30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

底の浅さが露呈した~人権重視を掲げるなら対応は異なるはずだ

経済同友会代表幹事が「チャイルドアビューズを企業として認めることになる」と発言したことで「ジャニーズ離れ」が加速した。一方、同氏はビジネスとしての中国市場の重要性を訴える。中国のウイグル自治区での弾圧は「ジェノサイド」だとする国際的な批判に対し、どう整合をとるのか。また、広告主やメディアは、ハラスメントや過労死の問題を含む広範な人権侵害にも同様の対応がとれるのか。そもそも人権侵害の疑いを知った時点で調査や指導を行ってこなかった不作為こそ、犯罪を助長する行為だ。取引停止という判断はレピュテーションリスクマネジメントの文脈では間違いではないだろうが、「人権尊重のガイドライン」等に照らせば自社の理屈に過ぎず、真に責任ある行動とは言えない。自省、監視と対話の継続という被害者視点が加味されるべきだ。(芳賀)

謝罪会見では、当該企業の対応ばかりではなく記者や支援会社の見識も問われる

製造した駅弁が原因で全国的に多くの食中毒被害を発生させた吉田屋社長が、土曜日に記者会見を行った。ビックモーター社や日本大学、ジャニーズ事務所と、悪しき記者会見が続いていたが、吉田屋の社長は、自らの言葉で誠実・丁寧に謝罪と説明を行っており、非常に立派であった。社長自ら経営責任を認め、この時期に会見を開いた理由も明確で、必要以上に質問が出るような会見ではなかったが、中盤から後半は、記者は既に回答説明済の内容の質問を繰り返したり、ピントのずれた質問をしたりで、必要以上に時間が延びた印象だ。対応渦中は他にも優先事項はあることを記者は理解すべきだ。また、会見をどこの会社が仕切ったかは分からないが、司会は新製品発表会のようなトーンで、謝罪会見の場には相応しくなかった。支援する会社の危機管理意識も重要だ。(西尾)

カスハラ対策の強化と同時に、CSの本来の在るべき対応・原点の確認を

当社でも深刻化するカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に関する各種の危機管理サービスを提供し、多くの企業にご利用いただいている。カスハラは、企業や従業員の貴重な時間を奪い、従業員を心身共に疲弊させる等、大きなロスとなるもので、安全配慮義務の観点からも、企業は対策を強化すべきである。一方で、消費者として企業の顧客対応に接して感じるのは、明らかに非があっても適切な謝罪をしなかったり、企業側の都合のみで顧客を必要以上に待たせたりと、最低限のCS対応すらできない企業も少なからず存在し、それが対応の長時間化や事案や顧客のエスカレートを招いていることだ。企業側の対応の不備をカスハラと認定するのは、クレーマーと同様の責任転嫁の論法でしかない。企業は、カスハラ対策強化とあわせて、CS対応の徹底も推進すべきだ。(西尾)

被災していない自治体の宿泊施設に広域避難体制を構築=板橋区

板橋区はこのほど、首都直下地震等の災害時における災害関連死減少のため8県13自治体間で広域避難体制を構築した。全国で初めて、県外の被災していない自治体への広域避難体制を構築したという。提携先は栃木県日光市、群馬県渋川市、高崎市などで、ともに災害発生時は、首都圏からの旅行者のキャンセルが見込まれる地域。広域避難先としてホテル等民間施設を提供することで、空き部屋の解消に繋がることも期待できる。板橋区は協定自治体と日常的に交流できる機会を確保し、慣れない土地でも被災者が安心して広域避難ができるような環境を整える。首都直下地震を想定しているため、連携自治体における被害はほぼないと想定。1自治体当たり50人~300人を目途に、あらかじめ受け入れ可能人数を事前に決定した。企業としても参考にしたい取り組みといえる。(大越)

たとえ犯罪者でも、その作品や教えまで否定することは正しいだろうか

当り前の話だが、中学校の校長が、児童ポルノ禁止法違反や準強姦致傷で逮捕されても、その中学の生徒の中学卒業が取り消されることはない。もしかしたら、その教師の教えをきっかけに、その担当教科に興味を抱き、その道で何か実績を残す人もいるかもしれない。教師が犯罪者でも、その教育自体や、生徒の実績が否定されることはないはずだ。ましてや「そんな中学にいれば同罪だ」「なぜ転校しないのか」などと生徒や親が責められることなどあり得ないし、進学や就職に支障が出れば、それは差別だ。しかしエンターテイメントの世界は違うらしい。犯罪者が生み出した実績は全て否定され、会社は解体。教え子たちは、活躍の場を奪われ、一部の楽曲を封印し、グループ名さえ名乗れなくなって、改名を余儀なくされた。何が違うのだろう。ただただ疑問だ。(吉原)

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