2017年07月24日号
医薬品業界の専門家リスクは深刻だ
高額なC型肝炎治療薬の偽造品の流通問題では、卸売業者が複数の個人から購入、転売され、取引時の本人確認の未実施や帳簿の虚偽記載、外箱がなくても取引が行われるなど、その異常な商慣行やリスク感性が浮き彫りとなった。厚労省は、「製造、流通から、医療機関や薬局に至るまでの一連のサプライチェーンの下で、関係者間において更なる取組を進める必要がある」とする中間報告を公表したが、そもそも医薬品は生命に関わるうえ、高額な商品の転売リスクの高さ、犯罪組織の関与など、厳格な管理は当然のことであり、提言内容だけでは不十分だ。加えて、化血研や山本化学工業の問題など、医薬品業界では、安心を蔑ろにする不祥事が相次ぐ。業界あげての再発防止には、この世間からあまりにも乖離したリスク感性を正していくことから始める必要があろう。(芳賀)
匿名加工情報、活用と保護の両立
改正個人情報保護法では「匿名加工情報」の規定が新設され、特定の個人が識別できないよう加工すればデータを流通させられるようにした。匿名加工したビッグデータの活用は、特定の企業の利益になるだけでなく、社会全体が得られる恩恵も大きい。例えば、病院などが持つ膨大な医療情報を研究機関や製薬会社などの間で流通し、新薬の研究開発や予防医療などに役立てることが期待されている。一方で、本人の知らないところで収集され、復元され、取引されることがないよう、事業者はデータ取り扱いの権限・義務など適正な業務遂行を消費者に開示し保証する仕組みを設けることが求められる。個人へのデータ利活用に関する許諾やデータ流通の透明性とセキュリティを向上させつつ、取引されるデータの質・信頼性を確保することが今後の活用促進に繋がる。(佐藤)
人手不足、バブル期並み 中小企業、深刻な経営課題
17年度経済財政白書は人手不足がバブル期並みに深刻と指摘。特に中小企業の採用環境は厳しい。こうした環境下では、従来の採用戦略を見直す必要がある。採用手段はハローワークや求人媒体頼みになっており、いわば、待ちの体制だ。こうした姿勢では、知名度や待遇面で見劣りしがちな中小企業は苦戦が必至となる。攻めの採用方法のひとつに人材データベースやSNS、イベントを活用した「ダイレクトリクルーティング」がある。自社の求める人物像にピンポイントでアプローチし効率的に人材が集められる。反面、採用業務の負荷が増加し、採用母集団形成の即効性が得られ難い。転職意向が低い受動的な求職者を口説くためには、自社の魅力や展望を熱く語る人物が必要だ。社長や担当者に限らず、経営マインドを持つ社員による「健全な領空侵犯」が求められる。(伊藤)