2021年03月15日号
暴力団の資金獲得活動に切り込む画期的な判決だ~2つの最高裁決定
住吉会系組員らによる特殊詐欺事件を巡り、最高裁第1小法廷が暴力団側の上告を棄却する決定をした。特殊詐欺事件で暴力団トップの使用者責任が最高裁で確定したのは初めてだ。特殊詐欺事件では暴力団の組織的関与の立証は極めて困難だが、被害者救済や事件抑止など、暴力団の資金獲得活動に大きな打撃を与える画期的なものと評価したい。さらに、最高裁第3小法廷は、工藤会への上納金から得た所得を申告せず脱税したとして所得税法違反に問われた同会トップと「金庫番」とされた幹部について、暴力団側の上告を棄却する決定をし、被告の有罪が確定した。私的流用を裏付けることは容易ではないが、上納金が実質非課税であった矛盾に鋭く切り込むこの「福岡方式」の意義は大きく、今後、暴力団に大きな経済的打撃を与えうる武器となることを期待したい。(芳賀)
思考停止から脱却せよ。向かうべきリスクは新型コロナのみにあらず。
昨夜、和歌山県で震度5弱の地震が発生した。先日、福島県沖でも大きな地震が発生した。東日本大震災から10年を迎えたこの時期、これらの地震は、改めて大地震への対策を怠ってはいけないことへの戒めだ。この先、豪雨災害にも警戒が必要で、早めに準備・訓練しておく必要がある。災害は新型コロナウイルスを理由に待ってくれない。また、災害が起きれば、種々の対応を、陽性者数拡大の中であろうと、実施しないといけない。新型コロナウイルスと共生する中での方法論を模索し、そのための準備、訓練をすべきこの時期に、外出、行動自粛を柱とする緊急事態宣言をズルズル延長することは、全くの思考停止でしかない。ただ医療逼迫を言うだけで、政府や医師会は災害時にはどう対応するのか。我々が向き合うべきリスクは新型コロナウイルスだけではない。(西尾)
【それ犯罪です。】持続化給付金の不正受給、500人超摘発
新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込んだ企業を支援する「持続化給付金」を巡る不正受給は、先月時点で500人以上が摘発された。まだ捜査中のものも多くあるという。学生が「簡単に稼げる」という言葉を鵜呑みにして関与したり、税理士や行政書士、それに税務署の職員などが申告のごまかしに関わり逮捕されるケースもある。軽はずみに不正な申請をすれば、受給額に上乗せした返還を求められる上、刑罰が科される。不正の指南役がいるとも指摘されているとおり、詐欺グループと関与してしまった場合、自宅なども把握され、家族へ危害が加えられることを恐れ、犯罪行為と知りながらグループから抜け出せなくなってしまうこともある。簡単に高収入が得られる仕事などないし、不正受給は詐欺行為であり、犯罪であることをあらためて認識してほしい。(佐藤)
防災『遊戯三昧』
先週11日、東日本大震災から10年が経過した。しかし現在でも4万人以上が避難生活を続け、2556人の行方はまだ判明していない。先日の福島県や宮城県で発生した震度6強の地震も、3.11の余震の可能性が高い。東日本大震災は現在も続いており、10年は、区切りでもセレモニーでもなく単なる経過点でしかないのだ。私たちには新型コロナとの共生という新たな課題も突き付けられた。防災対策を、今後いっそう進化させなければいけない。とはいえ、365日毎日防災について考えるのは辛いものだ。禅に『遊戯三昧』という言葉がある。これは単にやりたいことをして遊びつくすのではなく、「嫌なことでも、やることそのものを楽しむ」という意味があるそうだ。これからも防災を楽しみながら、それを分かりやすく人に伝えていくことで、少しでも未来を書き替えていきたい。(大越)
新たな万引きの手口を知る ICタグ活用のフルセルフレジ
大手アパレル製造小売りなどが導入を進めたフルセルフレジを悪用した万引きが増加している。このフルセルフレジは、RFID技術を活用したICタグを内部にプリントしたプライスタグなどからの情報を無線通信によって一括して読み取るため、瞬時に会計が表示される。万引き犯はICタグと商品を結んでいる糸を切断して、それを他の商品のポケットなどに入れる。ICタグのない商品を同レジで精算してもカウントされず持ち出せる。さらに、罪のない顧客がポケットに入れられたICタグの代金を負担させられるという二重の被害となる。ICタグは従来のロック式の防犯タグと違い、取り外しが容易である。経営者は、システムを人員の削減といった効率化のために導入することが少なくない。防犯対策としては、防犯意識の高い従業員とシステムを融合させないと機能はしない。(伊藤)