2024年10月21日号
届けたい相手に届けたい情報を~犯罪対策における啓発のあり方
犯罪の手口の巧妙化に伴い、啓発が重要性を増している。例えば、令和5年における組織犯罪の情勢(警察庁)では、若者の大麻蔓延対策として、「少年等若年層と関係性を有する人物を含む周辺環境に着目した広報啓発活動等の重要性が再確認されるとともに、その有効性を示唆する実態がうかがわれた」、「SNSにおける違法情報の排除や大麻の危険(有害)性を正しく認識できるような広報啓発等を推進することが重要である」と指摘する。また、高齢者に向けて特殊詐欺の手口を紹介する取り組みも進む。だが、問題は届けたい相手に届けたい情報が届いているかどうかだ。そもそも犯罪親和性の高い若者は当局のサイトは見ないし、デジタルに疎い高齢者もサイトは見ない。そのような中、警察庁や金融庁が新たな切り口から取り組みを始めた。その効果に期待したい。(芳賀)
フリーランス新法対応を就業規則・労働条件通知書の見直しの機会に
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)が11月1日より施行される。法改正に備えて、業務委託契約書や取引条件にかかる書面の見直しや、就業環境整備項目である募集状況の的確な表示(12条)、妊娠・出産等に対する配慮(13条)、ハラスメントにかかる措置(14条)、解除等の予告(16条)にかかる就業規則項目の見直しをされた企業も多いものと思われる。この機会に、従業員等の労働条件通知書(雇用契約書)も見直されることをお勧めしたい。労働条件通知書には就業規則の引用箇所も複数あると思うが、就業規則の見直しに伴い、引用条項にずれが生じる。特に、契約社員やパート・アルバイト等については、現場任せになり、適時更新がされていない企業も少なくない。法改正は「いつもの書類」の見直しの機会でもあるのだ。(加倉井)
PFASの規制強化を急げ!
全国の河川やダム周辺、さらには米軍や自衛隊基地、化学工場周辺で検出されている有機フッ素化合物(PFAS)は、以前より発がん性が懸念されていた。漸く環境省は現行の「暫定目標値」から水道法上の「水質基準」の対象に格上げする方向で検討するという。「暫定目標値」では、1万種類以上あるPFASの代表物質PFOAとPFOSの合計で、1L当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)となっているが、それを上回る地点が増加。消費者の懸念も高まり、一部の企業では"脱PFAS"も進む。ただ規制強化で先行する欧米に比べ、周回遅れだ。国民の健康問題に直結するだけに、「疑わしきは罰せず」ということでは済まされない。河川などの汚染源は何なのか、また何故米軍基地周辺から検出されるのか、原因の特定が急がれる。日米地位協定にも言及した石破首相の判断も注目される。(石原)
観光危機管理、観光事業者のBCP策定が急務だ
現在、観光庁では観光危機管理を「観光客や観光産業に甚大な影響をもたらす危機を想定し、被害を最小限にするため、減災対策や危機発生時の対応策等をあらかじめ計画・訓練して組織としての備えをしておくことで、観光地のレジリエンスを向上させるもの」と定義し、その取り組みを推進している。その主体には「地方公共団体・観光関連事業者」とあるように、自治体だけが推進するものではなく観光関連事業者についても本来であれば積極的に取り組まなければならないものだ。しかし残念なことに内閣府が実施した「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」では「宿泊業、飲酒サービス業」のBCP策定率は全業種で最低の27.2%。今年正月に発生した能登半島地震を見ても分かるように、災害は時と場所を選ばない。観光事業者のBCP策定が急務だ。(大越)
フリーランスの権利を守るのは、「法律ができたから」ではないはずだ
厚生労働省が公表した「フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)」の結果を見ていると、フリーランスで働く方々の厳しい現実が見えてくる。何に対していくらもらえるかわからないままでの業務提供、一方的な要求の追加や変更・報酬の減額、ハラスメントや不払い、そして突然の契約解除…。何か言えば「契約を切られる」「仕事がなくなる」と思えば、泣き寝入りも増える。それをいいことに傍若無人なことをするなど、いけないに決まっている。フリーランス保護法の施行で状況は改善に向かうのかもしれない。しかし「法令に従わなければならないから」不当な扱いをやめるのでは、なんとも情けない。相手の身になり、「人として」やって良いか悪いかを判断し、行動できる人の育成に、社会全体で取り組まねばならないのではないか。(吉原)
主治医の問診は職業生活ではなく日常生活に関することが中心
あくまで一般論だが、主治医は、本人の職業生活ではなく、日常生活を中心に問診を行っている場合が多いようだ。そうすると、休職者について、主治医が考える「復帰」と、会社が考える「復帰」が食い違うことが有り得るだろう。主治医は、会社の状況や会社での本人の様子を知ることで、より具体的な病状把握や治療目標を立てられる。そこでお勧めしたいのは、本人の承諾を得た上で、会社と主治医が復職を目的とした情報交換を行うことだ。産業医が選任されている会社であれば、間に産業医が介在した方が、職場復帰に必要な情報を主治医に伝えたり、主治医の臨床的知見をかみ砕いて会社に伝えたり、双方の意思疎通がスムーズになるだろう。厚生労働省は、以下のサイトで会社と主治医が情報交換する項目の代表例を挙げているので、参考にしてみてほしい。(安藤(未))