2023年01月10日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
「帰属意識」を高めるという発想を見直す時期だ
企業は、従業員を「戦略資源」「人的資本」と捉え、その育成や活用に本腰を入れ始めている。高度なスキルや専門性の獲得、「リスキリング」を推奨し、人材の「人財化」を進めているのはその一例だ。実は、こうした専門性やスキルを有する高度な人財、会社依存から脱し「自律」「自立」した人財こそ、企業の「柔軟性」や「耐性」の源であり、VUCAの時代に自らの持続可能性を高めるために必要不可欠な存在だ。だが、こうした取り組みは、皮肉にも「人財の流動化(雇用の流動化)」を助長することにもなる。最新技術を駆使すれば時間や空間の制限を受けない、雇用関係によらない働き方が可能な時代だ。従属関係を前提として「帰属意識」を高めようとしても限界がある。企業と従業員は対等な「パートナー」として相互に「選ばれる」関係を目指すべきだろう。(芳賀)
犯罪インフラ化を阻止せよ
複数の大手求人サイトが、特殊詐欺の「受け子」の募集に悪用され、アルバイトに応募した男女11人が8月以降、詐欺容疑などで愛知県警に逮捕されたという。犯罪に加担すると知らずに応募した者もおり、求人サイトの犯罪インフラ化への対策が急務だ。報道によれば、募集業者は実在する会社を連想させる社名や架空の住所だったといい、サイト側は「反社チェックはしていた」とする。デジタルプラットフォーマーによる「場の健全性」の担保が喫緊の課題となる中、事業者のチェックの脆弱性が突かれた形だ。また、不動産会社勤務の男が、勤務先の不動産検索サイトで密輸された不正薬物の受取先となる「空き家」を見つけ、回収役も担っていたとして逮捕された。空き家の犯罪インフラ化も以前から指摘されており、さらなる厳格な情報管理に踏み込む必要がある。(芳賀)
▼大手求人サイトで「受け子」募集 8月以降、バイト11人逮捕―詐欺グループ悪用か・愛知県警(2022年12月23日付時事通信)
関東大震災から100年。防災を見直す契機に
1923年9月1日の11時58分に発生した関東大震災から、今年で100年となる。気象庁は節目として「関東大震災から100年」特設サイトを開設した。神奈川県西部の深さ23Kmを震源とするM7.9のこの地震により、東京をはじめとする1都4県で震度6を観測したほか、北海道道南から中国・四国地方にかけての広い範囲で地震を観測した。当時の震度階級は震度0から震度6までの7階級だったが、家屋の倒壊状況などから相模湾沿岸や房総半島南端では、現在の震度7相当の揺れであったと推定されている。発生が昼食の時間と重なった事から、多くの火災が起きて被害が拡大。津波や土砂災害なども発生し、死者・行方不明者は10万5千人あまりにのぼった。今年は、各地で発災100年にまつわる展示会や講演会などが数多く開かれる。ぜひ企業の防災を見直す契機としていただきたい。(大越)
「若いから」「正社員だから」でどこまで頑張れるだろう…?
「若いから」「正社員だから」でどこまで頑張れるだろう…?
アラフォーアイドルグループのライブに参戦した。歌って、踊って、しゃべって、コントもやって、楽器まで演奏する3時間弱。終わったらさぞへとへとだろうと思うが、「この後0時から生放送」「この後別の仕事」のメンバーがいて驚愕する。とてもここまで頑張れないよ…と思ったが、見回せばそんな激務に励む人は普通にいるかもしれない。先日会った若い女性は、自宅から2時間かかる店舗で朝から勤務、その後事務処理に追われ、2時間かけて自宅に帰る日々の繰り返し。新卒入社後2年弱だが、「正社員だから」と無理も強いられる様子。彼女には当然「5万5千人の歓声」などない。まともな睡眠もとれずに働けば、いくら好きな仕事でも、いくら若くても、激務に耐えかね、別の仕事を目指してしまう。「若いんだから頑張れ」で若手を潰してはいけない。(吉原)