30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

青少年への暴排教育の重要性

兵庫県の暴力団追放兵庫県民センターが中学・高校で実施している暴排教室が、昨年は1校しか実施されず「開店休業」に陥っているという。「組員の子の心を傷つける」「差別につながる」など教育現場の懸念がその背景にあると聞く。人権擁護の観点も重要だが、兵庫県暴排条例が「青少年の健全な育成を阻害する」ため暴力団を県民生活から排除すべきと定めるところ、暴排と人権擁護のバランス、青少年教育のあり方については、もっと社会的な議論を深めていく必要があろう。福岡県では、福岡県警が採用している「暴排先生」が活発に活動を継続しており、実際、子どもに「暴力団を辞めてほしい」と言われて離脱を決意した暴力団員の存在も確認されている。暴力団の負の連鎖を断ち切るためにも、青少年に正しく暴排意識を醸成することこそ重要ではないか。(芳賀)

AI狂想曲のなかで考える機械化・システム化の原点

先日行われたトヨタ自動車の決算説明会。河合副社長による「トヨタの競争力を支えるモノ造り」と題する基調講演が行われた。河合氏は製造現場一筋の叩上げの人物。シンギュラリティ仮説が実しやかに語られるなか、示唆に富む内容である。報道を総合すると、「自動化」とは、現場の手作業から原理・原則を学び、それを基に応用・改善を繰り返し、会得した「匠の技・知恵・工夫」を機械に組み込むことで、機械により匠と同等の仕事が再現できる仕組みであり、現場の地道な作業や原理原則という人間の英知・知恵がなければ、目利きも働かず、進歩は止まるという趣旨。モノ作りに限らず、事業活動や危機管理にも通じる教えである。現場の匠の技を標準化すべく日々研鑽を続ける一方、人間の英知をシステム化する「ニンベン」のついた「自働」化を目指したい。(西尾)

【注意喚起】仮想通貨流出便乗詐欺にご注意!

仮想通貨取引所コインチェックによる大規模な仮想通貨の流出では、本日から日本円の出金が再開されたものの、混乱や騒ぎに便乗した詐欺行為の拡がりが懸念される。 先日は、SNS上で「料金を支払えば出金ができる」などと取引所を装った偽情報の発信が確認されている。また、「仮想通貨(NEM)を特別に取り戻す方法」や、実在する組織を騙り救済代行としてIDやパスワード、個人情報、仮想通貨ウォレットのアドレスなどを聞き出そうとする手口が今後も予想される。相当額の損失(含み損)を抱えている利用者も少なくない中、心理状態としてはできるだけ資産を取り戻したいと考えている人が詐欺行為に巻き込まれる可能性がある。安易な接触や不用意な信用は絶対に避けるとともに、情報の真偽をしっかりと見極め、悪質な二次被害に遭わないために注意が必要だ。(佐藤)

スポーツにおけるドーピング問題

2/9開幕の平昌オリンピックでは、国としてのロシアはドーピングを国家ぐるみで組織的に行なったとされ、参加できない。ロシアに限らず、薬物を使用しているスポーツ選手が検査制度を監督するチーム医師や他の専門家から助言を受けて検査をすり抜けていることは指摘されていた。背景には、高度に組織化された「ドーピングネットワーク」の存在(医師、薬局従業員、製薬会社、闇組織など)が指摘されている。選手に強いドーピングの動機がある限り、世界アンチ・ドーピング機構が進めてきた「消極的教育」の結果として発展した「捕らえて罰する」という伝統的対策だけでは不十分だ。選手の責任感を高め、高度な判断力を養い、薬物の誘惑を断ち切るという家族も含めた「積極的教育」に踏み出す必要がある。加えて「ドーピングネットワーク」の排除も重要だ。(伊藤)

「民泊新法」前に高まる期待、足もとのリスクは大丈夫か─テロ、不法滞在、ヤミ民泊…

本年6月に新法「住宅宿泊事業法」が施行され、民泊が合法化される。世界最大の民泊事業者をはじめ、国内事業者の参入や事業連携も相次いでおり、民泊市場への期待は膨らむ一方だ。しかし、そこに潜むリスクも小さくない。例えば、2015年のパリ同時多発テロの犯人は民泊施設に潜伏し、凶行に及んだ。また、大阪市では違法民泊の乱立が確認されており、他の大都市圏でも同様の実態が懸念される。民泊においては、内外の犯罪集団やテロリストといった「利用者のリスク」だけでなく、宿泊者名簿取得や衛生管理・安全管理を徹底しない「不良事業者のリスク」も横たわる。同法が掲げる「文化交流・休眠地活用」という理念は価値あるもので、東京五輪を前にしたホテル不足もまた喫緊の課題だが、それでも官民ともに眼前のリスクを見据える必要があろう。(山岡)

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