30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

個人情報保護法改正とAML/CFTの実務~慎重な議論を

個人情報保護法改正の議論が進む。たとえば、利用を停止する権利や第三者提供を停止する権利の導入によって、事業者は、個人の求めに応じてデータの利用等を取りやめる必要が出てくる。自分のデータがどのように利用されているのかを知りたいという個人のニーズが喚起される可能性もあり、事業者は、保有個人データの開示や停止に向けて、どのようなデータを何のために保有しているのかを再度整理する必要に迫られることになる。さらに、利用停止権が過度に適用されれば、個人情報の利用を前提とする業務も多いAML/CFTの実務において、業務上深刻な支障が生じる可能性も考えられる。AML/CFTなどで用いる個人情報も利用停止が可能になれば、本人確認等の業務が徹底できなくなるおそれがあるのだ。法制化に向けてはそのような観点からも慎重な対応が必要となろう。(芳賀)

マスク着用を認めるかは企業姿勢そのもの~従業員を感染症・カスハラから守れ

新型コロナウイルスが国内でも感染拡大の様相を呈する中、接客業の現場では、スタッフのマスク着用可否をめぐるマスク騒動が今回も起きている。このケース、顧客から「スタッフがマスクをするとはけしからん」というクレームが寄せられるが、そのような主張を繰り返して執拗にクレームをつけるなら、それはカスハラである。一般的なサージカルマスクでのウイルス予防効果はあまり期待できないものの、未知のウイルスが蔓延する状況ではマスクをしていたい従業員の気持ちも理解できる。企業としては、感染症からもカスハラからも従業員を守ることが重要であるが、マスク着用に対する判断は、まさに従業員を守ることに関する企業姿勢の表れと言える。「働き方改革」は何も時短のみではない。正に「働き方」そのものの見直しであることを忘れてはならない。(西尾)

三菱電機、不正アクセス事案の第三報を公表

三菱電機は、機密情報の流出が疑われる不正アクセスに関する調査結果で、現段階で判明しているサイバー攻撃の経緯や手法などを第三報として公表している。本事案では、悪用したファイルなどの痕跡を残さない(ファイルレス)タイプのマルウェアが確認されており、今後、別の事案でもより深い水面下の攻撃に変わり、被害の認知や犯人の特定がこれまで以上に難しくなることを示唆している。また、パッチの適用や認証の強化といった基本的な対策に加え、感染が発生した場合に速やかに特定し、経緯を可視化できる仕組みが必要だと考えさせられる。日々高度化するサイバーリスクに対し、役職員はこれまで以上に脅威に対して目を向け、侵入後の疑わしい通信や挙動の分析や攻撃者特有の行動特性を把握するなど、まさに組織全体で監視する体制が求められる。(佐藤)

摘発強化の一方で、あおり運転に遭わないための運転リスク管理を知る

前方の車と距離を詰めすぎる「あおり運転」などによる道交法違反(車間距離不保持)で1万5065件(2019年、前年比2040件増)を摘発したことが、警察庁の集計で分かった。このうち高速道路が9割以上の1万3787件だったという。摘発強化は、2017年の東名高速の死亡事件がその契機だ。とくに高速道路でのあおり運転は危険なため、被害に遭わないためのリスク管理も必要だ。高速道路3車線では、一番右は追い越し車線なので、後ろから車が迫れば走行車線に戻るなど走行車線を走るのが原則だ。本線への合流では、左の走行車線に合流し、無理に右車線へ割り込まないなど後続車にブレーキ操作をさせないこともリスク軽減につながる。大型トラックは左の走行車線を走るのが原則だ。この違反もトラブルにつながりやすい。仕事で運転をする社員へのきめ細かい啓蒙が必要だ。(伊藤)

新型コロナウイルス(COVID-19)対策、ステージ3への対応を急げ

NTTデータは14日、「当社拠点における新型コロナウイルス感染者の発生について」と題したニュースリリースを発信。事業所内での感染者の発生を受け、同社の対策を公表している。前回本コラムで予想した通り事態は「ステージ3」への移行を見せつつあるなか、今後の公表の仕方のモデルケースとなるだろう。ポイントとしては①対策本部の設置②所管保健所への届け出と連携③感染者のビル内での行動履歴の把握と濃厚接触者の特定④ビル居室の消毒の実施⑤濃厚接触者に対して14日の在宅勤務指示-などが挙げられる。特に「保健所との連携」は、企業の担当者は知っておくべき対応だ。厚生労働省による「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」では感染者が発生した事業者の保健所への報告を促しているが、まだまだ知る人は少ないだろう。(大越)

■当社拠点における新型コロナウイルス感染者の発生について(NTTデータ)

■事業者・職場における新型インフルエンザ対策 ガイドライン(厚生労働省)

■【緊急レポート】新型コロナウイルス対策 企業が今すぐ取り掛かるべきポイントとチェックリスト

IMFの提言に従ってはいけない

IMF(国際通貨基金)が日本の経済状況と今後の課題を分析した最新報告書を公表し、高齢化による財政悪化を阻止するため、2030年までの消費税率の15%への引き上げや富裕層の資産に対する課税制度の導入を改めて提案した。IMFといえば、1990年代のアジア通貨危機の処方箋をはじめ、ワシントンコンセンサスに基づくグローバリズムを一方的に押し付けたことで多くの批判を浴びた。その勧告内容は、庶民増税、社会保障の切り捨てに繋がり、各国で貧富の格差が広がり、貧困層が拡大した。今回も米国の有名経済学者たちが、日本の消費増税はデフレ経済を促進するだけと警告してるのに懲りない。市場原理主義に基づくグローバリズムが投機的なホット・マネーの流入や流出を助長したのは歴史的事実である。日本は同じ過ちをしてはならない。(石原)

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