30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

北朝鮮リスクは事業者にとっても「自分事」として捉える必要がある

北朝鮮の弾道ミサイル発射が止まらない。報道によれば、人件費などを加味した発射費用の総額は1~6月で最大6億5000万ドル、11月上旬までの発射分を加えると10億ドルを超し、経済制裁下にある北朝鮮のGDPの3%近くになる。国連の専門家パネルの2021年の報告書では、北朝鮮がサイバー攻撃で盗んだ金額は2019~20年に合計3億1640万ドル、その他判明分だけでも10億ドル程度に上る。北朝鮮のスキルが高いのではなく、北朝鮮の大量のハッカーが試行錯誤を繰り返して経験を積み、成功につなげている実態がある。標的は日韓の中小企業や暗号資産関連だ。北朝鮮が日韓から窃取した資金がミサイル開発に投入され、それが日韓の安全保障上の脅威を高めるという皮肉。「国民を守る」には「国民の資産を守る」サイバー防衛と事業者が「自らの資産を守る」取組みが不可欠だ。(芳賀)

▼金融庁 北朝鮮当局の下部組織とされるラザルスと呼称されるサイバー攻撃グループによる暗号資産関連事業者等を標的としたサイバー攻撃について(注意喚起)

東京都、ミサイル発射時の緊急一時避難施設を増加

東京都は9月30日、弾道ミサイルなどの武力攻撃事態の被害を軽減するための「緊急一時避難施設」の指定箇所を増やした。緊急一時避難施設とは、ミサイル攻撃等の爆風などから直接の被害を軽減するための一時的(1~2時間程度)な避難施設。既存のコンクリート造りなどの堅ろうな建築物や、地下街、地下鉄の駅舎、下水道などの地下施設を想定している。ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射など、安全保障上の脅威が増していることが背景にある。指定施設は地下駅舎が24施設、公共施設754施設。今後は民間施設にも協力を求め、指定施設を都内全域に広げる方針だ。もちろん、「逃げ込めば絶対に助かる」という保証はないが、広島では地下に逃げ込むことで投下された原爆から逃れた事例もある。万が一の時を考え、最善策を検討しておきたい。(大越)

▼国民保護法に基づく緊急一時避難施設の指定について(東京都)

▼「地下室の奇跡」 郷里で25日証言 袋町国民学校で被爆 現在唯一の生存者 友田さんの半生

人格と役割の混同が「言うべきことを言えない」組織を作る

昔NHKで放送していたコント番組に、職場内で「言いたいけれど言えないこと」をスタントマンが代わりに言ってくれる、「社内スタントマン」というコントがあった。現実世界でもそんな人を望んでいる会社はあるようだ。ハラスメントの加害者が経営者の場合に、担当者がよく口にするのは「私は指導する立場にないので…」「通常はその上司から指導してもらうのですが、その人がトップなので…」という嘆き。「指導は上から下にするもの」「上から言われれば変わる、上から言われないと変わらない」「下から上に物申すのはありえない」という根強い考えを感じる。本当にそうか?言うべきことを言うのは、ハラスメント防止やコンプライアンスの担当の「人」ではなく「役割」のはず。経営者も従業員も、人格と役割を混同していては、真の役割を果たせない。(吉原)

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