30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

あらゆる知見を総動員して特殊詐欺の阻止を

高齢者の特殊詐欺被害が高止まりしている。注意喚起による被害防止の限界が露呈した形だ。だからこそ、AI等を活用した被害防止ツールの深化に注目したい。NTTグループは、固定電話の会話を録音、音声データをAIが解析し不審な言葉の有無や文脈を基に特殊詐欺か否か判別、詐欺と判断した場合には契約者やその親族のメールアドレス・電話番号に警告を送るサービスをリリースした。また、福岡銀行は、銀行口座のふるまいをAIが分析、異常を検知して詐欺等を早期に発見すべく実証実験を開始した。さらにワイモバイルでは、データベースを活用して特殊詐欺等の不審な電話番号を自動で判別、発着信時に警告表示・自動ブロックを行う「迷惑電話対策」を既にリリースしている。「あいまい」な人の行動を最新技術が補完し限界を乗り越える。その成果を期待したい。(芳賀)

Emotetじゃないかもしれない

JPCERT /CCが注意喚起しているように、Emotetに類似した別のマルウェア「IcedID(アイスドアイディー)」の攻撃が活発化していることが観測されている。IcedIDはメールやブラウザなどの情報を窃取するトロイの木馬型の不正プログラムで、 Emotetと同様に他のマルウェアを二次感染させる機能を持っている。「RE:」を付けて過去のやり取りへの返信を装ったり、docファイルが含まれたパスワード付zipファイルが添付されているなど、差出人が自身の関係者であったとしても、安易に開かないようにしてほしい。Emotetと類似しているが、全く別のマルウェアのため、セキュリティソフトによっては検知できない場合もあるため、注意が必要だ。社内における注意喚起と、メールや添付ファイルを開いた場合のネットワークからの遮断、しかるべき部門への報告・連絡体制を確認しておきたい。(佐藤)

トップがパワハラ撲滅周知の先頭に立て

三菱電機は労務問題を防止するための追加対策を発表した。上司のほか、部下や同僚からも人事評価を受ける「360度評価」を21年4月に導入する。パワハラの事例や件数、心の健康を損なった人数などの従業員への開示も始めるという。同社では、教育担当の上司からのパワハラや長時間労働を原因とした自殺者を複数出していた。一般に、パワハラ風土が醸成される企業の特徴は、管理職を含めた業績目標が極めて厳しく、余裕がないことが挙げられる。19年の同社の社外を除く役員27名のうち、21名が役員連結報酬1億円を超える。基本報酬にその約2倍の業績連動報酬が加わった結果だ。業績連動報酬偏重は、短期業績目標達成による社員への過重な負荷の弊害も指摘されている。組織にこびりついた風土を変えるには、トップが拠点を周り、本気を示し対峙することだ。(伊藤)

危機管理における言い間違え

「『GO TO トラベル』はおかしい。Go Toの後にはTokyoのように地名が来るのが一般的」と、先日翻訳者らが集まった「日本の英語を考える会」が指摘し、物議をかもした。BCPを研究する者としては、同じように「BCP対策」という言葉が気になる。災害対策はOKだが、BCP対策は間違いだ。BCPを災害と同じく、担当者が何か恐ろしいものに感じているのかも知れない。社労士の同僚によると「セクハラ研修」という言葉も気になるという。正しくは「セクハラ防止研修」だ。重箱の隅をつつくようで申し訳ないが、些細な間違いが大きなミスにつながる。先日、フェイスシールドでは飛沫を防げないという研究結果が発表されたが、以前指摘した通りフェイスシールドは眼の防護具であり、飛沫を防ぐものではない。今年もあと一カ月。感染症に対する正しい知識で、良い年を迎えたい。(大越)

着目点としての「捜索・差押」

前首相の後援会が開いた「桜を見る会」前夜祭について、東京地検特捜部は、公職選挙法違反等の告発を受け、捜査している。報道によると、その告発はまだ受理しておらず、受理前捜査とされている。世間の関心は、前首相や秘書らの前記違反が立件されるかどうかにあると思われるが、現状、その解明の為には、後援会事務所等への捜索・差押が必須であろう。原則として、特捜部では、捜索・差押の手続きを取るには、告発を受理しなければならない。従って、この「捜索・差押」が、告発受理の一つの目安となり、また、その捜索先・回数等でも、特捜部の捜査姿勢・展開が推し量れることもある。「捜索・差押」が先を見極めるポイントともなるのである。もし企業が、捜索・差押に入られることがあったら、このポイントを、考える必要が出てくるのかもしれない。(中西)

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