30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

暴力団排除と不合理な差別、暴力団離脱者支援を巡る緊張関係

元暴力団員が口座開設を拒否されたことについて、経歴は「自らの意思によって克服することのできない属性」で、口座開設拒否は「就労の機会を奪い、社会復帰を阻害する不合理な差別」だとして金融機関を提訴した。また、暴力団関係者であることを理由にETCパーソナルカードを使わせないのは違法だとして、愛知県の暴力団幹部が高速道路6社と国を相手取り、会員資格の取り消しが無効であることの確認と損害賠償を求める訴訟を起こした。暴力団排除の取組みは確かに「行き過ぎ」れば不合理な差別となりかねず、暴力団離脱者支援を阻害する要因ともなる。だが、「行き過ぎ」とは誰が何を基準に判断するものなのか。今、暴力団排除、不合理な差別、暴力団離脱者支援という概念が互いに激しい緊張関係にあるが、「行き過ぎ」の先に社会的包摂があってほしい。(芳賀)

「死の商人」の定義を明確にせよ

6日の参院外交防衛委員会で可決された防衛産業強化法案審議中に参考人が発した「死の商人」という言葉に与党議員らが反発している。「死の商人」のイメージが著しく悪いのは、内戦を繰り広げているアフリカなどの紛争国において、政府側・反政府側の双方に武器を売りつけて、利益を上げているからだ。その文脈で「死の商人」に融資している金融機関も同等に批判される。憲法改正の議論は一旦脇に於くとして、年々9条の縛りが緩くなっているのは事実だ。国益を守るためには、国内の軍需産業を維持していくことは必要だろう。米国から大量・多額の武器を購入するだけが選択肢ではなかろう。日本は対米友好・対ウクライナ友好のみならず、対中友好・対ロ友好も同時に進めていく稀有な役割を重く任じるべきであり、広島G7の位置付けも変わっていたはずだ。(石原)

地震が多発。チャンスと捉えて着実に備えを

昨日18時55分ごろ、北海道浦賀沖を震源地としたマグニチュード6.2の地震が発生。千歳市、厚真町、浦賀町で最大震度5弱を観測した。5月5日に石川県能登地方で最大震度6強の地震を観測してから、同日能登地方で震度5強、11日に千葉県南部で震度5強、13日にはトカラ列島近海で震度5弱、22日に新島・神津島近海で震度5弱、26日に千葉県東方沖で震度5弱と日本列島で強い地震が続いている。事態をあおるつもりではないが、BCP担当者はこれをチャンスと捉え、備蓄の確認や補充、オフィス家具の転倒防止などを進めて欲しい。もちろん、これからの出水期に備えた水害対策も同様だ。従業員への安否確認方法の確認や警報前の注意喚起、ハザードマップの確認、タイムラインの策定などやるべきことはたくさんある。慌てずに、しかし着実に進めていただきたい。(大越)

コンプライアンスは、正しく「稼ぐ」ためにある

コンプライアンスは、いまだに売上や利益の向上とは逆のものと思っている人がいるようだ。コンプライアンスは正しく「稼ぐ」仕組を調えようとするものであり、「稼げない」仕組、「表面的に正しいと見せかける」仕組を目指すものではないはずだ。一人一人に「正しく稼ぐ」よう意識付けをする研修と、「研修をした」というエビデンスを残すためだけの研修では、どちらが有用だろう。多少の手間やお金をかけても「問題の芽を早期発見」できるアンケートと、安く効率的に「問題ないという結果」だけを得ようとするアンケートでは、どちらのお金の使い方が効果的だろう。先日会った方は「どうせやらねばならないならば、少しでも意味のあることをしたい」と言っていた。まさに同感だ。安くて簡単なだけでなく、真に役立つコンプライアンスを広めたいものだ。(吉原)

Back to Top