30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

犯罪インフラの無力化を推し進めよ

特殊詐欺やSIMスワップの被害が深刻だ。背景には、各種契約手続きにおける本人確認の脆弱さが突かれている現状がある。こうした中、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」改定案で「犯罪収益移転防止法や携帯電話不正利用防止法に基づく非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。対面でも公的個人認証による本人確認を進めるなどし、本人確認書類のコピーは取らないこととする」と明記された。さらに、犯罪対策閣僚会議も、取引時確認やSIMカード悪用の実態調査の実施や「050」アプリ電話の契約時の本人確認の義務化の方向性を打ち出した。社会的な害悪をふまえ、利便性を制限してでも本人確認手続きの厳格化に向けた取り組みを歓迎したい。(芳賀)

▼デジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画(案)

▼首相官邸 犯罪対策閣僚会議(第38回)

▼資料1 「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」の進捗状況

防災基本計画に「災害ケースマネジメント」盛り込む

災害対策基本法に基づき作成される防災基本計画が、5月末に修正された。昨年公表した北海道・三陸沖後発地震注意情報や長周期地震動階級に係る情報による修正を追加したほか、被災者台帳などの作成にデジタル技術の活用促進を明記した。最も大きな変更は「災害ケースマネジメント」を盛り込んだ点だろう。災害ケースマネジメントとは2005 年のハリケーン・カトリーナで甚大な被害を受けた米国において実施され、国内では東日本大震災や熊本地震などで活用された被災者支援の手法だ。その名の通り、被災者一人ひとりのケースに応じて専門家が個別に支援するもので、「誰一人取り残さない」支援を目指す。熊本地震では直接死が55人だったのに対し関連死が200人以上にのぼり、その必要性が重要視された。助かる命を助けるために、強化したい取り組みの1つだ。(大越)

人的資本経営の実現は、現場の上司にかかっている?

人的資本開示に向け、多くの企業が人材育成やエンゲージメントの向上にますます力を入れるだろう。ロミンガーの法則(7・2・1の法則)によれば、人は成長に向け、7割は業務経験、2割は上司等からの助言やフィードバック、1割は研修等から学びを得るらしい。部下に業務をアサインし、適切な助言やフィードバックを行うのが上司の役割ならば、なんと上司は部下の成長の9割に関与することになる。まずは「部下を育成できる上司」の育成が急務だ。部下自身の個性を活かし、自ら成長する軌道に乗せることが人的資本の増強につながる。今、上司は部下の個性をどこまで把握しているだろう。まずはもっと部下に関心を持ち、対話をして欲しい。部下が安心して上司と対話できるよう、上司にはますます「よく聴き、しっかり伝える」力が必要となるだろう。(吉原)

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