して適切な措置を図る必要がある。
- 銀行グループ内の子会社等における顧客の情報管理
- 顧客に関する情報管理態勢についてグループベースでの一体的な管理がなされるように、銀行又は銀行持株会社は責任ある役割を果たす必要がある。
- 顧客に関する情報管理態勢
- 近時、保険会社の出向者等が銀行又は銀行グループ内の保険代理店における多数の個人情報を長期にわたり外部に漏洩していた事実が確認されている。これを踏まえ、下記の対応に取り組むよう、改めて要請する。
- 顧客本位の業務運営(FD)に関するモニタリングについて
- FDに関するモニタリングについては、引き続き、幅広いリスク性金融商品の販売状況※を踏まえ、販売会社等で顧客の最善の利益に資する商品組成・販売・管理等が行われているかについて検証する。 ※販売実績や苦情の発生状況のほか、これまでのモニタリング結果も踏まえて、リスクベースで重点的に検証するリスク性金融商品を選定。
- 具体的な検証のポイントは、以下の通り。
- 過去のモニタリングで課題が認められた外貨建一時払保険や仕組債に係る業界規則等への対応状況や、外貨建債券・外国株式に係る銀証連携に着目した販売・管理の実態把握を含めて、幅広いリスク性金融商品におけるプロダクトガバナンス態勢、販売・管理態勢、報酬・業績評価体系等の整備状況。※経営陣の関与状況や第1線・第2線・第3線の機能状況も含む。
- 「顧客本位の業務運営に関する原則」に基づく「取組方針」の営業現場への浸透状況や顧客利益を最優先とする取組状況。
- 顧客との「共通価値の創造」から成る持続可能なリテールビジネスの構築に当たり、経営戦略と顧客本位の業務運営との整合性が重要であるとの観点から、(同ビジネスの)管理会計の損益状況や金融商品毎の獲得手数料等に着目した対話。
- なお、本モニタリングは、資産運用立国の実現に向けて、顧客の最善の利益という観点から、顧客にふさわしい金融商品を適切に販売しているかなどを検証することを目的としており、特定の金融商品を一律に否定するものではない。
- 口座不正利用等防止に向けた対策の強化に係る要請文について
- 近年、SNS等を通じたやりとりで相手を信頼させ、投資等の名目で金銭をだまし取る「SNS型投資・ロマンス詐欺」が急増しているほか、法人口座を悪用した事案がみられるなど、預貯金口座を通じて行われる金融犯罪への対策が急務である。
- こうした状況を踏まえ、2024年8月23日に警察庁と連名で、全国銀行協会を含めた各業界団体等に対し、法人口座を含む預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策の一層の強化を要請した。
- 今般の要請内容は、主要行等の効果的な取組を他業態に展開する形としており、口座開設時の実態把握から利用者のアクセス環境等に着目した検知、出金停止・凍結等の措置の迅速化など多岐にわたる。また、その中で金融機関間の情報共有についても求めており、特に主要行等においては、先進的な対策にも意欲的に取り組んでいただくとともに、業界全体の取組を引き続きリードする形で業界内でノウハウ等を共有いただきたい。
- 外部委託先管理の強化について
- 昨今、外部委託先に対するサイバー攻撃により、金融機関の顧客情報が漏えいする事案が発生している。
- 委託先におけるインシデントであっても、金融機関が顧客情報管理の責任から逃れられるわけではない。
- 重要な委託先におけるインシデントの原因の検証及び再発防止策の実効性の確保、これらが確保できない際の代替策の検討を含め、委託先管理の有効性・十分性を確認し、必要に応じて改善していただきたい。
- サイバー安全保障について
- 「国家安全保障戦略」(令和4年12月16日閣議決定)に基づき、サイバー安全保障分野における新たな取組の実現のために必要となる法制度の整備等について検討を行うため、2024年6月より、内閣官房において、「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」が開催されてきたところ。
- ※「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cyber_anzen_hosyo/index.html
- ※「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」
- 同戦略においては、重要インフラ分野を含め、
- 民間事業者等がサイバー攻撃を受けた場合等の政府への情報共有や、
- 政府から民間事業者等への対処調整、支援等の取組みを強化する
- などの取組を進めることとされており、金融分野についても、こうした官民連携に係る制度整備の対象となることが想定されている。
- 今後、制度整備にあたり、政府全体の取組みの中で、当庁としても業界の皆様とよく意見交換してまいりたい。
- 「国家安全保障戦略」(令和4年12月16日閣議決定)に基づき、サイバー安全保障分野における新たな取組の実現のために必要となる法制度の整備等について検討を行うため、2024年6月より、内閣官房において、「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」が開催されてきたところ。
- サイバーセキュリティに関するガイドラインについて
- サイバーリスクは、技術の発展や地政学リスクの高まりなどとともに増加しており、トップリスクの一つとして、金融機関において適切に管理していく必要がある。昨今の脅威動向、これまでのモニタリングの実績、国内外の情勢等を踏まえ、先般、サイバーセキュリティに関する新たなガイドライン案について、パブリックコメントに付したところであり、ご意見をいただき感謝申し上げる。いただいたご意見を踏まえ、今後最終化し公表する。
- 金融機関等の規模・特性は様々である。このため、ガイドラインにも記載しているとおり、「基本的な対応事項」及び「対応が望ましい事項」のいずれについても、一律の対応を求めるものではなく、金融機関等が、自らを取り巻く事業環境、経営戦略及びリスクの許容度等を踏まえた上で、サイバーセキュリティリスクを特定、評価し、リスクに見合った低減措置を講ずること(いわゆる「リスクベース・アプローチ」を採ること)が必要であると考えている。
- また、金融機関におけるサイバーセキュリティ管理態勢上の課題への対応には、時間がかかるものもあると考えている。したがって、重要性・緊急性に応じて、優先順位をつけた上で、順次対応していただければと考えている。
- 金融庁としては、金融システム上の重要性・リスクなどを勘案の上、同ガイドラインの運用などを通じて、金融機関におけるサイバーセキュリティ管理態勢の強化を促してまいりたい。
- サイバーセキュリティセルフアセスメント(CSSA)について
- 先般、3メガバンク以外の主要行等に依頼した「サイバーセキュリティに関する点検票」に基づく自己評価について、現在、日本銀行・金融庁で自己評価結果を集約中である。
- 2024年11月以降、他の金融機関対比での自組織の位置付けなどに関する情報の還元を予定している。経営陣におかれては、評価結果に基づき、人員・予算、人材育成を含め、体制整備と対策の実効性向上を主導していただきたい。※将来的には(2025事務年度分以降)、「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」の内容をCSSAに反映していくことを検討する。
- 金融機関の内部監査の高度化に向けたモニタリングレポート(2024)の公表について
- 2024年9月10日に、「金融機関の内部監査の高度化に向けたモニタリングレポート(2024)」を公表した。
- 本レポートは、内部監査高度化の取組推進の一助となるべく、2023年10月のプログレスレポートにて公表した大手銀行グループにおける取組状況に加えて、地域金融機関や大手証券会社、大手保険会社における取組状況を多数紹介している。
- 内部監査の高度化に向けた取組は、一義的には、各金融機関の内部監査部門自らの取組の在り方によるものの、その取組には自ずと限界があり、経営陣等の取組姿勢が大きく影響する。特に経営資源の配分などでは経営陣が主体的に取り組まなければ成果は出ず、経営陣の考え方や取組姿勢について意識改革を期待している。
- 金融庁としては、今後も、2023年10月公表のプログレスレポートで示した内部監査高度化のための3つの論点※に基づき、金融機関に対する深度あるモニタリングを進めるとともに、モニタリングを通じて内部監査の高度化を促していく方針。
- 3つの論点
- 経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援
- 内部監査部門の監査態勢高度化・監査基盤強化
- 被監査部門に対する内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップ醸成
金融庁 金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第2回)議事次第
▼ 資料1 事務局説明資料
- 第一回における主なご意見
- 総論
- 新しいサービスが増え、利用者・事業者双方にとって複雑な規制になっている。双方の予測可能性を高めるため、規制の対象となる事業者、サービスの線引きを可能な限り明確にすべき。
- 保護法益、立法事実を十分に検討し、重要性及び緊急性に鑑み実効性のある対応策を講じるべき。
- キャッシュレス決済の領域は積極的に規制緩和すべきである一方、いわゆる分散型金融の領域は、利用者が既存の伝統的な金と勘違いして利用し、不利益を被ることがないよう、区別して制度のあり方を検討すべき。
- サービスの多様化によりリスクも多様化し、リスクが拡散するスピードも速くなっている。確実な安定性のある社会基盤・金融基盤を作ることが重要。
- キャッシュレスやフィンテックの規制については、消費者保護とイノベーションを阻害しないものとすることが重要。また、適正な規制により利用者保護を図ることは、結果的に事業者の発展にもつながるものである。
- 従来の金融機関は単一的な業務を行っていたが、様々なサービスを提供するようになったという金融の高度化に係る問題であり、利用者から見ても何のサービスを行っているかよくわからない状況。海外においてはリスクベース・アプローチで対応しているのが実態。
- 規制の用いられ方について、我が国においては事業者より規制を回避する方向での議論が行われる傾向が強いが、海外においては、サービスの健全な発展・利用者保護に尽力する事業者を支援し、公正な競争条件を確保するための手段として議論される場合が多いことも踏まえ、我が国においてもこのような観点からの検討が必要。
- 利用者に対する適宜適切な情報提供、時代に即した金融教育及び時代のスピードに負けないような社会全体の金融リテラシー向上にも配慮すべき。
- 資金移動業者の資産保全規制の見直しについて
- 破綻時の利用者資金の返還について、返還の確実性・安全性を担保しつつ、信託会社等や銀行等から直接返還できる方法を事業者の選択肢を増やす方向で新たに追加することにより、返還に要する期間の短期化を図ることは、利用者保護にも資することから適切である。
- 前払式支払手段については、無記名の商品券もあることから、債権者を特定するために債権申出期間を定めて申し出てもらった上で債権者・債権額を確定の上で配当を行うという手続きが必要との考え方であると承知。資金移動業もこの考え方を参考に還付手続きが定められたと承知しているが、資金移動業では、利用者の本人確認がされていることも踏まえ、金商法と同様に信託会社等から直接返還する方法も選択できるようにすることは合理的であり有用と考える。
- 銀行や信託銀行から直接利用者に対して資金返還を行う方法が、現行の方法と比べて資産保全の程度が劣らないことの説明が必要。
- 返還に要する期間の短期化にあたり、還付の確実性・安全性が損なわれることのないようにすべき。
- 見直しにおいては、現行の手続きにて利用者の利益がどのように保護されているかも踏まえることが必要。また、現行制度では併用可能な複数の保全方法を設けていることを前提に、破綻時には供託手続に一本化して還付する制度となっていることにも考慮が必要。
- 見直しにおいては、実効性を確保するために、手続きや債権者の優先弁済権にも留意すべき。
- 利用者資金を信託会社等や銀行から直接返還する場合、事務負担の増加に伴い還付費用が過度に増えないか、また費用分担について考慮が必要。
- 返還に要する期間を短くすることと、信託会社・銀行等が直接返還することに対応できるかどうかについては分けて考えてもいいのではないか。
- 前払式支払手段については、債権者を把握できないため、債権申出期間に申し出てもらう必要があるなど、追加の手続きが必要ではないか。
- 総論
- 資金移動業者の資産保全規制の見直し
- 資金決済法においては、資金移動業者に対して、利用者から受け入れた資金の全額を供託、銀行保証又は信託により保全することを求めた上で、破綻時には、保全された資金は、供託手続を通じて国が各利用者に対して還付手続を実施することとし、利用者への資金の還付に最低約170日という期間を要する制度となっている。
- これは、少額の利用が想定される中で、利用者に還付手続の費用を負担させることを回避しつつ、資金移動業者が破綻した場合に利用者保護を図り、社会的・経済的影響を最小限に抑える必要があることや、倒産隔離を図りつつ、事業者が参入しやすいように配慮するという考え方に基づいたものである。
- 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)については、賃金支払に関する労使の新たな選択肢として、資金移動業者の口座への支払を認めるため、2020年8月から2022年9月にかけて労働政策審議会労働条件分科会において議論された上で、労働基準法施行規則の改正が行われた(2023年4月1日施行)。
- 資金移動業者が賃金のデジタル払いの受け入れ先となるためには、賃金の確実な支払を担保する観点から、破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に弁済することを保証する仕組みを有していること等の要件を満たす必要がある(厚生労働大臣が指定)。
- 資金移動業は、創設後10年以上が経過する中で、これまで破綻事例はなく、日常生活で幅広く利用され、決済インフラとして定着しつつある。同時に、高額送金を含む多様な送金ニーズに対応する形で、事業者から様々なサービスが提供される中、資金移動業者の破綻時において、利用者に対して迅速かつ確実に資金を返還する必要性が高まっている。
- 更に、金融商品取引業者や賃金のデジタル払いの例の様に、利用者資金の還付手続をより迅速に進めるための実務上のノウハウの蓄積も見られる。
- 上記を踏まえ、既存の資金返還方法に加えて、信託会社等や銀行等から直接返還する方法も認めることが考えられる。なお、新しい返還方法であっても、利用者保護のために必要な場合等には供託命令を発出できるようにすることが考えられる。
- また、新しい返還方法を採ったとしても、保証機関による直接返還については、保証機関が破綻することがないよう健全性に係る基準を満たす銀行等とすること、信託会社等による直接返還については、信託財産の適切な管理のため受託者を信託会社等とし、受益者代理人を弁護士や公認会計士等とすることが考えられる。
- 前頁の見直しを行う場合、「供託」と「保証機関による直接返還」を併用する際、保証機関が弁済したときに、供託金の還付手続に保証機関が参加することで、利用者が不利益を被る可能性があるところ、所要の手当を検討することが考えられる。
- また、実務上の留意点として例えば下記3点が挙げられる。
- <留意点1>「保証機関による直接返還」において、保証契約次第で利用者の承諾取得の必要性があること
- <留意点2>新しい返還方法において、実務上、保証機関や信託会社等が利用者に直接返還するに当たり、事前に新たに返還に必要な情報を取得することが求められる可能性があること
- <留意点3>電子決済手段(SC)を発行する資金移動業者が新しい返還方法の一部を利用する場合における、SCの保有者に対する資金の返還方法など
- 資金決済法上の優先弁済権は、「為替取引に関し負担する債務に係る債権者」に帰属するとされ、保証機関が利用者に弁済をし、弁済による代位により「為替取引に関し負担する債務」に係る債権を取得すると、当該優先弁済権も取得すると考えられる。
- 「供託」と「保証機関による直接返還」を併用した場合、保証機関が直接利用者に弁済し、供託金の還付手続に保証機関が参加した結果、利用者と保証機関が、還付手続において、供託金を按分して取得することとなり、利用者に不利益が生じ得る(保証機関においては優先弁済権を取得する必要はない一方で、利用者の優先弁済権が及ぶ金額が減少する)。
- 保証機関が弁済した場合は、資金決済法上の優先弁済権の対象から外すこととする見直しが考えられるか。
- <留意点1>保証機関から直接利用者に資金を返還する具体的な方法として、下記2通りの方法が考えられる。
- 事前に資金移動業者と保証機関の間にて保証契約(債務引受)を締結した上で、資金移動業者の破綻時において、保証機関が利用者の債務を引き受ける形式 【債務引受型】
- 事前に資金移動業者の利用者と保証機関の間にて保証契約を締結した上で、資金移動業者の破綻時において、保証機関が利用者に対して個別に保証する形式 【個別保証型】
- 債務引受型については、当該契約の効力が発生するためには、利用者が保証機関に対して承諾をすることが必要となるため、実務上承諾の取り方について検討が必要である。資金移動業者を通じて承諾を取ることが考えられるか。
- 個別保証型については、各利用者と保証機関との間で、それぞれ個別の保証契約を締結する必要がある。
- <留意点2>資金移動業者の利用者は犯罪収益移転防止法上、取引時確認として本人確認義務が課せられている。これに加えて、新たな保全方法を採用する事業者は、返還に当たって必要となる口座情報等を、事前に利用者から取得することが必要となる可能性がある。
- <留意点3>SCの保有者について、債務引受型・信託会社等による直接返還については、破綻時のSCの保有者に対する債務引受、またSCの保有者を受益者とすることで返還対象とし得るが、個別保証型については、譲受人と保証機関との間で保証契約がなければ保護することは困難な可能性がある。
- <留意点1>保証機関から直接利用者に資金を返還する具体的な方法として、下記2通りの方法が考えられる。
- 第一種資金移動業の滞留規制の見直し
- 利用者の利便性等の観点から、現状の滞留規制について、以下のような課題・ニーズが指摘されている。
- 企業間送金について
- 取引先企業等に対して高額送金を定期的に実施するニーズがあるところ、現行制度下において第一種資金移動業に係る送金サービスを利用する場合には、送金のタイミングごとに資金拠出が必要となり、利用者にとって負担になっている。
- 国際送金について
- 現行規制では「資金を移動する日」を事前に決める必要があるため、資金移動業者が入金を受け、利用者が外国為替相場を見つつ有利なタイミングで送金するようなサービスが提供できない。
- コルレス先の金融機関の処理状況等に応じて受取人への着金日が変動し得るため、依頼時点では「資金を移動する日」を特定することが困難。
- 逆為替・取立為替型の資金移動サービスについて
- 代金回収に用いられるような逆為替・取立為替型の資金移動サービスの場合、サービス依頼時点では、送金人から資金の回収ができる時期が未定であり、従って受取人への送金日も未定とならざるを得ないので、現行の厳格な滞留規制を前提にすると、第一種資金移動業を営む資金移動業者における逆為替・取立為替の形式による資金移動サービスの提供が困難。
- 第一種・第二種資金移動業を併営する場合に受け入れた資金の取扱いについて
- 第一種資金移動業と第二種資金移動業を併営する場合、第二種資金移動業に関して受け入れた資金をそのまま第一種資金移動業に係る資金として用いることができない。そのため、100万円を超える送金を行う場合、利用者に一度払い出した上で、再度利用者から第一種資金移動業のアカウントに払い込みを受ける必要があり、利用者にとって煩雑な手続きとなっている。
- 企業間送金について
- 滞留規制の趣旨を十分に踏まえつつ、利用者に不便が生じる事態等を回避する観点から、以下の見直しが考えられる。
- <1.一定程度の資金滞留期間の延長の容認>
- 利用者の事務負担軽減の観点から一定程度の資金滞留期間の延長を容認することが考えられる。一方、徒に期間を延ばせば、銀行等に対する規制との衡平を欠くことになる。「翌月払」の商慣習があることにも鑑み、運用上必要な場合に限り「1か月程度」の滞留を認めることが考えられる。
- この際、現状の滞留規制の趣旨を踏まえることが重要。資金移動業者の破綻時に利用者に与える影響や社会的・経済的な影響を極小化する必要がある中で、破綻時の利用者資金の返還に時間を要する点が、厳格な滞留規制導入の主な理由であったことから、破綻時により迅速に資金の返還が可能な、新たな資産保全方法(保証機関による直接返還等)を採用する資金移動業者のみに上記滞留期間の延長を認めることが考えられる。
- <2.受任可能な送金依頼の具体性の程度の緩和>
- 利用者の都合や送金サービスの内容(例えば、逆為替・取立為替型の送金サービス)等によっては、「資金を移動する日」が依頼時点では必ずしも具体的に指定できない場合がある。そのため、資金移動のタイミングについては滞留期間の範囲内で一定の幅を認めることが考えられる。
- <3.第一種資金移動業と第二種資金移動業を併営する資金移動業者による資金の振替えの許容>
- 利用者の事務負担を軽減する観点から、滞留規制の見直しに伴い、第二種資金移動業に係るものとして受け入れた資金の第一種資金移動業に係る資金への振替えを認めることが考えられる。
- ただし、厳格な滞留規制の趣旨の潜脱を防止する観点は引き続き重要であるから、特に第一種資金移動業と第二種資金移動業を併営する資金移動業者については、第二種資金移動業に係る100万円超の資金が第一種資金移動業に係る為替取引に用いられることがないよう、実効性確保に向けた取組みを求めていくことが適当と考えられる。
- <1.一定程度の資金滞留期間の延長の容認>
- 利用者の利便性等の観点から、現状の滞留規制について、以下のような課題・ニーズが指摘されている。
- ご議論いただきたい事項
- 資産保全規制の見直し
- 利用者の利便性確保及び資金移動業者による選択肢を増やす観点から、供託による返還手続や供託命令は残しつつ、信託会社等や銀行等から直接返還する方法についても認めることについてどのように考えるか。※新しい返還方法を採用する際は、「債務引受型において承諾を取得する必要があること」、「個別保証型において各利用者との間で保証契約を締結する必要があること」、「事前に新たに返還に必要な情報を取得することが求められる可能性がある」などの実務上の留意点を踏まえる必要がある。
- 「供託」と「保証機関による直接返還」を併用した場合において、利用者に不利益が生じうることから、保証機関が弁済による代位を行うときは、資金決済法上の優先弁済権の対象から外すことについてどのように考えるか。
- 前払式支払手段発行者の発行保証金の保全方法については、高額電子移転可能型前払式支払手段でない限り本人確認義務が課されておらず、発行者が債権者を正確に把握することができない。そのため、保証機関や信託会社等が返還手続を行うことについて現実的ではないことから、引き続き国が各利用者に対して還付手続を実施する現行手続により、資金の返還を行うこととしてはどうか。
- 第一種資金移動業の滞留規制の見直し
- 滞留規制の趣旨を踏まえつつ、利用者の利便性等を考慮し、新たな資産保全方法を採用する第一種資金移動業者に1か月程度の滞留を認めることについてどう考えるか。
- 「資金を移動する日」が依頼時点では必ずしも具体的に指定できない場合等があることから、「資金を移動する日」の他、「資金を移動する期限」の指定も認めることについてどう考えるか。
- 第一種資金移動業と第二種資金移動業を併営する資金移動業者について、滞留規制の趣旨の潜脱を防止する措置がなされている前提の下、第二種資金移動業に係る資金の第一種資金移動業に係る資金への振替えを認めることについてどう考えるか。
- 資産保全規制の見直し
金融庁 金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第2回)議事次第
▼ 資料1 事務局説明資料
- 保険会社における課題(概要)
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店に対して、当該事業に伴う弊害を適切に管理・防止する体制が整備されていなかった。
- 大規模な(乗合)保険代理店に対して、営業上の配慮から、実効的な教育・管理・指導を実施できていなかった
- 保険代理店における課題(概要)
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店において、当該保険代理店が兼業する事業に伴う弊害を適切に管理・防止する体制を整備していなかった。
- 保険会社からの実効的な教育・管理・指導が困難になっていた大規模な(乗合)保険代理店において、十分な内部管理体制が確保されていなかった。
- 主な論点
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店による兼業等への対応をどのように考えるべきか。
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応をどのように考えるべきか。
- 上記の各論点について、保険会社と保険代理店に対して、それぞれ具体的にどのような対応を求めるべきか。
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店への対応(基本的な考え方)
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店による、不当なインセンティブに基づく弊害を防止する観点から、保険会社に対して、保険代理店が兼業する保険金関連事業による弊害を防止する措置を講じることを義務付けるとともに、保険代理店自身に対しても、自らの不当なインセンティブを適切に管理する措置を講じることを義務付けるといった方向で法令を見直すことが考えられる。
- その際、保険金関連事業を兼業する保険代理店が不当なインセンティブに基づき、保険会社に対して不正な修理費等を請求したとしても、当該保険代理店が「大規模」であることに起因する営業上の配慮が保険会社になければ、適切なけん制機能の発揮が期待できると考えられる。また、中小規模の保険代理店に対する過度の実務負荷とならないようにする必要もある。
- そこで、不当なインセンティブを適切に管理する措置を義務付ける保険代理店の範囲は、特に類型的に営業上の配慮が強く、不正な修理費等の請求に対する、保険会社のけん制が機能しづらいような大規模な(乗合)保険代理店に限定してはどうか。
- なお、今般の事案を踏まえ、この措置を求める保険代理店は、保険金関連事業を兼業する保険代理店を対象とすることが考えられるが、この措置を求める対象とすべき他の事業を兼業する保険代理店はあるか。
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店への対応(対応の方向性)
- 保険会社における体制整備
- 法令上管理を求める対象:保険金関連事業を兼業するすべての保険代理店
- 委託先の保険金関連事業を兼業するすべての保険代理店における、不当なインセンティブにより、顧客の利益又は信頼を害するおそれのある取引を特定した上で、それを適切に管理する方針を策定・公表するとともに、それを防止するための体制整備(例えば、保険金等支払管理部門と営業部門の適切な分離)を求める。
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店における体制整備
- 法令上の義務の対象:一定の規模以上の保険代理店に限定
- 保険金関連事業に係る取引(例えば、保険会社への自動車修理費等の請求)において、不当なインセンティブにより、顧客の利益又は信頼を害するおそれのある取引を特定した上で、それを適切に管理する方針を策定・公表するとともに、それを防止するための体制整備(例えば、修理費等の請求に係る適切な管理体制の整備)を求める。
- 保険会社における体制整備
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応(基本的な考え方)
- 今般の保険金不正請求事案では、保険会社が、自社に大きな収益をもたらす一部の大規模な(乗合)保険代理店との関係が悪化することによる営業面への影響を懸念するあまり、こうした保険代理店に対して、適切に教育・管理・指導を行っておらず、保険代理店において兼業に伴う弊害を防止するための措置が講じられなかったことに加え、保険代理店の業務品質の向上が図られなかったことが、違法又は不適切な募集行為が多数認められる一因となった。
- 保険金不正請求事案の再発を防ぐためには、保険会社からの教育・管理・指導が特に類型的に機能しにくいと考えられる、一定の規模以上の乗合保険代理店が、必要な内部管理体制等を自ら構築するよう、体制整備義務を強化するとともに、その体制整備の状況を把握する義務を保険会社にも課していく方向が考えられる。
- 一方で、保険会社からの教育・管理・指導が引き続き期待できる、中小規模の乗合保険代理店に対しては、現行の体制整備義務(法294条の3)を強化することは不要と整理する方向が考えられる。
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応(対象となる保険募集人の特定)
- 保険会社からの教育・管理・指導が特に及びにくいと考えられる類型の者として、「特定大規模乗合保険募集人」(仮称)を創設するよう制度を見直し、これに該当する者を、保険募集に係る内部管理体制の強化を図る対象としてはどうか。
- 同様に、前述の、保険金関連事業を兼業する保険代理店のうち、「一定の規模以上の保険代理店」として義務を強化する対象にもすることとしてはどうか。
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応(今般の保険金不正請求事案において認識された課題)
- 保険代理店における経営管理態勢
- 会社法に基づく取締役会を開催しておらず、法令等遵守担当の役員の選任・所管部署の設置を行っていない
- 内部統制の妥当性・有効性等を検証・評価する内部監査部門を設置していない
- 苦情管理担当の役員や担当部署を設置しておらず、受け付けた苦情の全貌を把握していない
- 監査役による会計監査・業務監査を実施していない
- 保険代理店における適切な保険募集を確保するための体制整備
- 各店舗への指導・教育を行う部署や各店舗内で保険募集の管理・指導を行う組織を段階的に縮小・廃止する等、保険募集人への組織的な教育・管理・指導が行われていない
- 保険募集に関する内部監査部署を設置していない
- 保険代理店における兼業による弊害を防止するための措置
- 保険金関連事業に伴う弊害を適切に管理し、これを未然に防止するための体制を整備していない
- その他の実務上の懸念点
- 保険代理店の不祥事件に関して、当局に不祥事件の届出を行った保険会社以外の所属保険会社等が当該不祥事件届出に係る情報を確認する方法を法令上確保しておらず、保険代理店と各保険会社で適切な連携がなされない可能性がある
- 保険代理店における経営管理態勢
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応(対応の方向性[保険代理店])
- 特定大規模乗合保険募集人における保険募集に関する内部管理体制及び兼業に伴う弊害防止に関する管理体制を強化する観点から、以下のように体制整備義務を強化することが考えられるか。また、この他、保険金不正請求事案の再発防止を徹底する観点から求めるべき体制整備はあるか。
- 管理部門
- 法令等遵守責任者(事業所単位)や統括責任者(本店又は主たる事業所)の設置を求める等、法令等遵守態勢の強化を求めてはどうか。また、上記の者に対しては、一定の資格要件を求めることとした上で、そのための試験制度を新設してはどうか。
- 顧客本位の業務運営に基づく保険募集を確保する観点から、保険募集指針の策定・公表を求めてはどうか。
- 保険募集に係る苦情処理・内部通報に関する体制整備を求めてはどうか。
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店における不当なインセンティブにより、顧客の利益又は信頼を害するおそれのある取引を特定した上で、それを適切に管理する方針を策定・公表するとともに、それを防止するための体制整備(修理費等請求に係る適切な管理体制の整備等)を求めてはどうか。
- 事業部門
- 管理部門が策定する保険募集指針を踏まえた保険募集の確保を求めてはどうか。
- 監査部門
- 事業部門(修理費等請求部門を含む)に対して十分にけん制機能が働くように独立した内部監査部門を設置する等、内部監査体制の強化を求めてはどうか。
- 管理部門
- 特定大規模乗合保険募集人における保険募集に関する内部管理体制及び兼業に伴う弊害防止に関する管理体制を強化する観点から、以下のように体制整備義務を強化することが考えられるか。また、この他、保険金不正請求事案の再発防止を徹底する観点から求めるべき体制整備はあるか。
- 大規模な(乗合)保険代理店への対応(対応の方向性[保険会社])
- 保険代理店に対する管理・けん制態勢の無効化により、保険代理店が不正行為を行い得る機会を生じさせた結果、不正を助長し顧客被害の拡大につながった。
- 損害保険代理店と自動車修理工場を兼業するモーターチャネルにおける保険代理店の特性やビジネスモデル・経営戦略の下で生じるコンプライアンス・リスクに関する検討をしておらず、保険代理店管理や保険金等支払等の保険会社の基本的業務において、必要な措置を講じていなかった。
- 大手中古車販売店に派遣した出向者から保険会社の営業部門や保険金サービス部門に対して大手中古車販売店による組織的な不正請求の蓋然性が高い事項についての継続的な報告があったにも関わらず、厳格な指導や調査を実施した場合の大手中古車販売店の反発やそれに伴う営業成績・収益への影響を懸念し、その対応を放置していた。
- 大手中古車販売店の保険募集人による不適切な保険募集行為が常態化している蓋然性が高いにもかかわらず、保険会社の営業部門やコンプライアンス部門はそうした事例を把握していなかった。
- 対応の方向性
- 特定大規模乗合保険募集人への業務委託に関する方針を策定することとしてはどうか。
- 顧客の利益又は信頼を害することを防止するための体制整備を求めることとしてはどうか(例えば、保険金等支払管理部門と営業部門の適切な分離)。
- 特定大規模乗合保険募集人の法令等遵守態勢等を検証するための管理責任者を配置することとしてはどうか。
- 保険会社による求償権行使の適切な把握・管理
- 直近5年間に、損保大手4社が、理由を問わず顧客に賠償を行った合計金額のうち、保険会社が保険代理店の故意又は過失を含む何等かの理由により求償を行った実績を調べたところ、約25%(金額ベース)の割合で求償が行われていることが確認された。
- 保険会社から保険募集人への求償権の行使にあたっては、個別事案ごとに、保険会社が顧客に支払った賠償金の額、求償に係るコスト(訴訟費用等)、保険募集人との責任割合及びその立証可能性その他諸般の事情を総合的に考慮する必要があることから、一律の義務化は引き続き慎重に考えるべきではないか。
- 他方で、保険募集人による不適切な保険募集行為の抑止の観点から、監督指針等において、保険会社に対して、求償権行使に関する考え方を整理することや、これに基づく適切な求償権行使が行われていることを把握・管理することを求めることとしてはどうか。その際、管理を求める対象は、あらゆる保険募集人としてはどうか。
- 今般の保険金不正請求事案を踏まえた対応の方向性(小括)
- 保険会社に求める対応
- 保険金関連事業を兼業する保険代理店における、不当なインセンティブにより、顧客の利益又は信頼を害するおそれがある取引を特定し、それを適切に管理する方針の策定・公表等を義務付けることとしてはどうか。(保険金関連事業を兼業する保険代理店)
- 大規模な(乗合)保険代理店に対する指導力等の強化を目的とした体制整備義務を課すこととしてはどうか。(大規模な(乗合)保険代理店)
- 求償権行使の適切な把握・管理を求めることとしてはどうか。(保険募集人)
- 保険代理に求める対応
- 下記の義務を課す対象とする保険代理店を、新たに特定大規模乗合保険募集人として特定することとしてはどうか。
- 保険金関連事業のうち、不当なインセンティブにより、顧客の利益又は信頼を害するおそれがある取引を特定し、それを適切に管理する方針の策定・公表等を義務付けることとしてはどうか。(保険金関連事業を兼業する特定大規模乗合保険募集人)
- 保険募集に係る内部管理体制を強化する観点から、体制整備義務を強化することとしてはどうか。(特定大規模乗合保険募集人)
- 保険会社に求める対応
金融庁 免許を有しない外国保険業者の保険契約の勧誘について
- 最近、「海外の保険会社の生命保険の勧誘を受けているが、加入しても問題ないか。この保険会社は日本で保険業の免許を取得しているのか。」といった相談が寄せられています。
- 外国保険業者(外国の法令に準拠して外国において保険業を行う者)が日本において保険業を行うためには、日本に支店等を設けて、内閣総理大臣の免許を受ける必要があります。当該免許を取得していない外国保険業者は、原則として日本に住所・居所を有する人若しくは日本に所在する財産又は日本国籍を有する船舶・航空機に係る保険契約を締結することは禁止されています(海外直接付保の禁止)(保険業法第186条第1項)。
- なお、当該免許を取得していない外国保険業者は、保険契約の締結の申込みをしようとする者が当該申し込みを行うまでに内閣総理大臣の許可を受けた場合には、例外的に当該保険契約の締結をすることができます。本許可を受けないで当該免許を取得していない外国保険業者に対し保険契約の締結の申込みをした場合、50万円以下の過料に処せられることがあります。
- ※日本国内の免許を取得していない外国保険業者が締結できる保険契約の類型もあります。契約類型の詳細・根拠法令等については、保険業法施行令・保険業法施行規則をご参照ください。
- 免許を取得していない外国保険業者については、契約者等の保護のための態勢が確保されているか否かについて当局では確認できません。免許を取得した上で保険業を行っている保険会社と同等の態勢が整っていない可能性もあり、保険契約者が不測の損害を受けるといった可能性もあります。
- 金融庁では、免許を取得している保険会社の一覧を公表していますので、保険加入を検討する際は、「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」を事前にご確認ください。
- また、保険の勧誘等に関して少しでも不審に思った場合には、以下の連絡先までご相談ください。
- 金融庁 金融サービス利用者相談室(平日10時00分~17時00分)
- 電話:0570ー016811(IP電話からは03-5251-6811)
- FAX(高齢者・障がい者専用):03-3506-6699
- インターネットによる情報の受付はこちら
金融庁 「スチュワードシップ・コードに関する有識者会議」(令和6年度第1回)議事次第
▼ 資料4 事務局説明資料
- より実質的なスチュワードシップ活動を促進するため、機関投資家におけるスチュワードシップ活動の実態調査・課題分析・これらを踏まえた提言をみずほリサーチ&テクノロジーに委託。同社において、2023年1月から3月にかけて、機関投資家136社に対しアンケート調査、16社に対しヒアリング調査を実施。
- 調査の結果、スチュワードシップ活動の実質化に向けては、(1)エンゲージメントのためのリソース(人材・時間)の不足、(2)投資先企業における行動変化やその姿勢が不十分、(3)プロセス構築(PDCAサイクル)に改善の余地がある、(4)コスト・予算を割いて取組みを行うインセンティブの欠如といった課題があると指摘された。また、これらの各課題に対する各運用機関の個別の取組みが、集積された。
- エンゲージメントのためのリソース(人材・時間)の不足
- 運用機関各社及び業界全体において、実効的なスチュワードシップ活動を担うために必要なスキル・能力を備えた人材が不足している。
- 自社で十分な人材の確保・育成が難しい場合には、協働エンゲージメント等を通じた外部の知見の活用が期待されるが、大量保有報告制度上の「共同保有者」の概念が不明確であることや協働エンゲージメント等の負担が一部の運用機関に集中することにより、協働エンゲージメント等を通じたリソースの補完が十分に出来ていない可能性がある。
- エンゲージメント対象企業の選定を行う結果、中堅以下の規模の企業が対象外となりやすい。
- 投資先企業における行動変化やその姿勢が不十分
- 企業から運用機関によるエンゲージメント(対話)や議決権行使が形式的と捉えられ、企業の納得感が得られず、行動変容につながっていない可能性がある。
- 大量保有報告制度上「重要提案行為」概念が不明確であるために踏み込んだエンゲージメントがなされていない可能性がある。
- プロセス構築(PDCAサイクル)に改善の余地
- アセットオーナーにおける十分な評価・モニタリング体制が確保されていない可能性がある。
- コスト・予算を割いて取組みを行うインセンティブの欠如
- 運用機関によるスチュワードシップ活動が、運用機関の選定や報酬設定に適切に反映されていない可能性がある。
- エンゲージメントのためのリソース(人材・時間)の不足
- 調査結果を踏まえ、より実質的なスチュワードシップ活動を促進するためには、(1)運用機関における幅広い協働の取組み、(2)運用機関とアセットオーナーの間の取組み、(3)アセットオーナーにおける幅広い協働の取組みを促進するとともに、(4)これらの取組みを行政当局が適切にフォローアップすることで、関係者全体が一丸となってスチュワードシップ活動の実効性向上に取り組むことが適切であるとの提言がなされた。
- 運用機関における幅広い協働の取組み
- 運用機関個別の課題に関する各運用機関の自己評価を踏まえ、運用機関が幅広く協働して、各運用機関における課題認識の妥当性やその解決に向けた取組みの有効性について意見交換を行い、具体的な対応策を検討する場を設けることが考えられる。
- 運用機関全体の課題として、協働エンゲージメント等の取組みにおいて、一部の運用機関のみが過度な負担を強いられることがないよう、適切な体制を構築していくべきである。また、新規人材の獲得に向けた取組みなどについても、運用業界全体で協働して取り組むことが期待される。
- 運用機関とアセットオーナーの間の取組み
- 運用機関個別の課題に関する各運用機関の自己評価を踏まえ、運用機関が幅広く協働して、各運用機関における課題認識の妥当性やその解決に向けた取組みの有効性について意見交換を行い、具体的な対応策を検討する場を設けることが考えられる。
- 運用機関全体の課題として、協働エンゲージメント等の取組みにおいて、一部の運用機関のみが過度な負担を強いられることがないよう、適切な体制を構築していくべきである。また、新規人材の獲得に向けた取組みなどについても、運用業界全体で協働して取り組むことが期待される。
- アセットオーナーにおける幅広い協働の取組み
- アセットオーナーにおいて評価・モニタリングのための十分な知見・運営体制が確保されることが重要。
- 各アセットオーナーが単独で十分な知見や運営体制を確保することが困難な場合においては、必要に応じ、十分な知見や運営体制を有するアセットオーナーと協働して運用機関を評価・モニタリングするといった方策を講じることも考えられる。
- 行政当局におけるフォローアップ
- 上記の各取組みについて、行政当局はその実効性を適切にフォローアップし、必要に応じ、これらを促進するための更なる施策を講じるべきである。
- 大量保有報告制度上の「共同保有者」概念や「重要提案行為」概念の不明確性について、課題解決に向けた取組みを進めるべきであるとともに、運用機関のエンゲージメント対象外となる企業が、自ら運用機関との対話を依頼することができるよう、実質株主の透明性を向上させるべきである。
- 運用機関における幅広い協働の取組み
- 企業の置かれている状況に応じ、参考となる他社事例の共有や、事業に精通した担当者による継続性のあるエンゲージメントが建設的な対話に発展している傾向があり、厳しい意見でも企業価値向上に資すると捉えられるものを、企業は歓迎している。
- 他方、(割合として少ないものの)投資家側が、企業側の説明に一切耳を傾けず一方的に要望を伝えてくるのみの場合や、企業側の回答に対し追加の質問がなく一辺倒な質疑に終始する場合は、双方向のコミュニケーションが図られず、建設的な対話に発展していない。
- 改めて、機関投資家は、対話自体が目的にならないよう、自らの対話が中長期視点から投資先企業の企業価値や資本効率を高め、持続的成長を促すことが出来ているか留意が必要である。
- 意義があると感じる対話の傾向
- 企業の置かれている状況を客観的に把握でき、それに応じた気付きが得られる。
- 自社の取組みを進めるにあたって参考となる他社の好事例を知ることができる。
- 中長期的な視点に立った継続的な対話により、企業の状況変化・成長フェーズに応じた助言に発展している。
- 事業に精通した担当者が対話に臨んでいる。
- CEO・CFO・担当者といった企業側の対応者に応じた対話のテーマがセットされている。
- 耳の痛い指摘であっても、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資する示唆がある。
- データ・ファクトに基づいた洞察を基に、企業の客観的評価を示している。
- 意義が乏しいと感じる対話の傾向
- (意義の乏しいエンゲージメントは少なく、新たな気づきや視点が得られる場合が大半)
- 会社の立ち位置を鑑みず、理想論のみで企業を厳しく追及している。
- 投資家が求めるあるべき論を、どのようなプロセスを経て実現できるのかの具体案がない。
- 形式的な数値基準の適否の指摘のみで議論が進み、何故その基準が必要なのかの説明が乏しい。
- テンプレートのチェックリストに1つずつ答えても、更問はなく質疑が淡々と続く。
- 短期目線の質問で、開示できない数値について執拗に言質を取りに来る。
- 東証による要請等を踏まえ、企業側にはエンゲージメントを活用して企業価値を向上させようとする行動変容が生まれつつある。
- 企業側の期待に応えるために、多様な機関投資家においても、各々が自らの役割を果たすために入念に準備し、対話に臨む必要がある。
- 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に資する対話に向け、双方が歩み寄り、対話の目的と効果を継続的に確認し合う必要がある。
- 企業側の取り組み
- 対話前に資料を案内することで、投資家側が資料を事前に読むように誘導している。
- 対話を重ねる中でその必要性を更に重視し、IR部門のリソースを増強している。
- CEO・CFOが直接対話する際には、会社の大きなビジョンに対する投資家の見方を議論している。
- 取締役会として、社外取締役のみで対話に応じることが投資家の理解促進に寄与すると考えており、様々な機会を捉えそうした場を設けている。
- 対話の結果を取締役会も含め社内でフィードバックし、さらにその反応を投資家に還元している。
- 事業別ROICやM&Aの検証等、投資家から質問が多かった項目を分析した上で開示している。
- 機関投資家への要望
- 限られた時間内で目線が合った状態で対話をスタートできるよう、開示資料に事前に目を通してほしい。
- 適切な対応者をアサインするため、対話のアジェンダを事前に伝えてほしい。
- 業績改善や企業価値向上につながった好事例があると、経営陣・取締役への説明・説得がしやすい。
- 株主還元については、会社のステージを踏まえた上で成長投資すべきか還元すべきかを議論したい。
- アドバイスをもとに改善して、次の対話の際に報告し、追加のアドバイスがもらえる循環にしたい。
- 複数のチームに対し重複した説明を求められるので、運用会社内での情報連携を図ってほしい。
- コーポレートガバナンス改革を加速化し強化するため、海外投資家を含むステークホルダーから幅広く意見を聞く場として、ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム(JCGF)を設置。
- 引き続き、コーポレートガバナンスの改善を評価する声があった一方、スチュワードシップ活動の実質化や取締役会の実効性向上、収益性と成長性を意識した経営に向けた課題等が指摘された。
- 総論
- 会社自身がコーポレートガバナンス改革の必要性を感じ、取り組んでいる点を好感。
- 企業の透明性は改善傾向にある。
- コーポレートガバナンス改革の意義を理解しておらず、形式的なものと捉えているように感じる。
- 中小の上場企業ではアクション・プログラムについてこれない企業も多いのでは。頭では分かっているが、腹落ちしていない企業も多い。
- スチュワードシップ活動の実質化
- 日本企業のコーポレートガバナンスの改善のためには、企業とより日常的にエンゲージメントを行い、言語のハードルもない国内の運用会社が、積極的に企業に対するプレッシャーを高めることを期待。
- 自律的に顧客へのスチュワードシップ責任を果たす姿勢が重要。
- 投資先企業の全てに毎年エンゲージメントするのは現実的ではない。一定の周期でエンゲージメントを行いガバナンスの改善につなげることや、テーマの設定、優先順位付けも重要。
- 企業がノウハウを有していないテーマについて、投資家が課題解決のための提案をすることは、企業から好評。そのための協働エンゲージメントの活用は重要。
- ご議論いただきたい事項
- コーポレートガバナンス改革
- 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上というコーポレートガバナンス改革の趣旨に照らして、スチュワードシップ・コードが果たしている役割と今後の課題をどう考えるか。
- スチュワードシップ活動の実質化
- 機関投資家のスチュワードシップ活動の実質化に向け、どのように取り組んでいくべきか。
- 例えば、パッシブ運用の割合が高まっている中、エンゲージメントを一層実効的なものとするためには、スチュワードシップ活動に対する適切なインセンティブの付与や、スチュワードシップ活動に係る適切なコストシェアリングが重要との指摘があるが、どう考えるか。
- また、このような指摘に関連して、機関投資家において以下のような取組みが行われているが、どう考えるか。
- (1)(運用機関において)質的・量的なリソースを補い、コストを低減する観点から、協働エンゲージメントの取組みを積極的に活用する取組み
- (2)(アセットオーナーにおいて)スチュワードシップを重視したパッシブ運用モデル(通常のパッシブ運用とは異なる報酬体系)を採用し、市場全体の底上げとスチュワードシップ活動のアプローチ方法の多様化・強化を目指す取組み
- (3)(アセットオーナーにおいて)複数のアセットオーナーが協働して運用機関をモニタリングする取組み
- あわせて、アセットオーナ-・プリンシプルの策定も踏まえ、より広い主体によるスチュワードシップ活動を促進するため、例えばコードのコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨を改めて確認する等、更に取組むべき事項はあるか。
- 実質株主の透明性
- 我が国においては、企業が実質株主(株式について議決権指図権限や投資権限を有する者であって名義株主でない者)を把握するための制度が存在しない。
- 企業と機関投資家の信頼関係の醸成を促進するとともに、企業から機関投資家に対話を申し入れることを容易にする観点からは、実質株主の透明性を向上させることが重要との指摘があるが、どう考えるか。
- スチュワードシップ・コードのスリム化
- 英国スチュワードシップ・コードやICGNグローバル・スチュワードシップ原則は、スリム化の方向。
- 日本のスチュワードシップ・コードについても、策定・改訂時からの時の経過とともにコードに記載する必要性が低下した箇所、改訂時の経緯から重複感がある箇所、冗長な表現を簡潔にすべき箇所等を中心に、スリム化すべき点はあるか。
- その他
- スチュワードシップ・コードの見直しに当たり、上記以外に重要な課題はあるか
- コーポレートガバナンス改革
金融庁 「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」に対するパブリックコメントの結果等について
▼ 「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」概要
- 国内外の機関投資家の資金がベンチャーキャピタル(VC)に円滑に供給されるよう、広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCについて、ファンドへの投資者(LP)及びファンド運営管理者(GP)の「推奨・期待される事項」を策定
- 位置づけ
- VCのガバナンス等が向上することで、内外機関投資家によるVCへの円滑な資金供給、スタートアップへの全般的な出資機能の強化、スタートアップエコシステムの進化を目的とする
- 広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCにおいて、VCの実態に応じ、LP及びGPにより活用されるものとして作成
- 本有識者会議として推奨又は期待する事項をまとめたものであり、当該推奨・期待に応じた対応をどのように行うかは、LPとGPの間で意思疎通されることが期待される
- 対象となるVC
- 広く内外機関投資家から資金調達を目指すVC
- ※CVC、金融系・大学系VC、初期段階のVCは、本業とのシナジーや資金調達状況等を踏まえた運営体制を取ることが想定される一方、LPの意向やGPの将来展望等を踏まえ、必要に応じて推奨・期待される事項が参照されることも期待される
- 広く内外機関投資家から資金調達を目指すVC
- 推奨・期待される事項の内容
- 推奨される事項
- 受託者責任・ガバナンス
- 受託者責任の認識・LPへの説明
- 持続可能な経営体制(キーパーソン等)の構築
- コンプライアンス管理体制の確保
- LPの権利の透明性確保
- 利益相反管理等
- 利益相反管理体制の整備(LPへの諮問等)
- GPによる出資コミットメント等
- 情報提供
- 保有資産の公正価値評価
- 四半期ごとのファンド財務情報等の提供
- 受託者責任・ガバナンス
- 期待される事項
- 投資先の企業価値向上
- スタートアップの成長に資する投資契約
- 投資先の経営支援(人材紹介、ノウハウ提供等)
- 投資後の継続的な資本政策支援等(フォローオン投資、ファンド期間の延長、M&A含む最適なエグジット手法・時期の検討)
- 投資先の上場後の対応(クロスオーバー投資)
- その他
- ESG・ダイバーシティ
- 投資先の企業価値向上
- 推奨される事項
金融庁 多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会(第22回)の開催について
▼ 資料1 多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向(金融庁/消費者庁/厚生労働省(自殺対策推進室)/法務省)
- 様々な手口のヤミ金融(個人間融資、商品売買を装う貸付け等)に関する注意喚起の推進
- 政府広報を活用したラジオ番組・無料ニュースアプリ等にて、様々な手口の闇金融について注意喚起。特に若年者向けとしてSNS(LINE、YouTube)における注意喚起も実施(本年3月及び7月~12月に実施)。
- 金融庁広報誌(アクセスFSA3月号)に個人間融資に係る注意喚起の記事を掲載。
- SNS個人間融資に関する悪質な書込みへの直接返信の実施
- X(旧Twitter)及びInstagramにおいて個人間融資の勧誘を行っている悪質な投稿に対し、金融庁公式アカウントから注意喚起及び運営会社への通報を実施。(悪質アカウントや投稿の90%近くが削除)
- 「多重債務」かつ「ギャンブル」に関する相談件数は、直近3年度においてゆるやかに増加。
- 令和6年5月、消費者庁ウェブサイトや消費者庁X(旧Twitter)において、ギャンブル等依存症に係る各種の相談窓口等を紹介する御本人・御家族向け啓発用資料を配信。また、関係省庁等と連携して全国の自治体や大学附属病院、国立病院機構等にも当該資料を送付し、ギャンブル等依存症の当事者へ啓発の取組を推進。
金融庁 「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall Ⅸ)」について
▼ (別添)「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall Ⅸ)について」
- 金融分野のサイバーセキュリティを巡る状況
- 世界各国において、大規模なサイバー攻撃が発生しており、我が国においても、サイバー攻撃による重要情報の窃取、金銭被害等が発生
- こうしたサイバー攻撃の脅威は、金融システムの安定に影響を及ぼしかねない大きなリスクとなっており、金融業界全体のインシデント対応能力の更なる向上が不可欠
- 金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall Ⅸ)
- 2024年10月、 金融庁主催による9回目の「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習」(Delta Wall Ⅸ(注))を実施(注)Delta Wall:サイバーセキュリティ対策のカギとなる「自助」、「共助」、「公助」の3つの視点(Delta)+防御(Wall)
- 中小規模の重要インフラ事業者の参加率向上の観点から、170先が参加予定(昨年度から5先増)
- シナリオについてはサイバー攻撃が同時多発的に発生し、複合的なインシデント対応を求めることで演習の高度化を図る
- 昨年度に引き続き、テレワーク環境下での対応も含めたインシデント対応能力の向上を図るため、参加金融機関は自職場やテレワーク環境下で演習に参加
- 演習の特徴
- インシデント発生時における初動対応、攻撃内容の調査・分析、顧客対応、復旧対応等の業務継続を確認
- 参加金融機関がPDCAサイクルを回しつつ、対応能力の向上を図れるよう、具体的な改善策や優良事例を示すなど、事後評価に力点
- 本演習の結果は、参加金融機関以外にも業界全体にフィードバック
- 演習シナリオの概要
- 銀行、信金・信組・労金
- (ブラインド方式のため非開示)
- 証券
- 業務システムやオンラインサービスの停止等が発生
- 生命保険会社・損害保険会社
- 業務システムの停止等が発生
- 資金移動業者・前払式支払手段発行者・暗号資産交換業者
- 業務システムの停止等が発生
- 銀行、信金・信組・労金
金融庁 SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口の設置等について
- 昨今、著名人等になりすましたものを始めとするSNS上の投資広告や投稿等による詐欺被害が数多く発生しており、本年6月18日にはこうした詐欺被害に対応するため、「国民を詐欺から守るための総合対策」が犯罪対策閣僚会議により策定されたところです。
- そのような著名人等になりすました偽広告等を含め、投資詐欺を目的とするようなSNS上の広告等については、金融商品取引法に違反する可能性があるところ、今般、金融庁では、当該広告等に関しての情報収集等のうえ、当該広告等の削除につなげるなど、SNS事業者等と連携し対応を実施するため、「SNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する情報受付窓口」を設置いたしました。
- つきましては、情報(偽広告等をきっかけに投資や投資のアドバイスの勧誘を受けた、又は実際に投資詐欺の被害に遭ったなど)をお持ちの方は、以下の要領等をご覧頂き、入力フォーム新しいウィンドウで開きますから情報提供をお願いいたします。
- なお、今般、Facebook及びInstagramにおいて、金融庁の関連アカウントを開設しておりますので、あわせてお知らせいたします。当該アカウントよりSNS上の投資詐欺が疑われる広告等に関する注意喚起等の発信を予定しております。
金融庁 「アジアGXコンソーシアム」の設立について
- 令和6年10月2日(水曜日)に、アジアGXコンソーシアムのハイレベル会合が東京で開催され、本コンソーシアムの設立が公表されました。本コンソーシアムは、アジア地域において、企業の脱炭素の取組を支援するファイナンス手法であるトランジション・ファイナンスを推進すべく、金融庁とASEAN金融当局に加え、アジア開発銀行、グラスゴー金融同盟(GFANZ)及びアジアで活動する金融機関等の参画を得て、アジアにおける事例等を通じて実務的な議論を行い、具体的な手法の形成や案件組成に繋げていくための枠組み(※)です。 ※本コンソーシアムは、当庁をはじめ、ASEAN金融当局・ADB・GFANZ・MUFG・SMFG・MHFG・JBIC・DBJ・JICA及びオブザーバー参加者から構成。ASEAN金融当局は、ACMF(ASEAN Capital Market Forum)及びWC-CMD(Working Committee on Capital Market Development)の協働参加。コンソーシアムでのアジアの金融当局や民間金融機関との連携を通じ、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)等の取組にも貢献。
▼ プレスリリース(仮訳)
- アジアにおいて公正かつ秩序あるトランジションに向けた金融を促進し、正しい方向に向かわせるという目的を共有する金融規制当局、民間金融機関、及び公的・国際機関から構成される「アジアGXコンソーシアム」が、本日、東京で開催されたハイレベル会合においてその設立を公表した。
- 世界中の投資家やステークホルダーの参画を得て数多くの会合が開催される「Japan Weeks」期間中に、本コンソーシアムとして、世界中の人々に対して本件について発表できることを喜ばしく思う。
- 本コンソーシアムでは、参加メンバーである金融規制当局が、民間金融機関及び公的・国際機関から本コンソーシアムのイニシアティブに対する市場の知見と協力を得つつ、規制上の目線及び市場慣行を結集する。当初の事務局機能は、日本国金融庁により担われる。
- アジアにおけるトランジション・ファイナンスの拡大は、世界的な気候変動目標を達成する上で極めて重要であり、同時に、同地域に莫大な投資機会をもたらすものである。
- 本コンソーシアムは、多様なバックグラウンドを持つメンバーにより構成され、ケーススタディ等を含むアジアの文脈を踏まえた議論の推進を通じたトランジション・ファイナンスに関する実務的かつ共通のアプローチの開発や、特にASEAN地域の新興市場や発展途上市場においてトランジション・ファイナンスを促進するためにこのアプローチの成果物を活用していくこと、ひいては日本及びASEAN地域におけるトランジション・ファイナンスの流れを促進する方法を探ることを目指す。
- 本コンソーシアムは、公的セクター及び民間セクターの2つのグループによって構成される。メンバーは、日本国金融庁、ASEAN資本市場フォーラム(ACMF)、ASEAN資本市場開発作業委員会(WC-CMD)、アジア開発銀行(ADB)、グラスゴー金融同盟(GFANZ)、みずほフィナンシャル・グループ(MHFG)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャル・グループ(SMFG)、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)、株式会社国際協力銀行(JBIC)、及び独立行政法人国際協力機構(JICA)である
- ハイレベル会合の準備段階として開催されたテクニカル・ミーティングにおいては、アジアにおける気候トランジションへの資金動員、ブレンデッド・ファイナンスの役割、これらをアジアの地域的文脈の中で実践していくこと、多様な関係者の間で議論を促進していくことの重要性が強調された。これらの準備的議論の詳細は、メンバーとの協議を経て事務局が作成した「アジアにおけるトランジション・ファイナンスに係る実践的アプローチに関するワーキングペーパー」に記載されている。
- 本コンソーシアムの今回のハイレベル会合は、「Japan Weeks」のイベントの一つとして、アジア地域の金融規制当局がアジアの脱炭素化について深度ある議論を行った「アジアハイレベル金融規制当局者フォーラム」と併せて開催された。
- 本コンソーシアムは、今回の設立を踏まえ、メンバー間の継続的な議論、更なるアウトプットの策定、この地域の声とともに幅広いステークホルダーに対して積極的に働きかけを行っていくことなどを通じて、この地域のトランジション・ファイナンスの取組みにおいて重要な役割を果たしていく。
- 「本日、アジアGXコンソーシアムの設立を公表することを非常に喜ばしく思う。このコンソーシアムは、この地域における公的・民間セクターの鍵となるステークホルダーを結集させ、我々の強み、資源および専門的知見を結合させる。我々は、このコンソーシアムで共に活動することにより、この地域におけるトランジション・ファイナンスの拡大に向けた意味ある一歩を踏み出すことを目指す。」金融庁長官 井藤 英樹
- 「ACMFは、アジア地域でのトランジション・ファイナンスの共通アプローチを開発する中において、「サステナブルファイナンスのためのASEANタクソノミー」、「ASEANトランジション・ファイナンス・ガイダンス」等を参照するアジアGXコンソーシアムの取組みを称賛する。」ACMF
- 「我々は、アジアGXコンソーシアムに参加し、他のメンバーと協力して、ASEAN地域におけるトランジション・ファイナンスを推進することを楽しみにしている。」WC-CMD
- 「トランジションは我々の将来のための新たな戦場である。したがって、公正なトランジションをサポートするために資金を向けることが不可欠である。しかしながら、トランジションは野心と現実のバランスであり、地理的な文脈化が重要になるため、これは課題でもある。アジアGXコンソーシアムは、普遍的に認知された信頼できる文脈化を通じたトランジション・ファイナンスの実現に向けた重要な一歩である。」サステナブル・ファイナンス・インスティテュート・アジア(SFIA)
- 「アジアGXコンソーシアムの取組みにおけるADBの協力は、金融庁をはじめとする官民セクターの主要なステークホルダーとともに、アジア・太平洋地域全体でトランジション・ファイナンスを拡大する上で極めて重要である。この取組みは、有意義な対話を促進し、域内の持続可能なネットゼロの未来に向けた秩序ある公正なトランジションを推進する実行可能な解決策を提供するための重要な地域協力プラットフォームとして機能する。」ADB総裁 浅川 雅嗣
- 「パリ協定の目標を達成するためには、トランジションのための大規模な資金調達が必要である。GFANZは、必要とされるトランジション・ファイナンスを提供するために金融システムを支援することに重点を置いており、我々の努力をアジアGXコンソーシアムと共有することを喜ばしく思う。アジアは、世界経済の脱炭素化に向けた世界の取組みの中心となる必要がある。」GFANZ副議長 メアリー・シャピロ
- 「グローバルにおけるカーボンニュートラル達成には、ASEAN地域の重要性は益々高まっており、地理的条件・業種・時間軸といった様々な要因を踏まえた適正なトランジションの道のりが必要です。〈みずほ〉は本コンソーシアムでの議論を通じ、ASEAN地域の脱炭素化と持続可能な経済成長の実現を目指し、お客さまとともに挑戦し続けていきます。」みずほフィナンシャル・グループ 執行役社長 木原 正裕
- 「我々はアジアGXコンソーシアムの発足の発表を歓迎する。アジアは、公正かつ秩序ある移行を実現するために毎年数兆ドルを必要としている。ASEAN経済圏において幅広くプレゼンスがある金融グループとして、急成長するこの地域の脱炭素化に大きな責任と関心を有している。移行に必要な資本を動員するためには、公共セクターと民間のパートナーシップが不可欠であり、コンソーシアムは当該地域の未来に向けた一連の解決策を提供するための重要な役割を担い得る。今後コンソーシアムの関係者との協働を楽しみにしている。」三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 亀澤 宏規
- 「アジアにおいて脱炭素化を実現するためには、トランジションファイナンスが不可欠であり、その推進には官民連携が重要です。アジアGXコンソーシアムの設立を心から歓迎するとともに、参画メンバーとの活発な議論を通じて、実体経済の脱炭素化に最大限貢献してまいります。」三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループ CEO中島 達
金融庁 高速取引行為の動向について
▼ 別添1 高速取引行為の動向について
- 高速取引行為者に係る登録制の導入(2018年4月)後、登録が進み、高速取引行為者数は足元50社程度で推移。2024年6月末時点では、52社。今回更新分(2024年1月~6月)では、新規登録は3社、廃業は3社。
- 東京証券取引所上場銘柄(株式)
- 売買代金全体に占める高速取引行為者等の売買代金比率は、足元35%程度で推移。戦略ごとの内訳は、マーケットメイク戦略が15%程度、アービトラージ戦略が15%程度、ディレクショナル戦略が45%程度、その他の戦略が25%程度で推移。
- 注文件数全体に占めるコロケーション経由・高速取引行為者等の注文件数比率は75%程度で推移。一方、売買代金全体に占めるコロケーション経由・高速取引行為者等の売買代金比率は35%程度で推移。他方、非コロケーション経由・高速取引行為者等の注文件数比率及び売買代金比率はともに1%以下。
- 注文件数(新規、取消)全体に占める高速取引行為者等の注文件数比率は、70%~90%程度で推移。他方、変更注文・約定件数全体に占める高速取引行為者等の注文変更・約定件数比率は、足元30%~40%程度に低下。
- 高速取引行為者等の注文件数のうち、条件付き以外の注文(主に指値注文)は90%程度で推移しており、残り10%程度のほとんどはIOC注文。また、IOC注文件数全体に占める高速取引行為者等の注文件数比率は、85%程度で推移。一方、成行注文件数全体に占める高速取引行為者等の成行注文件数比率は、1~2%程度で推移。
- 大阪取引所上場銘柄(先物・オプション)
- 売買代金全体に占める高速取引行為者等の売買代金比率は、35%~50%程度で推移。また、戦略ごとの内訳としては、マーケットメイク戦略が20%、アービトラージ戦略が15%、ディレクショナル戦略が25%、その他の戦略が40%程度で推移。取引行為者等の注文件数(新規、取消)比率は、99%程度で推移。一方、変更注文件数全体に占める高速取引行為者等の変更注文件数比率は足元40%程度に低下し、約定件数全体に占める高速取引行為者等の約定件数比率は、60%程度で推移。
- 高速取引行為者等の注文件数のうち、足元、残数量取消(FAK)注文は80%程度で推移しており、残り20%程度は通常条件(GFD)注文。また、FAK注文件数全体に占める高速取引行為者等のFAK注文件数比率は、概ね100%。一方、成行注文件数全体に占める高速取引行為者等の成行注文件数比率は、概ね0%。
- 商品別の売買代金全体に占める高速取引行為者等の売買代金比率は、長期国債先物では20~40%、日経225miniでは60~70%、日経225先物では40~60%、TOPIX先物では30~60%程度で推移。
- 商品別の売買代金全体に占める高速取引行為者等の売買代金比率は商品により差異が見られる。
金融庁 「主要行等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)及び「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(案)に対するパブリックコメントの結果等について
▼ (別紙2)「主要行等向けの総合的な監督指針」の一部改正(新旧対照表)
- システムリスクとは、コンピュータシステムのダウン又は誤作動等のシステムの不備等に伴い、顧客や銀行が損失を被るリスクやコンピュータが不正に使用されることにより顧客や銀行が損失を被るリスクをいうが、銀行の経営再編に伴うシステム統合や新商品・サービスの拡大等に伴い、銀行の情報システムは一段と高度化・複雑化し、さらにコンピュータのネットワーク化の拡大に伴い、重要情報に対する不正なアクセス、漏えい等のリスクが大きくなっている。
- 特に主要行等のシステムについては、元来、機能が高度である一方、大量処理が求められていることから、規模が大きく、構成が複雑である傾向にある。加えて、累次の経営再編によりシステム構成、システム運用体制が、一層複雑化していることから、特にシステム上の諸課題に的確に対応することが求められている。仮に主要行等において、システム障害やサイバーセキュリティ事案が発生した場合は、利用者の社会経済生活、企業等の経済活動、ひいては、我が国経済全体にも極めて大きな影響を及ぼすおそれがあるほか、その影響は単に一銀行の問題にとどまらず、金融システム全体に及びかねないことから、システムが安全かつ安定的に稼動することは決済システム及び銀行に対する信頼性を確保するための大前提であり、システムリスク管理態勢の充実強化は極めて重要である。
- また、金融機関のIT戦略は、近年の金融を巡る環境変化も勘案すると、今や金融機関のビジネスモデルを左右する重要課題となっており、金融機関において経営戦略をIT戦略と一体的に考えていく必要性が増している。こうした観点から、経営者がリーダーシップを発揮し、ITと経営戦略を連携させ、企業価値の創出を実現するための仕組みである「ITガバナンス」が適切に機能することが極めて重要となっている。
- (注)サイバーセキュリティ事案とは、情報通信ネットワークや情報システム等の悪用により、サイバー空間を経由して行われる不正侵入、情報の窃取、改ざんや破壊、情報システムの作動停止や誤作動、不正プログラムの実行やDDoS攻撃等の、いわゆる「サイバー攻撃」により、サイバーセキュリティが脅かされる事案をいう。
- キャッシュカードやATMシステムについて、そのセキュリティ・レベルを一定の基準に基づき評価するとともに、当該評価を踏まえ、一定のセキュリティ・レベルを維持するために体制・技術、両面での検討を行い、適切な対策を講じているか。その際、情報セキュリティに関する検討会の検討内容等を踏まえ、体制の構築時及び利用時の各段階におけるリスクを把握した上で、自らの顧客や業務の特性に応じた対策を講じているか。また、個別の対策を場当たり的に講じるのではなく、セキュリティ全体の向上を目指しているか。セキュリティの確保に当たっては、「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」も参照すること。
- 預貯金者保護法等を踏まえ、適切な認証技術の採用、情報漏洩の防止、異常取引の早期検知等、不正払戻し防止のための措置が講じられているか。その際、顧客の負担が過重なものとならないよう配慮するとともに、互換性の確保などにより利用者利便に支障を及ぼさないよう努めているか。
- 高リスクの高額取引をATMシステムにおいて行っている場合、それに見合ったセキュリティ対策を講じているか。特に脆弱性が指摘される磁気カードについては、そのセキュリティを補強するための方策を検討しているか。また、国際的な業務展開を行っている銀行については、国際的なセキュリティトレンドに沿った対策を念頭におきながら、必要な検討を行っているか。
- 情報セキュリティに関する検討会の検討内容等を踏まえ、体制の構築時及び利用時の各段階におけるリスクを把握した上で、自らの顧客や業務の特性に応じた対策を講じているか。また、個別の対策を場当たり的に講じるのではなく、効果的な対策を複数組み合わせることによりセキュリティ全体の向上を目指すとともに、リスクの存在を十分に認識・評価した上で対策の要否・種類を決定し、迅速な対応が取られているか。
- インターネットバンキングに係る情報セキュリティ全般に関するプログラムを作成し、各種犯罪手口に対する有効性等を検証した上で、必要に応じて見直す態勢を整備しているか。また、プログラム等に沿って個人・法人等の顧客属性を勘案しつつ、「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」や全国銀行協会の申し合わせ等も踏まえ、取引のリスクに見合ったセキュリティ対策を講じているか。その際、犯罪手口の高度化・巧妙化等(「中間者攻撃」や「マン・イン・ザ・ブラウザ攻撃」など)を考慮しているか。
- ウェブページのリンクに関し、利用者が取引相手を誤認するような構成になっていないか。また、フィッシング詐欺対策については、利用者がアクセスしているサイトが真正なサイトであることの証明を確認できるような措置を講じる等、業務に応じた適切な不正防止策を講じているか。
- (注)情報の収集に当たっては、金融関係団体や金融情報システムセンターの調査等のほか、情報セキュリティに関する検討会や金融機関防犯連絡協議会における検討結果、金融庁・警察当局から提供された犯罪手口に係る情報などを活用することが考えられる。
- 預金口座との連携を行う際に、固定式のID・パスワードによる本人認証に加えて、ハードウェアトークン・ソフトウェアトークンによる可変式パスワードを用いる方法や公的個人認証を用いる方法などで本人認証を実施するなど、実効的な要素を組み合わせた多要素認証等の導入により預金者へのなりすましを阻止する対策を導入しているか。
- 例えば、以下のような取引のリスクに見合った適切な認証方式を導入しているか。
- 可変式パスワード、生体認証、電子証明書等、実効的な要素を組み合わせた多要素認証などの、固定式のID・パスワードのみに頼らない認証方式
- ログインパスワードとは別の取引用パスワードの採用(同一のパスワードの設定を不可とすること等の事項に留意すること。)また、内外の環境変化や事故・事件の発生状況を踏まえ、定期的かつ適時にリスクを認識・評価し、必要に応じて、認証方式の見直しを行っているか。
- 例えば、以下のような業務に応じた不正防止策を講じているか。
- 不正なIPアドレスからの通信の遮断
- 利用者に対してウィルス等の検知・駆除が行えるセキュリティ対策ソフトの導入・最新化を促す措置
- 不正なログイン・異常な取引等を検知し、速やかに利用者に連絡する体制の整備
- 不正が確認されたIDの利用停止・前回ログイン(ログオフ)日時の画面への表示
- 取引時の利用者への通知 等
【2024年9月】
金融庁 暗号資産の流出リスクへの対応等に関する注意喚起及び自主点検要請について
- 本年5月に発生した暗号資産交換業者における利用者財産の不正流出事案を踏まえ、暗号資産の流出リスクへの対応及びシステムリスク管理態勢(以下、「暗号資産の流出リスクへの対応等」)に関し、従来から事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 16.暗号資産交換業者関係(以下、「事務ガイドライン」)等に記載している内容も含めて以下の通り注意喚起しますので、貴協会会員に対して周知・徹底をお願いします。
- 経営陣の認識・関与
- 経営陣は、暗号資産交換業者の経営において、暗号資産の流出リスクへの対応が利用者保護の観点から最重要課題のひとつであり、その管理態勢は高い実効性が求められることを認識する必要がある。
- 経営陣は、流出リスクの対応に関する社内からの報告や外部から入手した情報を十分に活用することなどにより、流出リスクへの対応が適切に行われるための態勢整備を行う必要がある。
- 暗号資産の管理態勢
- 本年5月に発生した暗号資産の不正流出事案と同様の事案を防ぐためには、今後も各社において暗号資産の管理態勢を適切かつ実効的なものにしていく必要がある。
- 各社における暗号資産の流出リスクへの対応等について、事務ガイドラインや自主規制規則等に沿って適切に実行される態勢となっているか、3線管理が有効に機能しているか等を、改めて高い問題意識を持って点検する必要がある。
- なお、点検に当たっては、特に以下の点についても検証する必要がある。
- コールドウォレット管理
- コールドウォレット管理について、外部から遮断された環境で秘密鍵を管理するだけでなく、複数の担当者の適切な関与により牽制機能が実効的に発揮される手順とするなど、流出リスクを最小化すべく入出庫のオペレーションの手続きを社内規則等に定めるとともに、当該社内規則等に従って着実にオペレーションを遂行しているか。
- これらに加え、短期間で出庫する可能性のあるものと長期間保管するものを異なるコールドウォレットで管理することや、コールドウォレットからの出庫先をホワイトリスト化すること等のリスク低減に向けた措置の是非に関する検討を行っているか。
- また、外部ウォレットを利用することに伴う暗号資産の流出リスクの分析・特定、及び特定されたリスクへの対応、外部ウォレットに問題が発生した場合の対応方法の理解を適切に行っているか。
- 不正行為の原因究明
- 不正行為が発生した際には、速やかに取引ログやセキュリティルームの監視記録等を検証し、原因究明を行うことが重要であることから、取引ログ等の保存状況が検証のために適切かつ十分なものとなっているか。また、速やかに検証を行うことが可能となっているか。
- コールドウォレット管理
- また、貴協会会員に対して上記の注意喚起の内容が適切に実施されているかに関して自主点検を行うことを求めるとともに、その結果を取りまとめてご連絡いただくようにお願いします。
金融庁 金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」(第1回)議事次第
▼ 資料3 事務局説明資料
- 送金・決済サービスの分野では、デジタル化等の経済・社会の変化に応じ、2020年以降、資金移動業の柔構造化、暗号資産交換業の規制強化、電子決済手段等取引業の創設といった対応を行ってきた。
- このような対応を行ってきた送金・決済サービス分野や、与信サービス分野において、足下では利用者・利用形態の広がりや、近年登場した立替サービス等の新たな金融サービスが見られる。
- 送金・決済・与信サービスの利用者・利用形態の広がりや、新たな金融サービスの登場がみられる中、ビジネスの健全な発展に資する規制のあり方について検討を行う必要
- 資金決済制度関係<送金分野>
- 資金移動業者の破綻時には、供託手続を通じて国が各利用者に対して還付手続を実施することとされており、利用者への資金の還付に最低約170日の期間を要する。
- 利用者資金の還付手続きをより迅速に進めていく観点からどのような制度整備が考えられるか
- 様々な目的で国境を越えた送金を行うクロスボーダーの収納代行サービスが登場している。
- こうしたサービスと、資金移動業者による送金サービスとの規制の衡平をどのように考えるか
- 資金移動業者の破綻時には、供託手続を通じて国が各利用者に対して還付手続を実施することとされており、利用者への資金の還付に最低約170日の期間を要する。
- 資金決済制度関係<暗号資産等分野>
- 暗号資産交換業者の国際的な破綻事例が発生した。
- グローバルに活動する暗号資産交換業者が破綻した場合等に、国内の利用者財産の返還を担保する仕組みが考えられないか
- 特定信託受益権の発行見合い金について、全額を預貯金で管理することが求められている。
- 電子決済手段としての価格安定性、流動性、償還確実性を確保しつつ、管理・運用方法を柔軟化することについてどう考えるか
- 暗号資産交換業者の国際的な破綻事例が発生した。
- その他
- 事業者が利用者からの依頼に基づき資金を預かることなく送金した上で、後日利用者に対して立替金を請求するような取引(立替サービス)が登場している。
- こうした立替サービスと資金移動業者による送金や貸金業者による与信との関係をどのように考えるか
- 外貨建てのファイナンスニーズ等に応えるため、国内に拠点を有しない外国銀行等が国内銀行が組成するシンジケートローンに参加して貸付を行う場合には貸金業登録が必要となる。
- 国内への営業所設置など貸金業登録にあたっての規制に係る事業者の負担をどのように考えるか
- 事業者が利用者からの依頼に基づき資金を預かることなく送金した上で、後日利用者に対して立替金を請求するような取引(立替サービス)が登場している。
- 資金決済制度関係<送金分野>
- 送金・決済・与信サービスを巡る現状及び課題
- 通信・IT事業者の参入やキャッシュレス決済の浸透を受け、一部の決済サービスは、その利用者が数千万人を超えるなど、国民生活のインフラへと成長しつつある。
- 資金決済法においては、資金移動業者に対して、利用者から受け入れた資金の全額を供託、銀行保証又は信託により保全することを求めた上で、破綻時には、保全された資金は、供託手続を通じて国が各利用者に対して還付手続を実施することとし、利用者への資金の還付に最低約170日という期間を要する制度となっている。
- これは、少額の利用が想定される中で、利用者に還付手続の費用を負担させることを回避しつつ、資金移動業者が破綻した場合に利用者保護を図り、社会的・経済的影響を最小限に抑える必要があることや、倒産隔離を図りつつ、事業者が参入しやすいように配慮するという考え方に基づいたものである。
- 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)については、賃金支払に関する労使の新たな選択肢として、資金移動業者の口座への支払を認めるため、2020年8月から2022年9月にかけて労働政策審議会労働条件分科会において議論された上で、労働基準法施行規則の改正が行われた(2023年4月1日施行)。
- 資金移動業者が賃金のデジタル払いの受け入れ先となるためには、賃金の確実な支払を担保する観点から、 破産等により資金移動業者の債務の履行が困難となったときに、労働者に対して負担する債務を速やかに労働者に弁済することを保証する仕組みを有していること等の要件を満たす必要がある(厚生労働大臣が指定)。
- 金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告(2019年12月)において、下記のような典型的な収納代行については「為替取引に関する規制を適用する必要性は、必ずしも高くない」と整理された。※同報告書を受け、2020年の資金決済法改正において、一部の収納代行(いわゆる「割り勘アプリ」等、債権者が個人であるもの)について為替取引に該当することが法文上明示的に規定された。
- あわせて、「今後、それぞれのサービスの機能や実態に着目した上で、為替取引に関する規制を適用する必要性の有無を判断していくことが適当」と取りまとめられている。
- 様々な目的で国境を越えた送金を行うクロスボーダーの収納代行サービスが登場している。
- それらのサービスでは、国内にて完結するサービスと比較し、例えば、国外の送金システムの利用による支払遅延等のリスクや、法域を跨がることにより、利用者保護が困難となる可能性が考えられる。
- こうしたサービスの中には、資金移動業登録を受けることなく提供されているものもある。
- 2024年6月の国内取引金額は約1.6兆円(現物取引:約1.0兆円、証拠金取引:約0.6兆円)
- ビットコイン価格は、2024年3月末時点ではおよそ71,334米ドル(約1,080万円)と過去最高値を更新、2024年6月末の国内口座数は約1040万口座を突破しており、利用者は拡大し続けている。
- 暗号資産交換業者は、29業者(2024年8月31日時点)である。
- 2022年11月、FTX Japan(暗号資産交換業者・第一種金融商品取引業者)の親会社であるFTX Trading Limitedが破綻したことを受けて、財務局は金融商品取引法に基づきFTX Japan社に対して国内資産保有命令を発出した。その結果、同社の資産の国外流出を防止できた。
- 一方、資金決済法においては、国内資産保有命令は措置されていない。全事業者のうち、半数以上は暗号資産の現物取引のみを行っており、そうした金融商品取引業登録を受けていない事業者が破綻した場合、国内資産保有命令を発出できず、当該業者の破綻時等に暗号資産の国外流出を防止できないおそれがある。
- ステーブルコインの規模は2020年以降に急速に拡大し、現在、暗号資産を含む市場規模全体の少なくとも約8%以上を占めている。
- 特定信託受益権型のステーブルコイン(信託会社等により発行される、電子決済手段の一類型)は、発行見合い金の全額について、同じ通貨建ての要求払いの預貯金での管理が求められている。
- 海外では、ステーブルコインの裏付け資産について、一定の条件を課した上で預金以外の資産での運用を認めている例もある。
- 立替サービスは、利用者から依頼を受けて、事業者が資金を立て替えた上で、後から利用者に対して立替金を請求するサービスだが、貸金業法や資金決済法で通常想定される取引ではないため、貸付けや為替取引の該当性は個別のサービスの枠組みに照らして判断する必要がある。
- 外貨建てのシンジケートローンの組成は、日本企業による外貨調達ニーズに応える選択肢の1つであるが、貸付けに係る法規制によりシンジケートローンに参加可能な金融機関等に制約がある。
- 海外進出をしている日本企業から日本国内の金融機関に対して、現地の地場銀行にシンジケートローンに参加してもらえるか相談があった場合に、当該地場銀行が日本国内に支店・営業所等を設置していないという法制上の理由により、断らざるを得なかった事例も存在する。
- ご議論いただきたい事項
- 送金分野
- 資金移動業
- 破綻時の利用者資金の還付手続きには最低約170日の期間を要する。資金移動ニーズが多様化する中で、より迅速に利用者資金の還付を行うため、供託手続のみならず、銀行や信託会社から直接利用者に対して資金返還を行う方法を認めることについてどう考えるか。
- クロスボーダー収納代行
- クロスボーダーの収納代行の形式をとった新たなサービスについて、資金移動業登録を受けることなく提供しているケースがある。このようなサービスに信用リスク、支払遅延リスク、マネーローンダリング等防止の観点から為替取引に関する規制を適用することについてどう考えるか。
- 資金移動業
- 暗号資産等分野
- 暗号資産
- 暗号資産の現物取引のみを扱う業者が破綻した場合、国内資産保有命令を発出することができない。暗号資産の現物取引の割合が増加する中、グローバルに活動する暗号資産交換業者が破綻した場合等に、国内の利用者財産の返還を担保するための規制のあり方についてどう考えるか。
- ステーブルコイン
- 海外では、ステーブルコインの裏付け資産について、一定の条件を課した上で預金以外の資産での運用を認めている例もあるところ、現在預貯金で管理されている特定信託受益権の発行見合い金の管理・運用方法についてどう考えるか。
- 暗号資産
- その他
- 立替サービス
- 立替サービスは貸付けや送金と類似の効果があることを踏まえ、立替サービスと貸金業者による与信や資金移動業者による送金との関係をどのように考えるか。
- 外国銀行等のシンジケートローン参加
- 外貨建てのシンジケートローンの組成は、日本企業による外貨調達ニーズに応える選択肢の1つであり、借入人にも資すると考えられるところ、国内銀行等が組成する外貨建てシンジケートローンに外国の金融機関等が参加するに当たって日本国内に支店・営業所等を設置することが求められている現行の規制についてどう考えるか。
- 立替サービス
- 送金分野
- この他、今後議論の対象となりうる論点(検討中)
- 第一種資金移動業の滞留規制のあり方
- 前払式支払手段の寄附への利用
- 暗号資産に係る事業実態を踏まえた規制のあり方
- 銀行によるステーブルコインの発行
- ステーブルコイン(特定信託受益権型)におけるトラベルルールの適用 等
金融庁 金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第1回)議事次第
▼ 資料3 事務局説明資料
- 2014年保険業法改正時の主な改正事項
- 保険募集の形態の多様化が進展している状況等を踏まえ、保険募集に係る規制をその実態に即したものとするため、保険募集人の体制整備義務を創設する等の措置を講じたもの。
- 保険募集の基本的なルールの創設
- 虚偽の説明等、「不適切な行為の禁止」に限定されていた従来の募集規制に加え、顧客ニーズの把握に始まり保険契約の締結に至る募集プロセスの各段階におけるきめ細かな対応の実現に向け、「積極的な顧客対応」を求める募集規制を導入。
- 「意向把握義務」の導入(法第294条の2)⇒保険募集の際に、顧客ニーズの把握及び当該ニーズに合った保険プランの提案等を求める。
- 「情報提供義務」の導入(法第294条)⇒保険募集の際に、商品情報など、顧客が保険加入の適否を判断するのに必要な情報の提供を求める。
- 保険募集人に対する規制の整備
- 独立系の保険代理店の増加等を踏まえ、「保険会社」が監督責任を負う従来の募集人規制に加え、「保険募集人」に対し募集の実態に応じた体制整備を義務付ける規制を導入。
- 保険募集人に対する体制整備義務の導入(法第294条の3)⇒複数保険会社の商品の取扱いの有無など、保険募集人の業務の特性や規模に応じて、保険募集人に対して体制整備を求める。
- 大規模な保険募集人に対する帳簿書類等に関する規定の整備(法第303条、304条)⇒募集形態の実態把握が困難な、規模の大きい保険募集人に対して、当局による監督強化の一環として、帳簿書類の作成・保存及び事業報告書の提出を義務付ける。
- 保険仲立人に係る規制緩和等
- 顧客保護に配慮しつつ、「保険仲立人」の新規参入や既存業者の活性化を促進できるよう、参入障壁を緩和。
- 長期の保険契約の媒介に係る認可制の廃止(法附則第119条)⇒保険仲立人が「保険期間5年以上」の長期保険契約の媒介業務を行う場合に別途求められる当局の「認可」を不要とする。
- 保険仲立人の立場の明確化(法第299条)⇒保険仲立人が「顧客からの委託を受けて」保険契約の媒介を行う者であることを明確化する。※その他の参入要件緩和として、保証金の最低金額を引下げ[政令事項、4,000万円→2,000万円]
- ご議論いただきたい事項
- 有識者会議の報告書を踏まえ、さらなる検討が必要と考えられる以下の論点について、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現する観点から、どのような課題があり、どのような制度上の対応が必要と考えられるか。
- 保険会社による適切な管理・指導が十分に機能しづらい大規模な保険代理店において、募集品質の向上が図られるために、どのような対応が考えられるか。
- 保険仲立人制度は1995年の保険業法改正時より導入されたが、いまだ十分に活用されていない。保険仲立人の活用を促進するためには、どのような対応が考えられるか。
- 近年、損害保険会社において企業向け火災保険の赤字が継続している状況について、どのような課題があると考えられるか。
- 損害保険市場における公正な競争環境を実現する観点から、損害保険会社による便宜供与や企業内代理店の目指すべき姿等について、どのように考えるか。
- 上記の他、保険市場に対する信頼の回復と健全な発展を図る観点から、本WGで検討すべき論点はあるか。あるとすれば、どのような対応が考えられるか
- 有識者会議の報告書を踏まえ、さらなる検討が必要と考えられる以下の論点について、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現する観点から、どのような課題があり、どのような制度上の対応が必要と考えられるか。
金融庁 量子コンピュータの登場に伴う機会とリスクに備えた計画に関するG7サイバー・エキスパート・グループによるステートメントの公表について
▼ 「量子コンピュータの登場に伴う機会とリスクに備えた計画に関するG7サイバー・エキスパート・グループによるステートメント」の仮訳
- サイバー・エキスパート・グループ(CEG)は、G7の財務大臣及び中央銀行総裁に、金融システムの安全性と強靭性にとって重要なサイバーセキュリティに関する政策事項を助言している。G7 CEGは、量子コンピューティングには、金融システムに対する潜在的な便益とリスクの両面があると考えている。CEGは、メンバー法域に対し、量子コンピュータの開発状況をモニターすること、官民の関係者間の協力を促進すること、そして、量子コンピューティングが既存の暗号化手法に対してもたらしうる潜在的なリスクへの対処について検討を開始することを推奨する。
- 量子コンピューティングと金融システム
- 量子コンピュータは、既存のコンピュータでは現実的な時間で解くことができないような問題を解くことができることを期待して開発が進められている。金融機関は、市場取引や投資業務(リスク管理を含む)、内部管理、予測戦略の最適化において、量子技術による計算速度の向上という便益を享受し得る。また、量子コンピュータは、より効率的な決済や、保有ポートフォリオの動的最適化にも活用できるかもしれない。量子鍵配送のような技術は、組織のデジタル通信システムのサイバーリスクに対する安全性強化にも有益であろう1。金融機関は、こうした新しい量子コンピュータの利用にあたっては、その利用に伴う潜在的なリスクに対して事前に対策を講じておく必要がある。量子コンピュータの導入が進むことは、悪意ある主体が当該技術を不正に利用して金融システムにおけるシステミックリスクや組織内のリスクを顕現化させる可能性もある。
- 公開鍵暗号に対するリスク
- 現在、デジタル通信やITシステムは、暗号化することで安全性を確保している。複雑なアルゴリズムを用いることで、通信の秘匿性や安全性を確保し、当人の通信であることを保証している。しかし、脅威主体は将来、量子コンピュータの固有の特性を使用して、既存の暗号技術を支えている数学的問題を解決し、セキュリティで保護された通信で使用している暗号化技術を無効にし、顧客情報を含む金融機関データに接し得る可能性がある。脅威主体は、大規模な量子コンピューティングが普及することを想定して、量子コンピュータの能力が向上し、広く利用できるようになった時点で復号化することを目的として、機密データを傍受するという、「HNDL攻撃2」スキームを検討している可能性もある3。また、この攻撃スキームは、デジタル通信、ITシステム、及びデータを保護する従来の暗号アルゴリズムに脅威を与え、将来的に脅威主体に機密データへのアクセスを提供する可能性がある。その結果、組織の評判及び顧客のプライバシーの完全性を損なう可能性がある。
- 耐量子暗号の標準化
- 耐量子暗号(Post-Quantum Cryptography<PQC>)は、暗号アルゴリズムにおいて量子コンピュータがもたらしうるリスクに対して耐性を有し、かつ、既存の通信プロトコルやネットワークと相互運用性がある暗号システムを開発することに焦点をあてた研究分野である4。PQCは、国家・国際的なレベルで官・民にわたっていくつか取り組みが進行中であり、とりわけ、セキュリティ及び相互運用性を図る観点から標準化が進められている。例えば、米国立標準技術研究所(NIST)は、量子コンピュータ及び既存のコンピュータの性能が向上することに伴って生じるリスクから既存のシステムを保護するためのPQC公開鍵アルゴリズムの開発研究に取り組んできた5。NISTは2017年に耐量子暗号アルゴリズムを定めるために公開コンペを行い、これにより新たな暗号化標準の基礎が形成されることが期待されていた。第1弾が2024年8月に公表された6。また、欧州ネットワーク情報セキュリティ庁(ENISA)は、PQCの標準化プロセスに関する諸法域での研究成果を公表し、NIST及び国際標準化機構(ISO)等の組織での作業を中心に、標準化後の課題やプロトコルの推奨事項に関する報告書を発表した。
- 更なる国際協調によって、G7法域間の規制上のギャップや齟齬が生じるリスクを削減できる。世界経済フォーラムは、英国の金融行動監視機構(FCA)と協働で、量子セキュリティを調査しており、複数の金融当局の参加を得てグローバルな規制アプローチに係る報告書を公表した。
- 提言
- 汎用性のある量子コンピュータ(又はハイブリッドコンピュータ)は今後10年以内に現実のものとなる可能性が高まっている。ただ、少なくとも初期段階の量子コンピュータ(又はハイブリッドコンピュータ)が既存の暗号技術を完全に凌駕するだけの能力を備えたものとなるかどうかは不確実である。
- しかしながら、金融セクターにおける官民の主体(「金融主体」)が、量子コンピュータが現実のものとなることを見越してリスク耐性を高める取り組みを進めるには、相応の時間と投資が必要である。対応には長いリードタイムが求められる可能性を踏まえ、官民の各主体は、そうした脅威に対処するための準備をなるべく早く開始することを推奨する。
- 金融主体に対しては、この新たに生じるリスクに対処するために、以下の措置を推奨する。
- 量子コンピューティング、それに伴うリスク、及びそのリスクを軽減するための戦略について理解の向上を図ること。金融主体は、量子コンピューティングのリスク、特に暗号解読のリスク、と潜在的な技術的解決策をより理解するために、ベンダーやサードパーティ、その他対象分野の専門家と検討することが考えられる。金融主体が重点的に取り組む論点としては、量子技術発展の時間軸、脅威動向の変化、並びに量子技術に耐性のある現状及び新興の技術や手法等が考えられる。金融主体は、時が経つに応じてこうした分野の動向変化を追いかけることを検討すべきである。
- 各主体の責任が及ぶ範囲における量子コンピューティングのリスクを評価すること。金融主体は、企業であれ法域であれ、それぞれの責任の及ぶ範囲について、量子コンピューティングのリスクを深く理解するべきである。その目的は、金融主体が、この問題に対して注力すべき労力のレベルと、注力すべき分野を特定することにある。準備が整っている
- 金融主体は、リスクを軽減するための領域を特定し、優先順位を付けるために、自組織内及び依存している主要なサードパーティ内で使用している重要データと現在の暗号化技術について、一覧表の作成を開始すべきである。またその準備が整っていない他の金融主体は、詳細な分析を行う前に、各金融主体における情報技術の責任者や主要なサービス提供者と議論することから作業を開始することも考えられる。量子技術がより成熟する前に重要データの保護に関するリスク許容度を議論しておくことも考えられる。
- 量子技術リスクを軽減するための計画を策定すること。金融主体は、ガバナンス構造を確立し、主要な利害関係者とその役割及び責任を特定し、暗号技術に関連する量子コンピュータの導入計画に基づく主な対応のマイルストーンの策定を検討すべきである。これには、上記2で述べた金融主体及びそのサードパーティで用いている暗号技術の一覧表作成が含まれ得る。また、脆弱な暗号技術から耐量子暗号技術への整然とした移行計画も含まれ得る。カナダ政府は、金融主体が量子コンピュータの脅威に備えるのに役立つ、量子準備ガイドを策定した。
- G7 CEGは、金融当局が、各法域内の企業や関連組織と緊密に連携し、耐量子技術へ移行することの重要性について啓蒙することを推奨する。G7 CEGは、G7の法域及び基準設定主体間の相乗効果を活用しつつ、関与すべき優先順位の高い事項から金融システムにおける官民全ての利害関係者との対話の促進を図るために、引き続きこの量子コンピュータのトピックにコミットする。
金融庁 「金融機関の内部監査の高度化に向けたモニタリングレポート(2024)」の公表について
▼ 金融機関の内部監査の高度化に向けたモニタリングレポート(2024)
- 金融機関を取り巻く環境は常に変化しており、昨今は世界的な金融経済情勢の変化に加え、国内では金利上昇局面にあるなど、大きな転換期を迎えている。金融機関においては、こうした環境の下、自身が直面しているリスクを適時に把握した上で、フォワードルッキングな観点でリスク分析し、適切にリスクをコントロールしながらビジネスを推進する態勢を構築することが急務となっている。そのような態勢の構築には内部監査機能の発揮が欠かせず、金融機関の内部統制やリスク管理態勢及び業務運営に対する客観的な保証(アシュアランス)を与え、必要に応じて改善提案を行うなど、内部監査の重要性とその高度化の必要性がますます高まっていることは改めて論じるまでもないであろう。
- また、金融庁は、検査・モニタリングにおいて、金融機関のリスク管理態勢の脆弱性を見極めるとともにその顕在化を防止し、適正な内部管理態勢の構築を促すことを目的としており、この点で、内部監査の目的と軌を一にしている。このため、金融庁としては、金融機関の内部監査部門との協働を一層進めていきたいと考えている。
- 金融庁は、このような観点から、「中間報告2023」公表以降も、そこで示した「内部監査の高度化のための3つの論点」(以下、「3つの論点」という。)を中心に、大手銀行グループ、地域金融機関、大手証券会社及び大手保険会社に対するモニタリングを進めてきたほか、外部有識者(コンサルティング会社及び監査法人)とも意見交換を行ってきた。その中では、内部監査の水準【図表1】の各段階別評価の具体的な事例や第四段階(信頼されるアドバイザー)に関するイメージを提示してほしいといった要望が多く寄せられた。
- 全体評価(進捗状況)
- 金融庁は、「中間報告2023」にて示した3つの論点に基づいてモニタリングを進めてきた。その結果、各金融機関は、総じて、その規模・特性に応じ、継続して内部監査の高度化に取り組んでいることが確認できた。その一方で、内部監査の高度化に向けた取組が進んでいる先進的な金融機関(以下「先進的な金融機関」という。)と取組が発展途上にある金融機関(以下「発展途上にある金融機関」という。)とでは、その進捗状況に顕著な差異も見られ、内部監査の高度化に向けた取組は、規模の大小よりも経営陣の意識の差が大きく影響していることが確認できた。
- もとより、このような差異は、人材を含めたリソースの確保をはじめとする金融機関の経営全般にわたる問題で、内部監査部門だけでは解消が難しく、「経営陣や監査委員・監査役の理解と支援姿勢(論点1)」が大きく影響する。この点、先進的な金融機関では、内部監査部門との緊密なコミュニケーションを通じて、経営陣や監査委員・監査役1(以下、両者を指して「経営陣等」という場合がある。)における内部監査の重要性・有用性に対する認識が浸透・拡大しているのに対し、発展途上にある金融機関では、経営陣等と内部監査部門とのコミュニケーションが不足し、内部監査の目的や役割が共有できておらず、特に経営陣等の認識が低い場合には十分な支援が実現しにくい状況が確認できた。
- 「内部監査部門の監査態勢高度化・監査基盤強化(論点2)」に関しては、大手のみならず小規模な金融機関においても積極的な取組が見られた。他方、先進的な金融機関と発展途上にある金融機関との進捗状況の差異としては、先進的な金融機関では、監査プロセスを高度化させるために行うリスク・アセスメントやリスク変化を適時に把握して機動的に対応するオフサイト・モニタリングの仕組みをより精緻にしようとしている一方で、発展途上にある金融機関では、そもそもそうした仕組みを整備していない先も見られた。さらに、ITソリューションやコソーシングの活用においても取組姿勢に違いが見られた。
- こうした中、国際的に業務を展開する大手銀行グループでは、第三段階の水準にあるとの自己評価の下、「現状と課題」で「第四段階を実現するための主な取組」として示した「ITの活用、データ分析」、「企業文化(カルチャー)に対する監査手法」等2の導入に向けた取組を進め、更に高度化を目指していることが確認できた。この点、地域金融機関の中にも高度化の取組を進めている事例が見られた。
- 「被監査部門に対する内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップ醸成(論点3)」に関しても同様に、規模の大小にかかわらず積極的な取組が見られた一方で、被監査部門における内部監査への理解の浸透などの進捗状況に差異が見られた。
- 金融庁では、引き続き、経営陣等及び内部監査部門による一層の創意工夫を促していく。
- 3つの論点にかかる金融機関の取組状況
- 経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援
- 経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援に関して、以下のような好事例や課題事例のほか、【図表3】にあるような取組や課題が見られており、経営陣等による内部監査の重要性・有用性に対する認識が浸透・拡大している金融機関があることが確認できた。
- 【好事例】
- 内部監査の重要性・有用性に関して、内部監査の役割・期待を記した経営トップのメッセージの発信や、監査指摘を踏まえた改善対応への経営陣自らの積極的な関与など、内部監査の全社的な浸透を図っている(主要行等)
- 内部監査部門が将来のビジネスモデルや経営陣等のニーズや期待等を踏まえて「あるべき内部監査」や「ビジョン」を設定し、その十分性や高度化施策について社長・副社長及び監査等委員との複数回の協議を行っている
- ⇒その結果、高度化施策の対応に必要な予算が配賦された(地域金融機関)
- 監査結果は、取締役会のほか、頭取はじめ常勤役員、本部部長、営業エリア長が参加して毎月開催される監査報告会でも報告しており、その場で議論のうえ、頭取等から関係部署へ改善指示が出されている
- ⇒その結果、組織内に監査結果を重視しながら経営が進められている認識が浸透した(地域金融機関)
- 監査委員会への直接のレポーティングラインに変更した
- ⇒その結果、社外監査委員とのコミュニケーションの頻度が増え、内部監査への理解が深まり、監査委員から支援の発言が増加した(証券・保険)
- 【課題事例】
- 発展途上にある金融機関の特徴として、経営陣等と内部監査部門との間で、経営戦略や業務運営に関するリスク認識や課題、その対処方針などに関して十分なコミュニケーションが図れておらず、内部監査の機能発揮を通じて自金融機関の達成すべき目的が共有できていない
- ⇒営業拠点5に対する事務不備監査だけでなく本部に対するリスクベース監査を実施する態勢をどのように充実させていくか、第2線、第3線の役割・責任の明確化など、内部監査の高度化に向けた議論が十分に踏み込んだものになっていない
- 【好事例】
- 経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援に関して、以下のような好事例や課題事例のほか、【図表3】にあるような取組や課題が見られており、経営陣等による内部監査の重要性・有用性に対する認識が浸透・拡大している金融機関があることが確認できた。
- 内部監査部門における高度化に向けた取組
- 内部監査部門における高度化に向けた取組として、監査目線や監査手法の高度化等の監査態勢に関する取組と監査人材の確保・育成等の監査基盤に関する取組がある。
- 大手のみならず小規模な金融機関においても、各項目について積極的な取組が見られており、総じて、自金融機関の規模・特性に応じて、高度化に向け継続的に取り組んでいることが確認できた。以下に、好事例と課題事例を示す。
- ただし、先進的な金融機関と発展途上にある金融機関で顕著な差異が見られており、経営陣等の理解と支援姿勢で大きく変わることが確認できた。この点、人材を含めたリソースの確保は経営全般にわたる問題であり、内部監査部門だけでは解消が難しい状況が窺える。
- 【好事例】
- 経営陣や監査委員・監査役との意見・情報交換に関し、
- 内部監査部門が、半期毎に経営陣等とディスカッションを実施する機会を持ち、毎回テーマを定めて内部監査の高度化について議論を実施した
- ⇒その結果、経営陣等の内部監査への理解が進み、支援が得られるようになった(地域金融機関)
- 内部監査部門が、営業推進部門の掲げる高い目標数値の運営実態について営業拠点監査を行い、本部の業務運営に関し「事務ミス、顧客トラブルの存在、職員の疲弊」などの弊害が存在していることを監査指摘として取締役会に報告した
- ⇒その結果、取締役会において、目標数値の引き下げが実施された(地域金融機関)
- オフサイト・モニタリングに関し、モニタリング対象部署との協議を繰り返し実施した
- ⇒その結果、業務や業務に内在するリスク・コントロール状況の理解が深まり、個別監査での検証ポイントが明確化された(証券・保険)
- リスク・アセスメントに関し、
- リスク認識の網羅性や適時性の維持・向上のため評価項目を多様化・細分化し、経営陣等と目線を合わせて評価するだけでなく、評価根拠の文書化や評価ガイドラインの整備など、評価の客観性の確保に取り組んでいる(主要行等)
- 金融持株グループ一体での監査実施のため、構成銀行共通のリスク評価書を用い、毎月、各子銀行のオフサイト・モニタリングの結果を持ち寄って評価の見直しを行い、監査の目線や優先度、監査計画の見直しに活用している(地域金融機関)
- 真因分析に関し、
- 四半期毎の定期報告にて各監査の課題に通底する真因を整理して報告している
- ⇒その結果、課題に対する経営陣等の理解が浸透した(主要行等)
- 複数の個別監査で発見した問題点に共通する内部統制上の課題と統制が機能しなかった理由等を分析し、3線管理の考え方に則した各担当部門における問題点や経営陣の姿勢に関わる問題点を掘り下げるなどしている(証券・保険)
- 監査の品質評価に関し、若手監査員のスキルアップを目的として監査実施と同時並行でのレビューを実施するほか、グループ共通の課題を把握するために特定プロセスの横断的評価を行ったり、中期経営計画と外部評価のサイクルの同期化、外部評価をグループ・グローバル統一的に実施するなど、内部評価・外部評価ともに高度化に取り組んでいる(主要行等、証券・保険)
- 【課題事例】
- 発展途上にある金融機関の一部では、内部監査の水準の引き上げのため、監査態勢及び監査基盤の強化が望まれるものの、経営陣は、組織規模を理由に、人員増強などの監査基盤強化の取組を進めていない
- ⇒内部監査部門の人員が十分でなく、営業拠点に対する事務不備監査のほかに着手することが難しい状況にあるほか、新たに内部監査部門に配属された人材も即戦力として投入しOJTによる育成によらざざるを得ない状況を招いている
- なお、先進的な金融機関では、さらに内部監査の水準を上げるための取組を進めていることが確認できた。その特徴的な取組は以下及び【図表5】に記載のとおり。
- 【監査態勢】
- 機動的な監査手法に関し、アジャイル型監査を導入していたが、被監査部門との頻繁なミーティング等で負担が想定以上に大きいことから従来型の監査手法に復帰させた一方で、監査期間中に被監査部門との約2週間毎のミーティングを行い、検証内容の共有や早期の対応検討につなげるために監査の進捗・発見事項をタイムリーに共有した
- ⇒その結果、被監査部門とコミュニケーションを取ることで認識共有が図りやすく、従来よりも効率的かつ被監査部門の納得感を得られる監査が実施可能となった(証券・保険)
- ITの活用・データ分析に関し、
- 文字起こしツールやRPA、ChatGPTを活用し、監査に伴う作業負担の軽減につなげている(全業態)
- データ分析を用いた客観的な事実に基づく分析結果を被監査部門に提示することで納得感のある提言につなげているほか、サンプル検証から全量データの検証に移行することで保証(アシュアランス)精度の向上につなげている(主要行等、証券・保険)
- AIを活用して膨大なデータの中からスコアレベルを付与し、監査員が高スコアを重点的に検証することで、内部管理態勢上の不備を発見し、態勢強化につなげている(証券・保険)
- 個別監査でのデータ分析活用の目標値を設定するとともに、光学式文字認識(OCR)やNLP(自然言語プログラミング)を活用し、これまで抽出確認にとどまっていた契約書の確認を全件(数千件)確認に変更している
- ⇒その結果、データ分析の活用件数が増加するとともに、データ分析により、設定した基準と数千件の顧客情報を比較分析し、基準を満たしていないものを特定し、その特定された例外から、重要度のある課題提起を行った(証券・保険)
- 企業文化(カルチャー)に対する監査手法に関し、企業文化(カルチャー)がリスク・コントロールに与える影響を評価するためにテーマ監査にて、高リスク商品の販売時に顧客本位の業務運営に反する行動が懸念される場面における営業拠点管理者の行動パターンを検証する質問を作成し、ヒアリングを実施した
- ⇒当該ヒアリング結果から、あるべき行動に反する行動パターンの存在やその背景にある原因を特定した(主要行等)
- 長期にわたる大規模プロジェクトに対して、進行中に生じる環境変化に対応した監査が実施できるように態勢整備に取り組んでいる(全業態)
- 「アジャイル型監査」は、機動的な監査の実現のための手法の1つであって唯一の方法というわけではなく、各金融機関において、その規模・特性に応じた創意工夫が期待される。
- 【監査基盤】
- 内部監査部門を将来の経営層を担う人材の重要なキャリアパスの1つに位置づけている金融機関が見られたほか、被監査部門からトレーニー制度により一時的に監査業務に従事させるなど、将来の監査員の育成に取り組んでいる(全業態)
- トレーニー制度のある金融機関の一部は、トレーニー参加者の事後フォローを行うなど、将来の監査員の育成のために継続的なコミュニケーションを図っている(主要行等)
- 専門性が高い分野の監査や組織内の納得感のために、積極的にコソーシングを活用している(全業態)
- 【好事例】
- 被監査部門に対する内部監査への理解・浸透やリスクオーナーシップの醸成
- 被監査部門に対する取組状況を見ると、先進的な金融機関も、発展途上にある金融機関も、自身の状況に応じて、(1)被監査部門に対する内部監査への理解・浸透や(2)被監査部門のリスクオーナーシップの醸成に、引き続き取り組んでいることが確認できた。
- なお、被監査部門との関係構築においては、これまでの内部監査部門の社内の位置づけや地位等を踏まえると、短期間に内部監査部門と被監査部門の双方の理解が急進するものではなく、例えば、企業文化(カルチャー)に関する監査においても、その結果を被監査部門との間で認識を共有化させるには難しさがあることが窺える。しかしながら、この取組を止めることなく、内部監査部門は、経営陣等の支援を求めつつ、被監査部門へのリスクオーナーシップ醸成の取組を継続すべきである。この取組が最終的には自金融機関の内部統制を強化し、企業価値の向上につながるということを再認識すべきである。
- 以下に、好事例と課題事例及びその他の特徴的な取組【図表6】を示す。
- 【好事例】
- 被監査部門に対する内部監査への理解・浸透
- 内部監査の目的・意義や役割等を社内報で発信した(主要行等、地域金融機関)
- 社内版SNSを通じて、内部監査部門の活動を紹介した(主要行等)
- 営業拠点長のリスクオーナーシップの醸成等
- 営業拠点監査のリスク・アセスメント結果を「自店でリスクをコントロールできる項目」「自店でリスクをコントロールできない項目」に分けて、定期的に営業拠点に還元し、自律的改善対応の動機付けに活用した(地域金融機関)
- 営業拠点長と定期的に対話し、営業拠点長が適切なリスク認識の下で営業推進・管理を行っているかを評価するとともに、必要に応じ助言した(証券・保険)
- 被監査部門とのコミュニケーション等
- 監査手法を示達型から対話型に移行するほか、監査成績を業績評価項目から除外するなど、被監査部門との良好なコミュニケーション手法の導入や、コミュニケーションの機会を増やした
- ⇒その結果、被監査部門の心理的安全性が確保され、率直なコミュニケーションが実現したほか、被監査部門から内部管理態勢に関する助言をしてほしいとの要請を受けるまでに発展した(地域金融機関)
- 【課題事例】
- 被監査部門へのリスクオーナーシップ醸成の施策が十分機能していないため、第1線を担う部署の一部において、内部監査部門等から発信するリスク認識やリスク・コントロール等に関する情報が正しく理解できていない
- ⇒一部の被監査部門において誤った認識のまま営業推進したために、コンプライアンス上問題のある営業行為が複数発生している
- 第1線を担う部署の一部は営業推進の職責を果たすことを優先している
- ⇒この結果、リスク認識が甘くなり、手続の履行を形式的に行うなど形骸化していたことから、顧客本位の業務運営の観点から不適切な営業推進を招いている
- 「現状をより良くするため」に行う推進施策等の監査では、達成すべき目標や達成のためのプロセス、時間軸など答えが1つでない事項も多く、効果的な改善提案が難しい
- ⇒被監査部門の納得感につながらない
- 【好事例】
- 経営陣や監査委員・監査役による内部監査部門への支援
- 金融庁と内部監査部門とのコミュニケーションの重要性
- 金融庁では、より効率的に深度あるモニタリングを実践するため、金融機関の内部監査部門との良好なコミュニケーションが重要と認識している。
- 金融庁は、検査・モニタリングにおいて、特定した金融機関のリスク管理態勢の脆弱性とそれらの軽減策・改善策について、内部監査部門との間で深度ある対話を進めている。同時に、内部監査部門が発見したリスク管理態勢の脆弱性に経営陣が適時・適切に対応しているかを確認している。金融庁のモニタリングと金融機関の内部監査は、リスク管理態勢の脆弱性を発見し、その顕在化を防止する点で軌を一にしているといえよう。
- 金融庁モニタリング部門の経営資源は限られており、内部監査部門からの情報提供を受けつつ、その検証結果等を積極的に活用することにより、モニタリングにおける検証項目や検証範囲を主要論点に絞るなど、金融行政の効率化にもつながるものと認識している。
- このため、金融庁としては、金融機関の内部監査部門との協働を一層進めていきたいと考えている。
- なお、金融庁は、大手銀行グループに対するモニタリングにおいて、次のような取組を行っている。
- 半期に1回程度、金融機関の内部監査部門が取りまとめた監査報告書の提出を求めるなどし、内部監査の状況を共有のうえ意見交換を実施。これを通じ、金融機関自身のリスク認識を確認しつつ、金融庁のリスク認識を伝えることにより、内部監査部門におけるリスク・アセスメントに寄与
- 金融庁に寄せられた個別の苦情等の情報を金融機関の内部監査部門に提供し、事実関係の調査とその結果の共有を依頼するなどし、金融機関の内部監査部門における問題認識の醸成と、金融機関の自浄作用・自律的改善対応の発揮を促進
- 海外拠点やシステム等の統合プロジェクトに関する監査結果について報告を求め、金融庁においても重要プロジェクトの進捗状況を確認することを通じて、金融機関自身のプロジェクト管理の強化と、必要な改善対応を促進
- グループ会社で発生した問題事象について、事実関係の調査とそれを踏まえた改善対応を行っている中、金融庁が、グループ会社を管理する持株会社のグループ内部監査部門から情報提供を受けることにより、グループ会社又は他のグループ会社の取組状況の確認が容易になるほか、それを踏まえ各社と対話することにより、効率的・効果的なモニタリングが実現
- 金融庁の問題意識
- これまでのモニタリング結果を踏まえると、先進的な金融機関は、第二段階から第三段階、第三段階から第四段階に向けた態勢整備を着実に進めてきていることが確認できた。引き続き、経営環境の変化への対応や多様化・複雑化する自身のビジネスモデル・経営課題に応えるため、2025年1月より適用される予定の内部監査人協会(The Institute of Internal Auditors:IIA)「グローバル内部監査基準」等も参考に、人材確保・配置を含め内部監査機能の高度化を図ることが望まれる7。
- また、こうした金融機関の中には、第1線、第2線、第3線の役割・責任を明確化する動きも見られており、中長期的な観点からビジネスの持続可能性を考え、内部監査高度化に取り組んでいる事例も見られた。
- 他方、発展途上にある金融機関については、経営陣等による内部監査に対する理解・支援への意識度合い(積極的か消極的か)により、同じ業態内でも取組の進捗度に大きな差が生じていることが確認できた。各金融機関は、それぞれ経営課題が異なっている部分があり、その対応の中で、限られた経営資源をどのように配分するかなど難しい判断が必要となることが窺える。
- しかしながら、実効的な内部監査は、財務の健全性と業務の適切性を確保する上で不可欠なコーポレート・ガバナンスに必須の要素であり、経営陣等や金融庁を含むステークホルダーに対して極めて重要な保証を提供するものである。経営陣等は、内部監査の重要性・有用性をより強く認識した上で、「中間報告2023」や本文書にて紹介した取組事例も参考にしつつ、自金融機関の規模・特性に応じどのような内部監査を目指すのかを議論し、高度化に向け不断に取り組むべきである。その際、以下に示す金融庁の期待水準も参考にしながら内部監査部門はじめ関係する部門が取組を進めやすいよう主導してほしい。そして、それがひいては中長期的なビジネスの持続性につながることを再認識してほしい。
- 金融庁の期待水準
- 上記の問題意識やモニタリング結果を踏まえて、「中間報告2023」で示した論点等に関し、次のとおり、金融庁の期待水準を示したい。
- ガバナンス、リスク管理を維持・高度化するための内部監査の役割
- 金融機関は、これまで内部監査機能を含む適切な内部管理態勢を構築・整備する努力を続けてきた。しかしながら、金融機関の経営に重大な影響をもたらし、また、その信頼を大きく損なうような不祥事等は後を絶たない。これら不祥事の多くは、その原因として、経営陣の姿勢、ビジネスモデル・経営戦略、企業文化等に関わる問題が関係していることが窺える。
- 上記を踏まえると、ガバナンス強化は重要な課題であり、その解決には内部監査の役割・機能発揮が大きく貢献すると考えられる。経営陣等は、内部監査の高度化が、組織全体としてガバナンスとリスク管理を維持・高度化させる手段であることを再認識すべきである。
- 特徴的な取組事例として、例えば、「3ラインモデル」8の概念が、金融機関の強固なガバナンスと最適なリスク管理態勢の構築に有益として、取組を進めている事例が見られた。
- オフサイト・モニタリング
- 加速する環境変化に伴い発生するリスクを適時に把握し、リスクの高まりが認められた場合は、リスク・アセスメントの見直し要否や機動的な監査の必要性、個別監査での検証ポイントの検討のほか、懸念点がある場合には速やかな改善を促すため、適時に所管部門に提言することが必要となる。そのためには、内部監査部門が、フォワードルッキングな観点でリスクの変動を即時に把握すること(動的リスク評価)が重要である。
- 特徴的な取組として、例えば、オフサイト・モニタリングにて顕在化したリスクの把握だけではなく、それを基に、今後想定されるリスクやその影響を検討している事例が見られた。
- リスク・アセスメント
- 金融機関を取り巻く環境が変化する中で、監査の対象領域も拡大されることから、リスク・アセスメントの網羅性を確保することが重要である。また、限られた監査資源を有効かつ効果的に活用するには、残余リスクの高い領域に監査資源を集中させるなど、効率的な監査資源の配分が必要となる。そのためには、組織全体(グループ全体)の業務運営に対するリスク・アセスメントの精度を高めることが重要である。なお、第2線部門がリスク管理に用いるリスクカテゴリーやリスク評価が有効であるならば、その結果を、内部監査部門のリスク・アセスメントとしても活用できる。
- 特徴的な取組として、例えば、リスク・アセスメントで用いる監査単位は、企業活動に応じて変更があり得るため、その変更を適時に捉えて監査単位の網羅性を確保するための仕組みを設ける事例が見られた。また、ITやデータ分析の活用により、リスク・アセスメントに必要なデータ収集と分析を実施し、効率化を図っている事例が見られた。
- 真因分析
- 個別監査における発見事項・指摘は、その重要性に応じ真因分析が実施される。真因分析は、組織運営上の課題やリスクの所在を明らかにする重要な手法であり、内部監査の水準にかかわらず、経営に求められる監査への前提と考えるべきである。
- 特徴的な取組として、例えば、一定期間の個別監査の結果を集約し、それらを俯瞰した上で、分析し改善(管理態勢の向上)につなげている事例が見られた。また、ITを活用した大量のデータ分析を通じてリスクの所在と大きさを客観的に評価し、高リスク項目について重点的に監査して、経営上重要な課題の提起につなげたといった事例が見られた。
- なお、個々の発見事項の真因は特定できているが、組織全体の共通課題に関する真因を特定し、経営に提言するまでには至っていないことを課題と考えている金融機関が見られた。
- グループ・グローバルな監査態勢の在り方
- 大手銀行グループや大手証券会社、大手保険会社では、グローバル化が一段と進展している。同時に、大手銀行グループは、銀行のほか、証券会社、リース会社、カード会社等の非銀行業務を行う会社を傘下に持つ金融グループとなっている。大手銀行グループ以外の証券会社や保険会社においても同様に、他の業態を傘下に持つ金融グループとなっている先が多い。
- このほか、地域銀行においても、持株会社体制へ移行し、傘下に証券会社や銀行業高度化等会社など、非銀行業務を行う会社を持つ動きが見られる。
- こうした状況を踏まえると、金融機関が、グループ・グローバルな観点で、実効性ある内部監査を実施することで、様々な組織活動の有効性等について評価することが重要である。
- 金融グループ内においては、様々な形態の金融会社、非金融会社が存在しており、グループの規模・特性も踏まえながら、監査手法や監査支援システム導入など効率性のみならず、品質管理の観点からも共通化・高度化を進めていくことが重要である。
- 特徴的な取組として、例えば、各金融機関において、グループ・グローバルな観点で監査態勢を構築し運用する事例が見られた。グループ内に内部監査部門が存在しない、存在しても少人数の会社がある場合、持株会社等が当該会社のために内部監査業務を実施するなど、必要な支援を提供している事例が見られた。また、海外拠点を有する金融機関においては、国・地域によって異なる内部監査に関する法令・制度や海外当局の方針等に対応する必要があるところ、これらの対応によって確立された先進的な取組を参考に、グループ・グローバルな観点での監査態勢の底上げを検討している事例が見られた。
- コソーシングの活用
- 内部監査の実施に当たって、コソーシング等により外部専門機関の活用が見られている。金融機関を取り巻く環境変化が著しい昨今、フィンテック業者と連携したデジタル分野での新しい金融サービスの提供といった金融機関のビジネス領域の拡大のほか、サステナビリティ等の社会的課題を踏まえた金融機関としての対応の高度化・複雑化に伴って、自社内のリソースだけで監査を担うのが難しい分野が現れており、これを適時・適切に検証していくためには、外部知見の活用が欠かせなくなっていることが窺える。金融庁は、外部専門機関の活用は、監査の効率性・実効性を向上させる上で、有用な手段の1つと考えている。ただし、外部専門機関は金融機関の内部監査部門の責任の下で活用されるべきで、その結果を内部監査部門が負うのは当然である。
- このため、コソーシングの監査品質は、内部監査部門が理解した上で、評価・管理する必要がある。外部専門機関による成果物について、内部監査部門自身の責任の下で管理し、その成果物等から、内部監査部門内に、スキル・専門知識を蓄積し活用することも重要である。
- おわりに
- 金融庁は、「中間報告2023」の公表以降も、大手銀行グループ、地域金融機関、大手証券会社及び大手保険会社などに対するモニタリングを継続し、今般、その結果を「3つの論点」に基づき整理した。
- 各金融機関においては、総じて、内部監査の高度化に向けた取組を進めている状況が確認できた。一方で、足元の水準がいまだ低位にとどまっている金融機関があること、現状の水準から一歩先へ進もうとする推進力には差異が見られることが確認できた。とりわけ地域金融機関においては「現状と課題」公表時の水準からあまり進展が見られない金融機関もあれば、第三段階に達していると自己評価する金融機関もあるなど、その乖離は広がっていることが窺える。
- この乖離の広がりは、一義的には、各金融機関の内部監査部門自らの取組の在り方によるものの、その取組には自ずと限界があり、経営陣等の取組姿勢が大きく影響を与えていると考える。特に経営資源の配分などでは経営陣が主体的に取り組まなければ成果は出ず、経営陣の考え方や取組姿勢についての意識改革が必要不可欠である。
- 金融庁は、今後も、「中間報告2023」で示した「3つの論点」に基づき、金融機関に対する深度あるモニタリングを進めるとともに、モニタリングを通じて内部監査の高度化を促していく方針である。
- その際、本文書や「中間報告2023」等で示した論点や着眼項目を、形式的なチェックリストとして用いることはないことを改めて強調する。
- また、金融機関に対するモニタリングに当たっては、引き続き、金融機関の内部監査部門との良好なコミュニケーションに努め、内部監査の水準に応じてモニタリングの対象領域や深度を決定するとともに、金融機関に内在する課題とその対応状況を適切に把握・分析し、金融機関のリスク管理態勢の構築・高度化に向けた取組を促していく方針である。金融機関の内部監査部門においては、金融庁とは、金融機関のリスク管理態勢の脆弱性の発見と改善に向けた協働関係にあるとの認識の下、積極的に対話等に応じてほしい。
- 併せて、金融庁では、金融機関に対して内部監査の一層の高度化を促す観点から、モニタリング結果や国際的な動向も踏まえて、引き続き「現状と課題」の更新(段階別評価の見直し要否を含む)の必要性等を検討していく方針である。
金融庁 2024事務年度金融行政方針について
▼ 金融行政方針(概要)
- 国内外の経済社会の構造上の変化や金融経済情勢等の不確実性の高まりを展望しつつ、金融行政の施策・手法を不断に見直し、改革を迅速に進めていく
- 金融のメカニズムを通じて持続的な経済成長に貢献する
- 持続的な経済成長に向け、インベストメント・チェーン全体の活性化に取り組むとともに、気候変動問題やデジタル技術がもたらす変革への対応を進める。
- 資産運用立国の実現に向け、以下の取組等を進める。
- 長期・積立・分散投資の重要性等を踏まえ、金融経済教育推進機構等と連携した新NISAの適切な活用促進・金融経済教育の充実
- コーポレートガバナンス改革の推進
- 市場の信頼性確保の一層の推進
- 資産運用会社の機能強化、参入促進に係る取組の着実な実施
- アセットオーナーを支える金融機関の資産運用ビジネスのモニタリング
- スタートアップへの成長資金の供給の促進
- 「Japan Weeks」の開催を含めた国内外へ積極的な情報発信
- サステナブルファイナンスを推進するため、企業のサステナビリティ開示の充実と信頼性確保、金融機関による脱炭素に向けた企業支援等の推進、インパクト投資の実践・拡大等を図る。
- デジタル技術を用いた金融サービスの変革へ対応するため、送金・決済・与信サービス等の規制のあり方について検討を行うほか、金融機関における健全かつ効果的なAIの利活用のためのディスカッション・ペーパーの策定、フィンテック企業等の参入促進に取り組む
- 資産運用立国の実現に向け、以下の取組等を進める。
- 持続的な経済成長に向け、インベストメント・チェーン全体の活性化に取り組むとともに、気候変動問題やデジタル技術がもたらす変革への対応を進める。
- 金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能を確保する
- 深度ある検査・監督等を通じて、金融機関の適切な業務運営及び健全性を確保し、個人の生活と事業者の成長を支える質の高い金融機能の発揮を図る。
- 金融経済情勢等の動向を注視し、金融機関のガバナンスやリスク管理態勢等に関するモニタリングを行うほか、金融機関による業態や国境を越えたビジネス展開の広がりに対応するため、グループ経営に対する監督態勢を強化する。
- 事業者の持続的な成長を支援するため、金融機関によるM&A支援の促進、企業価値担保権の活用に向けた環境整備等を進める。
- 金融機関による顧客ニーズに的確に応える質の高い金融機能の提供とビジネスモデルの持続可能性の確保に向けて対話を行う。
- 金融商品の組成・販売・管理等について、金融機関へ法令遵守態勢の徹底を求めるとともに、顧客本位の業務運営の確保に向けた態勢整備を促す。
- 保険市場の信頼の回復と健全な発展に向けて、大規模な保険代理店への監督の実効性向上等の対応を進めるとともに、保険代理店や保険仲立人に関する規制のあり方などを見直す。
- 金融犯罪やマネロン、経済安全保障への対応、サイバーセキュリティやITガバナンスの強化など、台頭するリスクへの適切な対応を促す。また、国際的な動向やトランジションファイナンスの重要性等を踏まえつつ、金融機関の気候関連金融リスク管理の対応状況について確認する。
- 深度ある検査・監督等を通じて、金融機関の適切な業務運営及び健全性を確保し、個人の生活と事業者の成長を支える質の高い金融機能の発揮を図る。
- 金融行政を絶えず進化・深化させる
- データ活用の高度化や国内外に対する政策発信力の強化、若手職員をはじめとする職員の能力・資質の向上等を通じて、金融行を絶えず進化・深化させる。
- 金融行政の高度化のため、データ活用の高度化や財務局とのさらなる連携・協働の推進、国内外に対する政策発信力の強化に取り組む。
- 金融庁の組織力向上のため、若手職員育成を含む職員の能力・資質の向上や主体性・自主性を重視し誰もが働きやすく良い仕事ができる環境の整備に取り組む
- データ活用の高度化や国内外に対する政策発信力の強化、若手職員をはじめとする職員の能力・資質の向上等を通じて、金融行を絶えず進化・深化させる。
金融庁 資産運用立国について
▼ 資産運用立国実現プラン(概要)
- 資産運用立国について
- 新しい資本主義の下、我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費に繋がる、成長と分配の好循環を実現していくことが重要。
- これまで、(1)資産所得倍増プランや(2)コーポレートガバナンス改革等を通じ、家計の安定的な資産形成の支援、企業の持続的成長、金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営の確保など、インベストメントチェーンを構成する各主体に対する働きかけを行ってきた。引き続き、こうした取組を推進。
- これらの取組に続き、インベストメントチェーンの残されたピースとして、(3)家計金融資産等の運用を担う資産運用業とアセットオーナーシップの改革を図っていく。
- 残されたピースをはめ、我が国経済の成長と国民の資産所得の増加に繋げていく。
- 資産運用立国実現プラン(資産運用業・アセットオーナーシップ改革の分野)
- 資産運用業の改革(資産運用力向上やガバナンス改善・体制強化、国内外からの新規参入と競争の促進)
- 大手金融グループにおいて、資産運用ビジネスの経営戦略上の位置づけのほか、専門性の向上、運用人材の育成・確保等の観点から、運用力向上やガバナンス改善・体制強化のためのプランを策定・公表
- 資産運用会社のプロダクトガバナンスに関する原則の策定
- 金融商品の組成に際しての想定顧客の明確化、期待リターンがコスト・リスクと見合っているかの検証等の商品の品質管理
- 日本独自のビジネス慣行や参入障壁の是正
- 投資信託の基準価額に関する一者計算の普及に向けた環境整備など
- 金融・資産運用特区の創設
- 金融庁と意欲ある自治体が協働して、関係省庁と連携しつつ、特定の地域において金融・資産運用サービスを集積し、高度化と競争力強化を促進。当該地域が金融・資産運用の対象として一体的に推進する重点分野を支援。2024年夏目途に特区のパッケージを策定・公表。
- 新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)の策定・実施 ※ EMP:Emerging Managers Program
- 金融機関に、新興運用業者の積極的な活用や、単に業歴が短いことのみによって排除しないことを要請。金融機関等の取組事例を把握・公表。
- アセットオーナー・プリンシプル(後述)において、受益者の最善の利益を勘案しつつ誠実かつ公正に業務を遂行する観点から、運用委託先の選定における新興運用業者の取扱いについて盛り込む。
- 官民連携の下で、金融機関・アセットオーナーに新興運用業者を一覧化したリスト(エントリーリスト)を提供
- 新興運用業者がミドル・バックオフィス業務を外部委託すること等により、運用に専念できるよう規制緩和を実施
- アセットオーナーシップの改革
- アセットオーナー・プリンシプルの策定(2024年夏目途)
- アセットオーナーの範囲は、公的年金、共済組合、企業年金、保険会社、大学ファンドなど幅広いが、共通して求められる役割として、運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則を策定。
- 企業年金の改革
- 確定給付企業年金(DB)について、加入者の最善の利益を達成するため、運用委託先の定期的な評価、必要に応じて運用力次第で委託先を変えるなどの見直しを促進
- 小規模DBが企業年金連合会の共同運用事業を活用できるよう、選択肢拡大を含め、事業の発展等に向けた取組を促進
- 企業型確定拠出年金(DC)において、労使合意に基づき指定運用方法の投資性商品への変更や運用商品の商品構成の改善など運用方法の適切な選択がなされるよう、指定運用方法や運用商品の構成等に係る情報の見える化、継続投資教育、取組事例の横展開等の取組を促進
- 企業年金(DB・DC)について、厚生労働省が情報を集約・公表することも含めて、運用状況等を含む情報の他社と比較できる見える化を行う
- アセットオーナー・プリンシプルの策定(2024年夏目途)
- 成長資金の供給と運用対象の多様化
- スタートアップ企業等への成長資金の供給の促進(ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルの策定、投資型クラウドファンディングに係る規制緩和、非上場有価証券の流通を促進するための規制緩和)
- オルタナティブ投資やサステナブル投資などを含めた運用対象の多様化(投資信託への非上場株式の組入れを可能とする、資産運用会社や有識者等の多様な関係者による対話の場である、「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」を2023年内に開催)
- スチュワードシップ活動の実質化
- 東証による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を踏まえた企業による計画策定・開示・実行の取組について、東証と連携しフォローアップ。
- 機関投資家と企業との対話の促進等のための大量保有報告制度等の見直しを含む実質的なエンゲージメントの取組の促進。
- 対外情報発信・コミュニケーションの強化
- 世界の投資家等と対話を行い、ニーズを把握し、これに沿った形で資産運用業の改革を進めていくため、内外の資産運用会社を中心に、関係事業者や投資家等と連携しつつ、資産運用フォーラムを立ち上げ。そのための準備委員会を2023年内に設立。
- 自治体や関係事業者、投資家等との対話の機会を通じ、資産運用立国に関する施策について意見交換を行い、必要に応じて、施策の深掘りや更なる施策の実施について検討。
- 資産運用業の改革(資産運用力向上やガバナンス改善・体制強化、国内外からの新規参入と競争の促進)
金融庁 「コールド・コーリング」(「詐欺的な投資勧誘」)-投資家への注意喚起-
- 最近、「コールド・コーリング(Cold Calling)」と呼ばれる詐欺的な証券投資勧誘行為が、世界中で行われています。コールド・コーリングとは、投資家に対し、証券会社や投資運用会社などを装い、電話あるいはファックス・Eメールといった直接対面しない方法を使って、証券投資を勧誘する行為のことです。典型的なケースは、投資家に対し、ある証券の購入を電話によって言葉巧みに説得・勧誘し、当該証券の購入代金を振り込ませ、その後に連絡が取れなくなるというものです。この結果、その投資家は、送金したにも関わらず、当該購入証券を手にすることもできず、支払った金を取り戻すこともできなくなるといった被害を受けることになります。コールド・コーリングの手口は多様化・巧妙化しており(例えば、最初数回の取引はきちんと行い、利益を投資家にもたらした後、大口の取引を持ちかけ、大金を送金させた後、連絡を絶つなど)、一層の注意と警戒が投資家に必要となっています。
- 日本を含め世界のほとんどの国では、証券取引の勧誘行為等を行う場合、その国の金融監督当局から登録や許認可を得る必要がありますが、コールド・コーリング業者はそのような登録・許認可を有していません。また、コールド・コーリングの特徴の一つに、その所在をつかむことがきわめて困難であるということがあります。多くのコールド・コーリング業者は通常、ホームページを持っており、そのホームページ上(あるいは顧客に送った書類の中)には連絡先としてオフィスの住所の記載がある場合が多いのですが、コールド・コーリング業者の場合、その住所に実際に存在し、活動していることは、まずありません。すなわち、コールド・コーリング業者は、意図的に自らの所在を隠し、当局や勧誘した投資家等から接触を受けないようにしているものと考えられます。そして、コールド・コーリング業者の場合、勧誘を行った投資家の居住する国とは別の国にその所在地があると称するパターンが典型的です。例えば、欧米の投資家に接触したコールド・コーリング業者(その国の当局への登録や許可等はない)が、そのオフィスは日本(例えば東京の〇〇ビル)にあるとしているようなケースが実際に数多くあります。このようにすることで、コールド・コーリング業者は、投資家などからの直接訪問を受けないようにしているものと考えられます。
- 上記のようなコールド・コーリング業者で、日本にその所在地があると称している業者に関する情報が、海外当局や海外の被害にあった投資家等から金融庁に寄せられています。金融庁は、こうした情報提供のあった業者のうち、金融商品取引法令に基づく金融庁の登録業者・許認可業者でない者の一覧を下記に掲載しています。下記の業者は、コールド・コーリング業者の疑いがありますので、投資家の皆様におかれては、これらの業者との取引についてはこれを行わないなど、十分な注意と警戒が必要です。
- また、上述のような特徴を持つコールド・コーリングに対しては、各国の当局の協力が必要であるという認識から、世界各国の証券当局が参加しているIOSCO(証券監督者国際機構)では、平成14年2月、コールド・コーリングについて投資家に注意喚起する声明を発表しています。こうした取り組みの一環として、金融庁はこのページにあるような投資家への警告を発しているところですが、同様に、世界各国の証券監督当局のホームページにも、コールド・コーリング業者の疑いのある会社等の一覧が掲載されており、投資家の注意を呼びかけております。投資家の皆様におかれては、電話等により投資勧誘などを受けた場合には、実際の投資契約を行う前に、そちらも併せて参照され、コールド・コーリング業者の疑いのある業者としていずれかの金融監督当局のリストに掲載されていないかどうか、十分に確認することがきわめて大事であり、強く勧めるところです。
- なお、下記に列記している業者は、金融庁に寄せられた情報を基にしており、世界中に存在しているコールド・コーリング業者のすべてではなく、このリストに掲載されていないコールド・コーリング業者が存在する可能性はあります。したがって、投資家の皆様におかれては、下記の一覧のみならず、金融庁ホームページにおける「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」などを通じて、その業者が日本で証券会社や投資顧問業者としての登録などを受けているかどうかを確認し、受けていないのであれば、例えばその業者と取引しないといった判断をするなど、十分な注意が必要です。
- 金融商品取引法令に基づく金融庁の登録・許認可を受けていない業者
- 以下に、金融庁に情報が寄せられた業者のうち、金融庁の登録・許認可を受けていない業者のリストを掲載します。これらの業者が証券投資勧誘を行っている場合には、コールド・コーリングの疑いがありますので、十分に注意してください。なお、掲載されたコールド・コーリング業者の実体が存在しない可能性や、ここに掲載されていないコールド・コーリング業者の容疑がある業者も存在しうるところであり、今後、新たな業者がこのリストに追加される可能性があります。
- なお、当該リストに記載されている住所には、当該業者とは別の会社等が存在している場合がありますが、当該会社等との関係があることを示しているものでありません。また、記載された住所が存在しない可能性もあります。
▼ 金融商品取引法令に基づく金融庁の登録・許認可を受けていない業者(令和6年7月31日時点)
- 存在しない日本政府機関
- 以下に、金融庁に情報が寄せられたもののうち、日本に存在しない政府機関のリストを掲載します。これらの機関から登録・許認可を受けている等と主張する業者の場合には、コールド・コーリングの疑いがありますので、十分に注意して下さい。
▼ 存在しない日本政府機関(令和6年7月31日時点)
- 掲載後5年を経過した業者等は一覧から削除しております。過去の掲載データは、国立国会図書館のウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧下さい。
- IOSCO(証券監督者国際機構)による投資家への注意喚起
- IOSCO(証券監督者国際機構)は、平成14年2月に、コールド・コーリングに関する「投資家への注意喚起」を発出した。その概要は次のとおりである。
- 一般に、ある者が証券業を行うためには、投資家が居住する国の証券当局による何らかの形の承認・認可が必要である。コールド・コーリングを行う組織は、こうした認可等を得ていない可能性があり、違法な行為により投資家の金を失わせる可能性がある。
- したがって、投資家は、コールド・コーリング(電話勧誘)のみに基づいて投資するべきではなく、少なくとも、代金支払いの前に、その業者が、投資家が居住する国及びその業者が業務を行っていると主張する国で、証券会社や投資顧問業者の免許・認可・登録を行っているかどうかを確認するべきである。また、投資家は、その業者が破格の利益を約束したり、保証したりする場合には、大いに疑いを持つべきである。
- また、IOSCOのアジア・太平洋地域のメンバー(金融庁を含む。)のメンバーで構成される委員会(APRC)は、平成14年2月にプレスリリースを発出した。その中で、同地域のメンバーは、違法な証券取引を摘発するために、協力・相互支援及び情報共有を強化するとともに、一般投資家が詐欺的な行為の被害にあうことを防ぐため、各国が、無免許・無登録の業者の名称を公表することとした旨、表明している。
- IOSCO(証券監督者国際機構)は、平成14年2月に、コールド・コーリングに関する「投資家への注意喚起」を発出した。その概要は次のとおりである。
金融庁 「アセットオーナー・プリンシプル」の策定について
- 政府は、令和5年12月13日に、資産運用立国の実現に向けた政策プランを策定しました。
- 当該プランにおいて、アセットオーナーシップ改革の一つとして、アセットオーナーがそれぞれの運用目的・目標を達成し、受益者等に適切な運用の成果をもたらす等の責任を果たす観点から、「アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則(アセットオーナー・プリンシプル)を2024年夏目途に策定する」とされました。
- 令和6年3月から6月にかけて、「新しい資本主義実現会議 資産運用立国分科会」の下、「アセットオーナー・プリンシプルに関する作業部会」にて議論が行われ、パブリックコメントを経て、今般「アセットオーナー・プリンシプル」が以下のとおり確定されました。
▼ アセットオーナー・プリンシプル(内閣官房)
- 背景及び目的
- 「成長と分配の好循環」を実現していくには、家計の資金が成長投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながる、という資金の好循環を生み出していくことが重要である。
- このため、家計、金融商品の販売会社(銀行や証券会社等)、企業、資産運用業、アセットオーナーなど、インベストメントチェーンを構成する各主体が、資金の流れの創出に向けて機能を発揮することが重要である。
- そこで、政府では、「資産所得倍増プラン」(2022年11月策定)やコーポレートガバナンス改革、「資産運用立国実現プラン」(2023年12月策定)等を通じ、各主体への働きかけを進めている。その一環として、アセットオーナーに関しては、「資産運用立国実現プラン」において、「アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則(アセットオーナー・プリンシプル)を2024年夏目途に策定する」こととされた。
- アセットオーナーは、インベストメントチェーンの中で、直接的又は間接的に、金融資本市場を通じて企業・経済の成長の果実を受益者等にもたらす重要な役割を担っている。すなわち、アセットオーナーは、受益者等の最善の利益を追求する観点から、運用する目的や財政状況等に基づいた目標を定め、その目的・目標を達成するために投資先企業や委託先金融機関を厳しい眼で見極めることで、受益者等に利益をもたらすとともに、その行動が結果として、投資先企業の中長期的な成長・企業価値向上や委託先金融機関の健全な競争による運用力向上にもつながっていくことなどが期待される。
- そこで、アセットオーナーが受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていく上で有用と考えられる共通の原則を定めることとする。
- アセットオーナー・プリンシプルの策定の検討に当たり、2024年3月、「新しい資本主義実現会議 資産運用立国分科会」の下に、「アセットオーナー・プリンシプルに関する作業部会」が設置され、同年3月から計4回にわたり議論が行われた。その議論等を踏まえ、2024年8月28日、内閣官房において、「アセットオーナー・プリンシプル」を策定する。
- 「成長と分配の好循環」を実現していくには、家計の資金が成長投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながる、という資金の好循環を生み出していくことが重要である。
- 本プリンシプルの位置づけ・原則主義(「プリンシプルベース・アプローチ」)
- アセットオーナーの範囲は、公的年金、共済組合、企業年金、保険会社、大学ファンドのほか、例えば資産運用を行う学校法人など幅広く、その規模や運用資金の性格等は様々である。しかしながら、いずれのアセットオーナーにおいても、受益者等の最善の利益を追求するための備えがあることを自ら点検し、それぞれのステークホルダーあるいは対外的に示すことで理解や対話、協働につなげ、運用力の向上を図っていくという形で、このプリンシプルを活用していくことが期待される。
- ただし、アセットオーナーの範囲は幅広く、課題もそれぞれである点を踏まえ、本プリンシプルは、アセットオーナーが取るべき行動について詳細に規定する細則主義(いわゆる「ルールベース・アプローチ」)ではなく、アセットオーナーがそれぞれの置かれた状況に応じて受益者等に適切な運用の成果をもたらすことができるよう、アセットオーナー共通の原則を定め、それに対して受入れを求める、原則主義(いわゆる「プリンシプルベース・アプローチ」)を採用している。
- また、本プリンシプルは、法令とは異なり、法的拘束力を有さず、一律に対応を求めるものではない。各アセットオーナーは、本プリンシプルについてその趣旨を確認し、十分に検討した上で、その趣旨に賛同し、本プリンシプルを受け入れるかどうか判断することが期待される。
- 「コンプライ・オア・エクスプレイン」
- 本プリンシプルを受け入れる場合でも、全ての原則を一律に実施しなければならないわけではなく、本プリンシプルでは、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用している。
- 本プリンシプルを受け入れるアセットオーナーにおいては、本プリンシプルの各原則を実施(コンプライ)するか、原則の中に、自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明(エクスプレイン)することにより、一部の原則を実施しないことも想定している。
- アセットオーナーは、「実施しない理由」の説明(エクスプレイン)に当たっては、実施しない原則に係る自らの対応についてステークホルダーの理解が十分に得られるよう、留意しなければならない。
- なお、実施(コンプライ)する原則についても、その遵守状況について、ステークホルダーにとって分かりやすい説明をすることが求められる。
- 本プリンシプルを受け入れるアセットオーナーには、本プリンシプルの内容を実現するに当たり、自らの置かれた状況に応じた判断・工夫のもとに活動し、必要に応じてその活動を見直していくことを期待する。
- 本プリンシプルを受け入れる場合でも、全ての原則を一律に実施しなければならないわけではなく、本プリンシプルでは、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用している。
- その他
- 本プリンシプルの受入状況を可視化するため、本プリンシプルを受け入れるアセットオーナーには、自らを所管する関係省庁へ受入れの旨を表明することを期待する。政府においては、本プリンシプルの受入状況を一覧性のある形で整理・公表する。
- また、アセットオーナーの規模や運用資金の性格を踏まえつつ、本プリンシプルを受け入れるアセットオーナーには、例えば、自身のウェブサイトなど一般に見える形で、以下を公表することを期待する。
- 本プリンシプルを受け入れる旨
- 実施(コンプライ)する各原則の実施状況
- 実施しない原則がある場合にはその原則を実施しない理由(エクスプレイン)
- また、アセットオーナーの規模や運用資金の性格を踏まえつつ、本プリンシプルを受け入れるアセットオーナーには、例えば、自身のウェブサイトなど一般に見える形で、以下を公表することを期待する。
- 内閣官房及び関係省庁は、本プリンシプルについて、今後、社会情勢等を踏まえ、必要に応じて見直しを検討するなど、適切なフォローアップを行うこととする。
- 本プリンシプルの受入状況を可視化するため、本プリンシプルを受け入れるアセットオーナーには、自らを所管する関係省庁へ受入れの旨を表明することを期待する。政府においては、本プリンシプルの受入状況を一覧性のある形で整理・公表する。
- 本プリンシプルの原則
- アセットオーナーが受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていくために、
- 原則1. アセットオーナーは、受益者等の最善の利益を勘案し、何のために運用を行うのかという運用目的を定め、適切な手続に基づく意思決定の下、経済・金融環境等を踏まえつつ、運用目的に合った運用目標及び運用方針を定めるべきである。また、これらは状況変化に応じて適切に見直すべきである。
- 補充原則
- 1-1. アセットオーナーは、運用により利益を享受させるべき受益者等が誰か、何のために運用するのかといった運用目的について明確にし、必要に応じて見直すべきである。
- 1-2. アセットオーナーは、運用目的を達成するために、運用資金の性格、自らの能力・規模、長期的な経済・金融環境等を踏まえ、具体的に目指すリターンや許容できるリスク等といった運用目標を定めるべきである。また、運用目標を達成するために、経済・金融環境等を踏まえ、具体的な資産構成割合(基本ポートフォリオ)、リスクに関する考え方や運用対象資産の範囲等の運用方針を定めるべきである。
- 1-3. アセットオーナーは、運用目標・運用方針を定めるに当たっては、適切な手続に基づき、十分な専門的知見に基づき意思決定を行うことができる組織体制の下で行うべきである。
- 1-4. アセットオーナーは、定められた運用目的・運用目標を踏まえ、自らやステークホルダー等の状況や経済・金融環境等の変化に応じた運用方針となっているかを定期的に検証し、必要に応じて適切に見直すべきである。
- 補充原則
- 原則2. 受益者等の最善の利益を追求する上では、アセットオーナーにおいて専門的知見に基づいて行動することが求められる。そこで、アセットオーナーは、原則1の運用目標・運用方針に照らして必要な人材確保などの体制整備を行い、その体制を適切に機能させるとともに、知見の補充・充実のために必要な場合には、外部知見の活用や外部委託を検討すべきである。
- 補充原則
- 2-1. アセットオーナーは、運用目標の達成に向けて、資産運用及びリスク管理を継続的かつ適切に運営できるよう、自らに必要な知見を把握するとともに、その知見が確保され、監督と執行それぞれが機能するガバナンス体制を構築すべきである。
- その際、アセットオーナーの規模や運用資金の性格に照らして、必要があれば、金融市場やアセットオーナーにおいて資産運用の経験を有する運用担当責任者を設置し、運用担当責任者の権限を明確化するとともに、必要な監督を行うことも考えられる。
- また、運用担当者について、特定の人材に依存すると、離職時の継続性の支障や運用委託先等との不適切な関係の発生といった懸念も生じることから、適切な資質を持った人材の計画的な確保に留意すべきである。
- 2-2. アセットオーナーは、適切な運用を行うに当たって、知見の補充・充実のために必要な場合には、外部人材の登用、又は、金融機関・外部コンサルティング会社・OCIO・業界団体その他の外部組織の活用等を検討すべきである。
- その際、報酬を検討するに当たっては、外部人材や外部組織がもたらす付加価値に応じたものとすべきである。
- 補充原則
- 原則3. アセットオーナーは、運用目標の実現のため、運用方針に基づき、自己又は第三者ではなく受益者等の利益の観点から運用方法の選択を適切に行うほか、投資先の分散をはじめとするリスク管理を適切に行うべきである。特に、運用を金融機関等に委託する場合は、利益相反を適切に管理しつつ最適な運用委託先を選定するとともに、定期的な見直しを行うべきである。
- 補充原則
- 3-1. アセットオーナーは、受益者等の最善の利益を勘案しつつ誠実かつ公正に業務を遂行するため、運用目的・運用目標の達成に資することができるか、運用方針に適合しているか等の観点から、委託先の選定を含め幅広く運用方法を比較検討すべきである。
- 3-2. アセットオーナーは、運用目的に照らして、運用対象資産の分散、投資時期の分散や流動性等を考慮して、運用方法を選択し、運用資産の分別管理のほか、適切なリスク管理を実施すべきである。
- その際、アセットオーナーの規模や運用資金の性格に照らして、必要があれば、VaR等の定量的なリスク指標も踏まえながら、ストレステスト等も活用して経済・金融環境の変化に備えることも考えられる。
- 3-3. アセットオーナーは、運用委託先の選定に当たっては、運用目的・運用目標の達成に資する観点から判断すべきである。
- その際、1つの金融機関等のみに運用を委託することは、効率性の観点から必ずしも否定されるものではないが、従来から委託している金融機関等であることや、選択している運用方法であるという理由のみで同じ金融機関等を選定し続けるべきでない。また、自らや資金拠出者等と、運用委託先及びそのグループ金融機関との取引関係がある場合、運用目的・運用目標に反していないか、適切に利益相反管理を行うべきである。
- また、運用委託先への報酬を検討するに当たっては、運用委託先がもたらす付加価値に応じたものとすべきである。
- 3-4. アセットオーナーは、運用委託先の選定に当たっては、過去の運用実績等だけでなく、投資対象の選定の考え方やリスク管理の手法等も含めて総合的に評価すべきである。
- その際、知名度や規模のみによる判断をせず、運用責任者の能力や経験(従前の運用会社での経験等を含む)を踏まえ、検討を行うことが望ましい。例えば、新興運用業者を単に業歴が短いことのみをもって排除しないようにすることが重要である。
- 3-5. アセットオーナーは、受益者等にとってより良い運用を目指すため、運用委託先・運用方法を定期的に評価し、自らの運用目的・運用目標・運用方針に照らして、必要に応じて見直すべきである。
- 補充原則
- 原則4. アセットオーナーは、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、運用状況についての情報提供(「見える化」)を行い、ステークホルダーとの対話に役立てるべきである。
- 補充原則
- 4-1. アセットオーナーは、その運用目的を踏まえ、自らの特性に応じて、情報提供すべきステークホルダーを検討した上で、運用目的に照らして適切な運用が実施されているかどうか等、説明責任を果たす上で必要な情報を適切な方法で提供すべきである。
- その際、情報提供に伴う負担を考慮しつつ、ステークホルダーの理解に資する、分かりやすい内容となる工夫に努めるべきである。
- 4-2. アセットオーナーは、自らと他アセットオーナーの比較がステークホルダーにとって運用目的を達成する判断材料となり得る場合においては、比較できる形での情報提供も検討すべきである。その際、運用実績等の数値のみで単純比較されることは望ましくなく、運用方針等を踏まえ、総合的に比較できるよう工夫することが望ましい。
- 補充原則
- 原則5. アセットオーナーは、受益者等のために運用目標の実現を図るに当たり、自ら又は運用委託先の行動を通じてスチュワードシップ活動を実施するなど、投資先企業の持続的成長に資するよう必要な工夫をすべきである。
- 補充原則
- 5-1. アセットオーナーは、長期的に運用目標を実現させるため、自ら又は運用委託先による、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、投資先企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すべきである(スチュワードシップ責任)。
- スチュワードシップ責任を果たすに当たっては、自らの規模や能力等を踏まえつつ、日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明をした上でその趣旨に則った対応を行うことを検討すべきである。その際、複数のアセットオーナーが協働して運用委託先のスチュワードシップ活動に対するモニタリング(協働モニタリング)を行うことも選択肢として考えられる。
- 5-2. アセットオーナーにおいては、ステークホルダーの考えや自らの運用目的に照らして必要な場合には、投資先企業の持続的成長に資するサステナビリティ投資を行うこと、例えば、金融機関等への委託に当たってサステナビリティに配慮した運用を行うことを求めることや、サステナビリティ投資方針を策定すること、PRI(責任投資原則)に署名することも考えられる。
- 補充原則
- 原則1. アセットオーナーは、受益者等の最善の利益を勘案し、何のために運用を行うのかという運用目的を定め、適切な手続に基づく意思決定の下、経済・金融環境等を踏まえつつ、運用目的に合った運用目標及び運用方針を定めるべきである。また、これらは状況変化に応じて適切に見直すべきである。
- アセットオーナーが受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていくために、
【財務省】
【2024年9月】
財務省関東財務局 株式会社DMM Bitcoinに対する行政処分について
- 業務改善命令(法第63条の16)
- 本流出事案についての具体的な事実関係及び根本原因の分析・究明
- 令和6年5月31日付及び令和6年7月2日付で法第63条の15第1項の規定に基づき発出した報告徴求命令に従い当社から提出された報告では、未だ本流出事案についての具体的な事実関係が明らかになっていないため、本流出事案についての具体的な事実関係及び発生した根本原因を分析・究明すること。
- 顧客への対応
- 被害が発生した顧客の保護を引き続き、徹底すること。
- また、本事案に関して、顧客に対し十分な説明・開示等を行うとともに、顧客からの苦情に適切に対応すること。
- 適正かつ確実な業務運営の確保
- 暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行のため、以下に掲げる事項について業務の運営に必要な措置を講じること。
- システムリスク管理態勢の強化
- 不適切なシステムリスク管理態勢が常態化しているなどの根本的な原因を分析・評価の上、十分な改善が可能となるようシステムリスク管理態勢を見直し、強化すること。
- 暗号資産の流出リスクへの対応が適切に行われるための態勢の整備
- 暗号資産の移転等に係る流出リスクの低減に関して、実効性のある低減措置を講じることを含め、流出リスクへの対応が適切に行われるための態勢を構築すること。
- 経営責任の明確化及び経営管理態勢等の強化
- 今回の事案に至った経営責任の明確化を図ること。また、代表取締役及び取締役(以下、「代表取締役等」という。)は、暗号資産交換業の業務運営に対応したリスク等を議論し、その対応を着実に実施すること。さらに、取締役会の機能強化を図り、法令等遵守や適正かつ確実な業務運営を行うために必要な実効性のある経営管理態勢、内部管理態勢及び内部監査態勢を構築すること。
- システムリスク管理態勢の強化
- 暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行のため、以下に掲げる事項について業務の運営に必要な措置を講じること。
- 令和6年9月26日現在停止している取引の再開及び新規口座開設を行うにあたっては、上記2及び3に基づく対応の実施とともに、上記1に記載の原因究明を踏まえた必要な態勢を整備の上、実効性を確保すること。
- 上記1.から4.(上記3.及び4.については、業務改善計画(具体策及び実施時期を明記したもの))について、令和6年10月28日(月曜)までに報告すること。
- 上記3.及び4.に関する業務改善計画については、実施完了までの間、1か月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに報告すること(初回報告基準日を令和6年11月末日とする。)。
- 本流出事案についての具体的な事実関係及び根本原因の分析・究明
- 処分の理由
- 当社において、令和6年5月31日に当社が管理していた暗号資産(BTC)が不正に外部に送信され、顧客からの預かり資産(4,502.9BTC)が流出するという事案が発生した。
- これを踏まえ、当社に対し法第63条の15第1項に基づく報告を徴求、関東財務局において立入検査に着手し、当社の業務運営状況を確認したところ、以下のとおり、当社のシステムリスク管理態勢等及び暗号資産の流出リスクへの対応について、重大な問題が認められた。
- システムリスク管理態勢等
- 当社は、業務開始以降、システム担当役員が不在であることによる暗号資産交換業に及ぼすシステムリスクを検討することなく、システムを統括管理する役員を配置していないほか、システムリスクの管理やシステム開発・運用管理、情報セキュリティ管理の権限を一部の者に集中させ、システムリスク管理部門として自らのモニタリングを行わせており、システムリスク管理態勢の牽制機能が発揮されていない。
- また、当社においては、監査スキルを保有する人材を配置していない中、被監査部署に監査を実施させるなど、内部監査の独立性が保たれていない。
- さらに、当社は、外部ウォレットの導入に際し、暗号資産を移転する際の流出リスクについて議論を行っていないほか、外部ウォレットのセキュリティ管理状況の評価について、外部ウォレット利用に係る評価内容の妥当性を確認していないことに加え、外部ウォレットに問題が発生した場合の対応方法を理解することなく、ウォレットの利用を開始している。
- こうした中、以下2.に掲げる態勢の不備が認められるなど、暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない。
- 暗号資産の流出リスクへの対応
- 当社は、暗号資産移転に係る秘密鍵の取扱いについて、署名作業を単独で実施しており牽制が図られていないほか、秘密鍵を一括で管理するなど、「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係16.暗号資産交換業者関係」に反する取扱いであることを認識していたにもかかわらず、当該取扱いを継続していた。
- また、当社は、預かり暗号資産の規模が増大している中、流出等のリスクを分散する必要性を認識しているにもかかわらず、複数のウォレットを設置し、分散管理するなどリスクに応じた対応について検討を行っていない。
- さらに、当社は、暗号資産の流出時の証拠保全に係るログを保存する期間等を検討していないなど、今回の不正流出事案の被疑事項の調査及び原因分析を迅速に行うために必要な証拠保全を適切に行っていない。
- 以上のとおり、当社においては、不正行為等による暗号資産の流出を防止するための適切な措置を講じていないことなどから、内部不正や盗難に対する安全性が確保されておらず、暗号資産の移転等に関し、杜撰な管理実態が認められ、さらに、内部監査は、こうした管理実態を容認するなど機能しておらず、暗号資産の流出リスクへの対応が適切に行われるための態勢を構築していない。
- システムリスク管理態勢等
- そもそも、暗号資産の流出リスクへの対応は、経営上の最重要課題のひとつであり、暗号資産の不正流出を防止するための適切な措置を図ることは暗号資産交換業者の健全かつ適切な業務運営の基本である。したがって、その管理態勢は高い実効性が求められているにもかかわらず、上記1.及び2.に述べたとおり、代表取締役等は、システムリスク管理態勢の整備を劣後させ、一部の者へ権限を集中させるなど牽制機能を発揮させておらず、また、暗号資産の流出リスクへの対応に係る重要性を認識することなく、議論・検討を行っていないなど、不正行為等による暗号資産の流出を防止するための適切な措置を講じていない。このように、当社は顧客からの預かり資産を管理する暗号資産交換業者に求められる態勢について著しい不備が認められる。
- 本流出事案については、未だ具体の手口の究明に至っていないが、暗号資産交換業を適正かつ確実に遂行するために必要なシステムリスクに係る経営管理態勢等及び暗号資産の流出リスクへの対応に係る当社の管理態勢については、本流出事案についての具体の手口にかかわらず、利用者保護の観点から一刻も早く抜本的な改善を促す必要があり、こうした状況は、「暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行のために必要があると認めるとき」に該当するものと認められることから、法第63条の16の規定に基づく業務改善命令を発出するものである。
【警察庁】
【2024年11月】
警察庁 令和6年9月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について
- 認知状況(令和6年1月~9月)
- SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数(前年同期比)は7,662件(+5,232件)、被害額(前年同期比)は 約974.3億円(+711.7億円)、検挙件数は129件、検挙人員は60人
- SNS型投資詐欺の認知件数(前年同期比)は5,092件(+3,771件)、被害額(前年同期比)は約703.4億円(+552.6億円)、検挙件数は76件、検挙人員は24人
- SNS型ロマンス詐欺の認知件数(前年同期比)は2,570(+1,461件)、被害額(前年同期比)は約271.0億円(+159.0億円)、検挙件数は53件、検挙人員は36人
- SNS型投資詐欺の被害発生状況
- 被害者の性別は、男性54.1%、女性45.8%
- 被害者の年齢層では、男性は60代27.8%、50代23.6%、70代16.5%の順、女性は50代29.0%、60代23.2%、40代16.3%の順
- 被害額の分布について、1億円超は男性37件、女性40件
- 被疑者が詐称した職業について、投資家35.5%、その他著名人13.9%、会社員4.7%の順
- 当初接触ツールについて、男性はFB19.6%、LIINE19.2%、FB19.5%、インスタグラム17.6%の順、女性はインスタグラム32.8%、LINE17.6%、FB11.4%の順
- 被害時の連絡ツール(欺罔が行われた主たる通信手段)について、LINE91.8%、被害金の主たる交付形態について、振込87.6%、暗号資産10.2%など
- 被害者との当初の接触手段について、バナー等広告41.8%、ダイレクトメッセージ26.0%、グループ招待8.1%など
- 被害者との当初の接触手段(「バナー等広告」及び「ダイレクトメッセージ」)の内訳(ツール別)について、バナー等広告では、インスタグラム29.8%、FB18.1%、FB17.5%、投資のサイト14.3%の順、ダイレクトメッセージでは、インスタグラム26.5%、FB20.6%、LINE16.5%、X13.2%、マッチングアプリ7.7%、TikTok4.5%など
- SNS型ロマンス詐欺の被害発生状況
- 被害者の性別は、男性62.1%、女性7.9%
- 被害者の年齢層では、男性は50代27.9%、60代26.4%、40代21.4%の順、女性は50代29.0%、40代28.2%、60代16.4%の順
- 被害額の分布について、1億円超は男性5件、女性19件
- 被疑者が詐称した職業について、投資家11.6%、会社員11.0%、会社役員6.4%、芸術・芸能関係4.0%、軍関係3.2%の順
- 当初接触ツールについて、男性はマッチングアプリ35.5%、FB23.2%、インスタグラム15.9%の順、女性はマッチングアプリ34.8%、インスタグラム33.3%、FB16.4%の順
- 被害時の連絡ツール(欺罔が行われた主たる通信手段)について、LINE93.7%、被害金の主たる交付形態について、振込75.8%、暗号資産18.3%、電子マネー5.1%など
- 被害者との当初の接触手段について、ダイレクトメッセージ80.6%、その他のチャット6.0%、オープンチャット2.9%など
- 被害者との当初の接触手段(「ダイレクトメッセージ」)の内訳(ツール別)について、マッチングアプリ30.8%、インスタグラム25.8%、FB22.4%、TikTok5.5%、X5.1%、LINE4.0%など
- 金銭等の要求名目(被害発生数ベース)について、投資名目71.0%、投資以外29.0%、金銭等の要求名目(被害額ベース)について、投資名目83.3%、投資以外16.7%
警察庁 令和6年9月末の特殊詐欺認知・検挙状況等について
- 令和6年1月~9月の特殊詐欺全体の認知件数は14,254件(前年同期14,019件、前年同期比+1.7%)、被害総額は411.2億円(310.6億円、+32.4%)、検挙件数は4,216件(5,055件、▲16.6%)、検挙人員は1,459人(1,639人、▲11.0%)
- オレオレ詐欺の認知件数は3,896件(3,062,715件、+19.3%)、被害総額は225.6億円(92.7億円、+143.3%)、検挙件数は1,082件(1,545件、▲32.6%)、検挙人員は561人(672人、▲16.5%)
- 預貯金詐欺の認知件数は1677件(2,098件、▲20.0%)、被害総額は17.1億円(30.1億円、▲43.2%)、検挙件数は1,173件(1,171件、+0.2%)、検挙人員は303人(383人、▲20.9%)
- 架空料金請求詐欺の認知件数は3,700件(3,796件、▲0.3%)、被害総額は87.3億円(101.9億円、▲14.3%)、検挙件数は224件(217件、+3.2%)、検挙人員は163人(87人、+87.4%)
- 還付金詐欺の認知件数は3,132件(3,009件、+4.1%)、被害総額は47.6億円(35.3億円、+34.9%)、検挙件数は638件(695件、▲8.2%)、検挙人員は126人(128人、▲1.6%)
- 融資保証金詐欺の認知件数は232件(136件、+70.6%)、被害総額は1.6億円(2.0億円、▲16.6%)、検挙件数は20件(19件、+5.3%)、検挙人員は9人(14人、▲35.7%)
- 金融商品詐欺の認知件数は74件(182件、▲59.3%)、被害総額は5.8億円(23.0億円、▲74.8%)、検挙件数は14件(22件、▲36.4%)、検挙人員は1人(22人、▲95.5%)
- ギャンブル詐欺の認知件数は18件(15件、+20.0%)、被害総額は1.0億円(0.5億円、+128.4%)、検挙件数は3件(0件)、検挙人員は1人(0人)
- キャッシュカード詐欺盗の認知件数は1,061件(1,722件、▲38.4%)、被害総額は12.4億円(23.8憶円、▲48.1%)、検挙件数は1,048件(1,389件、▲24.6%)、検挙人員は259人(328人、▲21.0%)
- 組織的犯罪処罰法違反の検挙件数は323件(210件、+53.8%)、検挙人員は143人(71人、+101.4%)、口座開設詐欺の検挙件数は590件(510件、+15.7%)、検挙人員は318人(284人、+12.0%)、盗品等譲受け等の検挙件数は0件(2件)、検挙人員は0人(1人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は2,709件(2,033件、+33.3%)、検挙人員は2,017人(1,579人、+27.7%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は120件(99件、+21.2%)、検挙人員は118人(96人、+22.9%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は15件(15件、±0%)、検挙人員は9人(13人、▲30.8%)
- 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では、60歳以上55.0%、70歳以上57.2%、男性37.3%:女性62.7%、オレオレ詐欺では60歳以上77.4%、70歳以上68.7%、男性31.3%:女性68.7%、預貯金詐欺では60歳以上99.5%、70歳以上96.7%、男性13.7%:女性86.3%、架空料金請求詐欺では60歳以上56.8%、70歳以上31.7%、男性57.4%:女性42.6%、特殊詐欺被害者全体に占める高齢被害者(65歳以上)の割合について、特殊詐欺全体では68.7%(男性31.9%、女性68.1%)、オレオレ詐欺74.1%(22.4%、77.6%)、預貯金詐欺98.6%(13.6%、86.4%)、架空料金請求詐欺43.8%(64.2%、35.8%)、還付金詐欺78.5%(36.4%、63.6%)、融資保証金詐欺4.5%(60.0%、40.0%)、金融商品詐欺47.3%(71.4%、28.6%)、ギャンブル詐欺38.9%(71.4%、28.6%)、交際あっせん詐欺34.6%(100.0%、0.0%)、その他の特殊詐欺16.4%(54.2%、45.8%)、キャッシュカード詐欺盗97.9%(22.1%、77.9%)
警察庁 北朝鮮IT労働者に関する企業等に対する注意喚起(令和6年3月26日)
- 国際連合安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネルは、これまでの国際連合安全保障理事会決議に基づく対北朝鮮措置に関する報告書において、北朝鮮は、IT労働者を外国に派遣し、彼らは身分を偽って仕事を受注することで収入を得ており、これらが北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源として利用されていると指摘しています。
- また、2022年5月16日、米国が、国務省、財務省及び連邦捜査局(FBI)の連名で、このような北朝鮮IT労働者による活動方法や対応策等をまとめたガイドラインを公表したほか、同年12月8日、韓国が、外交部、国家情報院、科学技術情報通信部、統一部、雇用労働部、警察庁、公正取引委員会の連名で、同様のガイドラインを公表しました。さらに、2023年10月18日、米国及び韓国が共同で北朝鮮IT労働者に関する追加的な勧告を行うための公共広告(PSA)を発表するなど、北朝鮮IT労働者に関してこれまでに累次の注意喚起が行われています。
- 我が国に関しても、北朝鮮IT労働者が日本人になりすまして日本企業が提供する業務の受発注のためのオンラインのプラットフォーム(以下「プラットフォーム」という。)を利用して業務を受注し、収入を得ている疑いがあります。また、北朝鮮IT労働者が情報窃取等の北朝鮮による悪意あるサイバー活動に関与している可能性も指摘されており、その脅威は高まっている状況にあります。
- この点、北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議は、加盟国において収入を得ている全ての北朝鮮労働者の送還を決定するとともに、いかなる資金、金融資産又は経済資源も、北朝鮮の核・ミサイル開発の利益のために利用可能となることのないよう確保しなければならないと規定しているほか、このような北朝鮮IT労働者に対して業務を発注し、サービス提供の対価を支払う行為は、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)等の国内法に違反するおそれがあります。
- 各企業・団体においては、経営者のリーダーシップの下、北朝鮮IT労働者に対する認識を深めるとともに、以下に挙げるような手口に注意を払っていただきますようお願いいたします。また、プラットフォームを運営する企業においては、本人確認手続の強化(身分証明書の厳格な審査、テレビ会議形式の面接の導入等)、不審なアカウントの探知(不自然な情報の登録が通知されるシステムの導入等)といった対策の強化に努めていただきますようお願いいたします。
- 北朝鮮IT労働者の手口
- 北朝鮮IT労働者の多くは、国籍や身分を偽るなどしてプラットフォームへのアカウント登録等を行っています。その際の代表的な手口として、身分証明書の偽造が挙げられます。また、日本における血縁者、知人等を代理人としてアカウント登録を行わせ、実際の業務は北朝鮮IT労働者が行っている場合もあります。この場合、当該代理人が報酬の一部を受け取り、残りの金額を外国に送金している可能性があるほか、当該送金には、資金移動業者が用いられることがあります。
- 北朝鮮IT労働者は、IT関連サービスの提供に関して高い技能を有する場合が多く、プラットフォーム等において、ウェブページ、アプリケーション、ソフトウェアの制作等の業務を幅広く募集しています。
- 北朝鮮IT労働者の多くは、中国、ロシア、東南アジア等に在住していますが、VPNやリモートデスクトップ等を用いて、外国から作業を行っていることを秘匿している場合があります。
- そのほか、北朝鮮IT労働者のアカウント等には、次のような特徴がみられることが指摘されています。業務上関係するアカウントや受注者にこれらの特徴が当てはまる場合には、北朝鮮IT労働者が業務を請け負っている可能性がありますので、十分に注意してください。
- 主にプラットフォームを運営する企業向け
- アカウント名義、連絡先等の登録情報又は登録している報酬受取口座を頻繁に変更する。
- アカウント名義と登録している報酬受取口座の名義が一致していない。
- 同一の身分証明書を用いて複数のアカウントを作成している。
- 同一のIPアドレスから複数のアカウントにアクセスしている。
- 1つのアカウントに対して短時間に複数のIPアドレスからのアクセスがある。
- アカウントに長時間ログインしている。
- 累計作業時間等が不自然に長時間に及んでいる。
- 口コミ評価を行っているアカウントと評価されているアカウントの身分証明書等が同一である。
- 主に業務を発注する方向け
- 不自然な日本語を用いるなど日本語が堪能ではない2。また、そのためテレビ会議形式の打合せに応じない。
- プラットフォームを通さず業務を受発注することを提案する。
- 一般的な相場より安価な報酬で業務を募集している。
- 複数人でアカウントを運用している兆候がみられる。
- 暗号資産での支払いを提案する。
- 問合せ先
- 北朝鮮IT労働者の関与が疑われる場合には、プラットフォームの管理責任者に相談するほか、関係機関に御相談ください。
- 警察庁警備局外事情報部外事課 npa-gaiji-it-toiawase@npa.go.jp
- 外務省北東アジア第二課 ahoku2-toiawase@mofa.go.jp
- 財務省国際局調査課対外取引管理室 450062200000@mof.go.jp
- 経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課 bzl-it-joho-toiawase@meti.go.jp
【2024年10月】
警察庁 SNS上の犯罪実行者募集対策~AIを活用した犯罪実行者募集投稿に対するリプライ警告~について
- 対策の概要
- 警察では、「国民を詐欺から守るための総合対策」に基づき、「犯行に加担させないための対策」として、SNS上で発信されている犯罪実行者の募集投稿に対し、返信(リプライ)機能を活用した投稿者等に対する個別警告を実施しているところ、令和6年4月1日からは、警察庁において、AIを活用したリプライ警告を導入しており、令和6年9月30日までに約2700件実施している。
- 引き続き、これらの取組みを効果的に運用していくこととしている
警察庁 犯罪実行者募集情報の特徴について
▼ 犯罪実行者募集情報の特徴について
- 概要
- SNSなどで求人情報を探している方に対して、本年8月以降、首都圏で相次ぐ凶悪な強盗等事件において検挙された被疑者が応募したと思われる犯罪実行者募集情報の具体的な事例や特徴等を広報し、この種の求人には応募しないように注意を促すもの。
- 内容
- 別添の資料を、警察庁Xに投稿するとともにホームページに掲載する。
- ※なお、本広報資料に関しては、1の旨を呼びかける生活安全企画課長の動画を警察庁X等に投稿しています
- 別添の資料を、警察庁Xに投稿するとともにホームページに掲載する。
▼ SNSなどで求人情報を探している方へ
- 犯罪実行者の募集は、通常のアルバイト募集のように見えても、2つの大きな特徴があります。それは、
- X等のSNSで「高額」「即日即金」「ホワイト案件」等、「楽で、簡単、高収入」を強調する
- シグナルやテレグラムといった匿名性の高いアプリに誘導して個人情報を送信させ、脅迫する
- というものです。この種の求人には応募しないとの意識を社会全体で共有することが重要です。
- 本年8月以降、首都圏で相次ぐ凶悪な強盗等事件において検挙された被疑者が応募したと思われる犯罪実行者募集情報には、具体的には以下の特徴があります。これらを参考にして、そのような特徴を有する求人情報には応募しないように注意してください。
- 犯罪実行者募集の具体的事例
- 「即日バイト」「高額バイト」と検索したところ、「高額案件、タクシー業務、書類運搬、受け取り、日給5万円から」といった募集投稿を見つけた
- 「即日払いのバイトがあります」との投稿を見つけ、コメントしたところ、「DMください」との反応があった
- 「案件」と検索したところ、「ホワイトな高額案件あります」との募集投稿を見つけた
- おすすめに表示された「深夜に人を運んでください」「報酬5万円」との募集投稿を見つけてDMを送った
- 打ち子(パチンコの代打ち)のバイトの募集を見つけ、DMを送った
- 「お金配りますよ」と投稿しているアカウントにDMを送った
- 「即日即金」と検索したところ、「即金5万円」「運びの仕事」といった募集投稿を見つけ応募した
- 「要 普通免許、簡単な運びの仕事、ホワイトな仕事、高収入」等の広告を見て登録した
- 「送迎」案件のバイトに応募した
- 短期間で稼げるアルバイトを探し、「ホワイト案件」との募集文言を見て応募した
- 「短期間で高収入」との募集文言を見て応募した
- 「高額収入の引越しバイトの募集」と題した「本日稼働可能!」「預けた荷物をロッカー」「20万~都内某所」「闇バイト×」等の記載があるDMに返信した
- XでのDMのやりとりを経て、シグナルに誘導された
- 浮かび上がる犯罪実行者募集情報の特徴
- 使用されたSNS:大部分がX(旧Twitter)
- 報酬額:高額であることを強調する文言が多い(「高収入」「日給5万円から」等)
- 報酬支払い:即日に支払われることを強調する文言が多い(「即日払い」「即日即金」「お金配りますよ」等)
- 業務内容:人又は物の運搬や荷物の受取りなど簡単な仕事であることを強調する文言が多い(「運びの仕事」「ドライバー」「送迎」「書類運搬」「荷物を運ぶ仕事」等)
- 業務の性質:違法ではないことや、楽で簡単な仕事であることを強調する文言が使われることもある(「ホワイト案件」「ホワイトバイト」「簡単」等)
- 募集条件:即座に参加できること(「本日稼働可能」等)、また運搬等の業務に対応できること(「要普通免許」等)を条件としている場合もある
- 通信手段:Xでのやりとりから、匿名性の高いアプリ(シグナル)に誘導されることが多い
- 今、犯罪に加担しようとしている方へ
- たとえ、自身や家族が脅迫されていても、強盗は凶悪な犯罪です。犯罪に加担する前に、勇気を持って抜け出し、すぐに警察に相談してください。警察は確実に保護しますので、安心してください。
- 犯罪実行者募集の具体的事例
警察庁(公式X)闇バイトに関する注意喚起
- 自分自身や家族への脅迫が理由であっても#強盗 は凶悪な#犯罪 です。
- 犯罪に関わってはいけません。勇気を持って抜け出し、すぐに警察に#相談 してください。
- 警察は相談を受けたあなたやあなたの家族を確実に保護します。
- 安心して、そして勇気を持って、今すぐ引き返してください。
警察庁 犯罪統計資料(令和6年1~9月分)
- 令和6年1~9月における刑法犯総数について、認知件数は545,300件(前年同期517,229件、前年同期比+5.4%)、検挙件数は203,122件(190,080件、+6.9%)、検挙率は37.2%(36.7%、+0.5P)
- 凶悪犯の認知件数は5,175件(4,099件、+26.3%)、検挙件数は4,344件(3,305件、+31.4%)、検挙率は83.9%(8.6%、+3.3P)、粗暴犯の認知件数は42,993件(43,762件、▲1.8%)、検挙件数は34,585件(34,702件、▲0.3%)、検挙率は80.4%(79.3%、+1.1P)、窃盗犯の認知件数は371,229件(356,061件、+4.3%)、検挙件数は117,821件(110,521件、+6.6%)、検挙率は31.7%(31.0%、+0.7P)、知能犯の認知件数は44,946件(35,728件、+25.8%)、検挙件数は13,176件(13,697件、▲3.8%)、検挙率は29.3%(38.3%、▲9.0P)、風俗犯の認知件数は13,391件(7,665件、+74.7%)、検挙件数は10,275件(5,275件、+95.2%)、検挙率は76.7%(68.7%、+8.0P)
- 詐欺の認知件数は41,502件(32,900件、+26.1%)、検挙件数は10,899件(11,696件、▲6.8%)、検挙率は26.3%(35.6%、▲9.3P)
- 万引きの認知件数は72,921件(68,721件、+6.1%)、検挙件数は48,917件(45,393件、+7.8%)、検挙率は67.1%(66.1%、+1.0P)
- 特別法犯 主要法令別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、特別法犯総数の検挙件数は46,204件(50,380件、▲8.3%)、検挙人員は36,883人(41,097人、▲10.4%)
- 入管法違反の検挙件数は4,356件(4,271件、+2.0%)、検挙人員は2,965人(2,974人、▲0.3%)、軽犯罪法違反の検挙件数は4,795件(5,555件、▲13.7%)、検挙人員は4,851人(5,488人、▲11.6%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は4,155件(7,599件、▲45.3%)、検挙人員は3,007人(5,782人、▲11.6&)、児童買春・児童ポルノ法違反の検挙件数は2,392件(2,459件、▲2.7%)、検挙人員は1,322人(1,778人、▲25.6%)、青少年保護育成条例違反の検挙件数は1,079件(1,585件、▲31.9%)、検挙人員は860人(1,222人、▲29.6%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は3,083件(2,364件、+30.4%)、検挙人員は2,355人(1,870人、+25.9%)、不正アクセス禁止法違反の検挙件数は343件(339件、+1.2%)、検挙人員は115人(102人、+12.7%)、銃刀法違反の検挙件数は3,347件(3,586件、▲6.7%)、検挙人員は2,857人(3,011人、▲5.1%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は1,381件(922件、+49.8%)、検挙人員は814人(553人、+47.2%)、大麻取締法違反の検挙件数は5,077件(5,253件、▲3.4%)、検挙人員は3,999人(4,293人、▲6.8%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は5,916件(5,556件、+6.5%)、検挙人員は3,994人(4,293人、▲6.8%)
- 暴力団犯罪(刑法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、刑法犯総数の検挙件数は6,794件(6,760件、+0.5%)、検挙人員は3,553人(4,302人、▲617.4%)
- 強盗の検挙件数は58件(84件、▲31.0%)、検挙人員は113人(172人、▲34.3%)、暴行の検挙件数は298件(434件、▲31.3%)、検挙人員は267人(399人、▲33.1%)、傷害の検挙件数は579件(740件、▲21.8%)、検挙人員は717人(839人、▲14.5%)、脅迫の検挙件数は205件(241件、▲14.9%)、検挙人員は206人(219人、▲5.9%)、恐喝の検挙件数は235件(259件、▲9.3%)、検挙人員は258人(334人、▲22.8%)、窃盗の検挙件数は3,417件(2,906件、+17.6%)、検挙人員は485人(609人、▲20.4%)、詐欺の検挙件数は1,134件(1,190件、▲4.7%)、検挙人員は745人(939人、▲20.7%)、賭博の検挙件数は55件(20件、+175.0%)、検挙人員は77人(71人、+8.5%)
- 暴力団犯罪(特別法犯)主要法令別 検挙件数・検挙人員 対前年比較について、特別法犯総数の検挙件数は3,120件(3,567件、▲12.5%)、検挙人員は2,034人(2,492人、▲18.4%)
- 入管法違反の検挙件数は22件(16件、+37.5%)、検挙人員は22人(13人、+69.2%)、軽犯罪法違反の検挙件数は35件(56件、▲37.5%)、検挙人員は34人(43人、▲20.9%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は50件(58件、▲13.8%)、検挙人員は47人(57人、▲17.5%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は37件(14件、+164.3%)、検挙人員は50人(29人、+25.0%)、銃刀法違反の検挙件数は50件(75件、▲33.3%)、検挙人員は32人(52人、▲38.5%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は185件(150件、+23.3%)、検挙人員は71人(70人、+1.4%)、大麻取締法違反の検挙件数は555件(760件、▲27.0%)、検挙人員は322人(501人、▲35.7%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は1,763件(1,996件、▲11.7%)、検挙人員は1,140人(1,352人、▲15.7%)、麻薬等特例法違反の検挙件数は68件(82件、▲17.1%)、検挙人員は25人(41人、▲39.0%)
警察庁 警察活動におけるウェアラブルカメラ活用の試行について
- 目的
- 職務執行に当たる警察官によるウェアラブルカメラの活用について、その効果や課題を把握するため、モデル事業を実施する。
- 概要
- 地域警察活動及び交通取締活動
- 警察官の職務執行への国民の関心の高まりを踏まえ、職務執行の適正性を客観的に検証できるようにするとともに、警察官が犯罪を現認した場合等の証拠を保全するため、街頭活動に従事する地域警察官及び交通取締活動に従事する交通警察官にウェアラブルカメラを装着させ、その職務の状況を記録するもの。
- 配備予定
- 【地域】 3都道府県警察 計39式
- 【交通】 3都道府県警察 計18式
- 雑踏警備活動
- 雑踏警備の際、速やかな現場措置を行うための幹部による適切な指揮の実施に資するよう、公道、イベント会場、駅等の公共の場所において、雑踏の概観やトラブル発生時の現場状況を撮影するもの。
- 配備予定
- 9都道府県警察 計19式
- 地域警察活動及び交通取締活動
- 今後の予定
- 令和7年度からのモデル事業の開始に向け、今後、運用要領の策定や機器の調達等の各種作業を進めていく
警察庁 ランサムウェア被疑者の検挙等に関するユーロポールのプレスリリースについて
- プレスリリースの概要
- 本年2月以降、我が国を含む関係各国による国際共同捜査により、ランサムウェア攻撃グループLockBitに係る被疑者を外国捜査機関が逮捕・起訴するとともに、関連犯罪インフラを押収するなどしたところ(令和6年2月の広報資料、同年5月の広報資料参照)、この度、これらに続く措置として、フランス、イギリス、スペイン当局が、同グループの開発者や、同グループが利用していた防弾ホスティングサービスの管理者等を逮捕するなどした旨を、ユーロポールがプレスリリースした。
- 同プレスリリースにおいては、前回と同様、関係各国で関連するランサムウェア事案の捜査を行っており、当該捜査について、日本警察を含む外国捜査機関等の国際協力が言及されるとともに、日本警察において開発したLockBitによって暗号化された被害データを復号するツールについても言及されている。
- 日本警察の協力
- 関東管区警察局サイバー特別捜査部と各都道府県警察は、我が国で発生進しており、捜査で得られた情報を外国捜査機関等に提供している。
- したランサムウェア事案について、外国捜査機関等とも連携して捜査を推我が国を含め、世界的な規模で攻撃が行われているランサムウェア事案をはじめとするサイバー事案の捜査に当たっては、こうした外国捜査機関等との連携が不可欠であるところ、引き続き、サイバー空間における一層の安全・安心の確保を図るため、サイバー事案の厳正な取締りや実態解明、外国捜査機関等との連携を推進する。
警察庁 豪州主導国際文書「OTサイバーセキュリティの原則」への共同署名について
- 概要
- 令和6年10月2日、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)及び警察庁は、豪州通信情報局(ASD)豪州サイバーセキュリティセンター(ACSC)が策定した文書「OTサイバーセキュリティの原則」(“Principles of operational technology cyber security”)(以下「本件文書」という。)の共同署名に加わり、本件文書を公表しました。仮訳は追って公表予定です。
- 本件文書に共同署名し協力機関として組織名を列記した国は、豪州、日本の他、米国、英国、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、オランダ及び韓国の9か国です。
- 本件文書は、重要インフラ組織は、不可欠なサービスを提供する物理的な機器やプロセスを制御・管理するため、オペレーショナル・テクノロジー(OT)に依存しているとして、重要インフラ組織がOT環境の設計、実装及び管理に係る意思決定を行うことを支援する6つの原則を示しています。当該原則が我が国重要インフラ事業者において適用されることは、我が国サイバーセキュリティ強化にも資することから、共同署名に加わることとしました。
- 今後も、引き続き、サイバーセキュリティ分野での国際連携の強化に努めてまいります。
- 本件文書の概要
- 背景・目的
- 重要インフラ組織は、物理的な機器やプロセスを制御・管理するためにOTに依存している。本文書は、重要インフラ組織のOT環境の安心・安全の確保と重要なサービスの事業継続を可能すべく、組織がOT環境の設計、実装及び管理に係る意思決定を行うことを支援するための原則を記述している。
- 6つの原則の概要
- 原則1 安全が第一
- 考慮すべき事項:人命、プラント、設備及び環境の安全並びにサービスの信頼性・稼働時間
- インシデント対応において問うべき事項:適切な職員の現場への派遣準備、バックアップの信頼性等
- 原則2 ビジネスの知識が重要
- ベースライン:重要なサービスの継続的な提供に不可欠なシステムの特定、OTシステムのプロセス及びプロセスの各部分の重要性についての理解等
- OT固有のインシデント対応計画のBCP等との統合、第三者の関与前・関与時における第三者に対する情報提供、OTの停止・サイバーセキュリティ侵害の影響・重要度の評価のための事業状況の理解、プラントの知識を有するOTサイバーセキュリティ職員の、物理的なプラントを担当する組織内職員との実務関係の維持
- 原則3 OTデータは極めて重要であり、保護する必要あり
- 技術的構成データ(ネットワークダイヤグラム等)、電圧レベル等のより一時的OTデータ等の保護
- OTデータの機密性、整合性、可用性の保護以上の事項(OTデータ漏洩との際の警告等)の実施
- 原則4 OTを他の全てのネットワークから分離・隔離する
- OTの他のネットワークからの分離・隔離
- OTシステムの管理・運用のインターフェイスのIT環境からの分離・隔離
- 原則5 サプライチェーンは安全でなければならない
- ベンダーの規模や工学技術上の重要性に関係のない、監視が求められるとするシステムの範囲の再評価
- ファームウェアのアップデートが可能なベンダーにデバイスが接続している場合、ファームウェアや設定が変更された場合のデバイスへの影響の検討
- 原則6 OTのサイバーセキュリティには人材が不可欠
- 様々なスキル、知識、経験及びセキュリティ文化を備えた、異なる背景を持つ者の組み合わせ
- 重要インフラのOT現場において、防御の最前線に立つのはOTサイバーセキュリティ専門家等でない者であることを踏まえた、サイバーセキュリティ意識の発展を現場の安全文化の中核的要素とすること
- 原則1 安全が第一
- 背景・目的
警察庁 令和6年8月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について
- 認知状況(令和6年1月~8月)
- SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数(前年同期比)は6,868件(+4,860件)、被害額(前年同期比)は約877.9億円(+666.8億円)、検挙件数は103件、検挙人員は53人
- SNS型投資詐欺の認知件数(前年同期比)は4,639件(+3,593件)、被害額(前年同期比)は約641.4億円(+527.4億円)、検挙件数は58件、検挙人員は22人
- SNS型ロマンス詐欺の認知件数(前年同期比)は2,229件(+1,267件)、被害額(前年同期比)は約236.5億円(+139.3億円)、検挙件数は45件、検挙人員は31人
- SNS型投資詐欺の被害発生状況
- 被害者の性別は、男性53.5%、女性46.5%
- 被害者の年齢層では、男性は60代28.5%、50代23.9%、70代16.7%の順、女性は50代29.5%、60代23.8%、40代15.6%の順
- 被害額の分布について、1億円超は男性36件、女性33件
- 被疑者が詐称した職業について、投資家35.6%、その他著名人14.9%、会社員4.6%の順
- 当初接触ツールについて、男性はFB19.8%、LIINE20.4%、FB19.5%、インスタグラム17.6%の順、女性はインスタグラム33.5%、LINE17.7%、FB11.6%の順
- 被害時の連絡ツール(欺罔が行われた主たる通信手段)について、LINE92.5%、被害金の主たる交付形態について、振込88.0%、暗号資産9.9%など
- 被害者との当初の接触手段について、バナー等広告48.1%、ダイレクトメッセージ26.0%、グループ招待8.1%など
- 被害者との当初の接触手段(「バナー等広告」及び「ダイレクトメッセージ」)の内訳(ツール別)について、バナー等広告では、インスタグラム30.5%、FB18.1%、投資のサイト14.3%の順、ダイレクトメッセージでは、インスタグラム27.2%、FB20.6%、LINE16.8%、X12.2%、マッチングアプリ7.4%、TikTok4.2%など
- SNS型ロマンス詐欺の被害発生状況
- 被害者の性別は、男性62.0%、女性38.0%
- 被害者の年齢層では、男性は50代28.5%、60代27.0%、40代20.7%の順、女性は40代29.2%、50代27.7%、60代17.1%の順
- 被害額の分布について、1億円超は男性4件、女性14件
- 被疑者が詐称した職業について、投資家11.0%、会社員10.9%、会社役員6.4%、芸術・芸能関係3.9%、軍関係3.5%の順
- 当初接触ツールについて、男性はマッチングアプリ35.8%、FB23.5%、インスタグラム15.8%の順、女性はマッチングアプリ34.9%、インスタグラム33.3%、FB17.2%の順
- 被害時の連絡ツール(欺罔が行われた主たる通信手段)について、LINE93.3%、被害金の主たる交付形態について、振込76.4%、暗号資産17.7%、電子マネー5.0%など
- 被害者との当初の接触手段について、ダイレクトメッセージ78.6%、その他のチャット6.5%、オープンチャット2.9%など
- 被害者との当初の接触手段(「ダイレクトメッセージ」)の内訳(ツール別)について、マッチングアプリ30.3%、インスタグラム26.2%、FB23.3%、X5.2%、TikTok5.1%、LINE3.7%など
- 金銭等の要求名目(被害発生数ベース)について、投資名目70.9%、投資以外29.1%、金銭等の要求名目(被害額ベース)について、投資名目82.8%、投資以外17.2%
警察庁 令和6年8月末の特殊詐欺認知・検挙状況等について
- 令和6年1月~8月の特殊詐欺全体の認知件数は12,362件(前年同期12,546件、前年同期比▲1.7%)、被害総額は350.3億円(271.7億円、+28.9%)、検挙件数は3,745件(4,552件、▲17.7%)、検挙人員は1,286人(1,452人、▲11.14)
- オレオレ詐欺の認知件数は3,239件(2,715件、+19.3%)、被害総額は186.8億円(82.0億円、+127.9%)、検挙件数は958件(1,421件、▲32.6%)、検挙人員は480人(606人、▲20.8%)
- 預貯金詐欺の認知件数は1,462件(1,850件、▲21.04%)、被害総額は14.9億円(26.6億円、▲47.9%)、検挙件数は1,037件(1,032件、+0.5%)、検挙人員は276人(331人、▲16.6%)
- 架空料金請求詐欺の認知件数は3,215件(3,415件、▲5.6%)、被害総額は76.1億円(90.6億円、▲16.0%)、検挙件数は199件(193件、+3.1%)、検挙人員は141人(68人、+107.4%)
- 還付金詐欺の認知件数は2,794件(2,699件、+3.5%)、被害総額は42.8億円(31.1億円、+37.8%)、検挙件数は587件(642件、▲37.7%)、検挙人員は117人(118人、▲0.8%)
- 融資保証金詐欺の認知件数は204件(123件、+65.9%)、被害総額は1.5億円(1.8億円、▲19.4%)、検挙件数は16件(17件、▲5.9%)、検挙人員は9人(10人、▲0.1%)
- 金融商品詐欺の認知件数は67件(136件、▲50.7%)、被害総額は4.5億円(16.1億円、▲72.18%)、検挙件数は8件(14件、▲42.9%)、検挙人員は1人(22人、▲95.5%)
- ギャンブル詐欺の認知件数は16件(14件、+14.3%)、被害総額は1.0億円(0.4億円、+140.8%)、検挙件数は3件(0件)、検挙人員は0人(0人)
- キャッシュカード詐欺盗の認知件数は941件(1,544件、▲39.1%)、被害総額は10.9億円(21.9憶円、▲50.3%)、検挙件数は922件(1,229件、▲25.0%)、検挙人員は228人(294人、▲22.4%)
- 組織的犯罪処罰法違反の検挙件数は282件(170件、+65.9%)、検挙人員は123人(51人、+141.2%)、口座開設詐欺の検挙件数は507件(461件、+10.0%)、検挙人員は280人(260人、+7.7%)、盗品等譲受け等の検挙件数は0件(2件)、検挙人員は0人(1人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は2,379件(1,799件、+32.2%)、検挙人員は1,783人(1,397人、+27.6%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は107件(82件、+30.5%)、検挙人員は106人(86人、+23.3%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は14件(15件、▲6.7%)、検挙人員は8人(13人、▲38.5%)
- 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では、60歳以上77.8%、70歳以上57.6%、男性37.3%:女性62.7%、オレオレ詐欺では60歳以上78.9%、70歳以上70.5%、男性30.6%:女性69.4%、預貯金詐欺では60歳以上99.4%、70歳以上96.3%、男性13.9%:女性86.1%、架空料金請求詐欺では60歳以上56.8%、70歳以上32.8%、男性57.6%:女性42.4%、特殊詐欺被害者全体に占める高齢被害者(65歳以上)の割合について、特殊詐欺全体では69.5%(男性32.1%、女性67.9%)、オレオレ詐欺 75.8%(21.6%、78.4%)、預貯金詐欺 98.4%(13.8%、86.2%)、架空料金請求詐欺 45.4%(64.1%、35.9%)、還付金詐欺 78.1%(36.7%、63.3%)、融資保証金詐欺 4.6%(55.6%、44.4%)、金融商品詐欺 46.3%(71.0%、29.0%)、ギャンブル詐欺 37.5%(66.7%、33.3%)、交際あっせん詐欺 33.3%(100.0%、0.0%)、その他の特殊詐欺 17.1%(52.2%、47.8%)、キャッシュカード詐欺盗 97.9%(23.4%、76.6%)
警察庁 悪質ホストクラブ対策検討会の第2回までの議論と今後議論すべき論点
▼ 第2回までの議論と今後議論すべき論点
- 風営適正化法上の規制の在り方について、どのような方向で議論を行うか。
- 主な意見
- 規制の範囲に何らかの絞りをかける必要があるが、コンセプトカフェといった業態もあり、ホストクラブに特化した形でルール化することは難しいのではないか。
- 1号営業から悪質ホストクラブを切り出して定義して規制するよりも、行為や手段に着目した規制とした方がやりやすいのではないか。
- 高額料金の支払いの請求自体を法律で縛ってしまうと、クラブやキャバクラ等の風営適正化法上の1号営業全体に大変厳しい規制が及ぶことになってしまう。
- 風営適正化法の改正について、性的搾取という人権侵害の性質を踏まえることが必要である。国際基準である人身取引議定書との整合性の観点から、風営適正化法が規制すべき行為や債務負担をさせるという意思形成に瑕疵があると判断される要素として、被害者の脆弱性に乗じることを明確に入れるべきではないか。
- 規制する行為の内容については、ホストクラブ以外の業態であっても、こんなあくどいことはやってはいけないと合意が取れる内容にすれば、誰からも納得してもらえるようなものになる。
- 風営適正化法の遵守事項と禁止行為の中にどういうものを取り込んでいくかという議論が必要。その論点の一つは、入口の売掛金・立替金、高額を使わせて借金漬けにするということをどうやって止めるか、もう一つは、高い借金を負わせて、それをネタにして売春等に追い込むというのをどうやってやめさせるか、という二点がある。
- 店と、その店で働く個人事業主のホストの両方に効果のある法律上の規制を考えなければ、店は別のホストを連れてくるだけになってしまう。
- ホスト個人ではなく背後者に対する規制については、特定商取引法での背後者規制といった立法例などを参考にしながら、行政処分の範囲を広げるということも考えられる
- 今後の議論の方向性(案)
- 風営適正化法上の規制を強化する場合には、規制対象をホストクラブに限定するのは困難と考えられることから、規制する行為を、悪質ホストクラブ特有の悪質行為や、他の業態であってもおよそ認められないような悪質行為に限定することについて議論。
- 売掛金等の形で客を借金漬けにする段階と、借金を悪質に取り立てる段階に分けて議論。
- 風営適正化法では、従業員等が遵守事項や禁止行為に該当する行為を行った場合には、営業者に対して指示処分や営業停止命令等の行政処分を行うことができることを念頭に、悪質行為に関する規制の在り方を議論。
- 「売掛金、立替金等の蓄積」段階での問題、「売掛金、立替金等の悪質な取立て」段階での問題のそれぞれについて、次ページ以降の出された意見を踏まえて議論を継続。
- 主な意見
- 売掛金、立替金等を蓄積させる手法についてどう考えるか。
- 悪質ホストクラブ等では、継続的に担当者がついてマインドコントロールしている事例が見受けられるので、関係性や継続性というのが1つのポイントになると思う。
- 20歳ぐらいの人が、訳も分からないで酒を無理やり飲まされて、その代金が非常に高額であるというところに問題がある。
- 若い子をターゲットにし、払えないことが分かっていながら飲食させて、借金漬けにして、売春あるいは性風俗に就かせて、そこから更に金を巻き上げるというルートを断ち切るための風営適正化法の改正が必要である。年齢で区切るのは難しいが、被害者の脆弱性、若年女性の社会経験の未熟さに付け込むような形で性搾取を行うというものに焦点を絞ることを出発点として議論するべき。
- 規制する場合、どのような行為を規制の対象とし、どのような点に留意すべきか。
- 風営適正化法が規制すべき行為や債務負担をさせるという意思形成に瑕疵があると判断される要素として、被害者の脆弱性に乗じることを明確に入れるべきではないか。
- 営業者の義務として、接客従事者が顧客に対して、例えば心理的に支配し、あるいは脆弱性によってその反対の意思を表示することが難しい状況に乗じて債務を負担させてはならないといった条文を入れられるかだと思うが、心理的支配というところは、事実認定の際の実務上の課題になるだろう。
- 料金に関する虚偽説明や色・恋を手段として女性を依存させる行為等に着目した規制は納得を得られると思う。
- いわゆる色・恋を手段として女性を依存させる行為を規制する場合、恋愛の自由との関係で、規制の必要性、合理性、規制を裏付ける立法事実がないと憲法との関係で問題がある。そこで、依存させて高額な遊興、飲食をさせる行為のように、恋愛の自由それ自体を規制するのではなく、恋愛に絡む悪質な行為に着目した形の規制にする必要がある
- 20歳ぐらいの人が、訳も分からないで酒を無理やり飲まされて、その代金が非常に高額であるというところに問題がある。(再掲)
- ぼったくり防止条例で規制している行為を風営適正化法で規制していくのか、条例に委ねるべきかも論点となる。様々な法令違反を行政規制に接合させて店舗の営業を規制することもできるのではないか
- 売掛金、立替金等を取り立てる手法についてどう考えるか。
- 料金の取立て規制について、困惑させたり、畏怖させたり、それから心理的支配の状況に乗じて、性産業、すなわち既存の法律で言えば(職業安定法上の)公衆衛生上の有害業務に従事しなければ取立てを免れる方法がないと思わせるとか、その支払いのためにその有害業務への従事を示唆するといったようなことを条文化することがあり得るのではないか。
- ホストクラブの売掛金について、誰の誰に対する未収金なのか、誰が誰に対して請求しているのかが分からない。誰に対してどういう商品、役務をどれぐらいの料金で提供しているのかを明確にしていかないと、その後の法的処理にも影響があるのではないか
- 売掛金等の取立て規制について、誰の誰に対する売掛金等に対して規制をかけるのかを、条文にする際は漏れがないようにする必要がある。
- 店舗の女性客に対する債権をホストが立て替えることで、債権を売掛金に変換して、ホストがこれを取り立てるというのは、債権管理回収業に近い行為と言えるが、これは非弁行為にならないのだろうか。そもそも、債権の売掛金への変換とその取立てを許容することを前提とした規定ぶりだと、非弁行為を国が認めていることになってしまうのではないか。
- 規制する場合、どのような行為を規制の対象とし、どのような点に留意すべきか。
- 料金の取立て規制について、困惑させたり、畏怖させたり、それから心理的支配の状況に乗じて、性産業、すなわち既存の法律で言えば(職業安定法上の)公衆衛生上の有害業務に従事しなければ取立てを免れる方法がないと思わせるとか、その支払いのためにその有害業務への従事を示唆するといったようなことを条文化することがあり得るのではないか。(再掲)
- ぼったくり防止条例で規制している行為を風営適正化法で規制していくのか、条例に委ねるべきかも論点となる。様々な法令違反を行政規制に接合させて店舗の営業を規制することもできるのではないか。(再掲)
- 店と、その店で働く個人事業主のホストの両方に効果のある法律上の規制を考えなければ、店は別のホストを連れてくるだけになってしまう。(再掲)
- その他(風営適正化法関連)
- ホストクラブの看板やアドトラックの規制、また、客引きについて、風営適正化法だけの問題ではなく、条例も含め他の規制と全体で考えていかないといけない。
- 個人事業主として働くホストにも、風営適正化法上の管理者講習を受講させることはできないか。
- 末端のホストを取り締まるだけでは足りず、その背後の犯罪組織や経営者等を捉えていかなければならない。
- 若い女性がホストクラブに入って多額の借金を負うきっかけとして、既にホスト店に出入りしている大学生の同級生から誘われるというものもあるということだが、若い女性がSNSやマッチングアプリをきっかけに店に入ってくるということも問題である。これらは店が関与しない一個人としてのホストとの出会いの場であるとのことだが、このように女性を勧誘する行為は、ある意味、女性に多額の債務を負わせるための予備的な行為だとも言え、何らかの対策を講じることはできないか。
- 風営適正化法の目的の一つに、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止というものがある。未成年ではないが、若年であるとか社会経験がないということに乗じて、しかも、ホストが営業の目的を秘して近づくという行為は問題である。
- その他(風営適正化法以外での対策)
- 関係団体からの話を聞くと、恐らく風営適正化法あるいは警察だけでの対応では多分無理で、職業安定法や課税といった色々なことを考えなければ、実効的な対策を取ることはできないだろう。
- ホストの雇用関係やフリーランス新法との関係について、整理がなされることが望ましい。
- ホストはホストクラブ等に雇用されているのではなく業務委託契約を締結している場合が多いということだが、国税の調査があっても業務委託では実態が把握しづらいのではないか。
- 民事上の問題であれば、法テラスに対応してもらうような道筋を作ることを考えるべき。
- 悪質ホストによる被害の実態を踏まえて、人身取引議定書に沿った人身取引の定義とそれを禁止する法の制定も必要。
- 今後議論すべき論点
- 関係団体からのヒアリング内容
- 関係団体からのヒアリングでは、悪質ホストと女性客を性風俗店にあっせんするスカウトが女性客の情報を共有しており、また、「スカウトバック」(性風俗店が女性を紹介したスカウトに支払う対価)のやりとりが行われているという実態について指摘あり。
- また、悪質ホストクラブの中には営業停止等の行政処分を受ける前に廃止届を出していわゆる「処分逃れ」を行っている店がある実態や、末端の従業員の違法行為について経営者層に責任を負わせることができていない実態についても指摘あり。
- 今後議論すべき論点
- 上記のような指摘を踏まえ、今後の検討会においては、以下等についても議論。
- 女性客への売春、性風俗店勤務等へのあっせんをいかに防ぐか
- いかなる者をホストクラブ営業から排除すべきか
- 悪質ホストクラブに対する制裁が十分か
- 上記のような指摘を踏まえ、今後の検討会においては、以下等についても議論。
- 関係団体からのヒアリング内容
【2024年9月】
警察庁 サイバー空間をめぐる脅威の情勢等
- 令和6年上半期においては、サイバー攻撃の前兆ともなるぜい弱性探索行為等の不審なアクセス件数及びランサムウェアの被害報告件数が前年同期から増加した。
- また、フィッシングの被害報告件数も前年同期比で約10万件増加したほか、インターネット上には犯罪実行者募集情報が氾濫するなど、極めて深刻な情勢が継続している。そのような中、警察においては、令和6年4月、サイバー特別捜査隊をサイバー特別捜査部に改組し、捜査・分析体制を強化した。
- 高度な技術を悪用したサイバー攻撃の脅威情勢
- 近年、世界各地で重要インフラの機能停止や機密情報の窃取を企図したとみられるサイバー攻撃が相次いで発生し、我が国でも、政府機関等においてDDoS攻撃とみられる被害が発生しているほか、生成AIを悪用した事案も発生。
- 警察庁が設置したセンサーにおいて検知した、ぜい弱性探索行為等の不審なアクセス件数は、増加の一途をたどり、その大部分が海外を送信元とするアクセス。
- 令和6年上半期におけるランサムウェアの被害報告件数は、114件であり、高水準で推移。流出した情報は、ダークウェブ上のリークサイトに掲載。※ノーウェアランサム:暗号化することなくデータを窃取した上で対価を要求する手口。令和5年上半期から集計。
- 【警察の取組】
- サイバー特別捜査隊(当時)が参画した国際共同捜査において、ランサムウェア事案被疑者が検挙されたほか、警察庁において、中国政府を背景とするサイバー攻撃グループAPT40による攻撃手法や緩和策が示された国際アドバイザリーの共同署名に参画し、本件アドバイザリーを公表。
- インターネット空間を悪用した犯罪に係る脅威情勢
- 情報通信技術の発展が社会に便益をもたらす反面、インターネットバンキングに係る不正送金事案や、SNSを通じて金銭をだまし取るSNS型投資・ロマンス詐欺、暗号資産を利用したマネー・ローンダリングが発生するなど、インターネット上の技術・サービスが犯罪インフラとして悪用。
- 令和6年上半期におけるフィッシング報告件数は、63万3,089件、インターネットバンキングに係る不正送金被害総額は約24億4,000万円。
- 【警察の取組】
- 令和4年から5年にかけて発生したインターネットバンキングに係る不正送金事件について、関係都道府県警察による捜査を通じて得られた情報をサイバー特別捜査部が集約・分析するとともに、暗号資産の追跡捜査や関係被疑者のSNSアカウントに係る捜査を実施。その結果、サイバー特別捜査部等の合同捜査本部は、同一の犯行グループが、SIMスワップという手口を駆使しながら組織的に不正送金を敢行している実態を解明するとともに、犯行グループの指示役とみられる男を特定。令和6年7月、同男を逮捕。
- 違法・有害情報に係る情勢
- インターネット上には、児童ポルノ等の違法情報や犯罪を誘発するような有害情報が存在するほか、近年SNS上に氾濫する犯罪実行者募集情報は深刻な治安上の脅威。能登半島地震では、過去の災害時の画像や偽の救助情報が拡散。
- 【警察の取組】
- 石川県警察は、サイバー特別捜査部と連携した捜査を実施した結果、地震当日に被災者を装ってSNS上に救助を求める虚偽の内容を投稿し、本来不要な捜索活動を警察に実施させてその業務を妨害した会社員の男(25歳)を特定。令和6年7月、同男を偽計業務妨害罪で逮捕。
- サイバー特別捜査部の活動状況
- 令和4年4月、国境を容易に越えて敢行されるサイバー事案に対し、国際共同捜査を通じて被疑者を検挙するため、関東管区警察局に、全国を管轄して直接捜査を実施する「サイバー特別捜査隊」を設置。
- 【「16SHOP」を用いたクレジットカード情報不正取得・利用事案】
- サイバー特別捜査隊等とインドネシア国家警察との国際共同捜査により、フィッシングツール「16SHOP」を用いて日本国内の被害者等に対しフィッシングを行い、不正に入手したクレジットカード情報を用いてECサイトで不正注文を行ったとみられるインドネシア所在の被疑者を特定。令和5年7月、インドネシア国家警察が同被疑者を逮捕。本件は、フィッシングに関して国外被疑者を検挙した初の事例となった。
- 令和6年4月、サイバー特別捜査隊を発展的に改組し、「サイバー特別捜査部」を設置することにより、捜査はもとより、重大サイバー事案の対処に必要な情報の収集、整理及び事案横断的な分析等を行う体制を強化。
- 【DDoS攻撃ウェブサービスを利用したDDoS攻撃事案被疑者の検挙】
- サイバー特別捜査部が、外国捜査機関から提供を受けた情報を精査した結果、海外のDDoS攻撃ウェブサービスを利用したDDoS攻撃事案の国内被疑者を特定・逮捕(令和6年8月)。本件は、EUROPOL主導の国際共同捜査への参画が国内被疑者の検挙に結びついた初の事例となった
- 国家を背景としたサイバー攻撃やDDoS攻撃等の情勢
- 近年、世界各地で重要インフラの機能停止や機密情報の窃取を企図したとみられるサイバー攻撃が相次いで発生している。
- 重要インフラの基幹システムに障害を発生させるサイバー攻撃(サイバーテロ)は、インフラ機能の維持やサービスの供給を困難とし、国民の生活や社会経済活動に重大な被害をもたらすおそれがある。また、軍事技術へ転用可能な先端技術や、国の機密情報の窃取を目的とするサイバー攻撃(サイバーエスピオナージ)は、企業の競争力の源泉を失わせるのみならず、我が国の経済安全保障等にも重大な影響を及ぼしかねない。さらに、現実空間におけるテロの準備行為として、重要インフラの警備体制等の機密情報を窃取するためにサイバーエスピオナージが行われるおそれもある。
- 例えば、我が国においても、令和6年2月には、政府機関や民間企業等のウェブサイトにおいて、DDoS攻撃による被害とみられる閲覧障害が複数発生しており、これら事案の中には、障害発生と同じ頃にSNS上でハクティビストのものと思われるアカウントから犯行をほのめかす投稿がなされる事案も確認された。また、過去には中国を背景とするサイバー攻撃グループBlackTechが、日本を含む東アジアと米国の政府機関や事業者を標的とし、情報窃取を目的としたサイバー攻撃を行っていることも確認された。
- 今後も国や重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせるサイバー攻撃が発生するおそれがあるなど、サイバー空間における治安の維持は、我が国の安全保障の取組とも密接に絡み合っている。
- このようなサイバー攻撃の準備として、攻撃者は攻撃対象を事前に探索する場合があるところ、令和6年上半期に警察庁が設置したセンサーにおいて検知した、ぜい弱性探索行為等の不審なアクセス件数は、1日・1IPアドレス当たり9,824.7件と、平成23年以降、増加の一途をたどっており(前年同期比5%増)、その大部分を海外を送信元とするアクセスが占めている。
- ランサムウェアの被害情勢・「RaaS」を中心とした攻撃者の相互分担状況
- ランサムウェアとは、感染すると端末等に保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、そのデータを復号する対価(金銭又は暗号資産)を要求する不正プログラムであり(図表2)、ランサムウェアによって流出したとみられる事業者等の財務情報や個人情報等が、ダークウェブ上のリークサイトに掲載されていたことが確認されている。
- サイバー特別捜査部による事案捜査及び実態解明により、ランサムウェアの開発・運営を行う者(Operator)が、攻撃の実行者(Affiliate)にランサムウェア等を提供し、その見返りとして身代金の一部を受け取る態様(RaaS:Ransomware as a Service)も確認された。さらに、標的企業のネットワークに侵入するための認証情報等を売買する者(IAB: Initial Access Broker)も存在するように、複数の関与者が役割を分担してサイバー攻撃を成り立たせている。その結果、攻撃の実行者が技術的な専門知識を有する必要もなくなるなど、RaaSを中心とした攻撃者の裾野の広がりがランサムウェアの被害を拡大させている背景の一つとして指摘されている。
- また、ランサムウェアの手口としては、データの暗号化のみならず、データを窃取した上、「対価を支払わなければ当該データを公開する」などと対価を要求する二重恐喝が多くを占めている。
- 令和6年6月、出版大手企業は、同社のサーバがランサムウェアを含む大規模な攻撃を受けたと発表した。この攻撃により、同社が提供するウェブサービスが広く停止したほか、書籍の流通等の事業に影響が発生した。同年8月、同社は、この攻撃により25万人分を超える個人情報や企業情報が漏えいしたことが確認されたこと及び同年度決算において、調査・復旧費用等として30億円を超える損失を計上する見込みであることを発表した
- AIをめぐる情勢
- 現在急速に一般社会で利用が広がっているAIについても、様々な便益をもたらすことが期待される一方で、不正プログラム、フィッシングメール、偽情報作成への悪用、兵器転用、機密情報の漏えいといった、AIを悪用した犯罪のリスクや安全保障への影響が懸念されている。さらに、AIを悪用することで専門知識のない者でもサイバー攻撃に悪用し得る情報へのアクセスが容易になると考えられている。実際、警察庁情報技術解析部門の分析により、一般的な生成AIサービスでも、悪意あるプログラムを作成できることが判明したほか、生成AIを利用して不正プログラムを作成した容疑で、逮捕事案も発生している。
- インターネット空間を悪用した犯罪に係る脅威情勢
- 情報通信技術の著しい発展や、日常生活や経済活動へのサイバー空間の浸透は社会に様々な便益をもたらす反面、サイバー空間を舞台とした犯罪をはじめ、新たな治安課題を生み、また深刻化させている。
- インターネット上で提供される技術・サービスの中には、犯罪インフラとして悪用され、犯罪の実行を容易にし、あるいは助長するものも存在している。
- 例えば、インターネット上での自由な活動とプライバシー保護等の目的で利用される匿名化技術が活用されたダークウェブには、ランサムウェアにより窃取された情報や児童ポルノ画像、専門的な知識を持たなくともサイバー攻撃を可能にするためのツールキット等が掲載されるなどしており、サイバー特別捜査隊(当時)による実態解明の結果、中国人グループがフィッシングで窃取した情報をダークウェブ上で売買していたとみられる事案が明らかとなっている。
- 実際、令和6年7月にサイバー特別捜査部等からなる合同捜査本部が検挙した、インターネットバンキングに係る不正送金事案(第2部2(2)参照)においても、その犯行グループの指示役は、ダークウェブ上に存在するマーケットで流通していた、インターネットバンキングの識別符号(IDやパスワード)を入手した可能性がある。
- また、多くの国民が利用するSNSについても犯罪インフラとして悪用される例が見られる。例えば、各種犯罪により得た収益を吸い上げる中核部分が匿名化されている、SNSを通じるなどしてメンバー同士が緩やかに結びついているといった特徴を有する「匿名・流動型犯罪グループ」が、SNSで高額な報酬を示唆して犯罪の実行犯を募集して、特殊詐欺等を敢行している実態が見られるほか、SNSを使用した非対面型の投資詐欺やロマンス詐欺、フィッシングによるものとみられるインターネットバンキングに係る不正送金被害においても、同グループの関与がうかがわれている。
- さらに、近年は、SNS上での特定の個人に対する誹謗中傷も社会問題化しており、令和6年上半期に検挙されたインターネット上での名誉毀損罪及び侮辱罪は合計で217件となっており、増加傾向にある。
- このように現代においては、ありとあらゆる犯罪がインターネット空間を悪用しているともいえる状況であり、その結果、令和6年上半期におけるサイバー犯罪1の検挙件数は5,715件に、サイバー事案2の検挙件数は1,396件に達している。
- また、暗号資産については、利用者の匿名性が高く、その移転がサイバー空間において瞬時に行われるという性質から、犯罪に悪用されたり、犯罪収益等が暗号資産の形で隠匿されたりするなどの実態が見られる。特に、海外の暗号資産交換業者で取引される暗号資産の中には、移転記録が公開されず、追跡が困難で、マネー・ローンダリングに利用されるおそれが高いものも存在する。
- 警察においては、警察庁サイバー警察局がサイバー政策の推進における中心的な役割を、サイバー特別捜査部が重大サイバー事案3への対処を担い、都道府県警察において被害相談の受付・捜査・対策等を推進する役割を担っている。
- また、サイバー事案のうち、捜査に当たり高度な専門的知識及び技術を要さないものについては、各事件主管部門において主体的に捜査を行うほか、サイバー部門が各事件主管部門を適切に支援することとされている。
- 違法・有害情報に係る情勢
- インターネット上には、児童ポルノ、規制薬物の広告等の違法情報のほか、違法情報には該当しないものの、犯罪や事件を誘発するなど公共の安全と秩序の維持の観点から放置することのできない有害情報が存在する。
- 近年SNS上には、匿名・流動型犯罪グループ等による犯罪の実行者を直接的かつ明示的に誘引等(募集)する情報(犯罪実行者募集情報)が氾濫しており、応募者らにより実際に強盗や特殊詐欺等の犯罪が敢行されるなど、この種情報の氾濫がより深刻な治安上の脅威になっている。
- 実際、令和6年4月から5月までの間における匿名・流動型犯罪グループによるものとみられる資金獲得犯罪5のうち、主な資金獲得犯罪6の検挙人員508人中、SNSでの犯罪実行者募集情報に応募する形で犯行に関与した者は155人と、全体の5%を占めている。
- また、令和6年1月1日に発生した能登半島地震においては、インターネット上において、過去の別場面に酷似した画像を添付しての投稿や、存在しない住所を記載し不確かな救助を呼び掛ける投稿等が多数拡散されたほか、SNS上において、QRコードを利用した義援金を募る送金詐欺も確認された。
警察庁 犯罪統計資料(令和6年1~8月分)
- 令和6年1~8月の刑法犯総数について、認知件数は480,939件(前年同期456,115件、前年同期比+5.4%)、検挙件数は180,457件(169,181件、+6.7%)、検挙率は37.5%(37.1%、+0.4P)
- 凶悪犯の認知件数は4,580件(3,537件、+29.5%)、検挙件数は3,876件(2,897件、*33.8%)、検挙率は84.6%(81.9%、+2.7P)、粗暴犯の認知件数は38,281件(39,024件、▲1.9%)、検挙件数は30,924件(30,983件、▲0.2%)、検挙率は80.8%(79.4%、+1.4P)、知能犯の認知件数は40,144件(31,332件、+28.1%)、検挙件数は11,800件(12,290件、▲4.0%)、検挙率は29.4%(39.2%、▲9.8%)、風俗犯の認知件数は11,607件(6,254件、+85.6%)、検挙件数は8,988件(4,443件、+102.3%)、検挙率は77.4%(71.0%、+6.4P)
- 詐欺の認知件数は37,049件(28,878件、+28.3%)、検挙件数は9,764件(10,523件、▲7.2%)、検挙率は26.4%(36.4%、▲10.0P)
- 万引きの認知件数は65,056件(61,499件、+5.8%)、検挙件数は43,575件(40,647件、+7.2%)、検挙率は67.0%(66.1%、+0.9P)
- 特別法犯総数について、検挙件数は41,270件(44,763件、▲7.8%)、検挙人員は33,066人(36,670人、▲9.8%)
- 入管法違反の検挙件数は3,922件(3,839件、+2.2%)、検挙人員は2,675人(2,679人、▲0.1%)、軽犯罪法違反の検挙件数は4,306件(5,024件、▲14.3%)、検挙人員は4,359人(4,952人、▲12.0%)、迷惑防止条例犯の検挙件数は3,657件(6,769件、▲46.0%)、検挙人員は2,693人(5,218人、▲48.4%)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は2,700件(2,087件、+29.4%)、検挙人員は2,084人(1,645人、+26.7%)、不正アクセス禁止法違反の検挙件数は281件(299件、▲6.0%)、検挙人員は100人(79人、+26.6%)、不正競争法違反の検挙件数は20件(34件、▲41.2%)、検挙人員は40人(40人、±0%)、銃刀法違反の検挙件数は2,974件(3,183件、▲6.6%)、検挙人員は2,537人(2,670人、▲5.0%)、大麻取締法違反の検挙件数は4,571件(4,623件、▲1.1%)、検挙人員は3,631人(3,806人、▲4.6%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は5,301件(4,889件、+8.4%)、検挙人員は3,576人(3,409人、+4.9%)
- 来日外国人による 重要犯罪・重要窃盗犯 国籍別 検挙人員 対前年比較について、総数538人(410人、+31.2%)、ベトナム148人(141人、+5.0%)、ブラジル38人(27人、+40.7%)、フィリピン33人(14人、+135.7%)、スリランカ22人(10人、120.0%)、中国77人(47人、62.8%)、韓国・朝鮮20人(17人、+17.6%)、パキスタン18人(5人、+260.0%)、インド12人(10人、20.0%)、アメリカ12人(6人、+100.0%)
- 暴力団犯罪(刑法犯)罪種別 検挙件数・検挙人員 対前年比較、刑法犯総数について、検挙件数は6,153件(6,149件、+0.1%)、検挙人員は3,223人(3,857人、▲16.4%)
- 強盗の検挙件数は54件(75件、▲28.0%)、検挙人員は105人(158人、▲33.5%)、暴行の検挙件数は263件(383件、▲31.3%)、検挙人員は240人(355人、▲32.4%)、傷害の検挙件数は523件(666件、▲21.5%)、検挙人員は628人(756人、▲16.9%)、脅迫の検挙件数は190件(220件、▲13.6%)、検挙人員は193人(197人、▲2.0%)、恐喝の検挙件数は211件(237件、▲11.0%)、検挙人員は230件(296件、▲22.3%)、窃盗の検挙件数は3,114件(2,682件、+16.1%)、検挙人員は449人(541人、▲17.0%)、詐欺の検挙件数は1,013件(1,088件、詐欺6.9%)、検挙人員は678人(845人、▲19.8%)、賭博の検挙件数は48件(17件、+182.4%)、検挙人員は74人(68人、+8.8%)
- 暴力団犯罪(特別法犯)主要法令別 検挙件数・検挙人員 対前年比較、特別法犯総数について、検挙件数は2,796件(3,134件、▲10.8%)、検挙人員は1,821人(2,191人、▲16.9%)
- 入管法違反の検挙件数は20件(14件、+42.9%)、検挙人員は20人(12人、+66.7%)、軽犯罪法違反の検挙件数は33件(53件、▲37.7%)、検挙人員は32人(40人、▲20.0%)、迷惑防止条例違反の検挙件数は44件(45件、▲2.2%)、検挙人員は42人(45人、▲6.7%)、暴力団排除条例違反の検挙件数は37件(13件、+184.6%)、検挙人員は50人(26人、+92.3%)、銃刀法違反の検挙件数は44件(60件、▲26.7%)、検挙人員は27人(42人、▲35.7%)、麻薬等取締法違反の検挙件数は162件(137件、+18.2%)、検挙人員は65人(65人、±0%)、大麻取締法違反の検挙件数は496件(675件、▲26.5%)、検挙人員は295人(458人、▲35.6%)、覚せい剤取締法違反の検挙件数は1,587件(1,745件、▲9.1%)、検挙人員は1,019人(1,181人、▲13.7%)、麻薬特例法違反の検挙件数は60件(78件、▲23.1%)、検挙人員は19人(38人、▲50.0%)
警察庁 令和6年7月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について
- 認知状況(令和6年1月~7月)
- SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数(前年同期比)は5,967件(+4,360件)、被害額(前年同期比)は 約1億円(+603.1億円)、検挙件数は77件、検挙人員は44人
- SNS型投資詐欺の認知件数(前年同期比)は4,099件(+3,294件)、被害額(前年同期比)は約4億円(+489.3億円)、検挙件数は43件、検挙人員は19人
- SNS型ロマンス詐欺の認知件数(前年同期比)は1,868件(+1,066件)、被害額(前年同期比)は約8億円(+113.9億円)、検挙件数は34件、検挙人員は25人
- SNS型投資詐欺の被害発生状況
- 被害者の性別は、男性9%、女性47.1%
- 被害者の年齢層では、男性は60代7%、50代23.8%、70代17.6%の順、女性は50代29.1%、60代24.0%、70代16.0%の順
- 被害額の分布について、1億円超は男性34件、女性30件
- 被疑者が詐称した職業について、投資家8%、その他著名人16.2%、会社員4.5%の順
- 当初接触ツールについて、男性は4%、FB20.3%、インスタグラム18.0%の順、女性はインスタグラム34.7%、LINE18.2%、FB12.0%の順
- 被害時の連絡ツール(欺罔が行われた主たる通信手段)について、2%、被害気にの主たる交付形態について、振込88.4%、暗号資産9.4%など
- 被害者との当初の接触手段について、バナー等広告7%、ダイレクトメッセージ23.7%、グループ招待8.5%など
- 被害者との当初の接触手段(「バナー等広告」及び「ダイレクトメッセージ」)の内訳(ツール別)について、バナー等広告では、インスタグラム2%、FB18.6%、投資のサイトの順、ダイレクトメッセージでは、インスタグラム28.8%、FB21.2%、LINE18.4%、X9.1%、マッチングアプリ6.6%、TikTok3.9%など
- SNS型ロマンス詐欺の被害発生状況
- 被害者の性別は、男性9%、女性38.1%
- 被害者の年齢層では、男性は50代5%、60代26.9%、40代21.2%の順、女性は40代29.3%、50代27.1%、60代17.9%の順
- 被害額の分布について、1億円超は男性3件、女性12件
- 被疑者が詐称した職業について、会社員7%、投資家10.5%、会社役員6.3%、芸術・芸能関係4.1%、軍関係3.4%の順
- 当初接触ツールについて、男性はマッチングアプリ9%、FB23.9%、インスタグラム15.8%の順、女性はマッチングアプリ34.7%、インスタグラム34.3%、FB17.6%の順
- 被害時の連絡ツール(欺罔が行われた主たる通信手段)について、3%、被害金の主たる交付形態について、振込77.4%、暗号資産16.9%、電子マネー4.8%など
- 被害者との当初の接触手段について、ダイレクトメッセージ1%、その他のチャット7.2%、オープンチャット3.1%など
- 被害者との当初の接触手段(「ダイレクトメッセージ」)の内訳(ツール別)について、マッチングアプリ5%、インスタグラム27.1%、FB23.8%、X5.2%、TikTok4.3%、LINE3.9%など
- 金銭等の要求名目(被害発生数ベース)について、投資名目5%、投資以外29.5%、金銭等の要求名目(被害額ベース)について、投資名目82.9%、投資以外17.1%
警察庁 令和6年7月末の特殊詐欺認知・検挙状況等について
- 令和6年1月~7月の特殊詐欺全体の認知件数は10,717件(前年同期10,974件、前年同期比▲2.3%)、被害総額は0億円(234.9億円、+20.5%)、検挙件数は3,171件(3,904件、▲18.8%)、検挙人員は1,108人(1,247人、▲11.1%)
- オレオレ詐欺の認知件数は2,672件(2,412件、+8%)、被害総額は138.6億円(71.5億円、+194.0%)、検挙件数は810件(1,221件、▲33.7%)、検挙人員は408人(527人、▲22.6%)
- 預貯金詐欺の認知件数は1,272件(1,559件、▲18.4%)、被害総額は8億円(22.5億円、▲43.1%)、検挙件数は924件(842件、+9.7%)、検挙人員は245人(267人、▲8.2%)
- 架空料金請求詐欺の認知件数は2,842件(2,947件、▲3.6%)、被害総額は1億円(79.4億円、▲13.0%)、検挙件数は183件(171件、+7.0%)、検挙人員は116人(57人、+103.5%)
- 還付金詐欺の認知件数は2,461件(2,405件、+3%)、被害総額は37.3億円(27.6億円、+35.1%)、検挙件数は439件(571件、▲23.1%)、検挙人員は94人(101人、▲6.9%)
- 融資保証金詐欺の認知件数は182件(111件、+0%)、被害総額は1.4億円(1.6億円、▲13.7%)、検挙件数は11件(15件、▲26.7%)、検挙人員は9人(8人、+12.5%)
- 金融商品詐欺の認知件数は57件(113件、▲49.6%)、被害総額は0億円(11.8億円、▲65.8%)、検挙件数は4件(14件、▲71.4%)、検挙人員は1人(18人、▲94.4%)
- ギャンブル詐欺の認知件数は11件(12件、▲8.3%)、被害総額は8億円(0.4億円、+111.0%)、検挙件数は1件(0件)、検挙人員は0人(0人)
- キャッシュカード詐欺盗の認知件数は849件(1,376件、▲38.3%)、被害総額は0億円(19.1憶円、▲47.6%)、検挙件数は787件(1,066件、▲26.2%)、検挙人員は203人(267人、▲24.0%)
- 組織的犯罪処罰法違反の検挙件数は233件(121件、+6%)、検挙人員は103人(38人、+171.1%)、口座開設詐欺の検挙件数は438件(408件、+7.4%)、検挙人員は254人(232人、+9.5%)、盗品等譲受け等の検挙件数は0件(2件)、検挙人員は0人(1人)、犯罪収益移転防止法違反の検挙件数は2,098件(1,557件、+34.7%)、検挙人員は1,571人(1,207人、+30.2%)、携帯電話契約詐欺の検挙件数は98件(76件、+28.9%)、検挙人員は99人(80人、+23.8%)、携帯電話不正利用防止法違反の検挙件数は14件(15件、▲6.7%)、検挙人員は8人(13人、▲38.5%)
- 被害者の年齢・性別構成について、特殊詐欺全体では、60歳以上6%、70歳以上58.0%、男性37.3%:女性62.7%、オレオレ詐欺では60歳以上80.5%、70歳以上72.6%、男性29.6%:女性70.4%、預貯金詐欺では60歳以上99.3%、70歳以上96.1%、男性13.4%:女性86.6%、架空料金請求詐欺では60歳以上58.4%、70歳以上33.6%、男性58.4%:女性41.6%、特殊詐欺被害者全体に占める高齢被害者(65歳以上)の割合について、特殊詐欺全体では70.1%(男性32.2%、女性67.8%)、オレオレ詐欺 77.8%(21.0%、79.0%)、預貯金詐欺 98.3%(13.4%、86.6%)、架空料金請求詐欺 46.9%(64.6%、35.4%)、還付金詐欺 77.6%(36.4%、63.6%)、融資保証金詐欺 4.6%(62.5%、37.5%)、金融商品詐欺 47.4%(74.1%、25.9%)、ギャンブル詐欺 54.5%(66.7%、33.3%)、交際あっせん詐欺 35.0%(100.0%、0.0%)、その他の特殊詐欺 17.1%(55.0%、45.0%)、キャッシュカード詐欺盗 98.0%(23.4%、76.6%)
警察庁 チャイルドシートの使用状況等について
- 使用状況(調査:全国99箇所・6歳未満の乳幼児13,035人を対象)
- 使用率2%(前回比+2.2ポイント)
- 取付け・着座状況
- 適切な取付け割合 8%
- 適切な着座割合 7%
- 今後の対策
- チャイルドシートの正しい使用の徹底を図るため、地方公共団体、関係機関・団体等(特に、幼稚園、保育所、認定こども園、病院、販売店等)と連携した保護者等に対する広報啓発・指導の推進
- 妊婦及びその配偶者に対する取組の推進、使用率が他の年齢より低調である比較的年齢が高い幼児の保護者に対する取組の強化
- 体格等の事情によりシートベルトを適切に着用させることができない6歳以上の子供へのチャイルドシート使用に係る広報啓発
【法務省】
※現在、該当の記事はありません。
【消費者庁】
【2024年11月】
消費者庁 第6回公益通報者保護制度検討会
▼ <資料1-2>通報行為の刑事免責について
- 中間論点整理「2 公益通報を阻害する要因への対処」(4)
- 通報行為の刑事免責については、中間論点整理で、以下のとおり記載されている。
- 「現行法では、通報行為の民事免責は規定されているものの、刑事免責が規定されておらず、公益通報を行ったことについて、あらゆる責任が免除されるのか予測可能性に欠けている。このため、刑事免責の明文化を検討してはどうかとの意見があった。
- 具体的には、関係する刑罰として、刑法の秘密漏示罪、名誉毀損罪、信用毀損罪の他、特別法の守秘義務違反時の罰則等があり、これらの構成要件との関係を整理する必要があるとの提案があった。」
- 本資料では、公益通報を行った場合に該当可能性がある犯罪類型を整理する。
- 免責の対象として検討すべき犯罪類型
- 秘密漏示罪(刑法第134条)その他の守秘義務違反
- 定義等
- 他人の秘密を知っている者が、正当な理由なく、業務上取り扱った事項について本人以外の者に漏らす行為は、秘密漏示罪の構成要件に該当する。「秘密を漏らす」とは、まだ知らない他人に秘密を告知することをいい、本人以外の他人に告げた場合、相手方は多数である必要はない。また、漏示の方法(書面、口頭等)も問わない。
- 国家公務員法第100条の守秘義務の対象となる「秘密」とは、単に形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものと解されている(最小二決昭和52年12月19日刑集31巻7号1053頁)。地方公務員法第34条の守秘義務の対象となる「秘密」も同様である。また、このほかにも、一定の職業について守秘義務を規定する法律もある。
- 通報行為の構成要件該当性
- 公益通報の対象となる通報対象事実は犯罪対象事実やその他の法令違反行為という反社会性が明白な行為であるため、国家公務員法及び地方公務員法との関係では、「秘密」として保護するに値しないと考えられることから、通常、これらの事実について公益通報をしても、守秘義務違反を問われる可能性は低いと考えられる。もっとも、公益通報に当たって、通報対象事実を明らかにするために必要がない情報で、例えば第三者の営業秘密や国の安全に関わる情報などを漏らした場合には、守秘義務違反に問われる可能性もある。
- 他方で、例えば刑事弁護人の守秘義務などの場合には、犯罪事実に関する内容であっても秘密としての保護対象となると考えられ、これを漏示すれば秘密漏示罪に該当すると考えられる。
- 定義等
- 名誉毀損罪(刑法第 230 条第 1 項)
- 定義等
- 公然と事実を摘示し、他人の名誉を毀損する行為は、名誉毀損罪に該当する。「公然と」とは不特定又は多数人が認識できる状態をいうとされるが (最判昭和36年10月13日刑集15巻9号1586頁)、摘示の相手方が特定・少数の場合でも伝播可能性がある場合には公然性が認められる(大判大正8年4月18日新聞1556号25頁、最判昭和34年5月7日刑集13巻5号641頁)。摘示の方法は口頭や文書等問われず、人の社会的評価を害するに足りる事実を摘示した場合には、「事実を摘示し」たとして、名誉毀損罪の構成要件に該当する可能性がある。
- 刑法第230条の2(公共の利害に関する場合の特則)
- 名誉毀損罪の構成要件に該当する行為について、摘示された事実が「公共の利害に関する」ものであり摘示行為の目的が「専ら公益を図ることにあった」場合には摘示された事実が真実であることの証明があったときは罰しない旨が刑法第230条の2第1項において規定されている。また、真実であることの証明がない場合でも、真実相当性があれば刑事責任は負わないと解釈されている。
- 通報行為の構成要件該当性及び刑法第230条の2による免責の可能性
- 公益通報のうち、1号通報及び2号通報については「公然と」事実を摘示したと認められず、名誉毀損罪の構成要件に該当しない場合が多いと考えられる。他方、3号通報については、通報先からの伝播可能性が認められる場合があり得るほか、インターネット上で公表した場合には、「公然と」事実を摘示したとして、名誉毀損罪の構成要件に該当する可能性がある。
- 刑法第230条の2との関係については、公益通報の要件である「不正の目的でないこと」は、「不正の利益を得る目的」や「他人に不正の損害を加える目的」の通報と認められなければ足り、専ら公益を図る目的の通報と認められることまで要するものでない。したがって、公益通報の要件を満たす通報行為であっても、刑法第230条の2第1項の要件を満たさない可能性がある。
- 公益通報者保護法による保護を受け得る事案では、通常は名誉毀損の違法性等を阻却することとなると考えられるものの(消費者庁 参事官(公益通報・協働担当)室『逐条解説 公益通報者保護法〔第2版〕』(商事法務、2023年)79頁)、以上のとおり、必ずしも明らかでない面も否定できない。
- 定義等
- 信用毀損罪・偽計業務妨害罪
- 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損する行為は信用毀損罪の構成要件に該当する(刑法第233条前段)。また、虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて人の業務を妨害する行為は、偽計業務妨害罪の構成要件に該当する(刑法第233条後段)。「虚偽の風説を流布」とは、客観的事実に反する一定の事項を不特定又は多数の人に伝播させることをいい、「偽計」とは、人を欺き、あるいは人の錯誤・不知を利用したり人を誘惑したりするほか、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いることをいう。
- 通常、公益通報に該当する場合には、「不正の目的でないこと」及び、通報対象事実があると思料し、又は真実相当性があることが前提となるため、「虚偽の風説を流布」「偽計」のいずれにも該当せず、又はこれらに関する故意が阻却されることが多いと考えられる。なお、通報内容が事後的・客観的にみて虚偽であったとしても、通報時に疑いが存在したのであれば「偽計」に該当しないと判断した裁判例がある(大阪地判平成30年2月26日TKC25564275)。
- 【裁判例】大阪地判平成30年2月26日TKC2556427
- (要旨)本件書面送付行為時には,医療法54条に違反していると疑われる状況が存在し,上記のとおり,大阪市保健所の担当職員による調査も医療法54条に違反しているという疑いに基づいたものであることからすると,本件調査に至る過程において同担当職員に錯誤があったとは認められない。加えて,本件書面では事実の有無について断定的な表現が用いられているが,行政機関に対して行政調査を求める通報文において,疑いの程度に応じた表現を求めるのは酷な面があると解されることも考え合わせると,本件書面送付行為が偽計業務妨害罪にいう「偽計」に該当すると認めることはできない。
- なお,検察官は,本件書面の記載内容が事後的・客観的にみて虚偽であったことを根拠に,本件書面送付行為が「偽計」に該当する旨主張していると解されるが,医療法54条違反を理由に医療法63条に基づく調査を求める通報を行っている本件のような事案において,通報の内容に係る疑いが通報時に存在したにもかかわらず,その後の調査や捜査によって通報の内容が事実と異なると判明した場合に,直ちに当該通報が「偽計」に該当すると解するのは,「偽計」の範囲が広範になりすぎ相当ではない。
- 背任罪(刑法第247条)
- 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、背任罪(刑法第247条)の構成要件に該当する。
- 公益通報は 「不正の目的でないこと」が要件であるが、背任罪との関係では 「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」(図利加害目的4)該当性が問題となり、それぞれの目的要件が個々の状況においてどのように解釈されるか次第である。
- 個人情報保護法違反
- 個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業員又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用する行為は、個人情報保護法第179条の構成要件に該当する。
- 公益通報( 「不正の目的でないこと」が要件である。)に該当する場合には、個人情報保護法違反における「自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的」が否定されることが多いと考えられるが、それぞれの目的要件が個々の状況においてどのように解釈されるか次第である。
- 秘密漏示罪(刑法第134条)その他の守秘義務違反
- 検討事項
- 上記の犯罪類型のうち、公益通報のために法律で免責を規定すべきものはあるか
▼ <資料1-3>濫用的通報について
- 中間論点整理「2 公益通報を阻害する要因への対処」(5)
- 濫用的通報については、中間論点整理で、以下のとおり記載されている。
- 「日本の大企業の内部通報窓口には、公益通報には該当しない通報が多数なされており、従事者の負担が非常に大きく、重要な内部通報が見逃されないようにする必要があること、また、EU指令第23条には、通報者が故意に虚偽の通報を行った際の罰則が規定されていることを踏まえ、濫用的通報や虚偽通報に対し、罰則を設けるべきとの意見があった。
- 上記意見について、悪性の強さが明らかで、公益通報者保護制度を害するような行為を明確に処罰対象とすることは、制度の健全性を保つ上でメリットになる一方、新設した罰則の存在自体によって、公益通報をしようとする労働者が萎縮するというデメリットが生じるということもあり得、メリットとデメリットの両方について今後更に検討する必要があるとの提案があった。また、刑法には、虚偽告訴罪、名誉毀損罪及び偽計業務妨害罪があることから、これらの犯罪規定との関係を整理する必要があるとの提案もあった。」
- そこで本資料では、「濫用的通報」として考えられる行為及びこれに対応する犯罪類型等を整理する。
- 「濫用的通報」として考えられる行為
- 通報内容が虚偽であると知りながら行う通報
- 事業者又は被通報者の社会的評価を低下させる内容であり、通報先について「公然」性がある場合には、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)が成立し得る。
- 通報先が捜査機関等である場合には、虚偽告訴罪 (刑法第172条)が成立し得る。
- 偽計業務妨害罪(刑法第233条後段)が成立し得る。
- 既に是正され、解決した事案であることを知りながら、専ら自己の利益を実現するために行う通報
- 「不正の目的」であるとして公益通報該当性が否定される可能性がある。
- 事業者又は被通報者の社会的評価を低下させる内容であり、通報先について「公然」性がある場合には、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)が成立し得る。
- 軽微な事実を殊更誇張して繰り返し行う通報
- 通報対象事実に該当しなければ、その通報は公益通報に該当しない。
- 比較的軽微であっても、犯罪行為若しくは過料対象行為又は最終的に刑罰若しくは過料につながる行為であれば、通報対象事実に該当し、その通報は公益通報に該当し得る。誇張して通報しても、虚偽でない限り、直ちに犯罪には該当しないと考えられる。
- 通報窓口担当者に対して威圧的な態度で行う通報
- 態様が深刻であれば、侮辱罪 (刑法第231条)、威力業務妨害 (刑法第234条)、脅迫罪(刑法第222条第1項)、強要罪(刑法第223条)が成立し得る。
- (参考)現行法第10条の規定と解釈
- 現行法第10条では、「第三条各号及び第六条各号に定める公益通報は、他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努めなければならない」と規定されている。
- 法が定める「公益通報」は、国民の生命、身体、財産等の利益の保護に関わる法令に違反する犯罪行為やその他の法令違反行為を通報するものであり、国民生活の安定や社会経済の健全な発展という公益に資するものである。
- しかし、公益通報に際して、例えば、
- 取引先事業者の営業秘密
- 顧客の個人情報・信用情報
- 国の安全に関わる情報
- などが併せて通報された場合や、窃盗などの犯罪行為が行われた場合には、他人の正当な利益や公共の利益が害されることも考えられる。
- また、軽率に報道機関等のその他の外部通報先に通報した場合には、その内容や通報先の対処の仕方によっては名指しされた事業者やその従業員、取引先事業者等に回復し難い信用上の損害を与える可能性もある。
- このため、公益通報者といえども、可能な限り、他人の正当な利益や公共の利益にも配慮すべきと考えられることから、本条は、本法による保護の対象となる公益通報をする労働者等は、他人の正当な利益又は公共の利益を侵害することのないように努めるべきことが規定されたものである。
- もっとも、個々の事例によっては、他人の正当な利益や公共の利益を全く害さずに通報することが非常に困難な場合もあり得ると考えられることから、本条は努力義務にとどめ、法的義務とはされていないところである。
- 通報内容が虚偽であると知りながら行う通報
▼ <資料2>公益通報者の探索禁止について
- はじめに
- 現行制度上、事業者には通報者の探索を行うことを防止する措置が求められているが、これまでの検討会においては、通報者探索の禁止について、明文規定を設けることが求める意見が多数あったが、慎重な意見もあった。
- また、違反時の罰則については、導入を求める意見もあったが、慎重な意見もあった。
- 禁止に関する主な意見
- 探索行為の結果、通報者が特定されて、嫌がらせを受けることが懸念されるので、それを防ぐためにも探索行為そのものを禁止することを法律の中に明記することが重要(片山委員、志水委員、郷野委員、山口委員)
- 通報したのは君かと聞くのは論外だが、必要な調査はしなければならず、それとどのように切り分けられるかは検討する必要。事業者としては、調査が中途半端にならないような枠組みを検討してもらいたい(土井委員)。
- 内部通報が匿名で行われた場合、事業者が広く情報を集めるためにアンケートを実施することがある。アンケートの実施により内部通報ではなく、アンケートによって不正が申告されたかのように装うことも可能なため、結果的に通報者の保護にも資することもあるが、仮にこのような正当な調査行為も探索行為に該当するのであれば、企業が自主的かつ適正に社内調査を実施することが困難になる恐れがある。通常の調査行為が法令違反とならないように禁止される行為の範囲を明確かつ限定的に定めるべき(赤堀委員)。
- 違反時の罰則に関する主な意見
- 重要性から考えると、不利益取扱いの罰則を規定した場合でも探索行為に罰則を設けるべき。不利益取り扱いにつながらなかったとしても探索行為の結果、プライバシー侵害で通報者に関する情報が漏えいしてしまう恐れがある。従事者の守秘義務違反について刑事罰が設けられているので、そのバランスからいっても事業体が正当ではない理由で探索行為をした場合には、罰則が必要(柿﨑委員)。
- 通報者を探索する行為に対する行政措置または刑事罰を設けることについて慎重に検討すべき。既に通報者を特定できる情報を漏えいした従事者に対する刑事罰が導入されており、それで通報者保護の目的は十分に達成されている(赤堀委員)。
- 探索に関しては、報道の関係もあり、検討の必要性があることは理解できるが、本法律の最も重い違法性を備えたものとして刑事罰の対象にするかに関しては、検討を要する問題だと感じる。比較法に関して見ると、妨害に関しては、海外との比較法の整理があったが、探索に関しては、比較法的に知見が得られる状況にはないように感じる。不利益取扱いの罰則に関して、直接罰方式が支持されるのは、本法律の趣旨を最も害する違法性の重さによるからである。事業者にとっての萎縮効果を回避する要件立ては、既存の法律の要件に沿って検討をしていくのがよいのではないかと考える。
- 探索に関する罰則の導入に賛成される方々からは、必ずしも不利益取扱いにつながらずともプライバシーの侵害がある、事実上の嫌がらせが起きることが懸念されると指摘があった。問題状況は分かるが、それが本法律の最も重い違法性を備えたものとして刑事罰の対象にするかに関しては検討を要する問題だと感じる。(樋口委員)。
- 禁止に関する主な意見
- 禁止規定例と考え方
- 以下のような規定例が考えられる。
- 第●条 第二条第一項各号に定める事業者は、正当な理由がなく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をしてはならない。
- 「公益通報者を特定することを目的とする行為」とは、「公益通報者である旨を明らかにすることを要求すること」のほかに、例えば、公益通報者が誰かを知っていそうな者に、心当たりがあるか質問する行為や、メールの履歴やその他の資料を収集・閲覧する行為などが考えられる。
- 「正当な理由」の例としては、通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合(例えば、通報窓口において調査の実効性確保等のために所属部署や違反に関する具体的な状況を説明するよう促す場合)や匿名による通報者を不利益な取扱いや探索行為から保護するために必要と考えられる場合に顕名を名乗るよう促すこと等が考えられる。
- なお、通報された違法行為を調査するために、社内外の関係者にヒアリングやアンケートを実施したり、関係資料を収集・閲覧したりすること自体は、そもそも「公益通報者を特定することを目的とする行為」に該当しない。
- 以下のような規定例が考えられる。
- 罰則規定の許容性
- 現行制度
- 現行法上、事業者が指定した従事者には、公益通報者を特定させる情報の守秘義務が規定されており、当該情報を故意に漏らした場合には、罰則対象となっている (法12条、21条)。
- 従事者として指定されていない者が、従事者から公益通報者を特定させる情報を聞き出すことは、教唆犯として罰則対象となり得る。
- 従事者以外の職場の上司等には法律上の守秘義務がなく、公益通報者を特定する情報を知って漏らした場合であっても、罰則対象ではない。
- 検討
- 現行規定を踏まえ、公益通報者の探索行為自体について、罰則に値する反社会性の高い行為と言えるか。
- 公益通報を理由とする不利益取扱いに罰則を導入した場合、不利益取扱いに至らない場合であっても、探索行為単独で罰則を導入することは許容されるか。
- 公益通報者の探索行為は、不利益取扱いの予備行為といえるが、我が国において、予備行為に罰則を規定している例は、基本犯が重大な犯罪である場合など極めて限定的であるが、この点をどう考えるか。
- 現行制度
▼ <資料3>公益通報を理由とする不利益取扱いに対する刑事罰について
- 中間論点整理「3.(1)不利益取扱いの抑止」の記載
- 不利益取扱いの抑止について、中間論点整理には、以下の記載がある。
- 「平成18年4月の公益通報者保護法施行後、通報者が公益通報をしたことを理由に不利益取扱いを受けた事案が多数生じており、現行の民事ルールだけでは、不利益取扱いに対する抑止の効果が不十分であるとの指摘がなされてきた。
- 以下の理由から、公益通報を理由とする不利益取扱いに対する刑事罰が必要との意見が多かった。
- 従事者の守秘義務違反に対して刑事罰がある一方、公益通報を理由とする不利益取扱いを行った事業者及び個人には罰則がないことは不均衡であり、法益侵害の視点からの整合性がとれない。
- 事業者内に内部通報制度が存在していても、通報後の不利益取扱いのおそれが十分に払拭されていないため、不正を発見しても内部通報に踏み切れない状況がある。
- EU指令を含め、諸外国においては法で保護される通報を理由とする不利益取扱いに罰則を設けている国が多い。
- 日本議長国下のサミットで承認されたG20ハイレベル原則の原則8で、「報復行為を行った者に対し、効果的で、相応かつ抑止力のある制裁を科す」ことが求められており、G20ハイレベル原則を取りまとめた日本においても、この原則を実施する必要がある。
- 「ビジネスと人権作業部会」から、公益通報者保護法の見直しの検討において、公益通報者に報復した事業者に罰則を導入するよう勧告を受けており、人権尊重の観点からも国際的な要請に応える必要がある。」
- 公益通報を理由とする不利益取扱いに罰則を規定する場合の考え方
- 労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法等の労働法では、違法行為を行政機関に申告したことを理由とする不利益な取扱いを禁止し、罰則を規定している(以下、この項目において「労働基準法等」という。)。
- この点、労働基準法等では、その多くの規定について、違反が直罰対象となっており、強制力をもって、これらの法令の義務の履行を確保している。また、直罰の導入以外に法執行の実効性を確保する手段として、法令違反について行政機関への申告を理由とする不利益な取扱いに罰則を課し、当該申告を妨げる要因を排除している。
- 一方、公益通報者保護法は、保護される通報先が事業者内部、権限を有する行政機関、報道機関等と幅広い上、通報対象事実についても、必ずしも直罰で担保された法令違反のみならず、間接罰が規定されているものも多くある中、公益通報を理由とする不利益な取扱いを禁止する一方、罰則は規定せず、民事ルールとして制定された。
- 制定から20年が経過したが、
- 近年においても、通報を理由とする不利益な取扱いが認定された事案があり、依然として、労働者が通報を躊躇する大きな要因となっていること、
- 通報対象事実に関する違反行為は最終的に罰則で担保されており、是正されずに放置された場合、国民生活の安全・安心が脅かされるおそれがあること、
- 人権意識の高まりを背景に、近年の国際的な潮流として、通報を理由とする不利益な取扱いを行った事業者及び個人に対する制裁が求められていること
を踏まえ、国内外において、法制定時よりも公益通報を理由とする不利益な取扱いに対する強い抑止力が求められている。
- 他方で、公益通報者保護法の対象法律は、約500本と多く、通報先ごとに保護要件も異なるため、事業者として公益通報該当性の判断が容易でない場合もあると考えられる。定期異動が頻繁に行われている我が国において、配置転換を含めたあらゆる不利益取扱いに罰則を導入した場合、事業者の人事政策や労務管理に与える萎縮効果や事務負担の増加は極めて大きいことが予想され、慎重な検討を要する。
- 罰則の導入方式を検討するにあたっては、公益通報を理由とする不利益取扱いが、法の趣旨を損なう加害行為であり、仮に、そのような行為が放置されれば、当該事業者内やさらには社会全体において、不正を覚知した者が通報することに萎縮が生じるという、悪質性が高く社会的な影響の大きい行為である点を踏まえる必要がある。強い抑止力が求められていることから、行政命令を挟む間接罰ではなく、直罰方式が相当と考えるがどうか。
- 公益通報を理由とする不利益取扱いに対する罰則の対象
- 労働者について
- 現行法上、労働者に対する不利益取扱いについては、解雇無効が規定されているほか、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いが禁止されており、事実上の嫌がらせ等も禁止の対象に含まれる。これに対し、刑事罰の対象となる不利益取扱いは、当罰性の観点及び明確性の観点から、事業者の意思として行われるもので、不利益であることが客観的に明確で、かつ、労働者の職業人生や雇用への影響の観点から、不利益の程度が比較的大きいものに限定してはどうか。
- ※不利益取扱いの代表的な類型について、労働法における一般的な理解は以下のとおりである。
- 「解雇」は、普通解雇、懲戒解雇、諭旨解雇等がある。
- 「懲戒」は、就業規則上の根拠に基づいて制裁として実施されるものであり、懲戒歴が残る。懲戒事由及び懲戒の種類は事業者によって異なるものの、概ね、(1)懲戒事由としては、職務懈怠、業務命令違反、経歴詐称、職場規律違反等が定められ、(2)懲戒の種類としては、けん責・戒告、減給、出勤停止、降格(降職)、諭旨解雇及び懲戒解雇が定められることが多い。
- 「降格」には、懲戒としての降格のほかに、人事権の行使としての降格がある。人事権の行使としての降格には、役職の低下と、職能資格や資格等級を低下させるものがあるが、特に前者については、権利濫用に当たらない限り使用者の裁量によって行うことができると考えられている。
- 「減給」は、一般的には、懲戒としての減給(企業秩序違反行為に対する制裁として、本来支払われる賃金額から一定額を差し引くこと)を意味する。類似する概念として賃金の減額があり、これには、職務や職位・等級が変更されて賃金が引き下げられる場合、能力や成果の評価に基づいて賃金が減額される場合等がある。
- 現行法上、労働者に対する不利益取扱いについては、解雇無効が規定されているほか、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いが禁止されており、事実上の嫌がらせ等も禁止の対象に含まれる。これに対し、刑事罰の対象となる不利益取扱いは、当罰性の観点及び明確性の観点から、事業者の意思として行われるもので、不利益であることが客観的に明確で、かつ、労働者の職業人生や雇用への影響の観点から、不利益の程度が比較的大きいものに限定してはどうか。
- 派遣労働者について
- 派遣先事業者による派遣労働者に対する不利益な取扱いについては、禁止規定(現第5条第2項)では、労働者派遣契約の解除、派遣元事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いを禁止しており、事実上の嫌がらせ等も含まれる。
- 労働者に対する不利益取扱いと同様の観点から、刑事罰の対象とすべきものはあるか。
- 役員について
- 役員については、令和2年改正によって通報主体に追加されたが、労働者や派遣労働者のように事業者と雇用関係にはなく、不正を是正すべき立場にある。刑事罰の対象とすることの要否については、今後の立法事実も踏まえて検討することとしてはどうか。
- 新たに通報者に追加する者(フリーランス等)について
- フリーランスと事業者(業務委託事業者)との関係は、労働者と使用者との関係に類似する面があるとはいえ、取引関係であり、雇用関係ではないという特殊性がある。公益通報を理由とする取引関係上の不利益な取扱いに対して刑事罰を規定することの要否については、新たに通報主体に追加し、公益通報を理由とする取引関係上の不利益な取扱いを禁止した後の立法事実も踏まえて検討してはどうか。
- 刑事罰を導入した場合、罰則の対象となる者の範囲について
- 公益通報を理由とする不利益取扱いが事業者の意思決定として行われた場合、公益通報が理由であると知って当該意思決定に関与した者は処罰対象となり得る。当該意思決定に関する直接的な権限を有していなくても、刑法第60条から第65条までの規定により処罰対象となり得る。
- また、行為者のほか、事業者(法人又は人)も罰則対象とするため、両罰規定を設けることが考えられるがどうか。
- 労働者について
消費者庁 デジタル時代におけるより良い消費生活を支える信頼の構築に係る官民共創ラウンドテーブル
▼ 資料「Webの同意を考えようプロジェクト」消費者アンケート調査結果と一般社団法人ダークパターン対策協会の取組み
- 「Webの同意を考えようプロジェクト」とは?
- 一消費者として家族や周りの人たちに話を聞いてみても、規約も個人情報の取扱いについてもCookieバナーもほとんどちゃんと読んだことがなく、そのまま同意しているとのこと。Cookieバナーに関しては苛立ちを覚えるので、必ず拒否するようにしているという人も。
- 同意の要件がそもそもEUと日本では違うが、企業の法務視点では安全を求めるために必要がなくても同意をとろうとする傾向が強いという現状がある。一方で、消費者視点では、同意の文言が難しい、字が小さい、先の画面に早く進みたいなどのデザイン的、心理的要因などから読まずに同意をしてしまう「形骸化した同意」を行う人が多いのではないか?また同意を求められる場面が余りにも多すぎたり、同意で読まなければならない文章が分かりづらく、長いということに苛立ちを覚える「同意疲れ」も発生し、この「同意疲れ」がますます「形骸化した同意」を助長しているという「同意問題」が発生していることに対して日本であるべき同意の姿とは何か?を弊社内で研究しはじめたのが「Webの同意を考えようプロジェクト」の起源である
- 同プロジェクトによる消費者アンケートサマリー
- 形骸化した同意、同意疲れに関連する調査結果
- Web同意に「とりあえず同意」をしてしまうと85.2%の人が回答。同意の形骸化、大多数に
- Web同意に関して、「不快に感じた経験がある」と70.0%の人が回答
- Web同意の内容が「難解だと感じる」と87.5%の人が回答
- 利用規約やプライバシーポリシーを「もっと理解しやすくしてほしい」と92.6%が回答
- ダークパターンに関連する調査結果(1)
- ダークパターンという言葉や手法を「知っていた」と78.2%が回答
- また、ダークパターンを「経験したことがる」人は86.0%にものぼる
- ダークパターンの被害を受けた場合、その企業の製品を購入すること、あるいはサービスの利用を継続することに「抵抗がある」と89.4%が回答
- ダークパターンの有無は製品・サービス購入の際の「企業選定の基準になる」と77.0%が回答
- ダークパターンを行っていない企業が一目でわかると、「安心してインターネットが使える」と79.2%が回答
- 過去1年間で、意図しない契約・購入などによる金銭的被害を30.2%の人が経験
- その推定被害総額は、年間約1兆575億円~約1兆6,760億円にものぼる
- ダークパターンに関連する調査結果(2)
- ダークパターンの被害を受けた場合、その企業の製品を購入すること、あるいはサービスの利用を継続することに抵抗はありますか?
- 抵抗がある89.4%
- 抵抗はない10.6%
- ダークパターンを行っていない企業が一目でわかると安心してインターネットが使えますか?
- そう思う79.2%
- そう思わない11.0%
- どちらともいえない/わからない 9.8%
- ダークパターンの有無は、製品・サービスを購入する際の企業選定の基準になりますか?
- そう思う70.0%
- そう思わない12.2%
- どちらともいえない/わからない10.8%
- 過去1年間で、意図しない契約・購入などによる金銭的被害を受けたことはありますか?
- ある30.2%
- ない53.2%
- どちらともいえない/わからない16.6%
- ダークパターンの被害を受けた場合、その企業の製品を購入すること、あるいはサービスの利用を継続することに抵抗はありますか?
- ダークパターンに関連する調査結果(3)
- 意図しない契約・購入などによる金銭的被害の推定被害総額【計算例】
- 一人当たりの年間平均被害額は、
- 有意水準5%で33,670円
- 意水準1%で53,361円
- 日本のインターネット人口:1億400万人のうち、86.0%がダークパターンを経験:8,944万人
- 30.2%の約3,140万人が金銭的被害を受け、一人当たりの1年間の平均被害額をかけると推定被害総額は、年間約1兆575億円~約1兆6,760億円になる。
- 形骸化した同意、同意疲れに関連する調査結果
消費者庁 令和6年度第3回消費生活意識調査結果について
- 「エシカル消費の認知度」について
- 「エシカル消費(倫理的消費)」を知っているか聞いたところ、知っていると回答した人(「言葉と内容の両方を知っている」又は「言葉は知っているが内容は知らない」と回答した人)の割合は、27.4%であり、昨年度からやや減少した。年代別では、10歳代、40歳代の認知度が高い。
- ※令和5年度「消費生活意識調査」におけるエシカル消費の認知度(全体)は29.3%であった。
- 「エシカル消費(倫理的消費)」を知っているか聞いたところ、知っていると回答した人(「言葉と内容の両方を知っている」又は「言葉は知っているが内容は知らない」と回答した人)の割合は、27.4%であり、昨年度からやや減少した。年代別では、10歳代、40歳代の認知度が高い。
- 「エシカル消費の言葉や内容の情報源」について
- エシカル消費の言葉や内容をどこからの情報で知ったか聞いたところ、「新聞・テレビ・ラジオ」と回答した人の割合が最も高く39.9%であった。10歳代では「学校での学習」と回答した人の割合が最も高く58.0%であった
- 「エシカル消費の実践度」について
- エシカル消費につながる行動をどの程度実践しているか聞いたところ、実践していると回答した人(「よく実践している」又は「時々実践している」)と回答した人)の割合は36.1%であり、昨年度から増加した。年代別では70歳代以上の実践度が最も高い。また、若い世代の中では、10歳代は20歳代及び30歳代に比べ実践度が高かった。
- ※令和5年度「消費生活意識調査」における「エシカル消費」の実践度(全体)は27.4%
- エシカル消費につながる行動をどの程度実践しているか聞いたところ、実践していると回答した人(「よく実践している」又は「時々実践している」)と回答した人)の割合は36.1%であり、昨年度から増加した。年代別では70歳代以上の実践度が最も高い。また、若い世代の中では、10歳代は20歳代及び30歳代に比べ実践度が高かった。
- 「エシカル消費に取り組む理由」について
- 「エシカル消費を実践している」と回答した人に、エシカル消費に取り組む理由について聞いたところ、「同じようなものを購入するなら環境や社会に貢献できるものを選びたい(53.3%)」と回答した人の割合が最も高く、次いで「節約につながる(50.4%)」、「環境問題や社会問題を解決したい(49.2%)」となった。
- 年代別でみると、10歳代では「家族や友人等が取り組んでいる」と回答した人、20歳代及び30歳代では「ストーリー性に共感する」と回答した人の割合が他の年代より高かった。
- 「エシカル消費に取り組んでいない」理由について
- 「エシカル消費を実践していない」と回答した人(「あまり実践していない」又は「全く実践していない」と回答した人)に、エシカル消費に取り組んでいない理由について聞いたところ、「どれがエシカル消費につながる商品やサービスか分からない(23.0%)」、「経済的・余裕がない(20.1%)」と回答した人の割合が高かった。
- 「参加方法がわからない(15.8%)」と回答した人の割合は前回よりも低くなった一方、「特に理由はない(40.7%)」と回答した人の割合が高くなっていた。
- 年代別では、60歳代以上が「どれがエシカル消費につながる商品やサービスか分からない」や「エシカル消費に本当につながる商品やサービスか分からない」と回答した人の割合が他の年代より高かった。
- 「エシカル消費につながる商品の価格の許容度」について
- エシカル消費につながる商品を今後購入したいと回答した約6割の人に対し、エシカル消費につながる商品がどの程度なら割高であっても購入したいか聞いたところ、最も許容度の高かった(※)商品は「食料品」で77.0%、最も低かったのは「自動車」で60.5%であった。
- ※「30%以上」と「10%以上~30%未満」と「0%より高いが10%未満」のいずれかを回答した人の割合
- エシカル消費につながる商品を今後購入したいと回答した約6割の人に対し、エシカル消費につながる商品がどの程度なら割高であっても購入したいか聞いたところ、最も許容度の高かった(※)商品は「食料品」で77.0%、最も低かったのは「自動車」で60.5%であった。
消費者庁 PIO-NETデータを用いた消費生活相談の地域傾向分析の結果を公表しました。
▼ 令和6年11月公表 (対象:令和5年10月~12月のデータ)
- 年齢層別の分析結果
- 19歳以下
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- キーワード:「スマホ」「ゲーム」「課金」「クレジット」「返金」「未成年」「契約」「取消し」
- ⇒未成年のこどもがスマホのゲームに高額課金をしていた。クレジットカードの明細を確認して発覚。返金を希望するので、未成年者契約の取消しを求めたい。
- キーワード:「スマホ」「商品」「定期」「購入」「契約」「解約」「電話」
- ⇒スマホで電子広告から商品の定期購入を契約した。いつでも解約可能な定期購入だったが、2回目以降高額な為、電話をかけたものの、商品到着後の返品は受けられないと拒否された。
- キーワード:「アプリ」「メール」「サイト」「購入」「返金」
- ⇒在宅アプリで男性の悩みにメールで相談に乗ると報酬が貰えると知り、指定された出会い系サイトに入り、個人情報交換のためメダルを購入したが、情報交換できず、騙されたので返金してほしい。
- 解説
- 19歳以下の者が契約当事者となる相談については、親のクレジットカードを使用してスマホ等のオンラインゲームへ課金を行ったことによる高額請求に関する相談が全国的に多くみられました。
- また、脱毛エステ店でのローン契約期間の途中で業者が倒産したことに伴い信販からの引き落としを止めたい、といった相談もみられました。
- その他には、特に四国地方で定期購入に関する相談が多くみられ、商品注文の際に定期購入契約に気が付かずに購入してしまった相談が多くなっています。
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- 20~39歳
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- キーワード:「ネット」「通販」「メール」「商品」「サイト」
- ⇒ネット通販で購入後、メールで発送済みとの連絡が届いたのに商品が来ず、サイトも閉鎖されたため連絡がつかない。
- キーワード:「賃貸」「アパート」「管理」「会社」「請求」「説明」
- ⇒賃貸アパートから退去する際、高額な原状回復費を管理会社から請求された。入居時の説明と異なる部分もあり、納得できない。
- キーワード:「ネット」「広告」「副業」「サイト」「SNS」「アプリ」「電話」「借金」「返金」
- ⇒ネット広告にあった副業サイトに登録すると、SNSアプリのやりとりだけでもうかる副業を電話で勧められた。借金して初期費用を払ったが、怪しいので返金してほしい。
- 解説
- 20~39歳の者が契約当事者となる相談については、偽物と思われる通販サイトで購入した商品が届かないことによる相談や、賃貸アパートからの退去時に高額な原状回復費を請求されたことによる相談が全国的に多くみられました。
- また、副業サイトやSNSを通じた副業・投資等のもうけ話に乗り高額な初期費用を払ってしまったり思うようにもうからなかったりしたことによる相談も全国的に多く、さらに東北地区を中心とした一部地域では債務整理に関する相談も多くみられました
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- 40~64歳
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- キーワード:「商品」「サイト」「通販」「ネット」「注文」「広告」「電話番号」「SNS」
- ⇒SNSの広告で見た商品を、ネット通販サイトで注文したが届かないのでサイトに記載されている電話番号に電話したが繋がらない。
- キーワード:「定期」「購入」「商品」「広告」「解約」「電話」「ネット」「通販」「メール」「代金」
- ⇒ネットの広告から1回限りのお試し品だと思い、ネット通販で代金後払いで商品を申し込んだところ、注文受諾メールに定期購入という記載があった。業者に電話で解約希望の連絡をしたが、応じてくれない。
- キーワード:「工事」「修理」「電話」「契約」「ネット」「会社」「代金」
- ⇒ネットで見つけた工事会社に屋根や水漏れの修理契約をしたが、代金支払い後に工事内容に不備があり、電話をするが対応してくれず、納得がいかない。
- 解説
- 40~64歳の者が契約当事者となる相談については、SNSやネットの広告から誘導されて購入した商品が届かないといった、ネット通販の商品未着に関する相談が全国的に多くみられました。
- 他にも、広告には定期購入という記載はなかったのに契約後に定期購入商品だと発覚したが、販売会社に電話が繋がらない、解約に応じてくれないといった、意図しない定期購入に関する相談もみられました。
- また、ネットで見つけた修理工事会社に関する相談については、全国的にみられますが、特に北海道・東北・関東・北陸・東海といった北東寄りの地区で「修理」「工事」といったキーワードが上位にみられています。
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- 65歳以上
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- キーワード:「電話」「会社」「契約」「工事」「代金」
- ⇒大手電話会社の下請けと名乗る会社から、回線が変わるから電話が使えなくなると言われたので、自分の名義で契約することとし、工事の日も決めていた。その後、書類が送られてきて、中身を確認すると特に電話の代金が安くなる感じがしなかった。娘に相談すると消費生活センターに相談したほうが良いと言われた。
- キーワード:「自宅」「屋根」「工事」「契約」「解約」「請求」
- ⇒突然自宅に訪問してきた業者から勧められて屋根工事の契約を結んだが、不信感が募り解約を申し出たら高額な違約金を請求されたが、解約出来ないか。
- キーワード:「スマホ」「広告」「商品」「注文」「定期」「購入」「解約」「電話」
- ⇒スマホに表示された広告経由でサプリを注文。2回目の商品が届き定期購入と判明、定期購入だとは知らずに注文してしまい、解約しようと販売業者に架電したが、「解約手続きはオンラインで出来ます」と自動音声が流れるだけでオペレーターに電話が繋がらない。
- 解説
- 65歳以上の者が契約当事者となる相談については、ネット通販サイトで健康食品等の商品を購入したが届かないことや、定期購入のキャンセルの方法が分からないことに関する相談が多くみられました。
- また、訪問販売や自宅の固定電話への電話勧誘による住宅のリフォーム工事等の契約に関する相談や、自宅への不審な電話に関する相談も多くみられました。
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- 19歳以下
- SNSに関する相談の分析結果
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
- キーワード:「広告」「購入」「商品」「定期」「電話」「解約」
- ⇒SNS広告を見て化粧品を購入した後、同じ商品が届き定期購入と判明し、業者に電話で解約を申し込むも拒否された。
- キーワード:「ブランド」「広告」「サイト」「代引き」「注文」「商品」「メール」「返金」
- ⇒以前から探していたブランド品をSNS広告で見つけ、クリックした先のサイトに「公式サイト」と書いてあったので、代引きしか選択できなかったが注文した。商品が届き開封すると偽物だったため、メールで返金を求めたが返信が無い。
- キーワード:「スマホ」「広告」「アプリ」「副業」「投資」「ネット」「詐欺」「サイト」
- ⇒スマホの広告をクリックして、登録したメッセージアプリ経由で副業を申込むと、投資サイトへの登録を勧誘された。投資で得た利益を何度か引き出したところで急に高額な違約金の支払を要求され、不審に思いネット検索すると詐欺サイトとの情報を見つけた。
- 解説
- SNSを契機としたトラブルに関連した相談については、SNS広告から遷移した通販サイトで、意図しない定期購入を契約したことによる相談や購入した商品が偽物・不良品だったことによる相談が全国的に多くみられました。
- また、SNSで勧誘され副業や投資を始めたものの収入が得られないといった相談や、高額な費用を請求されたといった相談も全国的に多くみられており、投資に関する相談は関東地方や東海地方で特に多くみられています
- 全国共通で多かった相談事例(代表例)
消費者庁 第3回 第5期消費者基本計画の策定に向けた有識者懇談会
▼ 【資料1】第5期消費者基本計画素案 概要
- 消費生活を取り巻く現状の課題 ~消費者政策のパラダイムシフトの背景~
- デジタル技術の飛躍
- 消費生活におけるデジタル技術の浸透(2)
- 65歳以上モバイル端末保有率74%、インターネット利用率61%、SNS利用率60% ⇒ 年代を問わずインターネットやSNSの利用が日常的になりつつある
- 40歳代・50歳代で「SNS関係」の相談件数が大きく増加 ⇒ 消費者が年齢や教育水準、経済状況等に関わりなく消費者トラブルに遭う可能性
- 課題
- デジタル社会において、全ての消費者が消費者トラブルのリスクにさらされていることを踏まえた、消費トラブルの予防と解決
- 消費者の取引環境の急激な変化に伴う環境整備の必要性
- デジタル化の進展により、インターネット取引を中心とする消費者取引環境は大きく変化、今後もイノベーションにより予測できない急激な変化が生じることが想定される
- デジタル社会において、消費者が得られる情報量や選択肢が過多 ⇒ 消費者が単独で情報を十分に吟味し判断することが困難
- AI技術の進展等により、事業者のプロファイリング等により取引が個別化 ⇒消費者の自律的な意思決定を歪めるリスクが懸念
- 取引主体が売主・買主に加え、プラットフォーム提供事業者など多層的で複雑化 ⇒ 消費者トラブルの責任の所在が不明確 等
- デジタル社会における取引は、契約やそれを規律する法律の外側でデジタル技術によって広く規定され、法と技術の摩擦や相克の問題が生じつつある
- 課題
- 全ての消費者における、デジタルリテラシー等の習得機会の確保
- 事業者の主観的な意図による消費者の自主的・合理的選択の阻害を防ぐ方策
- 技術の負の側面(不当な利用や不当な結果の招来)への対処と正の側面(利用の促進や消費者のエンパワーメント)の両立
- 消費生活におけるデジタル技術の浸透(2)
- 消費生活のグローバル化の進展
- 海外事業者との取引の増加
- 越境電子商取引の市場規模(2023年、対米国・中国)は推計4,208億円、5年間で約1.5倍。越境消費者センターへの相談件数(2023年度)は6,371件で最多、うち98.7%が電子商取引
- 越境取引の消費者の約4割は、事業者の所在地・連絡先を確認する意識が薄弱
- 責任を負うべき事業者が国内に存在しない場合、国内法の適用に課題が伴う
- 課題
- 消費者自身における、取引に関するサービス内容や規約等の理解
- 海外事業者に対する規律
- 消費者被害が生じた場合の救済の考え方
- 訪日外国人旅行者等の消費の拡大
- 持続可能な観光立国の実現は成長戦略の柱の一つ
- 2023年は、訪日外国人旅行者数2,500万人超(コロナ禍の2021年は25万人)、消費額は5.3兆円で過去最高。在留外国人数も342万人で過去最高 「訪日観光客消費者ホットライン」への相談件数は、305件で前年度比倍増
- 訪日観光客と越境・国内消費者の相談内容には、共通点が多く見られる(言語の相違、表示の分かりにくさ、商慣行や習慣の違への理解不足 等)
- 課題
- 多言語化といったコミュニケーションツールの充実と、相談窓口の認知の向上など相談体制の実効性の確保
- 海外事業者との取引の増加
- 社会構造の変化
- 消費生活に配慮を要する消費者の拡大
- 2023は、高齢化率が全国平均29.1%(過去最高)、特に地方圏で高水準。平均寿命は男女ともに延伸(2023年、男性81.09歳、女性87.14歳)
- 2038年には3人に1人が65歳以上、65歳以上の単独世帯の割合は4割超 2030年で、65歳以上の7人に1人が認知症、軽度を含むと3人に1人が有病 ⇒地域の繋がりが希薄で消費者トラブルを相談できず、更なる増加や深刻化
- 認知機能等の低下の影響や程度は個々に異なり、支援のニーズも多様
- 課題
- あらゆる世代の消費者が年齢や配慮の程度に関わりなく、安心して安全な消費行動をとることができるための支援の在り方
- コスト等の適切な価格転嫁
- 個人消費は経済全体の過半を占め、経済社会の持続的な発展に大きな影響
- 30有余年ぶりの高水準となる賃上げ率が実現したが、名目所得の伸びが物価上昇に追い付かず、個人消費は力強さを欠いている
- 課題
- 「賃金と物価の好循環※」の実現に重要な、付加価値やコストの適切な価格転嫁の必要性に対する社会全体の理解
- 消費生活に配慮を要する消費者の拡大
- より良い社会の実現と国際協調への貢献
- 持続可能でより良い社会の実現
- 2030年を達成年限とするSDGsのうち、SDG12(つくる責任、つかう責任)は消費者政策に密接関連
- 包摂性に関する「誰一人取り残さない」のキーワードは「2030アジェンダ」の基本的理念、国際社会における普遍的価値としての人権の尊重及びジェンダー平等の視点は、SDGsの全ての目標において横断的に実現されるべきもの
- 課題
- SDGs達成に資する取組の加速化、達成年限後を見据えた基本的理念の継続
- 事業者と消費者の共創・協働
- 環境や資源に配慮したより良い消費行動は「循環経済」の実現のために重要、同時に消費者市民社会の形成にも大きく貢献
- 生産と消費は密接不可分、消費者の主体的取組が推進されることが重要
- エシカル消費の認知度は29%、関心度は47%
- 消費者志向自主宣言事業者は734社、数は拡大しているものの、業種や所在地に偏りあり
- 課題
- 消費者自らの行動が社会を変える力となり得るという意識の醸成(これらは当然に、消費者の安全の確保の上に成り立つ)
- 持続可能でより良い社会の実現
- エネルギー・食料危機と自然災害の激甚化・頻発化
- エネルギー・食料等の安定供給に関するリスクの高まり
- 我が国におけるエネルギー自給率は13%(2022年度)、再生可能エネルギー買取費用見込額は4.7兆円(2023年)
- 2022年度の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースで58%と依然として食料等の多くを海外からの輸入に頼っている
- 課題
- エネルギー、食糧など生活関連物資の価格及び需給の安定
- 緊急時における消費行動の変化
- 災害に便乗した悪質商法、被災地外での義援金詐欺や買占め行動が確認される
- 課題
- 発災時におけるデマ・流言の発生を防ぐ、正確・十分な情報の発信、普段からの備蓄等の備え
- 被災地以外の地域における経済社会活動の停滞の回避
- エネルギー・食料等の安定供給に関するリスクの高まり
- デジタル技術の飛躍
- 消費者政策において目指すべき社会の姿 ~求められるパラダイムシフト~
- 第5期消費者基本計画における消費者政策の基本的な方向性
- デジタル技術の進展や社会構造の変化等に伴う消費者取引環境の急激な変化を踏まえ、第5期消費者基本計画においては、消費者政策の価値規範に関する考え方の転換(パラダイムシフト)を図る
- 「一般的・平均的・合理的消費者像」に対する情報の質・量、交渉力の格差の是正 ⇒ 上記に加え、現実の消費者が様々な脆弱性を有するという認識
- 認知機能の低下等が「配慮を要する消費者」 ⇒ 全ての消費者が脆弱性を有する、認知機能の低下は脆弱性の一類型
- 他人の介入を排除し、独立・自由に意思決定できさえすれば良し ⇒ 他者との適切な関係性の中で、自らの価値観に基づき納得できるような決定
- 消費行動の対価は金銭 ⇒ 情報、時間、関心・アテンションを提供する場合も「消費者取引」
- 施策の手法は、悪質・厳正対処と健全・評価促進のグラデーション、法律による強制力を伴うハード手法と、公私協働等のソフト手法のコーディネート
- 消費者と事業者は相対峙する関係 ⇒ 消費者と事業者は、健全・自律的な取引社会を共創・協働するパートナー 等
- 目指すべき社会の姿
- 消費者が信頼できる公正・公平な取引環境の確保
- ① 悪質事業者の市場からの排除
- 消費被害が拡大するおそれがある場合には被害の発生・拡大を防止
- 規制の隙間を利用する悪質な業態合において、行政と事業者、事業者同士のネットワークが協働し、複合的に悪質事業者を市場から排除する仕組みが形成
- ② ソフトな手法の活用
- 隙間分野や新たな分野等について、ガイドライン等によるソフトな手法も活用
- ③ 事業者の自主的な規律の整備
- 事業者自らが遵守すべき規律を策定
- 事業者団体が存在しない業界においては、事業者の自主的取組が推進される環境が整備
- 製品安全に関する法的枠組みを超えた官民協働の自主的な取組が深化、優良事例の横展開
- 事業者における顧客対応の強化や被害救済のための自主的な取組が促進
- 消費者団体訴訟制度や適格消費者団体・特定適格消費者団体に期待される役割が十分に果たされる
- 【本計画期間中の目標】
- 現行法令による規律が困難な形態の事案等に応じて、実効性の高い必要な規律を整理
- 多様化・複雑化する悪質事案に対応するため、これまでの後追い・規制一律型の対処の成果を補完する制度の枠組みを検討
- それぞれの業界において、消費者トラブルの実情に応じ、自主規制の基準や認証制度の創設等様々な手法を活用し、必要な規律を整備
- 【2040年に向けた目標】
- 様々なバリエーションの規律を選択し、多様な脆弱性を伴う消費者の利益が擁護
- 消費者市民社会が形成され、悪質事業者が排除される仕組みが実働
- ① 悪質事業者の市場からの排除
- 全ての世代における消費者力の実践
- ①消費者市民社会の実現(P.15)
- 「気づく力、断る力、相談する力、周囲に働きかける力」(消費者力)を身に付けて実践することで、自立した消費者力が育成される
- 消費者が主体的に学び、考え、行動することで、悪質な消費者被害の未然防止が図られる
- より良い市場とより良い社会の発展に積極的に関与するという消費行動がSDGsの達成に貢献し、国際協調にもつながる
- 2030年以降の国際的な持続可能性に関する議論の動向も注視しつつ、日本型「ウェルビーイング」を拡げていく
- 【本計画期間中の目標】
- 消費者が消費者市民社会の一員として健全な市場形成に参加する意識の醸成(再掲)
- 全ての消費者がライフステージに応じた体系的かつ継続的な消費者教育を受ける環境の整備
- 配慮を要する消費者の支援対策の構築
- 【2040年に向けた目標】
- 全ての消費者が、誰一人取り残されることなく、安心して安全な消費活動を行うことができる社会の構築
- ②デジタルスキル、デジタルリテラシー、情報モラル等の向上
- 消費者が率先して知識を習得し、自身がトラブルに巻き込まれることなく、かつ、他の消費者をトラブルに巻き込むことなく、デジタル技術の恩恵を享受できる
- デジタルリテラシーを習得する環境にない消費者の存在等にも配慮がなされ、誰一人として取り残されない取組が推進される
- 【本計画期間中の目標】
- 全ての消費者に対してデジタルリテラシーの確保のための教育を施す仕組みを構築・実践
- デジタルリテラシーを習得する環境にない消費者の支援方策の検討
- 【2040年に向けた目標】
- 消費者がデジタルに触れる機会や学びの教材が提供され、誰一人として取り残されないための取組を推進
- 空間における違法・有害情報や偽・誤情報に惑わされず、またこれらの情報を拡散して他の消費者へ被害を与えないためのデジタルリテラシーや情報モラルを習得
- ③相談・苦情処理体制の整備・強化
- 消費者ホットライン188等の強化と事業者における苦情処理の体制整備
- ADR・ODRを通じた消費者トラブルの解決を行う仕組みの構築
- 【本計画期間中の目標】
- 消費者がどこに住んでいても質の高い相談を受けられる体制の維持・拡充
- ADR・ODRを通じた消費者トラブルの解決を行う仕組みが構築
- 【2040年に向けた目標】
- 相談対応に関するデジタル技術活用を進め、業務を効率化・高度化
- ADR・ODRを通じた消費者トラブルの解決を行う仕組みが活用
- ①消費者市民社会の実現(P.15)
- 持続可能で包摂的な社会の実現
- ①多様な「消費者の脆弱性」を踏まえた対応の充実
- 誰しもが脆弱な立場に陥るおそれがあるとして、個々の消費者の脆弱性を踏まえた対応が充実される
- 製品安全に関する施策の推進にあたり、3ステップメソッドの考え方を取り入れる等のリスクの低減が図られる
- 【本計画期間中の目標】
- 認知機能の低下や地域との繋がりの希薄化による、日常生活・社会生活に及ぼす影響の程度に応じた支援制度の構築
- 生命・身体に係る消費生活上の事故情報における子供の不慮の事故による死者数を前年と比べ減少
- 【2040年に向けた目標】
- 2040年には4割超となる単身世帯を支える地域のネットワークの構築
- 全ての消費者が、誰一人取り残されることなく、安心して安全な消費活動を行うことができる社会の構築
- ②持続可能な消費と生産の実現
- ⅰ)消費者と事業者の共創・協働
- 安全かつ安心な商品・サービスを提供する事業者に対する共感や応援の気持ちを、消費者が消費行動を通じて表していけるような取組が推進される
- 被災地全体の農林水産や観光等における風評の払拭に取り組む
- ⅱ)カスタマーハラスメント対策
- 事業者の問題行動等に対する申入れは、消費者の正当な権利の行使
- カスタマーハラスメントは就業環境を害する行為
- 消費者が適切な方法で正当な意見を伝えれば、消費者・事業者双方の信頼関係が構築される
- ⅰ)消費者と事業者の共創・協働
- 【本計画期間中の目標】
- 消費者のエシカル消費への関心が高まる
- 消費者志向自主宣言事業者数の増加
- 消費者の事業者に対する適切な申入れ方法の習得
- 【2040年に向けた目標】
- 消費者と事業者の共創・協働による持続可能な消費活動の推進
- 消費者と事業者が共創・協働するパートナーとして公平かつ健全な市場を形成する社会の実現
- カスタマーハラスメントが起きない社会の実現
- ①多様な「消費者の脆弱性」を踏まえた対応の充実
- 消費者が信頼できる公正・公平な取引環境の確保
- 第5期消費者基本計画における消費者政策の基本的な方向性
消費者庁 第39回消費者教育推進会議資料を掲載しました
▼ 【資料1】消費者市民社会の形成とエシカル消費に係る取組(消費者庁資料)
- 「消費者市民社会」や「エシカル消費」に関する調査(消費生活意識調査)
- 「消費者市民社会」については、「言葉と内容の両方を知っている」は6.6%、「言葉は知っているが内容は知らない」は18.8%、両者をあわせると25.4%であり、相対的に認知度が低くなっている。
- 「エシカル消費(倫理的消費)」については、「言葉と内容の両方を知っている」は8.6%、「言葉は知っているが内容は知らない」は20.8%、両者をあわせると29.4%となっている。
- 消費者として心がけている行動について、「心がけている」と回答した人の割合が最も高いのは、「商品やサービスの購入・契約をする際は、表示や説明を十分確認する(39.3%)」、次いで「商品やサービスに問題があれば製造元やお店に問い合わせる(32.7%)」となっている。
- 一方で、「身近に消費者トラブルで困った人がいたら、消費生活センターへの相談を勧める(21.0%)」や「自らが良くなかったと感じた商品やサービスのことや収集した消費者情報を共有・情報発信する(16.1%)」という被害防止のために周囲に働き掛ける行動が相対的に低くなっている。
- 関心がある社会課題・社会貢献活動としては、「気候変動(71.0%)」、「地球環境問題(67.5%)」、「地域活性化・被災地支援(59.4%)」、「障がい者支援(55.5%)」の順で高くなっている。
- 一方で、エシカル消費につながる行動を実践している人の割合は3割弱にとどまっている。
- 3Rの視点(無駄使いしない/繰り返し使う/再生利用する)での行動が比較的上位に位置している。
- 一方で、環境問題や社会的課題の解決に取り組む活動や企業に着目した行動や、環境負荷や原材料の持続可能な調達に配慮した食品の購入を行っている人は少ない。
- エシカル消費に取り組まない理由としては、「どれがエシカル消費につがる商品やサービスか分からない」と回答した人の割合が高くなっており、行政や企業の取組が伝わっていない可能性がある。また、「経済的余裕がない」や「参加方法が分からない」も高くなっている。「特に理由はない」も高く、エシカル消費の意義や必要性に対する理解不足等、意識面に課題がある可能性がある。
- エシカル消費に取り組みたいと思える条件は、「同種の商品・サービスと価格が同程度であったから」、「節約につながることが分かったら」の順となっている。
消費者庁 第6回取引デジタルプラットフォーム官民協議会
▼ 資料1 事務局説明資料
- 法第4条に基づく要請を実施した案件 情報商材の表示に関する案件
- 記載された内容に基づきマーケティングを行うと、半年で数百万円を稼ぐことができる旨を表示して取引デジタルプラットフォーム上で販売されていた商品(いわゆる情報商材)
- 当該商品の実際の内容はマーケティングの方法に関する説明ではあるものの、インターネット検索等で容易に収集可能。また、購入者に特典を配布すると表示されていたが、実際には特典を得ることは不可能。
- 半年で数百万円を稼ぐことができるものではなく、表示は実際のものよりも著しく優良であると誤認させるもの。
- 当該商品の出品者(販売業者)はアラブ首長国連邦のドバイ在住と称している。
- 出品者・購入者間の連絡手段を用いても出品者とは連絡が取れない。
- 当該商品を販売する取引デジタルプラットフォームを提供する取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、当該商品の表示の削除等を要請(令和6年10月)
- 記載された内容に基づきマーケティングを行うと、半年で数百万円を稼ぐことができる旨を表示して取引デジタルプラットフォーム上で販売されていた商品(いわゆる情報商材)
- 消費生活相談の件数の推移
- 消費生活相談の件数のうち販売購入形態に「通信販売」が選択されている件数の割合は、2022年5月から2024年6月までの期間全体の平均で39.5%である。
- 「プラットフォーマー」関連の消費生活相談
- 他業者区分に「プラットフォーマー」が選択されている消費生活相談(単に「プラットフォーマー」関連の消費生活相談という。)の件数は、12月に増加する傾向にある。
- 総務省「家計消費状況調査結果」によると、インターネットを利用した支出総額は12月に増加する傾向にある。⇒「プラットフォーマー」関連の消費生活相談の件数も同じ傾向にある。
- 「プラットフォーマー」関連の消費生活相談の件数を2022年と2023年の12月で比較すると、商品、役務の両区分ともに増加している。
- インターネットを利用した支出総額を2022年と2023年の12月で比較すると、全体の支出総額が増加している(2023年12月は前年比で10.2%増加している)。
- 「プラットフォーマー」関連の消費生活相談については、販売購入形態として「通信販売」が選択されている場合が多いが、「不明・無関係」を含め「通信販売」以外が選択されている場合もある(2023年12月の商品では12.5%、役務では22.7%)。
- 2023年12月の「プラットフォーマー」関連の消費生活相談の件数に関し、最終の7日間(12月22日から28日まで)を詳細に分析する。
- 12月22日から28日までの「プラットフォーマー」関連の消費生活相談の803件のうち、商品に係る相談が581件(そのうち販売購入形態として「通信販売」が選択されているものは508件、「通信販売」が選択されていないものは73件)、役務に係る相談が222件(そのうち販売購入形態として「通信販売」が選択されているものは171件、「通信販売」が選択されていないものは51件)となっている
- 「商品」に係る相談のうち「通信販売」が選択されたもの(508件)の分類
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は155件
- 商品に不具合があるといった相談が139件(「不良品」26件、「イメージが違う」24件、「商品が違う」22件)
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象としない相談は353件
- 配送関係の相談が132件(「商品が届かない」61件、「身に覚えなし」49件)
- 支払関係の相談が74件(「フィッシング」19件、「カードの不正利用」13件、「支払の督促」8件)
- そもそも取引デジタルプラットフォームに該当しない相談が52件(「直販サイト」16件、「画像等共有サイト」7件、「事業者からの相談」5件)
- なお、CtoC取引と見られる相談が94件(出品者関係が24件、購入者関係が70件
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談
- 【商品不具合(不良品)】
- 14日ほど前に妻がネット注文した電動ドライバーが電源が入らず不良品だった。販売店に電話したら、再度新しい商品を届けると言われたが、届いたのも同様に通電せず。付属品として入っていた10本くらいのドライバーの先が錆びていたので、販売店に再度電話したが、今度は連絡が全くつかなくなり困った。返金してほしい。
- 【商品不具合(イメージが違う)】
- 子供のクリスマスプレゼントにネット通販でバスケットボールを購入した。届いてみたら、色も質感もネット上の写真とあまりにも違うので、返品を申し出たら、多少の違いはご了承くださいと言われ、取り合ってもらえなかった。納得できない。
- 【商品不具合(商品が違う)】
- オークションサイトに出品しているリユースショップから海外ブランドの財布をカード決済で購入した。出品時に表示されていたシリアルナンバーと違うナンバーの商品が届き、さらに写真にはなかった傷が付いていた。出品店舗に電話をして申し出た。
- 店舗はそれを認め返品返金に応じると言った。対応はカスタマーサポートが行うと案内され、商品が届いたその日に問い合わせフォームから申し出をした。自動受信メールは届いたが返信がないので、翌日も同じフォームから申し出をしたが返信はない。
- 電話をしてもコール音が鳴った後で切れてしまう。規約には返品返金を受け付けるのは商品到着から7日以内と書いてある。このまま7日経過してしまったらどうなるのか不安。どうしたらよいか
- 【商品不具合(不良品)】
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は155件
- 「商品」に係る相談のうち「通信販売」が選択されていないもの(73件)の分類
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は2件
- 商品に不具合があるといった相談が2件(「不良品」2件)
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象としない相談は71件
- 配送関係の相談が39件(「身に覚えなし」35件、「置き配」2件)
- 支払関係の相談が18件(「フィッシング」9件、「カードの不正利用」8件、「覚えのない請求」1件)
- そもそも取引デジタルプラットフォームに該当しない相談が9件(「プラットフォーマーが選択された趣旨不明」4件)
- なお、CtoC取引と見られる相談が4件(出品者関係が3件、購入者関係が1件)
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談
- 【商品不具合(不良品)】
- 子のクリスマスプレゼント用に13000円、後払いで注文。届いた自転車は、ブレーキが利かず、張ってあるシールも斜めで梱包の中にごみも入っていた。返品を受けるように連絡をしたが一切連絡がなく、夫が当該ショップの電話番号を見てかけたところ、外国人と思われる人が電話に出たがすぐに切られた。それから電話を取ってもらえない。
- 【商品不具合(不良品)】
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は2件
- 「役務」に係る相談のうち「通信販売」が選択されたもの(171件)の分類
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は2121件
- サービスの履行関係の相談が7件(「暮らしに関するサービス」5件、「旅行予約」2件
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象としない相談は150件
- 支払関係の相談が72件(「ゲーム課金」53件、「カードの不正利用」9件)
- そもそも取引デジタルプラットフォームに該当しない相談が61件(「直販サイト」9件、「ゲーム以外の課金」7件、「SNS広告」7件)
- なお、CtoC取引と見られる相談が10件(出品者関係が3件、購入者関係が7件
- 【商品】に該当すると思われる相談が15件(「配送関係」7件、「商品に不具合あり」4件)
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談
- 【サービスの履行関係(暮らしに関するサービス)】
- ネットで暮らしのサービス事業者を紹介しているサイトからエアコンクリーニングの業者を探して依頼した。クリーニングの後、1台が風が出ないようになり、事業者に伝えると、業者からメーカーに問い合わせ、クリーニングによる不具合ではないと返答があり、その後、連絡が取れない。クリーニングをする前は使えていた。業者は風が出ていたことは、表示のランプがついていないなら、基板の不具合ではない。エアコンは4年半前に購入した。エアコンの修理をするには費用が掛かるので、クリーニング代金を返金してほしい。
- 【サービスの履行関係(暮らしに関するサービス)】
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は2121件
- 「役務」に係る相談のうち「通信販売」が選択されていないもの(51件)の分類
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は4件(「暮らしに関するサービス」2件、「旅行予約」1件、「理美容」1件)
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象としない相談は47件
- そもそも取引デジタルプラットフォームに該当しない相談が42件(「暮らしに関するサービス」20件、「詐欺広告」4件
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談
- 【サービスの履行関係(暮らしに関するサービス)】
- プラットフォームから探した業者に、水回りのクリーニングをやってもらったら、ユニットバスの壁を金属たわしのようなものでこすったらしく、腰から下の方が茶色だったのに白くなってしまった。傷だらけでザラザラしている。業者に保証してほしいとメールしたら電話がかかってきて、「プラットフォームの保証が使えるか調べてみるが、難しいかもしれない。」と言われたが、その後連絡がない。どのように交渉したらよいか。作業代の29000円はクレジットカードで払った。
- 【サービスの履行関係(暮らしに関するサービス)】
- 12月22日から28日までの「プラットフォーマー」関連の消費生活相談の803件のうち、取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象とする相談は182件・取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象としない相談は621件である。なお、斡旋解決に至った相談は55件(商品11件、役務44件)である。
- 取引デジタルプラットフォーム上の契約内容そのものを対象としない相談が多い。
- 具体的には、配送関係等の通信販売規制の規律以外の事項であり、事業者側の対応(連絡をつきやすくする、サービスの内容をわかりやすく示す)が重要。⇒ 同時に啓発等を通じた消費者のリテラシーの強化も重要。
- 斡旋解決の割合が低い。
- 助言(自主交渉)の対応が中心(個別には解決している事案あり)
- 通信販売規制の対象となる事案は取消権等の活用が重要
消費者庁 通信販売業者【株式会社マーキュリー】に対する行政処分について
- 消費者庁は、薬用歯磨き等を販売する通信販売業者である株式会社マーキュリー(本店所在地:東京都渋谷区)(以下「マーキュリー」といいます。)(注)に対し、令和6年10月31日、特定商取引法第15条第1項の規定に基づき、令和6年11月1日から令和7年1月31日までの3か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
- (注)同名の別会社と間違えないよう会社所在地なども確認してください。
- あわせて、消費者庁は、マーキュリーに対し、特定商取引法第14条第1項の規定に基づき、法令遵守体制の整備その他の再発防止策を講ずることなどを指示しました。
- また、消費者庁は、マーキュリーの代表取締役である浅川 浩孝(あさかわ ひろたか)に対し、特定商取引法第15条の2第1項の規定に基づき、令和6年11月1日から令和7年1月31日までの3か月間、マーキュリーに対して前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。
▼ 通信販売業者【株式会社マーキュリー】に対する行政処分について
- 処分の原因となる事実
- マーキュリーは、以下のとおり、特定商取引法に違反する行為をしており、消費者庁は、通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。
- 誇大広告(特定商取引法第12条)
- マーキュリーは、少なくとも令和6年1月13日から同年3月26日までの間に、別添資料1のとおり、本件商品の販売条件について広告をしたとき、本件商品の効能について、本件商品のランディングページ(検索結果や広告等を経由して消費者が最初にアクセスするページのこと。以下同じ。)(以下、別添資料1の広告が表示されるランディングページを「本件LP①」という。)において、「10秒で黄ばみ消えた!・・・本当に10秒歯に塗るだけで歯が真っ白になったんです!」との表示、本件商品の効能を示す歯の画像の表示及び「つまり!オーデントを10秒塗るだけで・黄ばみを落とす・永久に白い歯をキープ」との表示(以下、本件LP①における上記の表示をまとめて「本件表示①」という。)をすることにより、あたかも、本件商品には、本件商品を歯に10秒程度塗布するのみで、塗布した箇所の歯の黄ばみを完全に除去して歯を白くする効能があるかのような表示をしていた。
- また、マーキュリーは、少なくとも令和6年2月27日から同年7月9日までの間に、別添資料2のとおり、本件商品の販売条件について広告をしたとき、本件商品の効能について、本件商品のランディングページ(以下、別添資料2の広告が表示されるランディングページを「本件LP②」という。)において、「歯の蓄積黄ばみを...完全漂白できる裏技 黄ばみボロボロ落ちる理由...」及び「黄ばみがベリッ?!」との表示、本件商品の効能を示す歯の画像の表示並びに「頑固な黄ばみが消えてモデル級の真っ白の歯に!!」、「使った瞬間に効果を実感できるらしく、『黄ばみがボロボロ落ちた!』『タバコ黄ばみまで完全に落ちた!』と話題に!」、「オーデントはホワイトニング治療で使われる成分『PEG400』を限界配合!・・・その特効成分がステインを浮かせて剥がすんです!だからさっと磨くだけでボロボロ落ちる!!」及び「数十年へばりついた黄ばみも余裕で100%落として真っ白の歯に!」との表示(以下、本件LP②における上記の表示をまとめて「本件表示②」という。)をすることにより、あたかも、本件商品には、本件商品を歯に塗布するだけで即座に歯に付着した黄ばみを完全に除去して歯を白くする効能があるかのような表示をしていた。
- この点について、当庁からマーキュリーに対し、特定商取引法第12条の2の規定に基づき、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、マーキュリーは資料を提出しなかった。
- このため、マーキュリーが行った当該表示は、特定商取引法第12条の2の規定により、商品の効能につき、実際のものよりも著しく優良であると人を誤認させるような表示に該当するものとみなされる。
【2024年10月】
消費者庁 第11回解約料の実態に関する研究会
▼ 【資料2】第10回解約料の実態に関する研究会 事務局説明資料
- 解約料の実態の検証(解約料に関する事業者側の実態)
- 事業者が設定する「解約料」の中に、損害の発生を前提としないものが存在
- 事業者が「解約料」を設定する目的として、主に以下のものが考えられる。
- 損失補填
- 解約抑止・売上予測可能性の確保・売上安定化
- 全ての消費者に一律に解約料を設定するような場合
- 第二種価格差別(バージョニング)で設けられる価格が比較的低いプランにおいて解約料が設定される場合
- 解約料による収益向上
- 事業者団体等ヒアリングにおいて、事業者が「解約料」を設定する目的として、主に以下のものが見られた。
- 損失補填
- ホテル(通常料金)、遊園地(食事、施設利用の予約等)、航空機(払戻手数料)、ブライダル、リフォーム(出来形部分の清算)、飲食店(席料、コース料理)、不動産賃貸借(中途解約に伴う解約料、短期解約違約金)、不動産売買(債務不履行に基づく損害賠償額の予定、解約手付)、美容室(ネイル等の予約)
- 多様な価格プランの提示(第二種価格差別)
- ホテル(早割)、航空機(複数の運賃プランにおける取消手数料)、フィットネス(一定期間の会費一括払)
- 解約抑止
- ブライダル、航空機(複数の運賃プランにおける取消手数料)、飲食店(予約)
- その他
- 売上予測可能性の確保 コンサート(チケット)
- 転売防止 コンサート(チケット)、通信販売
- 原則解約料なし 通信販売
- 損失補填
- 「解約料による収益向上」を目的として設定されている場合は、事業者団体等ヒアリングでは不見当。
- 事業者が「解約料」を設定する目的として、主に以下のものが考えられる。
- 「解約料」の目的別の特徴
- 損失補填
- 損失の考え方は、業界ごと、商品・サービスごと、事業者ごとに異なる。
- (例)・逸失利益の考え方(当該契約から得られるはずであった利益、他の顧客を逃した機会損失 など)・実費の考え方・競合他社との横並び・節約費、再販可能性の考え方 など
- 当業界の「平均的な損害の額」の考え方を明確化しようとする事業者団体の取組の存在。
- (例)ブライダル、リフォーム、不動産売買・賃貸借
- 所定の「解約料」の請求について、再販可能性、節約費、天災等の事由などを考慮して個別に利益調整をする場合が存在。
- 事業者は、「解約料」に係る規定(約款等)の存在及びその内容、算出基準などについて情報提供をする取組。
- 損失の考え方は、業界ごと、商品・サービスごと、事業者ごとに異なる。
- 多様な価格プランの提示(第二種価格差別)
- 消費者契約法の立法時(平成12(2000)年)以降、情報技術の進展、経済の行き詰まり、消費者意識や価格意識の変化等の中で増加している可能性。
- 限界費用が低いデジタル材の増加によりゼロに近いコストで異なるプランの設定が可能となり、また情報技術の進展により複雑な価格設定の管理が簡易化。
- インターネットの普及等による消費者の価値観・ニーズの多様化及び景気低迷による個人内消費の二極化の進展や消費者の価格感度の上昇により、事業者がニーズの異なる消費者に合った料金プランを提示していく必要性。
- 複数の価格プランのそれぞれの対価とのバランスも踏まえて「解約料」の金額を設定しており、事業者が価格戦略の要素として「解約料」を認識。
- 事業者が、対価の安さなどの要素と予約時期や「解約料」の金額の多寡を組み合わせた複数の価格プランを提示することにより、結果として、多くの消費者が比較的高い「解約料」や早期に予約することによるリスクなどを負担する代わりに安い対価が設定されている価格プランを選択。
- 所定の「解約料」の請求について、再販可能性、天災等の事由などを考慮して個別に利益調整をする場合が存在。
- 事業者は、多様な価格プランについて、「解約料」に係る規定の存在及びその内容などを含め、消費者が複数のプランを比較して選択できるようにするための情報提供をする取組。
- 消費者契約法の立法時(平成12(2000)年)以降、情報技術の進展、経済の行き詰まり、消費者意識や価格意識の変化等の中で増加している可能性。
- 解約抑止
- 解約抑止の趣旨として以下のものが見られた。
- 安易な解約を防止するための注意喚起 ブライダル、飲食店
- 消費者のニーズ等も踏まえ選択肢の一つとして設けられた、予約を確定する代わりに安い対価でサービスを提供する価格プランを成立させるためのもの 航空機(複数の運賃プランにおける取消手数料)
- その他の目的と並存しており、解約料を設定していること自体による副次的な効果として、解約抑止の効果がある可能性。
- (例)・損失補填 ブライダル、飲食店・多様な価格プランの提示(第二種価格差別)航空機(複数の運賃プランにおける取消手数料)
- 解約抑止の趣旨として以下のものが見られた。
- その他
- 売上予測可能性の確保
- キャパシティーに制約がある中で、一定の対価でのサービス提供を担保するための売上予測可能性の確保の趣旨。
- 所定の「解約料」の請求について、サービス提供の中止、天災等の事由などを考慮して個別に利益調整をする場合が存在。
- 事業者は、解約ができないことについて情報提供をする取組。
- 転売防止
- 自らは利用しない転売目的の購入者が、仮に転売できなかった場合に解約をして代金を回収する事態が横行することを防ぐ趣旨。
- 転売目的ではない者について、公式のリセールの仕組みを設けて商品・サービスの譲渡などを認める救済策の存在。
- 売上予測可能性の確保
- 損失補填
- 事業者が設定する「解約料」の中に、損害の発生を前提としないものが存在
- 解約料の支払に対する消費者の意識(解約料に関する消費者側の実態)
- 「解約料」の支払に対する消費者の不満と相関する要因
- 「キャンセル料に関する消費者の意識調査」
- 情報提供の在り方
- 「解約料」についての情報提供の在り方(「解約料」に関する情報提供の有無・印象)が、「解約料」を請求された時の消費者の不満度に大きく影響。
- 支払形態(分割・定額払)、契約形態(継続的契約)
- 契約金額の支払方法が一括払の場合よりも分割・定額払(特に定期購入・サブスクリプション等の定額払)の場合に消費者は「解約料」の情報提供に対して不満を感じ、かつ「解約料」の支払に対しても不満を感じる可能性。
- この点は、継続的契約か否かという観点から、継続的契約(定期購入、サブスクリプション)において「解約料」をとられることに不満を感じていることを示唆するものと捉えられる可能性。
- 解約の理由(それ以外の外的要因(自然災害、商品・サービスの内容等))
- 解約の理由が「自分自身の都合」や「同伴者や家族の都合」の場合よりも、「それ以外の外的要因」(自然災害、商品・サービスの内容等)の場合の方が消費者は「解約料」の支払に対する不満を感じる可能性。
- 情報提供の在り方
- 国民生活センターヒアリング
- 情報提供の在り方
- ネット通販での定期購入、ウォーターサーバー、中古車の売却
- 契約締結過程において解約料の説明がきちんとされなかったり、消費者に契約締結を焦らせたりするような状況がある場合にトラブルになりやすい傾向。
- 他方、事前に解約料の存在やその金額などについて事業者から説明されているような場合には、相談の数としては寄せられにくい。
- 契約形態(継続的契約)
- パーソナルトレーニング、据置型Wi-Fiルーター、インターネット光回線、脱毛サロン
- 一定期間にわたって商品・サービスの提供を受けるような契約において、以下のような場合に、解約料を請求されること自体に消費者が不満を感じる傾向。
- 契約締結後に事業者のサービスに問題があると消費者が認識して契約から離脱するために解約した場合
- 契約締結後に、第三者が関わる問題(例:賃貸借契約において悪臭や騒音などが判明して解約する場合に短期解約違約金が発生した場合)が判明して契約から離脱するために解約した場合
- 解約料の存在によって途中解約が制限され、比較的長期にわたって契約に拘束される場合
- 解約料が高額である場合
- 解約の理由(双方に帰責性がない事情)
- 観劇、海外ツアー旅行
- 天災や感染症拡大等の双方に帰責性がない事情を踏まえて消費者から解約申出をすると消費者の自己都合による解約として100%の解約料を請求される場合、消費者の負担が100%となることに消費者が不満を感じる傾向。
- 情報提供の在り方
- 「キャンセル料に関する消費者の意識調査」
- 「解約料」の目的別の消費者の意識
- 損失補填
- 損失補填を目的とした「解約料」の設定は消費者に受け入れられる可能性が高い。
- 損失の内容が不明瞭であることが消費者の不満の要因となっている可能性。
- 多様な価格プランの提示(第二種価格差別)
- 価格差別を目的とした「解約料」の設定は消費者に比較的受け入れられる可能性。多様な価格プランの提示(第二種価格差別)の要素としての「解約料」の理解が市場に比較的浸透し、多くの消費者が比較的高い「解約料」や早期に予約することによるリスクなどを負担する代わりに安い対価が設定されている価格プランを利用。
- 消費者が多様な価格プランの存在やその内容を理解して選択できていないことが消費者の不満の要因となっている可能性。
- 解約抑止
- 解約抑止を目的とした「解約料」の設定は消費者に比較的受け入れられる可能性。
- 解約料を定める目的の考え方に伴う合理的な金額を超えており、実質的に解約が妨げられていると消費者が認識するような金額の解約料が設定されていることが消費者の不満の要因となっている可能性。
- その他
- 売上予測可能性の確保
- 当業界においてその「解約料」で40~50年続いており、当該「解約料」の理解が市場に比較的浸透している可能性。
- 「解約料」による収益向上
- 利益目的で設定される「解約料」は消費者に受け入れられない可能性。
- 売上予測可能性の確保
- 損失補填
- その他
- 事業者による「解約料」の請求の対応などの違い
- 事業者団体等の非会員の事業活動
- 商慣習の異なる海外事業者の事業活動
- 「解約料」の支払に対する消費者の不満と相関する要因
消費者庁 エステサロンで勧誘する事業者に関する注意喚起
- 令和5年秋以降、無料エステ体験でエステサロンに来店した際「月1回、広告を自分のSNSに投稿をすれば月1万円の報酬がもらえる副業がある」などと勧誘され、高額な加盟金を支払って始めたものの、実際には、報酬が支払われず、事業者との連絡が取れなくなったという相談が、20代の女性を中心に各地の消費生活センター等に数多く寄せられています。
- 消費者庁が調査を行ったところ、株式会社ライフパートナーズ(以下「ライフパートナーズ」といいます。)及び株式会社NEOマーケティング(以下「NEOマーケティング」といい、2社を併せて「本件2事業者」といいます。)が消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(不実告知)を行っていたことを確認したため、消費者安全法(平成21年法律第50号)第38条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者の皆様に注意を呼びかけます。
- また、この情報を都道府県及び市町村に提供し、周知します。
- 具体的な事例の内容
- 消費者は、無料エステ体験でエステサロン(以下「本件エステサロン」といいます。)に来店した際、「SNSに広告を投稿したら月1万円の報酬がもらえる」(以下「本件副業」といいます。)などと勧誘され、本件2事業者と「加盟店契約」及び「業務委託契約」と称する契約を締結します。消費者は高額の加盟金を支払った上で本件副業を始めるものの、報酬は約束どおりには支払われず、消費者に加盟金の支払だけが残ってしまいます。その手口は次のとおりです。
- 友人などから「無料のエステサロンがある」との情報を得ます。
- 消費者は、友人や美容系予約アプリから「無料で施術してくれるエステサロンがある」などの情報を得ます。消費者は、「無料ならやってみよう」などの理由から興味を持ち、本件エステサロンを予約します。予約には、本件エステサロンの公式LINEや美容系予約アプリが使われていました。
- 消費者が無料エステ体験を受けるために来店した、本件エステサロンの名称は次のものでした。
- Beauty Salon Reve又はReve Beauty Salon(東京都渋谷区)
- Beauty Advance Room Tie(千葉市中央区
- 無料エステ体験中に「SNSに広告を投稿すると月1万円もらえる副業があるけど興味ある?」などと勧誘されます。
- 消費者が無料エステ体験を行っていると、店員から「月1万円がもらえる副業がある。やってみないか」などと勧誘されます。興味を持った消費者は、次回詳しく説明するので、時間を作って来店するよう促されます。
- この時点では消費者には本件副業の具体的な内容は明らかにはされていません。
- そして次回の来店時に、以下の内容を説明されます。
- 月1回、SNSなら何でもいいので、(消費者の)LINEに届く広告を載せてもらえばいい。それだけで1万円がもらえる
- SNSに載せるには、PRエージェント加盟金が必要になる
- 報酬として、銀行口座に毎月4万7千円が入金されるが、PRエージェント加盟金として毎月3万7千円が差し引かれる。その差額の1万円はあなたの収入になる
- この勧誘に応じた消費者に対しては、
- ライフパートナーズに対してPRエージェント加盟金を支払うこと等を内容とする「加盟店契約」
- NEOマーケティングから報酬を受け取ること等を内容とする「業務委託契約」
- の締結を求めるとともに、あわせて150万円と高額のPRエージェント加盟金を分割して支払うためとして、クレジット会社に対して5年間で総額222万円を支払うこととなる「クレジット申込書」の記入を求めます。
- 契約後、本件副業の作業をします。
- これらの契約を交わした消費者に対して、作業の問合せや広告の配信はLINEを通じて行うので、友だち登録をしてほしいというLINEメッセージが届きます。
- 消費者が友だち登録をすると、「チューターReve」といったLINEアカウントから、・SNS用の画像も来月1週目辺りで配信されますので毎月25日までに各々SNSへ載せて公式LINEへスクショを返信してくださいといった指示があるので(別紙2)、消費者はこれに従って、LINEで配信された広告を、自らのSNSに投稿します。
- 報酬の支払は行われず、消費者にはPRエージェント加盟金の引き落としだけが残ります。
- 本件副業を開始した次の月から、毎月の報酬の入金及びPRエージェント加盟金の分割払分の引き落としが始まるので、銀行口座の明細を確認した消費者は、毎月27日の引き落としは行われているものの、毎月25日の報酬の入金がなかったり、大幅に遅れていることに気付きます。
- 消費者は連絡を取ろうとしますが、契約書に記載された電話番号は通じません。また、LINEで問い合わせると、「人数が多く、振込み作業が間に合っていないから待ってほしい」等の返信があります。
- 消費者に対しては、最初の数か月を除き報酬が支払われない、又は最初から全く支払われないものでした。
- 友人などから「無料のエステサロンがある」との情報を得ます。
- 消費者は、無料エステ体験でエステサロン(以下「本件エステサロン」といいます。)に来店した際、「SNSに広告を投稿したら月1万円の報酬がもらえる」(以下「本件副業」といいます。)などと勧誘され、本件2事業者と「加盟店契約」及び「業務委託契約」と称する契約を締結します。消費者は高額の加盟金を支払った上で本件副業を始めるものの、報酬は約束どおりには支払われず、消費者に加盟金の支払だけが残ってしまいます。その手口は次のとおりです。
- 合同調査で確認した事実
- 前記のとおり、消費者は、本件エステサロンにおいて本件副業を勧誘された際、あたかも、本件副業の報酬として毎月4万7千円が消費者の銀行口座に入金され、PRエージェント加盟金の分割払分として3万7千円が差し引かれた差額の1万円が消費者の収入になるかのように告げられ、本件2事業者と「加盟店契約」及び「業務委託契約」と称する契約を締結していましたが、実際には、消費者に対しては、最初の数か月を除き報酬が支払われない、又は最初から全く支払われないものでした(不実告知)。
- 消費者庁から皆様へのアドバイス
- 「無料体験」、「お試し施術」などをきっかけにした勧誘には御用心!
- 美容系エステサロン等では新規顧客獲得や固定客確保を目的に、様々なキャンペーン・営業施策を行っており、中には無料体験やお試し施術、モニター割引、限定サービスなどがあります。
- 無料体験等は、店を訪れるひとつのきっかけであり、これを悪用する事業者も存在します。
- 無料エステというお得な体験をすることができても、その後に様々な勧誘を受けて、最終的には高額な契約をすることになってしまうことがありますので、雰囲気にのまれず、勧誘された契約の内容について慎重に判断してください。
- 高額な支払をするために長期のクレジット契約を求められるようなものには要注意!
- 本件では消費者は、副業に必要と説明され高額なPRエージェント加盟金の支払をするために、長期のクレジット契約を求められています。このような高額な支払を求めながら、「実質無料」などとする「支払った以上の収入が得られる不透明な儲け話」は、実際には虚偽又は誇大なセールストークであるおそれが高いので注意してください。
- このような場合に限らず、大きな金額を長期のクレジットで支払う契約を行おうとする際などには、支払うこととなる分割手数料の金額も含め、契約の内容について時間をかけて冷静に判断しましょう。
- 被害に遭ったらあきらめずに「188(いやや!)」へ電話してみましょう!
- おかしいなと思ったら、素早く消費生活センター等に相談しましょう。
- 「無料体験」、「お試し施術」などをきっかけにした勧誘には御用心!
消費者庁 令和6年度第2回消費生活意識調査結果について
- 「食品ロス問題の認知度」について
- 食品ロス問題を知っているか聞いたところ、知っている(「よく知っている」と「ある程度知っている」のいずれか)と回答した人は78.9%であった。年代別では、70歳代以上の認知度が89.5%と最も高く、20歳代の認知度が65.6%と最も低かった。
- 「賞味期限・消費期限に対する理解度」について
- 賞味期限・消費期限を正しく理解しているか聞いたところ、理解している(「よく理解している」と「ある程度理解している」のいずれか)と回答した人は75.2%であった。
- 「食品を購入する際の賞味・消費期限の意識」について
- 食品を購入する際に賞味・消費期限を意識しているか聞いたところ、「消費予定に関係なく、なるべく期限の長い商品を購入している」と回答した人は46.3%であった。
- 「家庭で余った食品の寄附を行うための効果的な取組」について
- より多くの方が家庭で余った食品の寄附を実施するため、効果的だと思う取組について聞いたところ、「食中毒等が起こらないように、寄附先が食品の安全に配慮し、適切な温度管理や衛生管理をしている」ことが効果的と回答した人の割合が最も高く34.1%であった。次いで「余った食品を回収するボックスがスーパーや自治体施設等に設置されている(29.8%)」となった。他方で、「寄附をしたくない」と回答した人の割合は35.8%であった。
- 年代別にみると、20歳代及び30歳代と比べ、70歳代以上では寄附に対して肯定的な傾向がうかがえる。
- 「飲食店で食べきれなかった料理を持ち帰ること」について
- 飲食店側が、料理を持ち帰った以降の不適切な管理によって食中毒等の事故が発生することを危惧し、持ち帰りを認めないことがあるが、それについてどう思うかを聞いたところ、「持ち帰りを意識したことはない」、「食中毒等の事故が発生する危険性を考えれば、店側が持ち帰りを認めないことはやむをえない」、「持ち帰った後の食品の管理は自分で注意すればよく、店側の十分な注意喚起や容器包装の提供を前提に、持ち帰りを認めるべき」で大きく三分され、それぞれの回答割合は38.6%、35.5%、25.4%となった。
- 「食品ロス問題を認知して食品ロス削減に取り組む人の割合」について
- 食品ロス問題を認知して食品ロス削減に取り組む人の割合を集計したところ、食品ロス問題を「知っている」と回答し、かつ食品ロスを減らすための取組を行っていると回答した人は74.9%であった。
- ※「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(令和2年3月31日閣議決定)」において、「食品ロス問題を認知して削減に取り組む消費者の割合を80%とする」という目標を設定。
- 食品ロス問題を認知して食品ロス削減に取り組む人の割合を集計したところ、食品ロス問題を「知っている」と回答し、かつ食品ロスを減らすための取組を行っていると回答した人は74.9%であった。
消費者庁 通信販売業者【株式会社HappyLifeBio】に対する行政処分について
- 消費者庁が特定商取引法に基づく行政処分を実施しましたので公表します。
- あわせて、チラシ「その通信販売は大丈夫?”最終確認画面”をよく確認しましょう!」を公表します。
- 詳細
- 消費者庁は、美容液等を販売する通信販売業者である株式会社HappyLifeBio(本店所在地:東京都東久留米市)(以下「HappyLifeBio」といいます。)に対し、令和6年10月16日、特定商取引法第15条第1項の規定に基づき、令和6年10月17日から令和7年7月16日までの9か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
- あわせて、消費者庁は、HappyLifeBioに対し、特定商取引法第14条第1項の規定に基づき、法令遵守体制の整備その他の再発防止策を講ずることなどを指示しました。
- また、消費者庁は、HappyLifeBioの代表取締役である藤井一良に対し、特定商取引法第15条の2第1項の規定に基づき、令和6年10月17日から令和7年7月16日までの9か月間、HappyLifeBioに対して前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。
消費者庁 「令和6年度消費生活意識調査(第1回)」の結果について
- 「送料無料」表示見直しの議論の認知について
- 「送料無料」表示を見聞きしたことがある人のうち、「送料無料」表示見直しの議論について、「見聞きしたことがあり、内容もよく知っている」と回答した人の割合は27.0%(19.6%)、「見聞きしたことはあるが、詳しい内容は知らない」が50.5%(52.4%)となった。
- 「送料無料」表示に対する消費者の認識について
- 1.において、「見聞きしたことがあり、内容もよく知っている」と回答した人のうち、「送料無料」表示見直しの議論について、「(A)である」又は「どちらかといえば(A)に近い」と回答した人の割合が、合計で35%(43%)となった一方、「(B)である」又は「どちらかといえば(B)に近い」と回答した人の割合は、合計で56%(49%)となった。
- (A)配送事業者の運賃は無料ではないので、「無料」と表示するのはやめるべきだと思う。
- (B)「送料無料」は消費者にとって魅力的な表示であり、配送事業者に運賃は払われているのだから、問題はないと思う。
- 1.において、「見聞きしたことがあり、内容もよく知っている」と回答した人のうち、「送料無料」表示見直しの議論について、「(A)である」又は「どちらかといえば(A)に近い」と回答した人の割合が、合計で35%(43%)となった一方、「(B)である」又は「どちらかといえば(B)に近い」と回答した人の割合は、合計で56%(49%)となった。
- 「送料無料」表示があった場合の送料に対するイメージについて
- 「送料無料」表示があった場合の送料に対するイメージを聞いたところ、「送料は、購入者向けのサービス(値引き)として、通販事業者が負担している」と回答した人の割合が39.1%で最も高く、次いで「送料は、商品価格等に転嫁されているため、購入者が負担している」が28.9%となった。
- 年代別に見ると、「送料は、送料価格等に転嫁されているため、購入者が負担している」と回答した人の割合は、年代が上がるにつれて高くなり、70歳代以上で38.9%と最も高くなった。
- 再配達を減らすための各取組における実践について
- 再配達を減らすための取組について、実践する(「よく利用(実践)する」と「時々利用(実践)する」のいずれか)と回答した人の割合が最も高いのは、「当初の配達予定日に在宅を心掛ける(77.9%)」となっており、次いで「配達日時を指定(65.7%)」、「同居の家族等に在宅での受取をお願いする(60.0%)」となった。
- 年代別に見ると、20歳代においては、「当初の配達予定日に在宅を心掛ける」の実践率が他の年代より低く、「コンビニ等店舗での受取」、「街の宅配便ロッカーを活用」の実践率は他の年代より高い。
- 他方、60歳代及び70歳代以上では、「当初の配達予定日に在宅を心掛ける」の実践率が他の年代より高く、「コンビニ等店舗での受取」、「街の宅配便ロッカーを活用」の実践率が他の年代より低い。
消費者庁 「デジタル社会における消費者法制の比較法研究」プログレッシブ・レポートの公表
- 社会のデジタル化の進展に伴い、健全なデジタル取引環境を確保し、消費者の利益を守るため、世界各国で法整備が進んでいる。消費者庁新未来創造戦略本部の国際消費者政策研究センターでは、デジタル社会に対応する消費者法の動きに着目し、EU法加えて英米法などを踏まえて研究するため、松本恒雄一橋大学名誉教授を筆頭に川和功子同志社大学教授、芦野訓和専修大学教授、馬場圭太関西大学教授、永岩慧子龍谷大学准教授の5名の客員主任研究官により「デジタル社会における比較消費者法研究会」(以下、「本研究会」という。)を発足した。その成果として、デジタル取引における契約適合性の要件や売主の責任、及び無償契約における個人情報データ提供の対価性等について、EU法との比較法的考察を、2023年6月にリサーチ・ディスカッション・ペーパーとして公表した。(本研究会のこれまでの成果物は、消費者庁ウェブサイトに掲載されている。)
- その後も、社会のデジタル化はますます進み、特に取引そのものがデジタル化されている。その結果、大手オンラインショッピングモールやSNSサイト等の仲介サービス企業が、取引環境の提供において大きな力を持つようになった。仲介サービス企業の一定の責任について各国で法整備が始まっている。
- また、AIによる個別提案やダークパターン等、従来の取引では想定されていなかった手法も次々に現われている。これらの問題は、消費者の自主的で合理的な意思決定を歪める可能性も指摘されている。
- こうした社会背景を踏まえ、本研究会では、デジタル化された取引に着目し、近時の国際的な動向を研究することとした。本稿はこうした研究の中間報告として公表するものである。デジタル化に伴う新たな課題とそれに対応する近時の国際的な動向は、国内の政策立案に携わる者や研究者のみならず、消費者や事業者にとっても関心を引くテーマとなっていると考えている。また、デジタル化された取引は、国境を越えて行われ、発生する問題も各国で同一又は類似すると考えられる。消費者保護の観点からは、世界各国の法制度と調和した解決方法が望まれることから、本稿がそうした政策立案の参考の一つとなることを期待する
- 出品事業者の表示に関するアマゾンの調査義務-ドイツ・フランクフルト高等裁判所2023年12月21日判決-
- はじめに
- 本報告では、2023年12月21日にドイツ・フランクフルト高等裁判所で下された判決の概要について報告し、今後考えられるオンラインプラットフォーム事業者の責任について考察するための礎とする
- 事案
- 原告は1912年に設立されたドイツ不正競争防止法(UWG) 8b条に基づく適格事業者団体であり、被告はAmazonグループの一員であり「…….de」のドメインでAmazonマーケットプレイス販売のプラットフォームを運営する事業者である。出店者はこのプラットフォームを利用し、自己の名前および自己のアカウントで商品を出品・販売することができる(登記上の本社はルクセンブルクにある)。
- 本件は、プラットフォーム上の表示がUWGに違反するとして、原告が被告に対し差止め及び警告費用(Abmahnkosten)を求める事案である。
- 2021年6月17日の訴状では、原告は被告に対し、被告のプラットフォーム上では「豆乳(Sojamilch)」、「オーツミルク(Hafermilch)」、「ライスミルク(Reismilch)」と表示された多くの製品が出品されているが、これらは植物由来の製品であり本物の牛乳由来の製品ではないことから、このような「ミルク(Milch)」という表示は本物の牛乳から作られた製品にのみ使用できるというEUの牛乳・乳製品の表示規制に違反しており、被告はこれらの出品を停止し、他の出品者からも同様の表示がされていないことを確認し、同様の表示をしないことを保証するよう求めた。
- これに対して被告は、以下のように反論した。すなわち、「豆乳」、「オーツミルク」、「ライスミルク」という用語は一般的かつ通常の名称として日常的に使用されており誤解を招く可能性もないことから消費者の購入決定意思に何らの影響を及ぼすことはなく、今回のような事案ではプラットフォーム事業者はせいぜい問題のコンテンツを削除する義務を負うだけであり、本事案においても、不適切な表示を削除し、本件プラットフォームでは再度出品することができないようにしている。そして、それを回避する義務は未成年者の保護や製品の安全性といった特に保護に値する利益が問題となった場合にのみ存在し、今回のような事案では、そのような違反がないか調査するさらなる義務はない。
- なお、本件プラットフォームでは、削除後も類似の表示が見られ入手可能であった。また、原告は、Amazonのおすすめとして、ビーガン向けミルク代替製品を「ライスミルク」と表示し推奨していることも指摘している。
- ここでの争点は、(a)牛乳由来でない製品に「ミルク」という表示を使用することができるか、さらには、(b)プラットフォーム事業者であるAmazonは、自社が提供するプラットフォームを利用して出品する業者が動物の乳由来でない製品に「ミルク」という表示をしていることについて責任を負うかという点である。
- 第1審:フランクフルト地方裁判所第12商事部2022年9月22日判決
- 第1審は、被告に対し、不正な取引行為の一般的な禁止規定であるUWG 3a条に基づき、ウェブサイト上で第三者に対して「豆乳」、「オーツミルク」、「ライスミルク」と表示されたビーガン向けミルク代替製品を購入する機会を与えることを禁じ、警告費用として50ユーロの支払を命じた。
- 争点(a)について、「ミルク」という呼称を植物由来の製品を示すために使用できるのは、その製品がEU委員会決定(2010/791)のリストに記載されている場合という例外的な場合のみであり、今回はこれにあてはまらないとした。
- 争点(b)については、以下のように判断した。
- すなわち、プラットフォーム事業者の調査義務の存否とその範囲は、影響を受けるすべての利益に関連する法的評価を考慮し判断することになり、個々のケースによって異なるが、プラットフォーム事業者は、通常、自己のプラットフォームで送信または保存する情報を監視したり、違法状況を調査したりする義務はなく、明らかな侵害の通知を受けたなどして法律違反を認識した場合に直ちにそれを削除する義務を負うにすぎない(いわゆる「通知と削除」)。一方、知的財産権の侵害が生じた場合には、可能であればそのような侵害がさらに起きないよう予防措置を講ずる必要がある。
- さらに、今回の事案は青少年に有害であるなどの事例ではないが、食品に関するものである。食品もまた高度に管理の対象であり、広義には健康保護すなわち高い保護法益になり得るものである。
- また、プラットフォーム事業者は、問題となる検索用語を検出するフィルタープログラムを作成するのに多大な労力を要するわけではない。
- 以上のことから、プラットフォーム事業者は、他の出品者からも同様の表示がされていないことを確認し、同様の表示をしないことを保証すべきという原告の主張を認めた。
- 第2審:フランクフルト高等裁判所第6民事部2023年12月21日判決
- 第2審は、一部用語を追加修正した上で、原告、被告両者の控訴を棄却した(すなわち、1審の内容が支持された)。
- 争点(a)について、1審と同様に例外的な事例に当たらないとした。
- 争点(b)について、食品に関するEUの規制は、特に、生産・販売の経済的条件および製品の品質の改善、消費者保護、ならびに生産者、取引者および消費者の利益となる競争条件の維持に寄与することを意図しており、本件のような「乳」および「乳製品」という名称が動物の乳に由来する製品を明確に識別するために使用できなくなることは消費者保護に反し、「乳」および「乳製品」の品質だけでなく、生産・販売の経済的条件を改善するという目的にも反することになる。EU立法者は規則(EU)1308/2013において、品質基準を統一し、消費者が混同するリスクを回避するため、「生乳」という呼称は「真正な」乳製品にのみ使用できると定めているが、この規則は、牛乳や乳製品などの農産物の共通市場組織を確立するものである、したがって、当該商品を削除するだけでなく、将来に起こりうる同様の違反を防止する義務を負うとした。
- 今後の行方
- フランクフルト高等裁判所は、他の大手プラットフォーム事業者にも影響を及ぼす可能性があるとして、ドイツ連邦司法裁判所(ドイツの最上級審)への上告を認めている。上告審の結果が待たれるところである。
消費者庁 第5回公益通報者保護制度検討会(2024年10月2日)
▼ 資料3-3 公益通報者の探索行為及び公益通報の妨害行為の禁止について
- 公益通報者の探索行為の禁止
- 公益通報者の探索行為の禁止については、中間論点整理に以下の記載がある。
- 「通報者探索の防止については、体制整備義務の一部として、法定指針に規定されているが、公益通報がなされた後、事業者内で公益通報者を特定することを目的とした調査などが行われることは、公益通報者自身が脅威に感じることはもちろん、公益通報を検討している他の労働者を萎縮させるなどの悪影響があり、法律上、通報者探索を禁止する明文規定を設けるべきとの意見があった。また、法律上明記するだけではなく、通報者を探索する行為に対し、行政措置又は刑事罰を規定すべきとの意見もあった。」
- 一方、現行制度上、事業者は、「体制の整備その他の必要な措置」(法第11条第2項)として以下の通り、通報者探索を防止する措置をとることが求められている。
- 公益通報の妨害行為の禁止
- 公益通報の妨害行為の禁止については、中間論点整理に以下の記載がある。
- 「労働者に公益通報しないことを約束させるなど、公益通報を妨害する行為は、本法の趣旨に大きく反する行為であり、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国などにおいて、法律上、禁止されている他、通報を妨害する合意等を無効とする規定もある。日本においても、こうした行為を禁止する明文規定を設けるとともに、違反時の行政措置又は刑事罰を規定すべきとの意見があった。」
- 一方、現行制度では、3号通報の保護要件の1つとして、「役務提供先から前2号に定める公益通報〔注:1号通報及び2号通報〕をしないことを正当な理由がなくて要求された場合」が規定されているにとどまり、禁止規定はない。
▼ 資料3-7 濫用的通報について
- 中間論点整理「2 公益通報を阻害する要因への対処」(5)
- 濫用的通報については、中間論点整理で、以下のとおり記載されている。
- 「日本の大企業の内部通報窓口には、公益通報には該当しない通報が多数なされており、従事者の負担が非常に大きく、重要な内部通報が見逃されないようにする必要があること、また、EU指令第23条には、通報者が故意に虚偽の通報を行った際の罰則が規定されていることを踏まえ、濫用的通報や虚偽通報に対し、罰則を設けるべきとの意見があった。
- 上記意見について、悪性の強さが明らかで、公益通報者保護制度を害するような行為を明確に処罰対象とすることは、制度の健全性を保つ上でメリットになる一方、新設した罰則の存在自体によって、公益通報をしようとする労働者が萎縮するというデメリットが生じるということもあり得、メリットとデメリットの両方について今後更に検討する必要があるとの提案があった。また、刑法には、虚偽告訴罪、名誉毀損罪及び偽計業務妨害罪があることから、これらの犯罪規定との関係を整理する必要があるとの提案もあった。」
- そこで本資料では、「濫用的通報」として考えられる行為及びこれに対応する犯罪類型等を整理する。
- 「濫用的通報」として考えられる行為
- 通報内容が虚偽であると知りながら行う通報
- 事業者又は被通報者の社会的評価を低下させる内容であり、通報先について「公然」性がある場合には、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)が成立し得る。
- 通報先が捜査機関等である場合には、虚偽告訴罪(刑法第172条)が成立し得る。
- 偽計業務妨害罪(刑法第233条後段)が成立し得る。
- 既に是正され、解決した事案であることを知りながら、専ら自己の利益を実現するために行う通報
- 「不正の目的」であるとして公益通報該当性が否定される可能性がある。
- 事業者又は被通報者の社会的評価を低下させる内容であり、通報先について「公然」性がある場合には、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)が成立し得る。
- 軽微な事実を殊更誇張して繰り返し行う通報
- 通報対象事実に該当しなければ、その通報は公益通報に該当しない。
- 以下に示す犯罪類型は、具体的な態様次第で該当する可能性があるものを挙げているものであり、例示している各行為が直ちに犯罪に該当することを意味するものではない。
- 比較的軽微であっても、犯罪行為若しくは過料対象行為又は最終的に刑罰若しくは過料につながる行為であれば、通報対象事実に該当し、その通報は公益通報に該当し得る。誇張して通報しても、虚偽でない限り、直ちに犯罪には該当しないと考えられる。
- 通報窓口担当者に対して威圧的な態度で行う通報
- 態様が深刻であれば、侮辱罪(刑法第231条)、威力業務妨害(刑法第234条)、脅迫罪(刑法第222条第1項)、強要罪(刑法第223条)が成立し得る。
- 通報内容が虚偽であると知りながら行う通報
消費者庁 電気・ガスの契約トラブルなどに気をつけましょう (令和6年9月版)
- 電気・ガスの料金メニューは自由に選ぶことができますが、契約トラブルなどにあわないよう、気をつけるべきポイントをお知らせします。
- 今回のポイント
- 料金メニューを選ぶ際は、契約内容をよく確認!
- 勧誘があった場合には、勧誘にきている事業者名をよく確認!
- 契約内容、契約先などの確認について
- 電気・ガスの勧誘を通じて、契約内容、契約先の変更を検討されることもあるかと思われます。最近、以下のような営業に関する相談が寄せられていますので御注意ください。
- 大手電力会社と誤認させるような営業
- 「○○電力の方から来た者です。」など、大手電力会社の名前を挙げる勧誘のことです。「…の方から来た」とはいったいどういう意味なのでしょうか。目の前にいる人がどの会社の所属であるか確認し、名刺等を控えるようにしましょう。あわせて、代理店等として勧誘があった場合は、どの会社の代理店等であるかもしっかりと確認しましょう。
- 建物全体の契約が切り替わる、といった誤認を与える営業
- 「アパート全体で契約が切り替わる。」といった説明で、建物全体で契約を切り替える必要があるような誤認を与えるなどの勧誘のことです。本当に建物全体で契約を切り替える必要があるのか、建物の管理会社や大家さんに事前にしっかりと確認しましょう。
- スマートメーターへの切替えに関連した営業
- 「電気メーターのスマートメーター化が完了し、電気料金がお安くなります。」といった、スマートメーターへの交換と併せた勧誘のことです。本当に電気料金が安くなるのか、なぜ安くなるのかを事前にしっかりと確認しましょう。
- 大手電力会社と誤認させるような営業
- 電気・ガスの勧誘を通じて、契約内容、契約先の変更を検討されることもあるかと思われます。最近、以下のような営業に関する相談が寄せられていますので御注意ください。
- 本件に関連するQ&A
- Q1:契約中の料金メニューの内容は、どのように確認できますか。
- A1:契約先によって異なりますが、事業者のHPやマイページなどから確認できる場合が多いです。不明な点は、契約先に問い合わせましょう。
- Q2:契約先がわからない場合はどうすればいいですか。
- A2:契約中の電力会社やガス会社の確認方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられますので、ご確認ください。
- クレジットカードや銀行の明細を確認する。
- 他のサービス(通信費など)とセットで、電気・ガスが契約されている場合もあるため、他のサービスの契約書などを確認する。
消費者庁 ウェブサイト上では適正かつ低額な料金で駆除作業を行うかのように表示しているが、実際には高額な料金を請求するゴキブリ駆除業者に関する注意喚起
- ウェブサイト上では適正かつ低額な料金で駆除作業を行うかのように表示しているが、実際には高額な料金を請求するゴキブリ駆除業者に関する注意喚起を行いました。
- 詳細
- 令和6年4月以降、ゴキブリ駆除業者のウェブサイト上で、「関東エリア 最安レベルに挑戦!追加料金一切なし!税込550円~」、「シンプル料金&明朗会計」、「駆除作業の面積に応じた料金」などの表示を見た消費者が、適正かつ低額な料金でゴキブリ駆除ができると思い駆除作業を依頼したところ、消費者宅に訪問した作業員の作業内容に照らして過大といえる高額な料金を請求されたといった相談が、20代及び30代の女性を中心に、各地の消費生活センターなどに数多く寄せられています。
- 消費者庁が調査を行ったところ、株式会社ORBITAL PERIOD(以下「本件事業者」といいます。)が、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為(虚偽・誇大な広告・表示)を行っていたことを確認したため、消費者安全法(平成21年法律第50号)第38条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者の皆様に注意を呼び掛けます。
- また、この情報を都道府県及び市町村に提供し、周知します。
消費者庁 通信販売業者【株式会社SUNSIRI】に対する行政処分について
- 消費者庁が特定商取引法に基づく行政処分を実施しましたので公表します。
- 詳細
- 消費者庁は、美容クリーム等を販売する通信販売業者である株式会社SUNSIRI(本店所在地:埼玉県川越市)(以下「SUNSIRI」といいます。)(注)に対し、令和6年10月3日、特定商取引法第15条第1項の規定に基づき、令和6年10月4日から令和7年1月3日までの3か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
- (注)同名の別会社と間違えないよう会社所在地なども確認してください。
- あわせて、消費者庁は、SUNSIRIに対し、特定商取引法第14条第1項の規定に基づき、法令遵守体制の整備その他の再発防止策を講ずることなどを指示しました。
- また、消費者庁は、SUNSIRIの代表取締役である榊原 実(さかきばら みのる)に対し、特定商取引法第15条の2第1項の規定に基づき、令和6年10月4日から令和7年1月3日までの3か月間、SUNSIRIに対して前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。
- 消費者庁は、美容クリーム等を販売する通信販売業者である株式会社SUNSIRI(本店所在地:埼玉県川越市)(以下「SUNSIRI」といいます。)(注)に対し、令和6年10月3日、特定商取引法第15条第1項の規定に基づき、令和6年10月4日から令和7年1月3日までの3か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
消費者庁 「医薬品違法プロモーションにご注意」と呼びかけるはがきについて(注意喚起)
- 今般、複数の東京都内の病院に対して、「医薬品違法プロモーションにご注意」との記載と併せて、消費者庁への情報提供を呼びかけるはがきが届いていることが確認されました。
- はがきには、ある会社が景品表示法に抵触するプロモーションを行っていること、そのプロモーションの内容を掲載した動画サイトに誘導するQRコード、及び、被害の相談窓口として消費者庁の連絡先が掲載されていました。
- 消費者庁は、特定の事業者や消費者に対してはがきを送付して、注意喚起を呼びかけたり、被害の情報提供を求めたりすることはありませんので、消費者及び事業者の皆様におかれましては、ご注意ください。
【2024年9月】
消費者庁 No.1表示に関する実態調査報告書(令和6年9月26日公表)
▼ No.1表示に関する実態調査報告書(概要)
- 調査背景
- 近時、No.1表示に関する措置命令が増加(令和5年度:13事業者/44事業者がNo.1表示関連)
- いずれの事案もイメージ調査を根拠に、「顧客満足度No.1」等と表示されていた。
- 顧客満足度など「第三者の主観的評価」を指標とするNo.1表示は、世の中に多く見られるが、売上額などといった客観的な指標ではないだけに、恣意的・安易な調査に基づいている可能性がある。
- 一般消費者による自主的かつ合理的な商品等の選択を保護する観点から、No.1表示に関する景品表示法上の考え方を示すため、実態調査を実施
- 収集したサンプルについて、No.1表示等の指標とされているフレーズにより分類
- No.1表示では、「顧客満足度」、「品質満足度」、「コスパ満足度」等のように、商品等に満足したことを示すフレーズが71件と最も多かった。
- 高評価%表示では、「医師の○%が推奨」、「おすすめしたい○○」等のように、専門家等が商品等の購入・利用を勧めていることを示すフレーズが32件と最も多かった。
- No.1表示に関する実態調査(消費者の意識調査・No.1表示について)
- 新しい商品等を購入する際に、No.1表示が購入の意思決定に「かなり影響する」又は「やや影響」すると回答した者は、約5割であった。
- No.1表示が購入の意思決定に与える影響は大きい
- 4割を超える消費者が「同種の他社商品と比べて優れていると思う」と回答
- 4割を超える消費者が「実際の利用者に調査をしていると思う」と回答
- 消費者は、実際の利用者による評価が「No.1」である商品等だと認識するがゆえに、同種の他社商品等と比べて優れていると認識するとうかがわれた。
- No.1表示に関する実態調査(消費者の意識調査・高評価%表示について)
- 新しい商品等を購入する際に、高評価%表示が購入の意思決定に「かなり影響する」又は「やや影響」すると回答した者は、約5割であった。
- 消費者は、医師等の専門家が、客観的なデータや専門的な知見に基づいて「推奨」している商品だと認識するがゆえに、同種の他社商品等と比べて優れていると認識するとうかがわれた。
- 「医師の90%が推奨」について、約5割の消費者が「同種の他社商品と比べて優れていると思う」と回答
- 約5割の消費者がその商品は「医師の知見による専門的な根拠や裏付けがある」等と回答
- 高評価%表示が購入の意思決定に与える影響は大きい
- No.1表示に関する実態調査(事業者へのヒアリング調査)
- 目的
- 「競合他社がNo.1表示を行っているため」という回答が多かった。
- 「他社の商品等と比べて自社の商品等が見劣りするのを避けるため」との回答も複数見られた。
- 経緯
- No.1表示等を行うことを検討した経緯として、調査会社・コンサルティング会社等から勧誘・提案を受けたことを挙げる回答が多かった。
- 費用の安さ(1フレーズ10万円~数十万円)を魅力に感じたという回答が多かった。
- 景品表示法上の適法性を強調して不適切な調査の勧誘を行っている調査会社も見られた。
- 調査内容の認識
- ヒアリング対象広告主の多くは、表示の根拠としている調査の基本的な内容(アンケートの質問項目や、比較対象としている競合他社の商品等)を把握していなかった。
- 調査内容を確認しなかった理由について、「調査会社を信頼していた」、「他社も同じ調査会社を起用していたので問題ないと思っていた」等の回答が多かった。
- 表示の根拠を十分に確認しておらず、不当表示等を未然に防止するための管理上の措置(景品表示法第22条第1項)が十分にとられている様子はうかがわれなかった
- 目的
- No.1表示等についての景品表示法上の考え方
- No.1表示等が、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となる。
- 合理的な根拠と認められるには、次の4点を満たすことが必要
- 比較対象となる商品・サービスが適切に選定されている
- 「No.1」を訴求する以上、原則として、主要な競合商品・サービスを比較対象とする必要がある。
- 問題となる例
- 「○○サービス 満足度1」等と表示しているが、○○に属するサービスのうち市場における主要なものの一部又は全部が比較対象に含まれていない 等
- 調査対象者が適切に選定されている(※高評価%表示も同様)
- 表示内容から認識される調査対象者を選定する必要がある。
- 問題となる例
- 「顧客満足度No.1」等と、実際に商品・サービスを利用したことがある者を対象に調査を行っているかのように示す表示をしているが(※)、実際には、単なるイメージ調査のみを行っている(※)イメージ調査の結果によることを注記していても、「顧客満足度No.1」という表示内容と調査結果が適切に対応していないことに変わりはない。
- 「医師の○%が推奨」等と、医師が専門的な知見に基づく判断として「推奨」しているかのように示す表示をしているが、実際には、医師の専門分野(診療科など)が、商品・サービスを評価するに当たって必要な専門的知見と対応していない 等
- 調査対象者が適切に選定されている(※高評価%表示も同様)
- 恣意的な調査とならないようにする必要がある。
- 問題となる例
- 「おすすめしたい」商品を選択させる場合に、自社商品を選択肢の最上位に固定して誘導する
- No.1(○%以上)になったタイミングで調査を終了している 等
- 表示内容と調査結果が適切に対応している(※高評価%表示も同様)
- 比較対象となる商品・サービスが適切に選定されている
- 不当なNo.1表示等の防止に向けて
- 不当なNo.1表示等がされる要因・背景
- 動機の存在
- 広告主は、広告効果を期待して、あるいは、「競合他社に見劣りしないようにしたい」等の理由で、No.1表示等を行いたいという動機を有している
- 機会の存在
- 不適切な調査を廉価で行う調査会社の存在により、(No.1)の動機を有する広告主は、容易に、主観的評価の調査を委託することができる環境にある
- 安易な正当化
- 広告主は、「他社も同じ調査会社を利用しているから大丈夫」、「調査会社が適法と言っている」等の理由で、自ら調査内容を確認することなく、法的に問題がないものと結論付けてしまっている
- 動機の存在
- 広告主における取組
- 事業者が講ずべき管理上の措置(景表法22条第1項)の徹底
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令遵守の方針等の明確化
- 表示等の根拠となる情報の確認
- 表示等の根拠となる情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
- 一般消費者が表示の根拠となる情報を確認できるようにすることが望ましい
- 例)表示物に調査方法の概要を直接記載することや、それが難しい場合にQRコードにより確認できるようにすること
- 事業者が講ずべき管理上の措置(景表法22条第1項)の徹底
- 消費者庁における取組
- 本調査報告書において示された考え方を、関係する事業者団体等とも連携し事業者・消費者に周知(事業者が講ずべき管理上の措置に関する普及・啓発活動も併せて実施)
- 本調査結果も踏まえ、迅速な指導による是正を含め、景品表示法に基づく厳正な対処
- 不当なNo.1表示等がされる要因・背景
消費者庁 電話勧誘販売業者【株式会社即決営業】に対する行政処分について
- 消費者庁は、営業活動の能力向上を目的とした商品の販売及び研修に係る役務の提供を行う電話勧誘販売業者である株式会社即決営業(本店所在地:大阪府大阪市)(以下「即決営業」といいます。)に対し、令和6年9月4日、特定商取引法第23条第1項の規定に基づき、令和6年9月5日から令和6年12月4日までの3か月間、電話勧誘販売に関する業務の一部(勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
- あわせて、消費者庁は、即決営業に対し、特定商取引法第22条第1項の規定に基づき、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築することなどを指示しました。
- また、消費者庁は、即決営業の代表取締役である堀口龍介(ほりぐち りゅうすけ)及び森裕也(もり ゆうや)に対し、特定商取引法第23条の2第1項の規定に基づき、令和6年9月5日から令和6年12月4日までの3か月間、即決営業に対して前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含みます。)の禁止を命じました。
▼ 電話勧誘販売業者【株式会社即決営業】に対する行政処分について
- 処分の内容
- 業務停止命令
- 即決営業は、令和6年9月5日から令和6年12月4日までの間、電話勧誘販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
- 即決営業が行う電話勧誘販売に関する売買契約及び役務提供契約の締結について勧誘すること。
- 即決営業が行う電話勧誘販売に関する売買契約及び役務提供契約の申込みを受けること。
- 即決営業が行う電話勧誘販売に関する売買契約及び役務提供契約を締結すること。
- 即決営業は、令和6年9月5日から令和6年12月4日までの間、電話勧誘販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
- 指示
- 即決営業は、特定商取引法第17条の規定により禁止される契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘、特定商取引法第19条第1項に規定する書面の交付義務に違反する行為(不交付)並びに特定商取引法第21条第1項の規定により禁止される売買契約及び役務提供契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしていた。かかる行為は、特定商取引法に違反するものであることから、即決営業は、当該行為の発生原因について、調査分析の上検証し、再発防止策を講ずるとともに、コンプライアンス体制を構築し、これを即決営業の役員及び従業員に、前記(1)の業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。
- 即決営業は、電話勧誘販売により、本件売買契約及び本件役務提供契約を締結しているところ、令和4年12月1日から令和6年9月4日までの間に即決営業との間で本件売買契約及び本件役務提供契約を締結した全ての相手方に対し、以下の(ア)から(ウ)までの事項を、消費者庁のウェブサイト(https://www.caa.go.jp/)に掲載される、即決営業に対して前記(1)の業務停止命令及び本指示をした旨を公表する公表資料を添付して、令和6年10月4日までに書面により通知し、同日までにその通知結果について消費者庁長官宛てに書面又は電磁的方法(通知したことを証明するに足りる証票及び通知書面を添付すること。)により報告すること。
- なお、令和6年9月18日までに、契約の相手方に発送する予定の通知書面の記載内容及び同封書類一式をあらかじめ消費者庁長官宛てに書面又は電磁的方法により報告し承認を得ること。
- (ア)前記(1)の業務停止命令の内容
- (イ)本指示の内容
- (ウ)即決営業は、少なくとも令和4年12月から令和5年8月までの間
- に、電話勧誘販売に係る本件売買契約及び本件役務提供契約の解除を妨げるため、実際には、本件商品の販売及び本件役務の提供が電話勧誘販売に該当し、本件売買契約及び本件役務提供契約は特定商取引法第24条第1項の規定に基づく解除(以下「クーリング・オフ」という。)をすることができるものであるにもかかわらず、消費者に対し、「契約後のクーリング・オフできませんよ」、「クーオフや解約はできないんですよ」などと、あたかも本件売買契約及び本件役務提供契約はクーリング・オフをすることができないものであるかのように告げたこと。
- 業務停止命令
- 処分の根拠となる法令の条項
- 特定商取引法第22条第1項及び第23条第1項
- 処分の原因となる事実
- 即決営業は、以下のとおり、特定商取引法に違反する行為をしており、消費者庁は、電話勧誘販売に係る取引の公正並びに購入者及び役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。
- 契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘(特定商取引法第17条)
- 即決営業は、少なくとも令和4年12月から令和5年8月までの間に、「こんな高い教材、買えないですよ」、「買うのは無理です」などと、電話勧誘販売に係る本件売買契約及び本件役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、「うちの教材は、みんな安かったって言ってますよ」、「できないって言うのは駄目だって」などと、当該契約の締結について勧誘をした。
- 書面の交付義務に違反する行為(不交付)(特定商取引法第19条第1項)
- 即決営業は、少なくとも令和4年12月から令和5年8月までの間に、特定商取引法第2条第3項に規定する電話勧誘行為により、同項に規定する電話勧誘顧客と本件売買契約及び本件役務提供契約をスマートフォン等の情報処理の用に供する機器により締結したとき、遅滞なく、その契約の内容を明らかにする書面を購入者及び役務の提供を受ける者に交付していない。
- 売買契約及び役務提供契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為(特定商取引法第21条第1項)
- 即決営業は、少なくとも令和4年12月から令和5年8月までの間に、電話勧誘販売に係る本件売買契約及び本件役務提供契約の解除を妨げるため、実際には、本件商品の販売及び本件役務の提供が電話勧誘販売に該当し、本件売買契約及び本件役務提供契約はクーリング・オフをすることができるものであるにもかかわらず、消費者に対し、「契約後のクーリング・オフできませんよ」、「クーオフや解約はできないんですよ」などと、あたかも本件売買契約及び本件役務提供契約はクーリング・オフをすることができないものであるかのように告げた。
- 契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘(特定商取引法第17条)
- 即決営業は、以下のとおり、特定商取引法に違反する行為をしており、消費者庁は、電話勧誘販売に係る取引の公正並びに購入者及び役務の提供を受ける者の利益が著しく害されるおそれがあると認定した。
- 処分の内容
- 堀口龍介が、令和6年9月5日から令和6年12月4日までの間、次の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁止すること。
- 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号。以下「特定商取引法」という。)第2条第3項に規定する電話勧誘販売(以下「電話勧誘販売」という。)に関する売買契約及び役務提供契約の締結について勧誘すること。
- 電話勧誘販売に関する売買契約及び役務提供契約の申込みを受けること。
- 電話勧誘販売に関する売買契約及び役務提供契約を締結すること。
- 堀口龍介が、令和6年9月5日から令和6年12月4日までの間、次の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を禁止すること。
消費者庁 機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の 製造又は加工の基準の制定及び食品表示基準について
▼ 概要
- 食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するため、食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設。(現行、任意制度となっている栄養表示についても、義務化が可能な枠組みとする)
- 整合性の取れた表示基準の制定
- 消費者、事業者双方にとって分かりやすい表示
- 消費者の日々の栄養・食生活管理による健康増進に寄与
- 効果的・効率的な法執行
- 目的
- 消費者基本法の基本理念を踏まえて、表示義務付けの目的を統一・拡大
- 新制度
- 食品を摂取する際の安全性
- 一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保
- 基本理念(3条)
- 食品表示の適正確保のための施策は、消費者基本法に基づく消費者政策の一環として、消費者の権利(安全確保、選択の機会確保、必要な情報の提供)の尊重と消費者の自立の支援を基本
- 食品の生産の現況等を踏まえ、小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響等に配慮
- 新制度
- 消費者基本法の基本理念を踏まえて、表示義務付けの目的を統一・拡大
- 食品表示基準(4条)
- 内閣総理大臣は、食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するため、食品表示基準を策定
- 名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、 原産地その他食品関連事業者等が表示すべき事項
- 前号に掲げる事項を表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項
- 食品表示基準の策定・変更~厚生労働大臣・農林水産大臣・財務大臣に協議/消費者委員会の意見聴取
- 内閣総理大臣は、食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するため、食品表示基準を策定
- 食品表示基準の遵守(5条)
- 食品関連事業者等は、食品表示基準に従い、食品の表示をする義務
- 指示等(6条・7条)
- 内閣総理大臣(食品全般)、農林水産大臣(酒類以外の食品)、財務大臣(酒類)~食品表示基準に違反した食品関連事業者に対し、表示事項を表示し、遵守事項を遵守すべき旨を指示
- 内閣総理大臣~指示を受けた者が、正当な理由なく指示に従わなかったときは、命令
- 内閣総理大臣~緊急の必要があるとき、食品の回収等や業務停止を命令
- 指示・命令時には、その旨を公表
- 立入検査等(8条~10条)
- 違反調査のため必要がある場合~立入検査、報告徴収、書類等の提出命令、質問、収去
- 内閣総理大臣等に対する申出等(11条・12条)
- 何人も、食品の表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認めるとき~内閣総理大臣等に申出可
- 内閣総理大臣等は、必要な調査を行い、申出の内容が事実であれば、適切な措置
- 著しく事実に相違する表示行為・おそれへの差止請求権(適格消費者団体~特定商取引法、景品表示法と同様の規定)
- 何人も、食品の表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認めるとき~内閣総理大臣等に申出可
- 権限の委任(15条)
- 内閣総理大臣の権限の一部を消費者庁長官に委任
- 内閣総理大臣・消費者庁長官の権限の一部を都道府県知事・保健所設置市等に委任(政令)
- 罰則(17条~23条)
- 食品表示基準違反(安全性に関する表示、原産地・原料原産地表示の違反)、命令違反等について罰則を規定
- 附則
- 施行期日~公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める日から施行
- 施行から3年後に見直す旨規定を設けるほか、所要の規定を整備
- (参考)表示基準(府令レベル)の取扱い
- 表示基準の整理・統合は、府令レベルで別途実施(法律の一元化による表示義務の範囲の変更はない。)
- 今後の検討課題
- 中食・外食(アレルギー表示)、インターネット販売の取扱い~当面、実態調査等を実施
- 遺伝子組換え表示、添加物表示の取扱い~当面、国内外の表示ルールの調査等を実施
- 加工食品の原料原産地表示の取扱い~当面、現行制度の下での拡充を図りつつ、表示ルールの調査等を実施
- 上記課題のうち、準備が整ったものから、順次、新たな検討の場で検討を開始
- 食品表示の文字のポイント数の拡大の検討 等
消費者庁 人気ブランドのヘルスケア又はオーディオ家電等を販売すると称する 偽サイトに関する注意喚起
- SNSを見ていると、「オムロン」又は「アンビー」のブランドロゴを使用したヘルスケア又はオーディオ家電等に関する広告が表示され、当該広告のリンク先のウェブサイトで商品を注文したところ、これらのブランドとは関係のない商品や模倣品が届いたなどという相談が、各地の消費生活センター等に数多く寄せられています。
- 消費者庁が調査を行ったところ、上記行為を行う事業者が、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為(消費者を欺く行為)を行っていたことを確認したため、消費者安全法(平成21年法律第50号)第38条第1項の規定に基づき、消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を公表し、消費者の皆様に注意を呼びかけます。
- また、この情報を都道府県及び市町村に提供し、周知します。
▼ 人気ブランドのヘルスケア又はオーディオ家電等を販売すると称する 偽サイトに関する注意喚起
- 消費者庁から皆様へのアドバイス
- 被害に遭わないために
- SNS上の広告等から誘導されたサイトでは、次の点に注意しましょう
- ブランドロゴが表示されているだけでは危険
- ブランドロゴだけで信用することなく、その事業者の公式サイト等に、偽サイトに関する注意喚起情報がないか確認しましょう。
- アンビーについては、外箱や充電ケース、イヤホン本体等にブランドロゴが表記された一見して模倣品と見分けることが困難な商品が届いた事例もありました。
- URLやドメインに違和感はないか
- 公式通信販売サイトのURLであるかきちんと確認しましょう。偽サイトによっては、公式通信販売サイトのものに酷似したURLが使われている場合もありますので注意が必要です。
- JC3(一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター)では、収集した偽ショッピングサイト情報をScamAdviser(SAGICHECK)に提供しています。この情報は「SAGICHECK」(https://sagicheck.jp/)にて確認できますので、これを利用してウェブサイトの危険性の有無を確認してください。
- ただし、インターネット上の情報は日々変化しており、「SAGICHECK」の判定結果は完璧ではありませんので、この点に注意して使用してください。
- 「特定商取引法に基づく表示」はあるか
- 特定商取引法では、事業者が通信販売をする場合の広告において、事業者の氏名(名称)、電話番号等を表示することを原則として義務付けていますが、本件偽サイトには、本件事業者名や電話番号等の表示がないものが多くありました。
- ウェブサイト上に、電話番号などの連絡先を含めて特定商取引法に基づく表示がされていることを確認の上、トラブルに備えて注文画面等をスクリーンショットで残しておきましょう。
- 極端な割引を行うかのように示すものでないか
- 本件偽サイトには、「お買い得 2点目3,000円値下げ 期間限定」、「最後の1時間限定60%OFF!」等と複数台を購入すると単価が安くなることや大幅に値引きして販売しているかのように表示しているものがありました。
- 不自然な日本語の表示はないか
- 本件偽サイトの中には、「スマート頸椎マッサージャーい」、「耳をふさがらなく・・・」などといった不自然な日本語の表示がありました。
- 商品代金の支払方法が限定的ではないか
- 公式通信販売サイトでは通常、消費者のニーズに応えるべく多様な支払方法を選択することが可能ですが、本件偽サイトでは、代金引換払又はクレジットカード払に限定されていました。限定的な支払方法の場合は注意が必要です。
- ブランドロゴが表示されているだけでは危険
- SNS上の広告等から誘導されたサイトでは、次の点に注意しましょう
- オムロン又はアンビーの正規品との見分け方
- オムロンは、本件偽サイトに表示されるような機能又は形状のスマートウォッチや、本件偽サイトに表示されるような形状のマッサージ器の製造・販売はしていません。
- アンビーの正規品は、
- 全てブランドロゴが表示されています。
- 外箱表面に「ambie」と箔押しがあり、裏面には何も印字されていません。
- イヤホンケースは、上蓋とイヤホン収納部との境界線が平らで、充電中はLEDランプがオレンジ色に、充電完了後は白色に点灯します。
- 充電ケーブルの形状は、L字型(横方向)のコネクタです。
- 偽サイトの特徴を知りましょう
- SNS上の広告等から誘導される偽サイトには、一つの広告に、一つの商品が表示される、商品を極端な安価で販売すると表示する、支払方法が限定的である、事業者の氏名(名称)、電話番号等の表示がないなどの特徴があります。偽サイトの特徴を知り、被害に遭わないようにしましょう
- 被害に遭わないために
消費者庁 食品ロス削減ガイドブック(令和6年度版)
- 「食品ロス」って何?
- 「食品ロス」は、まだ食べられるにもかかわらず、捨てられてしまう食品のことをいいます。
- 日本における食品ロスは、年間472万トン発生しており、この値は、国連世界食糧計画(WFP)による2022年の食料支援量(約480万トン)のほぼ同等になります。
- 日本の食品ロスは、事業者から236万トン(50%)、家庭から236万トン(50%)排出されています。
- 食品ロスを減らすためには、事業者、家庭双方で取り組む必要があります
- フードサプライチェーンって知ってる?
- 生産者から消費者まで、食品が届くまでの一連の流れを、フードサプライチェーン(food supply chain)と呼びます。
- 食品を取り扱うときに、フードサプライチェーンの各段階で、食品ロスが発生しています。
- まずは、私たち消費者まで、食べものがどのように運ばれてくるのか、その過程でどのような食品ロスが発生しているのか、確認してみましょう
- 生産
- 農林漁業者:米、野菜、果物、きのこ、畜産物等を育てたり、魚介類を捕ったりして、農畜水産物として出荷
- とれすぎや、形が悪い(規格外)などにより、流通できず廃棄される。
- 製造
- 食品製造業者:農畜水産物を加工、包装して出荷
- 需要を上回る製造、パッケージの印字ミスや破損による流通側からの返品などにより廃棄される。
- 配送
- 卸売業者:生産者や食品製造業者から食品を受け入れ、保存管理し、小売店や飲食店の需要に応じて配送
- 売れ残り、パッケージの破損などにより、廃棄されたり食品製造業者へ返品される。
- 販売等
- 小売業者:卸売業者等から食品を購入し、消費者へ販売
- 外食事業者:卸売業者等から食品を購入し、調理して提供
- 小売店では、パッケージの破損や売れ残りによる返品・廃棄、飲食店では作りすぎや客の食べ残しにより廃棄される
- 消費
- 消費者:購入した食品を調理して消費したり、レストランなどで提供されたものを消費
- 使い忘れや食べ残しなどにより廃棄される
- 生産
- 日本の食料事情
- 日本の食料自給率はカロリーベースで38%です。
- 日本は諸外国に比べて食料供給に対する国内生産の割合が低く、食料の多くを輸入に頼っています。
- また、日本では、9人に1人の子どもが貧困であるとされています。日々の食事に困っている子どもも少なくありません。
- 家庭における消費支出のうち、食費は1/4以上を占めています。
- 家庭からの食品ロスは、一般廃棄物の一部として処理されます。
- 焼却処分するための経費は、全て私たちの税金で賄われています。
- 2022年度のごみ処理事業経費は、約2.2兆円で、ここ数年でほぼ横ばいの状況にあります。
- 環境問題と食品ロス
- 日本は、多くの食料を海外から輸入している一方で、たくさんの食品ロスを排出しています。
- また、食品ロスを含む一般廃棄物の処理費用に、年間約2兆円使われています。
- さらに、船舶・飛行機による輸入や、ごみを燃やす際に排出される二酸化炭素、焼却後の灰を埋める土地の問題もあります。
- 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果
- これまで、食品ロスは数量のみ推計の上公表していたところ、国民一人一人が食品ロス問題をより身近なこととして実感していただくため、2022年度食品ロス量推計値を基に経済損失及び温室効果ガス排出量を推計。2022年度食品ロス量(472万トン)を基に推計した結果、食品ロスによる経済損失の合計は4.0兆円、食品ロスによる温室効果ガス排出量の合計は1,046万t-CO2となった。この推計値を国民一人あたりに換算すると経済損失は32,125円/人/年、温室効果ガス排出量は83kg-CO2/人/年となった。
- エシカル消費と食品ロス削減
- 食品ロスを削減することは、環境にやさしく、人や社会等の配慮にもつながる消費行動であり、「エシカル消費」の1つです。
- 食品ロス削減においても、「今だけ」「ここだけ」「自分だけ」ではなく、将来のこと、地域のこと、周りの人のことも考えた消費行動を考えてみましょう。
- 3Rと食品ロス削減
- 3R(スリーアール)は、大量生産、大量消費で増えるごみ処理の対策として、資源を有効活用するために、導入された考え方です
- Reduce 必要な分を買い、作り、食べきる・使いきる
- Reuse 新たな価値への転換、シェア、寄附等
- Recycle 燃料や堆肥等への変換
- Dispose 捨てるごみは最小限に
- 世界の食品ロスの状況
- 世界では、人の消費のために1年間に生産される食料(約40億トン)の約3分の1に当たる約13億トンが捨てられています。
- 国連の定義に基づくFood Loss(食品のロス)とFood Waste(食品の廃棄)の状況を見てみましょう。
- 世界の栄養不足人口
- 世界の栄養不足(飢餓)人口は増加しており、2021年には7億6800万人に達しています。
- これは、世界の人口の10人に1人が飢えに苦しんでいることを意味します
- アメリカ合衆国
- 米国では、農務省(USDA)、環境保護庁(EPA)、食品医薬品局(FDA)が共同して、食品ロス削減のインパクトや重要性を消費者に伝えるための関係者間での調整やコミュニケーションを加速化させるため、「Winning on Reducing Food Waste Initiative」(食品廃棄物削減推進イニシアティブ)を設けており、それぞれの機関が協力して取組を進めています。
- EU
- EUでは、「Farm to Fork Strategy」において、
- 環境への影響の中和又は改善
- 気候変動の緩和やその影響への適応
- 全ての人が十分、安全、栄養のある、持続可能な食品へのアクセスの確保
などにより、持続可能な食料システムへの移行の加速化をめざしています。
- また、この一環として、加盟国に対し、
- 食品廃棄防止プログラムの策定
- 食品の寄附を始めとする食品の再配分などによる廃棄の抑制
などを求めています。
- EUでは、「Farm to Fork Strategy」において、
- オーストラリア
- オーストラリア政府は、2030年までに食品ロスを半減させる目標を掲げています。
- 2017年には、「NATIONAL FOOD WASTE STRATEGY」を発行し、食品ロスの現状や多様な主体による対策の手法を紹介しています
消費者庁 災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!
- 9月1日は防災の日。自然災害による停電の際にも使用される携帯発電機やポータブル電源において、製品起因の事故以外に誤使用が原因の事故も発生しています。また、停電復旧後の通電や被災で損傷した電気製品の使用が、火災の原因となることもあるため注意が必要です。今般、改めて事故を防ぐための対策をお伝えします。
- 概要
- キャンプなどで重宝される携帯発電機やポータブル電源ですが、自然災害に伴う停電に備え、非常用電源として用意する方もいるかと思います。しかし、いざ自然災害が発生したときに使用方法を誤ると、一酸化炭素(CO)中毒や火災等の事故につながる可能性があります。
- また、自然災害による停電の復旧後、地震や大雨等の影響を受けて損傷した電気製品を使用したり、電熱器具が周囲の可燃物に接触していたりすることで、発火する可能性があります。
- これらの事故を防ぐための注意点を知り、製品の使用時に対策をとりましょう。
- 携帯発電機及びポータブル電源使用時の注意点
- 携帯発電機
- 屋内では絶対に使用しないでください。発電機運転中の排ガスには一酸化炭素(CO)が含まれており、屋内で使用すると一酸化炭素(CO)中毒になるおそれがあります。
- 屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等の危険性があります。排ガスが逆流しないように出入口、窓などの開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用してください。
- ポータブル電源
- 落としたりするなど衝撃を与えないようにしてください。もし、強い衝撃を与えてしまった後、発熱、変形などの異常を感じた場合は、使用を中止して製造・輸入・販売事業者の修理窓口に相談してください。
- 高温環境下での使用は控えてください。また、長期間使用しない場合は、箱に入れて直射日光が当たらない冷暗所に保管しましょう。
- 屋外では、防水・防塵性能を有する製品の使用を検討しましょう。
- 携帯発電機
- 停電復旧後の通電火災を防ぐための注意点
- 地震が発生した際に可燃物が散乱しないように、家具はできるだけ壁に固定しましょう。あわせて、電気ストーブ等の電熱器具の周辺に可燃物を置かないように日頃から意識しましょう。
- 自宅から避難する際に時間的な猶予がある場合は、停電復旧時に異常のある製品に通電されることによる事故を防ぐため、分電盤のブレーカーを切ってください。日頃から分電盤の位置や操作方法を確認しておきましょう。
- 停電復旧時における意図しない作動による火災を防ぐため、特にヒーターを内蔵した電気ストーブ等の電熱器具は、停電時には電源プラグをコンセントから抜きましょう。
- 停電復旧後、浸水などによる被害を免れた製品を使う際は、機器などの外観に異常がないか(電源プラグやコードに損傷はないか、製品に焦げた痕はないか、など)を確認の上、分電盤のブレーカーを入れ、機器の電源プラグを1台ずつコンセントに差し、様子を確認しながら使用しましょう。異音や異臭がする場合は、必ず使用を中止し、メーカーや販売店に相談してください。
【国民生活センター】
【2024年11月】
国民生活センター 海産物の購入を強引に勧める電話に注意!-断っているにもかかわらず商品を送り付けられてきたという事例も-
- 海産物の電話勧誘販売や送り付けのトラブルに関する相談が依然として寄せられています。
- 全国の消費生活センター等に寄せられた相談事例をみると、電話勧誘を受けた際に海産物の購入を断っているにもかかわらず、事業者から一方的に送ると告げられて電話を切られるケースや着信番号を変えて何度も電話をしてくるケースなど、事業者による執拗かつ強引な勧誘が見られます。
- また、突然海産物が代引配達で届き、同居している家族が代金を支払ってしまったというケースもあります。
- そこで、カニなどの海産物の購入機会が増える年末を迎える前に注意喚起を行います。
- 相談事例
- 何度も断っているにもかかわらず、来月に届けると言われ一方的に電話を切られた
- 海産物事業者から以前購入してもらった方に案内していると電話があった。しかし、当該事業者から購入したことは無い。冷凍庫もいっぱいなので結構ですと断ったが、売れないと倒産すると強引に勧誘してくる。何度も断っているにもかかわらず、来月に届けると言われ一方的に電話を切られた。事業者名も連絡先も分からないが、もし届いたらどうしたらよいか。(2024年8月受付 70歳代 女性)
- 消費者へのアドバイス
- 不要である場合には、きっぱりと断りましょう。
- 断ったにもかかわらず、一方的に代引配達で商品が届いたら受け取りを拒否しましょう。
- 代金を支払い商品を受け取ってしまった場合でも、事業者に対し返金を求めることができます。
- 事業者からの電話勧誘で契約をしたときは、クーリング・オフができます。
- 相手の説明に不信感や疑問を抱いたら、最寄りの消費生活センターや警察に相談しましょう。
- ※消費者ホットライン「188(いやや!)」番 最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。
- ※警察相談専用電話「#9110」 最寄りの警察の相談窓口につながる全国共通の電話番号です。
- 身近な高齢者を守るために
- 高齢者の消費者トラブルを防ぐためには、身近にいる周りの方が日頃から高齢者の生活や言動、態度などを見守り、変化にいち早く気づくことがとても重要です。
- 消費生活センター等への相談は、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターなどの職員からでも可能です。身近な高齢者がトラブルにあっているのではないかと気づいた場合は、できるだけ早く相談してください。
国民生活センター ブラインド等のひもで低酸素状態に 危険性を十分に認識して!
- 内容
- 事例 ブラインドのひもに首が引っかかり、足が浮いた状態の子どもを保護者が発見した。ひもは高い位置で結んでいたが、椅子にのぼってひもを手に取り、首に引っかかり落ちてしまったと思われる。子どもは低酸素状態となり、病院に行ったが幸い治療には至らずに済んだ。(当事者:2歳)
- ひとことアドバイス
- 家庭用室内ブラインドにはJIS規格が制定されています。JISは「一定の荷重によって、子どものけい(頸)部への荷重が解放される機能をもつ」「子どもの頭部が挿入可能なループを形成しない」「取り外せる仕組みがあるコードで、取り外しても室内ブラインドとしての機能が損なわれることがない」などのうち、少なくともどれか1つを満たすよう規定しています。
- これからブラインド等を購入する際は、子どもの手が届く高さにひものない商品や、一定の重さが掛かるとひものつなぎ目が外れる機能のある商品など、安全対策の施された商品を選びましょう。また、ひもで操作しないタイプの商品も検討しましょう。
- ひものある商品を使用している場合は、子どもの手が届かない高さにひもをまとめ、クリップ等で留めましょう。
- ベッドやソファに乗って、ひもに近づかないように、家具類の配置にも気をつけましょう。
国民生活センター ウォーターサーバーの勧誘トラブルにご注意!-その契約、レンタルですか?購入ですか?-
- 全国の消費生活センター等に寄せられるウォーターサーバーに関する相談がここ数年増えており、2023年度は2022年度と比べ約1.4倍となっています。
- 特に、ショッピングセンター等の商業施設内の特設ブースやイベントスペースで勧誘され、契約した際のトラブルが目立っており、「解約を申し出ると、勧誘時に説明がなかった違約金を請求された」「ウォーターサーバーのレンタル契約を結んだと思っていたが、購入契約となっていた」などといった事例が寄せられています。
- そこで、トラブルの未然・拡大防止のため、ウォーターサーバーの契約に関する相談事例を紹介し、消費者へ注意喚起します。
- 相談事例
- 現契約の解約料をキャッシュバックすると強引な勧誘を受けたが、実際はキャッシュバック適用外だった。
- お得だという説明のみで解約時に請求される違約金等について全く説明がなかった。
- ウォーターサーバーのレンタルだと思い契約したが、実際は売買契約になっていた。
- 急かされて契約したが、帰宅後に契約内容を確認すると説明と異なっていた。
- 相談事例からみる問題点
- 不意に声をかけられ、冷静に判断できないまま勧誘される。
- 契約内容について十分な説明がなかったり、虚偽の説明をされたりする。
- しつこく契約を迫ったり、契約を急かしたりして、その場で契約させようとする。
- アドバイス
- 本当に必要な契約か、価格や機能等を比較検討しましょう。
- 不要な勧誘であればきっぱりと断りましょう。
- 契約する前に契約内容について十分に確認しましょう。
- 強引に契約を迫ったり、契約を急がせたりする事業者とは契約しない。
- トラブルになった場合は、すぐに最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。
国民生活センター インターネットで注文する食事宅配に関する消費者トラブル-便利に使うために気を付けたいこと-
- 日頃からインターネット通販による食事宅配を便利に利用する消費者が増える一方で、全国の消費生活センター等に寄せられるインターネット通販による食事宅配に関する相談件数は、2020年度に急増し、その翌年度以降は600件台で推移しています。
- 寄せられる相談をみると主に「1回限りの食事宅配」と「定期コースの食事宅配」(弁当や総菜等の定期配達)に関する内容に分られます。いずれの食事宅配のサービスも、自分の希望に合わせて利用できますが、サービスの内容や仕組み等を理解して利用することが重要です。
- そこで、相談の特徴やアドバイスを整理するとともに、消費者にインターネット通販で食事宅配を便利に利用するための注意点を情報提供します。
- インターネット通販での食事宅配の種類
- 1回限りの食事宅配
- その都度、食べたい料理を配達してもらうサービスとして、概ね以下の2つのパターンがみられます。消費生活相談では、コロナ禍で2.のサービスの利用者が増えるにつれ相談も多く寄せられています。
- 飲食店が提供するWebサイト・専用アプリ経由の注文
- フードデリバリー専用のWebサイト・アプリ経由の注文
- その都度、食べたい料理を配達してもらうサービスとして、概ね以下の2つのパターンがみられます。消費生活相談では、コロナ禍で2.のサービスの利用者が増えるにつれ相談も多く寄せられています。
- 定期コースの食事宅配
- 冷蔵又は冷凍弁当や総菜を週単位や月単位で届けるサービス。初回の料金や1食あたりの値段が安くなる代わりに、購入回数が指定されている場合や解約するまで契約が続く場合があります。注文方法は「弁当や総菜を販売する事業者のWebサイト・アプリ」があります。
- 1回限りの食事宅配
- 相談事例
- 1回限りの食事宅配
- 配達員が道が分からなかったようで商品が届いていないのに自動でキャンセルになってしまった。支払い済みの代金を返金してほしい。
- アプリ上の配達先のピン印の位置が違うと言われ配達されなかった。支払い済の代金を返金してほしい。
- 配達員からの電話に折り返したのに連絡が取れずキャンセルになり、費用も請求された。
- フードデリバリーサービスで届いた商品が注文したメニューと違うのでお店に電話した。返金希望だが飲食店から返金しないと言われた。返金してほしい。
- 定期コースの食事宅配
- ネットで見つけた初回分がお試し価格の弁当宅配を申し込んだが、申込直後に冷凍庫に入らないことに気づいた。解約したい。
- ネットで冷凍総菜の宅配を注文していたが、家族が購入を知らず商品を受け取り拒否してしまった。
- 1回限りの食事宅配
- 消費者へのアドバイス
- 1回限りの食事宅配(特にフードデリバリー専用のWebサイト・アプリ経由の注文の場合)
- サービスを利用する場合には以下を確認しましょう。
- 利用前
- 利用規約
- ヘルプページやアプリの使い方を説明するページ
- 配達員との連絡方法
- トラブルに遭った時の問い合わせ先(フードデリバリー専用のWebサイト・アプリ内にカスタマーサポート専用の窓口が設定されている場合があります)
- 注文時
- 注文時の住所入力は正確に。マンション名等の建物の名前や部屋番号も入力
- 住所以外に建物の外観や入り口の場所等、配達先の補足情報を入力できる場合は補足
- 地図上のピンが配達先の住所と合っているか確認し、ピンの位置が誤っている場合は位置を必ず修正
- 希望する受取方法(置き配、対面)が指定できる場合は指定し、注文時に再度確認
- 注文後~受け取り
- 配達員からの電話、メッセージに必ず対応
- 電話に出られなかった際はすぐ折り返す
- 対面で受け取りを指定した場合は、速やかに受け取れるように待機
- ※一定時間内に対応がない、受け取れない場合キャンセルとなり代金も請求されるので注意
- ※注文した商品が違う場合等トラブルが発生した場合は、フードデリバリー専用のWebサイト・アプリから運営事業者に連絡すると対応が早い可能性があります。
- 利用前
- サービスを利用する場合には以下を確認しましょう。
- 定期コースの食事宅配
- 注文前に、1回で配達される個数や購入回数、注文の変更・解約条件を確認しましょう。
- 商品を確実に受け取れるように、配達日を確認しておきましょう。
- 契約者自身が不在の際にも受け取れるように、事前に同居の家族等にも弁当や総菜が届くことを伝えておきましょう。
- 1回限りの食事宅配(特にフードデリバリー専用のWebサイト・アプリ経由の注文の場合)
国民生活センター 相談解決のためのテスト実施状況(2024年度第2四半期)
- 国民生活センター商品テスト部による、相談解決のためのテストの実施状況と概要について公表します。
- 2024年度第2四半期(7月~9月)は、消費生活センター等からの依頼に基づいて、26件の商品テストを実施しました。
- 実施件数の年度別推移
- 年度/件数 2019/190 2020/154 2021/182 2022/130 2023/114 2024(2024年9月末日までの累計)/57
- 商品分類別実施件数
- 食料品 3
- 住居品 14
- 光熱水品 0
- 被服品 2
- 保健衛生品 2
- 教養娯楽品 3
- 車両・乗り物 2
- 土地・建物・設備 0
- その他 0
- 合計 26
国民生活センター 内容器が破損した二重構造のガラス製ジョッキ(相談解決のためのテストからNo.188)
- 消費生活センター等の依頼に基づいて実施した商品テスト結果をご紹介します。
- 依頼内容
- 「二重構造のガラス製ジョッキを洗っていたところ、内側が割れた。割れた原因を調べてほしい。」という依頼を受けました。
- 調査
- 当該品は、内容器と外容器からなる断熱性を高めた二重構造のガラス製ジョッキでした。外容器はジョッキの形状を保っていましたが、内容器が破損しており、その破片を取り出し、厚さを測定したところ、最も薄肉なところは厚さが0.2mmでした。また、他の二重構造のガラス製ジョッキ及びグラス3銘柄の厚さ(0.7~1.2mm)と比較しても極めて薄いものでした。
- 当該品の内容器の破片に残った破面形態から、破壊の進展方向を推察し、内容器を復元させました。欠損により完全には復元できませんでしたが、外部から局所的に加えられた衝撃力による破損の特徴である放射状の伝播(スタークラック)がみられたことから、破壊の発生起点は内容器の胴部にあると考えられました。なお、起点と考えられる部分付近の破片の厚さは0.2mmでした。
- 以上のことから、当該品の内容器は肉厚が極めて薄く、薄肉部に洗浄時の局所的な力が加わったことで破損したものと考えられました。また、破壊の起点と考えられる部分付近の厚さが0.2mmほどで非常に薄かったことから、当該品の内容器は、洗浄等の通常の使用に対して十分な強度を有していなかった可能性が考えられました。
- 解決内容等
- 当該品は、調査開始時点で販売が終了していましたが、依頼センターがテスト結果を販売事業者に説明したところ、今後の商品については内容器の厚みを改善していくとの回答がありました。
国民生活センター 庫内底面のガラスが破損したオーブンレンジ(相談解決のためのテストからNo.189)
- 消費生活センター等の依頼に基づいて実施した商品テスト結果をご紹介します。
- 依頼内容
- 「オーブンレンジを使用していたところ、庫内底面の耐熱ガラスが破損した。破損した原因を調べてほしい。」という依頼を受けました。
- 調査
- 当該品は、電子レンジ機能とオーブン機能を有するオーブンレンジで、庫内底面のガラスには、広い範囲で破損や亀裂が生じていました。なお、使用期間は3年ほどとのことであり、庫内上部及び底面において、使用に伴う汚れの付着がみられました。
- 当該品から、破損していた庫内底面のガラスを取り外し、破断面を観察することで破断の起点や伝播方向を確認しました。その結果、破断の起点は中央からやや右奥側の表面上と考えられ、そこから破断が奥側と手前側に伝播していったと考えられました。
- 破断の起点部を確認すると、直径約2mm、深さ約1mmの球状の凹みがみられ、熱的な応力の負荷や静的な疲労などで破損した際の特徴的な破面模様である鏡面域がみられました。この凹みは、電子レンジによる加熱の際、マイクロ波によって庫内底面のガラスに付着した食品などの炭化物やアルミホイルなどの導電性の異物から火花が生じ、局所的に過熱されるなどして生じた可能性が考えられました。なお、当該品の破断面に対し、ひずみ検査器を用いて観察したところ、物理強化加工が確認できたことから、強化ガラスであると考えられました。
- 以上のことから、当該品の庫内底面のガラスは、電子レンジ使用時の局所的な過熱によって、深さ約1mmの凹みが生じ、その凹みによって強化ガラスの応力の均衡が崩れたことで破損したものと考えられました。
- 消費者へのアドバイス
- 電子レンジ使用の際、庫内に汚れが残っていると、そこにマイクロ波が集中して火花が生じることがあります。庫内底面のガラス上で火花が生じると、それによって庫内底面のガラスの破損につながる可能性があります。庫内が汚れた場合は取扱説明書に従って、その都度ふき取る等の手入れをするように心がけましょう。
国民生活センター 走行中にフレームが破損した折りたたみ自転車-当該品をお持ちの方は使用を中止し、事業者にお問い合わせください-
- 「折りたたみ自転車で走行中にフレームが破損し、あごにけがをした。フレームが破損した原因を調べてほしい。」というテスト依頼が2023年5月に寄せられました。調査を行ったところ、破損していたアルミ合金製フレームのヒンジ部付近の溶接部には、多種の溶接欠陥がみられ、フレームの強度が不足していることが分かりました。なお、本件は消費生活用製品安全法の重大製品事故、消費者安全法の重大事故等として消費者庁のウェブサイトに掲載されています。
- 輸入代理店による調査でも同様の原因が疑われるとのことから、当該品を含む一部の「Horize Disc」モデルに対して不具合対応を行っています。この商品をお持ちの方は、輸入代理店である株式会社アキボウの社告を参照して、対象かどうか確認してください。対象であった場合は使用を中止し、購入した販売店、もしくは株式会社アキボウへお問い合わせください。
- 該当する商品
- 商品名 Horize Disc(ホライズ ディスク)
- カラー カーキ/スティールグレー
- 当該品の状態等
- 当該品はフレームのヒンジ部付近で破損しており、フレームの前後(前フレーム、後フレーム)が分断した状態となっていました。
- 調査
- 破断面からは、後フレームの合わせ面の全域で溶接痕がないことや、ヒンジに接していたにもかかわらず溶接されていない箇所、溶接ビードとフレームの間に空洞ができている箇所等の溶接欠陥が複数箇所で確認されました。
- また、別途購入した同型品の新品のフレームを「JIS D 9301:2019 一般用自転車」に定められた「フレーム体のペダル力による疲労強度」について試験した結果、規定された負荷回数に達する前に溶接ビードにき裂が生じたため、基準を満たすことができませんでした。
- 当該品は、新品時から溶接部の強度が低い状態であったため、走行中に溶接ビード内部の溶接欠陥を起点とした疲労き裂が発生・進展し、フレームが破断に至ったものと考えられました。
- 消費者へのアドバイス
- この商品をお持ちの方は、株式会社アキボウの社告を参照して、対象かどうか確認してください。
- 対象であった場合は使用を中止し、購入した販売店、もしくは株式会社アキボウへお問い合わせください。
国民生活センター 重大な事故につながるおそれも!長期使用の石油ファンヒーター
- 内容
- 20年以上前に製造された石油ファンヒーターを使用している。灯油が残った状態でカートリッジ式のタンクに給油しようと、タンクを持ち上げたら、灯油が漏れた。危ないのでメーカーに苦情を申し出たら「機器が古いため、フィルター周辺部品の劣化の可能性がある。そのフィルターはもう製造していない」と言われた。古い製品だが、使用を続けたいと思っている。(70歳代)
- ひとこと助言
- 石油ファンヒーターは、長く使用しているうちに、熱や湿気、ほこりなどの影響で部品が劣化して発煙・発火し、場合によっては火災などの重大な事故につながることがあります。
- 業界団体等では、石油ファンヒーターの点検・取替の目安を8年としていますが、たとえ年数が経っていなくても、機器に異常を感じたら、ただちに使用を中止してメーカーや販売店に点検・修理を依頼してください。
- 石油ファンヒーターを含む「石油ストーブ」は、消費生活用製品安全法の特定製品として指定されており、国により安全基準が定められています。PSCマークがついている石油ファンヒーターは、カートリッジタンクのふたが改善され、また、給油時消火装置や不完全燃焼防止装置の設置が義務付けられるなど安全性が強化されています。
- 安全のためには製品の買い替えも検討しましょう。
【2024年10月】
国民生活センター 海産物の電話勧誘トラブルに注意
- 内容
- 事例1 自宅に電話があり、海産物の購入を勧められた。断ったのだが、海産物が送られてきて、代引きで受け取った。強引に送られてきたものなので返金してほしい。(90歳代)
- 事例2 海産物販売業者から突然電話があり、海産物の勧誘を受けた。断ったが「売れなくて困っている。損はさせない」としつこく言われ、約2万円の商品を買うことを承諾してしまった。その後、どんなものが来るか心配になり、断ろうと何度も電話したが連絡がつかない。(60歳代)
- ひとこと助言
- 電話勧誘で海産物の購入をしつこく迫られた、断ったのに送られてきたなどの相談が寄せられています。少しでもおかしいと感じたらきっぱり断りましょう。
- ナンバーディスプレイ機能を利用し、知らない電話には出ない、あるいは常時留守番電話にしておくのも一法です。
- 断ったにも関わらず送り付けられた商品については、代金を支払う必要はありません。商品が届いてしまっても代金は支払わず、送り主の名称や所在地をメモしてから、受取拒否をしましょう。
- 電話勧誘販売の場合は特定商取引法に定める書面を受け取った日から数えて8日以内であればクーリング・オフができます。困ったときは、早めにお住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。
国民生活センター 「○○ペイで返金します」と言われたら詐欺を疑って
- 内容
- ネットで腕時計を購入し、前払いで個人名義の口座に約2万円振り込んだ。その後「商品が欠品になった。返金するので担当者と無料通話アプリでやり取りするように」とメールが来た。無料通話アプリで連絡するとすぐに「○○ペイで返金する」と言われ、指示された通りに数字等の入力を繰り返した。気づいたときには、約10万円送金させられていた。販売業者にメールをするが連絡もなく、無料通話アプリもすでにブロックされていた。どうしたらよいか。(60歳代)
- ひとこと助言
- ネット通販で商品を購入したところ、販売業者から「欠品のため○○ペイ等のコード決済アプリで返金する」と言われ、返金手続きをしているうちに「返金」してもらうはずが「送金」していたという相談が寄せられています。
- 販売業者から「○○ペイで返金します」と言われたら詐欺を疑いましょう。相手方の指示に従ってはいけません。
- 販売業者の名称・所在地・電話番号が明確に記載されていない、商品価格が通常より安い、支払方法が銀行振込みや電子マネーに限定されている、返品・返金ルールが記載されていない等のサイトは詐欺サイトの恐れがあります。利用前によく確認しましょう。
- 困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センターや最寄りの警察等にご相談ください(消費者ホットライン188、警察相談専用電話「#9110」番)。
国民生活センター 国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和6年度第2回)
- 国民生活センター紛争解決委員会によるADRの実施状況と手続結果の概要について公表する。
- 実施状況(令和元年度~令和6年6月末日)
- 令和元年度累計申請件数 204件
- 令和2年度累計申請件数 166件
- 令和3年度累計申請件数 136件
- 令和4年度累計申請件数 142件
- 令和5年度累計申請件数 117件
- 令和6年度累計申請件数 30件
- 結果の概要
- 紛争解決委員会(第64回会合、9月4日開催)での審議を踏まえ、結果の概要を公表。
- 連鎖販売取引の解約に関する紛争(24)
- クレジットカードの不正利用に関する紛争(68)
- 探偵調査に係る契約の解約に関する紛争(28)
- クレジットカードの不正利用に関する紛争(69)
- 美容整形手術の解約料に関する紛争
- 医療脱毛の解約に関する紛争(2)
- インターネットを利用した副業契約の解約に関する紛争(33)
- 出張配管洗浄サービスの料金に関する紛争(41)
- データ復旧サービスの解約に関する紛争(5)
- ペットの販売契約に関する紛争(8)
- 出張水道工事サービスの料金に関する紛争(2)
- クレジットカードの不正利用に関する紛争(72)
- 医療契約の中途解約に関する紛争
- 住宅ローンに関する紛争
- 結婚式と披露宴の解約に関する紛争(45)
- レンタカーの補償金に関する紛争(4)
- Wi-Fiルーターの修理代金保証サービスに関する紛争
- 生命保険の取消しに関する紛争(3)
- 家庭教師の解約に関する紛争(5)
- 紛争解決委員会(第64回会合、9月4日開催)での審議を踏まえ、結果の概要を公表。
国民生活センター 子どもに持たせるスマホにはペアレンタルコントロール機能を
- 事例
- 中学生の息子は、私名義で契約し息子を利用者登録したスマートフォンを使用している。このスマホの通信料金は私がクレジットカードで支払っているが、キャリア決済料を含めた料金が高額なことに気づき内訳を調べると、この5カ月間で約5万円がオンラインゲームのアプリで使われていたことが分かった。今は息子のスマホにフィルタリングをかけ、キャリア決済の上限額を引き下げたが、そのように予防ができることを知らなかった。(当事者:中学生)
- ひとことアドバイス
- フィルタリング等の設定や利用のルール作りなど、子どもに安全に使用させるために、ネットの利用環境を整えましょう。
- 子どもに持たせるスマホは、ペアレンタルコントロールの機能を利用して保護者がアカウントを管理しましょう。また、保護者のアカウントに決済完了メールが届くよう設定し、メールや料金明細を日頃からチェックしましょう。
- 保護者の同意のない未成年者契約は民法上取り消せますが、保護者アカウントでログインした端末機器で課金した場合、アカウント所有者である保護者が決済を行ったとみなされる場合があります。困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。
【2024年9月】
国民生活センター 展示会に誘われて…着物の次々販売に注意
- 内容
- 一人暮らしの母親が、呉服店から展示会に誘われ、次々と高額な契約をしていることが分かった。購入した着物やジュエリーなどは、ほとんど未使用の状態でタンスにしまってある。毎月のクレジットカード会社への支払額が総額30万円を超えており、年金収入だけの母親にはとても支払えない。母は腰が曲がっており着物を着られる姿勢ではないし、必要でもなかったが、断れず契約していたようだ。解約したい。(当事者:60歳代)
- ひとこと助言
- 見るだけでいいからなどと着物の展示会に誘われ、断り切れず次々と着物などを購入させられ支払いに困っているという相談が寄せられています。
- 展示会等に行ってしまい強引な勧誘をされても、必要なければきっぱりと断りましょう。断る自信がなければ誘われても行かないことが最善です。
- 高齢者が次々販売などの被害に遭ってしまうと、生活が困窮するなど日常への影響が大きくなります。家族や周囲の人は、日ごろから高齢者の自宅に不審な書類や商品がないか、様子がおかしくないかなど、気を配りましょう。
- 困ったときは、早めにお住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。
国民生活センター 瞬間接着剤の使用によるやけどに注意しましょう
- つけ爪用接着剤が手指に垂れ、ティッシュペーパーで拭き取ったところ、Ⅱ度のやけどを負い、1カ月以上の通院を要するとの診断を受けたという事例が寄せられました。
- つけ爪やモノを短時間で接着させるために用いられる瞬間接着剤の主成分には、一般的にシアノアクリレート系の物質が使用されています。シアノアクリレート系の物質は、空気中や接着面の水分と反応して重合し硬化する際に反応熱が発生します。特に、ティッシュペーパーや布などに染みこんで表面積が拡大すると、化学反応が急激に進み大きな反応熱が発生することがあり、その部分に触れるとやけどをするおそれがあります。
- こんな事故が起きています
- 【事例1】店舗で購入したつけ爪用瞬間接着剤を親指の爪につけたところ、手のひら側に垂れ、ティッシュペーパーで拭き取ったところ、やけどをした。皮ふ科を受診したところⅡ度の熱傷で1カ月以上の通院を要すると診断を受けた。商品の使用方法を熟読したが、使い方によってはやけどを起こすなどの表示はなかった。 (2023年11月受付、10歳代、女性)
- 【事例2】瞬間接着剤を使用した際に少しこぼれてしまったので、近くにあったティッシュペーパーで拭ったところ火がついたように熱くなり、手からはがしたところ、指がえぐれてしまった。(2020年9月受付、60歳代、女性)
- 危険な状況を想定したテストを行いました
- 瞬間接着剤をティッシュペーパーや衣類などに染みこませたところ…最高で170℃近くまで温度が上昇しました
- シャーレに付着させた接着剤をティッシュペーパーで拭き取ろうとしたところ…すぐに硬化し、発熱時には、接着部分を容易にはがすことができませんでした
- 消費者へのアドバイス
- 瞬間接着剤はティッシュペーパーや衣類などの染みこみやすい繊維質のものに染みこむと短時間で発熱し、やけどをする場合があるので注意しましょう。
- 使用中に誤って付着させた場合の対処方法を覚えておきましょう。
- 使用前には商品の表示や取扱説明書を読み、ポリエチレン手袋を装着して扱いましょう。
国民生活センター 国民生活2024年9月号【No.145】(2024年9月17日発行)
▼ 海外ニュース(2024年9月号)
- アメリカ:乳牛の鳥インフルエンザ感染で注意すべきこと
- 2024年3月、テキサス州とカンザス州の牧場の乳牛から採取された口腔拭い液と加熱殺菌されていない生乳(以下、生乳)のサンプルから高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)H5N1亜型ウイルス陽性が世界で初めて確認され、7月には12州の151乳牛群に感染が拡大した。感染した鳥は死ぬが、乳牛は食欲減退や乳量の減少などがみられる程度という。同年4月にはヒトへの感染が確認され、その後、酪農労働者の感染が4件報告された。CDCは、動物からヒトおよびヒトからヒトへの感染拡大の可能性は現時点では低いと考えているが、感染リスクを避けるために、「できるだけ病気や死んだ野鳥、家禽、家畜、その他の野生動物に触れない」、「家畜等の糞尿や糞尿で汚れた敷料(わら、もみ殻など)、生乳や感染を確認した鳥や牛の周囲の物にできるだけ触れない」、「生乳を飲まない」、「感染の可能性がある場合を含め、感染したものに触れる必要のある際は、PPE(個人防護具=使い捨てのカバーオールや手袋、長靴、ゴーグル、N95フィルターマスク等)の着用する」といったことを推奨している。PPEを着用していても接触から10日間は感染リスクがあるので、結膜炎や新たな呼吸器疾患の症状が表れたら、迅速に検査し非感染の診断が出るまでは隔離が必要としている。
- また、CDCとFDAは生乳とその乳製品を摂取する危険性を強く訴えている。アメリカでは、味や未加工品への好みなどを理由に加熱殺菌を拒否する消費者もいる。FDAは生乳を選んでいる消費者向けに、加熱殺菌は、「生乳の栄養価を低下させない」、「乳糖不耐やアレルギーの原因ではない」、「有害な細菌を死滅させ我々の命を守る」などと説明している。
- オーストラリア:退職年金詐欺から消費者を守るために
- オーストラリアの年金制度は、税を財源に所得・資産調査に基づいて給付される老齢年金(AP)と、事業主の強制拠出と被用者や自営業者の任意拠出による確定拠出年金(退職年金)からなる。オーストラリアの年金ファンド市場は総額5兆豪ドル(約350兆円)といわれ、その大部分を退職年金ファンドが占める。しかし近年はファンドからの個人情報流出事案が相次ぎ、これを悪用したとみられる詐欺も頻発している。2023年のACCCへの詐欺報告は約60万件、損失額が27.4億豪ドル(約2740億円)、65歳以上の高齢者層の損失額は約13%増加の1.2億豪ドル(約120億円)に上ったという。
- この退職年金関連の消費者問題にCHOICEと連携して取り組むSCA(スーパー・コンシューマーズ・オーストラリア)によると、2022年以降大手3つのファンド加入者で最大8万人がフィッシング詐欺などのリスクにさらされているという。
- 金融サービス業の国内の代表的な100社以上を会員とする業界団体のFSCは7月、退職年金詐欺に対する顧客保護のために業界初となる詐欺軽減基準を発表した。この基準ではリスクの高いすべての取引にMFA(多要素認証)を義務づけるとともに詐欺行為の監視や対処の明確な方針・手順の導入などを各退職年金ファンドに要求しており、2026年7月1日までに、できるだけ早期に導入するよう求めている。
- SCAはこれを対策の第一歩と歓迎しつつも、FSCの自主基準であり、対象は退職年金ファンド加入者全体の約4分の1に限られ、また、2026年までは義務化されず、決定的解決策にはならないと指摘し、早急に年金詐欺防止法を制定するよう政府に求めている。
国民生活センター きっかけは訪問購入?犯罪まがいの深刻なトラブルにご注意を!-大切な貴金属が持ち去られたなどの事例が寄せられています-
- 2023年9月に、購入業者が自宅に来て物品を買い取るという訪問購入のトラブルについて注意喚起をしました*。
- その後も多くの相談が寄せられる一方で、中には「『不用品を買い取り貧しい国に寄付する』と勧誘を受け了承したが、業者が帰ったあと指輪がなくなっていた」「身に着けていた大切な指輪を強引に要求された」などといった、きっかけは訪問購入に見える犯罪まがいの深刻なトラブル事例も複数寄せられています。事例をみると、主に80歳以上の女性が当事者となっていることから、特に注意してほしいトラブルです。
- そこで、トラブルの未然・拡大防止のため、事例を紹介するとともに、消費者に注意を呼びかけます。
- 相談事例
- ふと目を離した隙に金のネックレスやダイヤの指輪などを業者に持ち去られたようだ。
- 人の役に立つならと思い訪問を了承したが、業者が帰った後指輪がなくなっていた。
- 身に着けていた母の形見の指輪を業者から強引に要求され怖い思いをした。
- 一人暮らしの認知症の母親が記念硬貨を安値で買い取られていた。
- 相談事例からみる問題点
- 犯罪まがいの行為が行われる深刻な事例がみられる。
- 特定商取引法違反の疑いがある行為が行われている。
- 消費者の親切心に訴えかけるなどして断りにくくした上で勧誘を行っている。
- 判断力の低下した高齢者がトラブルにあっている。
- アドバイス
- 突然訪問してきた購入業者は決して家に入れないようにしましょう。
- 購入業者から電話がかかってきても、安易に訪問を承諾しないようにしましょう。
- 購入業者から勧誘を受けて訪問を承諾する場合は、一人では対応しないようにしましょう。
- トラブルになった場合や不安がある場合は、消費生活センターや警察に相談しましょう。
国民生活センター エンジンが故障した刈払機(相談解決のためのテストからNo.187)
- 消費生活センター等の依頼に基づいて実施した商品テストの結果をご紹介します。
- 依頼内容
- 「刈払機が2回目の使用で故障した。故障した原因を調べてほしい。」という依頼を受けました。
- 調査
- 当該品は刈刃を2サイクルエンジンの動力で回転させて草等を刈る刈払機で、相談者自身でガソリンと2サイクルエンジンオイルを混ぜた混合燃料を用い、購入してから2回目の使用中に故障したとのことでした。
- 当該品のエンジンの内部を観察したところ、シリンダ壁面とシリンダ壁面と接触するピストンの摺動部には摺動方向と平行に入った多数の線傷がみられました。このことから、使用していた混合燃料の劣化やガソリンとオイルとの混合が不十分であったこと等によって、潤滑が十分に行われず摩擦熱が増大し、ピストンとシリンダ間に焼き付きが生じたものと考えられました。
- 解決内容等
- エンジン式の刈払機は、4サイクルエンジンのものと2サイクルエンジンのものがあります。2サイクルエンジンのものは混合燃料を使用する必要があり、商品ごとに適正な混合比が定められています。必ず取扱説明書をよく読み、商品に適合した混合燃料を使用しましょう。
- 自身で混合燃料を作る場合には、ガソリンと2サイクルエンジンオイルを計量するなどして適切な混合比にし、十分に混ぜましょう。既に混合されている混合済み燃料を使用する場合でも、給油前には容器を十分に振り、よく混ぜてから使用しましょう。
- また、期間が経過した混合燃料は劣化していることがありますので、使用しないようにしましょう。刈払機を使用した後は、混合燃料の劣化を防ぐため、燃料タンクからすべて抜いた状態で保管しましょう。
国民生活センター 洗濯用パック型液体洗剤の誤飲に注意
- 内容
- 認知症のある高齢者が、自宅の洗面所に置いてあった洗濯用パック型液体洗剤を1~2個食べてしまった。嘔吐と下痢が続き、病院に搬送された。洗剤による界面活性剤中毒から誤えん性肺炎となり入院し、その後人工呼吸器が必要となった。(70歳代)
- ひとこと助言
- 洗濯用パック型液体洗剤を食べ物と間違えるなどして口に入れてしまった事故が報告されています。
- 洗濯用パック型液体洗剤には、界面活性剤等様々な成分が含まれています。誤飲により嘔吐したりむせたときに気道に入ってしまうことで、化学性肺炎や誤えん性肺炎等の重篤な症状の原因となることがあります。むせる力の弱い高齢者は特に注意が必要です。
- 洗濯用パック型液体洗剤は、高齢者だけでなく、子どもの目につかないところ、手の届かないところに保管しましょう。
- 口に入れてしまった際は、すぐに口をすすがせましょう。異常を感じる場合は、成分が分かるパッケージ等を持って、医療機関を受診しましょう。
国民生活センター 2023年度 全国の危害・危険情報の状況-PIO-NETより-
- 危害・危険情報とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けたという「危害情報」と、危害を受けたわけではないが、そのおそれがある「危険情報」をあわせたものです。データは、2024年5月末日までの登録分。なお、消費生活センター等からの経由相談を除いています。
- 2023年度の傾向と特徴
- 全国の消費生活センター等から収集した「危害・危険情報」は14,781件で、対前年度比でみると1.1%減となりました。
- 「危害情報」は12,472件で、上位3商品・役務等は「化粧品」「健康食品」「医療サービス」でした。「危険情報」は2,309件で、上位3商品・役務等は「四輪自動車」「健康食品」「調理食品」でした。
- 「危害情報」は、2022年度より421件減少しました。「化粧品」が1,009件減少したことが影響しています。被害者の性別は女性が7割以上を占めていました。
- 「危険情報」は、2022年度より258件増加しました。
▼ [報告書本文] 2023年度 全国の危害・危険情報の状況-PIO-NETより-
- 危害内容
- 危害内容別にみると、最も件数が多かったのは「皮膚障害」4,401件(35.3%)で、2022年度(1位、5,404件)より1,003件減少した(表3)。商品・役務等別にみると「化粧品」が2022年度より996件減少したものの、3,084件と約7割を占めており、次いで「健康食品」が287件で、2022年度より40件増加した。
- 2位は「その他の傷病及び諸症状」(注3)3,453件(27.7%)で、2022年度(2位、3,194件)より259件増加した。「医療サービス」677件、「歯科治療」307件、「健康食品」296件などが多い。「歯科治療」は2022年度より1件減少したものの、「医療サービス」は141件、「健康食品」は107件、それぞれ増加した。
- 3位は「消化器障害」1,522件(12.2%)で、2022年度(3位、1,324件)より198件増加した。「健康食品」が2022年度より124件増加し、823件と過半数を占めている。このほか「調理食品」105件、「外食」95件、「飲料」87件などが多い。
- 4位は「熱傷」623件(5.0%)で、2022年度(5位、545件)より78件増加した。「エステティックサービス」132件、「医療サービス」97件、「美容院」37件などが多い。
- 5位は「擦過傷・挫傷・打撲傷」579件(4.6%)で、2022年度(4位、612件)より33件減少した。「エステティックサービス」49件、「商品一般」48件、「整体」41件などが多い。
- 被害者の性別・年代
- 危害を受けた被害者の性別件数をみると、女性が9,282件(74.4%)、男性が3,004件(24.1%)で、2022年度に比べて女性が680件減少する一方で、男性が232件増加した。
- 年代別件数では、70歳以上が2,566件(20.6%)と最も多く、以下、50歳代2,480件(19.9%)、60歳代2,215件(17.8%)、40歳代1,753件(14.1%)、30歳代1,126件(9.0%)、20歳代862件(6.9%)、10歳代250件(2.0%)、10歳未満172件(1.4%)と続いている。2022年度に比べ20歳代から60歳代の各年代で件数が減少した
- 次に、被害者の年代別に危害の多かった商品・役務等をみると、10歳未満では、1位は「外食」17件(2022年度1位、13件)、2位は「遊園地・レジャーランド」14件(2022年度5位、8件)、3位は「菓子類」12件(2022年度2位、9件)であった。2位の「遊園地・レジャーランド」、5位の「保育園」「商品一般」、7位の「スポーツ・健康教室」「宿泊施設」、9位の「家具類」「遊興施設利用」が10位以内に入るのは10歳未満のみであった。
- 10歳代では、1位は「化粧品」41件(2022年度1位、53件)、2位は「医療サービス」27件(2022年度2位、31件)、3位は「美容院」26件(2022年度4位、17件)である。6位の「自転車」、8位の「ヘアケア用具」が10位以内に入るのは10歳代のみであった。
- 20歳代では、1位は「医療サービス」193件(2022年度1位、183件)、2位は「エステティックサービス」124件(2022年度2位、146件)、3位は「化粧品」72件(2022年度3位、89件)である。
- 30歳代では、1位は「医療サービス」208件(2022年度2位、195件)、2位は「化粧品」130件(2022年度1位、214件)、3位は「エステティックサービス」92件(2022年度4位、80件)である。
- 40歳代では、1位は「化粧品」396件(2022年度1位、667件)、2位は「医療サービス」223件(2022年度3位、138件)、3位は「健康食品」194件(2022年度2位、154件)である。
- 50歳代では、1位は「化粧品」769件(2022年度1位、1,226件)、2位は「健康食品」360件(2022年度2位、295件)、3位は「医療サービス」207件(2022年度3位、143件)である。
- 60歳代では、1位は「化粧品」916件(2022年度1位、1,087件)、2位は「健康食品」328件(2022年度2位、233件)、3位は「医療サービス」95件(2022年度3位、80件)である。
- 70歳以上では、1位は「化粧品」833件(2022年度1位、807件)、2位は「健康食品」421件(2022年度2位、287件)、3位は「医療サービス」114件(2022年度3位、122件)である。
- また、8位の「家庭用電気治療器具」、10位の「ふとん類」「他の保健衛生用品」が10位以内に入るのは70歳以上のみであった。
国民生活センター 65歳以上の消費生活相談の状況
- 契約当事者が65歳以上の消費生活相談について、2023年度までに全国の消費生活センター等に寄せられた相談の状況をまとめました。
- 2023年度の相談を商品役務等別にみると、「化粧品」「健康食品」は、契約当事者65歳以上と65歳未満で共通して上位となっています。また、65歳未満と比較して、65歳以上では「他の役務サービス」や「修理サービス」「その他金融関連サービス」に関する相談や「移動通信サービス」「インターネット接続回線」など通信に関する相談が上位となっています。
- 販売購入形態別にみると、「通信販売」の各年齢区分の相談全体に占める割合は65歳~69歳が最も高く、年齢が上がるにつれ割合が下がっています。一方、「訪問販売」「電話勧誘販売」「訪問購入」は年齢が上がるにつれ割合が高くなり、85歳以上になると「通信販売」を抜いて「訪問販売」の割合が最も高くなります。
国民生活センター 今もなお注意が必要!マグネットセットの誤飲
- 内容
- 子どもの誤飲により重篤な症状となる事故が何件も発生したことから、強力な磁力を持つ複数個の磁石を組み合わせて遊ぶ「マグネットセット」は、新たな規制が導入され、技術基準に適合しない製品の販売が規制されています。
- 誤飲により開腹手術が必要となった事故は複数報告されており、海外では死亡事故も起きています。
- マグネットセットは、絶対に子どもに触れさせないでください!
- すでに持っている場合は、子どもの目につかず、持ち出せない場所に保管するか、自治体のルールに従い廃棄しましょう。
- 誤飲した可能性がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- インターネットサイトやフリマサイトなどで販売されていても、子どもがいる家庭ではマグネットセットを購入しないでください。
- ひとことアドバイス
- マグネットセット(磁石製娯楽用品)は、消費生活用製品安全法関係法令の改正により、2023年6月より販売が規制されています。技術基準を満たしPSCマークが表示されたものでなければ販売できません。
- 子どもがいる環境にマグネットセットがあることがあります。子どもが誤飲すると命にかかわる場合もあるため、保護者や周りの人は注意しましょう。
国民生活センター 高額な前金を支払ったのに…リフォーム工事の契約トラブル
- 内容
- 雨漏りがあったため、事業者に見てもらったところ「腐っている部分がある」と言われ屋根工事をすることにした。見積り額が約450万円と高額だったので、他社からも見積もりを取り比較しようとしたが「当社は職人がそろっており工事が早く済む」と言われたため契約した。工事前に半額程度の金額を支払ったが、足場を組んだ後になって「職人の手配ができず工事は約半年後になる」と告げられた。解約を申し出ると解約料がかかると言われ、納得できない。(60歳代)
- ひとこと助言
- 外壁や屋根などの戸建住宅のリフォーム工事で、高額な前金を支払ったにもかかわらず、なかなか工事が進まないなどの相談が寄せられています。
- 契約する前に複数の事業者から見積もりを取り、費用だけでなく、工期や施工体制、保証内容等についても十分検討することが重要です。
- 高額な費用の全額前払いは避け、完成後の支払いを主とした契約にしましょう。
- 工事が滞った際の備えとして、遅延補償の定め等が契約書にあるか確認しましょう。
- 困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。
国民生活センター スキマ時間に気軽に稼げる等とうたう副業トラブル!-簡単なタスクを行う副業でお金を払う??詐欺に騙されないで-
- 近年、空き時間(スキマ時間)を使って効率よく稼ぎたいとのニーズが高まっています。ところが、SNSや動画広告、インターネット検索等で見つけた副業サイトで「“いいね”を押すだけ」「スタンプを送るだけ」「スクリーンショットを撮るだけ」等の簡単な作業(タスク)で稼げるという副業に応募したところ、高額報酬を得るにはまず振り込みをするよう指示されて振り込んだが、その後も様々な理由で振り込みをさせられた挙句、高額報酬は得られなかった等という相談が増加しています。
- こうした相談は年々増加しており、特にSNSをきっかけにした割合が高まっています。また、平均契約購入金額も増加傾向です。そこで、消費者トラブルの防止のため、相談事例を紹介し、消費者への注意喚起を行います。
- 相談事例
- SNS広告を見てタスクを始めたところ、チームで対応することになったが、ミスでチーム全員が損をしたと言われ処理費用を請求されて支払った(2024年5月受付 30歳代 女性)
- 子育てしながらできる副業を探していた。SNSで「動画SNSを見るだけで報酬を得られる」という広告を見てメッセージアプリ経由で申し込んだ。相手方の名前や連絡先はわからない。指示通りにタスクをこなし数百円を受け取った時点で「高額報酬のタスクがある」と誘われ、指示されたアプリに登録し、指示された1万円を支払った。4人1組でチームになり、全員同じデータを入力すると、事前に支払った1万円に報酬を上乗せした1万数千円が振り込まれた。
- 次に3万円を振り込み、データを入力した後で「あなたのミスでチーム全員が損をした」と言われた。その処理費用に15万円が必要と言われたため、指定された口座に振り込んだ。さらに「次のタスク完了で戻ってくるから」と言われて約40万円を口座に振り込んだ。タスクは完了したが報酬等を引き出すためにはさらに約70万円が必要と言われ、おかしいと気づいた。振込先口座はほぼすべて異なる個人名口座だった。報酬を得るためと言われ、生活費をすべて振り込んでしまった。
- その他、以下のような相談も寄せられています
- 高額報酬のタスクのため、指示に従って事前に振り込みをしたが、引き出すことができない。
- SNS広告を見てタスクを始め、報酬を出金しようとしたらアカウントが凍結され、高額な解除費用を請求された。
- SNS広告を見てタスクを始めたところ、チームで対応することになったが、ミスでチーム全員が損をしたと言われ処理費用を請求されて支払った(2024年5月受付 30歳代 女性)
- 消費者へのアドバイス
- 「簡単に稼げる」「もうかる」ことを強調する広告は詐欺の可能性があるのでうのみにしないようにしましょう。
- 相手方に安易に個人情報を開示しないようにしましょう。
- お金を稼ぐはずが、振り込みを求められたら、消費生活センター等に相談してください。
国民生活センター 「1日最大○○円」 コインパーキングの料金は細かい条件も確認を
- 内容
- 駅前の駐車場の看板に「○○分○○円、1日最大600円」と記載があり、3日間で1800円になると思って3日間駐車したところ、約1万2千円の請求を受けた。すぐに事業者へ連絡したが、最大料金の適用は1回限りで、その後は時間制で料金が発生すると言われた。説明を受けて改めて看板をよく見たら、小さな文字でその旨が書かれていた。(60歳代)
- ひとこと助言
- コインパーキングを利用する際は「1日最大○○円」等の大きな表示だけでなく、その他の細かい条件も入庫前に事前に確認しましょう。
- 料金には、最大料金の適用回数や駐車位置、時間帯などに細かい条件がついていることが多く、平日か休日かで異なったり、年末年始やイベント開催時には特別料金が発生したりすることもあります。利用し慣れているコインパーキングであっても料金設定が変わっていることもありますので、入口付近や精算機付近の詳細案内に目を通し、不明な点はコインパーキング事業者に確認しましょう。
- 困ったときは、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください(消費者ホットライン188)。看板等の表示を写真等で記録に残し、領収証も忘れずに保管しておきましょう。
国民生活センター 地震に便乗した詐欺的トラブルにご注意ください!-義援金を集めるという不審メールなどに注意!-
- 令和6年8月8日、宮崎県日向灘を震源とする地震が発生し、気象庁は南海トラフ地震臨時情報を発表しました。これに関連して、「義援金をクレジットカード決済によるオンラインで募集するといった不審なメールが届いた」といった相談が寄せられています。このような不審なメールを受け取っても、対応せずに無視してください。
- 地震発生後は、被災地域、被災地域以外にかかわらず、地震に便乗した詐欺的トラブルや悪質商法が多数発生しますので、不審なメールや電話等に十分に注意してください。
- 相談事例
- パソコンに、南海トラフ地震災害義援金をクレジットカード決済によるオンラインで募集するとのメールが届いた。寄付先としてネットバンクの口座が書かれていたが、口座名義が個人名であり不審なので情報提供する。(四国地方、50歳代・男性)
- 消費者へのアドバイス
- 不審なメールが届いても無視してください。また不審な電話がかかってきてもすぐに切り、来訪の申し出があっても断ってください。万が一、金銭を要求されても、決して支払わないようにしてください。
- 公的機関が、個別にメールや電話等で義援金や寄付を求めることはありませんので、公的機関を名乗って連絡が来た場合でも決して支払わないでください。また、寄付をする際は、募っている団体等の活動状況や使途をよく確認し、納得した上で寄付しましょう。
- 少しでも不安を感じたら、すぐにお近くの消費生活センター等(消費者ホットライン「188」番)や警察に相談してください。