30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

その注意喚起は届けたい相手に届いているか

令和5年のクレジットカードの不正利用の被害額は、前年同期比で3割増加、令和5年のインターネットバンキングに係る不正送金被害も、被害額・被害件数ともに過去最多を更新中だ。警察庁は注意喚起に腐心しているが、そもそも利用者が自分に向けた注意喚起であると認識できているか甚だ疑問だ。有識者らは「利用者が自分のこととして危機感を持ち、フィッシングメール等に対する行動の変容を促すことができるよう…幅広い関係者で連携して注意喚起することで、話題性を高め、報道機関等に取り上げられるようにすることや、利用者の年代等に応じてタッチポイントが異なることを踏まえ、動画サイト、デジタルサイネージ等様々な媒体を効果的に活用するとともに…繰り返し実施することにも配意する必要がある」と指摘するが、正にその通りだろう。(芳賀)

▼警察庁 キャッシュレス社会の安全・安心の確保に関する検討会報告書

玉石混淆の専門家、ノウハウ。玉を見極めよ。

東京都の条例制定のニュース以降、カスハラへの関心が高まっており、当社でも各社の対策を支援しているが、カスハラ対策を各社で進めるに当たって、改めて注意が必要なのは、専門家の力量、ノウハウの真贋を正しく見極めることだ。関心が高いテーマについては金になるから、にわか専門家が多数出現するのが通例だが、カスハラについても、まさにそのような状況だ。ハードな顧客やカスハラにろくに対応したことのない自称専門家やクレームのエスカレーション対応に絡んだことのない自称専門家も少なくない。また、法律論ではなかなか対応できない難しさがあるため、弁護士だから分かるということでもない。理屈だけて対応できるものではないから、学者に分かるはずはない。特に肝となる対応要領は、生兵法はかえって大怪我を招くことを忘れてはならない。(西尾)

大型連休直前 緊急事態対応の準備を忘れずに

今週末からゴールデンウイーク。暦の並びで平日の3日を休めば10連休になる。地震、火災、不正アクセス、サイバー攻撃、製品出荷停止や自主回収、SNS炎上。このような緊急事態への備えを忘れないでほしい。一つリアルな事例を挙げよう。顧客情報管理サーバに不正アクセスを受け、犯人が取得した顧客情報をネットに公開したうえ、顧客に公開ページのリンクを貼って身代金要求メールを送信。顧客から「私の氏名や住所が晒されている!」と問合せが殺到した。速やかに公表と謝罪を行わねばならないところ、システム担当や広報担当、営業担当の多くが帰省していたことが影響して初動が遅れ、非難を浴びた。こんな事態に対応できるよう、緊急対応チームの活動シミュレーションと指示内容の確認、事実調査や広報対応の想定など、ぜひ準備を忘れないでほしい。(宮本)

執拗な紅麹問題報道の中で「読売」の記事捏造が発覚

マスコミ各社は紅麹サプリを叩きまくってきたが、とんでもない誤報、むしろ捏造が発覚した。捏造してまで小林製薬を叩いていた内情が窺える。これらの小林製薬叩きキャンペーンは、被害規模が桁違いに大きいワクチン後遺症に比べて異様だ。一部では、小林製薬がヨウ素水溶液を用いて新型コロナウイルスを不活化させることに成功したこととの関連を指摘している。そこに、今回の捏造記事が発覚したのだ。同様の事案では、NHKの新型コロナワクチン死遺族を新型コロナ感染症死遺族と偽ったニュースがあった。これらのメディアの姿勢は、旧ジャニーズ事務所への過度の忖度とダブる。報道によると、担当記者らの固定的な先入観が垣間見える。その後、「読売」は訂正謝罪記事を載せたが、引用された社長の発言の有無には触れていない。「紅麹問題」の闇は深い。(石原)

▼読売新聞記者が談話捏造 紅麹関連記事巡り

▼ヨウ素の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果※の視覚的確認に成功

▼ウオッチ9コロナ関連動画 視聴者誤認させ不適切 4人を懲戒処分

熊本地震から8年

熊本県益城町などで震度7を観測する地震が発生し、関連死も含めて275人の方が亡くなった熊本地震から4月14日で8年が経過した。崩落した阿蘇大橋は2021年に、全線不通となった南阿蘇鉄道も、ようやく昨年全線が開通した。震災遺構となっている南阿蘇村の旧東海大学阿蘇キャンパスには当時の被害や教訓を伝える「震災ミュージアムKIOKU」がオープンし、多くの人が訪れている。当時、熊本市では被災家屋が12万棟に上ったが、対応できる市の職員は30名ほどしかおらず、り災証明書の発行が滞った。この教訓を受け、同市では2018年から全ての部署の職員を対象に被害認定調査の研修を実施。能登地震の被害調査にも役立ったという。災害を検証し、教訓を導き出し、対応を進化させることはBCPを改善する上で非常に有効な手段だ。我々も貴重な教訓を学ばなければいけない。(大越)

食品回収「する人」の気持ち、「される人」の気持ち

買い置きしていた食品が回収対象となった。店頭の「回収のお知らせ」で気付いたのだが、ストック中の物を購入したのは数か月前でレシートもない。店員に相談すると「ご心配をお掛けし申し訳ない」と謝罪はするが、どうも刺々しい。ポイントカードから購入履歴はわかるだろうと思ったが、名前や連絡先、よく一緒に買うものまで聞かれた挙句、ため息交じりで「確認します」とのこと。翌週、現物と共に家計簿を半年分掘り起こして書き出したその店での買物日時と金額一覧を持参すると、「いいです、ありましたから」と、にべもない。回収したいのはメーカー・販社であり、売った店舗は手間を掛けて売上を失うだけ。店員の気持ちもわかるが…返金と引き換えに大好物の買い置きを失った客が、店員の手間への「申し訳なさ」まで負わされる筋合いはないはずだ。(吉原)

コンプライアンス推進は他社事例も参考にしながら継続的な取り組みを

コンプライアンスの取り組みに悩まれるご担当者も多いが、令和5年12月に公正取引委員会が公表した「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド―カルテル・談合への対応を中心として―」は、独占禁止法を背景とした資料でありながら、それ以外のコンプライアンス推進の参考となりそうだ。全体像としては経営トップのメッセージ、方針やルール、研修、相談体制、監査、評価…のような順で体系的に解説されており、マニュアル配布やドラマ仕立ての研修など、企業の取組事例が豊富に掲載されている。さらに、こうした取り組みは短期的に効果が出るものでもなく、文化や組織風土の醸成には数十年がかかることもありうるとも述べられている。コンプライアンスの取組事項は膨大だが、各社工夫し長期的に取り組むことが必要だ。(小田)

▼「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド―カルテル・談合への対応を中心として―」の作成について(令和5年12月21日 公正取引委員会)

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