30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

犯罪インフラ事業者の排除も事業者の責務だ

犯罪インフラとは、「犯罪を助長し、又は容易にする基盤のことをいい、その行為自体が犯罪となるもののほか、それ自体は合法であっても、詐欺等の犯罪に悪用されている各種制度やサービス等」(警察庁)をいう。最近では、SMS認証代行やデータSIMの悪用、機密性の高い通信アプリ「テレグラム」などが問題視されているが、他人名義の携帯電話や預貯金口座、闇サイト、偽変造された身分証明書、匿名性を高める電話関連サービスなどもその典型だ。「令和2年度サイバーセキュリティ政策会議報告書」は、「犯罪インフラを業として提供する事業者が後を絶たず、サイバー犯罪を容易にしている実態を踏まえ、警察においては、官民の情報を活用しながら、こうした悪質な事業者の摘発を強化していくべき」と指摘する。今、企業の「目利き力」が厳しく問われている。(芳賀)

若者の薬物問題に企業はどう向き合うべきか

企業にとっての薬物リスクは、従業員の逮捕や社名報道などの風評リスク、犯罪組織を助長するリスク、さらには、交通事業者の安全運行にかかるリスクなどが代表的だ。最近では、勢いを増す大麻関連企業との取引なども慎重な検討を要すべき課題となっている。一方、若者の間で大麻が蔓延し、初犯も再犯も後を絶たない背景として、交友関係や家庭環境の問題に加え、「一発アウト」の社会から排除され孤立を深めている実態がある。それはまた、暴力団離脱者支援やテロ対策、再犯防止対策と同じ構図であり、処罰の厳格化や正確な情報発信だけでは足りず、治療や社会復帰支援など「社会的包摂」の視点も重要であることを意味する。「誰一人取り残されない社会」の実現を目指すなら、企業は、日本の未来を担う若者を蝕む薬物問題にも真剣に向き合う必要がある。(芳賀)

敵はコロナウイルスのみにあらず。豪雨災害への備えを早めに!

今年も梅雨の時期が来た。この時期は豪雨関連災害(河川の氾濫、土砂災害等)への警戒を忘れてはならない。この時期に前線が停滞して線状降水帯等ができやすい九州北部から中国地方にかけては、特に注意が必要だ。新型コロナウイルスが流行する中、在宅勤務にシフトしている企業もあると思うが、在宅勤務は、感染症対策のBCPとしては有効でも、災害対策のBCPとしては盲点となる。会社の拠点のハザードマップや防災対策はされていても、役員や各社員の自宅所在地のハザードマップ分析や避難場所の精査はされていない。自宅は各所に点在・分散する形になるため、被災リスクは高まる。電子インフラは停電や水に弱い。分散は孤立に繋がるリスクもある。政府の感染症対策が迷走する中、企業としては災害対応や訓練もままならない。その分、早めの対応が必要だ。(西尾)

Facebookによる情報流出、悪用のリスクはこれからも

忘れ去られた感があるが、先月米Facebookの利用者情報5億3300万人分が流出した問題では、2019年の事故時のものが再びネット上にあげられたとみられている。Facebookは、流出した個人情報は「古いデータだ」とし、問題は対処済みだと説明しているが、数十億人の個人情報を保有し、利用者情報を集めて収益を得ている事業者としての責任は重い。SNS上にある出身地や宗教・政治上の所属団体、職歴や学歴、それに交友関係についての情報は、悪意ある第三者にとって、将来にわたり利用価値がある。情報流出問題は、現時点で二次被害などが確認されていないとしても、本人の預かり知らぬところで悪用され続けるリスクがあり、一過性の事故として看過できない。過去、情報流出などの事故を起こした事業者は同様のリスクを抱えているということをあらためて思い知らされる。(佐藤)

大きな環境変化は事業機会をもたらす アントレプレナーシップ(創造的破壊)の今

事業機会は見つけるものなのか、それとも作り出すものなのか。経営学者バーニーは、前者を「事業機会の発見型」後者を「事業機会の創造型」と呼んだ。発見型は「起業家の存在とは独立して、外的な環境変化により発生する」とした。人工知能などの技術環境の変化が事業機会を生み出すイメージだ。一方創造型は、「起業家が行動することによって作られ、後になって認知される」と考える。試行錯誤し潜在顧客に試しているうちに収益化の仕掛けが見えてくるイメージだ。大企業内のアントレプレナーシップであるイントラプレナーシップも浸透しつつある。三菱商事のスープストックトーキョーの成功例は有名だ。「起業家的な人材」の教育はそれに馴染む発見型だけでなく「ビジョンを熱く語る」「人を腹落ちさせる」など創造型に必要な視点も取り入れるべきだ。(伊藤)

福知山脱線事故16年。組織罰を考える

2005年4月25日、JR西日本の福知山線で列車脱線事故が発生。乗客と運転士合わせて107人が死亡、562人が負傷した。世にいう福知山線脱線事故である。その後も軽井沢バス転落事故や笹子トンネル天井板崩落事故など、企業が従業員に無理な勤務を強いたために発生したと考えられる事故が続いたことから浮上したのが、企業への組織罰の適用である。現行の刑法では個人を罰することはできても、組織を罰する規定はない。刑法以外で両罰規定を規定し、企業に罰金刑を課すことはできるものの、その上限は低く実効性に乏しいとされてきた。これらの状況を踏まえ、事故の遺族や支援する弁護士らが中心となって「組織罰はなぜ必要か」というブックレットが25日から発売された。安全とは何か。企業は今そのために何をすべきか。コロナの時代だからこそ、改めて考えたい。(大越)

緊急事態宣言延長。企業はより冷静に

政府は7日、東京など4都道府県に発している緊急事態宣言を5月31日まで延長を決定した。12日からは愛知、福岡も加わり、緊急事態宣言の対象は東京、愛知、大阪、兵庫、福岡の6都道府県となる。石川、福井、宮崎など県として独自の緊急事態宣言を発出する方針の地域もある。加えて、緊急事態宣言に準じる措置をとる「まん延防止等重点措置」地域には埼玉、千葉、神奈川、愛媛、沖縄などが挙げられている。一方で12日からの緊急事態宣言の延長ではデパートやテーマパークに加え、1000㎡以上の商業施設や遊興施設などへの休業要請は緩和するが、東京都は休業要請を継続する方針だ。正直なところ政府の方針は混迷を極めているとしか思えないが、企業の担当者としては一段と冷静に構え、政府の対応に一喜一憂せず、これまでの基本を徹底していくことが重要だ。(大越)

母の日に思う、かくあるべき家族像ハラスメント(?)

5月9日は母の日だった。近所の和菓子屋さんが「お母さんありがとう!」と叫びながら、「母の日セット」なる和菓子の詰め合わせをアピールしていた。幼いうちに母親を亡くす子どももいる。友達がカーネーションを手にする中、どんな気持ちで「母の日」を過ごすのだろう。実の母親から虐待を受け、それでもなんとか生き延びて大人になる人もいる。そんな人も、母の日だからと母親に感謝しなければならないのだろうか。そして母親になれなかった・ならなかった女性もたくさんいる。自分は一生「感謝される側」にはならないことを思い知り、また心がチクリと痛む人もいる。母の日を祝う家族を笑顔で見守りながら、和菓子屋の前を足早に通り過ぎた。人もいろいろ、家族もいろいろだ。それを堂々と「当たり前」と笑い飛ばせる時がいつか来ますように。

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