30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

コロナ禍におけるテロ発生のメカニズム~今こそ「社会的包摂」が求められる

仏紙の風刺画再掲載が、新たなテロの犠牲者を生んだ。自由・平等・博愛を掲げる仏で「表現の自由」は最上位の価値の一つだ。一方、イスラム教では、信仰こそ「至高の価値」であり、信仰対象の風刺は最大の冒涜に他ならない。溝はかくも深く、相互の「不寛容」がテロ発生の構図を強固にしている。さらにISは、コロナ禍は「神が我々の敵に与えた罰だ」として、「敵」が対策で忙殺されている今こそ攻撃強化をと呼びかけている。コロナ禍でネット利用が増えれば、ネット上の勧誘を強化するISらの過激思想に触れる機会も増える。心に燻っている不安や不満、不信は、ネット特有の確証バイアスやフィルターバブル現象・エコーチェンバー現象などによって拡大・強化され、過激思想への傾倒、拡散を招きかねない。「不寛容」がもたらす負の連鎖を断ち切りたい。(芳賀)

正規サイトから画像や文章を盗用した偽通販サイトに注意

正規サイトから画像や文章を盗用した偽通販サイトに注意消費者庁は、注意喚起として家電メーカーダイソンや家具メーカーLOWYAなどを模倣した偽の通販サイトが存在することを公表した。ブランド名や商品をネットで検索した際、検索結果と一緒に関連した広告が表示されるリスティング広告で偽サイトに誘導される。偽サイトは、正規の商品画像や会社概要の記述などがそのまま記載されており、不自然な日本語表記はほとんどみられない。一見しただけでは偽サイトであると気付くことは困難だが、極力アクセスしないという対策を徹底することと、詐欺の手口や危険性を知っておくことで注意力を高めておきたい。通常より価格が格安だったり、振込先口座の名義がサイト上に表示された企業名と異なったりする場合は偽サイトの可能性が高く、このような不審な点がないかをしっかりと確認していくことが大事だ。(佐藤)

東海大学硬式野球部部員2人が大麻使用、積極的教育への転換を

同大は硬式野球部を無期限の活動停止処分とすること決めた。部員の大麻使用を疑う通報により調査したという。野球部の寮で大麻を使用しており、学校関連施設内でチームメイト複数の使用は衝撃的だ。「大麻は覚せい剤と違って、依存症にならない、薬として使われているくらいだから体にもよい」といった誤った情報が使用を後押ししたかも知れない。大学野球でのドーピング検査も限定的だ。大学スポーツによる大学のブランド強化を背景とした大学スポーツのセミプロ化の競争にも水を差そう。選手に薬物使用の動機がある限り、これまでの薬物に対する「消極的教育」の結果としての「捕らえて罰する」という従来の対策だけでは不十分だ。選手の責任感を高め、高度な判断力を養い、薬物の誘惑を断ち切るというオープンな「積極的教育」に踏み出す必要がある。(伊藤)

新型コロナ禍における安全配慮義務

先日、災害時の安全配慮義務に詳しい丸の内総合法律事務所の中野明安弁護士とパネルディスカッションの機会を得た。安全配慮義務には「科学的知見」に基づく対策が必要という。例えば最高裁平成18年3月13日判決では、サッカー部の指導教員が予見できる災害(雷)を軽視して、部活動を行い生徒が怪我を負った。指導教員は空が明るくなり雷の音が遠ざかっていることを理由に、雷の危険性が減っていると判断。試合を再開したために生徒が雷に当たって負傷したのだ。対して裁判所は「雷の音が聞こえる範囲は落雷の危険性が及ぶという科学知見があった」とし、教員の安全配慮義務違反を認定した。新型コロナ禍にあっては、従業員の業務中におけるマスク着用や手指洗浄、体温測定などは十分に科学的知見による対策に相当する。気を緩めずに、対策を継続していきたい。(大越)

各種ワクチン接種の拙速は絶対に避けるべきだ

現在、世界各国で新型コロナワクチンの開発が進められているが、いずれも伝えられるほど、良好に進んでいない。ブラジルではアストラゼネカが開発したワクチンを接種した28歳の男性医師が接種後死亡した。J&Jのワクチンでは治験者が原因不明の病気に罹って試験を中断したという。韓国ではインフルエンザワクチンを接種後、一週間で25人が死亡したという。またスーダンではポリオワクチンを接種した子供2人がワクチン由来ポリオの感染者となってしまった。同国も含め、アフリカでポリオが蔓延しているわけでもないのにである。これらの事例を持ち出すまでもなく、そもそもワクチンの有効性には大いなる疑義が呈されてきた。同時にその副作用には大いなる不信が持たれているのである。まるで万能であるかのようなワクチン待望論に惑わされてはいけない。(石原)

分断の根本原因を直視せよ

米国での大統領選に見られるような民主・共和両党の対立は、各々の支持基盤である極右と極左による暴動を引き起こすほど深まっている。このままでは、どちらが勝っても禍根と混乱を呼び込むだろう。直近では、仏国でイスラム系移民と現地住民との間で人種や宗教を巡る大規模な衝突が発生している。シャルリー・エブド襲撃事件から根深い対立構図は変わっていないようだ。またタイでは首都バンコクで学生らによる首相退陣や王政批判のデモが激化し、戒厳令の可能性も伝えられる。一旦沈静化しているように見える香港での反中共デモも未だ燻り続けている。これらの対立や分断はかなり以前からあったもので、コロナ禍がそれを促進・激化させてしまった面がある。しかし元々は新自由主義とグローバリズムによる二極分化が要因であることを忘れてはならない。(石原)

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