2024年08月19日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
サイバー安全保障は「他人事」であってはならない
「能動的サイバー防御」の導入に向け、政府は通信事業者にインターネット上の通信情報を提供させる新法を制定する方向だ。情報収集や分析の権限を政府に認めることを想定、憲法が定める「通信の秘密」を一定の条件下で制限する。有事に合わせたサイバー攻撃には何年も前から相手のシステムやネットワークに関する情報収集が必要だ。つまり、その前哨戦は今すでに始まっている。サイバー攻撃が情報窃取型からシステムを停止させるものへと移行し、自然災害を大きく凌駕する高頻度で起きている中、民間事業者個社での対応には限界があり、官民連携が極めて重要な局面だ。能動的サイバー防御の議論では反撃や攻撃者特定の可否、プライバシー侵害の側面ばかり注目され、防御と業務継続の重要性が見落とされがちだ。今後の冷静かつ合理的な議論を期待したい。(芳賀)
カスハラ対応マニュアルの策定は安全配慮義務の一環だ
企業でのカスタマーハラスメント(カスハラ)対策は、基本方針の策定や従業員のフォロー・ケアに加えて、初期対応の原則的な対応手順を対応マニュアルなどで周知することも忘れてはならない。顧客対応の失敗防止も理由だが、企業の安全配慮義務の観点からも重要だからだ。なぜか。カスハラ客の応対は複数名で行うことが望ましいが、小規模な店舗や営業時間帯等によっては、フォローにあたる上司等が不在で、現場従業員だけで応対しなければならない状況が生じる。企業としては、直接的なフォローができない現場の状況を想定した安全配慮が必要なわけだ。この点、厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』でも推奨されている。安全配慮の観点からも、現場の実態に目を向け、実際に使えるマニュアル作成または見直しに取り組んでほしい。(宮本)
南海トラフ地震。引き続き事前対策の継続を
8月8日午後4時43分ごろに宮崎県南部沖で発生した震度6弱の地震を皮切りに、政府は同日7時過ぎに南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表。南海トラフ「一部割れ」の可能性があるとしてその後1週間、該当する地域に地震の警戒を呼び掛けた。その後警戒は15日17時をもって解除されたが、JRなどの各線では間引き運行が実施されるなど、地震に振り回されたお盆休みになった方も少なくないだろう。各社が報道していたのでご存じの方も多いと思うが、1811年に発生した安政地震では東海地震発生のわずか32時間後に南海地震が発生した。昭和では、1944年の東南海地震の2年後に南海地震が発生している。悠久の時間を持つ大自然を相手にする災害対策では、数時間も数年も誤差の範囲でしかない。警戒は解除されたが、引き続き事前対策を継続してほしい。(大越)
職場での「呼び方」に思う、「一律禁止」による機会損失
あるお客様にて自分が下の名前(姓ではない方)で呼ばれていたことが判明。嫌じゃない。むしろ嬉しい。内輪の人と思っていただけたのかとニヤニヤしてしまった。一方「職場内でのニックネーム禁止」「男女問わず『姓+さん付け』で呼ぶことを徹底」としている企業もある。トラブルを防ごうと思えば、それもわかる。だが下の名前やニックネームで呼ばれることの嬉しさを知る身としては複雑な気持ちだ。一部の人だけを「ちゃん付け」やニックネームで呼ぶことがいけないのは、呼ばれた本人の尊厳を傷つける場合があるからのはず。何が傷付けるかは状況によるもので、本来の意図を浸透させることは確かに難しい。だが安易に意図を伝えることを諦めて一律に禁止すれば、ニックネームで呼び合うことによる一体感やエンゲージメントは得られず…やはり残念だ。(吉原)