30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

本人確認手続きはすべての取引の基本 厳格化を求めたい

他人のスマホの番号を乗っ取り、ネットバンキングで資金を引き出す「SIMスワップ」と呼ばれる犯罪が深刻さを増している。フィッシング詐欺による個人情報の流出、道具屋による「偽造免許証」の悪用、遠隔地での手続きや年齢と顔写真の不整合などさえもスル―する本人確認の不十分さなど、携帯ショップにおけるSIMカード再発行手続きの甘さ、生体認証を利用しないセキュリティの甘さなどの多くの脆弱性が突かれている。「闇バイト」による犯行も散見されるなど、複数の犯罪インフラを駆使した極めて悪質な犯罪で、対策が急務だ。本人確認手続きはすべての取引の基本だが、現状はAML/CFTで特定事業者に厳格な運用が求められているに過ぎない。脆弱性が突かれ、社会的に害悪が拡がっている以上、利便性を制限してでも本人確認手続きの厳格化を急ぐ必要があろう。(芳賀)

「スーパーエルニーニョ」に備えろ

世界気象機関(WMO)はこのほど、今年夏から冬にかけて異常気象の原因となるエルニーニョ現象が約4年ぶりに発生する確率が高まったと発表した。ここ3年間に発生してきたラニーニャ現象とは対照的な影響を及ぼしつつ、世界の気温をさらに押し上げる可能性があるという。WMOによると2022年は1850年-1900年の平均気温を1.15℃上回った。15年-22年は、1850年にさかのぼる温度計による記録の中で最も温暖な8年間となり22年は史上5番目、もしくは6番目に温かい年になった。ラニーニャ現象は通常冷却効果を持つとされているにも関わらずこのような結果になったことは、特筆に値するだろう。今年はさらに強い「スーパーエルニーニョ現象」の発生も指摘されており、今年の夏は昨年よりも暑く、長くなる可能性がる。異常気象は様々な災害をもたらすので、注意が必要だ。(大越)

▼世界気象機関(WMO)年次報告書:気候変動は進行し続けている(国際連合広報センター)

「何がわからないか、わかること」が、「できる」につながる

研修実施後のアンケートで「わかりやすかった」という評価をよくいただく。直後に質問の時間を取るが、個別の相談はあっても、研修内容に関する質問はほとんど出ない。わかりやすく伝えようと努力している筆者には喜ばしいことではあるものの、「わかったつもり」になっていないかが気掛かりだ。研修の目的は「わかる」ではなく、「できる」。できるようになるには、学んだことを実際に「やってみる」必要がある。研修直後は「わかった」と思っても、やってみて初めて難しさに気付くことはよくあることだ。やってみなければ、「何がわかっていなかったか」がわからないのだ。トライして、何がわからないかに気付くことが「できる」につながる第一歩。「できない」と諦めず、調べて、考えて、質問してほしい。講師は時間差で質問が届くことを待っている。(吉原)

これからのJ-SOX「内部統制とガバナンスと全社的リスク管理」

金融庁が2023年4月7日、15年ぶりに「内部統制報告制度(J-SOX)」の改訂を決定した。2013年5月、COSOの内部統制の基本的枠組みに関する報告書が改定された際も、これに対応する改訂は行われなかったが、今回の改定では、そのCOSO報告書への対応もなされた。特に「財務報告」の「報告」への拡張(非財務情報を含む)、不正リスクへの対応強調、ITの強化と情報(サイバー)セキュリティの確保などは目を引く。経営者以外の業務責任者の影響にも言及し、リスク管理体制強化として3線モデルも提示したことで、内部統制とガバナンスと全組織的リスク管理の一体的整備の重要性を更に強調した。中長期的課題として、会社法と金融商品取引法の内部統制の統合も示めされ、今後、一体的整備の重要性を、具体的に検証することが必要になってきたのではないだろうか。(永橋)

▼金融庁 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について

風水害に備えてPCやスマホの「マイ・タイムライン」も活用しよう

5月8日に風水害時の防災行動計画「マイ・タイムライン」をPCやスマートフォンから作成できるサイトを福岡市が公開した。マイ・タイムラインとは大雨や台風の時に「いつ」、「何をするか」を一人ひとりが事前に決めておく計画だ。東京都をはじめとしてその他いくつかの地域でもWEB上でマイ・タイムラインを作成できるサイトやアプリが公開されている。また、アプリ「Yahoo!防災速報」に2021年に追加された「防災タイムライン」という機能は、対象の災害情報について防災行動確認のタイミングを知らせることまでできる。大雨や台風は地震と違いある程度予測が可能なため、情報収集と早めの避難行動が肝となる。これらのサイトやアプリはこれからの季節に向け有効であり、操作するだけでも「何をすべきか」のイメージが沸くため、是非一度見てみていただきたい。(小田)

▼マイ・タイムラインを作ろう(福岡市)

▼作ろう!マイ・タイムライン(東京都)

▼アプリ「Yahoo!防災速報」 「防災タイムライン」機能

▼デジタル・マイタイムラインの普及について(国土交通省)

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