2024年09月30日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
若者を犯罪のエコシステムから切り離せ
警視庁公安部は、特定組織に属さず単独テロを実行する「ローンオフェンダー」対策に特化した課を来春、新設するという。特定組織に属さず単独テロを実行する「ローンオフェンダー」は、犯行の予兆をつかみにくく組織テロより対処が困難だ。イスラム過激派による組織テロへの対策強化とネットやSNSの普及が「思想型」「自立型」のテロリストを生んだといえ、今なお感化される若者は後を絶たない。また、反社会的勢力も暴力団の「強固な組織性」からトクリュウの「機能的な組織性」へと変遷、一般人の薬物へのアクセスも容易になった。さらにサイバー攻撃や特殊詐欺もビジネス化や多様化が進み若者による金目当ての犯行も増えている。これら犯罪をつなぐ代表的な犯罪インフラがSNSだ。SNSを使いこなし犯罪に安易に手を染める若者への教育こそ喫緊の課題だ。(芳賀)
▼株式会社エス・ピー・ネットワーク 闇バイトの事例をマンガで紹介し予防策を解説する図書館向け書籍『あの時こうしなければ……本当に危ない闇バイトの話』を監修
カスハラ相談窓口が備えるべき「相談者保護」の機能
カスタマーハラスメント(カスハラ)対応組織の重要施策であるカスハラ相談窓口は、内部通報窓口と同様に相談者のプライバシー保護、不利益取扱い禁止を含めた相談者の保護をあわせて機能させる必要がある。理由は「女性(相談者)が男性顧客からストーカーめいたアプローチを受けて悩んでいる」「相談者は上司にカスハラ対応の相談を行ったが、上司が取り合ってくれず、顧客からのカスハラが続いている」といった相談に対し、相談者保護の機能がなければ相談が上がってきにくいばかりか、相談者との労務トラブルにも発展しかねない。となれば、窓口の運用は、内部通報窓口や労務リスク対策のノウハウを盛り込んだうえで検討すべきだろう。東京都をはじめ条例施行も迫る今、カスハラ被害者、相談者に寄り添った窓口、フォロー体制の実現をお願いしたい。(宮本)
能登半島豪雨ボランティア。事前登録を忘れずに
記録的な雨量を計測した能登豪雨から1週間。28日時点で死者は12人に増え、未だに行方不明者の捜索が続く。3市町の3641戸で断水、約950世帯で停電が続く。県管理の道路17路線の28カ所が通行止めのままという。度重なる不幸に対し、ボランティアを考えている方もいるのではないだろうか。ボランティア登録の仕方が新しくなっているのでご紹介したい。まず、市が開設するボランティアセンター(VC)に登録する必要がある。VCは各市町村の社会福祉協議会が中心となって開設するもので、ボランティアの受け入れ窓口となるものだ。下にボランティア登録受付サイトのURLを貼っておく。自分の情報を登録したら日にちを選択する。既に満員の日もあるので注意が必要だ。ただし、VCのスタッフは多忙を極める。安易な電話での問い合わせはしないようにしてほしい。(大越)
相手を「知りたいと思うこと」から相互理解ははじまる
先日、某社で実施した研修にて、「人によって考え方は違うこと」の例としてZ世代の傾向にふれたところ、「Z世代の傾向を復習したいが、手段はあるか?」との質問を受け、本を数冊紹介した。研修をきっかけに、「知りたい」と思ってもらえたことがとても嬉しい。考え方や価値観は人それぞれで、同じ世代でも皆が同じではない。その人が生きてきた時代、環境によって考え方が変わるのは当然であり、たとえ自分とは考えが違っても、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているわけではない。相手の背景、せめて時代背景だけでもわかれば、おおよその世代の特徴はつかめるだろう。違いに驚き、拒絶するのではなく、もっと相手を知りたいと思うならば、その気持ちを大事にしたい。共感はできなくてよい。「なるほど」と思えれば、相互理解としては十分だ。(吉原)
一見、公益通報ではなくても、公益通報レベルの対応を
兵庫県の公益通報者保護法違反疑惑問題では、知事のパワハラと「おねだり」に焦点が当たりがちだが、それらが即、公益通報に該当するわけではない。公益通報の対象は、公益通報者保護法や政令で定められた法律に違反する犯罪行為、過料対象行為、又は最終的に刑罰若しくは過料につながる行為だ。パワハラの場合、暴行等の犯罪行為でなければ公益通報に該当しない。兵庫県では、昨年の阪神・オリックスの優勝パレードについて、金融機関に対して補助金を増額する見返りに、開催資金を寄付することを働きかけた「資金還流問題」が刑法の第三者収賄罪に該当する可能性があるため、公益通報となる。とはいえ、実務上は後になって公益通報であったことが判明することもあるため、公益通報か否かで対応レベルを変えることなく、通報への真摯な対応が重要だ。(安藤(未))