2017年12月18日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
薬物依存症対策や大麻の蔓延防止対策には「正しい理解」が必要だ
犯罪対策閣僚会議が新たに公表した「再犯防止推進計画」は、「薬物依存症は適切な治療・支援により回復することができる病気であるという認識を持たせ、薬物依存症からの回復に向けた治療・支援を継続的に受けさせることが必要」であり、刑事司法関係機関、保健医療・福祉関係機関等が連携して支援する新たな取組が必要と指摘する。一方、深刻さを増す大麻の蔓延の背景には、大麻の有害性(依存性の高さや脳への影響、再就労への影響など)や「医療用と吸煙用」(無害性と有害性)の違い等に対する国民の無理解もある。今後、流通量の増加が見込まれ、覚せい剤へのシフトなど危険な事態の定着化・深刻化、大麻自体が品種改良によってその有害性を高めている現状などもふまえれば、大麻の違法性・有害性を国民にきちんと伝えていく広報こそ重要となろう。(芳賀)
悪意ある投稿、3割が「気が済んだ、すっとした」
情報処理推進機構(IPA)は、ネットへの投稿に関するアンケート調査結果を公表した。その結果、悪意あるメッセージを投稿したことがある経験者の約3割が「気が済んだ、すっとした」と答えた。その場の感情に囚われネットに書き込んで一瞬すっとした気になるということを無自覚に繰り返していると、次第にエスカレートし怒りを感じたら誰かを攻撃しなければ気がすまないようになるのではないか。ネットへの発言は、「本音を言い合う場」として、あるいは、「感情のガス抜き」として有効な面もあろう。ただ、ミスした人を責める、勝負事の敗者を叩く等の行為は簡単だが、不特定多数が行き交う公の場で他人の生命を害したり、公序良俗に反したり、プライバシーを侵害したり、人間としての尊厳を傷付けるその発言には常に責任が伴う。潤いのある社会を望む。(佐藤)
深刻さ増す「買物難民問題」
「買い物」という日常生活で当たり前の行為が、高齢化を契機に身体的にも経済的にも困難になり高齢者を中心に深刻な問題となっている。この問題を初めて指摘したのは杉田(2008)『買物難民』という著書だ。問題の本質は単なる買い物先の消滅に留まらず、弱者切捨ての構図、すなわち社会的排除問題にあると理解でき問題の深刻度は高まるばかりだ。一方、注目されるのは、移動スーパーやネットスーパー事業だ。事業の主戦場は異なり、前者は過疎地域、後者は首都圏に強みがある。各々の得意な特徴は、事業の棲み分けをすると同時に、社会のインフラとしてみた場合、それぞれの欠点を補完しあっているともみて取れる。弱者を切り捨てない社会を目指すためには、それぞれの企業が工夫をして事業を継続することに加え、官民で市場を育成するとの観点も必要だ。(伊藤)
テレワークの前提となるもの
日本経済新聞社は、上場企業・有力非上場企業602社を「働きやすさ」の視点で格付けした「スマートワーク経営調査」をまとめた。同社は、柔軟な働き方として場所(在宅勤務、モバイルワーク等)と時間(フレックスタイム、時差出勤等)の視点を示した。それによれば、対象企業の35%が在宅勤務を導入している一方、在宅勤務を利用している正社員の割合は42%の企業が「1%未満」とある。また、回答企業の2016年度の年間総動労時間は平均1995時間とのこと。仮に年間休日を120日とすれば、1日当たりの労働時間は8時間18分となる(月平均の残業は6時間程度だろう)。まだまだ多くの労働者が場所的な”管理下”にある状況でこの数値だ。(適切な業務分担を前提として)場所的な管理下ですら自らの時間を管理できない労働者はテレワーク以前の問題と言えよう。(新飯田)
ダミー会社、不正証明書……電子上の「証明書」めぐる攻防はげしく
ウェブサイトの信頼性を保証する電子証明書「SSL証明書」「EV証明書」などを巡って、騒動が続いている。11月には、不正な証明書を大量に発行していた中国系企業が、事業停止に追い込まれた。さらに今月には、米国の研究者が「標的企業を偽装したダミー会社でも、証明書付きの偽サイトを立ち上げられる」ことを実証した。これら電子証明書の取得は民間事業者でも一般的だが、決して万全のセキュリティ施策ではなく、「証明書付きウェブサイトの事業者」の信頼性もまた絶対ではないことになる。見極めのポイントは、たとえば認証局や登記情報に不審な点はないか…といった点にあるが、サイバー上の「信頼」を巡る水際の攻防は刻々と変化しており、これもまた絶対ではない。サイバーセキュリティが厳しさを増す中で、事業者もまたプロアクティブな取組みが求められる。(山岡)