30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

金融犯罪の多様化・巧妙化への対応の鍵は真の意味での「KYC」にある~金融庁「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題」

今後のAML/CFTの実務においては、実効性の確保が最大のポイントだ。とりわけ口座の不正利用について、「検知及び検知後対応の即時性(リアルタイムモニタリング)」「預貯金口座凍結の判断基準の精緻化・明文化」「取引モニタリングシナリオや預貯金口座の凍結の判断基準の機動的な見直し」といった先進事例を紹介しているほか、法人口座の悪用については、「法人名義の口座の取引モニタリングに当たっては、インターネットバンキングの接続場所や端末、申告された事業の特性と入出金との整合性等、通常の商取引に係る取引とは異なる取引を検知するため、これまで以上に法人顧客について、リスクに応じた適切な顧客理解を深めることが期待される」とし、積極的な口座凍結を評価している点は興味深く、真の意味での「KYC」が要請されていると認識すべきだろう。(芳賀)

▼金融庁 マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)

公共交通機関のカスハラ対策推進の為、罰則を伴う法改正を

ANAとJALは、タッグを組んで、カスハラの行為類型(9類型)や対応方針を公表した。行為類型他の業界でも参考にできるであろう。両社は、これまでも相当数のカスハラがあったとのことで、乗務員や職員を守る為に、カスハラに対しては毅然とした対応を行う。飛行機の利用客は、特権意識をもった、サービスの本旨を勘違いした迷惑客が少なからずおり、接客・対応に当たるスタッフは女性が多いことから、カスハラに発展しやすい。鉄道もJR東日本・西日本ともにカスハラ対応方針を打ち出している。公共交通機関は、その特性上、多くの人が同時に利用していることから、カスハラが原因で事故等が発生すれば甚大な被害をもたらしかねず、安全運行に向けて、カスハラ抑止に向けた社会的要請は強い。実効性を担保するためにも業法・関連法規での罰則化が望まれる。(西尾)

都知事選に絡みカスハラが行われる中、これでよいのか東京都カスハラ条例

今週末に投票日を迎える東京都知事選。お騒がせポスター問題等コンプライアンス意識のない候補者の話題が先行気味だが、特定候補者を応援した食品会社の社長の発言に反発して、当該食品会社の商品を使用している飲食店への嫌がらせも行われている。店舗側からしたら、自分たちに関係のない事象によるもので完全なカスハラだ。東京都ではカスハラ条例制定に向けた議論が活発化しているが、都知事選に絡み目の前にカスハラ被害者がいながら、罰則無しの条例制定では、真の被害者救済に繋がるはずもない。条例は当然、東京都職員も適用対象となる。罰則を伴わない条例を作ったところで、都職員は安心して公務に取り組めるのか。都民は、自分自身の会社や従業員を守るため、政治的パフォーマンスではなく、良識ある知事の選出を都民が選べるか、注目したい。(西尾)

能登半島地震、災害関連死を増やさぬために

発災から半年が経過した能登半島地震。石川県輪島市と七尾市は27日、新たに22人を災害関連死に認定した。災害関連死は281人に上り、熊本地震の276人を上回ることになった。熊本地震では4月の発災後の梅雨に豪雨が発生し、過酷な避難所生活と相まって関連死が増えたことを考えると、今後も関連死が増える可能性が高い。現在でも約2300人が避難所生活を強いられている能登半島では、現地から酷暑による避難者たちの悲痛な声があがっている。現在、完成した仮設住宅は計画の約7割の約5千戸。熊本地震では発災から半年後に9割の仮設住宅が完成し、避難者も200人以下だったとのことから熊本地震に比べて復旧・復興の歩みは遅いと言わざるを得ない。被災地が半島にあり物資の救援が滞っていることもあるが、関連死をこれ以上増やさないために早急な対策が必要だ。(大越)

ルールや命令は人を守るためにある

災害派遣される自衛官は隊ごとに地域が割り振られ、その地へ行く途中でどれほど助けを求められても、まっすぐに命じられた地へ向かうそうだ。情に流され、その場で活動を始めてしまえば、本来向かうはずだった地で助けを待つ人を救えなくなる。組織としてのルール・命令は「絶対」であり、自衛官は目の前で助けを求める人を振り切ったとしても、罪悪感を覚える必要はない。ルールや命令は、一人でも多くの命を守るとともに、自衛官の心も守っているのだ。しかし時に、この「絶対」が不正や人権侵害を招くことがある。ルールや命令には必ず目的や理由があるが、それを個人の利得や好き嫌いで捻じ曲げれば、人を守るためのルールや命令が逆に人をも殺しかねない。命令は絶対。だがその目的は適切か?目的が適切ではない命令にはNoと言える組織でありたい。(吉原)

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