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5分でわかる!クレーム・カスハラ

はじめに

企業により、クレームに対する考え方や呼び方などは様々だと思います。呼び方は千差万別であっても、クレーム(正当な要求)に対しては、誠実且つ迅速、真摯な対応が必要となり、不当な要求に対しては、企業ロスを回避するための明確な拒絶対応が必要となります。ここは、どのような企業であったとしても、共通な姿勢・思考ではないでしょうか。業界や業態、企業規模が変わろうとも、不当要求やカスタマーハラスメント(カスハラ)に対しては、断固として応じないという毅然とした姿勢で対応する必要があることは変わりません。

クレーム・不当要求・カスハラとは

クレームとは

クレームとは、企業及び個人が提供したサービス又は、製品に対して不都合を感じ又は、損害を被った際、提供した企業及び個人に対し、その不都合に関する申し出や、自身が被った損害回復を求める言動を言います。

例えば、スーパーなどで買い物をして、購入した商品の賞味期限が切れている事に帰宅後気付いた。この時、購入した店舗に対して電話又は再度訪問し、「購入した商品の賞味期限が切れていたぞ。このような商品を提供したらダメだろう!交換して下さい」と申し立てたケース。

一見、乱暴な言い方に見えますが、そもそも賞味期限が切れたものを、その明示もなく売るという、お客様の期待を裏切るような状態であったことから、お客様が多少怒ることはやむを得ません。お客様の要求を考えてみると、商品の対価となる費用を支払ったにも関わらず、本来の機能を有する提供を受けていないことから、商品料金に対する対価は得られなかったとして、これを損害とすることは何ら問題ありませんし、この損害に対して“交換して下さい”という要求は、被った損害を元通り(原状回復)にして下さいという要求行為ですので、クレーム(正当な要求)として誠実な対応が必要となる訳です。


不当要求とは

不当要求とは、自身が被った損害に上乗せし、原状回復以上の要求を行なうこと。また、要求を行なうにあたり、違法又は不当な言動や行動、社会通念上認められる範囲を大きく逸脱し要求を繰り返す言動を言います。

例えば、「このような賞味期限の商品を客に提供するとは、何を考えているんだ!どうしてくれる?もし、この商品を使用して体調でも崩し、入院でもしたらどうしてくれるんだ?この店は客を軽く見ているのか?商品を交換するだけじゃ済まないぞ、謝罪文を出してもらおうか!」「わざわざ店まで来ているのだから、交換だけではなく2~3個同じ商品を出せ!それが店の誠意だろ!」というケース。

このような場合、店舗として義務があるのは、商品の交換又は返金要求であれば妥当と言えるでしょう。しかし、「2~3本同じ商品を出せ」や「謝罪文を出せ」などは、義務の範囲外と考えられ、不当要求に該当します。正当な範囲を超えて“やれ”という言動は、明らかに強要に近い状況ですので、違法・不当な行為として対応する必要があります。つまり、不当な要求の部分については、断固応じてはいけません。ただし、商品自体の交換(原状回復)は行う必要があります。


カスタマーハラスメント(カスハラ)とは

カスタマーハラスメント(つまりカスハラ)とは、要求を行なうに当たり、BtoB及びBtoCどちらにしても、優位性を背景として迫ることや、違法及び不当な行為を用いて繰り返し要求する行為です。

既に前述しておりますが、違法、不当、更にはSNSへの投稿を示唆することや、個人攻撃も含めて行われる“行為”となります。

例えば、「言う事を聞かないのであれば、ここで商売をできないようにしてやるぞ」「この対応をSNSに投稿してやる」「お前は頭がおかしいのではないか?常識に欠けている」「お前をクビにしてやるぞ」というケースが考えられます。

実は、このような行為は昔から行われています。2020年国内にて新型コロナウィルス感染症が猛威を振るい始めた時、マスクの需要が急上昇しドラッグストアーでは売り切れ状態が続き、その時に一部のお客様より心無い要求行為がありました。そこで顧客より行われるハラスメント行為として、新たな名称?として、カスタマーハラスメントと名付けられました。したがって、このハラスメント行為は過去より繰り返し行われていましたが、あまり注目を浴びることなく現在に至った訳です。

カスタマーハラスメントの行為類型例 ~SPN推奨~

行為類型 事例
顧客として優遇を求めることを目的とする言動
(優越的地位の濫用)
■「俺は客だ」、「お客様は神様だろう」、「お金を払っているんだから、やって当然」、「対応次第では、今後の取引を考える」等の発言
■「不買運動を起こす」「ネットで炎上させる」、難癖付けて値引きを要求、「客の言うことを信用できないのか」と質問を遮断する行為
不当・過剰・法外な要求、社会通念上相当の範囲を超える対応の強要、コンプライアンス違反の強要 ■対価的に相当な範囲を超えた要求、特別の利益や便宜の供与を求める要求、法令違反(違法行為)の内容への対応要求
■暴行・傷害、強要・恐喝・脅迫、不退去、器物毀棄、威力・偽計業務妨害、名誉棄損等の刑法犯、一方的主張の繰り返し
職務妨害行為
(就業環境又は業務推進阻害行為)
■長時間に渡る担当者の拘束、その場で解決できない事象への即時対応要求、正当性のない担当者の交代要求、虚偽の申し立て
■就業時間後の拘束、他業務実施の妨害、義務なき文書の提出要求、大声出す、暴れる等の施設の平穏を害する言動
■同一・類似案件への執拗な対応(回答)要求・電話、業務上必要な機器等を壊したり奪ったりする行為、従業員の警告を無視
担当者の尊厳を傷つける行為
(人格否定・意思決定権の侵害)
■暴言、誹謗中傷、個人的な責任追及(賠償・補償要求)、個人情報の晒し等をちらつかせること、無許可での撮影・録音
■土下座や人格・尊厳を傷つける行為の強要(セクハラ、性的自由の侵害を含む)、SNS等による連絡・返信要求・強要
■職場や通勤経路、自宅での待ち伏せ等恐怖を与える行為、必要以上の連絡先・個人情報等開示の要求、その他嫌がらせ行為

カスタマーハラスメントをめぐる留意点

1)企業として従業員への安全配慮義務違反

使用者は、労働者に対して、その生命・身体等の安全を確保、必要な配慮をしなければなりません。これは、労働契約法第5条に定められています。

もし、自社の従業員がカスタマーハラスメントにより、精神のバランスを崩す、メンタルリスクを負ってしまった場合、企業側は従業員の生命・身体の安全に対し、どのような配慮・対応をしていたのか?という点は、問われることになる可能性が非常に高くなっています。

現時点において、カスタマーハラスメントはメディアなどでも大きく取り上げられていますので、知りませんでしたでは通用しません。要するに、“結果予見可能性”“結果回避可能性”どちらにおいても、義務有りと判断される可能性が高いということになります。 企業は、従業員がそのような事態に陥らないよう、カスタマーハラスメント対策を構築・推進しておく必要がある訳です。


2)カスタマーハラスメントで労災が認定される

2023年9月厚生労働省は、これまでの心理的負荷による精神障害の認定基準を改正し、業務による心的的負荷評価表の具体的出来事にカスタマーハラスメントを加えました。

これにより、カスタマーハラスメントを要因とした精神的障害を負った場合、労災使用が認められる可能性が高くなったということになります。


3)従業員の疲弊が増大している

カスタマーハラスメントについて、一番切実な問題は、従業員が現場でカスタマーハラスメントへの対応に困っているということではないでしょうか。どうして困るのかというと、シンプルに不当要求やカスタマーハラスメントへの効果的な対応要領、すなわちそれらと戦うための武器を装備していないということです。また、武器を持っていても、使用方法を知らなければ“宝の持ち腐れ” ということにもなります。不当要求・カスタマーハラスメント対応としては、企業として、不当要求やカスタマーハラスメントへの対応要領を整備し、それを使いこなせるようしっかりと研修し、現場で使えるようにスキルを身に着けさせる必要があります。

従業員を疲弊させないためには、企業がどのような対策を行い、労災認定される従業員を生まない、会社が従業員を守るという姿勢を持つのか。現場のリアルや温度感を経営幹部が認識する必要があるのです。まずは、実態把握をしっかりと行うことから、初めてください。

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