30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

砂上の楼閣~モラルハザードの連鎖を断ち切りたい

金融庁は、準暴力団幹部と疑われる関係者へ融資していたなどとして、西武信用金庫に信用金庫法に基づく業務改善命令を出した。反社排除の取組みが不十分だったことに加え、主力の投資用不動産向け融資でも審査書類の偽造を見過ごすなど問題融資が横行、「業績優先の経営を推進するあまり内部管理体制の整備を怠った」「強い発言力を持つ理事長に対し十分なけん制機能が発揮されておらず」「通常の注意を行っていれば分かったはずだがあえて見ないようにした」等と指摘する。反社排除に特に重要なのは第1線の「健全な意識」と「リスクセンス」だが、それらを「曇らせ」、第2線や第3線を「黙らせ」たのがトップであり、組織全体が思考停止していた事実は重い。コンプライアンスやリスク管理の基盤がいかに脆いものか、あらためて認識する必要があろう。(芳賀)

偽ニュース対策への取り組みと検討

総務省の有識者会議は、インターネット上の偽ニュース対策について本格的な議論を始め、ネット上のニュースの信頼性を高めるための具体策を年内までに方向性を示すとしている。SNSやまとめサイトなど、情報を集めて配信する「場」として機能しているプラットフォーム企業には、なりすましなどへのチェック体制の強化など自主的な行動規範と、現実に起きている情報操作や人権侵害に対して、社会的責任を負う。また、真実に見えるよう工夫された嘘の話題は、広告収入を稼ぎ出す手段となっており、良識に照らし問題のあるサイトからネット広告掲載を見送るなど広告主から責任を追及する声も出始めている。何れにしろ、情報を受け取る側が、自分が知っている情報の価値、知らない情報の価値を客観的に判断する能力を身に付け考えることが対策の一歩となる。(佐藤)

地方・中小スーパーの食品ロス削減に遅れ、納品期限緩和の取り組み

農林水産省は、食品ロス削減に向けた小売事業者の納品期限緩和の取り組みについて公表した。取り組み企業の業態別年間売上高シェアは、コンビニが93%(8社)、総合スーパーが81%(10社)、食品スーパーが16%(19社)と地方の食品スーパーの遅れが目立つ。加工食品については製造日から賞味期限までの期間を3等分に区切り、製造、卸、小売の各段階における納品期限とする1/3ルールが食品廃棄を生み出す原因のひとつとなっていることが緩和の背景にある。物流を含めたサプライチェーン全体の問題と認識する必要がある。中小事業者の緩和が進まない原因のひとつには、専用の物流センターを持たないことがある。汎用物流センターを利用する小売業者間の協力による取り組みが必須だ。廃棄費用を小売価格に盛り込み消費者に転嫁するやり方から脱しなければならない。(伊藤)

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