2018年07月23日号
ギャンブル依存症対策の実効性を高めよ~IR実施法案の成立を受けて
懸念されるギャンブル依存症対策について、政府は「厳格な入場制限をはじめ、重層的かつ多段階的な依存症対策を講じる」としたが、依存症は重症になると難しく、より早い段階でのサポートが必要だ。「週3回かつ28日間で10回」のカジノ施設への入場回数制限に科学的根拠を疑う声も多い中、対策の実効性を高める必要がある。先行して成立したギャンブル依存症対策基本法は、カジノだけでなくパチンコや競馬など既存のギャンブルも包括し、政府に医療体制の整備や社会復帰支援を進める「対策推進基本計画」の策定を義務づけた。依存症経験が疑われる人はすでに国内で約320万人いるも言われる。カジノで依存症を徹底的に防がなければならないのは当然だが、これを機会に、すべてのギャンブルの健全化を目指し、包括的かつ実効性の高い取り組みが求められる。(芳賀)
西日本豪雨、災害関連死を防ぐ支援を
西日本の豪雨災害は死者200人を超え、なおも収束が見通せない。さらに、被災地では猛暑が続いており、熱中症や感染症が広がらぬよう万全の対策が要る。多くの被災者が家を失い、避難の長期化が見込まれ、災害関連死の増加が心配される。2年前の熊本地震では避難後に亡くなった関連死が200人を超え、建物の倒壊などによる直接死の4倍に膨らんだ。豪雨災害でそれを繰り返してはならない。避難が長期化すればストレスに加え、生活再建への不安も高まる。将来を悲観した自殺や孤独死の悲劇も、周囲の支えで何とか防がなければならない。また、障害者や妊婦、乳幼児も含め、ケアが必要な人への目配りが一段と大切になる。被災地や被災者が必要とする支援は、時間の経過とともに変わっていく。今後は被災者のニーズをきめ細かく把握することが不可欠だ。(佐藤)
コンコルディア・フィナンシャルグループ傘下の東日本銀行の不適切融資、続く金融機関の不祥事
金融庁は、東日本銀行に対し、銀行法に基づき業務改善命令を出した。立ち入り検査の結果、融資の際に金利とは別に積算根拠が不明な多額の手数料を取っていたり、必要以上の金額を融資して、その一部を定期預金させる手法が蔓延していたことがわかった。背景には業績を上げて横浜銀行との統合を有利に進めるため、営業現場に過度のプレッシャーをかけていたとみられる。コンプライアンス軽視の典型的な「業績至上主義」が原因といえよう。そのような環境では、個人の矜持によって抗うことは容易ではないだろう。一方で、経営統合した横浜銀行は謝罪会見で「結論としては把握していなかった」としている。互いに不干渉とする不文律が招いた統合結果だ。経営統合には、融合の仕方や統合後のビジネスモデルを見据えての相互の「健全な領空侵犯」が必要だ。(伊藤)
杉田衆議院議員「LGBT差別」失言、ダイバーシティ「一億総活躍」ほどとおく
衆議院議員の杉田氏が雑誌への寄稿にて「LGBTのカップルは子どもを作らない、つまり生産性がない」などと言及し、強い批判を浴びている。端的には、無配慮をあらわにしたハラスメントの類型であり、「子なし世帯」への差別感情すらにじむ。第2次安倍内閣が「一億総活躍社会」を掲げてダイバーシティの推進をはかる中、その稚拙さに弁解の余地はない。いわゆる「LGBT」=性的少数者のほとんどは、偏見に晒されつつも就労し、地に足を付けて生活を営んでいる。宗教婚が根強い欧米ほど「同性婚」は政治課題になりにくい日本でも、同一家計・家族機能を担保するパートナー制については、徐々に柔軟な対応が広がりつつある。人口縮小時代、事業者も率先して、福利厚生の格差是正や偏見をなくす研修など、多様性の確保が雇用確保の要となるはずだ。(山岡)