2019年07月01日号
コンプライアンスは「決意表明」だけで実現できるのか~吉本興業「闇営業」問題を考える
同社では、過去の反省をふまえ継続的にコンプライアンス研修を繰り返し実施してきたという。たとえ「知識」は伝わっても、そもそも「闇営業」というルール違反に踏み込むかや相手の素性の確認さえ、結局は一人ひとりの「倫理観」「良識」「リスクセンス」に委ねられてきたのが実態だ。その背景にある「やむにやまれぬ」経済的側面の解消、すなわちギャラや仕事の「適正な配分」、そして「マネージャーの労働環境」の見直しによる「行き届いた管理」の実現や、「見て見ぬフリ」をしてきた組織の不作為体質の一掃にまで踏み込まない限り、その根絶は難しい。同社の「決意表明」からは、根本的な問題に向き合う本当の覚悟は窺えない。世間が騒ぐほど反社が脅しやすい危うい状況となる今こそ、「当たり前」のことに「本気」で取り組むことが求められている。(芳賀)
企業としての防災・BCP対策は必至の状況。特性を踏まえた地に足のついた対策を
昨年の西日本豪雨は甚大な被害をもたらし、北海道胆振東部地震でもブラックアウトが発生した。本年も熊本での地震、宮崎県南部や山形県沖での地震等、震度6規模の地震が半年間で既に3回発生している。現在九州地区を中心に大雨が続いており、2016年の熊本地震の主要被災地である益城町等でも被害が出ている。いまや、災害は日頃から発生する状況となった。防災・BCP対策の実施はもはや企業にとって必須の状況だ。地震を想定した対策の他、大雨・水害も想定した対策も不可欠だ。水害は、一定水位になった場合は移動(避難)の危険性も増す他、電気設備の損傷や衛生状態の悪化等、事後対策も必要だ。BCPの実務では、災害事象に囚われないインフラ被害ベースのBCP整備が進んでいるが、災害毎の事前・復旧対策には違いもある。地に足の着いた対策が急務である。(西尾)
中古ドメイン売買、悪用のリスク
インターネット上の住所に当たる「ドメイン」をめぐり、過去に企業などが使用した中古品が盛んに売買されている。有名企業などが使用していたドメインは、グーグルやヤフーなどの検索サイトで上位に表示され、アクセス数が上がりやすい。広告収入増に繋がるため、高値で取引される傾向がある。売買に法的な問題はないが、高いアクセス数を狙ってフィッシングサイトに使われる例もあり、悪意を持つ第三者に渡った場合、詐欺や個人情報の窃取などに悪用されるリスクもある。なりすましサイトにとって、過去知名度のあったドメインは、ウソの精度をさらに高める格好の材料になるだろう。企業は手掛けたブランドやサービスが終了したあともすぐには手放さず、ドメインの放棄(破棄)は慎重に行い、維持や一定期間保持しておくことも検討する必要がある。(佐藤)
コーポレートガバナンスの歴史に残る株主総会
INAXと合わせて約10年間お世話になったLIXILの経営陣による内紛が、やっと終了した。私が在籍していたころは、正直に言うと全体としてはおっとりとした良い会社だったと思う。ことの発端は伊のカーテンウォール大手「ペルマスティリーザ」を買収したことだったが、M&Aの記者発表をした時にはたくさんの見知らぬ外国人がいきなり同僚になったことが少し不思議だった。株主総会を受け、僅差で株主側の提案が経営陣の多数を占め、元CEOの瀬戸氏が復帰した。今回の結果は「会社は誰のものか」という難しい問い対する回答の1つとなるだろう。だが経営陣にとってはこれからが正念場だ。ぺ社の売却は米国に阻まれたままだし、厄介な社外取締役も多い。全社一体となり、一刻も早く正常なガバナンスを取り戻し、昔のように明るく良い会社になってくれることを願っている。(大越)