2024年11月25日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
社会的孤立が破壊衝動を助長する~「社会的包摂」の重要性
中国で一般市民を標的にした無差別の殺傷事件が相次ぐ。背景には経済の減速とそれに関連したメンタルヘルスの問題があるとされる。中国国内にはAIを使った顔認証システムが搭載された監視カメラが約2億台設けられているといい、さらに「社会信用システム」の実験、導入が進む。容疑者らはこの信用スコアが低い傾向があり、就職や結婚などが難しいケースが少なくなく、将来を悲観して自暴自棄となり犯行に及んでいる可能性が高いという。社会的な不公平感や格差の蔓延、息苦しいほどの閉塞感、絶望が、極端な場合には無差別な暴力へとつながる構図は、日本で通り魔的な犯行が多く、ローンオフェンダーのリスクが高まっている背景と重なる。ネット空間でもリアル空間でも社会的に孤立しがちな予備軍を社会に取り込む「社会的包摂」の重要性が増している。(芳賀)
災害関連死の防止対策が急務だ
石川県は22日、能登半島地震の影響で亡くなった「災害関連死」が235人となり、建物の倒壊などによる直接死や熊本地震の関連死を上回ったと発表した。2016年に発生した熊本地震では直接死が50人で、その後数年かけて関連死が222人まで増えたことを考えると、能登半島地震による災害関連死は今後も大幅に増えることが予想される。災害関連死は、劣悪な避難環境やストレスなどによる「人災」の可能性が高い。内閣府の調査によると、全国の指定避難所約7万9千カ所の約3割が、風水害による浸水想定区域に立地しているという。熊本地震でも能登半島地震でも地震後に避難所が水害に遭っているケースが報告されている。首都直下地震では約2万3000人の直接死が想定されているが、このままでは関連死がその何倍にもなることが考えられる。関連死の防止対策が急務だ。(大越)
責めないことと甘やかしは違う
「上司からミスを厳しく責められた」というハラスメント相談をよく耳にする。その際、いつ、どこで、誰が、誰の前で、何をされたのかを聞いて安心してはいけない。何に対して、つまりミスの内容を明らかにすることが非常に重要だ。相談者は「ちょっとしたミス」「仕方のないこと」と、気にも留めていないが、周囲や上司から顛末を聞けば、「あり得ないミス」ということもある。自分のミスを認識できていない人に、厳しく叱責をすれば、ますます他責の傾向や被害者意識を強めるだけ。厳しく責める上司を、ミスをなくす努力をしない言い訳に使うだけだ。指導とは責めることではない。責めずに、ミスをしないための指導を淡々と行う方が、よほど厳しい指導ではないか?甘やかしとは、責めないことではなく、できるようになることを諦め、放置することだ。(吉原)
業務効率化・生産性向上の第一歩は「無くす」「止める」
この話は、製造現場でお勤めの方には「釈迦に説法」かもしれない。「ECRSの原則」では、改善効果の大きさは、①Eliminate(排除)、②Combine(結合)、③Rearrange(交換)、④Simplify(簡素化)の順であるため、優先順位も①⇒②⇒③⇒④とするべきというものだ。「5S」では、①整理、②整頓、②清掃、④清潔、⑤しつけ(躾)の順で職場を管理し、①の「整理」とは、必要なものと不必要なものを区分し、不必要なものを片付けることだ。日野自動車の認証不正問題に関する調査報告書では、過去の成功体験に引きずられ、ダメージを最小限にするための「撤退戦」も苦手になっていたことから、利益率が期待できない車種等の展開を取りやめることができず、その結果としてリソースを逼迫させていると指摘されていた。まずは、思い切って「無くす」「止める」ことを考えてほしい。(安藤(未))