2024年05月27日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
官民挙げてAML/CFTの実効性を高めよ~これまでの実務ではもはや通用しない
ペーパーカンパニー約500社の法人口座約4000を使って犯罪収益をマネロンしたとして、大阪府警は組織犯罪処罰法違反などの容疑で、収納代行業リバトングループを名乗る12人を逮捕した。洗浄された犯罪収益の規模は約700億円に上るという。SNS上でペーパーカンパニーの代表者を集め、匿名性の高いアプリを使い、法務局で偽の登記を行わせ、実体のある法人を装って金融機関で口座を開設させていた。グループはパンフレット等の資料を用意、数百万円の資本金を「見せ金」として渡すなど依頼に応じた人物に手続きをさせていたほか、申請書類の確認や審査を行う法務局や金融機関との想定問答等の対応マニュアルも作成、覚えさせて対応させていたともいう。金融機関の実務を逆手にとった手口は極めて巧妙で、トクリュウ対策とあわせ実務の根本的な見直しが急務だ。(芳賀)
東京都のカスハラ条例制定議論に物申す
東京都でカスハラ条例制定に向け議論が行われているが、検討会の資料や報道を見る限り、都知事の「罰則規程の見送りは検討段階」発言とは裏腹に、罰則の導入の見送りは既定路線のようだ。被害救済を打ち出しながら、行為者を罰することができなければ、実効性は確保できない。議論の内容を見る限り、クレーマーやカスハラを行う人の思考回路や特徴、現場の状況、カスハラ被害の実態、カスハラに悩む現場従業員の心の声を正しく理解できていない。消費者団体の声として、「カスハラは警察に通報できる」と紹介されているが、罰則がなければ警察に通報しても対処の限界があり、被害の抑止どころか、警察官をカスハラに巻き込むだけだ。一罰百戎が最も効果的な対策なのに、先を急ぐ余り、本当にカスハラに困っている現場を軽視した茶番劇には失望しかない。(西尾)
法制化前にカスハラ対応体制の構築を
5月17日に厚生労働省が公表した「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」のうち、企業でのカスハラ対策の調査結果をみると、「カスハラ(顧客等からの著しい迷惑行為)に関する取組を実施しているものは『特にない』」との回答が55.8%(n=7693)であった。多くの企業で取り組みが進んでいないわけだ。そして取り組みが進んでいないからこそ、事業者側に対策を義務付ける法制化が検討されている。不当要求・カスハラ対応は本来の業務に専従できないことによる時間的ロスや、返金等に応じたことによる金銭的ロスを生む。さらには従業員が精神的ストレスによって心を病み、結果、退職してしまうという人的ロスも重大な問題。対策は「従業員を守る」「ロスを低減させる」の2つの視点で進めることがよいだろう。法制化を待たずアクションを取ってほしい。(宮本)
▼「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します 厚生労働省
※上記執筆に引用した記述は、報告書本体のP.80
能登半島地震の仮設トイレ、8割が「和式」
災害時のトイレ問題に詳しい日本トイレ研究所の加藤篤代表理事は22日、能登半島地震の避難所における仮設トイレ設置状況の調査結果を公表した。仮設トイレのうち、8割超が和式便器であったこと、仮設トイレの設置日が把握できている避難所のうち、設置に8日以上かかった避難所が4割に上ったことなどが明らかになった。足腰が弱っている高齢者や子供は和式便器が使いにくいため、「支援のミスマッチが起きていたのではないか」と指摘している。同研究所の調査によると、東日本大震災時の避難所に対するトイレ支援においても、震災から7日以内に設置されたのは51%。設置に8日以上かかった避難所が半数に上っていることを考えると、避難所のトイレ設置状況は、東日本大震災当時からあまり進化していないことが分かる。災害時のトイレの備蓄が急務だ。(大越)
ほめられても「嬉しい」とは限らない
「よくできていたね」「お客様が喜んでいたよ」「この成果は素晴らしい!」等のほめ言葉を素直に喜べない人は案外いる。良い結果に至るには、相当な努力が必要だろう。努力や過程に目をくれず、結果だけをほめられれば、「当然、次もできるはず」「ほめればもっとできるだろう」と、その期待を「重荷」と受け取ってしまう人もいるものだ。結果と過程はセット。特に過程で苦労をしたときは、結果の称賛よりもねぎらいや共感の言葉が心に響く。「必死にキーボードを叩いていたら、キーが2個も取れて慌てたよ」「私も!あれは焦るね」のような他愛もない会話がエネルギーを回復させ、「また頑張ろう」につながったりするものだ。自分が受けて嬉しい言葉が、相手にとっても嬉しいとは限らず、状況にもよる。人と過程をよく見ることが、響く指導につながる。(吉原)