2021年03月29日号
今あらためてサプライチェーン・マネジメントを強化すべきだ
スエズ運河での座礁事故による原油輸送や製造業のサプライチェーンへの影響が懸念されている。また、巣ごもり需要拡大や米大寒波による大規模停電、ルネサスエレクトロニクスの工場火災などが世界的な半導体不足をもたらしたことも記憶に新しい。コロナ禍は世界にサプライチェーンの再構築を迫ったが、いまだ局所的な事象が世界を同時に混乱に陥れる構図のままだ。一方、ウイグルやミャンマーにおける人権侵害は日本の企業にとっても無関係ではない。近年、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際的な枠組みや各国の関連法整備が進み、ESG重視の流れもあって、企業がサプライチェーンにおいて人権に配慮することはもはや国際的な常識だからだ。今やサプライチェーンのリスク管理が企業存続に係る重要な経営課題であることを認識する必要がある。(芳賀)
相次ぐ営業秘密の不正取得、自社は大丈夫か
研究データや技術情報の競業企業への持ち出しや流出にともなう大型の訴訟事例や海外からの営業秘密侵害事案が相次いで報じられている。情報処理推進機構(IPA)が実施した営業秘密の管理状況に関する調査では、情報漏えいがあった企業で最も多かった原因が「退職者による持ち出し」で36.3%に上った。漏えいの事実すら把握していないケースも多くあり、持ち出されたことにも気づかず、いつの間にか競争力を損なうようなこともある。自社技術やノウハウに対して無防備なままでは、それらが簡単に吸い取られ、事業からの撤退や損害賠償責任を負うといった事態を招きかねない。強い危機感をもって対応すべき問題であり、「秘密」として適切に保護されている状態にあるか、今一度自社の管理状況を把握のうえ、実効性のある管理体制を構築することが肝要だ。(佐藤)
企業倫理の主要理論として注目される統合社会契約理論(Integrative Social Contract Theory:ISCT)
企業が倫理的事件に直面するケースが目立つ。過去には、LIXILグループが、買収先のさらに過去の買収先の中国企業の不正会計問題の責任を問われた。最近では、ウイグルやミャンマーにおける人権侵害で、企業がとるべき行動が問われる。グローバル化により、洋々な規範を持つコミュニティがつながるようになっている。結果、異なる倫理規範の衝突が起こる。ISCTでは「国家、民族、文化、宗教などを超越して持ちうる普遍的な規範」をハイパーノーム(コミュニティ固有の規範はローカルノーム)と呼び、その動きが盛んだ。国連のグローバル・コンパクト、ESG投資、SRI投資、SDGs等もその流れだろう。ローカルノームの衝突を減じるためにも人類がハイパーノームを求めているとも解釈できる。企業倫理の規範化が進むことで企業ガバナンスも進展することが期待される。(伊藤)
緊急事態宣言解除は東京五輪開催への筋道なのか
緊急事態宣言が解除され1週間が経過した。感染者数が下げ止まり増加傾向にあることが連日報道され、主要駅周辺や花見の名所等の混雑を各TV局が伝え、「密が発生しています」「マスクを外し大声で飲食しています」と“犯罪者扱い”だ。感染者数も重傷者数も死亡者数も何れも欧米諸国に比べて桁違いに少ない日本で、必要以上に恐怖が煽られ続けている。しかも疑義の多いPCR検査への依存も変わらない。日本版ロックダウンの“効果”に限界が見え始めていると言いながらマスクやソーシャルディスタンスへの期待は変えず、緊急事態宣言解除から東京五輪開催に向けて突き進む。これから国会では、“病床削減推進法案”と揶揄される医療法等関連法の審議が始まる。各社のワクチンの副反応も詳細に報道されない。全てがちぐはぐで無責任なまま事態が進んでいる。(石原)
緊急事態宣言は「早く」「強く」「短く」
緊急事態宣言が明けて一週間。五輪の聖火リレーが開始され、花見のシーズンも到来するなど人の往来が徐々に増え始めた。新型コロナ感染者数も週末には全国で2000人を超えるなど、ワクチン接種を前に第4波も懸念されている。自治医科大学教授の中村好一氏はインタビューで「第4波は8割の確率で起きる」と答えている。今回の緊急事態宣言で改めて分かったことは、宣言は国としてできる最後の手段であり、その基本原則は「早く」「強く」「短く」であることだ。今回のように飲食店での対策を中心に「遅く」「弱く」「長く」やってしまうと国民に慣れが生じ、効果が限定的なものになる。企業として今できることは対策を軽減せず基本を徹底し、次の「強い」緊急事態宣言を想定しておくことだ。もし発せられなくても、その経験はいつかきっと役に立つだろう。(大越)
「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」公表にあたって
25日に厚労省から「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が公表された。これまでの「テレワークの導入・運用ガイドブック」や「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」に比して、より具体的・現実的な内容である。従来の業務の在り方を前提にするのではなく、仕事内容の本質を見直す必要性にも言及している。また、人事評価や費用負担がテレワーク勤務者に不利にならないよう留意することや、労働時間では始業・終業、中抜け等に柔軟性を持たせる労働時間制度・時間管理を推奨している印象だ。一方で、長時間労働対策や心身の健康管理にも重点を置いており、簡易なチェックシートも添付している。当社コラム等でも度々触れているが、本ガイドラインでも管理職の意識改革やマネジメント能力向上への取組みの必要性を挙げている。(加倉井)