2020年11月09日号
コロナ禍におけるリスクの変化に対応せよ~犯罪収益移転危険度調査書を読み解く
コロナ禍により、対面取引から非対面取引へのシフト、不安定な社会・経済情勢における顧客からの通常時と異なる依頼等の増加等に伴い、資金洗浄やテロ資金供与リスクの高まりや変化が見られる。「なりすまし取引の疑いがあったことから、対面での本人特定事項等の確認を顧客に求めるも、顧客が新型コロナウイルス感染症への感染の懸念を理由として拒否した」、「新型コロナウイルス感染症に関連する給付金等の受給を目的として金融機関に口座開設を申し込んだ顧客の属性が、暴力団をはじめとする反社会的勢力であることが判明した」といった新たな疑わしい取引の届出事例も登場した。刻一刻と変化する経済・社会環境等に機動的に対応できるよう、リスクセンスを常に鋭敏に研ぎ澄ますこと、リスク管理態勢を不断に見直していくことの重要性を痛感する。(芳賀)
感染予防対策も季節に合わせた工夫が必要
北海道で再び新型コロナウイルスの感染拡大の様相を呈している。すすきのでのクラスターが注目されがちだが、市中でも複数のクラスターが発生している。GO TOトラベルの影響は限定的だろう。インフルエンザが主に冬に流行するように、ウイルスの特性として、気温が低い時期の方が感染力が強い可能性があるが、冬が本格化して寒くなるにつれ、感染予防対策が難しくなっている可能性もある。気象庁の気温のデータを見ると、北海道石狩地方の平均気温は、10月は13.1度、11月は現時点で10.2度。換気の頻度や時間が落ちている可能性がある。また手袋等の着用により消毒が十分でない状態で接触感染等により感染が拡大している可能性もある。東京や大阪等大都市でも冬本番を迎え同様の状況になりかねない。冬のライフスタイルに合わせた感染予防対策の検討も急務だ。(西尾)
給付金不正受給、手口拡散で学生らが安易に加担
新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込んだ企業を支援する「持続化給付金」を巡る詐欺が相次ぐ中、不正受給に関与した人が不安と後悔の念に苛まれ、警察に自首したり、弁護士に相談するケースが増えている。特に、「簡単に稼げる」という言葉を鵜呑みにして悪事に手を染めた学生が逮捕されるケースも多く、勧誘や手口がSNSで拡散したことから件数はさらに増える可能性がある。軽はずみに不正な申請をすれば、受給額に上乗せした返還を求められる上、刑罰が科される。詐欺グループと関与してしまった場合、自宅なども把握され、家族へ危害が加えられることを恐れ、犯罪行為と知りながらグループから抜け出せなくなってしまうケースもある。簡単に高収入が得られるバイトなどないし、不正受給は詐欺行為であり、犯罪であることを認識してほしい。(佐藤)
激しい環境変化への対応、意思決定のルールをシンプルに
企業業績の優勝劣敗が鮮明である。リモートワークシステム関連企業や家庭ゲーム関連企業が過去最高益となる一方、旅客輸送関連企業は大幅な赤字に陥っている。環境変化に対して既存の資産、資源、知識などを再構成し、相互に組み合わせて持続的な競争優位を作り上げる能力、いわゆるダイナミック・ケイパビリティを変化が激しい環境下で発揮するには、数を絞ったシンプルなルールだけを組織に徹底させ、後は状況に合わせて柔軟に意思決定すべきだ。細かいルーティン化は、安定している環境では有効だが、極端に環境変化が激しいときには、それはむしろ組織の硬直化をよぶ。行動規範・優先順位など限られた大枠だけにして、それだけをルーティン化しておけば、意思決定者は本質的な部分は足並みを揃え、予想外の事象には各自柔軟に対応し得るからである。(伊藤)
防災に資する賃貸物件の原状回復義務免除を急げ
人が住むために部屋を借りたとする。部屋を退去する場合には、原状回復義務を課せられる場合が多い。例外として国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、エアコンの設置は一般的な生活に必要なので通常消耗扱いとなり、原則的に借主に負担義務はないとされている。一方で、防災に必要なはずの家具の転倒防止を講じるためにあけた釘穴などは、これまで原状回復義務があると解されてきた。近年では防災上必要な措置であると考えられることから、公営住宅に関して原状回復義務を免除する基礎自治体が出てきたが、港区などまだまだ少数派だった。それを10月から、県ぐるみで実施したのが徳島県だ。県内のすべての公営賃貸物件について、転倒防止における原状回復義務を免除する行政措置を実施した。一刻も早い全国への普及を願う。(大越)
大阪都構想、二度目の挫折
1日「大阪都構想」の是非を問う住民投票は反対多数で2015年に続き否決された。大阪市の存続は決まった。都構想自体にどれ程のメリットがあり、また道州制導入へと繋がるのか未だ不明確である。元々「二重行政」の解消は府と市で綿密な調整を図るべき課題ではないか。今回は前回より投票率は若干下がったが、票差は1万741票から1万7167票に拡がった。今回の投票はコロナ禍の中で実施され、公明党が賛成に回り、この10年間に都構想により市内各区役所の残業代に100億円の税金が使われ、その内10億円は特定の人材派遣会社の手数料になったと言われる。事前に大阪市財政局長が作成した、4特別区に分割すると行政コストが現状より年間218億円増加するとした試算は「捏造」として撤回させられた。大阪市民は一体何に付き合わされてきたのか。流石に三度目はない。(石原)
日本学術会議、6人任命拒否問題
この問題に関して、菅首相は説明責任を果たしているとは言い難い。前政権からの踏襲ならば何の意味もない。当初は、総合的・俯瞰的見地から、また偏りのない人事と釈明していた。それならば、残りの99人はその見地から何故任命されたのかの具体的な説明が必要だ。それが今回は「意見交換」や「事前調整」は必要だったが、それがなされていなかったと変更された。これも同様に残りの99人の「事前調整」はどうだったのか。本件に関しては、ポスト経産勢力の官房副長官や内閣府事務次官が忖度し過ぎた経緯も指摘されている。これまた前政権からのデジャブだ。組織としての日本学術会議の問題とは切り離して考えるべきだ。デマ情報を流した某局の上席解説委員の尻軽さも含め、本件が学術界全体の委縮や地方紙や地方局の安易な再編に繋がらないか懸念される。(石原)