30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

「大麻感染症」対策が急務だ

ニュージーランドで嗜好用大麻の合法化の是非を問う国民投票が行われ、結果は30日に公表されるという。投票結果に拘束力はなく、過半数が賛成しても、合法化する法案を提出するかどうかは政権の判断次第だ。一方、日本では、大学野球の強豪校で大麻蔓延の実態が明らかになるなど、若年層対策が喫緊の課題だ。医療用と嗜好用とではそもそも成分などが異なり、大麻の有害性・依存性の高さは科学的事実である。嗜好用大麻合法化を巡る最近の海外の動きは、あくまで管理コスト削減や税収増など「経済的合理性」や「組織犯罪対策」の観点からやむを得ない帰結に過ぎず、使用者率が50%を大きく下回る日本とは事情が全く異なる。SNSやコロナ禍を媒介に「興味本位」で大麻に手を出す連鎖は正に「大麻感染症」だ。感染症対策として「真実」の重みこそ浸透させたい。(芳賀)

現場の事情を踏まえたカスタマーハラスメント対策指針を

報道によると、厚生労働省は、来年度にカスタマーハラスメントに関する対応マニュアルを策定するとのこと。既に指針の中で努力義務としてカスタマーハラスメント対策に言及していたが、国としての指針を示すのが狙い。カスタマーハラスメント対策については、すでに当社ではセミナーや各種コラムを通じて、対策すべき内容や現場での対応要領を公表しているが、カスタマーハラスメント防止には、組織として方針の明確化、体制整備(メンタルケアを含む)、現場対応要領の明確化を3本の柱とする総合的な対策が必要だ。そして何よりも、いまだに日本企業に根強く残る間違った「お客様は神様」発想からの脱却が急務である。その意味では従来の専門家だけは限界がある。現場の対応要領に精通した専門家を加え、実践的な内容になることを切に願う次第である。(西尾)

カスタマーハラスメントの抑制には関連省庁・機関の連携・連動が不可欠

カスタマーハラスメントに関しては、インターネット上では警察対応をすればよいと書かれている。確かに最終的には警察対応が必要だが、実際は警察を呼んでも対応してくれないというケースは少なくなく、警察を呼んだことで顧客側に更なる追及材料を与え、カスタマーハラスメントを助長している現実がある。警察側も昨今のカスタマーハラスメントが跋扈する現状を踏まえた積極的対応が必要であるが、企業としては、警察対応に際して警察が扱いやすいような対応要領を現場に周知しておく必要がある。指針を作る厚生労働省だけではなく、警察庁、経済産業省、消費者庁、経団連等の横の連携と関連法規の整備・明確化・積極的運用も不可欠である。対応マニュアル公表を絵に描いた餅にしないように、関連省庁・機関が関与した形で運用されることを期待したい。(西尾)

警視庁がフィッシング詐欺をバーチャル体験できるサイトを公開

警視庁は「小島よしおのサイバーセキュリティ教室・フィッシング詐欺ってなに?編」を公開した。「フィッシング詐欺ってなに?編」は、公開されているサイバーセキュリティ向け動画「小島よしおのサイバーセキュリティ教室」の2回目。ネットバンキングやSNSなどのログインで採用されている2段階認証を掻い潜る手口などが解説されている。VR動画となっており、不正送金被害に遭う被害者の目線と、犯人が被害者を狙っている恐怖を同時に体験できる。自分がおかれている状況が安全か危険かの判断や、危機に巻き込まれないためには相応の知識や経験が必要だが、このように、様々なシーンをリアルな仮想空間でその場面に入り込めることは、脅威を客観的に把握するのに役立ちそうだ。注意喚起や手口を知る効果の高い実践的な学びの場になることを期待したい。(佐藤)

▼小島よしおのサイバーセキュリティ教室

コンビニ大手3社、減益 同じポジショニングが招く同質化競争の限界

3~8月期の大手3社の利益は1540憶円と前年同期比で25%減った。コロナ禍で「まとめ買い」と「低価格」の需要集中に対応できず、加えて会社での朝食や昼食の需要が落ち込んだ。大手の戦略は、(1)規模の競争力(2)市場ポテンシャル重視の出店(3)納入競争を促進する「持たざる」経営に集約される。規模の競争力を基礎とした出店戦略、商品開発・生産システム、マスマーケティングによって業績を伸ばし、結果として市場を寡占した。差別化と模倣を繰り返す全国レベルの競争で、結局は固定費の大きい高コストで実現する同質化競争に陥った。ローカルチェーンのセコマの戦略は、(1)地方の過疎地で儲けるポジショニング(2)顧客価値となる商品の差別化(3)地域密着(4)ローコスト経営だ。大手が模倣しない、あるいはそもそも模倣しようとしない競争回避的戦略で生き残る。(伊藤)

もはや堤防では防げない

10月13日付の朝日新聞が、「強度満たす堤防 決壊84カ所」と1面で報じた。昨年10月の台風19号や今年7月の豪雨などで決壊した計147カ所の河川堤防のうち、半分以上の84カ所が必要な強度を満たした完成堤防だったことが国交省などへの取材で判明したという。気候変動の影響により、100年や200年に1度の雨が毎年のように列島に降り注ぐ。堤防だけでは、もはや水害を防ぎきることはできないのだ。国は流域ごとの対策強化を急ぐとしているが、今後も住民のタイムラインによる避難行動などのソフト面がカギとなるだろう。8月の中央防災会議では、従来の避難勧告をなくして避難指示に一本化する方針を提案。来年の梅雨期までに運用を開始するとした。ただし、運用変更が住民に伝わらなければ意味がない。入念な周知策を講じてほしい。(大越)

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