2017年10月02日号
民泊の犯罪インフラ化への対応も急務だ
民泊の「犯罪インフラ化」が深刻な状況だ。直近も、偽造カードでATMから現金を不正に出金したとされる海外の犯罪者の「滞在先(アジト)」として、あるいは、海外から覚せい剤を無許可の民泊施設に発送、別の住宅に転送させて受け取る「経由地」として、悪用された。宿泊者と面会せず部屋を提供するなど本人確認の不十分な物件が多いことや、そもそも無許可で営業する家主が多いといった脆弱性が突かれた形だが、本人確認を行っても、偽造パスポートの悪用や犯罪者への無断転貸といった悪意への対応は現状では困難だろう。現在、ネット上の「非対面取引」における本人確認のあり方について議論が進むが、民泊における厳格な本人確認の徹底も喫緊の課題だ。海外の犯罪組織やテロリストなどが国内に浸透している脅威から目をそらしている時間はもはやない。(芳賀)
組織内部からの不正アクセスも視野に入れた対策を
市役所の内部ネットワークに不正にアクセスしたとして、大阪府富田林市の職員2人が不正アクセス禁止法違反の疑いで、大阪府警サイバー犯罪対策課に相次いで摘発された。職員は人事課など複数部署の職員のIDやパスワードを無断で使い、内部ネットワークに約430回にわたってアクセスし、職員の人事異動や懲戒処分の情報を複製し、自宅で閲覧していたという。市民の個人情報を扱う市役所のネットワークが、IDは職員番号、パスワードはIDに複数の数字を合わせたものであり、容易に推測できるパスワードで運用されていたことも問題である。また、同様の事案等の対策にあたっては、組織内部からの不正なアクセスも前提としたアカウント情報の管理と、不必要な権限の洗い出しやアクセス状況の継続したモニタリングなど、まずは基本を徹底することから始めたい。(佐藤)
企業のドライバー教育を考える、警察庁交通局「平成29年上半期における交通死亡事故の特徴について」から
警察庁交通局が9月に発表した掲題調査によると交通事故死者数は、平成19年上半期と比較して1011件減少(37.7%減)しているものの、そのうち65歳以上の高齢者の占める割合は54.4%と増加している。特に歩行中死者数に占める高齢者の割合は71.1%と高く、多くが17時~19時に発生している。歩行中死者のうち、61%に歩行者の法令違反がみられた。横断歩道以外で高齢者の無理な横断もそのひとつだ。夕刻の生活道路では歩行者に注意して早めのライト点灯と速度を抑えるべきだろう。ドライバーは交通事故におけるリスク要因の変化を捉え、従来以上の危険予測と回避のための余裕ある運転が求められる。従業員に運転を課す企業は、具体的な事例を用いた定期的な運転教育とドライブレコーダーによる運転記録の抜き打ち監査など実効性のある個別指導まで踏み込むべきだ。(伊藤)
なくならない障害者差別、事業者の「合理的配慮」努力義務およばず
内閣府の「障害者に関する世論調査」によれば、障害者差別解消法(昨年4月施行)を「知らない」回答者は77.2%、「障害者への差別や偏見があると思う」回答者も83.9%に高止まりし、いまだに差別が根強い現状が明らかとなった。そもそも同法は、自治体や事業者を対象に障害を理由とした差別を禁止し、障害者への合理的配慮を促すものだ。人口減少と超高齢化を迎えた日本の事業者は、多様な人材の活用を迫られているが、障害者も例外ではない。障害者への合理的配慮を理解するために、まずは想像してみることも大事だ。例えば、目や耳の衰えは視覚・聴覚障害に、四肢の衰えは肢体不自由に通じるだろう。その上で、自社の「働きやすさ」はどうなのか──。事業主は、差し迫った労働人口の急減という現実に対応するにあたり、多様性をめぐる想像力も試されている。(山岡)