30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

AIや生成AIによる犯罪インフラの大衆化に注意せよ~日本が狙い撃ちされている

警視庁が不正指令電磁的記録作成容疑で逮捕した無職の男が、生成AIを悪用してマルウエアを作成していたという。国内でも生成AIの犯罪インフラ化が現実のものとなった形だが、驚くべきは、男にITの知識はほとんどなく、無制限に質問に回答する「悪の生成AI」が使われた点だ。また、海外では、マルウエアが埋め込まれたインターネットカメラがAmazonで販売されていたという。さらに最近、英で、経理担当者が自分以外の同僚がすべてディープフェイクによるものという会議で偽のCFOに指示され、約40憶円を詐欺グループの管理口座に振り込んだ「ビジネスメール詐欺(BEC)」事件も発生した。BECによる被害はとりわけ日本で急増中だが、言葉の壁が生成AIにより崩れつつあることが背景にある。AIや生成AIによる犯罪インフラの大衆化の脅威はもはや対岸の火事ではない。(芳賀)

不当な抗議に屈するな。カスハラ対策の後退が懸念される

厚生労働省は、公表していたカスハラ関連の資料に関し、高齢者への差別を助長するという抗議を受け、掲載内容を修正した。当社の調査結果の他、厚生労働省やUAゼンセンの調査でも、50歳以上の顧客によるカスハラが多いことはデータ上も明確だ。差別・偏見を助長どころか、事実である。このような根拠なき抗議自体が「カスハラ」であり、このような抗議に屈してはいけない。今回の対応により、同様のことが企業等に対して行われる土壌を生みかねない。「差別」は、クレーマーが自身の言い分を通そうとするときの常套句の一つだ。厚生労働省の職員は、不当要求やカスハラに該当する事案への対応要領をしっかりと習得すべきだ。差別というならその立証責任は主張する側にあるし、その主張自体は一つの「ご意見」でしかない。早急に研修を行うべきだ。(西尾)

▼厚労省がカスハラ資料を削除 「高齢者差別」と抗議受け修正版掲載

災害時の警戒レベルを分かりやすく統一へ

国土交通省と気象庁は18日、豪雨、土砂災害といった災害が発生したときの防災気象情報について見直し、来年春から運用を開始すると発表した。これまでは災害ごとに警報の名称が異なり、整合性がついていなかったものを一本化する。例えば、これまでは洪水についてレベル5が「氾濫発生情報」、レベル4は「氾濫危険情報」だったが、土砂災害についてはレベル5が「大雨特別警報(土砂災害)」、レベル4は「土砂災害警戒情報」となっており、警報の名称とレベルの整合性がとれていなかった。新しい運用では警戒レベル5相当の情報は「特別警報」、レベル4は「危険警報」、レベル3は「警報」、レベル2は「注意報」と統一し、災害ごとに「洪水特別警報」「大雨危険警報」などとする。警戒レベルは、BCPの発動に密接に関連する。BCPの見直しに役立てたい。(大越)

▼防災気象情報の体系整理と最適な活用に向けて(国土交通省)

事例豊富なセミナーは喜ばれるけれど…

研修の構成を検討する際、「事例を多く入れてほしい」との要望を受けることがある。不当要求対応や部下指導にて、具体的ですぐに使える「言葉」を知りたいのだろう。しかし残念なことに、どんなケースにも使える「魔法の言葉」はない。条件が1つ変われば最適な対応も変わり、いくら事例を並べても「自分のケースに合わず、役に立たなかった」と言われるのがオチだ。やはりまずは基本をしっかり伝えたい。表面的な言葉の「暗記」ではなく、今の対応を「考え出す」ための判断軸や留意点等を学び、理解することが重要だ。研修における事例検討は演習問題に過ぎない。大量の事例を読み込ませ、そこから法則性を見つけ出させて瞬時にアウトプットさせようというなら、それは人間よりもAI向けの教育方法だろう。人間には人間向けの研修の仕方があるはずだ。(吉原)

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